「曖昧な現場の無償業務はサービス劣化につながる」 管理協・山根理事長
山根理事長
マンション管理業協会・山根弘美理事長が6月7日、通常総会後の懇親会の席上で、管理会社の現場担当者が日常的に行っている無償業務について「わかりやすい品質基準があっていい」と一歩踏み込んだ発言を行った。
冒頭、挨拶に立った山根弘美理事長(大和ライフネクスト会長)は、先の熊本地震について触れ、「私も現地に何度か入りましたが、熊本の皆さんは、そろって『まさか、熊本で…』と思われていた」「マンション防災力強化は、マンション住民、また我々業界の新しい重要な使命の一つになる」と語った。
また、今年3月に改正された標準管理規約については、「標準管理規約の上位概念である適正化指針には『マンションにおけるコミュニティ形成は重要であり、管理組合においても区分所有法に則り良好なコミュニティ形成に積極的に取り組むことが望ましい』という文言が明記された。協会としましては、今後、講習会、研修会を通し、この改正主旨を正しく伝え、お客様や現場に誤解混乱が生じないようにしっかりと啓発活動を展開していく」と話した。
平成28年度事業計画については、管理委託契約では明記されていない無償業務の提供について踏み込み、「9割を超える会員社が、委託契約範囲外の業務を無償で提供している。それが社員の、引いては経営上のかなりの負担となってきている」とし、「曖昧な無償サービスで、プロが育つでしょうか? 懸念されるのは、単純な価格競争とサービスの品質劣化です。このツケは、最終的にはお客様に回ってきます。もっとわかり易い品質基準が生まれてこそ、この業界の未来はある。難題ですが、これに取り組みます」と述べた。
山根理事長と石井国交相らが記念写真(第一ホテル東京で)
三井不動産レジデンシャル 杭工事再発防止策 第三者による立ち合い確認
三井不動産レジデンシャルは6月7日、分譲マンション事業における杭施工不良に関する再発防止策を発表した。
横浜市都筑区で分譲したマンションで杭の一部に不具合が判明したことを踏まえ、売主としての責任を果たし、お客様からの信頼を回復するため、同社単独事業の分譲マンションでの杭施工に関する再発防止策を実施するもの。
具体的には、売主責任を果たすため「施工者が適切に施工し管理すること」「監理者が施工者の施工状況・管理状況を適時確認すること」が確実に実施され、万一不具合が発生した場合でも早期発見し対応できるように、施工者および監理者の現場立会の強化を求めるとともに、第三者による施工状況の立会確認も新たに実施する。
また、施工過程を把握できる施工記録が適切に作成、保存されるように施工者および監理者による確認の強化も求めていく。
同社は6月30日を期限に、都筑区のマンションの施工不具合について建基法に基づく報告を横浜市に提出することになっている。
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「第三者による立ち合い確認」を実施することに驚いた。再発防止に施工者や監理者が適正に施工、監理するのは当然だが、第三者が立ち合い確認をするというようなことは聞いたことがない。同社がマンション施工の「安心・安全」の取り組みに大きく前進したのは間違いない。同業他社に波及するのは必至だ。
この第三者はその物件の施工監理に関わる監理者ではないが、同社では性能評価機関を考えているようだ。いま話題になっている「第三者」とは全然異なるのはいうまでもない。
コスモスイニシア アクティブシニア向け「武蔵浦和」完成 売れ行き好調
「グランコスモ武蔵浦和」
コスモスイニシアは6月7日、アクティブシニア向け第1弾分譲マンション「グランコスモ武蔵浦和」が竣工したのに伴うマスコミ向けの見学会を行った。武蔵浦和駅前の複合再開発「武蔵浦和SKY&GARDEN」(全776戸)の一角にあり、全160戸のうち120戸が契約済み。分譲単価がファミリー向けより約16%高いにも関わらず、大浴場・レストラン付き、共用施設の充実、24時間見守り・コミュニティ支援サービスなどが支持された。同社は今後も積極的に展開していく。
