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 積水ハウスは2月28日、第26回地球環境大賞(主催:フジサンケイグループ、後援:経済産業省、環境省、文部科学省、国土交通省、農 林水産省、一般社団法人日本経済団体連合会)で同社のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の取り組み「グリーン ファースト ゼロ」が評価され「経済産業大臣賞」を受賞したと発表した。

 インテリックスは2月28日、不動産特定共同事業法に基づく不動産小口化商品「アセットシェアリング」の第二弾「アセットシェアリング横濱元町」(総口数1,050口)を完売したと発表した。

 「アセットシェアリング横濱元町」は、みなとみらい線元町・中華街駅から徒歩5分の「MID横濱元町」(B1・1F・2F・3F)。募集総額(総口数)は10.5億円(1,050口)、申込単位は1口100万円単位(5口以上250口以下)。収益分配金(支払月) は年2回(7月及び2月)。運用期間は30年間。予定利回りは5.2%。

 購入者の概要は平均年齢約70歳、平均口数約20口、出資者数52名(うち法人2名)。

 シリーズ第三弾「アセットシェアリング青山」、第四弾「アセットシェアリング新横浜」も近日発売する予定。

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 この物件の4階以上の一般分譲マンションについては昨年2月に取材している。坪単価は330万円の高額だったが、こちらも早期完売している。

元町仲通りの中心地、販売好調 インテリックス「リシャール横濱元町」(2016/2/28)

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「イニシア西新井」完成予想図

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都の認定マーク

 コスモスイニシアが3月に分譲する「イニシア西新井」のモデルルームを見学した。東京都が2016年2月から始めた「東京都子育て支援住宅認定制度」の分譲住宅としては初の認定物件で、高いハードルをクリアしたマンションだ。

 物件は、東武伊勢崎線西新井駅から徒歩9分、足立区島根4丁目に位置する9階建て全81戸。専有面積は63.64~110.12㎡、価格は未定だが、坪単価は200万円台の前半になる模様。竣工予定は平成30年1月下旬。施工は大豊建設。

 現地は、年間160万人が利用する複合文化施設「ギャラクシティ」やバーベキューもできる「舎人公園」などが近接。

 2016年2月から運用を開始した「東京都子育て支援住宅認定制度」で分譲マンションとして初めて認定された物件(賃貸マンションは3件)であるのが最大の特徴。認定基準である必須項目60をすべてクリアし、選択項目も全31項目のうち12項目に適合している。現在、認定マンションはこの物件しかない。

 建物は、コの字型で「mu.su.bi.」をコンセプトに中庭と環境空地を設置。エントランスホールには防災備品を備える。住戸は東向き、南向き、西向き。

 コミュニティを支援するためアウトドア用品メーカー「Snow Peak」とコラボし、アウトドアグッズを利用できるようにする。また、「HITONOWA INC.」サポートによるワークショップの開催を通じてコミュニティ活動を支援していく。

 同社の担当者は「当社はこれまで足立区内で26棟2,000戸近い実績がある。通常のマンション管理だけでなく、親和性の高いチルドレンと防災を〝結ぶ〟ことでコミュニティ支援を行っていく。専有部も都の認定制度に適合させるために様々な工夫を盛り込んだ。今のところ足立区内からの反響が45%であることからも広域的に集客できるのではないか。この物件をきっかけに当社の設計基準を変更することも考えている」と話した。

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チャイルドミラー(左)とシャッター付きコンセント

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 同様の子育て支援マンション制度は埼玉県が数年前から実施しており、すでに20数件の認定物件がある。記者は同レベルのマンションだろうと高を括っていた。

 ところが、都の認定基準リストを手渡されて驚愕した。ものすごくハードルが高いのだ。チェック項目は12ページにもわたり、段差解消、転落・落下防止、シックハウス対策、防犯対策、防音性能などはもちろん、住戸内の設備についてもチャイルドロック、指ばさみ防止、シャッター付きコンセント、引き戸の多用、ドアの幅など細部についても細かな基準が設けられている。

 管理・運営に関しても、ウェルカムパーティーや不要になった子ども用品の貸し借り、フリーマーケットの開催、さらには地域の人たちも参加できる餅つきやラジオ体操の実施、町会、自治会、子ども会などと連携した活動まで必須項目にしている。

