「関西」電鉄会社の矜持を見た 京阪電鉄・京阪電鉄不動産「品川タワーレジデンス」
「品川タワーレジデンス」
京阪電鉄・京阪電鉄不動産の「品川タワーレジデンス」を見学した。品川がリニア新幹線の始発駅となることが正式に発表され、品川-田町間のJR品川車両基地再開発が「アジアヘッドクォーター特区」にも選ばれるなど、将来性が期待されるエリアにあり、アドレスが「高輪三丁目」の初のタワーマンションだ。
物件は、JR品川駅から徒歩6分、または都営浅草線泉岳寺駅から徒歩7分、港区高輪三丁目に位置する25階建て125戸の規模。専有面積は30.00~87.37㎡、現在分譲中の住戸の最多価格帯は8,800万円台。坪単価は385万円。設計・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は2015年2月下旬。販売代理は三井不動産レジデンシャル。
現地は、品川駅高輪口から第一京浜道路を北に向かった「高輪三丁目」の一角。南側の借景にはグランドプリンス高輪、SHINAGAWA GOOSなどのホテル群や邸宅街が望める。建物は制震構造を採用し、外観は見る方角によって、時間の経過とともに表情が異なるように工夫し、グラデーションを巧に利用している。居室の天井高は最高約2.7m。標準階はワンフロア5~6戸。角住戸比率は76%。これまで80戸が販売済み。
京阪電鉄不動産首都圏事業部マネージャー・髙橋和寿氏は「仕入れたのは2年前。最初は大手とのJVも考えたが、私たちの矜持を見せようと親会社の京阪電鉄と共同で分譲することになった。商品開発には力を入れた。リニア新幹線の効果もあるが、すでに第1期で80戸が売れているようにお客様に評価されたと考えている」と話した。
DEN
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モデルルームを見てすぐ電鉄会社のマンションとしては初めて大手と互角に戦える物件だと思った。
専有部のインテリア・内装デザインコーディネートは、髙橋氏が「一目見てほれ込んだ」という鈴木ふじゑ氏だ。鈴木氏の「作品」は記者も数え切れないほど見ているが、本物志向でえもいわれぬ色使いに特色がある。57㎡のコンパクトタイプでは主寝室(約6.2畳大)に隣接した約2.8㎡のDENの提案がいい。
最高価格1億2,000万円の87㎡では、幅約1.5m、奥行き約5m、壁面突き板仕様の玄関・ホールが圧巻。57㎡のタイプ20戸と最高価格住戸を含む80戸が完売というのも納得だ。
リビングダイニング
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首都圏の電鉄会社はみんな立派な街をつくってきた。ところが、分譲マンションとなると、記憶に残るいいマンションはほとんどない。大手デベロッパーとのJVで〝ぶら下がり〟として名を連ねているぐらいだ。最近でいえば、近鉄不動産の「大宮」が出色の出来だったが、これも鹿島建設とのJVだ。西武線を中心に水準以上のマンションを供給していた西武不動産は分譲から撤退してしまった。社名もなくなった。情けない限りだ。
そんな事情があるので、今回見学した「品川」もそれほど期待はしていなかった。そもそも京阪電鉄も京阪電鉄不動産もよく知らなかった。大阪や京都には多くはないが取材や旅行で行ってはいるが、京阪電車に乗った記憶はない。中ノ島、枚方、東福寺、祇園四条などにはどうやって行ったのだろう。一般のユーザーも記者と同じではないか。「京都タワー」は知っていても、それが京阪電鉄のホテルだと知っている人は少ないのではないか。
それもそのはずだ。過去、関西でプロ野球球団を経営した「近鉄」「阪急」「阪神」「南海」は日本中に強烈な印象を残しているが、「京阪」は全国へのブランド展開を行ってこなかった。
記者が見学取材している「戸田公園」「聖蹟桜ヶ丘」のマンションも髙橋氏に指摘されるまで、同社が分譲したマンションであることを忘れていた。
いま考えてみると、知名度が低いからこそそのハンディを跳ね返すためにも「矜持を込めた」商品企画にしたのに違いない。関西圏でマンション供給第3位の力を首都圏で見せた。
同社は来春、王子駅前の一等地で近鉄不動産と共同で29階建てタワーマンション285戸を分譲するという。見るのが楽しみだ。社員約100人のうち8割がプロパーという他の電鉄(系)会社にない企画力を見せてくれるのではないか。東京の営業所長である髙橋氏は関西出身だが、あるゼネコンの経験を含めて東京勤務20年の大ベテランだ。
キッチン
