野村不動産 「南阿佐ヶ谷住宅」建て替えで合意
完成予想図
野村不動産は9月12日、安藤ハザマと共同で事業参画している「阿佐ヶ谷住宅建替え計画」で全員合意が得られ、等価交換方式で建て替えを行なうと発表した。平成26年秋に工事着工し、平成28年内の建物竣工を目指す。
「阿佐ヶ谷住宅」は東京メトロ丸の内線南阿佐ヶ谷駅から徒歩5分、南側には善福寺川緑地が広がる、閑静で緑豊かな環境に恵まれた低層住宅街に位置。敷地面積約5ha、2階建て連棟式のテラス(タウン)ハウス45棟と3~4階建て階段室型の中層団地7棟で構成された総戸数350戸の団地。竣工は昭和33年。
平成7年に再開発委員会が発足し建て替えの検討が進められ、平成21年に「成田東4丁目地区」地区計画の都市計画が決定された。土地の権利形態が明確に整理されておらず、複雑に入り組んでいたため「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」の適用が難しく、権利者全員の合意による等価交換方式を採用した。地権者は約150名。同社は平成15年から事業参画していた。
建て替え後は2~6階建て約580戸(うち分譲住戸約380戸)になる。設計・コンサルタントはINA新建築研究所。
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数年前に現地を歩いたことがある。駅から現地までのアプローチはそれほどよくないが、現地そのものは善福寺川緑地に隣接。極めて良好な住環境にある。価格は同社の「桜上水」よりはるかに高くなりそうだ。
里山を見るような見事な植栽 積水ハウス「グランドメゾン狛江」竣工
「グランドメゾン狛江」中庭(左は樹高20mはありそうなヒマラヤスギ)
積水ハウスの「グランドメゾン狛江」が竣工したので見学した。昨年の6月にモデルルームを見学したとき、竣工したら必ずもう一度見学しようと決めていたマンションで、そのとき書いた記事が間違いでないことを確認するのが目的だった。間違いでないどころか、想像以上の出来栄えだった。
物件は、小田原線狛江駅から徒歩6分、狛江市和泉本町1丁目に位置する9階建て・14階建て全524戸の規模。建物は7月12日に竣工済み。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。
現在分譲中13戸の価格は4,400万~5,790万円(最多価格帯4,400万円台)。平均坪単価は210万円。約85%が契約済み。
「里山遊歩道」(日照りが続いたが、枯れている草花はほとんどなかった)
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昨年6月に書いた記事を紹介する。記事は「ダブル創エネ」についてはリリースを参照していただきたい」としたうえで、次のように書いた。
「敷地は、開発面積約20,000㎡を超える東京航空計器の跡地だ。敷地内にあった高さ20mを超えるヒマラヤスギやケヤキ、イチョウなどの既存樹約100本を残したほか、約18,000本を植樹するとのこと。生態系の再生を目指した〝3本は鳥のために、2本は蝶のために〟という同社の「5本の樹」計画に基づくもので、外周を里山遊歩道で囲い、多摩川の情景を再現した多摩川ガーデンや2カ所の提供公園などを配している。
建物は、板状にせず分節し、公道に面した敷地南側や西側は中層とし、さらに雁行させることによって日照・通風に配慮するとともに圧迫感を軽減している。
子供から大人まで楽しめる『絵本ライブラリー』を共用部分に設置するほか、子どもの五感を刺激する『こどもOSランゲージ』を住まいに具現化した「五感スイッチ」も敷地内に盛り込む。更に、共用棟の屋上は緑化を施し、テラスや菜園、コミュニティ施設が計画されている。
住戸プランでは、通風性に配慮し玄関横に通風用小窓が設置してある他、リビングダイニングルームには、屋外とつながる大型のサッシを採用。最大約3.3メートルのバルコニー付きや、『インナーバルコニー』と名づけた奥行き約4メートルのバルコニーに面したリビング・ダイニングはバルコニーとリビングが一体として利用できるようにしている。
