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久光社長

 もうすぐ喜寿(77歳)を迎えるというのに、忙しい仕事の合間を縫って趣味の〝モグリ〟(スキューバダイビング)に近年は年間約70回、この21年間に約1,100回も海外に足げく通っているマンション業界のご意見番、トータルブレイン・久光龍彦社長に話を聞いた。

 最近のマンション市場や業界の課題などについては、記者が書く記事より「週刊ダイヤモンド別冊」(2017年5月27日号)を読んでいただきたい。極めて的確に供給動向、販売状況、建築費の動向をとらえていらっしゃる。

 いまの市場をけん引している〝元気印〟ユーザーは①パワーカップル(共働きの年収2,000万円以上の層②アッパーミドル(上場企業に勤務するサラリーマンや、その親の支援が受けられる層③アクティブシニア④可処分所得が多いシングル層⑤景気の動向などあまり気にしない富裕層-というのはその通りだと思う。こうした層にターゲットを絞り、ニーズをくみ上げ、あるいは掘り起こせば売れ行きは堅調に推移する。

 問題は、圧倒的な需要層である第一次取得層向けのマンションの動向だ。久光氏は「そうした層の取得能力は坪単価180万円、グロスにして3,600万円前後だが、建築費の高騰などからいまは70㎡台で坪単価は210~220万円、グロスで4,600~4,700万円になっている。つまり、売り値を15%下げないと、雇用や社会保障など将来不安を抱える中小企業などに勤務するサラリーマンは買えない」と指摘する。

 では、分譲価格は下げられるかどうか。久光氏は厳しいとみる。今は専有面積圧縮やグレードダウンなどでグロス価格を抑制しているが、分譲価格に占める建築費の割合が高い郊外部=第一次取得層向けは国の働き改革圧力が強まることによってゼネコンも労務費などを建築費に転嫁せざるを得なくなるというのだ。

 久光氏がもっとも懸念するのは土曜日を休日にする動きだ。オリンピック関連の工事が終了する2~3年後は週休2日が建設業界でも始まるという。職人の給与は日給・月給だから、就労しなくても賃金は下げられず、工期は長くなり、コストアップにつながる。価格に転嫁せざるを得なくなる。

 ところが、先に書いたように中堅サラリーマン(言われるところの「ミレニアル世代」)の取得能力は一向に上がる気配がないから、利益率を下げざるを得なくなるという図式は避けられない。

 「デフレ脱却は絶望的。建築費は下がらない。若年層の購買力は上がらない。消費増税が待ち構える。オリンピック後が心配だ」と〝元気印〟の久光氏はペシミスティックに捉える。

 記者も同感だ。われわれ団塊の世代も若い時は生活が苦しかった。しかし、まじめに働けば賃金は上がるという明るい未来像が描けた。いまのミレニアル世代は、現在の生活に満足していながら将来の雇用や社会保障に漠然とした不安を抱える。消費については常にマイナス思考だ。この意識(社会)を変えないとマンション市場は先細る一方だろう。

◇      ◆     ◇

 「建築費は下がらない」根拠として、日本建設業連合会(日建連)・中村満義会長が3月28日付で政府の「働き方改革実現会議」についてコメントを発表しているので紹介する。

 「本日(3月28日)、政府は『働き方改革実現会議』においてにおいて、『働き方改革実行計画』を策定されました。

 その中で、これまで、時間外労働の上限規制の適用除外であった建設業についても、5年間の猶予期間をおいて適用することになりましたが、日建連としては、建設業における担い手確保のためには、長時間労働の是正は不可欠であるとの石井国土交通大臣の強いご指導に従い、政府の方針に従うことを決断いたしました。

 建設業の長時間労働の是正には週休二日の定着が必要でありますが、週休二日を定着させるには、工期の延伸などの困難な課題があり、政府に対して官民の発注者をはじめ、社会全体に受け入れていただくことが前提であると申し上げたところ、政府としても必要な協力を惜しまないと、総理からも表明していただきました。

 建設業としては、この政府の決定を真摯に受け止め、長時間労働の是正に精いっぱい努力してまいります」

「共働き中心のマンション市場に激変」 トータルブレイン久光社長(2016/8/12)

情報の十字路に立つ トータルブレイン・久光龍彦社長のアドバイス(2015/11/30)

