RBA OFFICIAL
 

新外観写真.jpg
「ザ・パークリモア 白金台三丁目」外観

 三菱地所レジデンスは1月16日、一棟リノベーション事業のブランド名を「ザ・パークリモア」に決定し、その第一弾「ザ・パークリモア 白金台三丁目」のモデルルームを1月21日公開すると発表した。

 第一弾「ザ・パークリモア 白金台三丁目」は、東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅から徒歩4分、港区白金台3丁目に位置する4階建て全14戸。専有面積は214.57~267.05㎡、第1期(5戸)の価格は28,800万~42,400万円。既存建物竣工は1987年(昭和62年)8月。施工は長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)。リノベーション設計は南條設計室 一級建築士事務所。リノベーション施工はケーアンドイー(共用部)、パナソニックES建設エンジニアリング株式会社(専有部)。引き渡しは2017年3月中旬。

 従前は主に外国人向け賃貸として利用されてきたもので、全戸200㎡超。同社は2015年3月に取得、2016年3月までに全戸退去したのち工事を進めてきた。

 外観・中庭などの大規模改修を行い、Wオートロック、ゲート、宅配ロッカーなどを新たに設置し、セントラル空調システムを個別空調に更新したほか、ペアガラスの設置、ノンフロン断熱、二重床、エネファームなどを採用して省エネ性能の向上を図った。

 同社リノベーション事業部開発第一グループ長・田中正祥氏は、「バブル期の典型的な高級マンションで、同じような物件の更新期に入る。この物件はその嚆矢となるもの。バブル仕様のいいところを残しながら、当社の新築マンションのノウハウを注ぎ、基本性能を上げた」と話した。

 同社は2014年4月、「リノベーション事業部」を新設。一戸単位での事業とともに、今回一棟リノベーションマンションについても本格展開することにした。ブランド名には「renovation+more=もっと確かに、もっと価値があるリノベーション」という意味が込められている。

 今後、年間約100億の売上高を目標とし、将来的には年間約500~600戸(一棟含む)、売上高200億円を目標としていく。

新リビング.jpg
モデルルーム リビング

◇       ◆     ◇

 建物が竣工した昭和62年はバブルが発生して間もないころで、その後、バブルが崩壊する平成2年まで価格が暴騰した。所有権分譲なら坪単価は2,000万円をはるかに突破していたはずだ。施工を担当した長谷川工務店は外国人向けマンションにも注力していた。この物件も極めてレベルの高い物件だったのは間違いない。

 リノベーション後のモデルルームは約216㎡(約65坪)。大理石、御影石、オバンコール、クォーツストーンなどがふんだんに用いられ、パウダールームが2カ所、ゲスト用のトイレ、浴室には今は珍しいタオルウォーマーもついていた。

 当時の階高は3150ミリ、スラブ厚は200ミリで、新たにふところ厚130ミリの二重床にしてもリビング天井高は262ミリ確保できている。

坪単価は500万円台から600万円台で、いまの新築の相場と比較すれば割安感があるが、グロスが張るのでどのような富裕層が買うか記者は分からない。このほか管理費が約14万円から16万円、一括修繕積立金が300万円前後、駐車場使用料が29,000円から48,000円。

新洗面.jpg
洗面室

断熱吹き増し後リビング.jpg
断熱吹き増し後リビング

完成予想図.jpg
「ブランズ川口元郷」完成予想図

 東急不動産が分譲中の「ブランズ川口元郷」を見学した。同社が川口駅圏で分譲する16棟目のマンションで、「川口工業総合病院」の建て替えに伴うプロジェクト。総合病院との一体開発は埼玉県初で、高齢者等配慮対策等級の最高等級5を取得したプランも選べる。

 物件は、埼玉高速鉄道川口元郷駅から徒歩5分、埼玉県川口市青木1丁目に位置する19階建て全119戸。専有面積は72.75~94.21㎡、第2期(7戸)の予定価格は4,200万円台~6,500万円台。坪単価は205万円。設計はGA建築設計社。施工は埼玉建興。竣工予定は2018年2月上旬。

 昨年12月から分譲開始し、これまで第1期50戸のうち44戸が成約済み。好調なスタートを切った。

 敷地は、川口工業総合病院が建っていたところで、同病院は隣接する前駐車場に移転し、マンション内に設置する病院関連施設を同病院が保有・運営する。 

 商品企画では、共用部・専有部では住宅性能表示の高齢者等配慮対策等級3を取得しており、さらに専有部ではセレクトプランを選択すれば、高齢者の安全な移動や介助用車いす使用者のサポートを容易にする最高等級5を備えた仕様にすることができる。

 このほか、「埼玉県子育て応援マンション認定制度」を取得している。

 販売を担当している同社マンションギャラリーチーフ・菅谷智氏は、「病院が併設されることについては、救急車の音を気にされる方などネガティブな評価もあるが、総じてポジティブに捉えられている。販売状況としては極めて順調。京浜東北線や都内の価格が上昇していることから、集客は地元川口中心ではあるが、都内中広域へと広がりつつある。シニアの需要も取り込めている」と話している。

散策路.jpg
散策路

◇       ◆     ◇

 同社はこれまで川口駅圏で15棟、JVを含め2,000戸以上を供給しているが、この物件は代表的な物件の一つになりそうだ。

 高齢者等配慮対策等級の最高等級5が選べるプランがいい。一般プランでは5.5畳大となっている洋室の部分に洗面室と浴室を設置。洗面室は介助者のサポートが容易にできるように回転スペース1500 Øを確保し、浴室のドアは引き戸を採用。トイレを含む全てのドアは800ミリ以上にしている。

 このように車いす利用を想定したマンションはシニア向けはともかくとしても極めて珍しい。どんどん供給してほしい。

 細かな点では、インブルームが監修した収納提案もなかなかいい。

mtg_08.jpg
モデルルーム

◇       ◆     ◇

 面白いやり取りがあった。物件説明を受けたのは菅谷氏で、同社広報マンのT氏と新人と思われる広報マンM氏が同席した。M氏とは初めてお会いするので名刺交換した。北海道生まれの23歳で、とてもかわいかった。

 菅谷氏は、この川口駅圏で約7年間にわたり同社の物件を担当しており、記者が見学した「イーストゲートタワー川口」「サウスゲートタワー川口」「ブランズ川口栄町パークフロント」のほか、「浦和美園」「淵野辺」などのプロジェクトにかかわっている大ベテラン。川口のことは「路地裏まですべて知っている」そうだ。