このほか建具・面材の仕様も高く、床は突き板を採用。デザイン性に優れた洗面室や〝洗面室3点セット〟の提案もいい。都の『マンション環境性能表示制度』では、満点の☆15個に1つだけ欠ける14個を獲得している」
次のようにも書いた。
「マンションの植栽計画では同社の右に出るデベロッパーはいない。これまで分譲した『東京テラス』(1,036戸)『グランドメゾン杉並シーズン』(684戸)『玉川上水グランドメゾン』(318戸)『グランドメゾン東戸塚』(743戸)などにも感嘆したが、今回は建築中の段階でも、完成後の素晴らしい景観が見えてくるようだった」
里山の谷川を連想させる中庭(このように自然に近い状態の中庭をつくるのは同社だけだろう)
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完成済みのマンションを見て、基本的に変更する部分はない。「完成後の素晴らしい景観が見えてくるようだった」ということについて、写真をたくさん撮ったので紹介しよう。
まず、敷地の外周部に配された公開空地と「里山遊歩道」。計ったわけではないが、「里山遊歩道」は総延長約300メートル。幅は5~10メートル。「東京テラス」は植栽帯が道路面より数十センチ高いところに設けられていたが、こちらは足元に四季折々の草花を眺められるようになっている。
提供公園には高さ20mを越えるヒマラヤスギが植わっていた。建物の雁行部分には既存のイチョウの大木が移植されていた。
中庭がまたすごい。どこの山に登っても見られるような堆積岩(都賀石)が谷川を連想させるようにアトランダムに配置されていた。まさにわが故郷の里山がそこにあった。
エントランス(左)とラウンジ(床は無垢材)
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同業ですら積水ハウスのマンションを見たことがない人は多いだろうから、ましてや一般の方は、同社のマンションを見たことがない人が圧倒的に多いかもしれない。買う買わないはともかく、見せてはくれるだろうから、一度見学を勧める。
このマンションによく似たマンションがこれから分譲される。同じ長谷工コーポ施工の東急電鉄「ドレッセ二子新地」だ。こちらは田園都市線二子玉川駅から一駅先のやはり工場跡地。若干、敷地規模は「狛江」より小さいがそれほど差はない。単価は240万円。二子玉川の相場は350万円を越える。
「狛江」も成城学園前駅から2つ目の各駅停車駅。成城の分譲事例は最近はないが、やはり坪400万円近い。多摩川も徒歩圏だ。
完成後の建物を案内してもらった同社東京マンション事業部販売部部長・伊藤啓一氏は「当初は小田急沿線の方の来場・成約が中心だったが、渋谷駅も下北沢で乗り換えれば新宿までの18分より近い14分ということから、田園都市線の居住者の来場も増えているいる」とのことだ。伊藤氏は、「このマンションは『東京テラス』『杉並シーズン』『東戸塚』などの集大成として位置づけている。他のマンションのような10年後の植栽が竣工時でも確認していただけるはず」と物件の特性について話した。
「二子新地」か「狛江」か。悩ましい選択だ。
中庭に面した住棟の外観
住棟の直ぐ側にヒマラヤスギの巨木
遊歩道に咲いていたアオイ
狛江市役所前のヒマラヤスギ(街路樹はかくあるべし)
ランドプラン評価され「高度許可」を取得 東急電鉄「ドレッセ二子新地」(8/30)
植栽計画が見事な積水ハウス「グランドメゾン狛江」(2012/6/6)
三井不動産レジデンシャル「パークホームズ清澄白河」第1期1次49戸が即日完売
「パークホームズ清澄白河」完成予想図
三井不動産レジデンシャルは9月10日、「パークホームズ清澄白河」第1期1次49戸を8月3日に抽選分譲した結果、即日完売したと発表した。
東京メトロ半蔵門線水天宮駅から徒歩9分、江東区佐賀2丁目に位置する15階建て全159戸(うち販売戸数95戸)。専有面積は53.42~92.29㎡、価格は3,908万~8,778万円(最多価格4,800万円台)。坪単価は254万円。施工は三井住友建設。来場者は約310組。
申込者の平均年齢は41歳。家族数は平均2.6人。職業は会社員が63%。
桜上水団地の建て替え 野村不動産・三井不動産レジデンシャル「桜上水ガーデンズ」
「桜上水ガーデンズ」鳥瞰図
分譲坪単価は「月島」や「富久町」と同じ330万円 調布より高い?