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最後に坪単価について。道すがら考えた。高輪の住居系なら坪400万円をはるかに越えるが、第一京浜に面していることから坪400万円は越えないと予想した。しかし、リニアや再開発の将来性を先取りすると400万円をはるかに越えると思った。
モデルルームを見学している途中で「単価はいくらですか」と聞いたら、逆に髙橋氏から「いくらだと思いますか」と聞かれたので、とっさに「坪420万円」と、リップサービスの意味も込めて答えた。385万円は極めてリーズナブルだし、将来性を考えたら割安感のあるマンションだ。
87㎡のモデルルーム玄関
マンション価格上昇は序の口 竣工時期の平準化取り組み急げ
「当社は相対取引ができる計画的な大型案件が中心で、闇雲に用地争奪戦に加わるようなことはしない。第2四半期の決算数字を見る限りでは建築費の上昇は顕在化していない」-三井不動産の決算説明会で、同社の経理部経理グループ長・富樫烈氏はこう語った。
しかし、その一方で「業界では職人さんの引き抜き合戦が始まっている。待遇を改善するなどして安定的に職人さんを確保することが課題となってくる。価格に転嫁しなくても済む努力が必要」(旭化成ホームズ・平居正仁社長)「郊外部では坪150万円以下では難しくなってきた。職人不足は深刻で、リーマン・ショック前の『新価格』どころか、ゼネコンが積年の恨みつらみを晴らす『倍返し』価格になるかもしれない」(あるデベロッパー)「建築費は上がるし、大手は設備仕様を上げているので、われわれ中堅は苦しい。大手の一人勝ちになるのでは」(ある中堅デベロッパー販売責任者)など、先行きの建築費・価格上昇を懸念する声が噴出している。
記者も最近の価格上昇は序章、序の口に過ぎないと思う。マンションの単価は2~3年前までは、「えっ、こんなに安くできるの」という物件がかなり見られたが、最近、とくに今秋の物件は「えっ、そんなに高いの? 」と驚く物件ばかりだ。
今後10年間で200兆円の規模でインフラなどの基盤整備を進めるという「国土強靭化」を背景に震災復興に伴う公共工事、東京オリンピック、リニア、都市再開発などが目白押しだ。リニア建設費は10兆円と言われているし、これから本格的に始まる復興区画整理事業は56カ所で総面積は3,000haを越える。数千億円規模だ。ビッグプロジェクトに大量の土木・建設技能労働者が投入されれば、中小規模マンションなどははじき出されるのは火を見るより明らかだ。土地の仕入れはしたものの、着工が出来ないという「在庫倒産」も出てくるのではないか。
そのような事態を避けるため、竣工時期の平準化は喫緊の課題だと思う。前出の三井不動産の場合、第2四半期のマンション計上戸数は1,555戸で、通期計上予定の6,450戸に対する割合は24.1%でしかない。富樫氏は「たまたま今期は下半期に竣工・引渡しが集中したため」と説明したが、マンションの竣工が期末に集中するのは常識だ。
そこで、現在分譲中のマンション200物件の竣工時期を調べてみた。もっとも多いのが2月で45物件、以下、3月32物件、1月24物件、11月22物件の順だ。もっとも少ないのが5月の6物件だった。四半期ごとでは第4四半期が104物件(52.0%)と過半数に達し、以下第3四半期49物件(24.5%)、第1四半期24物件(12.0%)、第2四半期23物件(11.5%)となっている。
下半期に竣工・引渡しが集中しているのは、購入者の入居希望時期と密接な関係がある。単身者やDINKSはともかく、子育て世帯にとっては子ども転校は学年途中は避け、年度初めの進級時に行ないたいという親心が働き、デベロッパーもその意向を汲んで竣工を年度末に集中してきた経緯がある。
竣工時期と売れ行き、企業規模や施工会社などとの相関関係を分析しないといけない部分があるが、下期に竣工することがマンション単価を引き上げる要因になっているのは間違いない。
この問題について、三井不動産レジデンシャルはすでに手を打っているようで、今年4月、建築工事発注機能を強化するため「建設統括部」を新設した。三井不動産グループの三井ホームも「工期の平準化に力を入れていく」(市川俊英社長)という。
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同時に進めなければならないのは、建設業が抱える重層下請け構造の改善だ。
建設労働者は景気の安全弁的な役割を背負わせていることから、賃金が抑えられ、若年入職者が激減している。建設技能労働者52万人のうち60歳以上は約18%にのぼり、10年後には大半が引退するといわれている。京都工芸繊維大学准教授・矢ケ崎善太郎氏は「日本の職人たちの技は世界に誇る無形の文化財でもある」と語ったが、現実の待遇はまるで正反対だ。
