不動産鑑定のあり方が問われている 「士」を安売りすべきでない
「セカンド・オピニオン」を売りにしているあるWebサイトを見ていたら、たまたま記者が取材し、記事にもした公園に隣接するマンションについて、ユーザーの方が「このマンションを評価するうえで有利と言えますか」という質問をしていた。
この質問に対して、不動産鑑定士が次のように回答している。
「公園など緑が豊富な場所が近くにあるということは、一般的に環境面で優れていると評価され、価格形成要因としてプラスになると言えるでしょう。
ただし、公園が近くにある場合でも、幹線道路を渡らないと公園にいけないとか、公園まで坂道や階段があるなど立地やアプローチの内容や、特に夜間における防犯上の懸念など、実態を踏まえて評価の度合いを考える必要があります。
また、公園が近くても、最寄駅からバス便である場合やスーパーなど利便施設が近くに無い場合などは、プラスとマイナスが作用することになり、ほかの項目との相関の程度も踏まえて判断する必要があります」
さて、この不動産鑑定士の回答は質問者の意図する回答になっているか。ほとんどの方は「ノー」というはずだ。質問者は物件名をあげて「このマンション」と具体的な物件の価値について聞いている。回答者は「このマンション」の価値について答えないといけないのに、一般論で終始している。
このマンションについていえば、幹線道路もないし、近くにスーパーはあるし、駅にも近い。学校も隣接している。夜間の防犯上の懸念は知らないが、申し分ない立地条件だったためほとんど即日完売しているのをよく覚えている。SOHO的な利用も可能とする先駆的なマンションでもあった。いまの中古市場での評価も高いはずだ。
Webの不動産鑑定士は質問者と契約を交わし報酬を得て回答しているわけではないが、こんな「回答」は逆効果だ。質問者を失望させるだけだ。「士」を安売りしてはいけない。(かといって、きちんと契約を交わせば数万円のフィーが伴うだろうし、しかも回答まで時間がかかる)
記者に言わせれば、こんなことは何も不動産鑑定士に聞かなくとも近くの不動産業者に聞いたほうが早い。ほとんど瞬時に売買事例をはじき出し、適切なアドバイスをしてくれるはずだ。しかも無料で。
◇ ◆ ◇
中古住宅のインスペクション(住宅診断)に建築士や不動産鑑定士を介在させることが決まった。安心・安全の取引のためには結構なことだ。
しかし、当然のことながら報酬も伴う。仲介手数料にその費用を上乗せできるのか。記者は宅建士、建築士、鑑定士の3人の「士」(大手ハスウメーカーで構成する優良ストック住宅推進協議会には「スムストック住宅販売士」もある)を不動産取引に介在させないと「安心・安全」が担保されない、何の役にも立たない「セカンド・オピニオン」士が徘徊する市場をなんとかしなければならないと思う。屋上屋を架すことになりはしないか心配だ。
不動産鑑定士でいえば、国交省は先に不動産鑑定士の業務や魅力を紹介した動画「不動産鑑定士という選択」をホームページで公開した。へそ曲がりの記者などは〝それだけ人気がないのか〟と読んでしまう。
難しい試験を突破するために寸暇を惜しんで勉強に励んでも30歳、40歳にならないと受からず、その割に報酬が少なく〝仕事がない〟と愚痴らざるを得ず、法律を犯すと厳しい罰則もあり、弁護士ほどの称賛を得ることもなく、絶えずクライアントのプレッシャーにおびえなければならない不動産鑑定のあり方を考えないといけない。
しかし、〝武士は食わねど高楊枝〟-鑑定士の皆さんには気位を高く保ち、自らを貶めるセカンド・オピニオンなどに手を染めるべきではないと思うがいかがか。
東武野田線の踏切・線路際の難点克服 ポラス「ナナスクエア大宮・七里」
「ナナスクエア大宮・七里」
ポラスグループのポラスマイホームプラザが分譲中の戸建て「ナナスクエア大宮・七里」を見学した。東武野田線七里駅から徒歩11分の全25棟で、第1期の分譲開始からこれまで第2期を含め14戸のうち12戸を3週間で成約。極めて好調な売れ行きを見せている。信号・線路際の難点を解消する工夫を凝らし、プランも徹底した差別化を図っているのが好調の要因だ。