野村不動産と三井不動産レジデンシャルは9月10日、旧住宅公団「桜上水団地」の建て替えマンション「桜上水ガーデンズ」の記者発表会を行なった。1964年の東京オリンピックの翌年に竣工した17棟404戸を9棟878戸に建て替えるもので、全棟免震構造を採用、約4.7haの広大な敷地を生かした住棟配置が特徴。
物件は、京王線桜上水駅から徒歩3分、世田谷区桜上水四丁目に位置する6~14階建て全878戸(非分譲364戸含む)。専有面積は58.48 ~ 111.84㎡、価格は未定だが、坪単価は330万円前後になる模様。入居予定は平成27年8月下旬。設計・監理は日建ハウジングシステム。施工は大林組・清水建設。
敷地が位置する地域の建ぺい率は60%、容積率は200%で、地区計画によって高さ制限が45mに定められていることもあって、建物の建ぺい率は約41%、容積率は約161%に抑えられている。広大な敷地を生かして既存樹約180本を残し、新たに約360本の高木を配し、緑を再生した。全住戸の54%に相当する476台の駐車場は全て建物内と敷地内の地下に配し、人工地盤上の緑化も図っている。
住戸プランは3戸から5戸に1基の割合でエレベータを設置し、両面バルコニータイプを多く取り込んだ。天井高は約2.6m。2.2mのハイサッシも採用している。
モデルルームは今週末からオープンし、11月に第1期(マックスで278戸)を分譲する。資料請求は約5,000件で、京王線沿線だけでなく山手線内の居住者の問い合わせも多いという。
従前団地は、平成元年に建て替えを目指す「考える会」が発足。バブル崩壊を経て同18年に建て替え決議を行なったが、全体の5分の4の同意は取りつけたものの、棟別の3分の2以上の同意が得られず成立しなかった。結局、同21年の3度目の集会でようやく建て替え決議が成立した。両社は同14年から事業協力者として参画していた。
発表会に臨んだ野村不動産 執行役員 開発企画部住宅事業本部 プロジェクト開発グループ担当の松崎雅嗣氏は「これまで大変な苦労があった。法を整備して建て替えの迅速化を図るべき」と語り、同部マンション建替推進部長の森重克人氏も「全員合意を前提とする一団地認定の廃止に4年も要した。13人17件を裁判に持ち込まざるをえなかった」と、建て替えを迅速に進める法の整備を訴えた。
エントランスゲート
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もっとも注目したのが坪単価だった。関係者から単価は300万円をはるかに越えるということは聞いていたが、京王沿線に三十数年住む記者にとっては「これは高い」というう印象を受けた。同沿線でもっとも街のポテンシャルが高いのは調布、府中、聖蹟桜ヶ丘で、街の機能が揃っているのは多摩センターだ。住むにはいい街では千歳烏山、仙川、若葉台あたりか。明大前は便利だが、富裕層・アッパーミドルが住む街ではない。
桜上水もいい街ではあるが、商業施設など生活利便施設が乏しいのが最大の難点だ。坪330万円というのは「富久町」や「月島」と同じ単価だ。「武蔵小杉」よりも「晴海」よりもはるかに高い。同じ京王線では三井不動産レジデンシャルの「浜田山」が坪単価400万円だったが、こちらはいかにも富裕層向けのマンションだ。近く調布駅前で分譲される再開発マンションはひょっとすると300万円を切るかもしれない。
この単価設定について「高くないか」と質問した。同社広報部長の北井大介氏は「マンションの価値は単価だけではない。二度と出ない立地で、免震や緑化も図った。最上級のマンションで、価格は妥当と考える。お客さまにも評価されるはず」と答えた。確かに。北井氏が話したように、高いか安いかはお客さんが評価することだ。
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話題を提供しよう。このマンションの設備仕様は野村不動産の「プラウド」でも三井不動産レジデンシャルの「パークホームズ」でもない。事業比率は公表されていないが50:50のはずだ。まさか「アトラス ブランズタワー三河島」のよう「プラウド桜上水パークホームズ」などの名称は付けられないだろうが、双方のブランド名がないのも「おやっ」と思った。これは組合の意向だろう。
さらにもう一つ。この前の「富久町」では「第九」がBGMに使用されていたが、今回はバッハの有名な「G線上のアリア」のバイオリン独奏音楽が流れた。