この命題はなんとも皮肉なパラドックスとしてわれわれに突きつけるが、関係者は知恵を絞って明解な解答を導き出して欲しい。
野村不動産「プラウド立川マークス」 駅前再開発に近接
「プラウド立川マークス」
野村不動産が11月下旬に分譲する「プラウド立川マークス」を見学した。立川駅北口から徒歩4分、坪単価は200万円台半ばと安くはないが、同社が参画する駅前再開発エリアにも近接しており、商品企画も優れているマンションだ。
物件は、JR中央線・南武線・青梅線「立川」駅から徒歩4分、または多摩都市モノレール線「立川北」駅から徒歩3分、立川市曙町一丁目に位置する14階建て68戸の規模。専有面積は62.48 ~83.61㎡、価格は未定だが、坪単価は200万円台半ばになる模様。竣工予定は平成27年5月中旬。施工は安藤・間。
現地は、伊勢丹、高島屋などの大型商業施設やホテル、図書館などが集積する商業エリアと、駅前の「第一デパート」跡地などで開発が進む大規模再開発事業エリアに近接した駅近であるのが特徴。再開発事業には、同社が32階建て319戸のマンションを建設するほか、ヤマダ電機などの商業施設、公益施設が入居することになっている。また、来春開業予定の都内初の「IKEA立川」が来春開業するほか、立川駅圏には「ららぽーと(業態想定)」も計画されている。
現地は南側の道路を挟んでビルなどが建っており眺望が優れているとはいえないが、建物の商品企画がいい。内廊下方式で基準階は6戸構成。ワイドスパンと全戸角住戸の多面採光が特徴。バルコニーにはガラス手すりのほか、外からの目線をさえぎり通風にも配慮したアルミルーバーとガラス手すりを組み合わせたオリジナルの手すりなどを採用している。
設備仕様は、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナ、タンクレストイレなどが標準装備。モデルルームは、木目調の格子窓付き多目的ルームの提案がいい。
マンションギャラリー所長・相馬裕太氏は、「北口の曙町は駅南口の柴崎町とともに人気のエリア。モデルルームの出来もいい」と早期完売に自信を見せた。
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今回の見学取材は同社広報の〝お勧め〟マンションで、広報マンによると相馬氏は担当するマンションがことごとく即日完売しており、若手のホープと紹介された。相馬氏とは坪単価350万円で即日完売した昨年分譲の「吉祥寺御殿山HOUSE」でも説明を受けているが、その後「プラウド王子本町」122戸(坪単価275万円)、「プラウド王子本町ディアージュ」37戸(坪単価259万円)も即日完売したのだという。
さて、分譲単価。相馬氏は「現場を100回は歩いた」というが、記者はそれほどでもないが少しは知っている。「第一デパート」はかなり古く、表通りの街並みもかなり古い。モノレールの東側と西側では街並みは異なるので、坪単価は230万~250万円とはじいた。
相馬氏には鎌をかける意味で「坪230万円でしょ」と声をかけたら「もう少し上です」と返された。予想は外れた。
いま、わが街、多摩センターの駅近マンションは坪単価200万円が相場だ。新宿から同じ距離圏の立川に坪50万円もの差をつけられている現実を見せられショックを受けた。多摩市は多摩地域の都市間競争に大きく後れを取っている。
立地・設備仕様ともいい三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス多摩ニュータウン永山」
「ザ・パークハウス多摩ニュータウン永山」完成予想図
三菱地所レジデンスが11月に分譲する「ザ・パークハウス多摩ニュータウン永山」を見学した。永山の一等地に建つマンションで、同社の新しい設備仕様が盛り込まれており、価格もリーズナブルなことから人気を呼びそうだ。
物件は、京王電鉄相模原線京王永山駅・小田急電鉄多摩線小田急永山駅から徒歩5分、多摩市永山2丁目に位置する11階建て全156戸。専有面積は68.78~89.15㎡、1期(107戸)の価格は2,948万~5,588万円(最多価格帯3,600万円台)、坪単価は170万円台。竣工予定は平成26月11月中旬。施工は東急建設。登録受付は11月9日(土)~。抽選は11月16日(土)。
現地は、商業施設が建ち並ぶ駅前から5分、住居系エリアの入り口に立地。敷地南側には小学校がある。昭和40年代の開発当初はともかく、過去これほど駅に近い民間マンションは分譲されたことがない。住宅地としては一等地といえる。