物件は、JR埼京線・武蔵野線武蔵浦和駅から徒歩4分の13階建て全160戸。専有面積は44.00~73.54㎡。現在分譲中の住戸(28戸)の価格は3,398万~5,938万円。坪単価は255万円。設計は久米設計一級建築士事務所。施工は清水建設。
見学会で事業説明した同社執行役員でコスモスライフサポート社長・藤岡英樹氏は、「1LDKと2LDKの比率を60:40%にしたが、契約者も1人入居が59%、夫婦2人とその他で41%となるなど想定通り。夫婦の場合は、契約を渋る男性を奥さんが説き伏せて契約するケースが目立った。現在、大和ハウスを中心に10数件の複合案件の引き合いがあり、積極的に展開していく」と語った。
エントランスホール
大浴場(左)とレストラン
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所有権付きのアクティブシニア向けマンションは、首都圏ではフージャースコーポレーションやダイヤモンド地所が展開中だが、これらはどちらかといえば郊外型で、今回の同社の物件は利便性が高いエリアでの分譲であるため、同業からの関心も高かった。
新日鉄興和不動産などのファミリー向け616戸(非分譲15戸含む)の坪単価は220万円(西向きは210万円)であるのに対し、アクティブシニア向けは西向きで255万円とかなりの単価差があったが、売れ行きは前者が520件超(3月末)に対して後者は120件。単価の高いのは全くハンディにならなかった。
しかも、管理費・修繕積立金、サービス費の合計が52,500円~73,000円(1人入居)かかるにも関わらず、現金購入が約8割に達するなど、資金的に余裕のある人の購入が目立った。購入者の現居住地もさいたま市と埼玉県が60%であるのに対し、東京都が20%、神奈川・千葉県が10%、その他が10%に上るなど広域からの購入も多い。
ただ、隣のファミリー向けとの親子近居は数件にとどまっており、新日鉄側とコスモスイニシアが当初から連携して販売していたらまた違った結果が出たと思われる。
売れ行きが好調に推移し、またフージャースの「柏の葉」もファミリー向けより坪30万円近く高いにもかかわらず好調な売れ行きを見せており、参入機会をうかがっているデベロッパーを勇気づけるかもしれない。有料老人ホーム、サ高住などとともにユーザーの選択肢が増えることはいいことだ。
ラウンジ
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開業したレストランのメニューの安さにびっくりした。セルフサービスだがカツドンが350円、かけそばが210円、カレーが330円、コーヒーが100円(このコーヒーはおいしかった)、ビールが280円。廊下にある自販機のVolvicは90円だった。
各フロアに設けられていたラウンジの広さは全体で住戸10戸分もあった。麻雀室では男性1組に対して、女性2組が楽しそうにゆっくりと牌を並べていた。大浴場は旅館並みで、これを利用すれば、風呂代として月額1万円はかかるという自宅の電気・ガス・水道代を浮かせると思った。自宅の風呂に入らなければ掃除もしなくて済む。
麻雀室
「ららぽーと」に隣接 シニア向け「デュオセーヌ柏の葉キャンパス」坪単価230万円でも人気(2016/5/2)
激戦の番町エリアの一等地「一番町」 旭化成不レジが「ホーマット」建て替え分譲
「ONE AVENUE(ワンアベニュー)一番町文人通り」完成予想図