記者は来年、野村不動産が仙川で分譲する駅7分の275戸のマンションに注目している。単価にして「桜上水」より50万円は安いはずだ。こちらは何とか京王線のサラリーマンにも手が届くか。「桜上水」と「仙川」は競合するのかしないのか。
中庭
東京建物「Brillia Tower池袋」はなぜ売れたか
「アベノミクス・豊島区ナンバー一」に反応した富裕層・アッパーミドル
当欄でも紹介したが、東京建物・首都圏不燃建築公社「Brillia Tower池袋」全322戸がわずか7週間で完売した。7,000万円超の住戸が80%以上で、2億円台の住戸2戸も8倍と6倍の競争倍率をつけ、現金での購入も4割あったというから驚きだ。平均の競争倍率が2.7倍というのは、倍率優遇があったバブル期なら10数倍になる。
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実はこのマンションについては、人気になりそうな7月あたりから「なぜ、なぜ、なぜ」という疑問が澱・トゲのように心にわだかまっていた。記者発表時のときに予想した「坪単価330万円」をはるかに上回る「340~350万円になりそうで、それでも売れる」という情報を関係者から聞いたからだ。最多価格帯にすれば500万円の差だ。単価予想には絶対的な自信があっただけに、それが覆されることにショックを受けた。
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この疑問が、6日に行われた「契約者来場イベント」の取材でいくらか解けた。単価予想を外した理由、どうして人気になったかの要因が分かったからだ。
まず単価から。記者は「区庁舎との一体開発」「隈研吾氏のデザイン監修」「駅直結」「堅固な建物」などは評価しつつも、「池袋駅圏」をマイナス評価した。アッパーミドル・富裕層が住む街ではないと判断したからだ。
ところが、購入者の判断は異なっていた。確かに池袋駅圏のマンションではあるが、繁華街の池袋ではなく、文京区に近い豊島区のナンバー一のマンションであるとユーザーは判断したようだ。確かに、これまで池袋駅周辺を含め豊島区ではアッパーミドル・富裕層の心を動かすマンションはあまり供給されてこなかった。地元から離れたくない方が港区や渋谷区、湾岸の高額マンションに興味を示さないというのもよく分かる。
その典型的な例の方から話を聞くことができた。石神井公園の一戸建てに住む購入者の一人、元会社経営者のAさん(84)だ。
Aさんは「自宅の手入れは2人では手に負えなくなってきた。もう終活の一つですよ。息子と一緒に二つ買ったから2億円。ローン? 私にはローンを借りる資格はない。自宅の売却?将来的にはあるかもしれないが、今回の購入には関係ないし、消費増税も関係ない。分相応の税金を払うのは当然の義務」と話した。
また、他のマンションのとの比較については、「利便性が一番。それに眺望。近くには眺望のいいマンションはない。隈研吾さん? もちろん世界的な建築家というのは知っていますよ。それも選択枝の一つ」と語った。
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Aさんが語ったように、富裕層にとっては坪単価の20万円の差はたいしたことがないということだ。しかし、このところの都心・準都心部のマンション単価は続々記者の予想を超えてきている。記者はアッパーミドルの購入限界能力は坪単価にして250万円、グロスにして6,000万円と見ていたが、アベノミクス効果は50~100万円ぐらい引き上げたとみる。最近人気のマンションは軒並みこの単価に属する。
月島の「キャピタルゲート」も新宿御苑の「富久町」も330万円だし、桜上水の建て替えも330万円ぐらいになる模様だ。新豊洲の「スカイズ」の260万円というのも、納得はするが記者の相場観からすればやや高い。
アベノミクスにもっとも敏感に反応したのは富裕層・アッパーミドルで、いまのマンションブームを支えているのもこの層だ。「池袋」は「豊島区ナンバー一」との相乗効果が驚異的な売れ行きとなった理由だ。さっき書いた「晴海」も間違いなく坪300万円が相場になる。
【お断り】「Brillia Tower池袋」の単価については、当初は坪330万円と書き、先日の記事でも「340万円でないか」と書いたが、実際は350万円でした。訂正します。
東京建物「Brillia Tower池袋」わずか7週間で全322戸が完売
