「茅場町を目的地にしたい」-野村不動産「GEMS」伸張の理由がここにある
「茅場町を土日も含めて目的地にするのが私たちのコンセプト」「街を幸せに豊かにしたい」-この言葉に衝撃を受けた。商業施設「GEMS」事業のビジョン、コンセプト・思いが極めて分かりやすく明確に込められているからだ。事業伸張の理由がここにある。
野村不動産が1月24日行った中央・江東エリアで展開するマンション「PROUD」・オフィス「PMO」・商業施設「GEMS」の物件見学会で、入社5年目という同社都市開発事業本部 商業施設事業部・富吉夏樹さんが語ったものだ。隣にいたベテラン女性記者も「あんな子がうちもほしい」と言い漏らした。
茅場町といえば兜町とともに銀行や証券会社が軒を連ね、世界的な金融街として知られたが、バブル崩壊後は整理統合、本社移転などで地盤沈下している観は否めない。その茅場町の一角に同社は10店舗が入居する飲食ビル「GEMS茅場町」を来年オープンする。周辺の約11万人のオフィスワーカーや地元の人たちの行きつけの店にするのだという。
富吉さんは7名のリーシング担当メンバーの一人で、テナントの誘致、契約まで担当。テナント探しのポイントは、「リピーターが期待できる実力店を見つけること」で、味はもちろん、店の雰囲気、内装、客単価、接客、サービスなどをチェックし、そして何よりも経営者のビジョンが大事だという。
富吉さんから「茅場町を目的地にしましょう」「街を幸せにしましょう」と熱く語られたら断る経営者などいない。
「GEMS」の第1号店は2012年10月にオープンした「渋谷」を皮切りにこれまで「市ヶ谷」「大門」「神田」と4店舗が稼働しており、いずれも人気を博しているという。これからは年に5~6棟を予定するなど、開発スピードに弾みがかかる。
同じ部署が手掛けるオフィスビル事業「PMO」も同様だ。1フロア数十坪から200坪くらいの〝ワンフロア・ワンテナント〟の中規模サイズながらハイスペックの設備がベンチャーや外資系にヒットし、2008年竣工の第1号「PMO日本橋本町」を皮切りに2019年までに32棟、総貸床面積は丸ビルの約22,000坪を超える約28,000坪に拡大する。
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この記事を書いていて、分譲992戸をわずか6カ月で完売した「富久クロス」の企画を担当した同社の佐々木まどかさんを思い出した。
このマンションのシアターでは「第九」の第4楽章が流れたのだが、「日本一のイゴコチのいいマンションにふさわしい、自信が持てるマンションにぴったりだと思って選んだ」のが佐々木さんだった。
「女性活躍」の視点から同社の事業展開を眺めるのが面白いかもしれない。同社には吉富さんや佐々木さんのような女性が綺羅星のごとくいそうだ。
三菱地所 「白金二丁目」のマンションに鮮魚サービス CSN社と資本提携
「ザ・パークハウス白金二丁目タワー」完成予想図
三菱地所は1月23日、〝羽田市場「超速鮮魚®」〟を運営するCSN地方創生ネットワークへ出資し、第三者割当増資を引受けるとともに同社と包括協定を締結致したと発表。その第一弾プロジェクトとして、3月下旬から販売開始する三菱地所レジデンス他「ザ・パークハウス白金二丁目タワー」で鮮魚宅配サービスを導入する。
CSN社は、羽田空港内に「羽田鮮魚センター」を有するベンチャー企業。全国で水揚げされた鮮魚を漁師から直接仕入れ、空輸で集約して加工仕分けを行い、最速のルートで国内外の飲食店、小売店、個人宅へ配送する新たな流通サービス〝羽田市場「超速鮮魚®」〟を運営している。また、漁港や漁師の情報が見えるトレーサビリティを業界に先駆けて実践している。
三菱地所グループは、同社グループで分譲するマンションへの宅配サービスや、当社グループで運営管理を行っている商業施設の飲食店舗・ロイヤルパークホテルズへの卸しなど、既存事業領域での連携や新事業領域での連携も視野に入れ、順次CSN社との協業を進めていく。
「ザ・パークハウス白金二丁目タワー」は、東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅から徒歩5分、免震の27階建て全172 戸。