 詳しくは書かない。都の高いハードルを乗り越えた極めてレベルが高いマンションであるのは間違いない。トイレドアの幅を750ミリ確保しているマンションはそうない。

 参考までに浴室のチャイルドロックを紹介する。子育てをやったことのない人は信じられないだろうが、子どもの溺死があるのだ。マンション管理業協会理事長・山根弘美氏(大和ライフネクスト会長)が3年前に語った次の言葉を当時の記事から引用して紹介する。

 「私は結婚して35年。単身赴任で20年。子どもは6人いた(これは後述する)。今日終わったら、かみさんに会いに行くんです」

 「山根氏はポケットからネーム入りのボールペンを取り出した。『これぼくの死んだ子どもの誕生日。1988年7月25日です。命日は1989年7月26日。生まれた翌年の翌日に死んだんです。10㎝しか水が入っていなかった浴槽に伝い歩きして入ったんです。だれも気が付かなかった。ぼくはこの子と二人分生きている』」

 単価については「坪単価200万円でどうですか」と聞いたら、ほぼその通りのようだ。リーズナブルな価格だと思う。

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引き戸 引き残し

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 埼玉県の子育て支援マンションについて。はっきり言って、都の制度と比べるとハードルは低い。認定リストは数ページくらいしかないはずだ。普通のマンションなら適合するような項目が多い。

 しかし、都に対抗するわけでもないだろうが、県は29年度予算案で「子世帯向け新築住宅取得支援事業」を新たに設け約2.5億円の予算を計上している。子どもが3人以上の世帯が対象で、戸建ては100㎡以上、マンションは4LDK以上または80㎡以上の認定基準を満たした新築住宅について最大50万円を補助するというものだ。予算が通るのは間違いなさそうで、これは子育て世帯にとって朗報だ。

 一方の都の制度は〝お墨付き〟だけで、補助金などの具体的な支援制度は各区市町村に委ねている。現在実施しているのは、都の制度が始まる前から行っていた墨田区と世田谷区、それと都の制度と同時に開始した八王子市しかないという。

 この認定基準を満たすマンションが1物件、しかも足立区だけということをどのように受け止めるべきか。越えられないハードルはやる気をなくすし、かといって低すぎても意味がない。難しい。

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浴室ドア(左)と室内物干し

山根氏の記事 「これからのマンション管理と管理会社の活用」セミナー開催(2014/3/24)

 

 

 

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「早宮サンハイツ」

 三井不動産は2月27日、青木茂建築工房のリファイニング建築手法を活用し、旧耐震基準建物を新築並みに再生する第一号案「早宮サンハイツ」の工事が完了したことに伴う見学会を実施。約200名が参加するなど、リファイニング建築に対する関心の高さをうかがわせた。

 物件は、東京メトロ副都心線・有楽町線氷川台駅から徒歩4分、練馬区早宮1丁目に位置する昭和52年に竣工(築40年)した鉄筋コンクリート造4階建て全28戸の賃貸マンション。専用面積は42.15㎡・49.50㎡。

 東日本大震災後の耐震性に対する不安の高まりの中で入居率が46%まで落ち込み対応に苦慮したオーナーが同社に依頼して青木茂建築工房のリファイニング手法を選択したもの。

 廊下側の耐力壁厚を120→150に変更、Exp.J幅を60→130に拡幅、既存塔屋及びRC階段の撤去(鉄骨 階段新設)と既存エントランス庇などを撤去することで軽量化を図り、耐震指標Is値を0.6以上確保。現在のニーズに合う間取りへの変更、内外装及び設備の一新、共用廊下の段差解消・エレベータ新設によるバリアフリー化、現行法令へ適合させるための各種工事を行った。施工は内野建設。工期は約8.5カ月。

 建物は、青木茂建築工房と業務提携しているりそな銀行とERIソリューションとで「耐用年数推定調査」を行い、税務上の耐用年数50年超を取得して長期融資が受けられるようにしている。2月末に検査済証を取得し、三井不動産レジデンシャルリースがサブリースする。今後、緊急輸送道路沿いの建物として耐震助成金の交付も受ける予定。