物件は、東武アーバンパークライン七里駅から徒歩11分、さいたま市見沼区大字蓮沼字山崎に位置する全25戸。土地面積は100.07~122.55㎡、建物面積は90.67~106.40㎡、価格は2,880万~4,180万円(中心価格帯3,000万円台・3,400万円台)。構造は木造在来工法2階建て。
2月11日から第1期5戸を分譲開始し、第2期9戸を含め現在12戸が成約済み。近く第3期を販売する。
現地は、道路を挟んで野田線の線路に隣接。近くには踏切があって信号音もかなりする。
いわゆるパワービルダーの戸建ては2,000万円台の前半から分譲されているエリアで、それより数百万円は高いにもかかわらず、振動・騒音対策を施し、3つのプランを提案するなどハード・ソフト両面で需要を喚起したのが人気の要因。成約者はこの地域に縁のある人。
同社は線路と反対側の土地でも20棟の戸建てを今春に分譲開始する予定で、全体で45戸の計画。
「WIB工法」(後方は線路)
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いつものように道すがら値段を予想した。いまは東武アーバンパークラインという愛称がついているが、東武野田線は昭和50年代から60年代にかけて建売住宅の〝メッカ〟だった。単線(現在はかなりの区間で複線化されている)だったにも関わらず豊春、南桜井、川間、梅郷、江戸川台、初石、豊四季あたりで大量の住宅が供給された。価格は3,000~6,000万円台だったが、それでもよく売れた。年間にして数百戸から1,000戸が売れたはずだ。
ところがバブル崩壊後、極端に供給が減った(ポラスの「七光台」は例外)。七里は供給が少なく、駅周辺の商業施設なども30年前、40年前から時間が止まったような古い建物が多く、街のたたずまいも田舎然としている。
そんなこんなを考えながら、道に迷い右往左往したので現地まで徒歩11分が20分くらいかかった。自分が悪いのだが腹も立ち、これじゃ売れない、まさかポラスは〝298〟つまり〝価格ありき〟の市場に参入するのではないかと思った。もしそうだったら、見なかったことにして記事にするのはよそうとさえ考えた。
ところが、現地で企画設計を担当した同社設計課企画設計係長・高橋健太郎氏の説明を聞き、3棟のモデルハウスを見て考えを改めた。この価格でよくぞやったと感動すら覚えた。ユーザーを納得させるだけの性能、プラン、設備仕様だったからだ。並みの住宅でこの価格だったらまず売れない。
高橋氏は「今は単に4LDKのプランだけでは売れない。ここでしか得られないプラスアルファを盛り込まないと」と語ったように、プランは「CAFE」「BOOKS」「ZA+DOMA」の3つ。それぞれ明確なコンセプトを示している。同社グループの他の物件もそうだが、それぞれ住空間をうまくデザインしている。
基本性能としては、線路に面した住戸に対し振動、騒音対策を採用しているのが大きな特徴で、ハンディを解消している。
振動に対しては、「WIB工法」を採用することで、振動環境を不快な振動を感じない60db未満レベルまで低減した。実際に工事を施している住戸で体感したが、電車が通ってもまったく振動は感じられなかった。
騒音に対しては、一部住戸を二重窓にしている。こちらも体験したが音は全く聞こえなかった。
優れたプランとしては、1階の天井高約2.7mはポラスグループの標準だが、食洗機がついており、床は銘木突板仕上げ、リビング床暖房、暖房付き洗面室、自動換気機能付き玄関ドアなどを採用。3,000万円台の戸建てではまずこの仕様はありえない。
小上り和室がある「BOOKS」プラン
「ZA+DOMA」プラン
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一つだけ注文。これは先月見学した同社グループの「朝霞」もそうだったし、他社のモデルハウス、モデルルームもそうなのだが、過剰装飾について。「CAFE」プラン(他のプランは抑制気味)はあらゆるテーブル、壁、棚が食器や造花などで埋められていた。保育園の運動会でもこれほど派手にはしない。
これでは、限られた予算の中で住空間を工夫し、突板を採用するなど本物志向のニーズに応えようとするせっかくのプランが台無しだ。せめて造花は観葉植物にしてはどうか。壁面には水遣りがいらないサントリーミドリエを設置したらどうか。あれやこれや飾り立てることしかしないコーディネーターの仕事が理解できない。過ぎたるはなお及ばざるがごとし。