建物は南向きが中心でシンメトリーなデザインを採用。分節手法を採用することで単調にならないよう工夫を凝らし、バルコニーのガラス手すりは下層階から上層階に向かって薄くなっていくグラデーションを施している。
設備仕様は、同社がすべてのマンションに標準化しつつあるキッチン御影石天板、食洗機、ディスポーザー、ミストサウナ、ソフトクローズ機能付き玄関収納、背の高さに合わせて調整できる2カ所の浴室スライドバーなどをフル装備している。
モデルルーム
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多摩市はわが街だ。我田引水のところがあるかもしれないが、住むにはいいところだ。やや坂はあるが、歩道は歩車分離されており駅まで信号などを渡らなくて済む。買い物も便利だし、緑も豊富だ。
問題は価格だ。見学したときは価格が決まっておらず、販売担当者から具体的な単価は聞けなかった。そこで「175万から180万円ぐらいでしょうが、180万円はないはず」と聞いたら、ほぼその通りだった。東京建物の「Brillia」は駅からマンション入り口まで10分の表示で単価は150万円台だったが、立地はこちらのほうが断然いい。単価は極めてリーズナブルなものだ。
本音を言えば多摩ニュータウンのポテンシャルを考えればもっと高くてもいいと考えているが、現状では永山は180万円の壁があると思う。同社は多摩センターでも駅近マンションを計画しているが、こちらは坪200万円の壁を打ち破ることができるかどうか。記者が商品企画担当者だったら、近隣居住者が見たこともないような最高の設備仕様を盛り込んで坪200万円の壁に挑戦する。デベロッパーは街のポテンシャルを引き上げる役割も担っているからだ。
旭化成ホームズ 「宇田川町住宅」建て替え竣工見学会
「アトラス渋谷公園通り」完成予想図
角を矯めて牛を殺すことにならないか総合設計制度改正
旭化成ホームズは10月29日、渋谷区の「宇田川町住宅」の建て替え事業「アトラス渋谷公園通り」が竣工したのに伴い、報道陣向けに見学会を行った。
物件は、渋谷駅から徒歩5分、渋谷区宇田川町3の敷地面積約870㎡の商業地域に位置する13階建て49戸(店舗1)。専有面積は約33~104㎡。坪単価は420~430万円。
従前建物は、昭和36年に竣工した東京都住宅供給公社が分譲した店舗併用マンションで、地下1~3階を同公社が所有、住戸(約58㎡)は4~7階で全16戸。エレベータはなし。
平成15年から建て替えの計画が進められたが、合意形成ができず検討がストップ。同18年、有志が同社の建て替えセミナーに参加したことがきっかけで再び建て替えの検討が始まり、同21年6月、同社が事業協力者としてプレゼンを行った3社の中から選定された。同22年9月、全員同意で建て替え決議を行い、同年12月、組合員全員が再取得することが決まった。
同社は当初、建基法案と総合設計案を提示したが、平成22年に都の総合設計制度改正が行われることになっており、適用の可否、容積率の割り増し、公開空地の確保や非住宅面積の制限が厳しくなることなど上に伸ばすメリットがなくなったとして断念した。
また、同社は、権利者が17人と少ないことから、複数の議決権を持つ権利者が建て替え決議に大きな影響を及ぼすこと、商業立地の店舗併存マンションは更地での売却、商業ビルへの建て替えのほうが「最有効活用」となる場合が少なくないこと、テナントとの交渉に時間がかかるなどの課題もあると説明した。
エントランス
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計画は聞いていたが、坪単価420~430万円で分譲済みとは知らなかった。同じ公社住宅の建て替えマンションとして話題を集めた「渋谷美竹」より少し遅れて分譲された。こちらは「公園通り」に面しており、隣は東武ホテル、その先は渋谷区役所、NHKなどがある一等地。記者は坪単価500万円でも売れるのではないかと思った。リーマンショック前では坪500万円のマンションが近くで分譲されており、高額を除き人気になった。
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総合設計制度を活用しなかったというのも驚いた。都は平成22年に同制度を改正。単に公開空地の面積の確保だけでなく、緑化率などの質や住宅の質、環境性能などが問われるようになった。
今回のマンションは敷地面積が小さく要綱が改正される前で、その概要が明確でなかったために同制度の活用を見送ったようだ。しかし、総合設計制度は良好な街づくり、住宅供給を促すための制度だ。権利者が基準法を選択したほうがいいと判断される要綱改正は、制度の趣旨からしていかがなものか。