 そこで、「キューポラはもうなくなったでしょうね」と聞いたら「まだ残っていますよ」ということだったので、意地悪な質問であるのを承知の上でMさんに話を振った。

 「Mさん、キューポラって知っていますか? 吉永小百合さんは? 」「ええ、キュープラなら。吉永小百合さんも名前だけは存じ上げています」「えっ、キュープラ? キュープラって何ですか」

 ここでT広報マンが助け舟。「キュープラは当社のキュープラザ原宿のことです」「なるほど。Mさん、平成生まれだから知らないはずですよね。知っているのはサイロですよね」「…わたし、生まれは北海道でも、育ちは東京ですので…」(サイロも知らないということか)

 昭和は遠くなった。

mtg_10.jpg
モデルルーム

 国土交通省は昨年末、市街化調整区域における建築物の用途変更について、古民家などの既存建築物を地域資源として地域再生に活用する場合に、許可要件を弾力的に運用できるよう開発許可制度運用指針の一部を改正した。

 集落の人口減少・高齢化の進行、空き家の発生などにより地域コミュニティの維持が困難となりつつあることを踏まえ、空き家となった住宅などを観光振興や集落の維持のために活用しようという狙いだ。都市計画法では、市街化調整区域内の既存建築物の用途変更は地方自治体の許可が必要で、これまで古民家や店舗などを他の用途に変更する運用基準は各自治体によってまちまちだった。

 具体的には古民家を宿泊施設や飲食店にしたり、自己用住宅を移住・定住促進のための賃貸住宅、グループホームなどにしたりすることが想定されている。

 実際の許可権者は地方自治体にあるため、国交省は用途変更がどの程度行われるか不明としている。各自治体の動きが注目される。

◇       ◆     ◇

 過大な期待は持てないだろうが、地域コミュニティを維持・活性化させる指針の改正には大賛成だ。

 そもそも市街化を図るべき市街化区域と開発を抑制すべき市街化調整区域に区分する線引きがなされたのは高度成長期の昭和43年の新都市計画法で、現在の人口減少、少子・高齢社会の状況では線引きそのものの意味も薄れている。

 このため国は平成12年に法律を改正、大都市圏と特定都市を除き、線引きは各地方自治体の判断にゆだねられることとなった。その結果、現在では10を超える自治体が線引きそのものを廃止した。

 その後も地方都市での人口減少傾向は加速し、中心市街地の空洞化、限界集落への転化、コミュニティの崩壊など地方自治体の抱える問題は深刻化している。このため全国の自治体は、移住助成措置を取ったり空き家バンクを設置したりするなどして懸命な取り組みを行っている。今回の指針改正は、これらの動きを後押しするものになる。

 ここで懸念される問題もある。用途変更によって違法建築物があぶり出されないかということだ。線引き前に建てられていた古民家などは問題ないだろうが、都市計画法第43条1号で規定されているいわゆる1号店舗には違法建築物が隠れている可能性がある。

 1号店舗とは、調整区域に居住する人向けの小売業、飲食料品店、書籍・文具店、洗濯・理容・美容・浴場業、コンビニなどだ。これらは各自治体の判断によって建設することが許される。

 国交省によれば、平成26年度の1号店舗の許可件数は全国で775件。単純計算すれば1日当たり約2件、1都道府県当たり約16件と少ないが、ある県は全体の17.2%に当たる133件と突出。この県はもともと件数が多く、昭和60年前後のピーク時には少なくとも年間200~300件が許可されていた。

 これらの1号店舗が果たして適法に利用されているかどうか。建築基準法では、建物が完成したときは建築主事又は指定確認検査機関による完了検査を受けて検査済証の交付を受けなければならないことになっているが、当時は検査済証の交付を受けていない建築物がたくさんあった。つまり実態は闇だ。

 今回の指針改正でも、用途変更が認められるのは適法に建てられ、その用途に供されていたものであるものに限られる。この要件を満たさなければ、既存建築物は用途変更も建て替えも不可となる可能性が大きい。空き家となったら最後、そのまま朽ちるのを待つほかない。

 

 野村不動産アーバンネットは1月13日、四半期ごとに定点観測している「住宅地価格動向」「中古マンション価格動向」の結果をまとめ発表した。

 2017年1月1日時点の価格は住宅地、中古マンションとも全エリア平均変動率はプラスとなり、2013年7月調査以来連続してプラスを維持した。

 住宅地の価格変動率は、首都圏エリア平均で0.3%(前回0.1%)となり、2016年平均の変動率は1.2%となった。

 中古マンションの価格変動率は、首都圏エリア平均で0.3%(前回0.1%)となり、2016年平均の変動率は1.1%となった。

 

IMG_9836.jpg
プレ協の新年賀詞交歓会(アルカディア市ケ谷で)

IMG_9829.jpg
樋口会長 

 プレハブ建築協会は1月13日、「平成27年度新年賀詞交歓会」を開き、樋口武男会長(大和ハウス工業会長)が「良質な住宅を供給するとともに空き家の活性化などについても知恵を絞り、いい街づくり、国家形成にチャレンジしていく」と語った。

 賀詞交歓会には約550名が参加。冒頭、樋口氏は「わが国の住宅ストック約6,063万戸のうち空き家が約820万戸、耐震性が不十分な住宅が約1,050万戸、断熱性能が満たされていないものが約2,000万戸ある。一方で長期優良住宅は1~2%しかない。国は豊かになったかもしれないが、これでは先進国とは言えない。良質な住宅を伸ばすことも重要だが、空き家の活性化にも取り組まなければならない。プレ協としても知恵を出し合いいい街づくり、国家形成にチャレンジしていく」と話し、中長期的には海外事業にも力を入れるべきとした。

 また、トランプ氏の米国大統領就任についても触れ、「最初は景気よく株価も上昇したが、ここ1、2日は怪しくなってきた。20日にどのような発言されるのかわからないが、知恵を絞って道を開いていくしかない」と語った。

◇       ◆     ◇

 以下は、会場で拾った主なコメント。( )内は記者。(順不同)

同協会副会長・和田勇氏(積水ハウス会長兼CEO )

IMG_9838.jpg

 (会長、「中古住宅」は「既存住宅」に統一されましたが)「まあ、『中古』よりええやないか」(会長、我々の世代は「キソン」じゃなくて「キゾン」と発音したのではありませんか)「そうだ、そうだ、『キゾン』だ」