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高級マンションではホテル、飲食店、本屋、クリニックなどと提携して様々なサービスを行う物件は少なくないが、鮮魚の宅配サービスを行うというのは初めて聞いた。
販促につながるかどうか分からないが、ニーズはあると思う。先日、田舎からカキを送ってもらったが、おいしくて安かった。
これぞ正統派の億ション 話題の東急不動産「ブランズ ザ・ハウス一番町」竣工
「ブランズ ザ・ハウス一番町」
〝すごい〟と業界でも話題になっていた東急不動産の最高峰マンション「ブランズ ザ・ハウス一番町」が完成し、1月23日、報道陣に公開された。噂にたがわず、徹底して本物志向にこだわった正統派億ションだ。坪単価は770万円、平均3億円という価格は同社の〝ブランズ〟として過去最高。
物件は、東京メトロ半蔵門線半蔵門駅から徒歩3分、千代田区一番町に位置する免震構造の12階建て全56戸(事業協力者住戸8戸含む)。価格は1億8,000万円台から5億7,000万円。設計は日建ハウジングシステム。共用・外観デザイン監修はエイ・ディ・エイ。施工は清水建設。昨春から分譲開始され、9月までに完売した。
現地は、番町のなかでももっとも地位が高いとされる一番町に立地。英国大使館、千鳥ヶ淵までも徒歩数分。
共用・外観デザイン監修に同社の「東急ハーヴェストクラブ」などを多く手掛けるエイ・ディ・エイを起用。シンメトリーやフレームワークによる構成美を演出。このほか、照明デザインは近田玲子氏が手掛け、1階ロビーの花台には池坊専好氏による生け花を配置。サロンには三代秀石・堀口徹氏監修の江戸切子を壁面に飾り、庭園には造園植治次期十二代・小川勝章氏のアドバイスを受けて既存のケヤキ、モミジ、石などを活用している。
池坊による生け花
サロン
モデルルーム
モデルルーム
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ずっと見たいと思っていたマンションだ。分譲を開始した当初から業界でも話題になっていた。その後、番町界隈でいくつかのマンションが分譲されているが、この物件がメルクマークになっているはずだ。
とにかく基本性能、設備仕様レベルが高い。階高は4m確保し、リビング天井高は最高3.1m、そのほかは廊下、キッチンなども含め2.8mで統一。建具・面材はサペリ、カリマンタンエボニーなどの突板銘木や自然石がふんだんに用いられている。共用部分の壁、天井などは全てマホガニー。壁はカナディアンポリクロームなどの御影石を仕上げによって異なる表情にしている。
サロンに置いてある小さなテーブルに触ろうとしたら、関係者から「触らないで」と注意された。「オペラ」というイタリア家具メーカー製だそうで、値段を聞いたら数十万円でも買えないという。ソファーは本皮にエイの型押し文様が付いていた。庭にある蹲は京都にあった建築物の土台に使われていたものだそうだ。
ことほど左様にすべてが富裕層(どんな人かはしらないが、買い増し層が圧倒的に多いとか)の心をくすぐるものばかりだった。その豪華さを誇らない、むしろ控えめな演出に舌を巻くしかなかった。たぶん本物のお金持ちはこのようなデザインを好むのだろう。それだけは記者もわかる。
バブル期の同社のブランド〝プレステージュ〟にはこのレベルの物件は供給されたことがあるだろうか。
蹲
庭
人気は全国区 坪600万円でも圧倒的人気 三井レジ「パークコート浜離宮ザ・タワー」
「パークコート浜離宮ザ・タワー」完成予想図
三井不動産レジデンシャルが分譲中の37階建て再開発免震タワーマンション「パークコート浜離宮ザ・タワー」を見学した。昨秋から分譲されており、わずか4カ月で販売戸数331戸のうち第1期199戸が分譲済みとなるなど圧倒的な人気を呼んでいる。浜離宮が眼下に見下ろせる立地条件のよさと、再開発ビッグプロジェクトが目白押しの周辺地区の将来性・資産性が評価されている。パンフレットは印刷物でなくタブレットというのは業界初の試み。