旭化成不動産レジデンスは6月7日、千代田区一番町の建て替えマンション「ONE AVENUE(ワンアベニュー)一番町文人通り」のモデルルームを報道陣に公開した。江戸時代に幕府の旗本の屋敷町が置かれた「番町」エリアの中でももっとも地位が高い「一番町」に立地する「ホーマットカヤ」の建て替え事業。設備仕様レベルが高く、上階からは千鳥ヶ淵の緑が見渡せることなどからオールド・リッチを中心に人気を集めそうだ。
物件は、東京メトロ半蔵門線半蔵門駅から徒歩5分、千代田区一番町20に位置する14階建て全32戸(事業協力者住戸10戸含む)。専有面積は94.68~170.66㎡、価格は未定だが、坪単価は800万円前後の予定。設計はアーキサイトメビウス。施工は松井建設。引渡し予定は平成30年5月下旬。販売開始は平成28年6月下旬。
現地は、明治・大正・昭和にかけて多くの文化人たちに愛された「番町文人通り」に面する立地。隣接地は串田孫一の居住跡で、通りには与謝野鉄幹・晶子、有島武郎、菊池寛、泉鏡花、島崎藤村、藤田嗣治などの居住跡がある。「一番町」の「文人通り」に面したマンションは36年ぶりだという。
同社は平成26年、従前のマンション「ホーマットカヤ」の建て替えの検討に参画。同年に等価交換方式による建て替えの合意に達していた。
企画担当者の同社開発営業本部技術部商品企画一課・和田悠氏は、「社内はもちろん、激戦のエリアでどこにも負けないものをつくろうと今井敦先生(アーキサイトメビウス)と相談し、自然石や天然木をふんだんに用いた。『タマモク(玉杢)』は世界の銘木の中から選んだ。権利者の方々にも励まされた」と語った。
エントランス
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「番町」エリアでは昨年から東急不動産、三井不動産、大和ハウス、三菱地所など大手デベロッパーが相次いでマンションを供給し、今後も十数物件の供給が予定されているなどアッパーミドル・富裕層向けの供給ラッシュが続く激戦地だ。坪単価は600万円を一気に突破すると、今回もそうであるように一等地は800万円以上に高騰した。
見学会では、「文人通りサロン」所長代理の同社開発営業本部販売部第二課・茂田貴志氏や和田氏の話を聞き、同社の最高単価マンションにふさわしく、かなり力が入っていることが伝わってきた。ラウンジに自然石を配し滝を流すという大胆な演出(同じような仕掛けは数例みているが)に驚き、玄関ドアのスリットに用いられた「タマモク(玉杢)」に目が吸い寄せられた。初めて見るもので、ウォールナットの根っこの部分の微妙な文様が〝唯一無二〟を象徴していた。
もうひとつの特徴は、玄関から廊下-居室-リビングや建具・家具の高さを2.4メートルにそろえていることだ。
さらにドアノブ(コロンボ製)を極力少なくし、把手部分を彫り込んで壁面をすっきりさせるなど細部にもこだわるなど、全体として奇を衒わない玄人好みのオーソドックスな億ションだ。
同社の〝アトラス〟は、渋谷、新宿、文京区などでの供給はあったが、都心3区では今回の「一番町」のほか「御茶ノ水」があり、港区三田でも分譲するという。富裕層向けを積極展開するということか。
玄関(床は大理石)
「地価公示日本一」六番町にフェルメールを見た 大和ハウスが億ション(2016/3/14)
ミクル、マンションコミュニティ 新しいコンテンツ「スムログ」開始
「マンションコミュニティ」や「マンションWiki(住適空間)」を運営しているミクルが5月10日から新しいブログコンテンツ「スムログ」を開始した。
「スムログ」は、著名なブロガーが自由に書くことができる、マンションに特化したブログポータルサイトだ。
記者が書いているRBAの記事は、〝記事はラブレター〟をモットーに極力わかりやすく面白く書くように心がけているので、あるいは「ブロガー」と呼ばれる範疇に入るのかもしれないが意識したことはない。そもそも「ブログ」なるものの定義すらわかっていない。
なので、以下の文章がブロガーやその読者の方々にどのように受け取られるのかわからないが、率直な感想を述べたい。