「CAFE」プラン(上の「BOOKS」「ZA+DOMA」プランと比べていただきたい)
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ついでに東武線のイメージ、ポテンシャルの向上について。記者は東武線が嫌いではない。むしろ好きだ。まだまだ庶民が買える住宅が供給されている。
ところが一向に沿線のイメージがアップしない。これにはいろいろ理由があるのだろうが、不動産業者にも問題がないとは言えない。「2,500万円~」「2,900万円台」「3,300万円~」など都心部ではワンルームでも買えないような戸建てやマンションの車内吊り広告が野田線では幅を利かせている。安売りのスーパーでもないはずだ。こんなことをやっていたら益々街のポテンシャルを引き下げる。
わかりやすい例では駅舎が汚い。記者は最近、マンション管理員の清掃業務を取材したことがあるのだが、勤務時間中ひたすらにきれいにしている。「清掃は科学」とまで講師の方は話した。その徹底ぶりに畏敬の念すら覚えた。
また、最近の国交省のトイレに関するアンケート調査で、女性は駅や公園でトイレを利用しないことが報告されていた。
女性に好まれないとマンションも街のポテンシャルが上がらないということだ。そこで、東武伊勢崎線と都心の駅のホームを紹介する。みなさんもなるほどと思うはずだ。
東武伊勢崎線の車両(クレヨンしんちゃんのイメージは悪くないと思うが)
「梅島」駅で(黒い斑点はガムのあとか)
日比谷線の都心の駅ホーム
掃除は科学 床は朝日、窓は読売〟 マンション管理員のスゴ技を1日体験(2017/2/25)
女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30%(2017/1/12)
米国ランドバンクの事例報告 みずほ情報総研・藤井氏 国交省 空き地活用検討会
国土交通省は3月2日、第2回「空き地等の新たな活用に関する検討会」(委員長:山野目章夫・早稲田大学大学院教授)開催。空き地所有者と自治体を対象に行ったアンケート調査結果と、空き地の考え方について同省から報告が行われたほか、みずほ情報総研・藤井康幸氏が「米国のランドバンクの動向について」、千葉大学大学院准教授・秋田典子氏が「空き地等の管理と活用の実態-地域のコモンズとしての管理-」と題する事例報告をそれぞれ行った。
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配布された資料・アンケート調査結果は全体で約170ページに及ぶ読み応えのあるものだった。アンケートは予想通り、空き地所有者も行政も問題であることを認識はしているものの何もしていない実態が浮き彫りになった。事例紹介では藤井氏のランドバンクについての報告が興味深かった。
藤井氏によると、ランドバンクとは、空き家・空き地・放棄地、税滞納差押物件などを利用物件に転換することに特化した政府機関で、市場(マーケット)が見捨てた物件への対処が基本で、物件の譲渡、利活用を進めるために滞納された資産税や課徴金はランドバンクの物件取得時に帳消しされるうえ、ランドバンクの保有物件は非課税扱いとなる。
2010年の人口がピーク時より61.4%減の約71万人にまで減少しているデトロイトでは約38万区画の市内全域のうち約10万件がランドバンク保有物件だという。
クリーブランドの事例ではリーマンショック前の2004年に77,000ドルで取引された物件は、2010年にゼロドルでランドバンクに譲渡され、2012年には1ドルで個人4人に譲渡された。個人4人は自宅の庭として利用しているという。
藤井氏は「Center for Community Progress」(本部:フリント市)が説く「成功するランドバンクに共通する特性」として①ランドバンクと税滞納差押過程が結び付けられること②再生計画や土地利用計画に基づいた事業③物件の取得、譲渡などの考え方、優先順位などが透明性を有し、市民の信頼を得ていること④コミュニティ諮問委員会の設置、住民団体との協働⑤コミュニティプログラムとの整合性-などをあげている。
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以下、各委員の主な意見を紹介する。