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木島社長

 ロイヤルハウジングが、同社としては4棟目のリゾートマンション「プリンシパル軽井沢」を分譲する。JR軽井沢駅から徒歩約14分、軽井沢町軽井沢東に位置する全19戸。1戸当たり平均35坪前後、価格は1億円前後(坪単価300万円前後)の予定。

 8月9日に軽井沢大賀ホールでパーティを開き、モデルルームを公開。一般分譲は行わず、これまで同社と取引があった顧客を優先して販売する。

◇       ◆     ◇

 同社・木島寛社長(70)と久々にお会いし歓談した。木島社長には公私にわたりお世話になっており、記事にできないことのほうが圧倒的に多いのだが、その歓談の中で「軽井沢」の話が出た。とっさに「坪300万円でどうですか」と聞いたらその通りだった。

 主力の不動産仲介業は堅調だ。平成29年3月期の仲介手数料収入は前期比 10%増の約40億円強、不動産売買が約35億円、インテリア部門が約14億円。

 同社は今年3月、高齢者事業やリゾート事業に力を入れるため、フジテレビ「ニュースJAPAN」の金融経済アンカー、「日経CNBC」の経済キャスターなどの経歴を持つ谷本有香氏を上席執行役員として招へいした。

 木島社長は古希を迎えた。それでも毎週、約30カ所ある店舗を隈なく回っている。視力は1.5だという。

 インタビュー後、昼食をおごってもらったのだが、糖尿のためカロリーを抑えている記者はサンドウィッチ、木島社長はその数倍のカロリーがありそうなスフレドリアを注文した。元気が出るはずだ。

 元気の源は「出しゃばらないこと。マイペース。人生はロマン」と語った。記者のモットーは「人生は愛」、木島社長は「ロマン」。「愛」も「ロマン」も似たようなものだが、生き方は真逆。視力からして世の中・経済を見る眼力や胆力は普通の人の数倍であることを付け加えておく。

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「日比谷パークフロント」(左のケヤキは高さ15m) 

 東急不動産は5月26日、植物が持つ力を最大限に活用し、日本の新しい働き方をデザインする「Green Work Style Project」の第一弾「日比谷パークフロント」が5月31日(水)に竣工するのに伴い、プレス説明会・内覧会を行った。同社は本拠の渋谷や竹芝の再開発など6つのビッグプロジェクトが進行中だが、その勢い見せつけるビルが完成した。

 物件は、同社とケネディクス、日本政策投資銀行の3社共同事業として開発を進めてきたもので、東京メトロ千代田線他「霞ケ関」駅から徒歩3分、千代田区内幸町2丁目に位置する地下4階地上21階建て延べ床面積約67,000㎡。設計・施工は鹿島建設。制振構法を採用。同社がプロジェクトマネージャーとして開発およびリーシングを行い、竣工後はマスターリース兼プロパティマネージャーとして管理運営を実施する。

 1フロア約630坪で、天井高は最上階が4mで標準階は3m。サッシは幅3200ミリの特注品を採用。標準階の賃料は4万円/坪。現在約6割がテナント決定済み。

 「Green Work Style Project」は、働くことで生じる課題を、植物の力によって活動的・精神的に"デザイン"(解決)し、オフィスワーカーの作業効率や生産性の向上、コミュニケーションの活性化などを目指すもの。

 デザインアソシエーションNPOとの共同プロジェクトで、コンセプト構築には同NPOの理事も務める脳科学者の茂木健一郎氏、プラントハンター・そら植物園主宰・西畠清順氏、意と匠研究所代表・下川一哉氏が参画している。

 外構、オフィスロビーなどには日比谷花壇、設計施工の鹿島建設、デザイン監修の日建設計、ランドスケープを担当したランドスケープデザイン、さらには同社グループの石勝エクステリアなどが協業している。

 説明会に臨んだ同社取締役専務執行役員都市事業ユニット長・岡田正志氏は「Green Work Style Projectのコンセプトに基づき公園の中で働いているようなオフィス空間とホテルのようなグレード感を演出した。今後の渋谷や竹芝のプロジェクトもこのような地域と環境との共生を目指す」などと語った。

