〝しっかり造り込みをすれば売れる〟見本 大成有楽不「オーベル東林間レジデンス」
「オーベル東林間レジデンス」完成予想図
大成有楽不動産が販売中の「オーベル東林間レジデンス」を見学した。駅から徒歩5分、区画整理された戸建てが建ち並ぶ住宅街の一角で、坪単価190万円という値付けとよく工夫されたオリジナル収納などの商品企画が評価され、第1期48戸が順調に売れている。
物件は、小田急江ノ島線東林間駅から徒歩5分、相模原市南区東林間四丁目に位置する6階建て全79戸。専有面積は65.41~86.83㎡、現在分譲中の住戸(5戸)の価格は3,360万〜4,490万円。坪単価は190万円。竣工予定は平成30年1月下旬。設計・監理はジムス建築設計事務所。施工は大成ユーレック。販売代理は大成有楽不動産販売。
現地は、駅から徒歩5分。周辺は土地区画整理事業によって区画割された住宅街の一角。3方道路の敷地は容積率200%の第一種中高層住居専用地域だが、敷地の南面は一戸建てが建ち並んでいる。建物はコの字型で、住戸は南東向き(全体の72%)が中心。
前面道路幅約6mに面した部分は幅約60m、奥行き約2.6mの「サウスガーデン」とし、住戸のテラス側から道路に向かって樹高を下げる工夫を行っている。
住戸の商品企画では、同社オリジナルの「オレンジラボ」をフル装備。マルチシェアストレージ(共用収納)、マルチシューズシェルフ(下足入れ)、マルチクローゼット、オレンジキッチンなど使い勝手がよく収納量を増やせるようにしているのが特徴。
同社マンション事業本部マンション事業部事業室(第二)主任・堀内文普氏は、「東林間でのマンション供給は8年ぶり。これから大量の供給が始まるので競合に負けない商品企画にした。狙い通り、〝待ってました〟というお客さまが多く、極めて順調に売れている。歩留まりも高い。東向きは3,000万円台からだが、近く分譲される物件に負けない」と話した。
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坪単価はぴったりだとおもう。この前も書いたが、小田急線小田原線海老名駅西口では約3,000戸のマンションがこれから供給される。一方、小田急江ノ島線では、東林間駅の隣駅「中央林間」駅圏では同社も売主になっている857戸もの「ドレッセ中央林間」が分譲される。さらに「町田」や「相武台前」では野村不動産の「オハナ」もある。大激戦となるのは必至だ。
同社の今回の物件は、住環境がよく駅に近いという利点もあるが、高値追求は難しいと読んでいた。坪190万円はぴったりだと思う。
一つ強調したいのは収納、とりわけ今回初採用した「オレンジドレッサー」がよく工夫されていることだ。
①掃除がしやすい②化粧がしやすい③収納がたっぷり-この3つを満たしているもので、掃除がしやすいように壁付水栓を採用、化粧がしやすくするためには三面鏡のガラスは顔と30㎝くらいにし、ゴミ箱などが入る底板なしスペースを設けている。全体的なデザインも美しい。
〝しっかり造り込みをすれば売れる〟見本のようなマンションだ。
「オレンジドレッサー」
「お蔵入りしたコンバスが亡霊のようによみがえった」 トータルブレイン久光社長
冒頭の間取り図は、間口が6m、奥行きが10mの専有面積60㎡の3LDKプランだ。これを見て「これはうちのマンションじゃない」と言い切れるデベロッパーはどれだけいるだろうか。ほとんど皆無ではないか。
マンション建設費が高止まりで推移するいま、デベロッパーはグロス価格を抑えようと懸命になっている。その苦肉の策として18坪の3LDKが登場した。
この現状を、かつて長谷工コーポレーション(当時長谷川工務店)の専務から長谷工不動産社長などを歴任したトータルブレイン・久光龍彦社長(76)は皮肉交じりに次のように語った。
「もう30年以上も昔、故・佐藤美紀雄先生に散々叩かれて困り果て、お蔵入りさせた田の字型の『コンバス』が亡霊のようによみがえった。これはダメですね。デベロッパーは考えなきゃ」
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久光氏が語った「コンバス」とはどのようなものだったかを少し長くなるが紹介する。
「コンバス(CONdominiumu BUilding System)」は、長谷川工務店が昭和48年に編み出したマンションの究極の経済設計工法だ。間口が6m、奥行きが10mないしは11mの専有面積は60㎡(18坪)から66㎡(20坪)というという3LDKプランだ。形状が「田の字」型であるため「田の字型プラン」と呼ばれた。
