東急不動産HD社長・大隈郁仁氏が東急不動産社長を兼務 東急不・植村社長は副会長へ
大隈氏
東急不動産ホールディングスは3月8日、グループマネジメント体制を強化するため機構改革と執行役員体制制度を変更すると発表した。これに伴い、4月1日付で同社代表取締役社長・大隈郁仁氏が東急不動産の代表取締役を兼務する。
東急不動産代表取締役社長・植村仁氏は東急不動産ホールディングス執行役員兼東急不動産代表取締役副会長に就任する。
大隈氏は、昭和33年8月生まれ。広島県出身。昭和57年3月、横浜市立大学卒、同年4月、東急不動産入社。平成16年4月、資産活用事業本部 ファンド推進部 統括部長、同20年4月、執行役員 ビル事業本部長、同26年4月、取締役専務執行役員、同26年4月、東急不動産取締役就任。
トイレ、車庫、犬(舎)小屋…情けない国の木材利用状況
国土交通省と農林水産省は3月7日、平成27年度の木材の利用状況をまとめ発表した。
木造化を促進する低層の公共建築物110棟のうち60棟を木造で整備(前年比187.5%)したほか、内装等の木質化を行った公共建築物は186棟(前年比108.1%)となった。
平成22年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、国が率先して木材利用に取り組むとともに、地方公共団体にも働きかけ、木材全体の需要拡大を推進している。
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件数が大幅に伸びたので嬉しくなったので中身を調べた。基本方針で積極的に木造化を促進するとされている低層(3階建て以下)の公共建築物が全体で110 棟、合計延べ面積10,402㎡が整備されたが、木造で整備を行った公共建築物は60棟、合計延べ面積3,708㎡とある。
確かに平成26年度は32棟だから大幅に増えた。ところが延べ面積は逆に8.4%減少している。つまり1棟当たりの延べ床面積は平均すると61.8㎡、18坪しかない。もっとも広いものは国交省の公園施設で1,080㎡、次が農水省の公務員宿舎で554㎡。この2棟で全体面積の約半数を占める。この2棟を除く58棟の平均延べ床面積は約36㎡。
用途は休憩所、公衆便所などの公園施設がもっとも多く30棟で半数を占めている。他では自転車置き場、トイレ、車庫などで、警察庁の犬舎兼倉庫もある。
これを見てがっくり。国は2020年までに木材の自給率を50%に引き上げようと取り組んでいるのに、これはどういうことか。犬舎といえばつまり犬小屋ではないのか。どうして駅舎、官舎、校舎、寄宿舎(厩舎もあるが)のようなもったいぶった呼び方をするのか。棟数は大幅に増えたが、中身が乏しい。
木質化を行った公共建築物のうちもっとも多かった省庁は防衛庁で84棟と全体の45%を占め、最高裁判所と国土交通省が各18棟、法務省が17棟、財務省が13棟となっている。
木材の使用量は全体で2,327㎥で前年比14.0%減、一昨年比で65.2%減となっている。
こういう数字を見せられると、2020年までに木材自給率を50%(平成27年度末で33.3%)にするという〝202050〟目標は、「社会のあらゆる分野において2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する」という政府目標〝202030〟よりはるかかなたのような気がしてくる。やる気があるのかと問いたい。情けない。
旭化成ホームズ社長に川畑文俊専務、池田英輔社長は取締役会長へ
川畑氏
旭化成は3月8日、役員などの異動について発表。4月1日付で常務執行役員に旭化成ホームズ取締役兼専務執行役員・川畑文俊氏が就任する。川畑氏は旭化成ホームズ代表取締役社長と旭化成建材取締役も兼務する。
専務執行役員で旭化成ホームズ代表取締役社長・池田英輔氏は旭化成ホームズ取締役会長に就任する。