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ガーデンプロムナード

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1階エントランス

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2階ロビー

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 同社には申し訳ないが、発表会の冒頭にあいさつした同社取締役専務執行役員都市事業ユニット長・岡田正志氏以下の概要説明、3名によるトークセッションはほとんど耳に入らなかった。聞いていなかった。

 発表会の前にビルの外周部や2階のエントランスロビーの植栽・デザインにほれ込んで、また、会見場の20階から眺めた日比谷公園の圧倒的な緑とビルの支配人で同社野球部監督・潮田喜一郎氏とばったり会って舞い上がってしまったからだ。説明を受けるまでもなく、極めてレベルの高いビルであることを理解した。

 ビルの規模や立地、緑の総量では、このビルを上回るものはたくさんあるはずだが、借景の日比谷公園の緑をビル内に取り込んだコンセプト、その緑の質の高さや同社グループの最高級ホテル「ザ・キャピトルホテル東急」とそん色ない(これは異論があるかもしれないが)デザインにほれ込んだ。

 例えば樹種。同社によると100種以上の中高本を敷地内と2階ロビー、屋上などに植えている。シンボルツリーのケヤキは高崎の山から運んできたもので高さ16m。バクチノキ、ナンジャモンジャなど見たこともない樹木もたくさんある。この質にも驚いた。

 内覧会では、仕事もできる入居者専用のスカイガーデン(150坪)とスカイラウンジ(50坪)、2階グリーンラウンジ、セキュリティゲートとエレベータの連動による先行階登録システム「ELE NAVI(エレ・ナビ)」、黒が基調の1階エントランスから2階ロビー、ナナメ壁かどか印象に残った。女子トイレの夜の女性に変身する女優ミラーは意味不明。

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2階の生木

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 同社は、かつて街づくりや環境共生の取り組みでは他社を圧倒していた。「かつて」と書くのは、バブル崩壊後はやや精彩を欠いていたからだ。

 しかし、「新青山東急ビル」(2015年竣工)、「東急プラザ銀座」(2016年竣工)「世田谷中町プロジェクト」(2017年一部竣工)などで、そのDNAは健在であることを示した。

 今回のビルは「Green Work Style Project」の第一弾だが、今後目白押しの渋谷や再開発、竹芝のビッグプロジェクトが楽しみだ。同社の勢いを見せつけるビルが竣工した。

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スカイガーデン(ここで仕事をするのも可能)

東急不動産 「世代循環型」の街づくり「世田谷中町プロジ ェクト」一部完成(2017/4/28)

東急不 「東急プラザ銀座」3月31日開業 ターゲットは玄人の「大人」(2016/3/28)

 東京建物他「Brillia Tower代々木公園」第1期分譲は全195戸のうち半分以上の116戸に達することは先日報じたが、坪単価は520万円であることが同社広報を通じて知らされた。

 率直に言ってずいぶん安いと思う。だからこそ116戸も一挙に供給できたのだろう。この単価が今後の都心部や駅近マンションのメルクマークになるはずだ。

東京建物他「Brillia Tower代々木公園」 第1期分譲は全195戸のうち116戸(2017/5/22)

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屋内消火栓放水体験(消防士でも17~19秒かかるのに同社の若い女性の記録は2秒とか)

 三井不動産レジデンシャルサービスは5月25日、マンション管理について「見て、触れて、学べる」体験型研修施設「すまラボ」を豊洲本社内に開設し、6月から同社が管理するマンションの管理組合・居住者にも公開すると発表した。

 東京都から東京都職業訓練校としての認定を受け、訓練校初の「コンシェルジュ養成コース」をはじめとする社内研修のほか、管理マンション居住者や近隣地域住民を対象としたコミュニケーションイベントスペースとして利用できるようにしている。

 「すまラボ」では、「火災時の実物消火栓での放水体験」や「避難の際のバルコニー隔壁板蹴破り体験」など多くの体験型研修企画を盛り込み、従来の施設とは一線を画した体験型コミュニケーション研修施設になっている。

 発表会に臨んだ同社執行役員・山村勝治氏は、「私が入社した昭和62年はまだ〝住宅すごろく〟(国土交通省調査による永住希望は31.1%)が通用していた時代だったが、現在は当社が管理する約25万戸のマンション居住者の65%(同52.4%)が永住を希望されるなど劇的に変化した。これまでの『安心・安全』に加え、『快適』『便利』へとお客さまのニーズは多様化・高度化している。ハードはもちろん、変化する居住者ニーズに対応するためソフトを含めた管理の品質の向上を図るのが目的」と開設の理由を話した。