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不動産ポータルサイトには、住宅・不動産会社の数だけあるとすれば10万くらいあるのだろうが、一般的には賃貸&分譲不動産情報サイトラングでダブル総合1位の「SUUMO(スーモ)」、不動産情報サービス業のパイオニア「at home(アットホーム)」、物件数№1の「HOME'S(ホームズ)」、わが国の住宅・不動産情報サイトのイノベーションを目指す「O-uccino(オウチーノ)」などがある。
Webサイト分析ツール「Similarweb」によると、月間ユーザーは「SUUMO(スーモ)」が1,200万、「HOME'S(ホームズ)」が1,100万もあるようだ。
もう一つが、「マンションコミュニティ」を代表する購入検討者や購入者、入居者が〝掲示板で〟意見交換をするサイトだ。ミクル取締役の山下肖武氏によると「マンションコミュニティ」の月間ユーザーは200万人もあるという。
記者は物件検索サイトもコミュニティサイトもほとんど利用しない。直接デベロッパーのホームページから物件を選択している。
コミュニティサイトは、当事者しか知りえない情報が書かれていることもあり、正直、閲覧するのが恐い。正義感による内部告発もあるが、業界では販売会社による競合排他の投稿や、ステルスマーケティング目的など、利害関係者による意図的な投稿も中には存在し、そういった問題投稿を確認次第、削除など適切な措置をとっているという。
早速、新しいブログコンテンツ「スムログ」を読んでみた。
驚いたのは、スムログに登場しているブロガーの物件見学数だ。覆面座談会なるものの中で数人の方がほとんど年間数十物件を見学していると話している。これはとても大事なことで、記者は現場を見ない〝記者〟を記者だとは思っていない。
もう一つ、これは称賛に価すると思ったのだが、記者のようにネガティブ情報などは自主規制しまいがちなのに対して、デベロッパーにおもねることなく自由な立場で書かれている方も多いということだ。
何人かのブログも読んだので紹介する。
嬉しかったのは「モモレジ」さんの「モモレジのスムログテーマは『間取り』ではなくデザイン!」で、この方は記者と同様、マンションのデザイン・外構を重視されているようで、モリモトの物件を褒めている。ブロガー仲間ではよく知られている方のようだ。
「マン天」さんもすごい方だ。「マン天からのご挨拶」の中で「マンションアナリスト。11年間で5,000枚のマンション・チラシを“読破”したマンション・チラシ研究家。一級建築士」と自らを紹介している。マンションの何が大事かといえば物件概要だ。これを読みこなせるようになれば一流だ。記者はかつてマンション・戸建て合わせて年間3,000件くらいの物件概要を読んでいた。概要を読むと、ほとんどその物件の売れ行きが予測できた。
「はるぶー」さんは、以前、記者の記事について言及されていたので名前だけは知っていた。実際に部屋に1万円札を並べ、「1万円札の坪単価は272万円」と題するブログを書かれていた。「坪単価」が頭から離れない記者はドキリとした。
「マンションマニア」さんの「マンションマニアの活動日誌(ブログ)」では、マンションの概要をしっかり書かれていた。これもとても重要なことだと思う。記者も用途地域や容積率は書くべきだとも思っている。
「DJあかい」さんは、「マンションコミュニティの歩き方」の中で「掲示板」について「掲示板は掲示板。匿名さんは匿名さん。あなたはあなたなわけです。買わない(かもしれない)人の意見に心を惑わされるのではなく、自己との対話、あるいは伴侶との対話に焦点を絞って、それでOKならOKじゃないかと思います。『ひき返せ!』『ひき返したほうがいいぞ!』の合唱に負けず、孤独に耐えて突き進んだ先でなければ、得られないものもあるでしょうから」と書かれている。なるほどと思った。