オリンピック招致決定 三菱地所レジデンス「晴海」に予約殺到
2020東京オリンピック招致決定で三菱地所がコメント
三菱地所は9月9日、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定したことについて杉山博孝社長名でコメントを発表。
杉山社長は、「開催をきっかけとして、東京が世界から注目され、世界中から多くの来日者を迎えることが期待できる。日本や東京の素晴らしさを世界中の人々に知って頂く機会になると期待したい」「不動産業界にとっては、アジアの諸都市との国際都市間競争が激しくなる中で、東京のより一層の国際化を促進する契機となることを期待する」などとし、同社としても「国際競争力を向上させることを期待してサービスアパートメントや高級日本旅館などの導入を決めているが、今後もハード・ソフト両面において街のグローバル化を進めていく必要があり、オリンピックの東京開催をきっかけとして弾みをつけていきたい」としている。
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記者は開催都市が決まる2日前に、選手村が建設される「中央区晴海」がどのような街になるかの近未来像を記事にした。
招致が決定し、早くも予想通りの展開になってきた。晴海で分譲中の三菱地所レジデンスのマンション「ザ・パークハウス晴海タワー」への予約・来場が8日の早朝から殺到。通常の2倍に上ったことから、スタッフが対応できなくなり予約なしで見学できる措置をとったという。
同社広報によると「様子見をしていた人が、改めて来場されて購入を決断された方もかなりいらっしゃる」とのことだった。
当然のことながらオリンピック関連株も軒並み上昇。不動産株では「晴海」でSOHOを含むタワーマンション1450戸を予定している住友不動産は前場で一時約8%の400円高の値をつけた。
東京オリンピック招致が決定すれば晴海の街はどうなる(2013/9/6)
地揚げから30年 坪330万円のマンションに再生「Tomihisa Cross」
野村不動産のすごさを見た 「第九」に「1000のイゴコチ」
野村不動産(事業比率41%)、三井不動産レジデンシャル(同35%)、積水ハウス(同14%)、阪急不動産(同10%)の4社JV再開発マンション「Tomihisa Cross」の記者発表会が9月5日、現地の近くで行なわれた。敷地面積は約2.5ha、山手線内の最高層となる55階建てタワーマンション(1,093戸、非分譲住戸含む)をはじめ、賃貸住宅、ペントハウス住宅を含めると全1,230戸の規模で、大型スーパー、認定子ども園、区の防災倉庫なども備えた大規模複合物件となる。
物件は、東京メトロ丸ノ内線新宿御苑駅から徒歩5分、新宿区富久町に位置する全1,093戸。専有面積は36.22~120.65㎡、価格は未定だが、最多価格帯は6,800万円台、坪単価は330万円前後になる模様。設計・監理は久米設計、施工は戸田建設・五洋建設。
現地は、昭和60年代の前半に激しい地上げが行なわれたエリアの一角で、1990年に地元住民らが「まちづくり研究会」を立ち上げ、早大の支援などを受けながら計画を進めてきた。2008年に野村不動産を中心に4社が参加組合員として事業に参画した。「産・官・学・民」が街づくりを配信するプロジェクトでもある。
商品企画に当たっては、〝世界一のイゴコチ〟を目指し、2013年から「Tokyoイゴコチ論争」を開始し、WEBやアンケート、座談会を通じ約10万件もの声を集め、その寄せられたアイデアを1000個の「イゴゴチ」にまとめて公表している。
建物は地震の揺れを低減させる制震柱と、強風による揺れを軽減する粘性ダンパー・プレースを組み合わせた「デュアル制震構造」となっている。
住戸プランは22階以上が無償のプランセレクトと有償のオーダーチョイスを、27階以上は間取りの一部を自由に変更できる有償のゾーンオーダーを、43階以上は水回り以外の部分の位置が変更できるオーダーメイドが、46階以上は隣接する2つの住戸を一つに合わせられる2戸連結が、49階以上は水回りを含めた部分を含めたプレミアムオーダーメイドが受けられるのが特徴。
春から物件告知を開始し、これまで問い合わせは1万件を突破し、来場者は約3,500件に達している。第1期分譲は9月中旬で、500戸近い戸数を供給するという。オーダーメイドの要望は約150件あり、今後も増加するようだ。億ションは23戸だが、一挙に販売する模様だ。2戸連結についても20件ぐらい検討している人がいるという。地権者のほとんどは65歳以上のようだが、数は未公表だった。
