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全体完成イメージ図(左)とD棟完成予想図

 三菱地所は4月17日、東京駅日本橋口前の10年プロジェクト「常盤橋街区再開発プロジェクト」の第一弾の新築工事となるD棟を着工した。

 同プロジェクトは東京駅周辺では最大となる3.1haの敷地に10年超の事業期間をかけて段階的に4棟のビル開発を進める計画で、D棟はその第一弾。地下と低層棟に下水ポンプ所を新設する。都心の重要なインフラとして1964年に日本ビル地下に合築して設けられた東京都下水道局銭瓶町ポンプ場に替わるもの。竣工後は東京都水道局の所有となる。

 D棟の着工を皮切りに今後2018年には高さ200m超のA棟、2023ルンには高さ約390mのB棟を着工する予定で、全体完成は2027年度。

 同社常盤橋開発部長・平井幹人氏は「1964年東京オリンピックのとき竣工した日本ビルは東洋一と言われた。あれから50年。ビルの老朽化が進み、地下の下水ポンプの更新が難しいと言われながら機能を止めることなくかつ将来の更新を見据えて段階的に整備していく。全体が完成する2027年には世界一の街区となるよう開発を進めていく。『常盤橋』の常盤は常に変わらぬ永久不変、不滅を意味する。東京の世界のシンボルとなるよう時代の変化に対応し進化させていく。テクノロジー、AIを駆使して最大限の価値を引き出す」と語った。

◇       ◆     ◇

 私事だが、弊社は本日4月17日、管理部門の一部を東京駅すぐの三菱地所の「丸の内北口ビル」に引越しした。皇居のたもとであり「常盤橋再開発」エリアとは目と鼻の先。日本一どころか世界一の街区になる一角に移ってそれにふさわしい恥じない記事が書けるのかいささか不安になってくるが、事務所はわたしが選んだわけでもない。

 あちらこちらから記事を打擲されて身もだえることになるかもしれないが、とにかく老骨に鞭打って体力が続く限り書こうと決意を新たにした。

 まさにこの日、第一弾の記事が「常盤橋」というのも何という僥倖か。しかも、〝世界一の街を目指す〟と宣言した平井氏は、同社野球部が黄金時代だった時の正捕手だ。話を聞きながらどこかで聞いた名前だし、見たこともあるような気がしていたが、まさかあの平井捕手が常盤橋担当部長だとは…。平井氏はまだまだ成長し続けているようで、一回り大きくなっていた。

 野球はもうとても無理だろう。これだけが残念。「写真を」とお願いしたら「ビジュアルは勘弁を」と断られた。こっそり撮るべきだったか。まあしかし、また撮る機会はあるはずだ。

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ビフォー&アフター 縁切り工事を施し一方は解体し、他方はビルの機能を維持するという難工事の末、縦に真っ二つに切断された日本ビル(大成建設の技術)

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「棟下式(むねおろしき)」撒き餅

 ポラスグループの中央グリーン開発は4月15日、64棟の戸建て分譲を予定している埼玉県越谷市の「越谷市南荻島プロジェクト(仮称)」の開発に先立つ街づくりイベントの第一弾として「棟下式(むねおろしき)」を行った。この種のイベントはデベロッパーでは初めてと思われる。700名を超える人が参加し賑わった。

 開発地は、東武スカイツリーライン北越谷駅から徒歩13分、越谷市南荻島に位置する約12.000㎡の信用金庫研修所跡地。近くには宮内庁埼玉鴨場がある。

 施設は50年くらい前に建設されたもので、グラウンドは地元居住者に開放されコミュニティの核として機能していた経緯があり、その土地と建物に感謝を伝え、地域の居住者とともに見送ることにしたもの。

 施設を解体した後、2017年冬から分譲する予定。1区画135㎡以上で、価格は3,000万円以上。

 儀式の「清祓式」のほか、約600個の撒き餅、施設内の食器・家具など使えるモノを参加者が持ち帰れる「お宝発見ツアー」、ねぶくろシネマと連携した地域振興の野外映画会、地域の出店、ワークショップなどが行われた。「棟下式」は、建物を壊す際に「清祓い」という神事が旧家などでは古くから行われている。

 イベントを企画した同社開発取締役事業部長・戒能隆洋氏は「17:00の時点で参加者は575名。予想をはるかに超える多くの方に来ていただいた。越谷が本拠の会社として地域に貢献していきたい」と語った。

 分譲マンションでは、モデルルーム来場者や成約者を対しようとした様々なコミュニティイベントは行われているが、着工前に建物・施設内で地域に開かれたこの種の催しを行うのは初めてと見られる。

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「お宝発見ツアー」に並ぶ参加者

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「清祓式」

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撒き餅(左端は戒能氏)

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「お宝発見ツアー」

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 この日の埼玉県の天気予報は「晴れのち曇り。雷雨に注意」。西武の5連勝がかかっているテレビ観戦で忙しいこの日に、どうしてサッカーのみに夢中のポラスの取材に行かなきゃいけないのかと八つ当たりしながら渋々出かけた。