この経済設計プランは、絶対的な住宅不足解消とマンションの大衆化に貢献した。同社はマンション施工№1という位置を不動のものとした。
コストを抑制するためには戸数を確保する必要があったため、ほとんどが住環境に難があり規制が緩やかな工業系用途地域に建設されたのも特徴だった。
ところが〝不況下の大量供給〟が続いた昭和57~58年、郊外の施工比率が30~40%にも達し、どこに行っても同じ間取で住環境に難がある「コンバス」に対する風当たりが強まった。
批判の論陣を張ったのは住宅評論家の故・佐藤美紀雄氏だった。自称〝弟子〟の記者も徹底して〝長谷工叩き〟の記事を書いた。
記者がもっとも腹が立ったのは、同社とデベロッパー各社がこの20坪の「コンバス」を「全戸住宅金融公庫付き 広い3LDK(64.40㎡)・2,230万円から」と堂々と広告で謳ったことだった。
当時、建設省は国民の豊かな住生活を確保するため住宅建設五箇年計画を策定し、第4期五箇年計画(4期五計)では誘導居住水準として都市居住型は4人家族で91㎡、平均居住水準として4人家族で86㎡の目標を掲げていた。
この4期五計を武器に記者は「御社は国の政策に逆行しているではないか。どうして20坪にも満たない間取りを〝広めの3LDK〟などと宣伝するのか」と捻じ込んだことがある。天下の長谷工が応じるはずはなく、けんもほろろ門前払いを食らった。
ところが、マンションが売れないのは「長谷工」のせいと、施工が長谷工であることをわからないようにする「長谷工隠し」を行ったデベロッパーが現われた。野村不動産だった。新聞広告に施工会社を掲載せず(公取の違反ではない)、現場では長谷工施工を示す「HK」マーク付きのシートに覆いをかけた。記者は「長谷工隠し始まる」と記事に書いた。
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いまはどうか。オリンピック景気に沸くゼネコンは、叩かれてばかりいた積年の恨みつらみを晴らそうと反攻に出た。「マンションはやらない」と公言するスーパーゼネコンの幹部がいるほどだ。
困り果てたデベロッパーがそれこそ手すり足すり、長谷工に「とにかく安くしてくれ」と泣きついているのが現状だ。かつて長谷工がコンバスを売り込んだのと逆の現象が起きている。
〝長谷工頼み〟がどの程度のものかを示すデータがある。2016年度の首都圏供給戸数に対する同社の施工シェアは100戸以上で56.0%、400戸以上だと実に60.4%に達する。つまり大規模マンションの2戸に1戸は同社施工ということになる。
冒頭の間取り図は、コストを最優先するデベロッパーが過去の遺物であるコンバスを思い出し、長谷工に再びやらせて出来上がった。
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残念ながら、亡霊のようによみがえった「コンバス」は成功しているとはいいがたい。では、どうすればいいか。久光氏が一つの解決策を示した。
「わたしが長谷工不動産の社長に就任し、コンバスから脱却しようと社運をかけたのが『モアクレスト』でした。第一弾の『西台』はよく覚えています」
「モアクレスト西台」は、昭和62年に竣工した東武東上線東武練馬駅から徒歩7分の11階建て全181戸のマンションで、もちろん施工は長谷工コーポレーション。売主は長谷工不動産。最多価格帯は4,900万円台、坪単価は180万円だった。
分譲開始は昭和62年2月。第1期79戸が最高72倍、平均27.0倍で即日完売した。引き続いて4月に分譲された第2期89戸も最高84倍、平均26.5倍の競争倍率で即完している。図面が示せないのは残念だが、バルコニー側に3室設けたワイドスパンの71㎡プランや、LDKが18畳大で主寝室が7.9畳大のプランなどを盛り込んでいる。
今では信じられないような人気だが、当時、不動産市場は〝狂乱〟状態で、62年2月の供給量3,596戸の月間契約率は91.5%だった。
記者は当時、マンションと建売住宅の全物件の販売状況を毎月調べており、中古でも築9年の「ドムス青山」が坪2,320万円(8億8,000万円、125㎡)で成約されたと記事にしている。