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記者にとっても感慨深いマンションだ。記者はバブル発生前から10年間ぐらい新宿御苑で勤務しており、周辺の飲み屋はほとんど網羅した。現地のある靖国通りの北側のほうは道も狭く、雑多な街だったのでほとんど行かなかったが、それでも地上げ(地上げの関係者は、その土地の権利を引き剥がすという意味で『地揚げ』という言葉を使っていた)については富久町から新宿ゴールデン街、西新宿を取材して歩いた。
地揚げ前は坪200万円もしなかった土地がバブルの絶頂期には坪2,000万円に暴騰し、道路付けに必要な要の土地は坪1億円で売買されていた。国土法の規制区域や監視区域制度を守る地揚げ屋などほとんどいなかった。無法地帯と言ってもよかった(最上恒産が告発されたのはずっと先だ)。
そんな虫食いとなった土地が30年経過して立派なマンションになる。隣接地では10年ぐらい前、同じ再開発マンションを近鉄不動産が分譲したが坪単価は260万円ぐらいだったはずだ。
なぜこれほどまで再開発に時間がかかったのか。関係者が地権者の数を公表しなかったことに、欲と傷の深さが凝縮されているように思った。余談だが、藤圭子さんが地揚げの舞台となったマンションで自殺されたが、記者は地揚げに翻弄された新宿の飲み屋を歌った曲が一番好きだった。
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驚いたことがある。シアターで「第九」の第4楽章がBGMとして流れたのだ。長い記者生活の中で「威風堂々」は何回か経験したことがあるが、第九が流れたシアターなど寡聞にして記憶がない。
幸運にして、この第九を採用することを提案したスタッフの一人、野村不動産住宅事業本部営業企画部営業企画課の佐々木まどかさん(さん付けがぴったりの若い方)に話を聞くことができた。佐々木さんは「私はここで生まれて育ちました。日本一のイゴコチのいいマンションにふさわしい、自信が持てるマンションにぴったりだと思って第九を選びました」と話した。
この言葉に同社のすごさを感じた。あの雑多な街をよくぞ「日本一イゴコチのいい街」としてアピールし、第九をイメージ戦略として採用したものだ。一挙に500戸近くを供給することなど信じられない。「1000のイゴコチ」を詳細に紹介したリーフレットは新聞紙の大きさで全8ページ、コート紙が使用されているので重さは138グラムあった。同社の「桜上水」もこれまた坪330万円ぐらいになるのではないか。
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比較にはならないが、見学会の帰り、御苑の駅前で一建設の「プレシス新宿御苑」(32戸)のモデルルームも見学した。新宿駅から徒歩4分、または新宿三丁目駅から徒歩2分で、坪単価は350万円。4月末から分譲開始されており、残りは1戸。購入者は単身者やDINKSだそうだ。
モデルルーム
東京建物他「BrilliaTower 池袋」わずか7週間で全322戸が完売
池袋駅圏では記録的な売れ行き
「BrilliaTower 池袋」完成予想図
東京建物と首都圏不燃建築公社は9月3日、豊島区本庁舎との一体超高層マンション「BrilliaTower 池袋」(全432戸、分譲戸数322戸)を9 月2 日に全戸契約完売したと発表した。4月にモデルルームをオープンして以来3 千組超の来場者を集め、最高18 倍、平均2.7 倍の競争倍率となり、7 月13 日の第1期分譲から約7 週間で全戸完売となった。
契約者の年齢は、40歳代~50歳代が全体の約50%を占め、家族数は2人が約40%、3人が約25%。職業は会社員が約30%、医師が約17%、会社役員が約15%。
物件の専有面積は31.25~161.26㎡、価格は3,398万~2億998万円(最多価格帯7,800万円台)。
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人気にはなると思っていたが、わずか7週間で完売するとは驚きだ。これまで池袋駅圏でタワーマンションはかなり分譲されているが、300戸超がこれほど速く完売したのは過去に例がない。