川畑氏は1958年(昭和33年)6月3日生まれ。58歳。大阪府出身。1982年3月、関西学院大学法学部卒。同年4月、旭化成工業(現、旭化成)入社。2003年4月、住宅カンパニー東京第三営業部長。2012年4月、旭化成ホームズ執行役員兼東京営業本部長。2013年4月、旭化成ホームズ取締役兼常務執行役員。2016年4月、現職就任。
震災から6年 被災39市町村の人口 再び減少に転じる 増加は5市町のみ
震災から6年。別表は震災被害を受けた太平洋岸39市町村の人口動態を見たものだ。今年2月1日現在の人口は約254万人となり、昨年同月比で約1万人、0.4%減少した。昨年2月の時点では前年比1.3%増(推計人口調査の数値は平成27年10月に実施された国勢調査の数値をもとに変更されており、実際は微増にとどまっている)になり、人口減少傾向に歯止めがかかったかと思われたが、再び減少に転じた。人口が昨年比増加したのは仙台市、名取市など5市町にとどまり、昨年の19市町村から大幅に減少。増加傾向にあったいわき市も減少に転じた。
各県別にみると、岩手県は12市町村すべてが減少。合計は約24.9万人で、昨年同月比約4,000人、1.5%減少。震災前と比較して約3.3万人、10.3%減となっている。
宮城県は仙台市、名取市、多賀城市、岩沼市で増加した。ただ、仙台市の増加率は0.2%増にとどまり、前年の0.8%増と比較して伸び率は鈍化した。
震災前との比較では、利府町が5.4%増で、名取市の5.0%増を上回り39市町村の中でトップ。同町は仙台市の北東に位置し、津波被害エリアが小さく、内陸部では仙台駅へ電車で30分圏と便利であることから最近は住宅開発が進んでいる。町の人口は、都市計画マスタープランによれば平成32年に38,400人に増加するとしている。
逆に、女川町が37.7%減となっているほか、南三陸町が30.6%減、山元町が26.6%減とそれぞれ大幅に減少している。
福島県では、増加したのは新地町のみ。これまで増加していたいわき市も0.6%減と減少に転じた。市は自然減が社会増を上回ったのが大きな要因と見ている。
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国はこれまで集中復興期間(H23~27年度)に25.5兆円を注ぎ、復興・創生期間(H28~32年度)に約6.5兆円、合計で32兆円規模の対策費用を見込んでいる。
今後は、事業ごとの精査・年度ごとの進行管理を重視し、自治体が持続可能なまちづくりを自ら進めていくためにも一定の自治体負担を求めていく方針だ。
こうした方針と人口動態はどのような関連があるのか。これほどの国費を投入しても人口減少傾向に歯止めがかけられないのをどう考えればいいのか。これからどんどん完成する土地区画整理事業の宅地や公園、その他の施設に対する維持・管理費はだれが負担するのか。
福島原発事故による避難指示区域のうち、解除の見込みが立ったという「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」はともかくとして、「帰還困難区域」の住民の未来はあるのか。直近の住民意向調査によると、「帰還の意向」について大熊町、富岡町、双葉町、浪江町は住民の5割以上が「戻らない」と回答している。「帰還困難区域」はいよいよ「帰還不能地域」の様相を呈してきた。
復興庁によると、今年2月28日現在、震災による全国の避難者の数は全国で約12万3千人に上っている。
ナイスが事業参画 隈研吾氏が設計した南三陸町「さんさん商店街」オープン
全景
ナイスが事業参画し、隈研吾氏が設計した南三陸町の復興プロジェクト「さんさん商店街」が3月3日オープン。当日は橘慶一郎・復興副大臣、佐藤仁・南三陸町町長、隈氏、平田潤一郎・ナイス専務らがオープンセレモニーに参加して完成を祝った。
「さんさん商店街」は、震災後の仮設商店街「さんさん商店街」が8.3mにかさ上げされた高台造成地に本設商店街として移転新築されたもので、建築家の隈研吾氏が設計を担当。約2万㎡の敷地に木造の店舗7棟(延べ床面積約3,085㎡)からなる施設。店舗は仮設からの移転が23店舗、新規が5店舗の合計28店舗が出店した。