トヨタホーム社長・山科忠氏

IMG_9839.jpg

 (ミサワホームの子会社化について)「ミサワには歴史、技術、販売力があり、われわれより先行しているものもある。1+1が2以上になるよう新規事業も含め取り組んでいく」(尾久では初の共同事業マンションを供給される。相場は坪250万円かもしれませんが、〝世界のトヨタ〟ですから坪300万円にチャレンジしてほしい)「わたしの口から何とも言えない。記者の方がそう仰っていることは分かりました」

ミサワホーム執行役員・中村孝氏

 (ミサワさんはマンションの実績もありますよね)「あのTHE TOKYO TOWERSをうちでやっていたら、ミサワの歴史も変わっていたはず。これからはトヨタの土地の有効活用や当社も土地を仕入れているのでいいものをつくっていきたい」(同感。ミサワが土地を仕入れ、プランを練り、いざというとき、2004年1月、経営悪化から住友商事に売却せざるを得なかった。気の毒だった)

同協会会長・樋口武男氏(大和ハウス工業会長)

 (会長、トランプさんに対して知恵を絞るとはどういう意味? )トヨタさんが1兆円の投資をするといったように、理を尽くせばわかってもらえるのではないかという意味。うち? うちは大丈夫」(メキシコには投資しないということか)

〝「ケイキ」の「キ」は「木」にしようではないか〟

IMG_9840.jpg
 左から同協会副会長・竹中宣雄氏(ミサワホーム社長)、住友林業社長・市川晃氏、積水ハウス社長兼COO・阿部俊則氏、三井ホーム社長・市川俊英氏(4人が何を話していたかわからないが、記者は勝手に積水ハウスは木造の〝シャーウッド〟で、木造住宅の一層の発展について論議していたと解した)

0A2A2625.jpg
カフェコーナー

 旭化成ホームズは1月12日、同社の東京営業本部(新宿区西新宿2-4-1新宿NSビル)内に、インテリアや設備のショールーム「デザインスタジオ東京」と、新たな試みとして設置する体験型シアタールーム「THE VISION HEBEL HAUS (ザ・ビジョン ヘーベルハウス)」を備えた打ち合わせスタジオ「HEBEL HAUS TOKYO PRIME SQUARE(ヘーベルハウス トーキョープライムスクエア)」を1月21日(土)にオープンすると発表した。

 新たに導入した「THE VISION HEBEL HAUS」は、主に住宅取得検討の初期段階のお客様を招待し、家づくりや新しい暮らしへの夢を膨らませていただくことを目指した体験型映像施設。6つのコンテンツで構成されており、全て利用すると約50分。

 4方向(前・右・左・上)の壁・天井に配した連続型大画面スクリーンに映し出す臨場感あふれる360°映像により、ヘーベルハウスの新商品や最新展示場など約20事例の住空間をバーチャル見学できる。

 ソファに座ったまま手のひらを画面に向けて動かすジェスチャーによるインタラクティブ操作となっており、専用ゴーグル装着によるVR映像と違い見学者全員が同一体験を共有できるのが特徴。

 「デザインスタジオ東京」は、主にヘーベルハウスを契約した顧客との打ち合わせ施設。リビング、キッチン、浴室、外観、ドア、カーテンなどほとんどの設備仕様が整っており、同社最大級の広さと上質な空間を用意した。

 同社執行役員東京営業本部長・藤澤秀樹氏は、「2016年度上期の受注は2013年上期の水準にあり、昨年末より受注を伸ばしてはいるが、お客さまの契約に至るまでの期間は長期化している。消費増税が延期になり、長期にわたって低金利が続いていることが要因。二つの施設を設置することで、お客さまの背中を押してやるのが目的」と語った。

 今回の施設を設けることで、年間受注棟数の10%(180棟)増の受注を目指し、来場者は月間50名が目標。

 「HEBEL HAUS TOKYO PRIME SQUARE」は、新宿区西新宿2-4-1 新宿NSビル11階、広さは約860㎡(うちシアターが約60㎡)。来場は営業担当を通じた予約制。

0A2A2654.jpg
住設備のサンプル、家具なども展示

◇       ◆     ◇

 同社の東京営業本部はこれまで京王線笹塚駅から徒歩5分くらいのところにあり、何度か取材したことがある。昨年末に新宿・NSビルに移転した。

 確かに利便性ははるかに高くなり、端から端まで約64m、幅約13mの新たな2つの空間も素晴らしい。居ながらにして同社の「へーベルハウス」が体験できる(個人的にはオリジナルのシステムキッチンが一番よかった)。

 年間の契約棟数を10%増やすという藤澤氏と同営業本部マーケティング室長・野口豪之氏の話を聞きながら、すごい目標だと感じた。年初から同事業本部の〝やる気〟をひしひしと感じた。

0A2A2942.jpg
シアタールーム(正面の他、右、左、天井に画像が映し出される)

◇       ◆     ◇

 お客さんの購入までの決断が長期化しているのはマンション市場も同じだ。マンションはモデルルームへの来場も減少している。

 決断を鈍らせているのは、藤澤氏などが語ったように消費増税の延期、超低金利の継続が背景にあるのはいうまでもない。しかし、記者は、それよりも景気、不動産、株価などの先行きが不透明で、さらに将来の雇用・社会保障などの不安が払しょくできない今の社会・経済状況が大きな要因と見ている。

 トランプ米大統領の就任によって〝一寸先は闇〟の社会に突入し、どんどんシュリンクしていくような気がしてならない。ツイッターなるもので世界のトップが右往左往、右顧左眄する世の中が信じられない。

 なので、当面、この1~2カ月の動きから目が離せない。とにかく現場を見ることだと考えている。それによっては、ベースアップや地価公示効果などの支援材料と相まって上昇気流に乗れるのではないかと見ている。

 

 恒例の記者が選んだ「2016年 話題のマンション」。見学したマンションは約90件で前年とほぼ同数。その中から31物件(前年は33物件)を選んだ。「ベスト3マンション」とともに読んでいただきたい。(順不同)

 物件選定に当たっては大手、中堅から幅広く選ぶように心がけ、特定のデベロッパーに偏らないよう1社あたり3物件を限度にした。

 「話題性」を重視したために、都心の高額や再開発・タワーマンション、〝駅近〟などが多くなった。その一方で、千葉県や埼玉県の第一次取得層向け郊外マンションが少なくなったのが残念だ。