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昭和62年当時と今はまるで逆だ。第一次取得層の所得が伸び悩み将来不安もぬぐえず、デフレ脱却も絶望的でシュリンクする一方の新築マンション市場の中で果たして田の字型プランは有効か。考え直す必要がありそうだ。
「デフレ脱却絶望的。郊外マンション価格は下がらない」トータルブレイン・久光社長(2017/5/30)
海老名でマンション5物件2,000戸 先陣切るサンケイビル・名鉄不 約半分が供給済み
「海老名 ザ・レジデンス」完成予想図
サンケイビル(事業比率49%)・名鉄不動産(同)・長谷工コーポレーション(同2%)3社が共同して分譲している「海老名 ザ・レジデンス」を見学した。この物件を含め5物件約2,000戸もある小田急線・相鉄線海老名駅西口エリアのマンション計画の先陣を切る全412戸の大規模物件で、まずまずの売れ行きを見せている。
物件は、JR相模線海老名駅から徒歩9分、小田急線・相鉄線海老名駅から徒歩11分、海老名市泉二丁目に位置する15階建て全412戸(Ⅰ工区:206戸、Ⅱ工区:206戸)。専有面積は67.02~83.38㎡、現在分譲中の住戸(15戸)の価格は3,948万〜5,398万円(最多価格帯4,300万円台、4,500万円台)、坪単価は200万円強。竣工予定は平成30年7月。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
昨年11月から分譲されており、これまで平成30年1月完成予定のⅠ工区:206戸を供給済みで、約180戸が成約済み。
現地は工業地域だが、2015年に開業した「ららぽーと海老名」をきっかけにマンションやオフィス・商業施設計画が相次いで発表され、もっとも注目されているエリアの一角に建つ。
エントランス・空間デザイン監修はウイ・アンド・エフ ヴィジョン(石倉雅俊氏)。ディスポーザ、御影石キッチンカウンター、食洗機が標準装備。月額500円からの全戸平置駐車場付きが特徴で、購入者の95%が利用希望者。
販売担当長谷工アーベスト東京支社受託販売部門販売二部販売部長・三宅聡一郎氏は、「横浜に近い。3路線が利用可能。沿線に大企業の工場などが多く、都心志向でもない。街の将来性期待などが評価ポイントで、100%平置駐車場にしたことで95%の購入者が利用希望していることからも、この企画がヒットした」と話している。
エントランス
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三宅氏の言葉が全てを物語っている。坪単価200万円強は高いような気がするが、土地代がただでも160万円以下ではできないはずで、「ららぽーと海老名」に徒歩5分の立地を考えれば〝安い〟と考えられなくもない。
それにしても、かつては田んぼばかりだった海老名西口エリアの開発計画がすごい。これから続々マンションが分譲される。
今回のマンションの近くで三井不動産レジデンシャルが「パークホームズ海老名フォレストプレミア」84戸(施工:長谷工コーポ)のモデルルームをオープンするほか、同社はもう1棟供給する。
「ららぽーと海老名」に隣接するエリアでは相鉄不動産・伊藤忠都市開発・鹿島建設の3社JVの免震タワーツイン「グレーシアタワーズ海老名」477戸(施工:鹿島)が建設中で、今秋に分譲される。坪単価は200万円をはるかに突破するのは間違いない。記者は坪230万円くらいが妥当ではないかと見ているが、相鉄不「二俣川」は坪単価280万円で圧倒的な人気になった。ひょっとすると250万円くらいになるかもしれない。
このほか、新日本住建「(仮称)ファインスクエア海老名」40戸(施工:西野建設)もある。
さらに、詳細は決まっていないが、小田急電鉄が駅前の約3万5千㎡に及ぶ複合ビッグプロジェクト「ViNA GARDENS」を進めており、2025年までタワーマンション3棟を完成させる予定。1棟当たり約300戸トータルで900戸くらいになると予想される。同社は事業主で、マンションの建築主は小田急不動産と三菱地所レジデンス。施工は三井住友建設。年内には概要が見えてくるはずだ。
小田急は「長期ビジョン2020」で海老名駅を「沿線中核駅」として重要なエリアと位置付けており、昨年3月、海老名駅にも特急ロマンスカーが停車するダイヤ改正を行った。このプロジェクトに相当の力が入っている。
小田急「ViNA GARDENS」