山下氏によれば、この分野でも「レッドオーシャンに突入しつつある」とのことであるが、間違いなく消費者の物件選考に少なからず影響を与えると思う。
デベロッパーはメディア向けのマンション発表会、見学会を行う際に、こうしたブロガーもぜひ加えていただきたい。実際に自分が見たにもかかわらず、発表資料以上のことしか書かず、商品紹介でもっとも肝心な「価格」についてほとんど言及しないような記者よりはるかに物件告知の効果がある。
旭化成不レジ「アトラス調布」 「都市景観大賞(都市空間部門)」大賞受賞
旭化成不動産レジデンスは5月27日、同社が事業協力者および参加組合員として携わった、調布富士見町住宅の再建プロジェクト「アトラス調布」が、平成28年度「都市景観大賞(都市空間部門)」の最高賞である大賞(国土交通大臣賞)を受賞したと発表した。
同プロジェクトは、団地住民が地域との関わりの中で持っていた課題(交差点の危険性や公園へのアプローチの悪さ)を調布市と共有化し、団地の建替えと同時に市道を付け替え、「コミュニティ街路」として再生することで解決した事業。
官・民・住民が一体となって新しい景観を生み出したプロセスや、再建後のマンションが石畳や植栽と一体的にデザインされたことなどが評価された。
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このマンションについては2度、3度見学して記事にしているのでそちらを参照していただきたい。
ランドスケープデザイン、住棟配置が秀逸で、住民や設計者のプロジェクトに込めた思いがひしひしと伝わってくる好物件だ。
革命的な開発か 調理削減 伊藤忠都市の新「モット・キッチン」 「田端」に採用
「クレヴィア田端」完成予想図
伊藤忠都市開発が6月下旬に販売開始する「クレヴィア田端」を見学した。同社がオージス総研、インブルーム、タカラスタンダード、東京ガスと協働で開発した新「モット・キッチン」を導入した物件で、同社のオリジナルキッチン「モット・キッチン」の改善活動で新たに実施した「行動観察」により〝お客様も気づいていなかった声無き潜在ニーズ〟を盛り込んだというのがセールスポイントだ。
物件は、JR山手線・京浜東北線田端駅から徒歩9分、北区田端新町3丁目に位置する14階建て全33戸。専有面積は65.35〜75.52㎡、予定価格は4,700万円台〜7,000万円台(最多価格帯5,400万円台)、坪単価は280万円の予定。竣工予定は平成29年3月下旬。施工はイチケン。設計・監理は三輪設計。売主は同社のほか三信住建。
現地は、明治通りから一歩入った近隣商業エリアの一角で、3方道路の敷地。住戸は全戸南西向きで角住戸比率が78%。二重床・二重天井で食洗機、ミストサウナが標準装備。
モデルルーム キッチン
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同社が2009年に開発した「モット・キッチン」が優れているのは理解しているつもりだが、正直に言えば、どこが「新」なのか、同業他社と比較してどこが優れているのかさっぱりわからなかった。自分でも愕然とした。
種を明かせば、記者はかつて約10年間〝主夫〟を完璧とまではいかないかもしれないが、とにかくこなした。マンションの水回りに関しては〝主婦〟に負けないぐらいの知見があった。
過去形になったのは、最近はまったく家事労働をしなくなり、そのために収納やら動線やらについてまったくわからなくなった。ダイコン1本の値段もわからなくなった。完全に記者の知識はさび付いてしまった。
なので、読者の皆さんは同社のニュースリリースを読むか、モデルルームを訪ねてコンセプトブックをもらって読んで、実際にそのキッチンを見るしかない。記者は何の役にも立たない。