 また、中には売れ行きがいま一つのものもあるが、その原因はやはり価格の壁があるようだ。価格を抑えるためには面積を圧縮し、設備仕様や外構にかかるコストを抑制せざるを得ないのだが、もう限界に達していると見る。

記者が選んだ「2016年 ベスト3マンション」(2016/12/27)

【都心高額マンション】

野村不動産「プラウド六本木」

 全45戸が100 ㎡超で坪単価は900万円。同社の最高峰億ション。

 スケルトンインフィル設計とオーダーメイドシステムを導入。天井高約2,700ミリ、窓フレームが床面から見えない隠し框構造で内外をすっきりとつなぐテラスウィンドウや、「ジャクソン」のバスタブ、ドイツ製「ドンブラハ」の洗面水洗、「ビレロイ&ボッホ」の洗面ボウルなど圧巻の設備仕様。

野村不動産の最高峰マンション 「プラウド六本木」最高のモデルルームの出来(2016/7/19)

大和ハウス工業「プレミスト六番町」

 坪単価800万円を突破する同社の最高単価マンション。千代田区の総合設計制度の適用を受け、周辺の建築物と調和するように西洋建築の美を象徴するシンメトリーの外観と石造りの重厚なデザインが特徴。

 建築家・三沢亮一氏が自ら選んだというパウダールームのブルーは、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のブルーと一緒だった。

「地価公示日本一」六番町にフェルメールを見た 大和ハウスが億ション(2016/3/14)

【横浜都心マンション】

横浜市住宅供給公社「横浜MIDベース タワー」

 商業・保育所・診療所・有料老人ホーム・地域交流施設を併設した複合大規模開発で、鹿島建設の免震・SI工法を採用。割安単価から圧倒的な人気呼ぶ。

 5階の屋上コミュニティ広場に「屋上養蜂」スペースを設置。年間30~50キログラムを採取し、地域交流の場でお年寄りや子どもたちに供する計画。

今度は横浜のど真ん中 人気必至の横浜公社「横浜MIDベース タワー」(2016/1/28)

東急不動産「ブランズ横浜」

 現地は商業地域だが、市の商住共存地区として指定されているエリアの一角。これほどの大規模マンションが駅近で建設されるのは過去47年にさかのぼってもない希少立地。高島屋が業務用に使用していた敷地跡地。

 外観・外構デザインが優れており、設備仕様レベルも極めて高い。建築デザインはNAP建築設計事務所。

外構も素晴らしい東急不動産「ブランズ横浜」 「銀座」同様〝大人〟向け(2016/4/6)

【大規模ファミリーマンション】

三井不動産レジデンシャル他「ザ・ガーデンズ東京王子」

 第1期に2016年の都内物件としては最多の315戸を供給し、年末までに供給した451戸のほとんどを契約するなど絶好調。竣工完売のめど付ける。

 北区も「住めば、北区東京。」のPRポスターを制作し、地域の魅力発信に懸命。

三井不レジなど5社JV「ザ・ガーデンズ東京王子」(864戸)は坪260万円台(2016/7/8)

「ザ・ガーデンズ東京王子」 販売好調/北区がPRポスター「住めば、北区東京。」(2016/9/18)

【再開発マンション】

野村不動産「プラウド府中ステーションアリーナ」

 京王線府中駅から徒歩1分の15階建て全138戸(非分譲27戸)の商・公・医・住の複合再開発マンション。第1期91戸が約700件の来場者を集め即日完売。買い替え・買い増しが過半に達するなど、多摩エリアの富裕層から圧倒的な人気を呼んだ。坪単価はバブル崩壊後の京王線最高単価となる360万円強。

京王線の最高峰(単価) 野村不「プラウド府中ステーション…」第1期91戸が即完(2016/5/23)

三井不動産レジデンシャル「パークシティ中央湊」

 八丁堀駅から徒歩6分の36階建て住・商一体免震タワーマンション。外観デザイン監修は光井純&アソシエーツ建築設計事務所、共用部分のデザインは鬼倉めぐみ氏とテキスタイル(布)デザイナーの須藤玲子氏。

 40㎡台の住戸でも最低5m、ほとんどが7~10mのワイドスパンプランがいい。

隅田川沿いの商・住一体開発 プラン秀逸 三井レジ「パークシティ中央湊」(2016/2/12)

相鉄不動産他「グレーシアタワー二俣川」

 二俣川駅と直結している29階建て全421戸の免震タワーマンション。将来には相鉄線とJRや東急線が相互乗り入れされ利便性が高まること、価格がリーズナブルであることなどから早期完売。第1期供給戸数380戸は、バブル崩壊後の神奈川県内の物件では記録的な多さ。

 来場者の多くは横浜市内の地元旭区が中心で、相鉄不動産などが開発した緑園都市、万騎が原などのマンション・戸建てからの買い替え希望が5割を突破した。

記録的な一挙供給量380戸 相鉄不他「グレーシアタワー二俣川」は坪280万円(2016/8/22)

東京建物「BrilliaTower上野池之端」

 敷地は東天紅本店跡地。眼下に不忍池、上野公園が広がる絶好の立地。建物のファサードデザインは日建ハウジングシステム、共用部分デザインは乃村工藝社。周囲に点在する歴史・文化施設との調和を図るため、格子、障子などの伝統的なデザインを多用。都の総合設計制度の適用も受けている。

 売れ行きも絶好調。全販売戸数327戸のうち供給戸数は316戸に上っており、完売は目前。

東京建物「BrilliaTower上野池之端」 不忍池・上野公園に隣接、旧岩崎邸も近接(2016/3/17)

住友不動産「シティタワー国分寺ザ・ツイン」

 住・商・官一体型の市街地再開発事業。「ウエスト」棟300戸と「イースト」棟284戸の合計584戸(地権者住戸30戸含む)。即日完売した第1期70戸の坪単価は475万円。

駅直結の住友不動産「シティタワー国分寺ザ・ツイン」 即日完売スタート(2016/4/1)

【秀逸商品企画マンション】

日本エスコン「Grand Le JADE若松町レジデンス」

 同社のハイグレードマンションシリーズ「Grand(グラン)」を冠した首都圏初の物件。31戸の小規模マンションだが商品企画が秀逸。

 吹き抜け(ライトコート)を3カ所に設置し、各住戸に光と風を取り込み、多面採光、ワイドスパンを採用、角住戸比率(58%)を高め、旗竿状敷地の難点(アプローチは逆に素晴らしいのだが)を克服した。これまで16戸を供給し12戸が契約済み。