単価は記者発表されたとき坪330万円前後とはじいた。物件の質としては最高レベルだが、やはり池袋駅圏で立地、アクセスなどを考えるとこの単価が上限で、近隣物件も苦戦していることからはじき出した単価だった。坪320万円なら即日完売するとみていた。
しかし、実際はもっと高く最終的には340万円ぐらいになったのではないか。億ションはそれほど多くないはずだが、それでもこれほど速く完売したのは初めてだ。
やはり区庁舎との一体開発で、東池袋駅直結、長期優良住宅、耐震性能などに加え、隈研吾氏がデザインを監修したというのも人気を呼んだ要因だろう。大胆な壁面緑化やせせらぎを建物の外周にめぐらすなど、民間のマンションでは考えられないような贅沢な造りが評価されたのだろう。「区庁舎一体」「隈研吾」ブランドが信じられないような人気を呼んだということか。記者発表のとき、隈氏のデザイン監修は「坪当たり10~15万円の価値」があると書いたが、大変失礼なことを書いた。この人気ぶりからすればもっと高い。
明日は「富久町」の記者発表会があるし、来週には「桜上水」の発表会もある。強気な価格設定になるのは間違いない。
マンションの売れ行き バブリーな様相
7月の住宅着工 前年同月比二ケタ、11カ月連続増加
国土交通省は8月30日、平成25年7月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は前年同月比12.0%増、11カ月連続増加の84,459戸となった。内訳は持家が31,475戸(前年同月比11.1%増、11カ月連続増)、貸家が31,012戸(同19.4%増、5カ月連続増)、分譲住宅が21,361戸(同4.3%増、3か月連続増)。分譲住宅の内訳はマンションが9,977戸(同0.6%増、3か月連続増)、一戸建住宅が11,305戸(同8.4%増、11か月連続増)。
首都圏マンションは、東京都が2,762戸(前年同月比37.3%減)、神奈川県が602戸(同63.5%減)、埼玉県が627戸(同283.9%)、千葉県が526戸(同54.7%増)。
今回の結果について国交省は「リーマンショックを受けた大幅な下落(平成21 年度)以降、緩やかな持ち直しの傾向が続いてきたが、このところ、消費マインドの改善等もあり、堅調に推移している」としている。
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マンションの着工戸数は過去最高だった平成2年度は約24.8万戸(首都圏は約8.9万戸)で、バブル崩壊後の最高記録は平成17年度の約23.1万戸(首都圏は約12.5万戸)だ。最近の首都圏マンションは平成23年度が約69,000戸、24年度が約72,000戸で、今年度も前年度並みになると予想される。過去最高だった平成17年度にもバブル期の水準にも届かないので、決して多いわけではない。消費増税の駆け込み需要を見越した着工であり、市場の回復を反映した数字だ。
バブル期は首都圏近郊の各県でリゾートマンションが約1万戸ぐらい着工されていたし、価格が桁違いだったことを別にして戸数そのものに限ってみれば、単身者・DINKS需要が劇的に増加している現在の市場構造からすれば、やや東京都に集中しすぎている傾向はあるが、最近の着工戸数を吸収する力は市場には十分あると見る。
戸数はともかく、もう一つ注視しなければならないのは売れ行きと価格上昇だ。民間の調査機関の調べによると、マンションの売れ行きを計る月間契約率(その月内に分譲されたマンションが月末までに何%売れたかを示すデータ)は80%を越えている。デベロッパーは「売れ残り」の印象をさけるため全体の供給戸数を数回に分けて供給する(期分け)するのが一般的になっているので、高い水準をマークするのは当然だが、それにしてもこのところの売れ行きはバブリーな様相を呈している。月間契約率が80%台というのはバブル期なみの数値だ。坪単価が300万円前後の都心部や準都心部のタワーマンションが数百戸単位で飛ぶように売れている。郊外部の一次取得層向けの物件も総じて好調だ。流れに乗り遅れまいとする消費性向が見て取れる。これは異常だ。
好調な市場を背景に、この秋分譲のマンションが軒並み価格アップするのも懸念材料だ。1年前の相場と比べ少なくとも1割、立地条件の恵まれたものは2割は上昇すると見ている。消費増税の対応策としてローン減税や現金給付も予定されているが、建築費上昇・価格アップで対応策は吹っ飛ぶ。記者は都心・準都心部で坪単価250万円、郊外で坪単価200万円が一般的なサラリーマンの取得限界とみているが、いまは限界点に近づいている。