中川雅之氏(日本大学教授) 高い地価・地代期待があるわが国ではマーケット価値がないとして〝ゼロ円〟に選別する仕組みができるかどうか
藤原徹氏(明海大学准教授) わが国では何もしない、放ったらかしにすることのコストが低いという問題がある
高村学人氏(立命館大学教授) コミュニティガーデンを支援する保有機関、財源、都市計画などの位置づけ整理が必要
小泉秀樹氏(東京大学大学院教授、臨時委員) 都市計画ではコミュニティガーデンなどへの用途変更が難しい。街づくり、土地利用へ介入する仕組みが必要
秋田典子氏(千葉大学准教授) 時間と空間をまとめてコミュニティガーデンなどの一時所有する仕組みを考えている
山野目章夫委員長 (秋田氏が所有機関を「公社のようなもの」と発言したことに対し)土地開発公社というイメージがよくないものもあるが…(国交省関係者らも苦笑した)
浅見泰司・委員長代理(東京大学大学院教授) 緑地といっても生産緑地もあれば里山もあり様々。整理する必要がある
大橋弘氏(東京大学大学院教授) 所有権と利用権をきちんと整理して利活用につなげていくべき
山野目章夫委員長 行政が汗をかいているのは理解できるが、都市計画は禁止事項が多い。何かをやってほしいという道具立てが足りない
小林秀人氏(大和リース新規事業推進室室長) 不動産は利活用を阻む私的権利が大きい。価格ゼロなど誰が決めるのか(この国では国有地がただ同然で売却される事例もある=記者)
亀島祝子氏(東急不動産鑑定企画部参与) コミュニティガーデンなどの担い手を育てていくことが求められる
母袋創一氏(長野県上田市長) 地方都市はさまざまな異なった事情があるが、ランドバンクの考え方は面白い。一石を投じる意味はある。これからは行政主導ではなく、民間の力を主体に考えていくべき
山野目章夫委員長 この検討会では地方税のあり方も検討課題に入れないといけない
空き家対策、不動産流通業はどうかかわれるか 国交省審議会が会合(2014/2/10)
浦和に春を呼ぶ 〝花より団子〟野村不動産「プラウド浦和高砂マークス」
「プラウド浦和高砂マークス」
弥生の春だ。まだまだ寒い日が続くが、毎日外を歩いていると春の風が感じられ、草木の芽吹く香りが漂ってくる。そんな春を感じさせるマンションを紹介しよう。野村不動産「プラウド浦和高砂マークス」だ。
このマンションの取材に出かける前、業界紙に目を通した。〝面白い記事はないか〟と探していたら、2月27日付「週刊住宅」に住宅ジャーナリスト・櫻井幸雄氏が寄稿した「特集 春のハウジングガイド」が目に留まった。明らかに業界関係者向けの文章だ。そのリードの部分を紹介する。
「私が務めて現場を回っていたのは、『華』を見つけるのが楽しかったからだ。見学する先々で大きな工夫、小さな工夫を発見し、発案者と話をすることを無上の喜びとした。不動産各社には凝り性の人がいて、独自の工夫をする。凝り性の人たちは、あえて工夫をアピールしない。だから、多くの購入者は工夫に気付かない。気付くことがなくても、工夫を凝らしたマンションには独自のオーラのようなものが漂い、それが『華』になっていた」
「春」とかけて「華がない」と説くレトリックが面白いのだが、どう見ても色男には見えない、体中に剛毛が生えていそうな赤鬼そっくりの櫻井氏(嘘だと思う人はご本人の似顔絵を見ていただきたい。その形相を〝売り〟にしている気配がある)が最近のマンションは「華」がないと嘆く、その対比が絶妙だ。赤鬼と親戚のようなクマバチが甘い蜜を物色して飛び回る〝姿〟を想像するだけで愉しくなってくるではないか。
記者は先日、三井不動産レジデンシャルの「一番町」を吉永小百合さんに例えたが、マンションの商品企画を「華」に見立てたことはない。取材の行き帰りに道端に咲く可憐な草花を摘んでは紙コップに活けて楽しんでいる。とりわけ花は可憐なのに独特の香りを発散するのが嫌われるドクダミが大好きで、みんなから顰蹙を買う。
これからは櫻井氏にあやかって大きな工夫は白百合かカサブランカか、小さな工夫はフグリかドクダミかなどと想像するのはいいかもしれない。
断っておくが、櫻井氏はまったく「華」がないとは書いていない。少なくなったと嘆いているのだ。「華」があるマンションも紹介しているので、興味のある方はぜひ「週刊住宅」を買って読んでいただきたい。