物件は、JR山手線浜松町駅から徒歩5分(このほか大門駅、御成門駅、汐留駅、新橋駅が徒歩圏)、港区浜松町1丁目に位置する37階建て563戸(販売戸数331戸、事業協力者戸数232戸含む、他に店舗3戸、事務所6戸)。2月分譲予定の第2期(戸数未定)の専有面積は42.36~119.16㎡、予定価格は6,350万~32,000万円(最多価格帯15,300万円台)。坪単価600万円で、浜離宮に面した東側住戸は坪700万円以上。竣工予定は平成31年7月下旬。施工は清水建設。
現地は、浜松町が最寄り駅だが、大門、御成門、汐留駅も徒歩10分圏内で、新橋駅も徒歩12分。5駅が利用できるうえ、東側の道路と山手線の線路を挟んで広大な浜離宮恩賜公園が広がる立地が最大の特徴。
住戸プランは、ワイドスパン、天井高2500ミリ、バックカウンター・吊戸棚、天井カセットエアコン付き。浴槽カウンターは御影石。
昨年9月から事前案内会が開始され、昨年末まで第1期199戸がほとんど契約・申し込み済み。来場者は約1,800件。港区居住者が中心だが、地方も10%以上ある。
物件の北側がすぐ汐留シオサイトで、周辺に浜松町二丁目(2.8ha、世界貿易センタービル、JR東日本、東京モノレール、国際興業)、竹橋地区(1.5ha、東急不動産、鹿島建設)、芝浦一丁目(4.3ha、野村不動産ホールディングス)、新橋駅西口(2.8ha、野村不動産、NTT都市開発)などのビッグプロジェクトが目白押しであることも評価されている。
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昨年から取材を申し込んでいたのだが、お客さん対応が大変という理由などから今回になった。人気にはなると想像していたが、まさかここまで売れているとは思わなかった。販売事務所副所長・大門正哉氏も同様で、「予想外の売れ行き」だと話す。
山手線とはいえポテンシャルがいま一つの「浜松町」で坪単価が600万円もし、6割以上が億ションになるのにどうしてこんなに人気が高いのか。大門氏は面白いことを言った。
「一昨年、坪600万円の『目黒』が人気になりました。『目黒』は品川区です。ここは港区。しかも再開発計画が目白押し。このあたりをお客さんが評価されているようです」
港区には総所得から様々な控除額を除いた課税標準額1,000万円以上の層が平成28年の段階で約2万人、全納税者に占める割合は14.7%もある。桁違いのお金持ちが自ら居住はもちろん、資産・セカンドハウスとして取得しようと考えるのはよくわかる。浜離宮が眼下に見下ろせるマンションはそうない。対面にある2002年竣工の「東京ツインパークス」も圧倒的な人気となった。坪単価は当時から倍になった。
34階相当の東側の眺望
浜離宮テラス
女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート
「女性が輝く社会づくりにつながるトイレ等の環境整備・利用の在り方に関する協議会」(総合庁舎2号館)
第2回「女性が輝く社会づくりにつながるトイレ等の環境整備・利用の在り方に関する協議会」(座長:大森宣暁・宇都宮大教授)が1月20日、国土交通省内で行われた。
協議会は、平成26年10月に「すべての女性が輝く政策パッケージ」が決定され、女性活躍担当大臣から国交大臣に同省所管分野のトイレの整備を進めることが要請されたことを受けて論議されているもの。平成27年6月、第1回協議会が開催された。その後、2度のWGとアンケート調査が行われている。
今回は、大森座長のほか学識経験者の長谷川万由美・宇都宮大教授、仲綾子・東洋大准教授、小林純子・設計事務所ゴンドラ代表や、子育て関連団体、施設設置管理者団体、地方公共団体、関係行政機関など39名が参加。取りまとめ骨子案などについて論議された。
取りまとめ骨子案には、女性トイレの行列解消、清潔性・快適性の向上、安心・安全の確保、情報発信、マナーの啓発などが盛り込まれた。3月に会合を開き、取りまとめ案を論議する。
論議では全参加者のうち約10名の少数派の女性が圧倒。様々な問題点を指摘した。「清潔感がない」などと指摘された公共、交通機関団体の男性側は「コスト」など〝言い訳〟が目立った。