そのニュースリリースを要約すると、開発経緯は、2014年の調査で「収納量」と「作業スペースの広さ」の好不評が大きく割れたため、その原因究明と解決の糸口をつかむべく、行動観察調査の実績豊富なオージス総研と協働し「行動観察」を実施したとある。
「行動観察」では、モット・キッチン利用者4名に自宅で普段通りの調理準備から片付けまで約3時間録画。全12時間の映像を分析し、「無意識行動」や「思い込み・諦め」の中にストレスの原因となる問題が潜んでいることを明らかにした。
そして、「収納・動線」「設備機能」「セレクト・カスタマイズ」「フォローサービス」の4つの面から改善を図り、新「モット・キッチン」の開発につなげたという。
試作品の検証結果では、調理時間が20%、移動歩数が25%、屈伸回数が70%それぞれ軽減されたという。
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検証結果で調理時間が20%、移動歩数が25%、屈伸回数が70%それぞれ削減されたというのはすごいデータだ。リリースによると、同一人物がイタリアン4品4人分を一般的なシステムキッチンと試作品をそれぞれ使用して比較した場合、一般品より試作品のほうが調理時間が約55分から約44分へ20%、移動歩数は509歩から383歩へ25%、屈伸回数は13回から4回へ70%削減された。
この結果から、仮に朝昼晩だと調理時間、移動回数、屈伸回数は2倍かかるとすると、調理時間は20分、移動回数は150歩、屈伸回数は18回削減される。1年にすると…。この〝価値〟は大きい。家事労働をやったことがある人は分かるはずだ。後片付けもラクになるはずだから、新「モット・キッチン」は革命的な開発かもしれない。
新「モット・キッチン」のよさは分からないが、坪単価予想はドンピシャリだった。販売担当者は坪単価について最初は口をつぐんでいたが、「わたしの予想では280万円」という質問に「280万円くらいで考えています」とのことだった。山手線沿線の徒歩9分というのはインパクト、割安感がある。早期に完売するとみた。ライフステージの変化に対応したプラン提案もよかった。
現地
総合地所「ルネ世田谷千歳台AYUMIE」 扁平梁、ハイサッシなど採用
「ルネ世田谷千歳台AYUMIE」完成予想図
総合地所が5月24日、「ルネ世田谷千歳台AYUMIE」のメディア向け見学会を行った。同社が長谷工コーポレーショングループ入りしてから初めて双方で商品企画を練った物件で、「学住近接」が売りの物件だ。
物件は、京王線千歳烏山駅から徒歩17分、世田谷区千歳台6丁目に位置する6階建て全64戸。第1期(13戸)の専有面積は60.70~81.36㎡、価格は4,998万~7,898万円。坪単価は286万円。完成予定は2017年2月中旬。施工は長谷工コーポレーション。「AYUMIE」は「歩みの家」が由来。5月24日から分譲開始されている。
現地はバス便(芦花公園駅バス12分、バス停徒歩3分)で、現地は中層マンションなどが立ち並ぶ一角。保・幼・小・中・高のすべてが500m圏内に揃った“学住近接”立地。敷地・建物は南北に細長い形状で、各住戸は東向き。道路を挟んだ対面は生産緑地とサ高住の建設予定地。
外観デザインは、水平ラインを強調し、タイル、アルミルーバー、ガラスの3素材によって重厚感を演出している。敷地の北側にはケヤキの既存樹を残している。
設備仕様は、二重床・二重天井、7m以上のワイドスパン、食洗機、ディスポーザ、バックカウンターなどが標準装備。扁平梁を採用することでハイサッシも実現した。
現在、資料請求は約300件、来場者数は約100件。来場者の居住地は世田谷区が約75%、年収は500~600万円台(約6割がダブルインカムで世帯年収は1,000万円以上が50%)。予算額は4,000~5,000万円が34%、5,000~6,000万円が35%。
◇ ◆ ◇