さて、それでは野村の「浦和」は華があるかないか。一言でいえば〝花より団子〟だ。記者は坪単価が300万円を超えるかどうかに注目していたのだが、どうやら坪280万円くらいに収まりそうだ。一昨年に坪単価330万円台の〝駅近〟三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス浦和タワー」が早期完売し、住友不動産「シティハウス浦和高砂」も坪290万円くらいだったので、それらに立地は劣らない今回の物件は300万円台の大台に乗っても不思議ではないと思っていた。
同社は浦和駅圏でこれまで20棟くらいを分譲しており、エリアを熟知している。そんな同社がしっかり今の市況を読み切り、実利を追求した結果が坪280万円だ。上田知事が知ったら〝なんだ、浦和の価値はそんなもんか〟と嘆かないか心配だが、間違いなく早期完売を狙っている。再来週に分譲される第1期の戸数にその自信が示されるはずだ。
物件は、JR京浜東北線・上野東京ライン・湘南新宿ライン浦和駅から徒歩8分、埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目に位置する15階建て全108戸(非分譲13戸含む)。専有面積は69.48~102.14㎡、価格は未定だが最多価格帯は6,000万円前後、坪単価は280万円くらいになる模様。施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は平成30年2月中旬。
現地は文化施設「浦和会館」に隣接。県庁へ徒歩2分、行政エリアもすぐ近くだ。
建物はL字型で、西向きが行政エリア方向。南側は中小のビルが建ち並んでいる。仕様レベルはこれまで分譲されてきた浦和駅圏のそれと比べ同等かそれ以上と見られる。一部オーダーメイド対応。
キッチン
エントランス
埼玉県の最高単価マンション 地所レジ・大栄不「浦和タワー」好調スタート(2015/12/14)
野村不動産HD 介護住宅事業へ参入 創生事業団と業務提携
野村不動産ホールディングスは3月1日、創生事業団(本社:福岡市、代表:伊東鐘賛氏)と業務提携し、創生事業団の100%子会社であるJAPANライフデザイン(本社:港区、代表:伊東鐘賛氏)へ第三者割当増資の引受け(議決権割合49%)を行い、資本提携契約を結んだと発表した。
同社は、中長期経営計画で新たな成長領域の1つに高齢者住宅事業を加え、2015年4月に野村不動産ウェルネスを設立。サービス付き高齢者向け住宅への参入準備を進めている。創生会グループとの業務提携、資本提携は介護住宅事業参入への一環。
JAPANライフデザインは首都圏の調布(72室)、不動前(61室)、六郷土手(41室)の介護付有料老人ホームを運営している。
じわり積みあがる各社のマンション完成在庫 期末控えどうなる
ここにきて変調をきたしているマンション市場だが、気になるのは3月期末に向かって完成在庫が積みあがっていることだ。他の商品と比べ、完成在庫は直ちに不良在庫になるわけではなく、市況が右肩上がりの局面では優良資産にもなりうる。また、適正な在庫を抱えることは、多様なお客さんのニーズに応えることにもなる。かつてマンションの〝王者〟大京の横山修二氏は「在庫は年間供給量の1カ月分を抱えたほうがいい」と話したことがある。
貸出金利も当時といまは銀行の格段の差がある。とはいえ、在庫を抱えることによる販管費の増大は収益を圧迫する。期末まで1カ月。各社の年間販売戸数からしてさばけない戸数ではあるが果たしてどうなるか。主な各社の完成在庫数を見た。
◇ ◆ ◇
三井不動産は平成28年3月期末より約100戸在庫を増やしているが、平成29年3月期の計上予定戸数のわずか3.4%だ。極めて少ない。問題は全くない。
住友不動産は他社と比較すると突出しているが、これはいつも通り。利益率も高い水準を維持しており、28年3月期末より在庫は約140戸減らしている。一部の物件では竣工までに完売する方針に転換するものもみられる。今後の動きに注目したい。
三菱地所もじわりと在庫を増やしている。ただ、こちらも計上予定戸数の1割未満で問題はなさそうだ。