都の総合設計制度の適用案件は毎年20~30件あったが、要綱が改正されたあとの平成23年度も24年度もそれぞれ3件しかないのは気になる。角を矯めて牛を殺すことにならないのか。
屋上テラス
「70㎡でも75~80㎡と同様の居住性能」 住友不動産「武蔵小杉」販売へ
モデルルーム
住友不動産は10月24日、武蔵小杉の大規模免震マンション「シティタワー武蔵小杉」の記者発表・見学会を行い、11 月2 日(土)にマンションギャラリーをオープン、事前案内会を開始すると発表した。
物件は、東急東横線・目黒線武蔵小杉駅から徒歩4 分、またはJR横須賀線・湘南新宿ライン武蔵小杉駅から徒歩4 分、川崎市中原区中丸子に位置する53階建て全800戸。専有面積は55.23~72.35㎡、竣工予定は平成28 年1 月中旬。設計・施工は前田建設工業。
物件の特徴は、①“武蔵小杉センターゾーン”の大型開発ファイナルステージ「新丸子東3 丁目南部地区」に立地②東急線、JR 横須賀・湘南新宿ラインの「武蔵小杉」駅両方から徒歩4 分③大型商業施設「アリオ武蔵小杉(仮称)」に隣接④〝日本初〟のダイナミックパノラマウィンドウ+アウトフレーム工法を実現⑤水回りを含む間取りとインテリアカラーが無償で選択できる「カスタムオーダーマンション」対応――など。「周辺に多い白やベージュとは一線を画した縦ラインを強調したダークグレー」の外観も特徴だ。
発表会に臨んだ同社住宅分譲事業本部神奈川事業部長・雲見隆行氏は、特徴について「第三世代のタワーマンション」であることを強調した。同氏によると、「第一世代は従来の思考に基づく高さを競うタワー型」とし、「第二世代は、第一の商品企画の反省に基づきピクチャーウインドウの採用により眺望を重視する進化型」と説明。そして「第三世代とは、眺望重視をさらに発展させ、住戸の間取りに工夫を加え、防災も充実させたもの」とと定義づけした。「自慢のタワーマンション」とも語った。
現在まで問い合わせは5,000件を超えている。第1期分譲は来春。価格は公表されなかった。
外観
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記者が注目したのは「第三世代のタワーマンション」というコンセプトだ。免震もアウトフレームも珍しくはないが、同社は「我が国初」として「ダイナミックパノラマウィンドウ+アウトフレーム工法」を紹介した。専有面積は最大でも72㎡しかなく、中心は70㎡だが、「アウトフレームとワイドスパン(約12m)を採用することで廊下面積を少なくし、専有面積(壁心)に含まれる壁の面積を少なくすることで実質的に75~80㎡ぐらいのマンションと同じ居住空間が確保できた」という点だ。
比較するものによって異なってくるが、これはその通りだ。間口の狭いマンションなどは廊下面積だけで畳2畳分(約3.3㎡)は違ってくる。廊下がないマンションは味気ないが、専有面積圧縮型には効果がある。大きな間取りタイプをなくしたのは、武蔵小杉のマーケットを考えてのことだろう。
これが奏功するかどうか注目だ。
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もう一つは、どうでもいいことかもしれないが、発表会に参加した記者の数だ。約40人が集まった。さいきん、大型の共同事業マンションではこれぐらいの人数が集まるが、同社1社単独マンションでこれほどたくさん記者が詰めかけたマンションは少ないはずだ。同社に聞いたら「豊洲かワールドシティクラスと同様で過去最多かもしれない」ということだった。
最近、三井不動産レジデンシャルが新川崎駅前のタワーマンションの見学会を行ったが、台風の影響もあってか記者の数は20人ぐらいだった。「武蔵小杉」と「新川崎」はかなり単価差があるが、競合するかどうか。住友不動産の物件の単価は「新川崎」とは坪30万円ぐらい高く、野村不動産の280万円を超える285万円ぐらいになると予測したがどうか。
参考までに。言うまでもないことだが、「新川崎」と今回の「武蔵小杉」の記者の数の差は物件そのものとは全然関係ない。記者も含めて質が問われる時代だ。
用地取得から9年…住友不動産「スカイフォレストレジデンス」分譲へ
「スカイフォレストレジデンス」完成予想図
住友不動産は10月12日、新宿区で開発を進めている大規模複合開発「新宿スカイフォレスト」内の免震マンション「スカイフォレストレジデンス」のモデルルームを公開した。