千歳烏山駅からだと道路が狭いのがネックだが、現地はかつてマンションがたくさん供給されたエリアだ。駅に近い物件の価格・単価差がかなりあったために、一部不振物件もあったが売れ行きはまずまずだった。芦花公園にも近くファミリーにはいい住宅地だ。
今回の同社の坪単価286万円はやはり高いという印象を受ける。しかし、この前、野村不動産「大田六郷」の記事でも書いたように、都内23区で坪単価250万円以下というのは絶望的な状況だ。人気沿線の駅から相当距離のある物件でもことごとくこれくらいの単価になることを覚悟しなければならない。
モデルルームタイプは南側にキッチンが設置されており、扁平梁のよさもよく表現できている。。「AYUMIE」は「三重県」と関係があるのかと思ったが、そうではなかった。
マンション南北戦争勃発 「南」の野村に座布団3枚! 「大田六郷」は坪250万円
「プラウドシティ大田六郷」完成予想図
記者は、三井不動産レジデンシャル、大和ハウス工業、近鉄不動産、三菱地所レジデンス、長谷工コーポレーションの5社連合による北区・東十条が最寄り駅の「ザ・ガーデンズ東京王子」(864戸)と、野村不動産の大田区・雑色が最寄り駅の「プラウドシティ大田六郷」(632戸)をともに大型で、しかも子育て世帯がメインターゲットであり、また東十条から東京駅まで約24分、雑色から東京駅は約30分だが品川駅までは約16分と交通便は互角であることから「南北戦争」として位置づけている。かつてないユーザーの争奪戦が展開されるのは間違いない。
勝敗の分かれ目はやはり価格だ。このところのマンション適地と建設費の上昇で東京23区では一般サラリーマンの取得限界だと記者が考えている坪250万円(24坪で6,000万円)以下は足立区や葛飾区の一部しかなくなってきた。悲劇的なことだと思う。
「東京王子」も「大田六郷」も富裕層が見向きもしない、どちらかといえばマイナーな地域だから、ここで坪250万円を超えてきたら、その規模からしてかなり苦戦ずるのではないかと思っている。ともに疲弊して引き分けに終わる可能性もある。
◇ ◆ ◇
前置きが長くなってしまった。本日(5月24日)、「南」の「プラウドシティ大田六郷」を見学した。この物件については昨年、モリモトの雑色のマンションを見学した際に存在を知り、坪単価はひょっとしたら270万円くらいになるのではと予想した。
今回の取材をセットしてくれた同社コーポレートコミュニケーション部のO氏とモデルルームを見ながら、「Oさん、わたしはここで坪250万円だったらお客さんが殺到すると思うが、そうはならないでしょうね。三井さんの『東十条』も取材するが、『北』と『南』の激突は避けられない…」などと話した。
O氏は知ってか知らずか、単価について「あとで営業マンに確認しましょう」と言葉を濁した。
さて、そこで物件担当チーフの頼富龍介氏に「坪いくらですか」と単刀直入に聞いた。その答えに記者は驚嘆した。「坪250万円ちょっとです」
記者は絶句した。ありえない単価だ。
もう一度、どうして記者が坪250万円にこだわるのかについて補足する。皆さんは、リーマン・ショック直後の2010年に野村不動産が分譲した全785戸の「プラウドシティ池袋本町」の単価がいくらだったか覚えていらっしゃるだろうか。250万円の半ばだった。圧倒的な割安感があったため(それだけではないが)瞬く間に売れた。
あの時と今は状況が異なるが、いくら金利がただ同然になっても、坪250万円、グロスで6,000万円の壁は存在すると思う。坪250万円に設定した同社に「座布団3枚!」と叫びたい。
設備仕様は、昨日見た「府中」とは雲泥の差で、〝プラウド・オハナ〟とでも名付けたくなるようなレベルではあるが、共用施設の充実ぶり、ランドスケープデザインは間違いなく〝プラウド〟の域に達している。敷地内には認可保育所(予定)や子育て支援施設のほか、医療施設などを誘致する。
5月20日に第1期100戸を供給しており、約9割の契約がスムーズに進んでいるという。