三井不動産リアルティ2016年度の売買仲介取扱件数約39,000件 31年連続トップ
三井不動産リアルティは6月5日、同社グループの2016年度の不動産売買仲介取扱件数が全国で38,612件となり、31年連続で全国No.1を達成したと発表した。前年度比2.1%の伸びだった。
世の中の風と流れを活写せよ Webとの融合目指せ 業界紙の役割
これまで数回にわたって「週刊住宅」の破たんや業界紙のあり方について書いてきた。業界関係者の声を伝えた。これで最後にする。
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国土交通省の記者クラブに投げ込まれるプレス・リリースや各社からメディア向けに発信される情報は毎週100本くらいに達するはずだ。これほど集まれば、コピー&ペーストすれば紙面は埋まる。果たしてそんな記事ばかりを書いていないか考えてみる必要がある。もしそのような記事ばかりを書いていたら何年たっても一人前の記者にはなれない。書いた端から本人も忘れてしまう。
記者が気になるのは、ハウスメーカーやデベロッパーなどがわざわざ発表会や見学会を開いても、そのとき配布されるリリースを引き写したり話の内容をそのまま紹介したりする記事が少なくないことだ。例えばマンションの記事。読者が知りたいのは設備仕様レベルや価格、ユーザーの反響などだが、主催者が「価格は未定」と語ればそのまま「価格は未定」と書く。これは記者として失格だ。主催者の伝えたいことを過不足なく書くのは当たり前だが、読者が知りたいことに迫らなくてはわざわざ発表会に出向く意味がない。客観的な記事などありえない。記者の主観による記事だから読まれるのだ。勘違いしていないか。
プレス・リリースの扱いも考えたほうがいい。毎日発信される情報はほとんどの場合、ホームページで閲覧できる。幸い、不動産流通研究所のWeb「R.E.port」は毎日丹念に拾って記事にしている。解説記事は少ないが、これを読めば日々の業界の動きは分かる。記者は重宝している。舌を巻くほど要領よくまとめられている記事もある。
Webについて。日刊不動産経済通信は有料だから見出ししか読めないが、住宅新報も週刊住宅もお粗末極まりない(なかった)。毎日更新はされているが、掲載されるのは、業界でいうゴミ記事ばかりだ。ゴミ記事を掲載することで週刊紙購読に結びつけようという狙いだろうが、これは逆効果だ。一部でいいから重要な記事を配信するとか、サマリから有料購読につなげるような工夫をすべきだろう。
わが国と単純比較できないが、ニューヨーク・タイムズ(NYT)の電子版有料購読者数が今年1月からの3カ月間で30.8万件増加し、191万件に達したと報じられた。わが国の日経新聞の日経電子版有料会員数は公称50万人。紙媒体との融合に一定の成果をあげている。Webを活用しないと業界紙も生き残れない。充実させれば新たな読者を開拓できるのではないか。
業界紙の取材先であるデベロッパーやハウスメーカーのほとんどはBtoC企業だ。企業が業界紙に求めるのはもちろん他社の動向だが、同時に消費者のニーズはどこにあるのか潜んでいるか、将来はどうなるかのヒントとなる情報だ。いわば業界紙の役割は企業と消費者を結びつける橋渡しだと思う。世の中の「風と流れ」を活写し伝えることだ。この役割を果たすためには担当分野についての専門知識を習得するのはもちろんだが、消費者の視点からものごとを見る姿勢が欠かせない。企業目線と消費者目線はときとして衝突する。その緩衝材としての役割も大きい。
デザイン、レイアウトについても一言。日経新聞が今年3月、日曜日に16ページの「NIKKEI The Style」の連載を開始した。用紙に高級白色紙を使用し、カラー写真やグラフィックをふんだんに盛り込んでいるのが特徴だ。
記者はこの「NIKKEI The Style」に驚愕した。日経の読者からは株式の情報が少なくなったという声が聞かれるが、同社は他の一般紙読者をターゲットにしているはずだ。
一般紙ですら紙面刷新に真剣にとりくんでいるのにわが業界紙は20年も30年も昔のデザイン、レイアウトを踏襲している。ここで細々したことは書かないが、全国紙といういい見本がある。見習ってほしい。
「住宅新報」1紙になったのだから、同紙には「週刊住宅」の分まで頑張っていただきたい。「このほど」などといつの風やら流れかわからない記事を書いていたら、そのうちにどぶに捨てられる。