 同社関係者によると「ビル1棟が施設の会社もあるが、このようなソフトを重視した体験型の施設は業界初だと自負している」と語った。

 場所は、東京メトロ有楽町線豊洲駅から徒歩6分、NBF豊洲キャナルフロント5 階。面積は約230坪。エントランス、コンシェルジュカウンター、専有部モデルなど11のエリアに分かれている。

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隔壁板け破り(ハイヒールのヒールで蹴ったほうが安全だと記者は思う)

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 マンション管理会社はほとんど情報開示をしないのも原因だろうが、よくもまあ「マンションは管理を買え」などと恥ずかしい記事を書いてきたものだと改めて感じた。驚愕ものの見学会だった。

 これまで、管理会社の研修施設は3カ月前、大京アステージの施設で1日体験取材をしており、三井不動産レジデンシャルサービスの「月島」で2度くらい取材したことがある。長谷工コミュニティの施設もずいぶん昔だが見学している。

 これだけで同業他社との比較は難しいが、同社関係者が「うちが初めてだと自負している」の言を借りれば、「驚愕もの」という表現は的を外していないのだろう。

 マンションの基本的な構造、設備仕様、管理会社の日常業務などはどこにでもあるが、隔壁板を破るのにどれだけの力が必要なのか、スプリンクラーが作動したら1分間に約80リットルの水が出るそうだが、それがいったいどのようなものかを見たり、消火時間を競い合ったりできるとか、避難はしごの使い方などが体験できることなど初めての経験だった。

 さらにまた、バリアフリー法と建築基準法の定めるスロープの差がどのようなものであるかも確認できる。4階の「お客さまセンター」では、スタッフが1日24時間365日体制でどのような対応をしているかも、ガラス越しに見ることができる。このガラスがまたスグレモノで、スイッチ一つでスモークガラスに変わり中の様子が見えなくするようにもできる。

 これを見て、マンションの窓に採用したらカーテンが必要なくなるととっさに考えたが、相当高価なものらしく一般に普及するのは難しいとのことだった。

 「お客さまセンター」では1日300~350件の電話による相談に、平日日中は7~8名、夜中は2~3名で対応しているという。

 相談内容は同じようなものは多くて10%くらいだというから、実に多岐にわたっていることも分かった。

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専有部分の裏側エリア

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いろいろ設備エリア

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 同社は、この施設を管理員(同社はライフサポーターと呼ぶ)の研修や管理組合など向けに開設したが、記者はマンション購入を検討している人向けにも公開してはどうかと思う。モデルルームなどではここまで基本性能、構造、マンションの管理がどうなるかを説明しない。仮に口頭で説明してもユーザーが深く理解することは不可能だ。

 ここに来れば、それこそマンションのイロハが分かる。同社と同業他社との比較(劣っているものは見せないだろうが)が一目瞭然となれば、マンション販売促進につながる。

 もう一つ考えたのは、近い将来深刻化するマンション管理員不足に対応するため、高いスキルと人材確保のために同社は先手を打ったのではないかということだ。

 マンション管理業協会の岡本潮新理事長は、就任会見の場で「マンション管理は階層でいえばデベロップメントの下支え的な位置にランクされている。ハード・ソフト両面で事業体としてきちんと整備しないといけない」とし、私見としながらも女性・高齢者・外国人の活用は避けられないと語った。

 今回の「すまラボ」は管理組合に管理の質とソフトサービスの違いの「見える化」を図った。同業も対応を迫られるのは必至だ。新たな管理会社同士の競争に同社は火をつけたのではないか。マンション管理会社の変更のことをこの業界では「リプレイス」と呼ぶそうだが、劣悪なサービスしかしない管理会社は「リプレイス」される動きが加速するのではないか。

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水を操るエリア

マンション管理協 新理事長に岡本潮氏(東急コミュニティー会長) 山根氏は相談役(2017/5/18)

〝掃除は科学 床は朝日、窓は読売〟 マンション管理員のスゴ技を1日体験(2017/2/25)

 

 

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「HEBEL HAUS CUBIC roomy(ヘーベルハウス キュービック ルーミー)」

 旭化成ホームズは5月24日、2階建て戸建住宅の主力商品「ヘーベルハウス キュービック」の新モデル「HEBEL HAUS CUBIC roomy(ヘーベルハウス キュービック ルーミー)」を6月1日より発売すると発表した。静岡県富士市にある同社の住宅総合技術研究所でモデルハウス見学会を行った。

 「キュービック ルーミー」は、ロングセラー商品であるシンプルな立方体をベースとした箱の家「キュービック」のデザインコンセプトをそのままに、2階の天井を押し上げるという発想で空間を広げ、解放感のある2階リビングや使い方を楽しめるロフト空間を提案する商品。屋根庇や軒樋が外壁面から突出しない、南面を3.5寸勾配、北・東・西面を15.7寸勾配とするこれまでのヘーベルハウスにないアシンメトリック(非対称)な「偏芯寄棟屋根システム」を新たに開発し、斬新で美しい箱型フォルムを完成させた。

 南面の緩勾配天井による伸びやかな吹き抜け「ロフティルーフ」や、北面の急勾配天井に沿って生まれる広がりのあるロフト「ルーミーロフト」を提案しているのが特徴で、ZEHにも対応できるよう太陽光発電パネルの搭載容量を増やしている。

 メインターゲットは、延床面積30~40坪程度の単世帯一次取得者とし、年間販売棟数250棟を目標としている。延べ床面積約31.36坪のプロトタイプの税抜き価格は2,640万円(坪単価84万円)。

◇       ◆     ◇

 建物形状が7,320ミリ四方のコンパクト型にしてはよく工夫されたモデルハウスだと思う。だだ、2011年に発売した35.4坪「そらのま+」、2013年発売の35.8坪「STEP BOX」、2014年発売の37.8坪「屋根の家」と比べると、4~6坪狭く、ロフト空間はいつも見ているのでそれほど強い印象は残らなかった。 

 同社マーケティング本部次長兼同本部商品企画部長・加藤明氏が「好みが分かれる商品」と語ったように、一定の層に受け入れられるプランだと思った。「キュービック」にそれだけ選択肢の幅が広がったということだ。

 気になったのはやはり天井高だった。ロフト「ルーミーロフト」は最大約3m(ロフト部分は1.4m)はいいとしても、1階や2階の天井高は2.4mだ。同社は1階床を掘り下げたりスキップフロアを採用したりしてメリハリの空間を演出してはいるが、基本階を高くするのが課題だと思う。

 ロフト空間や天井高とも関連するのだが、今回の新商品のロフト床面積は3.57坪で、空間にすると8.3㎥になる。一般的な寄棟空間の5.1㎥より約3㎥広くなる。この空間価値をどう評価するか。空間価値で測らないといけないことは分かっていても、どうしても坪単価でしか測れなくなっている。新たな空間価値を測る物差しが必要だと改めて感じた。

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「ロフティルーフ」と「ルーミーロフト」

旭化成ホームズ、勾配屋根ニーズ取り込む「ソフィット」発売(2014/11/18)

 「このほど」の記事が多すぎるとこのほど(5月3日)、当欄で書いたばかりだが、5月23日付「住宅新報」は「このほど」と日にちの記載がない記事が46本のうち24本もあった。

 日にちが明記されなくても不都合が生じない記事はもちろんある。しかし、「三菱地所ホームは4月29日、神奈川県横浜市のみなとみらい地区に初のリフォームショールームをオープンした」と、3週間も前の出来事に日にちを入れる一方で、「NTT都市開発はこのほど、牧貞夫社長が取締役相談役に退き、中川裕副社長が社長に昇格する人事を発表した」と平気で書く。人事発令の日付は極めて重要だと記者は考えるし、大手上場会社の社長人事に〝このほど〟とは失礼極まりない。

 さらにまた、「『中高齢者の農業参加と住まい』について研究する会がこのほど発足した」とあるが、これは会の名称が「中高齢者の農業参加と住まい」なのか、ほかに正式な名称があるのか全く不明。もちろん「このほど」もいつのことかさっぱりわからない。