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第1回目の協議会でトイレに関するエビデンスが少ないという意見が多かったのを受けて国交省が昨年末行った同省インターネットモニターアンケート(女性414名、男性470名)結果がなかなか面白い。男女による差異がかなり明らかにされた。
外出先でトイレを利用する場合に重視することについては女性も男性も「清潔であること」がそれぞれ76.6%、68.1%を占めだが、洋式便器と和式便器のどちらを好んで使用するかの問いには、「和式」「どちらかといえば和式」が女性は19.3%なのに対し男性は7.3%。かなり差がでた。
利用場所も微妙に異なる。利用場所について女性が「よく利用する」「時々利用する」場所ごとの比率を紹介する。( )内は男性。
①駅61.4%(76.9%)②交通施設77.6%(77.5%)③コンビニ53.2%(75.1%)④大規模商業施設93.3%(90.2%)⑤公園など9.7%(32.1%)⑥職場68.4%(86.2%)。
この逆、女性が「ほとんど利用しない」「利用しない」場所ごとの比率を見てみよう。( )内は男性。
①駅38.4%(23.2%)②交通施設22.0%(12.2%)③コンビニ45.1%(24.3%)④大規模商業施設6.0%(8.7%)⑤公園89.9%(66.8%)⑥職場30.5%(12.4%)になっている。
この差異から読み取れるのは、トイレに求める清潔度合いや使用目的が男女間で異なることだ。男性はどの場所でも比率が一定しているが、「用足し以外はしない」つまり用足しの目的が達せられれば場所を選ばないことがうかがわれる。
一方、女性は目的を達するために場所を選び、我慢をし、耐え忍ぶ意志の強さがあることが見て取れる。駅のトイレは、「清潔感がない」(64.3%)「清掃が行き届いていない」(40.1%)「行列に並ばなければならない」(44.0%)などの「不便・不満・不安」が寄せられた。
男女とも総じて満足度が高い大規模商業施設だが、女性の「不便・不満・不安」の第1位は「並ばなければならない」で47.6%(男性15.5%)もあった。公園では「並ばなければならない」は2.4%だが、「安心して利用できない」女性は51.4%(男性31.9%)にのぼった。
用足し以外にトイレを利用する人が多いことも分かった。男女とも駅や交通施設、大規模商業施設では「身だしなみを整える」目的が多く、女性はさらに「化粧」が加わる。
このほか着替え、おむつ替え、ゴミ捨て、携帯やタブレットの操作、荷物の整理などが一定数あり、少数だが睡眠、休憩・休息、読書、食事もある。職場トイレでの睡眠は女性2.0%、男性1.2%、休憩・休息は女性4.8%、男性3.4%の回答があった。
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協議会を傍聴しようと思ったのは昨年末、全国低層住宅労務安全協議会(全国低住協)の「じゅうたく小町部会」を取材したとき、「女性活躍」を阻む労働環境の改善を進めないと「一億総活躍社会」の実現など絵空事に過ぎないと感じたからだ。「建築現場のトイレは利用しない」という女性現場監督の声を聞いたのは相当ショックを受けた。
今回の会合でも、トイレの機能だけでなくベビーカーの置き場や授乳・調乳スペースがないこともストレスの原因となり、女性の社会進出を妨げる要因となっていることがよく理解できた。
残念だったのは、授乳・調乳場所がどうしてトイレなのか、職場でもトイレを利用しない女性が多いことなどの原因、背景について突っ込んだ論議がされなかったことだ。
この点について、長谷川教授は「子どもを産んだらおっぱいをあげる、このことを〝ジカボ〟(直母)と呼ぶんですが、これは基本的人権の問題。それが保障されないのは差別、マタハラと同じ」と語った。
同感だ。われわれの世代は、女性が人前であろうが公共施設内であろうが、母親が堂々と胸をはだけ赤ん坊に乳をやるシーンを見ている。授乳がはしたない行為とされ、乳房を恥部のように隠さなければならなくなったのはなぜか。そうした歴史や文化、さらにはバリアフリー、ジェンダーの視点からもトイレ、授乳を考えてほしい。