問題は野村不動産だ。今期末に349戸の完成在庫を抱えたことがニュースになったほど、同社は完成在庫がない会社として知られてきた。〝即完の野村〟が業界にずっと浸透してきた。平成29年3月期第2四半期決算では完成在庫は600戸を突破していた。その後、12月期末は540戸に減らした。あと1カ月でどうなるか。在庫減に発破がかかっているはずだ。
東急不動産、大京、大和ハウス工業、日神不動産などは新規供給を抑制気味で販売に注力していることがうかがわれる。このところ郊外部を中心に供給を増やしているNTT都市開発は在庫を減らしつつあるが、計上戸数と比べればやや過大だ。
積水ハ「グリーン ファースト ゼロ」 第26回地球環境大賞「経済産業大臣賞」受賞
積水ハウスは2月28日、第26回地球環境大賞(主催:フジサンケイグループ、後援:経済産業省、環境省、文部科学省、国土交通省、農 林水産省、一般社団法人日本経済団体連合会)で同社のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の取り組み「グリーン ファースト ゼロ」が評価され「経済産業大臣賞」を受賞したと発表した。
インテリックス 小口化商品第2弾「アセットシェアリング横濱元町」が完売
インテリックスは2月28日、不動産特定共同事業法に基づく不動産小口化商品「アセットシェアリング」の第二弾「アセットシェアリング横濱元町」(総口数1,050口)を完売したと発表した。
「アセットシェアリング横濱元町」は、みなとみらい線元町・中華街駅から徒歩5分の「MID横濱元町」(B1・1F・2F・3F)。募集総額(総口数)は10.5億円(1,050口)、申込単位は1口100万円単位(5口以上250口以下)。収益分配金(支払月) は年2回(7月及び2月)。運用期間は30年間。予定利回りは5.2%。
購入者の概要は平均年齢約70歳、平均口数約20口、出資者数52名(うち法人2名)。
シリーズ第三弾「アセットシェアリング青山」、第四弾「アセットシェアリング新横浜」も近日発売する予定。
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この物件の4階以上の一般分譲マンションについては昨年2月に取材している。坪単価は330万円の高額だったが、こちらも早期完売している。
高いハードル越える 「東京都子育て支援住宅認定制度」第1号 「イニシア西新井」
「イニシア西新井」完成予想図
都の認定マーク
コスモスイニシアが3月に分譲する「イニシア西新井」のモデルルームを見学した。東京都が2016年2月から始めた「東京都子育て支援住宅認定制度」の分譲住宅としては初の認定物件で、高いハードルをクリアしたマンションだ。
物件は、東武伊勢崎線西新井駅から徒歩9分、足立区島根4丁目に位置する9階建て全81戸。専有面積は63.64~110.12㎡、価格は未定だが、坪単価は200万円台の前半になる模様。竣工予定は平成30年1月下旬。施工は大豊建設。
現地は、年間160万人が利用する複合文化施設「ギャラクシティ」やバーベキューもできる「舎人公園」などが近接。
2016年2月から運用を開始した「東京都子育て支援住宅認定制度」で分譲マンションとして初めて認定された物件(賃貸マンションは3件)であるのが最大の特徴。認定基準である必須項目60をすべてクリアし、選択項目も全31項目のうち12項目に適合している。現在、認定マンションはこの物件しかない。
建物は、コの字型で「mu.su.bi.」をコンセプトに中庭と環境空地を設置。エントランスホールには防災備品を備える。住戸は東向き、南向き、西向き。
コミュニティを支援するためアウトドア用品メーカー「Snow Peak」とコラボし、アウトドアグッズを利用できるようにする。また、「HITONOWA INC.」サポートによるワークショップの開催を通じてコミュニティ活動を支援していく。
同社の担当者は「当社はこれまで足立区内で26棟2,000戸近い実績がある。通常のマンション管理だけでなく、親和性の高いチルドレンと防災を〝結ぶ〟ことでコミュニティ支援を行っていく。専有部も都の認定制度に適合させるために様々な工夫を盛り込んだ。今のところ足立区内からの反響が45%であることからも広域的に集客できるのではないか。この物件をきっかけに当社の設計基準を変更することも考えている」と話した。