 不思議なのは、先週の5月12日、日本郵政が野村不動産ホールディングスの買収を検討する旨のビッグニュースが飛び込んできたのに、同紙はこれにまったく言及がないことだ。取材する時間はたっぷりあったはずだ。無視する出来事では絶対にないはずだ。

 1面の企画記事は、デベロッパーなど34社の平成29年3月期決算と次期業績予想の数値が記載されているのだが、売上高、経常利益、純利益の数値と前期比の増減だけ。専門紙のやることか。いっそやるなら全ページを割き、他のデータも盛り込んでそのページだけ切り取ればいつでも読めるようにすべきだ。

 是非はともかく、週刊新潮と週刊文春が取次店を巻き込んで〝スクープ〟〝特ダネ潰し〟合戦を展開しているというのに、わが業界紙はなんとのんびりしていることか。「住宅新報」1紙になったら少しは改まるかと思ったが絶望的になってきた。(記者は1年前、同紙に「このほど」はやめたほうがいいと伝えている)

慣用句か枕詞か なぜか頻繁に登場する「このほど」 不動産業界紙の記事(2017/5/3)

 

 

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積水ハウス「グランドメゾン品川シーサイドの杜」モデルルーム(全てが本物の中低木)

 ずっと以前から気になっている分譲マンション・一戸建てのモデルルームのインテリアについて書く。断っておくが、記者は素人だ。しかし、自分で油絵を描くし、少しは美醜を分ける素養があると思っている。

 モデルルームではほとんどすべてをチェックするが、もっとも重視するのは設備仕様レベルとデザイン(単なる意匠ではなく、あえて言えば品格)だ。最近は、建築費の高騰でどんどん貧しくなってきている。大理石や御影石の天板などはともかく、突板仕様のドア・建具などすっかり影をひそめてしまった。ほとんどがケミカル製品だ。

 これはやむをえないとしても、あまりにもひどいのが造花の氾濫だ。坪300万円だろうが400万円だろうが、グロスにして7,00万円も8,000万円もするモデルルームでも生花が飾ってあるものなどほとんど見たことがない。

 なぜそうなるかは容易に想像できる。1年も2年も使用するモデルルームに高価な手入れも必要な生花など飾れないということだろう。それよりも手入れの必要がない本物そっくりの造花のほうが来場者に強いインパクトを与えるだろうとデベロッパーは考えているはずだ。

 インテリアコーディネーターは、内心ではばかばかしいと感じながら、おそらくそのようなデベロッパーの意向を忖度して派手派手しく飾ることに専念するのだろう。

 一カ所でも派手に飾ると、他もすべてそうせざるを得なくなる。収拾がつかなくなり、かの岡本太郎〝芸術は爆発だ〟状態になる(岡本太郎の作品がダメと言っているのではない。TPOを言っているのだ)。そうしないと釣り合いが取れなくなるからだ。

 結果どうなるか。例えば食卓。たかだか20畳大のリビングダイニングに4人掛けのテーブルを置き、そこに皿などの食器類にワイングラスを並べ、さらにいかにも造花然とした訳の分からない造花が飾ってある-こんな光景を何度見たことか。

 しかし、立派なホテルやレストランでテーブルに造花が飾られているのを見たことがあるだろうか(記者は外で摘んできた草花を店のグラスに活けて怒られたことがあるが、それでも懲りずに時々そうする)。和食でも洋食でもメインは料理であり食器類だ。食卓に造花を飾るのはご法度だ。おいしいものでもまずく感じる。ましてや大ぶりの花がそぐわないことなど素人でもわかる。

 そのような愚を平気でおかす。〝うちは関係ない〟と言い切れるデベロッパーはどれだけいるだろうか。天然御影のカウンターと安っぽいカサブランカやアンスリウムの造花がどうして釣り合うのか。デベロッパーは〝来場が少ない〟〝歩留まりが低い〟などと嘆くが、ユーザーの心をつかむ努力を怠っていないか考える必要がある。一生に一度の大きな買い物になるかもしれない、人生を変えるかもしれないマンションや一戸建てのモデルルームを造花で飾り立てる神経が私は理解できない。〝simple is best〟-この言葉の意味をもう一度考えてほしい。

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1階の提案(これもすべて本物の中低木)