物件は、JR 山手線高田馬場駅から徒歩6 分、新宿区大久保三丁目に位置する26階建て全361戸の規模。41.86~81.74兵㎡。価格は未定。竣工予定は平成26 年12 月下旬。設計・施工は大林組。
「新宿スカイフォレスト」は、JR東日本社宅跡地の約2.4haに今回分譲される「スカイフォレストレジデンス」のほか、37階建てオフィス棟(上層部賃貸住宅)、広場などが配置されるA-1 街区、生活利便施設などからなるA-3 街区で構成。
「スカイフォレストレジデンス」は、白と黒を基調としたガラスを多用したデザインで、建物の床下を鉄筋コンクリートで固め、地表近くの地盤で建物を支える「直接基礎工法」とした上で免震構造を採用。
住戸は1LDKから3LDKまで多用なライフスタイルに対応し、水周りの移動も可能な「カスタムオーダーマンション」システムを一部に採用。建物完成後でもプランとインテリアカラーの選択ができる住戸も設定する。天井高は約2.6m。駐車場は地下方式。
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今回のマンションで注目されるのは、用地取得から販売まで実に9年も経過していることだ。
同社マンション事業本部東京事業所営業課営業一係主任・大屋康一郎氏は開発の経緯について次のように説明した。
用地をJR東日本から取得したのは9年前。当初は30階建てと15階建てのマンションのみを計画していた。ところが、新宿区が建築物の高さ規制を40mに強化する動きが表面化(都市計画決定は平成18年)。計画の見直しが迫られた。そこで同社は周辺の地権者などの協力を得て高度地区の特例を受けられる地区計画エリアとして指定されるようにした。
それが冒頭の計画で、オフィスタワーは150m、マンションは90mとする緩和措置が盛られた地区計画の都市計画決定がされたのが平成22年3月。その直後、東日本大震災が起き、同社は当初の予定だった耐震構造から免震構造に変更するため設計のやり直しを行なった。
用地取得から販売まで9年もかかったのはこのためだ。地区計画は、名称や位置、区域を定めて建築物の用途や絶対高さ、建ぺい率、容積率、意匠・デザインなどを詳細に決めて、市町村が施行する制度だ。地域の街づくりを建基法、都市計画法で担保するのに有効な手法とされる。全国の自治体が高さ規制を強化するきっかけとなった国立市の場合は、公告縦覧から議会での可決までわずか2カ月だった。
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分譲単価について大屋氏は「決まっていない」と話したが、比較対象となるのは同社の池袋の「グランドミレーニア」や新宿・富久町の「Comfort Tower」だろう。何に価値を求めるかだが、記者は住宅地のマンションとすれば、戸山公園にも隣接している今回の「スカイフォレストレジデンス」が断然いいと思う。坪単価は350万円ぐらいになるのではないか。
参考までに。線路を挟んだ対面には〝民活第一号マンション〟と呼ばれた今回のマンションと同じJRの社宅跡地マンション「西戸山タワーホウムズ」(576戸)がある。バブル発生の昭和61年に分譲され、来場者約6万人、申込者約2.5万人に達した空前絶後のマンションだ。真夏の炎天下、登録申し込み者が西戸山公園を何重にも取り巻き、申し込みを終えるまで数時間かかったのを覚えている。確か坪単価は260万円ぐらいではなかったか。
好調スタート 東建・東武「ブリリアときわ台ソライエレジデンス」
「ブリリアときわ台ソライエレジデンス」完成予想図
東京建物(事業比率60%)と東武鉄道(同40%)のJVマンション「ブリリアときわ台ソライエレジデンス」を見学した。太陽光発電、蓄電池、MEMSなどを採用し、ランドスケープデザインに力をいれた全329戸の大型物件だ。
物件は、東武東上線ときわ台駅から徒歩10分、板橋区前野町2丁目に位置する15階建て329戸の規模。専有面積は61.05~106.76㎡、現在分譲中の住戸(14戸)の価格は4,031万~8,105万円(最多価格帯4,500万円台)。坪単価は213万円。竣工予定は平成26年10月上旬。設計・施工は三井住友建設。販売代理は東京建物不動産販売、東武プロパティーズ。
現地は、「板橋の田園調布」と呼ばれる常盤台住宅地を抜けた用途地域・工業地域の一角だが、マンション化も進んでおり、嫌悪施設はそれほど多くない。
建物は、バルコニー側サッシ上部に梁のない三井住友建設の「SuKKiT3」構法を採用し、アウトフレームとインフレームを組み合わせた分節手法を用いることでデザインに工夫を凝らしている。