ライトコート付きのプラン秀 日本エスコン 首都圏初の〝グラン〟「若松町」(2016/11/4)

コスモスイニシア「イニシアクラウド渋谷笹塚」

 出色の商品企画。デザイン監修に建築士の横堀健一氏を起用、端正な外観デザインにするとともに、デザインオフィスnendo代表・佐藤オオキ氏とコラボ。廊下を挟んだ左右の居室のドアをスライドウォールとし、廊下の天井高も居室と同じ2400ミリとすることで15~16畳大の居住空間になるよう自在な住空間を提案。

Wリビングの提案がいい コスモスイニシア「イニシアクラウド渋谷笹塚」(2016/10/24)

中央住宅「ルピアコート新小岩フレール」

 「勝手口」付きマンション。ピアキッチンをはじめ、玄関とキッチンを引き戸でつなげ、バックカウンター・吊戸棚を標準装備し、コンセント付きの出窓を設けたり、実用新案申請中の分別ダストボックスを設置したりしている。

さらに進化した商品企画 玄関に勝手口 中央住宅「ルピアコート新小岩フレール」(2016/2/16)

【定期借地権付きマンション】

スターツ・安田不動産「千桜タワー」

 都営新宿線岩本町駅から徒歩1分、免震工法を採用した期間70年の定期借地権付き。設計は山下設計・大成建設。千代田区立千桜小学校の跡地と隣接の民有地を一体として開発するもの。

 50~60㎡台の小家族向けから70~80㎡台のファミリー向けをバランスよく配置、坪単価350万円も割安感があり、早期完売。

中堅所得層でも手が届く坪350万円 スターツ・安田不の定借「千桜タワー」(2016/9/5)

東急不動産「ブランズシティ世田谷中町」

 東急田園都市線桜新町駅・用賀駅から徒歩15分、世田谷区中町五丁目の第一種低層住居専用地域に位置する期間70年の定期借地権付き。坪単価は308万円。

 分譲マンションのほかに、シニア住宅「グランクレール世田谷中町」を併設。グランクレールの敷地にはコミュニティサロン、カルチャールーム、介護事業所、認可保育園が設置される。

東急不動産の記念碑的マンション 定借「ブランズシティ世田谷中町」は坪308万円(2016/9/3)

【環境配慮型マンション】

野村不動産「プラウド国分寺」

 敷地約8,000㎡が国分寺崖線区域内にあるため、市のまちづくり条例をクリアしたうえで、敷地全体の約3分の1を占める「保存林」にある既存樹約80本を残し、約670㎡の提供公園と共に地域住民に公開。緑地率は約44%。

野村不動産「プラウド国分寺」 国分寺崖線の既存樹を残し市民に一部開放(2016/7/26)

大京「ライオンズ関町北グランヒルズ」

 換気機能付き玄関ドアには花粉やPM2.5に対応できる専用フィルターを初採用。バルコニー側には大口径の150Ø×2給気口を標準装備したほか、通気ルーバー付きドア、換気ストッパー付きサッシ、グリーンカーテン用のフックなども採用。

「ライオンズ関町北グランヒルズ」で見た 第4世代の大京パッシブデザイン(2016/6/29)

【公園隣接・借景マンション】

三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 新宿御苑」

三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス千代田麹町」

三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス国分寺緑邸」

 「新宿御苑」は、駅から徒歩1分で、道路を挟んですぐに新宿御苑。公園側の住戸の坪単価は600万円くらいになった模様だが、早々と完売した。

 「千代田麹町」は、四ツ谷駅を降りてすぐの麹町大通りと番町文人通りが交差する角地。麹町通りを挟んだ南側は上智大のキャンパス。徒歩2分には雙葉学園、5分には番町小学校、9分には学習院初等科がある。

 「国分寺」は、約20.7haの「日立製作所 中央研究所」の森に隣接し、その借景が眺められる希少物件で、生物多様性の保全に配慮したマンション。

三菱地所レジ「ザ・パークハウス 新宿御苑」 駅にほぼ直結、目の前に新宿御苑(2016/3/29)

今度は上智大キャンパスが借景 三菱地所レジ「ザ・パークハウス 千代田麹町」(2016/2/9)

20haの森が借景 水琴窟も設置 三菱地所レジ「ザ・パークハウス 国分寺緑邸」(2016/1/29)

住友不動産「ガーデンヒルズ四ツ谷 迎賓の森」

 道路を隔てたほぼ正面に東宮御所の正門。完成すれば眼前に御用地の森が眺められる。門番のおまわりさんに誰何されたらどうしようと、びくびくしながら見学した。これほど見学に緊張したマンションはほかにない。

分譲マンション初、赤坂御用地に隣接「ガーデンヒルズ四ツ谷 迎賓の森」(2016/1/20)

西日本鉄道「ブラントン日本橋小伝馬町」

 西日本鉄道の新ブランド「ブラントン」の首都圏本格進出第1弾。敷地は68坪だが、全戸が公園に面する絶好の立地。近接する「プラウド日本橋三越前」や「Brillia日本橋三越前」に負けない。残りわずか。

立地は「プラウド」「ブリリア」に負けない 西鉄「ブラントン日本橋小伝馬町」(2016/4/26)

伊藤忠都市開発「クレヴィア日本橋浜町」

 中央区最大の浜町公園まで徒歩1分(20mだから15秒)で、都営新宿線浜町駅A2出口から徒歩1分(30mだから約23秒)。分譲戸数は26戸のみで、竣工売りも納得。早期完売は間違いない。

浜町公園も浜町駅も15~23秒 立地抜群の伊藤忠都市開発「クレヴィア日本橋浜町」(2016/10/11)

住友不動産「シティテラス小金井公園」

 NTT社宅跡地で敷地面積は約3.2ha、全922戸の規模。名門小金井カントリー倶楽部と都内有数の小金井公園に隣接・近接。単価設定は約215万円。武蔵小金井駅直行のシャトルバスが運行される予定。

住友不 小金井カントリーを眼下 「シティテラス小金井公園」は坪215万円(2016/7/26)

【建て替えマンション】

大和ハウス工業「プレミスト大宮氷川参道」

 「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(円滑化法)に基づく建て替え決議(全員合意)がなされた埼玉県初のマンション。全100戸のうち分譲は62戸で、3月に販売を開始し、1カ月で完売となった。(この物件は見学していない)