◇      ◆     ◇

 プロパストをご存じだろうか。リーマン・ショックのとき破たんしたが、それまではデザイナーズマンションの雄として一世を風靡したデベロッパーだ。もう20年くらい前だ。都心のあるマンションのモデルルームは玄関も廊下も壁もドアもすべて白。ところどころに黒がアクセントとして用いられていた。そして、リビングのテーブルに1本の赤いバラが活けてあった。

 みなさん、その光景を思い浮かべていただきたい。すべて真っ白の空間に赤いバラ1本。当時の森俊一社長は何と言ったか。「都内の花屋を駆けずり回って探してきたバラです」と。

 同社は徹底してデザインにこだわった。パンフレットを入れる紙袋もそうだ。つやつや光る黒の紙袋は手の汗などを付けると汚れたようになる。同社はそうならないように艶消し処理を施した紙袋にした。

 そこまでするからユーザーは感動する。マンションは感動を売る商売でもある。記者が20年も昔のことでも思い出せるのも、それだけ強い印象を受けたからだ。

 現在、そうしたこだわりのマンションを供給しているところはどれだけあるだろうか。生花に限ればフージャースコーポレーションがそうだ。同社には〝営業の神〟と呼ばれる人がいて、その人の指示でモデルルームは極力生花にしているそうだ。

 積水ハウスもそうだ。いま売れ行きが極めていい「グランドメゾン品川シーサイドの杜」をぜひ見学していただきたい。戸数が多いからできる芸当だが、販売事務所そのものが「杜」になっている。

 記者は取材先の道端などに咲いている草花を摘み取り、濡れたティシュでくるみ家や事務所に持ち帰って飾る。今はドクダミが美しい。

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わが家の洗面(ドクダミは四谷で摘んできたもの)

呉越同舟効果 「5本の樹計画」の本領発揮 積水「品川シーサイド」1期207戸!(2017/3/24)

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 別表は主なデベロッパーの平成29年3月期決算のうちマンション事業について売上高・計上戸数・完成在庫をみたものだ。売上高では住友不動産、三井不動産、タカラレーベン、プレザンスコーポ、日神不動産、サンケイビルなどが増やし、野村不動産、大和ハウス工業、積水ハウス、東京建物などが減らした。計上戸数は住友、三井、タカラレーベン、プレザンスコーポなどが増やした。完成在庫は住友、大和ハウス、大京、日神不動産以外は増加した。

 このほか、最近供給を伸ばす電鉄(系)会社、伊藤忠都市開発、新日鉄興和不動産、モリモト、大成有楽不動産、関西が地盤の日本エスリード、あなぶき興産などが供給上位。

◇       ◆     ◇

 住友不動産が売上高、計上戸数ともトップ。マンションの契約戸数は6,467戸(前期比943戸増)と初めて6,000戸を超えた。マンション、戸建ての次期計上予定戸数5,700戸に対する期首の契約率は約50%。営業利益率は14.7%から14.9%へと0.2ポイント増を目指す。

 完成在庫は前期比より減少したが、完成在庫率(計上戸数に対する完成在庫の割合)は20.8%と高い水準にある。

 三井不動産は極めて好調に推移している。売上高、計上戸数は住友不動産に次ぐ。今期は3,900戸で前期比1,300戸減、売上高は2,710億円で前期比2.2%減を見込むが、営業利益は340億円(戸建て含む)で前期比より33億円増を予想している。都心の高額・利益率の高いマンションが竣工するためだ。

 完成在庫は大幅に増えたが、このことについて富樫烈・経理部長は「1~3月の期末に竣工した郊外・地方のマンションが増えたためで、9月頃までには完売するはず」と話した。在庫率も大手の中ではもっとも低い。

 野村不動産が巻き返す。前期は戸建てを含む住宅部門の売上高が3,297億円(前期比1.4%減)、営業利益が277億円(同12.9%減)と減収減益となり、完成在庫が分譲中239戸(前期88戸)、未販売369戸(同121戸)合わせ608戸(同209戸)と大幅に増えた。

 次期の計上予定戸数は6,000戸(うち戸建て600戸)。売上高は3,650億円(同3,297億円)と増収を見込むが、営業利益は250億円(同277億円)と、利益率を落としつつも完全に売り切る方針だ。次期計上予定戸数に対する期首の契約率は43.0%。戸建て600戸を達成すれば、三井不動産の予定550戸を越すことになる。