ランドスケープデザインでは、L型の建物の背後に常盤台住宅地の象徴であるクルドサックとシラカシのシンボルツリーを配しているほか、「エントランスガーデン」「スカイガーデン」「シーズンパーキング」など敷地内の緑化に力を入れている。
商品企画では、太陽光発電、蓄電池、MEMSなどを採用し、食洗機、ユーティリティシンクなどが無償で選べるようになっているのが特徴。
第1期分譲として130戸が9月に分譲され、現在、約110戸が契約・申込済み。販売を担当する東建不販住宅販売部課長代理・加覧憲一氏は「まずは好調な滑り出し。防犯、防災、コミュニティの取り組みも評価されている」と話した。
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今秋分譲マンションが軒並み単価上昇していることから、ここも坪単価は230万円ぐらいになるのではと思ったが、213万円というから妥当な単価に落ち着いた。駅からの距離を考えればリーズナブルの単価だろうと思う。設備仕様なども水準以上だ。
ひとつだけ注文を付けるとすれば、モデルルームのアクセントに用いられている観葉植物や草花だ。
これはもちろん価格には含まれないのでとやかく言うつもりはないが、立派なニッチに壁掛け型の造花が飾られていたのにはがっかりした。
スタッフによると、「最初のデザイナーによるモデルルームは緑が少なかったので、生花を増やした」結果、生花と造花がほぼ半分ずつになったそうだ。ならばすべて生花に変えてはどうか。秋の七草でも飾ったら感動ものだ。
行きも帰りも販売事務所エントランスのキンモクセイが甘い香りを放っていただけに残念だ。
この前見学した伊藤忠都市開発の「クレヴィア目黒不動前」ではサントリーの「ミドリエ」が採用されていた。分譲単価は100万円以上異なるが、安い単価のマンションだからモデルルームの草花は造花でいいということにはならないはずだ。
マンションの間取りは「自分で作る」時代へ
「ツクリエ」を採用した伊藤忠都市開発「多摩平」が好調
〝ライフスタイル・ディベロッパー〟を掲げるアート・ボックスの森肇社長から定期的に送られるメールマガジン「TRENDS EYE」の最新号のテーマは「マドリスト」だった。
メールマガジンでは、「住宅の間取りを見て楽しむ人を“マドリスト”、実際に間取りを作っちゃう人を“マドラー”と呼ぶそうで、そんな間取り図大好きな人間が増えている。最近、実在する変な間取り図ばかりを紹介するブログやサイト、書籍までもが存在し、“間取り図オフ会”まで開催されているという。今やすっかり間取りは面白カテゴリーになっているのだ。現在13万人ものメンバーがいるmixiの『「間取り図大好き!』コミュニティでは、“マドリスト”たちが集まって、間取りを楽しむ鑑賞イベントなどが開かれている。実在しうるヘンな間取り図を収集して、その生活を想像・批判したり、感動したりするのが主な活動だが、回を重ねる毎に参加人数が増えて、『間取り図大好き!』(扶桑社)として書籍化もされた」とある。
このようなブームの観を呈している状況について森社長は、「今や中古物件のリフォームが主流なのだ。限られた国土で、特に都心の矮小住宅事情の中で、中古物件の間取りを工夫して少しでも広く暮らしたいという気持ちから、間取り図がもはや癒しの存在になっているようだ。一方で、やっと日本もマンション業者の建築条件のお仕着せではなく、自らの住宅ライフスタイルをユーザーから創り上げようとする時代になったとも言える」と指摘する。
◇ ◆ ◇
記者も仕事柄、マンションや戸建ての間取りはよくチェックする。紹介されているような一般の方が書かれた間取りに関する書籍は手に取るだけで買ったことはないが、一般の方が住宅の間取りに関心を持たれるのは結構なことだとおもう。生活者の視点こそが、森社長がいうデベロッパーの〝お仕着せ〟の間取りを変える力になると思う。
しかし、最近のデベロッパーは〝お仕着せ〟のプランばかりを提供しているわけではない。いい例が、最近分譲された伊藤忠都市開発「クレヴィア豊田多摩平の森RESIDENS」だ。「多摩平」は、中央線豊田駅から徒歩5分の全440戸の大規模マンションで、先に分譲された1期231戸も好調な売れ行きを見せている。
このマンションでは、〝作る+家〟という発想から生まれた「TSUKURIE(ツクリエ)」が採用されている。現地のマンションギャラリーに備え付けられているパソコンで質問に答えるだけで、ライフスタイルにあったタイプを選別し、提案してくれるものだ。居室の位置や収納、仕様・カラーリングも自由自在だ。最大で500通り以上のプラン選択が可能だ。何よりも操作が簡単なのがよく、来場者の反応もいいと聞いた。