大和ハウス 埼玉県初の民間主導による建て替えマンション「大宮氷川参道」が竣工(2016/9/27)

旭化成不動産レジ「ONE AVENUE(ワンアベニュー)一番町文人通り」

 「番町文人通り」に面したマンションとしては36年ぶりの希少物件。隣接地は串田孫一の居住跡で、通りには与謝野鉄幹・晶子、有島武郎、菊池寛、泉鏡花、島崎藤村、藤田嗣治などの居住跡がある。

 廊下-居室-リビングや建具・家具の高さを2.4メートルに揃えた。奇を衒わない玄人好みのオーソドックスな億ション。

激戦の番町エリアの一等地「一番町」 旭化成不レジが「ホーマット」建て替え分譲(2016/6/8)

【シニア向けマンション】

フージャースコーポレーション「デュオセーヌ柏の葉キャンパス」

フージャースコーポレーション「デュオセーヌ緑山」

 フージャースコーポレーションの所有権付きシニア向けマンション「デュオセーヌ柏の葉キャンパス」「デュオセーヌ緑山」の売れ行きが好調だ。

 前者は駅から徒歩5分、「ららぽーと柏の葉」に隣接する全266戸で、坪単価は230万円。天然温泉付き浴場のほか共用施設が充実。

 後者は、すでに入居が始まっており、記者が見学した時点で全82戸のうち約7割が契約済みだった。こちらは坪単価250万円。

「ららぽーと」に隣接 坪単価230万円でも人気 シニア向けフージャース「柏の葉」(2016/5/2)

高級住宅街の一角に シニア向けフージャース他「デュオセーヌ緑山」(2016/10/11)

【郊外健闘マンション】

ポラス中央住宅「ルピアコート川口戸塚」

 埼玉高速鉄道戸塚安行駅から徒歩2分の全200戸。キッチンとダイニングカウンターを一体にした「ピアキッチン」を約4割の住戸に標準装備。坪単価158万円も割安感がある。

 約半年で122戸を供給して110戸を契約済み。今の市況を考えると大健闘。2017年3月の引き渡しまで7割の140戸に乗せられるか。

ポラスグループ 埼玉高速沿線でマンション強化200戸の「川口戸塚」分譲開始(2016/7/30)

【コンパクトマンション】

三井不動産レジデンシャル「パークリュクス白金高輪」他

 三菱地所が〝参戦〟を決めるなど全員参加型になりつつあるコンパクトマンション市場だが、売れ行き・実績では三井不動産レジデンシャルが圧倒。中でも絶好調なのが「パークリュクス白金高輪」だ。

 坪単価450万円の全160戸(事業協力者住戸8戸含む)だが、ゴールデンウィークに契約を開始し、残りは3戸のみ。23~26㎡の1Kタイプが100戸超で全体の約7割を占める。購入者は全体としては実需と投資が半々。

 坪単価400万円の「パークリュクス渋谷西原」69戸も、年末まで約8割が契約済み。こちらも実需に投資需要も取り込んでいる。

三井不レジ コンパクト「白金高輪」「渋谷西原」 投資需要も取り込み絶好調(2016/12/20)

明和地所「ラベルヴィ市ヶ谷」他

 新ブランド「ラベルヴィ」の第一弾が早期完売したのをはじめ、「王子」「川崎南幸町」「武蔵小杉」なども好調。

 ブランド名がお洒落だ。「La belle vie(ラベルヴィ)」はフランス語で「美しい生活」「美しい人生」という意味だが「ボレロ」や「展覧会の絵」などでよく知られた作曲家ラヴェルから採ったようでもあり、また「四季」の作曲家ヴィヴァルディを想像させる。

明和地所コンパクトの新ブランド〝ラベルヴィ〟「市ヶ谷」で第一弾(2016/1/4)

【用途変更マンション】

関電不動産開発「シエリア湘南辻堂」

 関電不動産開発の首都圏第1弾。辻堂駅から徒歩4分の商・住複合開発の全352戸の規模で、敷地は元パナソニックの関連会社の工場跡地。

 従前の用途地域は工業専用地域だったが、用地を取得した同社(前MID都市開発)が個人施行による土地区画整理事業を行い、第一種住居地域に用途変更した全国的にも珍しいマンション。地域・行政・開発事業者の協働によるコミュニティ「茅ヶ崎モデル」の構築を目指す。

 7月の第1期分譲から年末までに220戸前後が販売済みだ。

首都圏第1弾「シエリア湘南辻堂」第1~3期1次199戸が登録完売 関電不動産開発(2016/11/8)

 明和地所の国立マンション建設をめぐる訴訟で、国立市が同社に支払った損害賠償金約3,120万円は当時市長だった上原公子氏が賠償すべきとした裁判(東京地裁平成26年9月25日判決言渡し)で、最高裁判所は12月13日、上原元市長の上告を棄却。この結果、上原元市長に約3,120万円の損害賠償を命じた東京高裁判決(2015年12月22日)が確定した。

◇       ◆     ◇

 この問題は、明和地所がマンション建設計画を明らかにした1999年から同社へはもちろん、国立市役所や当時の上原市長へのインタビュー、住民集会への参加、裁判の傍聴などずっと関わってきた。ある意味では記者の人生を変えた事案でもある。あれから17年、感慨深いものがある。節目節目で記事を書いてきたのでそちらを参照していただきたい。

 一連の裁判で当初から主張してきたことがほぼ認められてうれしいのだが、次の2点だけはもう一度しっかり指摘しておく。

 一つは、地区計画の決定について。

 明和のマンション敷地を含む「中三丁目地区地区計画」の施行面積は約13.5ha。このうち、同社のマンション敷地は約2.7haで、同社の敷地に隣接する北側の桐朋学園の敷地は約9.2ha。地区計画ではともに高さ規制は20mとなっている。そして、桐朋の敷地の東側にある低層住宅地約1.1haと同社の敷地の西側にある第一種低層住居専用地域約0.5haは高さ規制をそれぞれ10mとした。

 全体施行面積のうち明和の敷地は約20%だが、桐朋の敷地とその隣接の低層住宅地を除くと、同社の敷地割合は約84%に達する。地区計画が決定される前の明和の敷地は高さ規制がない建蔽率60%、容積率200%の地域だった。