流れに乗れず逆らえず 記者は病葉か 「週刊住宅」破たんに思う(2017/5/9)
「週刊住宅」破たん わたしはこう考える ④(建築家)(2017/5/9)
週刊住宅」破たん わたしはこう考える ③(不動産流通会社広報担当)(2017/5/8)
三菱地所レジ 北陸初マンションは北國銀行本店跡地 坪単価は最高峰の200万円超か
「ザ・パークハウス 金沢城公園」完成予想図
三菱地所レジデンスは6月5日、北陸初で北國銀行が70年間にわたり本店を構えていた跡地マンション「ザ・パークハウス 金沢城公園」 のプロジェクト発表会を行った。金沢城公園や兼六園に近い銀行や証券会社、ホテルなどが建ち並ぶ一等地で、坪単価は金沢最高峰の200万円を突破する可能性もある。
物件は、北陸新幹線金沢駅から徒歩16分、石川県金沢市下堤町に位置する15階建て全68戸(事業協力者住戸9戸を含む)。専有面積は69.70~154.36㎡、価格は未定だが4,000万円台が中心、坪単価は200万円前後になる模様。竣工は2018年8月下旬。施工は熊谷組。販売開始は7月中旬。販売代理は金沢の販売実績が多いリノベスト。
現地は、銀行、証券会社、ホテル、オフィスビルなどが建ち並ぶ一角。金沢城公園へ徒歩5分、めいてつエムザに徒歩3分。
建物の外壁は、職人が丁寧に塗り重ねて完成させる職人塗装とし、エントランス内の壁や外壁の一部には石職人が丹念に削り出す天然石の「のこびき細工」を施す。
基本性能・商品企画では、オール電化、エコキュートを採用、二重床・二重天井、ディスポーザー、食器機、浄水器一体型水栓、リビング・ ダイニング床暖房が標準装備。
発表会に臨んだ同社執行役員・小山健介氏は「金沢は、北陸新幹線の開業によって地価が上昇し人口も増加。マンションも倍増し、マーケットの成長を感じさせる。マンション供給は当社初だが、北國銀行新本店やNHK放送会館の設計(三菱地所設計)を担当している。用地は北國銀行さんとの縁があり取得した。問い合わせは首都圏や関西圏、名古屋圏で3割に達するなど500件を突破。手応えを感じている。第2弾、第3弾も適地があればやりたい」などと語った。
同社調査によると、金沢のマンション市場はリーマンショック前後の09・10年の供給がゼロだったが、15年の北陸新幹線の開業を機に供給が増え(15年は300戸近く)、坪単価は08年の120万円強が170万円くらいに上昇、価格も空白前の3,000万円台前半から4,500万円近くまで暴騰している。
建設中の現地
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さすが三菱地所というべきか。ブランド力を誇示するために金沢金箔で建物を覆うような地元の顰蹙を買う愚を犯していない。その代わり、外壁は職人塗装とし、基壇部に「のこびき細工」を施すなどさりげない演出をして高級感を醸し出しているのはいい。(他のマンションをいくつか見たがみんなそれなりのものばかりだった)
設備仕様は首都圏の同社のマンションとほとんど同じだが、金沢駅圏ではディスポーザーも食洗機も床暖房、ソフトクローズ引き戸は珍しいそうだ。
坪単価について同社は明言を避けたが、これまでの最高単価となる200万円(大和ハウスの「香林坊」は坪200万円以下だったようだ)を突破する可能性も否定しなかった。
記者は北陸のマンション市場について全く分からないのでこれ以上触れないが、加賀100万石の一等地で北國銀行本店跡地のマンションなのだから高値挑戦すべきだ。
驚いたのがホテルラッシュだ。同社が配布した資料にはビジネスホテルやリノベーションも含む計画が12もある。同社のマンションに近接するホテルも2つ建設中だ。
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2時間くらいかけて現地周辺や長町武家屋敷跡地を歩いた。きれいで水量が豊かな水路や贅を尽くした武家屋敷を見で、さすが加賀100万石と改めて感心した。
駅に戻り、地元の肴で地酒を飲んだ。岩魚の骨酒(岩魚を丸ごと焼いて酒にひたしたものだが、本来は頭だけを焼いて熱燗で飲むもの)を除き帰るのが嫌になるほどおいしかった。
土産を買わないと怒られると思い「のどくろ」などの〝高価〟な干物を買って帰ったら「なによ、これ。韓国産じゃないの」と怒られた。(買った記者が悪いのだが、干物やさん、これはない)
創業150年の和菓子屋では「うちの和菓子が一番」と勧められるままその他の土産も買ったが、おいしいのかそうでないかは…。(国産でしょうね)