 取材時間まで少し時間があったので、タバコを吸うためにカフェに入った。自宅の鎌倉から徒歩時間を含めて片道2時間半かけてやってきた顔なじみの記者とばったり出会った。

 二人は一緒に出かけた。案の定、空は暗くなり、ゴロッッと来てポツリと来た。これでは現地は関係者と数少ないメディアだけではないかといやな予感もした。

 ところがだ。途中の旧荒川沿いの見事なサクラ並木に圧倒され、着いたとたん、すでに建物からあふれ列をなしている参加者にびっくり。

 軽挙妄動、軽佻浮薄の記者は早速、突撃取材を敢行した。( )内は記者。

 まず、ずっと以前から住んでいそうな集団。(皆さん、ご近所? )「そう、すぐそこ」「俺は昭和42年に来たが、この辺はみんな田んぼ。何もなかった」「赤白青黄色…5班に分かれた町内会の運動会をここでやった。数百人は集まった。しかし、みんな歳取って走れなくなり、後片付けも大変でいつの間にかなくなった」(お母さんとはちょっと呼べませんが、おばあちゃん、きれいですね、美しいですね。お歳は? )「昭和2年生まれの90歳」(えっ、とってもそんなに見えません。肌がとても綺麗)「お宅、いくつだよ」と別の人。(68歳です)「俺らは平均75歳。おたく(私のこと)が一番年寄りくさい」(え、そんなことはないでしょ。おばあちゃん、空襲は? )「ありましたよ。生まれは名古屋で、郊外だったので被害はなかったけど。戦後すぐ25歳で結婚して、北千住の、今は電機大学のあるところから移り住みました」

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「ここでみんな町内会の運動会をやったんだ」近所の方々

 次に、30歳代の前半の子ども2人づれの夫婦。「近くの賃貸アパートに住んでいます。僕が三郷で彼女は春日部出身。わたしの勤務先は越谷。彼女は専業主婦」(ここに住宅が建って分譲されます)「値段次第で買ってもいいかもと考えています(奥さん)」(私の予想では、安いところで3,500万円、4,000万円を超えるものもありますがだいたい3,800万円くらいじゃないですかね。間違ったらごめんなさいですけど。レベルは間違いなく高いですよ)

 「リユース券」(「リユース権」でもよかったような気がするが)を手に入れた人にも聞いた。(信金にしては高価なものはないですね。みんな持ち去ったのでしょう。しかし、ほら、裏印に「照風」と読めるじゃないですか。ひょっとしたら掘り出しものかもしれませんよ)「(茶碗には目もくれず)…いいものはみんな先にシールを張られちゃった」

 主催者も予想外の人気に声が上ずっていた。「3階の研修室の机・椅子の46セットが瞬く間になくなっちゃった。売れ残り? 野球部の大太鼓が返品として戻ってきちゃった。牧田さん、RBA野球用としてプレゼントしますよ」(冗談じゃない。新品だったら数万円はするはずだが、持ち帰れない大きさだし、これを自宅で叩いたら袋叩きにあう)。

 掘り出し物はないかと鵜の目鷹の目の主婦にはこんな質問もした。(わたしをリユースする価値はありませんか)値踏みする一瞥の視線をくれただけで「ハハハハ」とガラクタ(失礼)を抱えて立ち去った。(「お互いさま、もうどっちも使いものにならない」とぼそっと背中に放った声は届かなかったはず)

 西武は惜敗したが、いい取材ができた。ポラスはいい仕事をしている。

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敷地内のヤマザクラ

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「お宝発見ツアー」(左)と落書きコーナー

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旧荒川の桜並木

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マンションギャラリー 模型

 三菱地所レジデンスは4月13日、「ザ・パークハウス 国分寺四季の森」に民間の学童保育施設開設が決定したことを受けて、モデルルーム内覧会と生物多様性保全の取り組みについての概要説明会を開いた。

 学童保育施設については、物件が所在する国分寺市の要請を受けて併設するもの。ウィズダムアカデミーと提携し、公設公営では預かり時間は午後7時が多いのに対し、午後9時まで可能で、オプションとして「食事の提供」「英語や音楽教育」「近隣スポーツクラブとの連携」などのサービスも受けられる。

 生物多様性の取り組みについては、2015年2月から物件の大小にかかわらず全てを対象にした同社独自の取り組み「BIO NET  INITIATIVE(ビオネットイニシアチブ)」が累計100物件に達し、2016年度「いきもの共生事業所認定(ABINC認証)」のマンション版で「四季の森」の物件を含め5物件が取得し、2015年から累計で13物件の認定取得となったことを発表した。

 物件の販売状況については、これまで約2,500件の資料請求があり、来場者数は約600件。第1期供給戸数は130戸と発表した。来場者アンケートによる好印象のベスト3は、シャトルバスの運行、住戸の75%が南向き、学童保育施設の設置の順。

◇       ◆     ◇

 この物件については2月に取材しているので、そちらの記事を参照していただきたい。一度取材しているのでよそうとも思ったが、自分の見た目が正しいのか誤っているのかを確認するために急きょ取材を申し込んだ。大正解だった。同社の生物多様性の取り組みに感動すら覚えた。学童保育に関しては自分の無知を恥じた。

 商品企画担当の松本氏が「すごい物件を担当することになった」と経緯について語り出し「ただの植栽計画ではダメ。人といきものが共生できる計画にした」などと、生物多様性についてあまりにも広範な分野にわたりかつ詳細に説明したので、あっけに取られて聞いていた。

 最初は建築が専門だろうと思っていたが、途中から農学か植物学が専攻ではないかと考えた。名刺交換をしたら肩書は「商品企画部海外業務グループ兼海外業務企画部主任」になっていた。異動になったのだろう。専門はやはり建築で、生物多様性については3年間くらい勉強されたそうだ。

 驚いたのはそればかりではない。広報担当の臼井亮介氏が同社の生物多様性の取り組みに関するニュース・リリースについて補足説明したのだが、「当社のガイドラインはものすごく分厚く読みこなすのが大変。在来種のシジュウカラは100mしか飛べないことを知った。そのシジュウカラのために植栽計画を決めることに私も驚いた」と話した。

 生物多様性の取り組みについては、業界では積水ハウスの「5本の樹計画」がよく知られているが、同社も負けないのではないか。「5本の樹計画」の上を目指す「6本の樹計画」はあまりにも単純だが、何かいいネーミングを付けてアピールしてはどうか。