チャイルドミラー(左)とシャッター付きコンセント
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同様の子育て支援マンション制度は埼玉県が数年前から実施しており、すでに20数件の認定物件がある。記者は同レベルのマンションだろうと高を括っていた。
ところが、都の認定基準リストを手渡されて驚愕した。ものすごくハードルが高いのだ。チェック項目は12ページにもわたり、段差解消、転落・落下防止、シックハウス対策、防犯対策、防音性能などはもちろん、住戸内の設備についてもチャイルドロック、指ばさみ防止、シャッター付きコンセント、引き戸の多用、ドアの幅など細部についても細かな基準が設けられている。
管理・運営に関しても、ウェルカムパーティーや不要になった子ども用品の貸し借り、フリーマーケットの開催、さらには地域の人たちも参加できる餅つきやラジオ体操の実施、町会、自治会、子ども会などと連携した活動まで必須項目にしている。
詳しくは書かない。都の高いハードルを乗り越えた極めてレベルが高いマンションであるのは間違いない。トイレドアの幅を750ミリ確保しているマンションはそうない。
参考までに浴室のチャイルドロックを紹介する。子育てをやったことのない人は信じられないだろうが、子どもの溺死があるのだ。マンション管理業協会理事長・山根弘美氏(大和ライフネクスト会長)が3年前に語った次の言葉を当時の記事から引用して紹介する。
「私は結婚して35年。単身赴任で20年。子どもは6人いた(これは後述する)。今日終わったら、かみさんに会いに行くんです」
「山根氏はポケットからネーム入りのボールペンを取り出した。『これぼくの死んだ子どもの誕生日。1988年7月25日です。命日は1989年7月26日。生まれた翌年の翌日に死んだんです。10㎝しか水が入っていなかった浴槽に伝い歩きして入ったんです。だれも気が付かなかった。ぼくはこの子と二人分生きている』」
単価については「坪単価200万円でどうですか」と聞いたら、ほぼその通りのようだ。リーズナブルな価格だと思う。
引き戸 引き残し
◇ ◆ ◇
埼玉県の子育て支援マンションについて。はっきり言って、都の制度と比べるとハードルは低い。認定リストは数ページくらいしかないはずだ。普通のマンションなら適合するような項目が多い。
しかし、都に対抗するわけでもないだろうが、県は29年度予算案で「子世帯向け新築住宅取得支援事業」を新たに設け約2.5億円の予算を計上している。子どもが3人以上の世帯が対象で、戸建ては100㎡以上、マンションは4LDK以上または80㎡以上の認定基準を満たした新築住宅について最大50万円を補助するというものだ。予算が通るのは間違いなさそうで、これは子育て世帯にとって朗報だ。
一方の都の制度は〝お墨付き〟だけで、補助金などの具体的な支援制度は各区市町村に委ねている。現在実施しているのは、都の制度が始まる前から行っていた墨田区と世田谷区、それと都の制度と同時に開始した八王子市しかないという。
この認定基準を満たすマンションが1物件、しかも足立区だけということをどのように受け止めるべきか。越えられないハードルはやる気をなくすし、かといって低すぎても意味がない。難しい。
浴室ドア(左)と室内物干し
山根氏の記事 「これからのマンション管理と管理会社の活用」セミナー開催(2014/3/24)
三井不動産&青木茂建築工房 練馬区のリファイニング見学会に200名
「早宮サンハイツ」
三井不動産は2月27日、青木茂建築工房のリファイニング建築手法を活用し、旧耐震基準建物を新築並みに再生する第一号案「早宮サンハイツ」の工事が完了したことに伴う見学会を実施。約200名が参加するなど、リファイニング建築に対する関心の高さをうかがわせた。
物件は、東京メトロ副都心線・有楽町線氷川台駅から徒歩4分、練馬区早宮1丁目に位置する昭和52年に竣工(築40年)した鉄筋コンクリート造4階建て全28戸の賃貸マンション。専用面積は42.15㎡・49.50㎡。
東日本大震災後の耐震性に対する不安の高まりの中で入居率が46%まで落ち込み対応に苦慮したオーナーが同社に依頼して青木茂建築工房のリファイニング手法を選択したもの。