 オーナーは、「東日本大震災後、入居者から『耐震性は大丈夫か』という指摘を受け、耐震診断を受け問題があることが判明してから3年間は退去者が出ても全く入居者が集まらなかった。たまた青木先生のリファイニング手法をテレビで拝見して、2014年に三井さんが主催したセミナーに参加して大規模修繕を決断した」などと語った。

 賃料は109,000(41.25㎡)~、121,000円(49.50㎡)~で、三井不動産レジデンシャルリースの担当者によると「賃料設定は新築相場の90~95%だが、競争力はある」と話した。

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青木氏

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 今回に限ったことではないが、リノベーションとは比較にならないほどリファイニング手法のレベルの高さを再認識した。

 従前の設備仕様がどうなっていたかはわからないが、空調、給排水管、電気設備、外構を一新し、オートロック、エレベータ付き、Low-e複層ガラスなどの共用部分はもちろん、専用部は上がり框の高さ50㎝を確保して置床とし、トイレ、洗面、浴室のバリアフリー化を図っている。ドアは引き戸、スライドウォールを多用して機能性を高めている。

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デッキを新設し、ルーバーで意匠も一新した

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 気になっていることを青木茂氏に聞いた。「先生、先生も永遠に生きられるわけではないですよね。技術の習得には時間がかかるでしようし、どう継承していくかも課題ではないですか。教育体制はどうか、弟子は育っているのですか」と。

 青木氏は笑いながら「いろいろ話しているが(学科の新設など)全く動きはない。しかし、一人博士号を取得したし、もう一人予定もしている。すべて自前だが着々と進めている。三井さんとはあと2件のプロジェクトが進行中で、ミサワホームさんの案件もある」と語った。

 それにしても動員力がすごい。デベロッパーのマンション見学会には数えるくらいしか集まらないのに、この寒い中200名も集まるのが信じられない。

 もう一つ。いつも配布される資料はA版8折で文庫本サイズにして16ページ立て。文字が小さく年寄りは読みづらいのが難点だが、必要な事項が過不足なく盛り込まれている。リーフレットのつくり方もさすがというべきか。

 例えば1階の居室の天井高。従前は2.25mになっているが、改修後は2.4mを確保している。これについても「既存建物は1Fのスラブがなく、木軸で組まれていた。今回は1Fに土間コンクリートを新設し、湿気対策を行う。置き床高さ調整によりCH2550確保(cf4F:2400、3・2F:2450)」とときちんと記載されている。1階の天井高が高くなったのは床をそれだけ掘り下げたからだ。

 参考までにこれまでの記事を添付する。「新建築」の2017.2でも青木茂氏の「長寿命化のための手法 リファイニング建築による集合住宅の再生」が掲載されている。

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担当者の説明を聞く参加者

築44年の寄宿舎をリファイニング手法で賃貸に一新 青木茂建築工房(2016/12/21)

三井不動産 青木茂建築工房と業務提携 リファイニング建築手法を活用(2016/8/30)

建築の魔術師・青木リファイニングの真髄を見た 「竹本邸」完成見学会(2015/11/17)

リファイニング建築のすごさを見た 「千駄ヶ谷緑苑ハウス」完成(2014/3/24)

全てが腑に落ちる 首都大学東京「リーディングプロジェクト最終成果報告会」(2014/3/19)

「再生建築学の設置を」 青木茂氏、三井不動産のセミナーで語る(2013/12/10)

 

 

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「はかり屋クリエイターズ ヴィレッジ」

 ポラスグループの中央住宅は2月25・26日、越谷市の「日光街道越ヶ谷宿 春の宿場まつり」に合わせ、同社が所有している築120年の旧日光街道に面した「旧大野家住宅」でイベント「はかり屋クリエイターズ ヴィレッジ」を開催。版画、木工、家具、漆器、和菓子、カフェなど13のブースにものづくりクリエイターが集結、街ゆく人を楽しませた。

 施設は今年の秋から冬にかけて多目的複合施設として利活用することになっている。

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 同社からイベント案内が届いたとき、かちりと知恵の輪が解けたような気がした。同社は別掲の「蔵のある街づくりプロジェクト~ことのは 越ケ谷~」を数年がかりで完成させた。