言うまでもないことだが、記者は高みの見物を決め込んでおり、「北」が勝利することをほのめかしているわけではない。むしろ、先制攻撃で驚嘆すべき坪250万円の手を打った「南」の野村に軍配が上がるのではないかと思い始めた。
先制パンチを食らった「北」はどう対応するのか。ともに施工を担当している長谷工コーポレーションは「北」の売主にも名を連ねている。ニュートラルの立場を貫くことができるのかも気になるところだ。
「大田六郷」の物件は、京浜急行線雑色駅から徒歩12分、大田区西六郷三丁目に位置する14階・15階建て2棟全632戸。専有面積は64.62~86.87㎡、第1期2次(戸数未定)の予定価格は4,400万円台~6,900万円台(最多価格帯5,100万円台)、坪単価は250万円強。竣工予定は平成29年2月中旬・6月下旬。施工は長谷工コーポレーション。敷地はグリコの工場跡地。
キッズルーム
京王線の最高峰(単価) 野村不「プラウド府中ステーション…」第1期91戸が即完
「プラウド府中ステーションアリーナ」
野村不動産が5月20日抽選分譲した「プラウド府中ステーションアリーナ」第1期91戸が約700件の来場者を集め即日完売した。京王線府中駅から徒歩1分の15階建て全138戸(非分譲27戸)の商・公・医・住の複合再開発マンションで、坪単価はバブル崩壊後の京王線最高単価となる360万円強だった。抽選となった住戸は10戸以上にのぼり、最高3倍の競争倍率となったのは大國魂神社とケヤキ並木が見渡せる1億3,500万円の南西角住戸だった。府中市を中心に多摩エリアの富裕層から圧倒的な人気を呼んだ。買い替え・買い増しが過半に達したという。残り第2期20戸は6月上旬に分譲される予定。
物件は、京王線府中駅から徒歩1分、府中市宮町一丁目に位置する地下4階地上15階建て全138戸(非分譲27戸含む)。専有面積は63.01~102.51㎡。第1期(91戸)の価格は5,950万~1億9,390万円。坪単価は360万円強。施工は清水・京王・横沢建設共同企業体。入居予定は平成29年7月下旬。
現地は全体で約3.8ha、3街区ある「府中駅南口再開発事業」の一角にあり、今回の「第一地区」が最終章だ。駅とペディストリアンデッキでつながれており、建物の地階の3層は駐車場など、1階から4階が商業施設、5・6階が公共公益施設、住戸部分は7階以上。
住棟はコの字型の形状で、住戸は東向き、南向き、西向き。ワイドスパンが特徴で、もっとも狭い73㎡のタイプでも7.5mあり、ケヤキ並木に面した西向き住戸は8.6m以上。SIも採用しており、第1期の40戸以上がオーダーメイド対応。キッチン・洗面室カウンタートツプは御影石、食洗機、ミストサウナなどが標準装備。
◇ ◆ ◇
人気になるのは予想されたことで、記者は即日完売にそれほど驚かないが、さすが〝プラウド〟というべきか。建物の外観デザインが風格のあるもので、設備仕様も都心の億ション仕様ではないが、〝プラウド〟のトップクラスであるのは間違いない。ワイドスパンのプランも秀逸だ。
立地・環境が素晴らしい。大國魂神社の緑も見事だが、神社から北に向かって長さ約600m、数にして200本近く植えられているケヤキ並木は国の天然記念物に指定されている。江戸初期に植えられた木もあるそうで、中には〝醜悪〟な姿をさらけ出している樹木もあるが、それがまた美しくもある。
坪単価だが、記者は坪380万円くらいが妥当とはじいたが、それより低かった。それでも坪360万円という単価は、バブル崩壊後の京王線の最高坪単価マンションとなるのは間違いない。これまでの記録は、2年前に住友不動産が調布駅前で分譲した物件が確か坪320万円で、同じ住友が5年前に府中駅北口で分譲した物件が坪340万円だったような気がするが、これは誤っているかもしれない。しかし、いずれにしろ今回の野村の物件が記録を更新した(バブル期は千歳烏山~調布あたりは坪500~600万円だった)。