 このことからも、マンション建設反対運動を主導した桐朋の関係者などと上原氏が結託して、まさに同社を狙い撃ちにした地区計画であることがわかる。地区計画は法的な強制力を持つため、その決定には関係権利者の合意を得て民主的に進めるべきなのに、上原氏と当時の議会はその手続きを無視した。暴挙と言わざるを得ない。

 一連の判決は、この地区計画の決定に至る手続きに瑕疵はないとしているが、これは今でも納得できない。

 もう一つ。記者は問題に〝火〟が付いたとき、不動産協会や日住協(現全住協)に「対岸の火事視してはいけない。このような暴挙を許せば、絶対高さ規制を行おうとする動きは燎原の火のごとく全国に広がる。業界全体として動くべき」と持ち掛けたが、どこも取り合ってくれなかった。当時、同社は飛ぶ鳥を落とす勢いにあり、同業他社はやっかみもあったのか、等閑視した。同社の故・原田利勝氏にも「泣く子と地頭には勝てない。和解を」と勧めたが、原田氏は首を縦に振ることはなかった。

 その後、事態は憂慮した通りになった。建築物の絶対高さ規制は良好な街づくりに絶対つながらない。むしろ逆だ。擁壁のように街と遮断し、日照・通風・居住性の劣るマンション建設を増やすだけだ。用途規制、日影規制なども含めた都市計画のあり方についてしっかり再検討すべきだと思う。

 上原氏は敗訴を受けて記者会見し、「市民自治を無視するもの。歴史に汚点を残す決定だ」(東京新聞)と怒ったそうだが、何人も法の下では平等ということをお忘れか。首長は権限が大きいからこそ、権力行使には公平・公正を期さなければならない。上原氏の暴走はその後の「景観保護」運動に大きな影響を与えた。功罪はあまりにも大きい。

◇       ◆     ◇

 裁判の確定を受けて、上原氏を支援してきた「くにたち大学通り景観市民の会」は2016年12月30日付で以下のような「ご報告とお願い」をネットで公開した。

 「(前略)この結果は、国立の大学通りの景観保護をめぐって努力してきた国立市民と国立市、当時の上原市長の「オール国立」ともいえる住民自治の営みを消し去ろうとする承服しがたい決定であると言わざるを得ません。

 (中略)上原公子さんがいま、国立市から請求されている賠償額は、約4400万円と巨額です(金利含め)。

 私たちは、この間のすべての経過を鑑みて、この額は、上原元市長ひとりで1円たりとも負担すべきものでないとの決意で向き合うことといたしました。

 これまで多大なご支援をいただいてきたことに加えて恐縮ですが、この度、募金を募る(ママ)ことを決めました。どうか、私たち決意をお受け止めいただきたく心より訴えさせていただきます」

 この「会」が中心になって進めたマンション建設反対署名には石原慎太郎氏など数万名が賛同したはずだ。

 政治理念の実現のためには「権限を濫用」し「信義則に反する」「不法行為」を堂々と行う人に対する支援であることを承知の上でなら、当時賛同した方々は寄付をしたほうがいい。一人当たり1,000円の寄付でお釣りが出るくらいの募金は集まるはずだ。

 寄付が集まらず、上原氏が金策に回らなければならないようでは、わが国の景観を守ろうとする勢力の鼎の軽重が問われる。

「国立裁判」明和地所〝圧勝〟に思う(2004/11/8)

「国立裁判」全て終結 明和地所が全面勝訴したが…(2008/3/13)

「求償権の放棄」は問題 国立市は上原元市長に賠償請求すべき(2014/10/1)

上原・元国立市長への求償は当然 議会「決議」の法的効力は? (2015/1/31)

国立 市議会勢力図が逆転 どうなる上原氏への損害賠償請求(求償権)(2015/5/1)

国立市議会 上原元市長に対する求償権行使を求める決議(2015/5/20)

国立求償裁判 国立市が逆転勝訴 東京高裁、第一審判決を破棄(2015/12/22)

 

 今年の不動産協会と不動産流通経営協会(FRK)の合同「新年賀詞交歓会」は参加者が過去最多の約1,200名が参加した。ごった返す会場で参加者に「今年はどのような年になるか、どのような年にしたいか」を聞いた。(順不同)

◇    ◆     ◇

 全国住宅産業協会(全住協)会長・神山和郎氏(日神不動産会長)

 (会長、叙勲おめでとうございます)今年? 昨年と変わらないよ。若干(市況は)上向くかもしれないが…。当社? 長年の懸案だったリートの立ち上げを目標にしている(2016年秋の叙勲で旭日重光章を受章)

IMG_9808.jpg
神山氏

 森ビル社長・辻慎吾氏

 決断、実行の年にしないといけない。2020年の東京オリンピックに向けて政官民が一体となって都市づくりを進めなければならない

IMG_9809.jpg
辻氏

 タカラレーベン社長・島田和一氏

 昨年と変わらないが、潮目に逆らって攻めに転じる(潮目が引き潮になっても積極的に事業展開するという意味)

IMG_9810.jpg
島田氏(右)と同社常務・手島芳貴氏

 野村不動産社長・宮嶋誠一氏

 開発用投資を増やし、発展の年にしたい。(マンションの完成在庫が増えているが)期末に向けて営業スタッフを強化して減らすよう努力する

IMG_9815.jpg
宮嶋氏

 モリモト社長・森本浩義氏

 新しいモリモトステージ。今まで(坪単価)500万円以上のマンションは分譲したことがないが、年初から分譲する「西麻布」をはじめチャレンジする

IMG_9817.jpg
森本氏

IMG_9818.jpg
左からモリモト会長・庄司直哉氏、東京建物相談役・畑中誠氏、森本氏、モリモト常務・柏木二郎氏(両社は昨年、「湯島」で激突したが、双方ともよく売れ、共同事業をやろうと相談していたのかもしれない)

 不動産協会会長・岩沙弘道氏(三井不動産会長)

 (会長、昨年はこの場で「デフレ脱却」を強く訴えたが)今年も同じ、デフレ脱却、強い経済の基盤づくりの年にしなければならない。この4年間の安定政権の中、一定の効果・成果が表れてきた。成長戦略に期待したい

1.jpg
岩沙氏

 野村不動産ホールディングス会長・中井加明三氏

 マンションは安定的に売れ出す年になる。期待している。阪急さん? 東京に猛攻撃している

 阪急不動産社長・諸冨隆一氏

 関西で培ったノウハウを東京で生かそうと試行してきた。東京にはたくさんデベロッパーがいるが、安定的に着実に伸ばせるようにしたい。野村さん? 野村さんとは「京成立石」で再開発を共同で行う(東京進出に際して第一弾を三井不動産と組み、その後着々と実績を積み重ねてきた。野村不動産と組んで再開発も積極的に行うのか)