もともと同社は間取り・収納についてはかなり以前からユニークな提案を行ってきた。最先端のデベロッパーといえるかもしれない。それが今回の新発想に結び付いた。
同じようなシステムを採用しているところも増えている。野村不動産のオーダーメイドマンションもそうだし、住友不動産のカスタムオーダーマンション、三菱地所レジデンスの「スマートセレクト構想」「スタイルハウス」などがそうだ。最近では、大成有楽不動産が「新中野」でライフスタイルに応じて間取りプランが変更できるマンションを分譲した。他のデベロッパーも間取り変更、カラーセレクトなどを用意し、ユーザーの希望に柔軟に対応している。一昨日見た三井不動産レジデンシャル「パークタワー新川崎」の間取りは実に動線がよくできていた。
「マドリスト」のように見て楽しむ時代から、マンション業界は「自分で間取りを作る」時代に変わりつつある。
参考までに。間取りに関する書籍では故・宮脇檀氏のエッセーが新潮文庫から発行されているし、書名は忘れたが、小説に出てくる家の間取りを再現したものも面白く読んだ。
相鉄不動産 調布駅前の一等地で再開発マンション
「グレーシア調布」完成予想図
単価は280万円 「パルコ」に隣接 歩道空間も確保
相鉄不動産が近く分譲開始する「グレーシア調布」を見学した。京王線の総延長約3.7㎞に及ぶ地下化と再開発事業により駅周辺が一変する「調布駅」前の一等地のランドマークマンションだ。分譲単価も極めて割安感がある。
物件は、京王線調布駅から徒歩2分、調布市小島町一丁目に位置する15階建て全120戸(非分譲22戸含む)。専有面積は48.81~74.81㎡、価格は4,000万円台の半ば~6,000万円台の後半、坪単価は280万円。竣工予定は平成27年5月末。設計・監理はタカハ都市科学研究所。施工は大成建設。販売代理は大京、相鉄不動産販売。
最大の特徴は、調布市の都市計画マスタープランに基づいて建設される再開発マンションであることだ。京王線の地下化に伴い、駅周辺の再開発は歩道空間の確保、建物の高さ制限、商業施設の用途規制などが市の指導により行われている。
マンションが建つ地域は街づくりのガイドラインに沿って都市型住宅の建設を促進するエリアで、道路拡幅なども併せて行われる。マンションの1~3階までに予定されている商業施設や、マンションの目の前に予定されている京王電鉄の4階建て商業ビル計画も〝嫌悪施設〟が入居することはない。将来にわたって一定の住環境が確保される計画となっているのが最大の特徴だ。
建物は「パルコ」に隣接。基壇部の外壁はガラスカーテンウォールと御影石で構成。4階以上の住宅ゾーンは白を基調のスタイリッシュな外観となっている。
住居は南向きの70㎡台の3LDKと西向きの70㎡台の3LDKが中心で、西向き住戸の40~50㎡台は2LDKで構成されているが多くは地権者向けとなる。設備仕様は、住居内の水すべてを浄水する相鉄ピュアウォーターの「良水工房」が標準装備されるほか、グレードアップ仕様のレンジフード、ミストサウナが採用される。キッチンカウンターはフィオレストーンで、玄関収納、引き戸などはすべてソフトクローズ機能付き。
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記者の個人的なことを言えば、結婚してすぐに住んだのがこの調布(布田)だった。バブルのころ、調布にマンションを買おうと思ったが、坪単価は500万円にも跳ね上がった。20坪で億ションだ。それで断念したわけだが、京王線に住むなら断然調布がいい。
このマンションについては、以前から見学したいと思っていたが、相鉄不動産の担当者から「まだ価格も発表できない。価格が決まる9月末まで待ってほしい」と言われたため見学を先延ばししてきた。
単価は極めて割安感がある。記者は坪300万円を突破しても全然驚かない。京王線全体に言えることだが、とりわけ「調布」は他の沿線と比べ割負けしている。しかし、あと5年もすれば街並みは一変する。足りないのはホテル機能ぐらいではないか。
記者が言わなくとも、ユーザーも将来性を先取りしていて、価格も割安であることが分かっているようだ。同社はあまり宣伝もしてこなかったようだが、調布市民を中心に申し込みが殺到するのは間違いない。2DLKなどは数倍の競争率になるのではないか。
抽選に外れたら、駅南側で住友不動産が分譲を予定している同じ再開発の16階建ての161戸(専有面積41~70㎡)をお勧めだ。単価は同じになるのか高くなるのか。安くなることはまずないとみた。こちらは「東急ストア」が目の前だ。
駅前(完成予想図)