廊下側の耐力壁厚を120→150に変更、Exp.J幅を60→130に拡幅、既存塔屋及びRC階段の撤去(鉄骨 階段新設)と既存エントランス庇などを撤去することで軽量化を図り、耐震指標Is値を0.6以上確保。現在のニーズに合う間取りへの変更、内外装及び設備の一新、共用廊下の段差解消・エレベータ新設によるバリアフリー化、現行法令へ適合させるための各種工事を行った。施工は内野建設。工期は約8.5カ月。
建物は、青木茂建築工房と業務提携しているりそな銀行とERIソリューションとで「耐用年数推定調査」を行い、税務上の耐用年数50年超を取得して長期融資が受けられるようにしている。2月末に検査済証を取得し、三井不動産レジデンシャルリースがサブリースする。今後、緊急輸送道路沿いの建物として耐震助成金の交付も受ける予定。
オーナーは、「東日本大震災後、入居者から『耐震性は大丈夫か』という指摘を受け、耐震診断を受け問題があることが判明してから3年間は退去者が出ても全く入居者が集まらなかった。たまた青木先生のリファイニング手法をテレビで拝見して、2014年に三井さんが主催したセミナーに参加して大規模修繕を決断した」などと語った。
賃料は109,000(41.25㎡)~、121,000円(49.50㎡)~で、三井不動産レジデンシャルリースの担当者によると「賃料設定は新築相場の90~95%だが、競争力はある」と話した。
青木氏
◇ ◆ ◇
今回に限ったことではないが、リノベーションとは比較にならないほどリファイニング手法のレベルの高さを再認識した。
従前の設備仕様がどうなっていたかはわからないが、空調、給排水管、電気設備、外構を一新し、オートロック、エレベータ付き、Low-e複層ガラスなどの共用部分はもちろん、専用部は上がり框の高さ50㎝を確保して置床とし、トイレ、洗面、浴室のバリアフリー化を図っている。ドアは引き戸、スライドウォールを多用して機能性を高めている。
デッキを新設し、ルーバーで意匠も一新した
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気になっていることを青木茂氏に聞いた。「先生、先生も永遠に生きられるわけではないですよね。技術の習得には時間がかかるでしようし、どう継承していくかも課題ではないですか。教育体制はどうか、弟子は育っているのですか」と。
青木氏は笑いながら「いろいろ話しているが(学科の新設など)全く動きはない。しかし、一人博士号を取得したし、もう一人予定もしている。すべて自前だが着々と進めている。三井さんとはあと2件のプロジェクトが進行中で、ミサワホームさんの案件もある」と語った。
それにしても動員力がすごい。デベロッパーのマンション見学会には数えるくらいしか集まらないのに、この寒い中200名も集まるのが信じられない。
もう一つ。いつも配布される資料はA版8折で文庫本サイズにして16ページ立て。文字が小さく年寄りは読みづらいのが難点だが、必要な事項が過不足なく盛り込まれている。リーフレットのつくり方もさすがというべきか。
例えば1階の居室の天井高。従前は2.25mになっているが、改修後は2.4mを確保している。これについても「既存建物は1Fのスラブがなく、木軸で組まれていた。今回は1Fに土間コンクリートを新設し、湿気対策を行う。置き床高さ調整によりCH2550確保(cf4F:2400、3・2F:2450)」とときちんと記載されている。1階の天井高が高くなったのは床をそれだけ掘り下げたからだ。
参考までにこれまでの記事を添付する。「新建築」の2017.2でも青木茂氏の「長寿命化のための手法 リファイニング建築による集合住宅の再生」が掲載されている。
担当者の説明を聞く参加者
築44年の寄宿舎をリファイニング手法で賃貸に一新 青木茂建築工房(2016/12/21)
三井不動産 青木茂建築工房と業務提携 リファイニング建築手法を活用(2016/8/30)
建築の魔術師・青木リファイニングの真髄を見た 「竹本邸」完成見学会(2015/11/17)
リファイニング建築のすごさを見た 「千駄ヶ谷緑苑ハウス」完成(2014/3/24)
全てが腑に落ちる 首都大学東京「リーディングプロジェクト最終成果報告会」(2014/3/19)
「再生建築学の設置を」 青木茂氏、三井不動産のセミナーで語る(2013/12/10)