同社は、地元の建設会社である志津川建設と山庄建設と組成した「ナイス・志津川・山庄特定建設工事共同企業体」の代表として事業参画したほか、木質化企画や材料調達、構造躯体のプレカット加工、施工に携わった。
オープンセレモニー テープカット
オープニングイベント
さんさんコート
縦格子ルーバー
内装
東急リバブル 賃貸物件の顧客サービスにVR内見システム導入
東急リバブルは3月6日、賃貸物件のお客様向けサービスとしてVR(バーチャルリアリティ)内見システムを賃貸仲介店舗「青葉台センター」「三軒茶屋センター」「横浜センター」に導入すると発表した。営業開始は3月10日から。
VR内見システムは、自身の動きに連動し、室内を移動しながら周囲全方向の空間をリアルに閲覧できる。店頭で複数物件をVR内見して選別し、現地内見をする物件を絞り込むことで、家探しに費やす時間を短縮することが可能になる。
導入する店舗は順次拡大していく予定。
細田工務店 住まいの相談窓口「西荻窪駅前館」オープン
細田工務店は3月6日、住まいの相談窓口「家と暮らしの相談所 細田工務店 西荻窪駅前館」をオープン、3月18日(土)から営業を開始すると発表した。
新店舗となる「西荻窪駅前館」はJR中央線の西荻窪駅南口より約100m(徒歩2分)。システムキッチンや洗面化粧台などの水回り設備などを備え、ワンストップで対応できるリフォームショップを目指す。ショップは「阿佐ヶ谷パールセンター館」「浜田山駅 前館」「中杉通り本館・ショールーム」に続く、杉並区内で4店舗目となる。
隈研吾氏がデザイン 〝グランデ〟首都圏第一号 阪急不動産「ジオグランデ元麻布」
「ジオグランデ元麻布」完成予想図
阪急不動産が分譲中の「ジオグランデ元麻布」を見学した。六本木ヒルズから徒歩5分、中国大使館の裏手の〝隠れ家〟的な立地で、デザイン監修は隈研吾氏。同社の最高峰ブランド〝グランデ〟を冠した首都圏第一号マンションだ。
物件は、東京メトロ日比谷線六本木駅から徒歩9分・広尾駅から徒歩11分、都営大江戸線麻布十番駅から徒歩11分、港区元麻布3丁目に位置する地下1階地上5階建て全19戸(うち非分譲6戸)。第1期2次(3戸)の価格は19,500万~51,800万円、専有面積は97.33~157.62㎡。坪単価は800万円台の半ば。竣工予定は平成29年12月下旬。施工は鴻池組。設計・監理は日建ハウジングシステム。外観・共用部分のデザイン監修は隈研吾氏。モデルルームのインテリアはカン・デザイニングオフィス(鈴木ふじゑ氏)。販売代理は三菱地所レジデンス。
現地は、テレビ朝日通りから一歩入った中層マンションなど建ち並ぶ住宅街の一角。敷地南側は中国大使館で、2007年竣工の三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス元麻布」(坪単価755万円)に隣接。用途地域は第二種住居地域。
建物は1階が住戸3戸に共用部分など、2~3階がそれぞれ5戸、4階が4戸、5階が2戸の構成。
モデルルームは設置しておらず、カン・デザイニングオフィスによるリビングダイニングキッチンと洗面・浴室のコンセプトルームがある。
建築中の現地(右後方に見えるのが三菱地所レジデンスのマンション)
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隈氏がこれまでデザイン監修したマンションは4物件ある。三井不動産レジデンシャル「神宮前」「神楽坂」「赤坂」と東京建物「池袋」だ(賃貸は「東雲」がある)。今回が5棟目だ。
これまでと比べ規模が小さく、実際に完成してみないと何とも言えないが、日経新聞に全国版の全面広告を出したため関西方面からの問い合わせもかなりあるという。
同社はじっくり売る戦略だと読んだが、〝グランデ〟を冠し、設計・監理に日建ハウジングシステムを起用しているように、かなり力の入っていることがコンセプトルームをみても伝わってくる。
鈴木ふじゑ氏がインリアを担当したモデルルームは数え切れないほど見てきたが、今回はこれまでとは全く異なる和風のたたずまいが特徴だ。建具・家具はナラ、クルミ、トネリコ、オーク、サベリなどの突板仕上げ。隈氏が好みそうな格子デザインを折り上げ天井に採用しているのが目を引いた。床に設置した間接照明もなかなかいい。
共用部のデザインでは、黒のせっき質タイルを採用した外壁・床が一部再現されており、高温で焼かないと出ない金属のような色合いをしていた。天井は大和張りだとか。
コンセプトルーム
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この偶然の僥倖を何と表現したらいいのだろう。いま世間を賑わせている「国有地」「8億円」「鴻池」のキーワードを現地で見た。
マンションの施工は鴻池組で、森友学園で話題となっている鴻池祥肇議員とは全く関係はないのだが、対面には国有地の公売物件があり、最低売却価格が何と8億8,700万円とあるではないか。土地面積は約483㎡で坪単価は606万円。容積率は300%だから容積率100%あたりの1種単価は約202万円。この土地の隣接地76坪も5億6,000万円(坪単価737万円)も売りに出されている。
双方を合わせれば222坪だ。仮にこの価格で購入できるとすれば14億4,700万円。1種約217万円だ。六本木ヒルズまで徒歩5分の立地を考えるとこれは安いと思うがどうだろう。ただ、公売が不調に終われば値下げされるかもしれないが、地下に何が埋まっていようとまず値引きはない。
不動産鑑定のあり方が問われている 「士」を安売りすべきでない
「セカンド・オピニオン」を売りにしているあるWebサイトを見ていたら、たまたま記者が取材し、記事にもした公園に隣接するマンションについて、ユーザーの方が「このマンションを評価するうえで有利と言えますか」という質問をしていた。
この質問に対して、不動産鑑定士が次のように回答している。
「公園など緑が豊富な場所が近くにあるということは、一般的に環境面で優れていると評価され、価格形成要因としてプラスになると言えるでしょう。
ただし、公園が近くにある場合でも、幹線道路を渡らないと公園にいけないとか、公園まで坂道や階段があるなど立地やアプローチの内容や、特に夜間における防犯上の懸念など、実態を踏まえて評価の度合いを考える必要があります。
また、公園が近くても、最寄駅からバス便である場合やスーパーなど利便施設が近くに無い場合などは、プラスとマイナスが作用することになり、ほかの項目との相関の程度も踏まえて判断する必要があります」
さて、この不動産鑑定士の回答は質問者の意図する回答になっているか。ほとんどの方は「ノー」というはずだ。質問者は物件名をあげて「このマンション」と具体的な物件の価値について聞いている。回答者は「このマンション」の価値について答えないといけないのに、一般論で終始している。
このマンションについていえば、幹線道路もないし、近くにスーパーはあるし、駅にも近い。学校も隣接している。夜間の防犯上の懸念は知らないが、申し分ない立地条件だったためほとんど即日完売しているのをよく覚えている。SOHO的な利用も可能とする先駆的なマンションでもあった。いまの中古市場での評価も高いはずだ。
Webの不動産鑑定士は質問者と契約を交わし報酬を得て回答しているわけではないが、こんな「回答」は逆効果だ。質問者を失望させるだけだ。「士」を安売りしてはいけない。(かといって、きちんと契約を交わせば数万円のフィーが伴うだろうし、しかも回答まで時間がかかる)
記者に言わせれば、こんなことは何も不動産鑑定士に聞かなくとも近くの不動産業者に聞いたほうが早い。ほとんど瞬時に売買事例をはじき出し、適切なアドバイスをしてくれるはずだ。しかも無料で。
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中古住宅のインスペクション(住宅診断)に建築士や不動産鑑定士を介在させることが決まった。安心・安全の取引のためには結構なことだ。
しかし、当然のことながら報酬も伴う。仲介手数料にその費用を上乗せできるのか。記者は宅建士、建築士、鑑定士の3人の「士」(大手ハスウメーカーで構成する優良ストック住宅推進協議会には「スムストック住宅販売士」もある)を不動産取引に介在させないと「安心・安全」が担保されない、何の役にも立たない「セカンド・オピニオン」士が徘徊する市場をなんとかしなければならないと思う。屋上屋を架すことになりはしないか心配だ。
不動産鑑定士でいえば、国交省は先に不動産鑑定士の業務や魅力を紹介した動画「不動産鑑定士という選択」をホームページで公開した。へそ曲がりの記者などは〝それだけ人気がないのか〟と読んでしまう。
難しい試験を突破するために寸暇を惜しんで勉強に励んでも30歳、40歳にならないと受からず、その割に報酬が少なく〝仕事がない〟と愚痴らざるを得ず、法律を犯すと厳しい罰則もあり、弁護士ほどの称賛を得ることもなく、絶えずクライアントのプレッシャーにおびえなければならない不動産鑑定のあり方を考えないといけない。
しかし、〝武士は食わねど高楊枝〟-鑑定士の皆さんには気位を高く保ち、自らを貶めるセカンド・オピニオンなどに手を染めるべきではないと思うがいかがか。
東武野田線の踏切・線路際の難点克服 ポラス「ナナスクエア大宮・七里」
「ナナスクエア大宮・七里」
ポラスグループのポラスマイホームプラザが分譲中の戸建て「ナナスクエア大宮・七里」を見学した。東武野田線七里駅から徒歩11分の全25棟で、第1期の分譲開始からこれまで第2期を含め14戸のうち12戸を3週間で成約。極めて好調な売れ行きを見せている。信号・線路際の難点を解消する工夫を凝らし、プランも徹底した差別化を図っているのが好調の要因だ。
物件は、東武アーバンパークライン七里駅から徒歩11分、さいたま市見沼区大字蓮沼字山崎に位置する全25戸。土地面積は100.07~122.55㎡、建物面積は90.67~106.40㎡、価格は2,880万~4,180万円(中心価格帯3,000万円台・3,400万円台)。構造は木造在来工法2階建て。
2月11日から第1期5戸を分譲開始し、第2期9戸を含め現在12戸が成約済み。近く第3期を販売する。
現地は、道路を挟んで野田線の線路に隣接。近くには踏切があって信号音もかなりする。
いわゆるパワービルダーの戸建ては2,000万円台の前半から分譲されているエリアで、それより数百万円は高いにもかかわらず、振動・騒音対策を施し、3つのプランを提案するなどハード・ソフト両面で需要を喚起したのが人気の要因。成約者はこの地域に縁のある人。
同社は線路と反対側の土地でも20棟の戸建てを今春に分譲開始する予定で、全体で45戸の計画。
「WIB工法」(後方は線路)
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いつものように道すがら値段を予想した。いまは東武アーバンパークラインという愛称がついているが、東武野田線は昭和50年代から60年代にかけて建売住宅の〝メッカ〟だった。単線(現在はかなりの区間で複線化されている)だったにも関わらず豊春、南桜井、川間、梅郷、江戸川台、初石、豊四季あたりで大量の住宅が供給された。価格は3,000~6,000万円台だったが、それでもよく売れた。年間にして数百戸から1,000戸が売れたはずだ。
ところがバブル崩壊後、極端に供給が減った(ポラスの「七光台」は例外)。七里は供給が少なく、駅周辺の商業施設なども30年前、40年前から時間が止まったような古い建物が多く、街のたたずまいも田舎然としている。
そんなこんなを考えながら、道に迷い右往左往したので現地まで徒歩11分が20分くらいかかった。自分が悪いのだが腹も立ち、これじゃ売れない、まさかポラスは〝298〟つまり〝価格ありき〟の市場に参入するのではないかと思った。もしそうだったら、見なかったことにして記事にするのはよそうとさえ考えた。