 三菱地所は売上高、計上戸数とも若干減らした。次期は売上高2,670億円(前期2,232億円)、計上戸数4,200戸(同3,713戸)へ増やすが、粗利益率は18.1%(同19.4%)と抑制的な見通し。在庫も増えているのが気になる材料。

 コスモスイニシアを含む大和ハウス工業も売上高、戸数を減らした。次期も控えめだ。コスモスイニシア・高木嘉幸社長は決算説明会で「マンション事業は大手の寡占化が進み、プレーヤーが限定的。仕入を厳選し在庫も縮小する。建築費は高値安定が続く」と語った。同社の次期マンション売上高は254億円(前期332億円)、引渡戸数555戸(同744戸)に減らし、利益率も14.5%(同19.3%)と保守的に見ている。期末完成在庫は100戸。

 完成在庫率の高いのは57.8%のNTT都市開発のほか、30.9%の日神不動産、29.3%の東急不動産、24.0%の飯田グループ、20.8%の住友不動産が20%を超えている。極めて少ないのが明和地所でわずか16戸(前期16戸)しかない。

 1戸当たり分譲単価では、戸当たり平均単価は3,900万円ながら一部の物件で事業持分の売却を実施したNTT都市開発の6,713万円を筆頭に、三菱地所、大和ハウス、東急不動産、ゴールドクレスト、旭化成ホームズ、オープンハウスが6,000万円を突破した。中でも都心の人気の高いエリアで単価を抑制して供給を伸ばしているオープンハウスが6,217万円なのが注目される。

 単価の低いのは3,264万円のプレザンスコーポ、3,519万円のタカラレーベン、3,660万円の大京、3,699万円のフージャースコーポが3,000万円台。大手との競合を避け、郊外や地方展開している戦略によるもの。

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故・飯沼喜章氏の「お別れの会」(帝国ホテルで)

 急性冠症候群のため平成29年3月3日に死亡した三井不動産代表取締役副社長執行役員・飯沼喜章氏(享年64歳)の「お別れの会」が5月22日、同社が主催して帝国ホテルで行われた。喪主はご令室の飯沼菜保美さん。同社・グループ会社社員を含めた参列者約2,400人が故人と最後の別れを惜しんだ。

 以下は、当日参会者に配布された同社・菰田正信社長の「ご挨拶」の一部。

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◇      ◆     ◇

(前略)

 故人は、昭和50年に慶應義塾大学を卒業後、弊社に入社以来、オフィスビル事業、宅地造成事業、商業施設事業と弊社の基幹事業全般において第一線で活躍した後、平成25年に代表取締役副社長執行役員に就任し、社業と業界の発展に尽力いたしました。

 特に、昭和55年から約20年間にわたり携わった宅地造成事業では、バブル期前後の市況の変動が非常に激しい時期にも拘らず、行政や地権者などの関係者と粘り強く地道な交渉を続けることによって相手の信頼を勝ち取った結果、いくつもの難局を乗り越え、事業を軌道に乗せることに成功いたしました。

 また、平成12年から生涯にわたり担当することとなった商業施設本部では、卓越した感性とリーダーシップを発揮し、商業施設事業を当社の大きな柱に育て上げました。当本部の売上は故人が配属された当初の実に約9倍の規模まで成長しています。

 とりわけ故人の功績は、「人と社会に新しいライフスタイルを提供する」という概念の商業施設に取り入れたことでした。「お客様のニーズの変化」「Eコマースの拡大」「という時代の流れを的確に捉え、商業施設を「買い物をする場」から「豊かで楽しい時間を過ごしていただける場」へと変革させたのです。まさにそれまでの常識を覆す新たな価値創造でした。

(中略)

 こうして振り返りますと「考えるだけでは何も変わらない。サイコロをふってゲームを始めなければ、どんな地の利も活かすことはできず、運も人の縁も引き寄せることはできない。物事を動かすためには、とにかく思い切って行動を起こすことが重要だ。」という故人の一貫した哲学がこのような結果につながったのだと思っております。

 胸に去来する思いは尽きませんが、私どもはこのような故人の遺志を引き継ぎ、更なる事業の発展、社会への貢献に邁進する所存です。

(後略)

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