以上、長町武家屋敷跡(下2つは「野村家」の庭園と茶室天井。天井は下材に桐板を採用し、その上に神代スギを重ね、みどりの松で押さえたもの)
すてきナイス 三井、野村と肩を並べた分譲戸建て これからが正念場
すてきナイスの住宅事業
日暮社長
すてきナイスグループは6月1日、2017年3月期決算の説明会を開き、同社・日暮清社長と大野弘取締役が1時間半にわたって詳細な報告を行った。売上高は2,464億円(前期比103.3%)で営業利益は15億円(同93.2%)ととなり、売上高の68.7%を占める建築資材事業の営業利益は過去20年で最高水準となり、マンションから戸建てにシフトチェンジした住宅事業も堅調に推移していることなどを話した。以下、決算数字と日暮社長の説明などから住宅事業について考えてみた。
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同社の前期の住宅事業の売上高は一戸建てが319億円、マンションが212億円。戸数は1,323(一戸建て831戸、首都圏マンション434戸、地方マンション58戸)。6年前は戸数1,336戸(一戸建て207戸、首都圏マンション1,060戸、地方マンション69戸)だから、完全に戸建てとマンションが逆転した。今期の一戸建ての売上目標は950戸。
マンション市場はリーマンショック後、大手デベロッパー(とくに三井、三菱、住友、野村)の寡占化が進行しており、これらに大和ハウスや積水ハウスのハウスメーカー、大京、東建、東急不、NTT都市開発、伊藤忠都市開発、新日鉄興和、さらには資金力がある近鉄、阪急、京急、相鉄などの電鉄(系)が攻勢を強めている。中堅デベロッパーは駅近の用地取得合戦で太刀打ちできず、競争を回避する形で大手が手を出さない〝隙間〟や郊外・地方へ〝転戦〟せざるを得ない状況が今後も続くはずだ。同社がリスキーなマンション事業から戸建てへシフトするのは賢明な選択だ。
武器も揃った。先に書いたようにBELS、CLT、ZEHなどはどこにも負けないし〝木の時代〟は加速する。本社に隣接して2015年にオープンした「スマートウェルネス体感パビリオン」の来場者は8,000名を超えたというし、同じような施設は「群馬」「新潟」にも開設した。モデルハウスは「横浜」に続き「藤沢」にも設ける。威力を発揮するのは間違いない。自ら木材、資材を調達できるのも強みだ。
分譲戸建て分野では課題がないわけではない。この分野は、システマテックな手法を徹底させ、圧倒的な価格の安さで優位に立つ、年間4万戸を販売する飯田グループが王者として君臨する。大手ハウスメーカー社長は「うちは土地代がただでもかなわない」とお手上げだ。
ここと競争するのは意味のないことだと思うが、建売りの価格下げ圧力は強まる一方で、同業の追い上げもある。いかに質を落とさず、トータルな価格競争力を向上させるかが問われる。これからが正念場だ。
同社の計上戸数のうち6割、約500戸が分譲戸建てだ。ハウスメーカーを除けば三井、野村と肩を並べるまでに伸びた。
日暮社長は「これからは売り建て(停止条件付き)や注文を伸ばし、建売りの比率を下げたい。手間がかかる仕事の平準化を進めて利益率を高めたい」と語った。
記者は、フージャースコーポレーションが劇的に変わったようにデザインと外構に力を注ぐべきだと思うが、同社の建売りを近く見学して商品企画についてレポートしたい。
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ついでに同社の沿革・株式ポストについて。同社は1950年、市売木材として創業。1962年、東証2部に上場。1972年に日榮住宅資材に社名変更し、1988年は日榮不動産へ、1995年にナイス日榮へ、2000年にナイスへ、そして2007年には持株会社体制への移行に伴い現社名になった。「ナイス日榮」から「ナイス」への変更は、当時、悪質な事業者ローン問題を引き起こした「日榮」を連想させ、風評被害があったための変更ではあったが、67年間に5回も社名を変更した上場会社は同社だけでないか。
その是非は分からないが、株式ポストは「卸売業」だ。売上比率からすれば同社は商社だからそうなのかもしれないが、戸建て・マンションの住宅事業や木材事業比率も低くなく、多角化を推進している。「卸売業」のイメージとは程遠い。