ところが、現地で企画設計を担当した同社設計課企画設計係長・高橋健太郎氏の説明を聞き、3棟のモデルハウスを見て考えを改めた。この価格でよくぞやったと感動すら覚えた。ユーザーを納得させるだけの性能、プラン、設備仕様だったからだ。並みの住宅でこの価格だったらまず売れない。
高橋氏は「今は単に4LDKのプランだけでは売れない。ここでしか得られないプラスアルファを盛り込まないと」と語ったように、プランは「CAFE」「BOOKS」「ZA+DOMA」の3つ。それぞれ明確なコンセプトを示している。同社グループの他の物件もそうだが、それぞれ住空間をうまくデザインしている。
基本性能としては、線路に面した住戸に対し振動、騒音対策を採用しているのが大きな特徴で、ハンディを解消している。
振動に対しては、「WIB工法」を採用することで、振動環境を不快な振動を感じない60db未満レベルまで低減した。実際に工事を施している住戸で体感したが、電車が通ってもまったく振動は感じられなかった。
騒音に対しては、一部住戸を二重窓にしている。こちらも体験したが音は全く聞こえなかった。
優れたプランとしては、1階の天井高約2.7mはポラスグループの標準だが、食洗機がついており、床は銘木突板仕上げ、リビング床暖房、暖房付き洗面室、自動換気機能付き玄関ドアなどを採用。3,000万円台の戸建てではまずこの仕様はありえない。
小上り和室がある「BOOKS」プラン
「ZA+DOMA」プラン
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一つだけ注文。これは先月見学した同社グループの「朝霞」もそうだったし、他社のモデルハウス、モデルルームもそうなのだが、過剰装飾について。「CAFE」プラン(他のプランは抑制気味)はあらゆるテーブル、壁、棚が食器や造花などで埋められていた。保育園の運動会でもこれほど派手にはしない。
これでは、限られた予算の中で住空間を工夫し、突板を採用するなど本物志向のニーズに応えようとするせっかくのプランが台無しだ。せめて造花は観葉植物にしてはどうか。壁面には水遣りがいらないサントリーミドリエを設置したらどうか。あれやこれや飾り立てることしかしないコーディネーターの仕事が理解できない。過ぎたるはなお及ばざるがごとし。
「CAFE」プラン(上の「BOOKS」「ZA+DOMA」プランと比べていただきたい)
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ついでに東武線のイメージ、ポテンシャルの向上について。記者は東武線が嫌いではない。むしろ好きだ。まだまだ庶民が買える住宅が供給されている。
ところが一向に沿線のイメージがアップしない。これにはいろいろ理由があるのだろうが、不動産業者にも問題がないとは言えない。「2,500万円~」「2,900万円台」「3,300万円~」など都心部ではワンルームでも買えないような戸建てやマンションの車内吊り広告が野田線では幅を利かせている。安売りのスーパーでもないはずだ。こんなことをやっていたら益々街のポテンシャルを引き下げる。
わかりやすい例では駅舎が汚い。記者は最近、マンション管理員の清掃業務を取材したことがあるのだが、勤務時間中ひたすらにきれいにしている。「清掃は科学」とまで講師の方は話した。その徹底ぶりに畏敬の念すら覚えた。
また、最近の国交省のトイレに関するアンケート調査で、女性は駅や公園でトイレを利用しないことが報告されていた。
女性に好まれないとマンションも街のポテンシャルが上がらないということだ。そこで、東武伊勢崎線と都心の駅のホームを紹介する。みなさんもなるほどと思うはずだ。
東武伊勢崎線の車両(クレヨンしんちゃんのイメージは悪くないと思うが)
「梅島」駅で(黒い斑点はガムのあとか)
日比谷線の都心の駅ホーム
掃除は科学 床は朝日、窓は読売〟 マンション管理員のスゴ技を1日体験(2017/2/25)
女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30%(2017/1/12)