私事だが、これも小さいころ。男性はもちろん、老婆などが田んぼの畔で立小便を行うのは日常茶飯事だった。寒い朝、ケツをまくり放尿すると、湯気を立てキラキラと弧を描きながら田んぼの肥やしになる様は感動的でもあった。
そんな経験がある記者は、東日本震災で新浦安を取材したとき、住宅街では公園で用足しした。住民からは、若い女性などは歩いて10数分の駅まで行くという話も聞いた(仮設トイレの利用のしづらさを考えると、うべなるかなと思った)。
かつて、どうして明治大学は人気が高くなったのか明大理事長に聞いたことがあるが、理事長は立地がいいことと教育環境が整っていること、とくに女性のトイレをよくしたことを冗談交じりに話した。
三井ホーム 分譲マンション並みの高遮音床開発 賃貸に標準仕様
イメージ図
三井ホームは1月19日、木造住宅高遮音床仕様「Mute50」を開発し、同日から賃貸住宅標準仕様としたと発表した。
「Mute50」は、重量衝撃音(LH)、軽量衝撃音(LL)を一般的な鉄骨住宅の床遮音仕様(ALC厚100㎜相当)と比べ約3 分の1に軽減する「L-50」の床遮音性能を実現。入居者の上下階の騒音ストレスを大幅に軽減。木造でありながら一般的に遮音性能に優れるとされるスラブ厚270mm相当のRC造マンションに匹敵する遮音性能を実現した。
住宅入居者の不満の中で、上下階などからの騒音に対する不満の声がもっとも高く、民間調査機関の調べでも46.1%の入居者が不満を抱いており、住宅の遮音性向上は居住者の満足度を高める重要なポイントとなっていることに対応したもの。
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結構なことだ。賃貸マンションはあまり取材したことがないが、分譲マンションと比べあらゆる点で基本性能は劣っている。その割に賃料が高く、これが賃貸脱出⇒分譲マンションの流れを加速させている。
「L-50」だが、これでもLL値は「上階の生活音が意識される」性能だ。分譲マンションではまれにだが「L-40」(数値が低いほど遮音性能が高い。L-40はLL値でほとんど聞こえない)も供給されている。同社にはさらに高い性能を目指していただきたい。
昨日は、人が歩くとけたたましく鶯が鳴く「鴬張り」の床を取材した。音の問題は難しい。
人が歩くと床が鳴く「鴬張り」体験 匠の技と現代技術を融合 菊池建設のモデルハウス
モデルハウス「数寄屋」
継承すべき文化・伝統と、改良すべき建物の性能・技術を融合させた菊池建設のモデルハウス「数寄屋」見学会が1月19日、千葉県松戸市の「ハウジングプラザ松戸」で行われた。
モデルハウスは延べ床面積約186㎡(56坪)の「数寄屋」造りで、8カ月も工期をかけて昨年3月に竣工した。わが国伝統の技法を用いながら、耐震等級は最高の3を取得し、断熱性能もUA値0.75を確保、近い将来0.6を目指す。
今ではほとんど伝承する職人がいないと言われる、人が床を歩くと鶯の鳴き声に似た音を出す「鴬張り」をはじめ、「侘び寂び」「粋」がふんだんに盛り込まれている。見どころがたくさんある住宅だ。
玄関
鴬張り床
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見学会は、同社常務取締役事業開発本部長・山﨑英明氏、同部部長・松本敏氏、同部部長・二瓶正裕氏らの案内で約1時間30分にわたって行われた。初めて聞く魅惑的な言葉が機関銃のように発せられた。必死でメモを取り、どうしたら聞いたこと見たことを正確に伝えられるか考えたが、残念ながら建築の知識がなくボキャブラリーも貧弱な記者には手に負えない。
なので、文章がほとんど「らしい」「という」「そうだ」の伝聞調になってしまった。ご了承願いたい。
何から紹介していいのかわからないのだが、まず、京都の知恩院や二条城にもあるという防犯装置の床「鴬張り」から。幅は約1間、長さは約2間半。歩くとけたたましい〝鶯の鳴き声〟がする(来場者にわかりやすく伝えるため大きく鳴くようにしているという)。値段はこの「鴬張り」装置だけでも約200万円とか。同社にもこの技術を持つ職人は1~2人しかいないという。