消費増税がどうなるか分からないが、2020年の東京オリンピック招致が決まれば9分9厘実施が決定されるのではないか。消費を促す、サラリーマンの住宅取得能力を引き上げる具体策を打ち出して欲しい。そうでないと、所得格差の拡大が広がりマンション市場もいびつな市場になる。都心部も郊外部も、大手も中小もバランスよく売れるのが健全な市場だ。
ランドプラン評価され「高度許可」を取得 東急電鉄他「ドレッセ二子新地」
坪単価は隣接のモリモト「二多摩川」より1万円安い坪240万円
「ドレッセ二子新地」
東急電鉄(事業比率66%)、三井不動産レジデンシャル(同33%)、長谷工コーポレーション(同1%)が9月中旬に分譲予定の「ドレッセ二子新地」を見学した。敷地面積約16,000㎡の工場跡地に建設中の全434戸の大規模物件で、坪単価は240万円。多摩川を挟んだ二子玉川駅圏では坪単価は300万円をはるかに突破しており、その比較からして割安感があり、若いDINKS・ファミリーを中心に人気を呼びそうだ。
物件は、東急田園都市線二子新地駅から徒歩6分(二子玉川駅から徒歩14分)、川崎市高津区二子1丁目に位置する15階建て全434戸。今回分譲(戸数未定)の専有面積は58.17~93.91㎡、予定価格は3,800万円台~7,600万円台(最多価格帯4,700万円台)、坪単価は240万円。竣工予定は平成26年12月下旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は東急リバブル、三井不動産レジデンシャル、東急ライフィア。
現地はサンジェルマンのパン工場跡地。敷地面積約16,000㎡の広大な敷地を生かしたランドスケープデザインが最大の特徴だ。敷地全周にわたり敷地境界線から10m以内に建物を建てない、通常より厳しい日影規制をかける、25%を越える緑化率を確保する、敷地にいに認可保育所を設置するなど地域へ貢献する計画が市の「高度許可」が認められたため、建物の高さ制限20mが45mに緩和されている。「高度許可」を得たのは2008年の条例改正以降3件目。
敷地内には14,000本を越える樹木を配し、生物多様性にも配慮して樹種を選び、ハンモック、スウィングベンチ、井戸ポンプなど子どもの遊び場も設置している。
建物は南向きを中心に3棟構成で、サンジェルマンのパン生地の提供を受けた「ベーカリーカフェ」、木づかい運動に参加する「ブックラウンジ」なども設ける。住戸プランは3戸1、4戸1エレベータを採用した両面バルコニータイプも用意。モデルルームは東急電鉄が「青葉台」の万で試験的に採用して好評だった「つながリビング」を採用している。床は直床だが、その代わり天井高は2600ミリを確保している。
第1期では200戸ぐらいの供給を予定しているようで、人気を呼びそうだ。
中庭
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このマンションは必ず見学しようと思っていた。モリモトが昨年、隣接地でマンションを分譲しており、そのときすでに東急電鉄がマンションを分譲する旨の看板がかかっており、敷地の外周部にはケヤキなどの巨木が敷地の外周部に植わっていた。既存樹を生かせば素晴らしいマンションになると期待していた。
その巨木は残念ながらマンション建設のために伐採されたようだが、空地率を70%確保して新たな植栽計画により緑化を図っているのが評価できる。
来場者の50%以上は35歳以下のDINKS・ファミリーというのも納得できる。歩く人は少ないようだが、隣駅の二子玉川まで歩こうと思えば歩けるのも魅力だろう。何しろ、現在分譲中の東急不動産「ブランズ二子玉川」が坪360万円であるように、二子玉川駅圏は駅近なら坪単価は350万円を突破する。玉川高島屋など商業施設が集積した急行停車駅と各駅停車駅、世田谷区と川崎市の違いとはいえ、坪で100万円の差は大きい。二子新地は若い女性に人気があるそうだが、実利を重視するのは賢明な選択だと思う。
単価設定はやや強気のような気がするが、今秋分譲は軒並み価格アップしているので納得だ。モリモトは241万円だったが瞬く間に売れた。それより規模が大きく、共用施設が充実しているのだからこの設定になったのだろう。
モデルルーム リビング