 「いきもの共生事業所認定(ABINC認証)」のマンション版を同社は2016年度までに13物件取得しており、機会を見つけて一度完成したマンションを見学しよう。

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模型

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 学童施設についてはほとんど知識がない。公設公営がほとんどで、最近は公設民営(や指定管理者制度)を活用しているところが増えていそうだという認識しかない。

 その学童保育施設が来場者アンケートで好印象の第3位に入っているのには正直驚いた。2月に取材したときも学童施設を入れることを聞いており、「保育所も必要だが学童保育所も子育て世帯にとっては欠かせない施設だ」と書いただけだった。「小一の壁」は想像以上に深刻な問題のようだ。

 第1期供給量では、先に野村不動産「プラウドシティ三鷹」が100戸で東京西部エリアでは№1と書いたが、これで今回の物件がそれを上回ることが確定した(全体の戸数比率は「三鷹」が上位)。

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1階住戸モデルルーム

坪単価は「王子」より安い240万円台前半 三菱地所レジ他「国分寺」 反響がすごい(2017/2/3)

 

 

 

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最後のお別れをする会葬者(北区・清光寺で)

 3月13日早朝に急性心不全で亡くなった株式会社週刊住宅新聞社社長・長尾浩章氏(享年57歳)の同社と長尾家の合同葬が4月11日、北区・清光寺で行われた。喪主は故人の妻で新たに同社取締役社長に就任した長尾睦子氏。

 400名・社を超える芳名板が供えられた中、約650名の会葬者は境内からあふれ長蛇の列をなし、最後尾の人は待つこと約1時間30分。篠付く雨と気温10度の寒さに震えながら故人と最後のお別れを行った。

 長尾睦子氏は25歳で浩章氏と結婚してから家族との時間を大切にしたこと、宅建の資格を取得させられたこと、ゴルフは良きライバルとなるまでに上達したことなどを紹介したあと、「人の子として20年、人の親として20年、自分の人生としての20年を生きろと第三ステージを歩んでいるさなかの突然の別れとなってしまいましたが、主人の教えを守り、精進していく所存です」と謝辞を述べた。

 また、葬儀委員長で同社執行役員事業統括本部長・松本英雄氏は「かけがえのないトップを突然失い、失意のどん底に陥りました。しかし、後戻りはできません。社員一同、長尾社長の遺志を受け継ぎ、会社を一層発展させていく覚悟」と追悼の辞を語った。

 会葬者にはブランケット版の「週刊住宅」号外が配布され、長尾社長の経歴や睦子夫人、長男の思いなどのほか、急逝を悼む業界団体、日本専門新聞協会、不動産三田会から多くの追悼のコメントが紹介された。

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長蛇の列をなす会葬者

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芳名板

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「ノーサイドにしよう」  長尾社長との確執の14年間に終止符

 平成15年、事件は起きた。あの国立マンション問題の記事が原因で記者はそれまで20年間お世話になった「週刊住宅」を辞めることになった。

 明和地所のプランに対して国立市側が示した対案プランを「刑務所マンション」と主観的事実に基づいて切り捨てた。業界の利益を最優先し信念を貫いた。ところが、記事の一部が会社の事情と衝突した。しこりが残った。熾きになった。

 あれから14年。業界やデベロッパーの懇親会などで何度もお会いしたが、会釈を交わすのみで声をかけあうことは一度もなかった。お互い意地を張り続けた。お互い不器用だった。

 長尾社長の訃報を聞いたとき言葉を失った。「行くな書くな」「行け書け」この堂々巡りが振り子のように記者を激しく揺さぶった。最後は「行け書け」が勝った。「葬儀に行くことが遺族への礼儀。行って追悼文も書くべし」-あるデベロッパーの社長の一言が記者の背中を押した。

 書けば二人の確執に触れざるを得ない。あの時の長尾社長の決断の当否については分からない。長尾氏は慶応ボーイそのもの。とても温和な方だったが、自分が一度決めたことは絶対に譲らない頑固さもあった。だからこそ厳しい環境下で会社を切り盛りされてきたのだろう。

 二人が良好な関係だった時期もあった。感謝してもしきれないことがある。記者が妻を亡くし2人の小さい子どもを育てたときの約10年間、毎日30分から1時間遅刻したが、長尾社長と会社は黙認してくれた。そのお陰で現在の記者がある。

 同じ新聞の編集部員で、年齢が上だったことから何かと相談も受けた。一緒によく酒も飲んだ。一番印象に残っているのは結婚する時だった。「牧田さん、良家のお嬢さんなんですよね…私との釣り合いが…」と酒を飲みながら深刻そうな顔をしたので、「馬鹿だね、そんなこと関係ない。2人で決めること」と励ました。それが分かってくれたのか、結婚を決意された。その奥さんが長尾睦子氏だ。

 新社長に就任された睦子夫人は悲嘆に暮れ、悲しみに打ちひしがれるはず。慰める言葉もない。しかし、記者もそうだったように、仕事が気を紛らせてくれる。時間の経過とともに前向きになれる時が必ず来る。業界紙の環境は厳しいが、困難な道を切り開いてほしい。この日の多くの会葬者の後ろには数十倍の読者がいる。その読者に寄り添っていただきたい。

 祭壇の笑顔の長尾社長に「ノーサイドにしよう」と声を掛けた。長尾社長も頷いたような気がした。そこでもう一言発した。「長尾さん、わたしのロストボールはどこへ行った? 」「何言ってんですか、ほらここにあるじゃないですか」と、ポケットからボールを出すのをわたしは知らんぷりした。