外観がまた素晴らしい。建物の高さを低くし重心を下げているのが特徴で、居室の天井高を確保しながら絶対高さを確保することに匠の技があるのだという。屋根は緑青を一部に施した銅板一文字葺き。樋は見えないように、かつ〝雨落ち〟もするように工夫が凝らされている。壁は「山吹」色。油絵具にはない、たまに日本画で見る日本の伝統色だ。
軒裏の木組みには、丸太同士を交差させる「捻じ組み」が採用されていたが、どんな説明を受けても分からないような気がした。背割れを施した柱を「玉石」に乗せるのも大変な技術がいるそうだ。
玄関は「庭屋一如」、つまり庭と建物は一体というわが国の住まいに対する考え方を取り込んだもので、手水鉢が設置され、和服が汚れないように工夫した腰掛、腰紙があり、上り框は「名栗」(ナグリ)仕上げ。天井をあえて低くしているのは、刀を抜いても振り回せないようにするためとか。「これより先は出入り禁止」の意思を示す「関守石」も置かれていた。
和室の壁は「ベンガラ」色。障子は障子紙を1枚と2枚とに貼り分けることによって「市松柄」を演出。床柱には銘木「神代欅」が使用されている。「神代欅」は、建設工事などで偶然出土したものを建築材に使用した古材のことで、希少価値が高いことから値はつけられないそうだ。畳敷の玄関取次の間は黒部杉(ねずこ)のヘギ板を籠目に編んだ「網代天井」仕上げ。
記者団から「坪単価はいくらか」という声が飛んだが、関係者は明言を避け「標準的な仕様で坪150~200万円」とだけにとどめた。
茶室
リビングダイニング
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同社の創業社長、菊池安治氏が昭和62年4月、学校法人富嶽学園 日本建築専門学校を開校したことを聞いた。どこかで聞いた名前だと思ったら、何度も取材で訪れている木造耐力壁ジャパンカップの会場になっている静岡県富士市にある学校だった。
一昨年の取材のとき、体調を崩し何度も同学校のトイレを借りたのだが、このままずっと入っていてもいいなと思ったくらい気持ちのいいトイレだった。校舎内は無垢材がふんだんに用いられていた。正面に飾られていた銅像は菊池氏だったのか。
同社は昨秋、ナイスの100%子会社になり再建を目指す。「木」は世界的なトレンドで、わが国の木造住宅の良さが見直されている。ナイスとのシナジー効果を生かせば大化けする可能性を秘めている。今後の展開に期待したい。
「捻じ組み」
土台(左)と関守石
網代天井
庭屋一如
階段
男性の4割、女性の8割が「冷え性」 理想的なのは「ガス温水式床暖房」 リンナイ調査
リンナイが首都圏20~40歳代の男女400名を対象にした「冬場の冷えと暖房事情」に関する意識調査結果をまとめ発表。男性の4割、女性の8割が「冷え性」であることが分かった。もっとも冷えていると感じている部位は足先で、男女とも8割以上が「末端冷え性」であることが判明。対策としては足裏を温める床暖房が理想的で、針葉樹の無垢のフローリングやコルク畳を使うことを勧めている。
調査によると、男女平均で約6割が冷え性を訴え、男女別では男性の約4割、女性の約8割が「とてもそう思う」「ややそう思う」と答え、年代別にデータを見ると男性は20代、女性は30代がもっとも多いことが分かった。
冷え性の人がもっとも冷えていると感じる部位は「足先」で、85%の人がそう回答した。「手先」は6割だった。
身体の症状については、「頭痛」が35%で、「腰痛」「不眠」「集中力が切れる」などと続く。また、「末端冷え性」の人のほうが「風邪を引く」割合が高いことも分かった。
冬場に使用する暖房器具は、「エアコン」がトップで68%、以下、「こたつ」26%、「電気ストーブ」25%、「ホットカーペット」23%、「石油ファンヒーター/ストーブ」20%の順。「エアコン」使用者の2割以上の人が「満足していない」と回答した。その理由として「光熱費が高い」「部屋が乾燥する」「暖まるまで時間がかかる「足元が寒い」などをあげている。温度設定は「25度」がもっとも多く約50%。
満足度の高い暖房器具は「ガスファンヒーター/ストーブ」「床暖房」「ホットカーペット」の順で、満足度が高いポイントは「足元の暖かさ」「手間がかからない」「空気がクリーン」など。
この結果に対して、一級建築士でインテリアプランナーの佐川旭氏は「エアコンは床や衣服についているチリやホコリを舞い上げてしまうためハウスダストや花粉といったアレルギーにも配慮が必要ですが、その点床暖房はチリやホコリが部屋を舞うことはないので、空気はクリーン。さらに部屋の湿度も変わらないため、快適性を感じることができるのでオススメ」と語っている。
とくにガス温水式は温度が約40°Cまでしか上がらず、低温やけどの心配がなく、スイッチをオフにしても余熱が床面温度をしばらく保ち、「電気式」に比べ立ち上がりが早くランニングコストも低く抑えられると指摘している。
さらに「快適暖房のポイント」として、足裏を温める床暖房が理想的で、針葉樹の無垢のフローリングやコルク畳を使うことを勧めており、床が30度くらいあると室温が20度以下でも快適に感じられるとしている。
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記者も佐川氏の意見に賛成だ。床は無垢のフローリングがいいに決まっている。本日(19日)、菊池建設の松戸にある住宅展示場モデルハウスを取材したが、床暖房が入っている床と入っていない30ミリ厚の無垢のヒノキの床はほとんど同じ暖かさに感じた。
分譲も床暖房は当たり前になってきたが、キッチンまで標準装備しているところはほとんどない。最近、三井不動産レジデンシャルが一部の戸建てに採用しているくらいだ。家事労働をすればわかるはずだが、とにかくキッチンは寒い。何とかしてほしい。こたつもいいが、ネコと一緒、入ると眠くなり、動くのがおっくうになる難点がある。
三井不動産 業務受託している「上智大学6号館(ソフィアタワー)」竣工
「上智大学6号館(ソフィアタワー)」
三井不動産は1月18日、学校法人上智学院よりキャンパス再整備に関するプロジェクトアドバイザリー業務を受託し、建設を進めている「上智大学6号館(ソフィアタワー)」が2017年1月20日に竣工すると発表した。
「ソフィアタワー」はJR四ツ谷駅から徒歩3分、千代田区麹町6丁目に位置。地上17階/地下1階建て延べ床面積約39,000㎡。設計は日建設計、施工は大成建設。低層階に上智学院の教育研究施設を配置し、高層階にはテナントオフィスビルを配置した複合施設。
竣工後、同社はオフィス部分のマスターリース(一括賃借ならびに転貸事業)を行い、教育研究施設部分も含めた建物全体の運営管理を三井不動産グループで行う。オフィス部分は10フロア、総貸床面積約13,400 ㎡、基準階面積約1,300㎡。
同学院はオフィスビル収益を財源とし、教育研究環境の充実を図っていく。
第3の高齢化-マンション管理従事者の高齢化、人材難に取り組む 山根・管理協理事長
山根理事長(第一ホテル東京で)
マンション管理業協会は1月18日、平成29年新年賀詞交歓会を開いた。山根弘美理事長(大和ライフネクスト会長)は、今年の課題として①防災力②高齢化③マンション標準管理委託契約書の改定の3つを挙げ、スピード感を持って取り組んでいくと話した。賀詞交歓会には山本有二・農水大臣、菅義偉・内閣官房長官、井上義久・公明党幹事長、谷脇暁・国土交通省土地・建設産業局長などが来賓として出席、盛り上がった。
冒頭、挨拶に立った山根理事長は、今年の干支が「天岩戸開き」を長鳴きの声によって達成したという丁酉(ひのととり)である逸話から話し始め、業界に光を呼び込む「声」として3つの課題を指摘した。
その一つは防災力であるとし、「標準管理規約の改定では、第27条の管理費と第32条の管理業務に地震保険という文言が明記された。また、標準管理規約の上位概念である『指針』で、『管理組合のコミュニティ形成は積極的に取り組むことが望ましい』と位置付けられた。マンションの防災力の強化の面からも今回の改正は大変満足のいく結果となった」と歓迎した。
二点目として挙げたのは「高齢化」で、これまでの建物と居住者の二つの高齢化対応に加え、「わたしたちの現場従事者の高齢化と採用難の課題」対応が求められるとした。