同社は全国8カ所に約1,836ヘクタールの森林(新宿区とほぼ同じ広さ)を保有し、地球温暖化防止に貢献するとともに「木材」という人と環境にやさしい社会性のある事業を行っている。最近は国産材利用、BELS、CLT、ZEH、免震マンション、復興支援、スマートウェルネス体感パビリオンなど先進的な取り組みを強化しており、隈研吾氏の起用や慶大、京大などの学との連携を図るなど話題性に富む事業を展開している。
業態は「建設業」ポストに入っている住友林業に近いのではないか。住林と比べると売上高も利益率も比較にならないが、こうした環境への取り組みや社会的に意義のある事業展開を考慮すれば、住林の10分1以下という同社の株価150円前後は解せない。
この日の決算説明会にはたくさんのアナリストが出席していたはずだが、企業の価値は収益性よりも企業サステナビリティ(社会性)がより重視されるべきだと思うがどうか。日暮社長、せっかく立派なホテルで説明会を開くのだから、そのまま懇親会にしてこの点をアピールしてはどうか。記者は20年以上、RBA野球大会で同社チームのメンバーと交流しているが、勝っても負けてもしっかりミーティングを行い、チームワークを大事にしているのに感心している。家族経営的な社風はもっと評価されていい。
不動産流通経営協会(FRK)新理事長に榊真二氏(東急リバブル社長)
不動産流通経営協会懇親会8ホテルオークラで)
榊氏
不動産流通経営協会(FRK)は6月1日、定時総会を開き、新理事長に榊真二氏(東急リバブル社長)を選任した。前理事長の田中俊和氏(住友不動産販売社長)は副理事長に、元理事長で相談役の竹井英久氏(三井不動産リアルティ会長)は顧問に就任した。新任の副理事長には山代裕彦氏(三井不動産リアルティ社長)、田島穣氏(三菱地所リアルエステートサービス社長)が就任した。
総会後の懇親会の冒頭であいさつに立った榊氏は、昨年度の既存マンション流通量が新築マンションの供給量を上回ったことを受けて、「優良な住宅の供給を担う新築住宅市場とストックを活用する既存住宅市場とがまさに車の両輪として市場を活性化していく状況が生まれた」とし、2025年には既存住宅市場の規模を8兆円に倍増させるという国の方針に沿うために3点の重要施策について述べた。
第1点として、不動産流通の現場と行政の橋渡しの役割を担う政策提言と調査研究に力を入れることを上げた。
第2点目には、「消費者が不動産業者に期待するサービスの質は高度化・多様化している」とし、宅建士などがそうした―ニーズに応えられるよう更なる教育研修に注力するとした。
第3点目としては、不動産流通業が「お客さま一人ひとりの夢の実現をお手伝いする情報ビジネス産業」とし、最新の情報技術を駆使してサービスの質の向上と生産性の向上に知恵を絞ると話した。
来賓として登壇した国土交通省土地・建設産業局の谷脇暁局長は、「昨年度は生産性向上元年だったが、今年度はそれを前進させる年」とし、不動産特定共同事業法を改正して、小規模な事業に参画しやすい環境を整えることなどを話した。
谷脇氏
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榊新理事長が新築マンション市場と既存住宅市場を「車の両輪」と語ったことに注目したい。FRKがこのような文言を使ったのは初めてではないか。
消費者にとって、新築、既存住宅、さらに賃貸住宅も含めて選択の幅が広がるのは結構なことだ。「FRKの会員であれば安心・安全」できるようにしていただきたい。
東急不動産 「旧軽井沢ホテル」を取得
「旧軽井沢ホテル」
東急不動産は6月1日、軽井沢の名門ホテル「旧軽井沢ホテル」を取得したと発表した。
同社は会員制リゾートホテル「東急ハーヴェストクラブ旧軽井沢/旧軽井沢アネックス」を展開しており、近接の塩沢エリアでも「東急ハーヴェストクラブ軽井沢&VIALA」を建設中で、2018年7月に開業する予定。
同ホテルを取得することで、軽井沢エリアの会員制ホテルとパブリックホテルを展開できることとなる。
旧軽井沢ホテルは、長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢に位置。地下1階地上3階建て延べ床面積約5,800㎡。客室数50室のうち約9割が40㎡超。他に木造平屋建ての教会がある。2015年7月に大規模改修済み。
ラウンジ
「女性のほうがコミュニケーション能力高い」 「じゅうたく小町」参加者の声
「じゅうたく小町部会」一周年記念式典
5月29日行われた全国低層住宅労務安全協議会(低住協)「じゅうたく小町部会」一周年記念式典で、式典の進行役を務めた大和ハウス工業人事部ダイバーシティ推進室次長・鳥生由起江氏は「いろんなことを考えるキックオフの場にしたい」と式典を締めた。
その通りだと思った。日建連「けんせつ小町」が掲げる「もっと女性が活躍できる建設業を目指して」の取り組みも、低住協の「じゅうたく小町」が〝小町クローバー〟に込めた〝住まいを通じてお客様と幸せと安心を提供する〟などの4つの想いは実にわかりいい。
しかし、式典は掛け声ばかりで一向に進まない〝女性活躍〟の実態を浮き彫りにした。2020年までに女性の管理職比率を30%に引き上げようという政府の目標「2030」なんか絶望的ではないか。以下、式典で拾った声を紹介する。男性にとって耳が痛い、ドキリとするものばかりだ。
伊藤氏
・国土交通省大臣官房審議官・伊藤明子氏 これからはモノ・ハコから生活・暮らしの産業にならなければならないが、大事なのはコミュニケーション能力、創造力。これは女性のほうが(男性より)能力が高い
・鹿島建設・須田久美子氏 〝大きなものを作りたい〟というのが私の夢で、大学3年のとき土木はわたしの天職だと思った。周囲の応援があり、阪神淡路のときは24時間仕事に没頭することができた。わたしのこれからの仕事は、100年後に土木が職業人気ランク1位になる100年プランを作成すること
・(入社12年目、子供なし) 最初の3年間は6時に起きて7時半には現場。仕事を終えて家に着くのは9時前。食事は主人のほうが上手
・(入社6年目、二人の子どもとイクメン) 育休のとき一級建築士の資格を取得した。2人目の子どもが生まれたとき主人が育休を半年取ってくれたおかげで早く仕事に復帰できた。主人の協力があるとものすごくラク。本来は男も(家事労働負担は)は同じ(この方は「妊娠発覚」という言葉を用いた。われわれの時代は妊娠が判明すると赤飯をたいて祝ったりした。意図はないのだろうが「発覚」という言葉は現在の女性が置かれている立場を如実に物語っている。戦前の不況期と同じだ。それとも今が戦争の危機か)
・(女性が現場に出ることで変わったことについて各氏) みんなで早く帰ることができた 思ったことがすぐ相談できる 職場がきれいになる 残業が減った 快適トイレは男性も使いたいという声が上がった
須田氏の特別講演
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3回にわたって「じゅうたく小町」の記事を書いた。熊谷組の黒嶋氏は「みんなで週休2日を実現しよう」と呼び掛けた。鹿島の須田氏は建設土木の仕事が職業人気№1になる100年後プランを考えているという。その一方で、ドアに背中を付けながら用足しをしなければならない建設現場のトイレがあることも分かった。
高邁な理想を掲げる女性がいる一方で、劣悪な労働環境で働いている女性がたくさんいる-このギャップをどう考えるか。残念ながら建設現場の女性の声を経営トップに伝え、実践させるのは極めて困難だろうと思う。この1カ月間、4~5人の経営トップに働き改革ついて聞いたが、全くと言っていいほど危機感など抱いていない。縮小するパイの奪い合いしか念頭にないようだ。
「じゅうたく小町」の皆さん、本気で働き方改革を実行するのなら覚悟を決めたほうがいい。参考になる小説を一つ。最近読み始めた帚木蓬生「水神」(新潮文庫)だ。農民(皆さん)がお上(経営トップ)の顔を立てながら難事を成し遂げる物語だ。
それにしても「全国低層住宅労務安全協議会」(低住協)などといういかめしい名称をよくも使い続けているものだ。記者は全労協(失礼。労働組合と思えばこれはこれで立派)かと思った。「低住協」の「低」もまた低級を連想させる。「じゅうたく小町」にふさわしい名称に変更すべきだ。「全国」組織にすることも急ぐべきだ。
建設現場の週休2日制導入 待ったなし 「じゅうたく小町」参加者に聞く(2017/5/31)
建設現場の仮設トイレ利用しない」 「じゅうたく小町」会員の声をどう聞くか(2017/5/30)
女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート(2017/1/21)
労働環境改善活動にエール 全国低住協「じゅうたく小町部会」に参加して(2016/11/26)