 滂沱の涙を酒と一緒に飲み干した。

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#7 stories Fresh & Natural 

 三菱地所ホームは4月13日、7つのインテリアカラーによるライフスタイル別のブースと新築分譲マンションのモデルルームを一度に見学できる新たなコンセプトの「リフォームショールーム」を横浜・みなとみらいイベントスクエアに4月29日(土)にオープンする。

 みなとみらい地区の分譲マンション第一号「M.M.TOWERS」(3棟862戸)が竣工して14年が経過。このほか共同事業物件を含めエリア内に約4,500戸の三菱地所レジデンス供給物件があり、他社物件を含めると1万戸近くに上る中古マンションの買い替え・リフォーム需要を取り込むのが狙いとみられ、2013年に丸の内に開設した「三菱地所のレジデンス ラウンジ」とほぼ同じのコンセプトだ。開設前の13日、同社・加藤博文社長も出席して報道陣に公開された。

 「リフォームショールーム」は広さ約109㎡。ライフスタイル・ライフサイクルに応じた7つのインテリアカラーによる様々な生活シーン「#7 stories-至福の瞬間-」を連想させる提案を行うことで、来場者がより具体的なイメージを描きやすくしているのが特徴。本人だけでなく、家族みんながVR体験を楽しめる工夫もされている。

 もう一つの大きな特徴は、三菱地所レジデンスが分譲する新規マンションのモデルルームも見学できることになっており、最先端の設備仕様を確認することが可能なことだ。

 モデルルームに装備されている設備「EYE’S PLUS」、インテリアコーディネーターによる提案「カラースキーム」、広さで価格が決まる「定額制の安心システム」(70㎡で498万円)の3点セット「Re  Dia」を導入する。

 また、今回発表された「システム設計住宅」は、ZEH対応の全館空調「エアロテック」、耐震等級3、長期優良住宅対応の基本性能を備え、これまでのノウハウを生かし様々なライフスタイルにも対応する企画住宅。2階建て・平屋の「WIZE-H」、3階建ての「WIZE-U」に対応しており、2階建て27.55坪の標準モデルで価格は1,980万円から。

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Relax & Friendly(左)とCalm & Elegant

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Feminine & Healthy(左)とBright & Cheerful  

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 加藤社長ら関係者の話を聞きながら、いよいよ三菱地所グループが総力を挙げて他社の草刈り場になっているみなとみらいエリアの仲介・リフォーム需要を一挙に吸収しようという狙いが見て取れた。

 同社関係者によると、共同物件も含め「M.M.TOWERS」を筆頭に三菱地所レジデンスは約4,500戸のマンションを供給しており、「M.M.TOWERS」は竣工後17年を迎える。今後、新規マンションの予定はなくリフォーム需要は間違いなく拡大する。同時に仲介事業も強化する戦略なのだろう。

 70㎡で498万円(坪単価24万円)という3点セット「Re  Dia」も割安感がある。

 聞き忘れたが、マンション用の「エアロテック」の実施用実験はどこまで進んでいるのか。これが採用されるようになると大きな武器になるはずだ。

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Mature &Intelligent(左)と Creative & Artistic

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モデルルーム「ピアキッチン」 

 ポラスグループの中央住宅が近く分譲する「ルピアコート西大宮」モデルルームを見学した。平成21年に誕生したJR埼京線・川越線西大宮駅の同駅圏初の分譲マンションで、女性の目線から細かな部分にもこだわった商品企画が光る。圧倒的な人気を呼ぶ可能性を秘めた好物件だ。

 物件は、JR埼京線・川越線西大宮駅から徒歩6分の土地区画整理事業地ないに位置する全124戸。専有面積は61.03~87.68㎡、予定価格は2,800万円台~4,300万円台(最多価格帯3,700万円台)。竣工予定は平成30年1月末。売主は同社のほか施工も担当するファーストコーポレーション。販売代理は東京中央建物。

 現地は、土地区画整理事業地内の一角で、敷地西側は指扇小学校。周辺は戸建てや賃貸マンションが立ち並ぶ。マルエツ西大宮店には徒歩10分。

 建物は小学校に面した西向きを中心に、南向きと東向きの配棟。子どもの怪我を防止し、大きな手荷物を置くことができる2m四方の「まもるんスペース」を駐車場に設置する。

 住戸プランでは、トイレ・収納を含めすべてフローリングとすることで掃除機「ルンバ」が働きやすくし、実用新案を取得済みの「ピアキッチン」を3分の1の住戸に設置する。このほか、浴室や洗面室には子どもの浴槽での溺死や洗濯機への閉じ込め、洗剤の誤飲を防止する「とどかないJ(錠)」、電動自転車のバッテリーを充電できる下足入れのコンセント、廊下幅を1050ミリ取りダウンライトで照らす「マイギャラリー」、上階からの目線を遮る一辺が3.5mの正三角形の専用庭用タープ、洗濯機の天井の「ちょいおきレール」、などを設置する。二重床・二重天井、食洗機、バックカウンター・収納も標準装備。

 同社マインドスクェア事業部マンションディビジョン・西牟田奈津子氏は「駅から信号がなく、交通量の激しい国道16号線の内側という立地と、ピアキッチン、まもるんスペース、電動自転車用の下足入れコンセント、出窓、ルンバが仕事しやすいフラットフロア、洗濯物のちょい置きレール、鍋蓋が入るキッチン収納、これらはみんな働く主婦の立場から採用しているアイテム。ここまでやっているところはないと思います」と話した。

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「ルピアコート西大宮」完成予想図

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 以前は記者も収納一つ、コンセント一つをチェックしたが、最近はどうもおざなりになっているようだ。他社もあるのか同社だけのアイデアなのか、その判断ができない。西牟田氏から一つひとつ詳細な説明を受け納得した。西牟田氏と初めてお会いしてから10年くらいか。あの頃は記者が教える立場だった。見事に逆転した。