もう一つは、マンション標準管理委託契約書の改定で、「優良なマンションストックの促進、中古住宅の活性化、特区民泊、耐震化、防災力の向上などわたしたちが担うべき課題はたくさんあるが、採用難に加えて最低賃金は上昇、消費税率がアップすれば管理組合会計が見直され、これまた委託費の値下げ要求につながる。こんなトレンドがよいはずはない」とし、「単なる価格競争ではなく、新たな時代の要求に応え得る顧客目線にたったサービスの明確化と専門性の確立のためスピードを上げて取り組んでいく」と語った。
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「天岩戸開き」が丁酉の長鳴きで実現したというのは初めて聞いた。伊勢出身の私などは、裸踊りをした女神を見たくて天照大神が岩から出てきたと小さいころに教わった。
そんなことはどうでもいいが、マンション管理業の大きな課題の一つがマンション管理員の高齢化・人材不足だそうだ。これまでまったく気が付かなかった。
考えてみれば確かにそうだろうと思う。サラリーマンの定年は60歳から65歳になった。働こうと思ったらもっと働ける世の中になった。
一方で、管理員の仕事はものすごくハードだと聞く。とくに管理委託契約外の無償労務提供が管理員のストレスになっているという。最近は〝歩く音がうるさい〟〝タバコ、ニンニクの匂いがする〟〝新聞配達員のバイクの音がうるさい〟-などのばかばかしい〝クレーム〟にも対応させられる。入居者同士の挨拶を禁止するマンションも出たそうだ。〝そんな常識が通用しない仕事なんか安月給でやっていられるか〟となるのは当然だ。
そんなわけで、記者は管理員の仕事を体験すべくある大手管理会社に取材を申し込んでいる。そのうち実現するはずだ。
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山本有二農水大臣 海外と比べるとわが国の農家の美しさ、住まい方を考え直さないといけない。昨日は農水省が推進している「農家住宅」についてリリースを出した。田舎も忘れずよろしくお願いします
山本大臣
井上義久・公明党幹事長(党マンション問題議員懇話会会長) 理事長が話された建物と住民に加え管理員の高齢化という新たな課題が顕在化してきた。入居者のニーズも多様化してきており、管理会社との意識のかい離が生じているのが心配。管理委託契約の改正ではそのようなかい離が生じないように、適正化法の生みの親の一人としてしっかり取り組んでいく
井上氏
谷脇暁・国土交通省土地・建設産業局長 国交省で今年取り組む大きな課題の一つは生産性の向上。ICT、IoTなどと連携して生産性向上の取り組みを深めていく。もう一つは書簡行政の人材の確保・育成。標準管理委託契約書の改正についても予算に盛り込んでしっかり取り組んでいく
谷脇氏
栗原清・同協会副理事長(大京アステージ会長) 昨年は中古流通量と新築の供給量が初めて逆転した。マンションストック625万戸のうち150万戸が築30年以上。建物と入居者の高齢化対応について、如何に質の高いサービスの提供ができるか考えないといけない。サービス業への転換が課題になってきた
栗原氏
菅義偉・内閣官房長官 安部政権誕生から強い経済を目指してきたが、求人倍率は前年の1.38から昨年は1.41へ25年ぶりの高水準になったし、税収も100兆円超になり、安部政権誕生から22兆円も増やすことができた
菅氏
川崎達之氏(平成3年5月から19年6月までマンション管理協理事長) 今年7月で85歳だよ。俳句? 今日の心境? 最近はボケてきてね、三日三晩考えて一つできるかどうか。アハハハハ(一昨年のコメントは『理事長を辞めてから7年になるが、様変わりしたねぇ。今? なにもやってないよ。歳? 今年4月で84歳だよ。俳句? 時々やるよ。ここで一句? 即興ではできなくなっちゃった』だった=年齢が1つしか上がらず、誕生日が4月から7月になっているが、自分の年齢も誕生日がわからなくなったか、耳が遠くなり「し」と「ひ」の区別がつかなくなった記者のせいか)
川崎氏