 用地を取得したのは平成25年だった。わざわざメディアを呼びプロジェクト説明会を開いた。蔵や古民家などの歴史的建造物を残したいという熱意がひしひしと伝わってきた。その後、紆余曲折があり4戸の分譲住宅を引き渡すまでに3年かけている。記者はこの間、5度くらい現地取材を行っている。

 わずか4戸の分譲住宅を売るだけなら同社は数カ月もかからない。メディアを呼びもしない。

 なぜ、これほどまでに時間とお金をつぎ込み、メディア向けに情報を発信するのか。その理由がはっきりした。越谷市の意向に呼応するためだ。

 市は平成25年、越谷駅東口の約78haを対象とした「越谷市中心市街地活性化基本計画」を策定した。計画の中には蔵や古民家などの利活用も盛り込まれている。平成32年までに商業活性化、福祉施設の整備、街なか居住促進事業などを進めていく。

 そして今年2月13日、高橋努市長と品川典久社長も出席して市と同社は「まちづくりについての連携・協力に関する基本協定」を結んだ。蔵、古民家などを活用した地域の賑わい創出や地域の街づくり・景観向上などに関して定期的に協議し、地域活性化に取り組むという内容だ。

 今後、中心市街地活性化法に基づき具体的な施策が打ち出されるはずだ。地区計画などで私権を制限する一方で固定資産税、都市計画税の減免措置も講じ、あらゆる補助金・助成金制度を駆使すればどこにも負けない街になるのではないか。

 同社はこの事業にどこまで貢献できるか。主力事業の戸建て商品企画は大手に負けない。足りないのは再開発など複合的な街づくり事業だ。しっかり腰を据えて取り組んでほしい。

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女性用の越中ふんどし(かみさんにプレゼントしようとも考えたが2500円の値段に驚いてやめた。手書きの値札もどうか。若い人は読めないし、これでは売れるものも売れない)

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細かな組子細工に最初はプラスティックかとも思った

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廊下

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土台(築120年とは思えない。まったく狂いがない)

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蔵の入り口に貼られていた注意書き(スタッフに「履物」はひらがなにすべきと注文してそうなった。松岡正剛の「いやよして」と同じ。こういう遊び心が必要)

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 息子さん、娘さんと5人の孫とで訪れた草加市に住む女性(53)は、「初めて建物を見たが、街ぐるみ賑わっているのがいい」と満足そうだった。「旧大野家住宅」は材木商だったそうで、黒檀、花梨など銘木や一枚板の廊下、微細な組子細工などが用いられているのが目を引いた。

 対面には同じように古い商店「会田金物店」があった。店頭に誰が買うのか昔懐かしい1,380円のブリキの湯たんぽが無造作に掲げられていたので、ご主人に声を掛けた。

 ご主人は「家は江戸時代に建てたものそのまま。わたしは昭和15年生まれ。戦争? もちろん、東京方面が真っ赤になったのをよく覚えている。ジュラルミンのB29がきらきら光り、わが日本の高射砲は全然届かない。アメリカがまいたビラ(降伏を進める内容か)も残っているかも。跡継ぎ? どうなるか」と話した。店の中には年代物の手斧の柄や昔の秤など〝お宝〟が埋もれていた。

 明治32年の大火のあとに建てられたという「木下半助商店」も訪ねた。「空襲? 当時は仙台に住んでいましたが、よく覚えていますよ」と、昭和5年生まれの経営者の女性は語った。店のスタッフは「登録有形文化財に指定されましたが、補助金などはなし。税制で少し優遇されているだけ」と不満そうだった。

 旧日光街道には15もの蔵・古民家が現存している。

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「会田金物店」

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「旧大野家住宅」から撮った「会田金物店」

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ご主人

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手斧の柄(何の木かは不明だとか)

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「木下半助商店」(間口はそれほどでもないが、表の店から土蔵、石蔵、釘蔵、奥蔵、母屋、お稲荷さんがあり、奥行きは60mくらいあった)

ポラス「ことのは 越ケ谷」戸建て4棟も完成、分譲へ(2016/4/1)

 

 

 

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「マンション管理員業務講習会」(大京アステージ研修所)

 公共職業安定所(ハローワーク)の就職フォローアップ事業の一つ「マンション管理員業務講習会」を取材した。「掃除は科(化)学」「床は朝日新聞、窓ガラスは読売新聞」「ホコリは取るもの、誇りは持つもの」などという講師の話と手際よいスゴ技に目からうろこが落ちた。

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 講習会が行われたのは大京グループの管理会社・大京アステージの研修所。年間16回くらい行われておりほとんどが満席だという。マンションの構造から共用部分、専有部分、給排水・防火設備、免震装置などあらゆるものが備えられているのが選ばれている理由のようだ。

 この日、講習開始の9時30分に集まったのは20数名。55歳代半ばから記者と同年代と思われる60歳代で、女性も数人。

 事前にスケジュールは知らされていたが、昼食、休憩を含み16:30まで7時間。配布された資料はA4約70枚。素人でも理解できる内容ではあるが、何しろ掃除が大嫌い。始まる前に腰が引けた。

 主催者の挨拶のあと、講師は朝の準備体操から制服を着て、手書きの日報(記者は漢字が書けない)で終わる1日の業務を説明。「管理員の仕事の7~8割は清掃」「誇りとサービス精神」「礼節を重んじる」などと話した。

 ここまで約1時間。講義を聞きながら、配布された〝求人リスト〟を見た。給与は時給にして1,000円前後、月曜から土曜日まで1日8時間働いて月給は12万円台から17万円台。〝これでは生活できないではないか〟と管理員になったつもりで考え絶望的な気持ちになった。〝もう帰ろうか〟とも思った。

 そんな記者を救ったのは、大京アステージ人財マネジメント部研修センター講師・春田道雄氏(67)だった。

 春田氏はどこか坂上二郎さんに似ていた。登壇すると講釈師のように「多く給与もらっていないのだから、体調が悪い時は休みなさい」「掃除のメリハリを付けなさい」「光るものは光らせなさい」「雑巾は手首で絞ると腱鞘炎になる」「掃除は科(化)学」「ウォッシャーは左を下げて」「自在ほうきはヘッドエンドを持つ」「モップは後退しながら拭く」「入居者が拭いた後を汚しても注意しない」などとわかりやすく説明した。舌を巻くほかなかった。話し上手は綾小路きみまろさんクラスだ。

 目からうろこが落ちたのは、朝日新聞と読売新聞に言及したときだ。和室は茶渋を用いて掃除することを引き合いに出しながら、「ここでクェッション、エントランスの床の微細なホコリやチリを効果的に取り除く方法は? 」と受講者に問いかけ、「答えは新聞紙。小さくちぎって水を含ませて掬い取るのです。どの新聞がいいか、朝日新聞です。読売新聞はふさわしくありません。なぜか。科学的には証明できませんが、経験値からわかったことです。朝日はインクが薄い、読売は濃い。インクが濃いと床が汚れることがある。こんなことを喋ると読売派の方に怒られますが、読売のほうがいいところもあります。窓ガラスです。インクの作用でコーティングして、汚れにくくする効用が読売にはあります」

 なるほど。朝日と読売を比べた場合、見出しは朝日のほうは明朝体が多く、読売はゴシックが多い印象を受ける。それがインクの濃淡につながるのかと思い、そのまま朝日と読売に問い合わせた。残念ながら双方ともわからないということだった(漢字はどちらが多いか、見出しは明朝かゴシックか、ホワイトスペースの多いのはどちらか-これを調べれば科学的に証明できそうだ)

 そんなわけで、終了の16:30までつつがなく取材を終えることができた。記者のようなタバコ好きの掃除嫌いや余計なお世話好きには向かないが、普通の人ならできるのではないかと思った。受講者はみんな楽しそうだった。

 春田氏も「管理員になるまではお客さまから直接〝ありがとう〟という言葉をかけられる仕事でなかったが、管理員になって〝ありがとう〟という声を掛けられたときは本当にうれしかった」と話した。

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「みなさん、掃除は科学ですからね」春田氏

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「自在ほうきはヘッドエンドを持つんですよ」

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 マンション管理の仕事がどのようなものか全く知らないのに〝マンションは管理を買え〟などと話したり記事を書いたりするのが管理員や購入検討者に失礼だと思い、少しでも実際の仕事内容を理解するために取材を大京広報担当者にお願いし、快く引き受けてもらった。同社と大京アステージの方々に改めてお礼申し上げる。

 今回の経験を今後のマンション管理の取材に生かしたい。マンション管理業界では管理員の確保が深刻化しているとも聞くが、管理員はモチベーションを高く持ってマンションの価値維持・向上に務めていることを実感した1日だった。デベロッパーや管理会社は管理員の待遇改善に一層力を注いでほしい。

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「ちりとりだって音が立たないよう工夫しているんですから」

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「給水システムは本物を縮小していますが原理は同じです」


 

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歓談する吉田常務(左)と杉山社長(三菱一号館美術館)

 コレド室町を中心とする「プレミアムフライデー in 日本橋」の会場に着いたのが午後2時30分。呑み助の記者は〝プレミアムフライデーから3日間限定! 桜のアート空間で日本酒飲み比べ〟のチラシにつられて「FLOWERS by NAKED」へ早速取材を開始。

 生け花、映像、香り、飲食など五感で体験する人気イベントで昨年は2回通算15万人を動員したという。今回は草月流の勅使河原茜氏やファッションデザイナー丸山敬太氏などの演出で〝日本で一番早いお花見を、日本橋で。〟というのがコンセプト。鑑賞+飲み比べセット券で3,400円(飲み比べ券2,000円)。

 いくら何でもこの時間に飲む人はいないだろうとは思ったが、男性と女性の比率は1:10くらいか。ほとんどがプレミアムフライデーどころか〝毎日が日曜日〟のような女性二人連れが圧倒的に多い。やはり〝花見〟が主目的のようだった。

 それでも薄暗い中で酒を飲んでいるカップルがいたので声をかけた。34歳の男性会社員は「うちは(プレミアムフライデーは)まだなので有休をとってきました。仕事を調整して使えるときに使いたい。始めてきましたが、飲み比べ券も買いました」と話した。隣の女性に「妹さん? 」と聞いたら「いえ、学生です」だった。

 「これからどうするんですか」「一緒に食事でもと…えっ、安倍総理の奥さんが来られるんですか、初めて知りました」

 二人は酒のせいか桜のせいか、ほんのりとピンク色に染まっていた。(憎たらしい!)

 主催者のNAKED Incは、「現段階で来場者は昨日より200名増。プレミアムフライデーの効果はあります」と手ごたえを感じていた。

 安倍昭恵・総理大臣夫人がゲストとして三井不動産・菰田正信社長らとともに行った「プレミアムフライデー 東京エキマチ乾杯」は、他の会場と異なり周辺のオフィスワーカーや来街者と一緒に祝った演出が奏功したのか(ほかの目的があったのか)報道陣も入れきれないほど賑わったとか。

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幻想的な世界が広がる「FLOWERS by NAKED」

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 東京駅での「プレミアムフライデー 東京エキマチ乾杯」の取材が空振りに終わった記者は、そのあとすぐ丸の内エリア会場に向かった。着いたときは宴たけなわ。ゲストの小池百合子・東京都知事の姿はなく、三菱地所・杉山博孝社長と吉田淳一常務は社長交代のバトンタッチもうまくいったためか上機嫌。ワイングラス片手に関係者らと歓談していた。

 杉山社長は「フレックス勤務は4時までだが、今日は3時に繰り上げた。仕事? どこでもできる」とワークライフバランスの取り組みに自信を見せた。

 吉田常務は、「頼みますよ、空と土プロジェクト。今度、新たに酒粕の香りがするカステラを作った。体験ツアー? 行きたいが、仕事が…」と、記者にまた同社の北杜市での「空と土プロジェクト」の取材をけしかけた(常務、わたしは稲刈りが本職じゃないですからね、マンション。田植えも稲刈りも取材したから、今度は果実=「丸の内」のお酒の飲み会を取材したい。この酒は「獺祭」に負けない)。

 関係者にも声を掛けた。三菱地所アジア事業部長・菊川嘉彦氏らに気の利いたコメントをお願いしたら、菊川氏は言い淀む部下に割って入って「いいアイデアは 会議室では 生まれない。長い会議 意味がない。どうです。ちょっと字余りですが、わたしはみんなに5・7・5・7・7くらいで説明しなさいといっている。ハハハハ」 傍の女性は「部長、大好き」とほれ込んでいた。

 菊川部長、この日の見出し「日本橋 桜と酒に 染まる1日 トップ交代 見事に決まる 丸の内」-これはどうでしょう。

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右から2人目が菊川氏

 この日が最終日だが、「第15回キラキラっとアートコンクール優秀賞作品展」が丸ビル1階で行われていた。記者は一度取材したことがあるが、みんな力作ばかりだ。

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「ぼくのヒーロー〜体操日本〜」(まえのいっけい、13歳)

榊原経団連会長は直接国民に呼びかけてほしかった プレミアムフライデー 東京駅(2017/2/24)

大和ハウス プレミアムフライデー 午後有休スタート 遠足気分のグループも(2017/2/25)

2月24日プレミアムフライデー 大和ハウス役員は「仕事」派が優勢(2017/2/23)

 

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12時過ぎ、続々退社する大和ハウス社員(飯田橋の東京本社ビル)

 大和ハウス工業は2月24日(金)、経済産業省が推進する国民運動「プレミアムフライデー」の取り組みを実施した。国が推奨する「遅くとも午後3 時までの業務終了」の一歩先を行く「午後有休」の「プレミアムフライデー」を実施した。今後、原則として偶数月の最終金曜日の就業時間を「9~18時」から全社一律で「8~17時」に変更し、午後は半日有休とする。東京本社の対象者は約2,200名。

 この日、千代田区飯田橋の東京本店では、午後12時過ぎから続々社員が退社した。10数人に感想などを聞いたがほとんどが肯定的に捉えており、「事前に準備したので仕事への影響はない」という声がほとんどだった。まるで遠足にでも行くように部署ごとの食事会に出かける若い社員が目立った。役員クラスの年齢層は少なかった。

 注目される「有休」取得率だが、ビルの出口は飯田橋方面と水道橋方面に向かう2カ所にあり、記者が午後12時から13時まで水道橋方面に向かう社員にインタビューした印象では半数は微妙で、40%くらいではないかと思われる。同社広報は「数字が出るまで時間がかかる」としている。

 午後1時過ぎ、東京ドームホテルのレストランに行き「普段とお客さんの入りはどうですか」と尋ねたが、「いつもと同じですね」と期待外れの様子だった。

 以下、社員のコメント。

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〝まるで遠足気分〟20代独身4人組

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30代独身男性 家に帰り、家族と出掛けるつもり。制度はいいこと

30歳と20代の独身女性2人組 テレビで話題になっていたのでワクワクしていました。営業事務です。社内はばたばたしていた感じはありましたが大丈夫。普段は定時で帰っています。これから一緒に昼ごはん。

45歳既婚男性 子ども3人の5人家族です。今日は子どもの行事があり出席したあとみんなで食事。家族サービスができるので制度を利用したい

29歳独身男性 家に帰って出かける予定。非常にいいこと。あらかじめ計画を立てるので仕事への影響はない

20代独身4人組 みんな設計担当。今から食事会。設計は期限があるがスパンが長い仕事。6時間を1カ月に分散すれば問題は少ない

20代独身女性 結構きつかったが、やってやれないことはない。昨日に済ませられることは済ませた。いつも定時で帰っている

37歳既婚男性 RBA野球でお世話になっています。いつも記事読んでいます。仕事はちゃんとやってきました。問題ない。子どもは小学1年と1歳。いい制度。野球? この3年間行っていないが…監督は動けなくなってきた(逆に声を掛けられた)

30~40代既婚女性 わたしのこともう覚えていないでしょ。広報を担当していた〇〇です(この方からも声を掛けられた。確かに独身のときよりずいぶん変わったが、よく覚えている。大変お世話になった。よくできる方だった。お子さんは2人のはず。40代の大台に乗ったかも)

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報道陣のインタビューに答える社員

榊原経団連会長は直接国民に呼びかけてほしかった プレミアムフライデー 東京駅(2017/2/24)

酒とさくらに染まる 日本橋 見事なバトンタッチに乾杯 丸の内 プレミアムフライデー(2017/2/25)

2月24日プレミアムフライデー 大和ハウス役員は「仕事」派が優勢(2017/2/23)

 

 

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「プレミアムフライデー 東京エキマチ乾杯」(左から冨田社長、世耕大臣、榊原会長 東京ステーションホテルで)

 「プレミアムフライデー」の初日(2月24日)、東日本旅客鉄道、三井不動産、三菱地所の3社は東京駅、日本橋、丸の内エリアが連携した様々なイベント「東京エキマチ×プレミアムフライデー」を実施した。

 東京駅エリアは東日本旅客鉄道・冨田哲郎社長と榊原定征・日本経済団体連合会会長が、日本橋エリアは三井不動産・菰田正信社長と安倍昭恵・総理大臣夫人が、丸の内エリアは、三菱地所・杉山博孝社長と小池百合子・東京都知事がそれぞれ出席。働き方改革を進め、月末の金曜日は仕事を早めに終え、家族らと一緒に過ごす時間を増やそうと呼びかけた。

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 記者は日本橋も丸の内も取材したかったが、あちらを立てればこちらがたたず、結局はニュートラルの立場で東京駅を選択した。榊原会長が何を話すか興味もあったからだ。

 しかし、全くの期待外れ、肩透かし。榊原会長は冨田社長や世耕弘成・経済産業大臣らと壇上に上がりセレモニーを行い、3エリアを中継でつなぐ「東京エキマチ乾杯」を行って降壇した。発言は一言もなし。

 記念写真だけは何とか撮り帰ろうとしたら、何やら会場の中央に人だかりができた。三脚やら集音マイクを抱えた人ばかりだった。JR東日本の関係者だけで何かが始まるのだろうと思ったら、先の3氏がぶら下がり取材に応じた場面だった。

 後れを取った記者は外から眺めるしかなかった。声はほとんど聞き取れなかった。おまけに三脚のカメラマンの撮影の邪魔をしたらしく、やくざのような言葉でののしられた。たくさんのSPにも睨まれているような気がした。

 この日は、プレミアムフライデーが浸透することを願って12時から18時まで食事もとらずほとんど立ちっぱなしで取材した。とてもいい取材ができたが、ここだけが誤算だった。東京駅を外して三井か三菱かどちらかに行くべきだった。

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 取材前に、三菱地所の女性広報担当者から三菱地所のビルではなくサンケイビルにあるカキがおいしい店を紹介されていた。

 東京駅にも丸の内にも日本橋にもおいしいカキの店があるのは知っているが、ひょっとしたらもっとおいしい店かもしれないし、かみさんと〝プレミアム〟な1日になるかもしれないと淡い期待を抱いて、とにかく行ってみることにした。

 カキとワインは確かにおいしかった(年寄り向けではないが)。しかし、若い女性スタッフは「プレムアム? 全く効果がない。いつもと一緒。期待外れ」とあきれ返っていた。榊原会長はこの声にどう答えるか。

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プレミアムマルシェ(東京駅で)

酒とさくらに染まる 日本橋 見事なバトンタッチに乾杯 丸の内 プレミアムフライデー(2017/2/25)

大和ハウス プレミアムフライデー 午後有休スタート 遠足気分のグループも(2017/2/25)

2月24日プレミアムフライデー 大和ハウス役員は「仕事」派が優勢(2017/2/23)

 政府が推進する「プレミアムフライデー」にいち早く反応し、偶数月の最終金曜日は就業時間を「9~18時」から全社一律で「8~17時」に変更し、午後は半日有休とすることを発表した大和ハウス工業だが、グループのコスモスイニシアも負けてはいない。

 「政府にたてつくようなことは申し上げられませんが、当社は働き方改革を進めるためワークスタイルイノベーションに取り組んでから2年が経過します。粛々と進めていく」(同社広報)という。

 同社は、他社に先駆け経営幹部の多様な人材登用、在宅勤務制度、時短勤務、フレックス勤務、有期雇用から無期雇用へ選択できる「プロ社員」制度などを導入している。

 女性活躍推進の取り組みが評価され、一昨年5月には三井住友銀行の「SMBCなでしこ融資」企業にも選ばれた。

 大和ハウスの高井基次常務は今日(2月24日)、散歩がてら他社のマンションを見学するというが、分譲マンションとしては初めて「東京都子育て支援住宅認定制度」に認定されたコスモスイニシア「イニシア西新井」を見学リストに追加してはいかがか。これはいいマンションだ。

「女性活躍」待ったなし コスモスイニシア執行役員・岡村さゆり氏に聞く(2015/8/27)

 

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