 さて、価格。いつものようにモデルルームを見学する前に坪単価を予想した。大宮駅の徒歩圏は坪300万円以上だ。大宮駅から2駅目の徒歩圏なら坪200万円もあるかもしれないが、これではちょっと高すぎる。坪180万円くらいが妥当とはじいたが、予定価格からするともっと低くなる。設備仕様レベルからすれば極めて割安感がある。物件の特徴を訴えきれれば間違いなく早期完売する。

 一つ、注文もある。これほど魅力的なマンションであるにも関わらず、チラシは並以下だ。企画意図が全然表現できていない。記者なら「ルンバだけじゃない。働く主婦に嬉しいこれだけの魅力」とでも見出しにつけて、他社にない少なくとも50くらいのアイテムを盛り込んだチラシにする。

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モデルルーム

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トイレ収納

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ピアキッチンのバックカウンター&収納(左)と「ちょいおきレール」

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ふとん収納

 

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「プレミアムグランウッド 神戸・芦屋の家」

 大和ハウス工業は4月12日、自然素材をふんだんに使用した最高級の木造フルオーダーの家づくりプロジェクト「プレミアムグランウッド」を2017年4月14日(金)より始動すると発表した。

 「プレミアムグランウッド」は特別チームを立ち上げ、「邸別設計」「邸別デザイン」「邸別施工」を採用。プロジェクトのケーススタディハウスとして、兵庫県芦屋市に「プレミアムグランウッド 神戸・芦屋の家」を完成させ、一般公開するほか、今秋には、東京都世田谷区にもケーススタディハウスをオープンさせる予定。

 「神戸・芦屋の家」では、庭と建物が一体となる「庭屋一如」をデザインコンセプトとし、日常生活で多用する水回りには、内外のブランドを積極的に採用。天井・床は縁甲板など銘木にこだわり、壁面には珪藻土や漆喰壁など自然素材を使用。サッシは特注の木製トリプルガラスサッシを採用し、外壁は庵治石の石積壁としている。

 さらに、屋根の下には屋根の浮遊感を醸し出す「連欄間」を採り入れ、屋根には三州陶器瓦を、軒先には金属葺のシャープなシルエットを演出する「内樋屋根」を採用した。

 基本性能では、木造用のエネルギー吸収型木造制震耐力壁「グランデバイス」を新たに開発し、断熱仕様は業界最高クラスの「オールバリア断熱プレミアム仕様」とし、室温間温度差を軽減する「快適涼暖システム」を採用している。

 「神戸・芦屋の家」は敷地面積291.07㎡、建物は木造軸組工法(グランウッド構法)2階建て延床面積152.50㎡。参考価格は建物・外構含めて9,230万円。初年度の受注目標は51棟。

 発表会に臨んだ執行役員木造住宅推進部長・林直樹氏は「木造は安いものから天井知らずのものまであるが、木造は世界的な気運の高まりもあり、天井知らずの富裕層向けはプレハブでは対応しきれない部分もある。今後はダイワハウス木造ブランドの構築を目指す」と語った。

 同社はまた、2016年度の木造販売棟数約600棟を2017年度には約1,000棟に伸ばし、2020年度には約3,000棟に拡大することを明らかにした。

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内外一体デザイン

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 木造のよさかせ見直されているのは世界的な潮流で、他のハウスメーカーは富裕層向けの木造に力を入れており、同社もその流れに乗ろうというのは当然だ。

 世田谷にもモデルハウスを建設するというので取材したいが、基本性能や仕様レベルは間違いなくトップレベルになるはずだ。

 木造が面白い展開を見せてきた。木造ファンの記者は大歓迎だ。

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「連欄間」
 

 

 

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「プラウドシティ武蔵野三鷹」エントランス

 野村不動産が分譲中の「プラウドシティ武蔵野三鷹」を見学した。横河電機の倉庫などが建っていた普通賃借権付き全334戸で、3月末に分譲した第1期分譲100戸の契約が90戸に迫るなど好調なスタートを切った。アクセスのよさ、坪単価320万円台の半ばという買いやすさ、充実した共用施設などが人気の要因。ブリヂストン、長谷工コーポレーションとともに開発した間取りの自由度を高めた排水システム「ミライフル」を装備した第1号マンションでもある。

 物件は、中央線三鷹駅から徒歩10分、武蔵野市中町三丁目に位置する敷地約13,156㎡7階建て2棟(一団地認定)全334戸。吉祥寺にある月窓寺から85年間にわたり横河電機が借りていた土地で、入札により同社が新たに借り受けたもの。借地期間は30年で更新可。専有面積は71.17~91.47㎡、坪単価は320万円台の半ば。竣工予定は平成30年1月下旬。施工は長谷工コーポレーション。4月下旬に第2期(戸数未定)が分譲される予定。

 現地は準工業地域だが、これはこの一角が横河電気の倉庫などが古くから建っていたためで隣接する東側エリアは住居系用途。嫌悪施設はほとんどない。

 建物は2棟だが、西側に隣接する公園と一体的に公開空地などを整備するため一団地認定を取得している。住戸は東向き、南向き、西向きで専有面積は最低でも71㎡、76㎡が中心のファムリー向け。

 サイホン排水システム「ミライフル」を装備した第1号マンションでもあり、設備仕様では二重床・二重天井、キッチン・トイレ天板御影石、ディスポーザー(自動給水式)、ミストサウナ、ソフトクローズ玄関下足入れなどが標準装備。

 販売担当の狩野剛氏は「これほど売れ行きがいいのは当社の物件も含め東京西部ではナンバー1」と胸を張った。

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モデルルーム

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 現地は、4年前に書いた鹿島建設「テラス武蔵野中町」のマンションに近接しており、その時の記事と比較していただきたい。いまの市況からすれば所有権だと400万円をはるかに突破するはずで、坪単価320万円台の半ばというのは割安感がある。定期借地権付きでなく普通賃借権というのもユーザーから評価されたようだ。

 徒歩10分をどう評価するかだが、駅から現地までのアプローチは申し分ない。歩道がゆったり取られており、道路も一方通行でもあり車も少ない。吉祥寺駅へも徒歩20分というのが評価ポイントのようだ。戸建てからの買い替え・買い増しも10%はあるという。

 2つのモデルルームのうち91㎡のタイプは「ミライフル」の革新性を表現。アイランド型キッチンとし、間取りの可変性に対応できることを提案している。

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排水システム イメージ図(左が従来型、右が新システム)

野村不・長谷工・ブリヂストン 画期的な排水システム開発、実用化(2015/5/22)

「鹿島の品格」を見た「テラス武蔵野中町」 売れ行きも好調(2013/6/12)

 

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賞品を背景に落合氏(左)と原氏

 大京とフルタイムシステムは4月10日、社会問題になっている宅配便の再配達を減らし、居住者の利便性を高める新発想の各住戸専用宅配ボックス「ライオンズマイボックス」を共同開発し、メディア向けにお披露目会を行った。業界紙だけでなく一般紙やテレビ局など約40名の報道陣が集まり関心の高さをうかがわせた。

 「ライオンズマイボックス」は2016年のグッドデザイン賞を受賞した再配達ゼロを目指した取り組みで、「必ず受け取りたい、確実に届けたい」という居住者と宅配事業者双方の視点から利便性を飛躍的に向上させたマンション用宅配ボックス。

 宅配利用頻度やネット通販の標準的な荷物のサイズに応じた居住者ごとの宅配ボックスとメールボックスを一体化。異なる宅配事業者の荷物や複数の荷物を同時収納することができ、ゴルフバッグなどの大型荷物などを受け取れる共用ボックスも設置している。

 この日公開した住戸専用ボックスの大きさは幅30㎝×高さ36㎝(メールボックス12㎝含む)×奥行き45㎝。50戸程度のマンションの場合、幅5.85m、高さ1.8m、奥行き0.45mとなりエントランス部分に設置することを想定している。

 発表会に臨んだ大京・落合英治専務は「当社はこれまで約37.6万戸のマンションを供給し、約53万戸を管理する日本一の会社。〝日本のまちに、活力を。〟をスローガンに様々な不動産ソリューションで社会問題の解決とお客さまニーズの具現化に取り組んでいく」と語った。

 今年度竣工5物件、2018年度竣工10物件への導入を決めており、その後も順次導入する計画で、同社グループが管理するマンション他社が管理する管理組合へも提案していく。

 また、フルタイムシステム・原幸一郎社長は「当社分譲マンション宅配ボックスのパイオニアで、シェアは断トツの62.3%。全国宅配ロッカー登録者約150万人などのデータを持っているのが強み。付置義務化や補助金など国へも働きかけていく」と話した。

 近年のネットショッピングの普及やサービス拡大により、宅配個数は2010年度の32.2億個から2015年度には37.4億個に増加。また、単身世帯や共働き世帯の増加による再配達が社会問題となっており、国土交通省の調査によると、再配達による社会的損失はスギの木約1億7,400万本の年間CO2吸収量に相当し、不在配達に費やされる労働時間は年間9万人の労働力に相当するというデータもある。

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お披露目会場

◇       ◆     ◇

 報道陣の多さにびっくりした。「ライオンズマイボックス」を導入する第1号マンション「ライオンズライオンズ東綾瀬公園グランフォート」の記者見学会のときの倍くらいはあった。いかにわれわれメディアは刺身そのものより脇役のツマに興味を示すかを如実に示した。付和雷同、軽挙妄動、軽薄短小はわたしだけではない。いつもこれくらい記者が集まればマンションはもっと売れると思うがどうだろう。

  とはいえ、この取り組み・商品は間違いなく宅配事業者やマンション居住者の支持を得る。大ヒットする可能性も秘めていると思う。

 カギは付置義務化と補助金だ。落合専務は「駐車場の利用率はどんどん低下している。この付置義務の条件見直しと宅配ロッカーの付置義務化を進めてほしい」と話し、原社長も「補助金が出るよう運動していく」と語った。

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大京 「東綾瀬」で足立区初の全戸エネファーム搭載 全戸に宅配ボックスも(2017/3/17)

 

 

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フージャースコーポレーション営業企画部長・友野珠江氏(41

 フージャースコーポレーション営業企画部長・友野珠江氏(41)に突撃インタビューを敢行した。当欄既報のつくばエクスプレス柏たなか駅圏の「トレジャーランドプロジェクト(デュオヒルズ・ザ・グラン)」(253戸)を取材したとき、その場で取材を申し込み即決してもらった。

 テーマは〝業界を元気づける〟。この沿線に限ったことではないが、いま郊外マンションは価格下げ圧力が強まる一方で、どこも青息吐息。死屍累々の惨状を呈している。

 「柏たなか」は例えていえば荒涼たる砂漠、はたまた北の果ての極寒の地だ。そんな不毛の地に正気の沙汰とは思えぬ大量253戸を同社は敢然と供給した。

 見学する前は絶望感が支配したが、モデルルームを見て、ひょっとしたらあのリーマン・ショックでV字回復を成し遂げた同社のノウハウ・販売力、友野氏の〝元気〟をもってすれば劣勢を一変させるのではないかという予感・希望が記者に芽生えた。

 同業の皆さん、以下の友野氏の〝元気〟を煎じて飲もうではないか。やればできる勇気が湧いてくるはずだ。「女性活躍」などという奥歯にものが挟まった、糖衣でくるんだ万金丹の類の話ではない。( )は記者。

沈滞ムードを吹き飛ばすか フージャースコーポ「柏たなか」(2017/3/17)

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◇      ◆     ◇

 -まず「柏たなか」の商品企画から

 友野 わたし心配性でして(とてもそんなに見えない)。とにかく不安で、沿線の物件がばたばた倒れちゃう状況を見て聞いて、普通にやったら完売まで5年かかってしまう 、この危機感が商品企画と広告やチームのマインドに火をつけたというのが正直なところです。

 みんなで話し合ったんです。同じことやって、こっちが大成功あっちが大失敗になる確率って低いよねと。だから努めて前向きに対応し、今までにないものを作ろうと考えたんです。それがあの企画と販売事務所とモデルルームになったんです。

 つくば沿線は供給ラッシュで、駅ごとに大きな物件が2棟くらいあり、注目されていますが、「柏たなか」は誰も降りたことない(記者もそう)。最後のサンクチュアリみたいな取り残された駅。(利根)川を渡り一駅先はもう茨城。国境の街みたいなところ。でもポジティブに考えれば、最後の砦は〝ここは千葉県の入り口、つくばの最前線〟というポジショニングになる。これをしっか打ち出そうと。

 幸い、大京さんが何もなかった10年くらい前、駅前で素敵な「ライオンズ柏たなかステーションプラザ」(83戸、2009年竣工)を分譲されていて、とても参考になりました。ライフステージにあった方を呼べたんだろうと。

 この駅の最前席に立つということは、駅格とかエリア格になる先頭バッターになること。だから妥協せず、使命感を持って色付けしないといけないとずっと考えていました。

 この不安感と使命感とが交錯していたときです。チームの広告担当者に相澤という32歳の女性がいるんですが、その相澤に「柏たなかでやるから担当よろしくお願いします」と話したら「ありがとうございます!」と快諾してくれたんです。ああそうか、こっちは不安でいっぱいなのに、何も知らない彼女にとっては大きな仕事の役割をもらってデビューすることはそんなにうれしいことなんだと。その声を聞いて吹っ切れましたね。チーム全体が元気出ちゃった。

 -わたしが担当者だったら引けますね

 友野 そうですよね。なんで1万㎡も買っちゃったんだろうと。普通はひるみますよね。繰り返しになりますが、だから誰も見たことのないものを作ろうと。どこに対しても圧勝できるものにしようと。プレハブ(販売事務所)もそう、シアターもそう、模型もそう、モデルルームもそう。みんな初めて見るもので固めようと。これが一貫したテーマです。

 -真っ暗闇の演出、アニメのシアター、プロジェクトマッピングがよくできていました

 友野 暗闇の演出も相澤の提案です。いまのマンションギャラリーは何から何までみんな一緒。買ってください買ってください、うちが一番というものばかり。それってもうおなか一杯。今回のギャラリーは滞在型で長い時間いらっしゃっていただくのだから、最後は家族みんなで笑ってください、奥さん笑ってください、お父さんも笑ってくださいと。アニメにしたのも、「君の名は」もそうですが、アニメはもはやオタクだけのものではなく広く一般に理解度が深まっており、共感を呼びやすいですよね。

 -販売事務所やモデルルームに造花でなく生花を飾っていたのもよかった

 友野 みんな生花です。うちの〝神〟と呼ばれる営業マンは「販売センターは生きものだから必ず生きものを入れなさい。花を愛で、育てる気配りができる人間になりなさいと」と仰いました(記者は若いとき〝花を愛せる人になって〟と女性に捨てられた。立ち直るのに3年かかった)。ですから当社は基本的に生花を飾るようにしています。根を詰めて話しているとき、花や緑が目に入ることでお客さんはほっと一息つける。男性社員もきちんと水遣りするように教育も行き届いています。

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 -御社は社員の女性比率(40%)が高い会社として知られ、商品企画にも生かされているが

 友野 専有部分でものづくりをしっかりやっているところが減っています。最近はどこも女性チームを作っていますが、姉が妹へというように継続させるのが難しい。どうしてだろうと考えたんですが、事業部制にすると担当ごとに変わってしまう。商品企画のDNAが伝承されない。それと彼女たちには決裁権がないんですね。ここが問題ですね。

 弊社はフラットだから、わたしのようなうるさ型が「ここが削られるとうちらしさがなくなります」というと通ります。やったからにはきちんと営業マンがお客さんに伝えなきゃなりませんから、営業マンがセールスできるように教育しないといといけない。そのツールも大事です。

 -友野さんの入社以来のキャリアについて

 友野 営業企画が最初で広告宣伝をずっとやっていまして、その幅ががばっと広がった感じですね。ただのチラシ屋、看板屋では全くダメと気が付いて、商品企画とか販売戦略へと、川下から川上に上ってきました。パースを描くにしてもものを知っていないと美しいパースを描けないし、売り方についてもお客さんを知っていなければ販売戦略を立てられないのと一緒です。

 -2008年のリーマン・ショックの時はもうおしまいかと思いました。ところが2010年にV字回復。不死鳥のようによみがえった。この年の株価上昇率は342倍でした

 小池 わたしは2008年入社です。

 友野 彼女たちは不幸でしたね。その時の社員は3分の1に減っちゃった。

 リーマン・ショックのとき生き残れたのは、お客さんのことを語れて、お客さんに近い会社で販売力があり、正面から販売代理の事業主様にきちんと説明できたことが大きかったと思いますよ。あのとき助けていただいた事業主体には感謝しきれません。

 -わたしも大丈夫かと思いながら見学しました

 友野 「ザ・クイーンズガーデン稲毛」(稲毛バス16分、278戸)、「デュオヒルズつくば学園都市」(つくばバス10分、234戸)、「プレミアムフォレスト」(柏バス10分 、182戸)など4物件を中心に3カ月で2,000件の来場者集めろというミッションがあったんですが、あのときは本当に火事場の馬鹿力で集めて売りましたね。

 -女性活躍も大事だけど、男も含めて働き方を変えないと。本来、そんな言葉はなくさないといけない。御社には昇進、昇給などの男女差別は全くないですか

 友野 わたしは人事評価会議にも出ていますが、昇進、昇格での男女差別は全くないですね。

 子育てだろうが介護だろうが、男性でもそうするのが当たり前という風土があり、常態化しています。(保育園の送りなどで)9時半に出社してもだれも何も言わない。フラット、風通しがいいと情報が抜けるんですよね。廣岡社長も子育てに積極参加されているので社員も見習いやすい。

 乙部 小池 友野 女性の活躍についてメディアの方によく聞かれるですが、もともと活躍しているのにそういうこと言われると逆に違和感を覚えますね。

 男女平等というと、女性が男性に合わせるイメージが強い。メディアもそう取り上げる。しかし、それって違うんじゃないかと。バリバリでなく普通に働いているのに、それが新しいと言われるとそれも違和感ですよね。

 友野 マスコミに登場するいわゆるバリキャリ女性は〝わたしは当たり前にやってきた〟とおっしゃいますが、すごく歯を食いしばって言っているなと感じますね。絶対この方、以前の勝間和代さんみたいに死ぬほど働いているに違いないと。そういう部分って出ちゃいますよね。ある会社に勤めている知人の女性が上司の女性に怒られたとき〝わたしは出産をあきらめてここまで来たのよ〟と言われたそうです。えっ、女性同士そんなことまで言うのと驚いちゃいました。これは断ち切らないといけない。

 -わたしはインタビュー記事では年齢を入れるようにしています。二文字で済む。読者は自分より上なのか下なのか、その人の生きてきた時代背景も分かる。友野さん、どうです?

 友野 いいですよ。41歳です。〝性別も年齢も突破できれば生き残れる〟-これが私のテーマ。人徳を積めば性別も年齢も関係ないと思いますね。

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◇      ◆     ◇

 インタビューは、フージャースホールディングス広報・IR担当の乙部真理氏と小池彩子氏も参加して行った。女性が3人集まると姦しいとはよく言ったもので、記者が質問しなくても実によくしゃべる。言葉一つひとつが新鮮、吟醸酒を飲んでいるように気分がよかった。その場の雰囲気が伝わるように、記事は手を加えずなるべく話した通りに書いた。

 「女性活躍」なる言葉は、女性が活躍できていない性差を受けている社会だからこそ大きなテーマになっているのであって、本来的にはそのようなフレーズはあってはならないし、死滅させないといけない。

 今回、同社の友野氏にインタビューをお願いした目的は、比較的差別が少ない会社で、しかもマンションの心臓部ともいうべき商品企画部の部長をされているからであって、その企画はどうして生まれるのかを聞くためだ。〝男女の差別をなくせ〟などと大上段に構えて書くつもりは最初からなかった。

 結果は大成功。友野氏や乙部、小池氏から発せられる言葉は、経営者や役員、商品企画担当者、さらには女性の方にも五臓六腑にしみわたるはずだ。一語一句をかみしめていただきたい。

 メディアで取り上げられる女性活躍の〝見本〟のような人が「痛々しい」と彼女たちに映るのはなぜか、これは男も考えたほうがいい。記者も含めひょっとしたら男に都合のいい視点でしか女性を見ていないのではないか。〝出産をあきらめて頑張る〟-これは〝保育園落ちた。日本死ね〟と同じ。女性の置かれている立場を如実に現わしている。

 友野氏は「パースを描くにしろそのものを知っていないと描けない」と話した。これも真理だ。レオナルド・ダ・ヴィンチが絵画を描くために解剖学を学び、筋肉や腱、臓器まで克明にドローイングしたことはよく知られているが、ものを知るとはそのようなものだ。記者の経験でいえば、リッツ・カールトンの「クレド」は宿泊することで深く理解できたし、マンション管理員の仕事が「科学」であることも1日講習を取材したからわかったことだ。

 これは今回の取材と関係ないが、実に腹が立つ許せない事実について触れておく。ある東証一部上場会社の女性役員が忽然と消えたことだ。その前に男性役員が退任したときはきちんと有価証券報告書に記載していたのに、その女性役員が退任したときは全く記載されなかった。監査人は「知らなかった」と話した。記事にしようと思い原稿を書いたが直前でやめた。ご本人に迷惑を掛けたくなかったからだ。

 これはおまけ。記者の信条は〝人生は愛〟、モットーは〝記事はラブレター〟。好きな女性は〝みんな好き〟。友野さんのような業界の女性は男性よりはるかに仕事ができると確信している。他では、一番にしないと怒られるからかみさんだが、昔の人では平塚らいてうと市川房江。作家では野上弥生子、宮尾登美子、小池真理子、それと家父長制度の生け贄になった金子みすゞ。女優では吉永小百合さん。最近ではNHKキャスターの鈴木奈穂子さん。〝しっかり考えなさいと〟目で語るのが素敵だ。

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左から乙部、小池、友野の各氏

◇      ◆     ◇

 ここまで辛抱強く読んでくださったわが業界の良識人には良薬は口に苦しの記事にはなったはずだ。万金丹はわが故郷・伊勢の万能薬です。

 

 

 

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