IMG_9819.jpg
中井氏(左)と諸富氏

 かんべ土地建物社長・神戸雄一郎氏

 変化の年。世界経済・社会の影響を受けるだろうが、その変化に対応して2020年の東京オリンピックに向け街の発展に寄与したい。(御社には野球が上手な社員がいるはずだが)福田? 彼は私の(慶応)高校時代の後輩の縁で入社した。私も高校時代は野球選手でサード。大学ではアメフトをやりましたが…。(野球部を作ってほしい)いいですね

IMG_9820.jpg
神戸氏

 日本不動産鑑定士協会連合会会長・熊倉隆治氏(東急不動産参与)

 業界として鑑定士法改正をしっかり具体化していく。これまで鑑定士は土地や建物など不動産が評価の対象とされてきたが、これからは農地の流動化にも大きな役割を果たすし、動産も評価できるようになる

IMG_9821.jpg
熊倉氏と東急リバブル元社長・袖山靖雄氏

 新日鉄興和不動産常務・松本久長氏

 潮目の変化に注意したい。投資マーケットはピークを過ぎ、今後は下がるという声が圧倒的に多くなっている

IMG_9822.jpg
松本氏

 野村不動産アーバンネット会長・宮島青史氏

 最近はRBAの野球会場ばかりで会っていますね。本業? 価格が高騰する中、当社は昨年12月、売り上げとして月間の新記録をつくった。今年もこの調子を続ける(RBA野球では優勝を狙える力をつけてきた)

IMG_9823.jpg
宮島氏

 相鉄不動産社長・杉原正義氏

(「二俣川」はすごい売れ行きでしたが)いい年にしたいですね。写真? 勘弁してください(帰り際、急ぐように会場を去った)

 エメスタッフ会長・加藤光晴氏、同社社長・加藤晴樹氏

将来に向けて盤石の強い会社にする(加藤光晴氏)父の築き上げてきたものを拡大したい(加藤晴樹氏)

IMG_9826.jpg
加藤光晴氏(左)と加藤晴樹氏

不動産協会・不動産流通経営協会 2017年 合同賀詞交歓会に過去最多の1,200名(2016/1/6)

 

IMG_9791.jpg IMG_9804.jpg
木村・不動産協会理事長(左)と田中・FRK理事長 

 不動産協会と不動産流通経営協会(FRK)は1月6日、恒例の合同による「新年賀詞交歓会」を行った。冒頭、不動産協会・木村惠司理事長(三菱地所会長)が「日本の豊かな社会、安心・安全の街づくりを進めていく」とあいさつし、FRK・田中俊和理事長(住友不動産販売社長)は「昨年は不動産流通取引件数が過去最高を更新した。今年も市場規模の倍増に向け業界が一丸となって取り組む」と抱負を述べた。

 参加者は昨年の約1,150名を上回る約1,200名に達し過去最高を記録。来賓として石井 啓一・国土交通大臣、山本幸三・内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)、高市早苗・総務大臣、野田毅・自民党税制調査会最高顧問、北側一雄・公明党副代表(元国交大臣)、井上義久・公明党幹事長なども挨拶し、菅義偉・内閣官房長官も駆けつけるなど、会場は立錐の余地がないほど賑わった。

IMG_9813.jpg
不動協とFRKの2017年賀詞交歓会(会場のホテルオークラ アスコットホールの定員は800名)

◇       ◆     ◇

 最初に登壇した不動産協会・木村理事長は、「私事で恐縮ですけれども、私、いま鎌倉に住んでおりまして、この正月3ケ日は快晴の日が続きました。紺碧の空と海と、そして江の島と湘南海岸の間に富士山が白い雪を頂いている姿を観て、改めて日本の豊かな社会、安心・安全の街をつくっていく決意を新たにしました」と語り始め、国内外の社会・経済状況には「中国の動向などリスク要因もあり、多少不透明感が続く」としながらも、昨年末の税制改正大綱では「事業用資産の買換え特例の延長・拡充、登録免許税の特例の延長などが決まり、わたしどもが要望した税制がほぼ100%実現した」と評価、「内需産業の中核としてこれからの日本経済の成長に寄与したい」と述べた。

 具体的な課題としては、地方創生とともに大都市の問題について触れ、「世界的な都市間競争が激化する中でのわが国の大都市の魅力を発信するために、ハード的には国家戦略特区の活用をスピーディに行うこと、ソフト的には街づくりエリアマネジメント手法などを駆使することが必要」と強調した。

 住宅分野については、「約6,000万戸あるストックのうち3,000万戸は耐震、耐火、省エネなどで問題がある」とし、建て替えやリフォーム、リノベーションを進め中古と新築の両方が良質なストックを形成し、「新しいライフサイクルにあったニーズ、ウォンツに応えていくことが大事」と話した。

 働き方改革についても触れ、「取り組みは業界でもまだまだ緒についたばかり。不動産特有の問題も潜んでいるかもしれないので研究していきたい」と語った。

 「街づくり都市づくりを通じて、なおかつ良質な住宅を供給することで希望が持てる社会の実現のために努力していく」と結んだ。

 来賓の挨拶のあと、乾杯の音頭を取った不動産流通経営協会理事長・田中俊和氏(住友不動産販売社長)は、「昨年の不動産流通市場は取引件数が過去最高を更新するなど、堅調に推移しました。足元も既存住宅の底堅い需要を実感しており、今年も住宅税制・金融支援策もあり、高水準な取引が続くと期待している。

 日本にはモノを大切にする文化がある。よいものは残し、次の人に活用してもらう、このリレーをお手伝いするのが私たちの仕事。既存住宅における消費者の不安解消にわれわれは取り組んでおり、建物状況調査(インスペクション)はその一助になる。年末にその運用方法がまとめられた。我々はそれがスムーズな導入に向け、業界で取り組んでいく。

 また、多様化する時代を迎え、新たな技術の活用を加えることにより消費者に地域の魅力、既存住宅の魅力を発信していく役割を担っていきたい。そして、『新住生活基本計画』の目標である市場規模の倍増に向け業界一丸となって取り組んでいく」と述べた。

IMG_9801.jpg
左から不動産協会会長・岩沙弘道氏(三井不動産会長)、木村氏、田中氏

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン