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「プラウドシティ武蔵野三鷹」エントランス

 野村不動産が分譲中の「プラウドシティ武蔵野三鷹」を見学した。横河電機の倉庫などが建っていた普通賃借権付き全334戸で、3月末に分譲した第1期分譲100戸の契約が90戸に迫るなど好調なスタートを切った。アクセスのよさ、坪単価320万円台の半ばという買いやすさ、充実した共用施設などが人気の要因。ブリヂストン、長谷工コーポレーションとともに開発した間取りの自由度を高めた排水システム「ミライフル」を装備した第1号マンションでもある。

 物件は、中央線三鷹駅から徒歩10分、武蔵野市中町三丁目に位置する敷地約13,156㎡7階建て2棟(一団地認定)全334戸。吉祥寺にある月窓寺から85年間にわたり横河電機が借りていた土地で、入札により同社が新たに借り受けたもの。借地期間は30年で更新可。専有面積は71.17~91.47㎡、坪単価は320万円台の半ば。竣工予定は平成30年1月下旬。施工は長谷工コーポレーション。4月下旬に第2期(戸数未定)が分譲される予定。

 現地は準工業地域だが、これはこの一角が横河電気の倉庫などが古くから建っていたためで隣接する東側エリアは住居系用途。嫌悪施設はほとんどない。

 建物は2棟だが、西側に隣接する公園と一体的に公開空地などを整備するため一団地認定を取得している。住戸は東向き、南向き、西向きで専有面積は最低でも71㎡、76㎡が中心のファムリー向け。

 サイホン排水システム「ミライフル」を装備した第1号マンションでもあり、設備仕様では二重床・二重天井、キッチン・トイレ天板御影石、ディスポーザー(自動給水式)、ミストサウナ、ソフトクローズ玄関下足入れなどが標準装備。

 販売担当の狩野剛氏は「これほど売れ行きがいいのは当社の物件も含め東京西部ではナンバー1」と胸を張った。

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モデルルーム

◇       ◆     ◇

 現地は、4年前に書いた鹿島建設「テラス武蔵野中町」のマンションに近接しており、その時の記事と比較していただきたい。いまの市況からすれば所有権だと400万円をはるかに突破するはずで、坪単価320万円台の半ばというのは割安感がある。定期借地権付きでなく普通賃借権というのもユーザーから評価されたようだ。

 徒歩10分をどう評価するかだが、駅から現地までのアプローチは申し分ない。歩道がゆったり取られており、道路も一方通行でもあり車も少ない。吉祥寺駅へも徒歩20分というのが評価ポイントのようだ。戸建てからの買い替え・買い増しも10%はあるという。

 2つのモデルルームのうち91㎡のタイプは「ミライフル」の革新性を表現。アイランド型キッチンとし、間取りの可変性に対応できることを提案している。

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排水システム イメージ図(左が従来型、右が新システム)

野村不・長谷工・ブリヂストン 画期的な排水システム開発、実用化(2015/5/22)

「鹿島の品格」を見た「テラス武蔵野中町」 売れ行きも好調(2013/6/12)

 

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賞品を背景に落合氏(左)と原氏

 大京とフルタイムシステムは4月10日、社会問題になっている宅配便の再配達を減らし、居住者の利便性を高める新発想の各住戸専用宅配ボックス「ライオンズマイボックス」を共同開発し、メディア向けにお披露目会を行った。業界紙だけでなく一般紙やテレビ局など約40名の報道陣が集まり関心の高さをうかがわせた。

 「ライオンズマイボックス」は2016年のグッドデザイン賞を受賞した再配達ゼロを目指した取り組みで、「必ず受け取りたい、確実に届けたい」という居住者と宅配事業者双方の視点から利便性を飛躍的に向上させたマンション用宅配ボックス。

 宅配利用頻度やネット通販の標準的な荷物のサイズに応じた居住者ごとの宅配ボックスとメールボックスを一体化。異なる宅配事業者の荷物や複数の荷物を同時収納することができ、ゴルフバッグなどの大型荷物などを受け取れる共用ボックスも設置している。

 この日公開した住戸専用ボックスの大きさは幅30㎝×高さ36㎝(メールボックス12㎝含む)×奥行き45㎝。50戸程度のマンションの場合、幅5.85m、高さ1.8m、奥行き0.45mとなりエントランス部分に設置することを想定している。

 発表会に臨んだ大京・落合英治専務は「当社はこれまで約37.6万戸のマンションを供給し、約53万戸を管理する日本一の会社。〝日本のまちに、活力を。〟をスローガンに様々な不動産ソリューションで社会問題の解決とお客さまニーズの具現化に取り組んでいく」と語った。

 今年度竣工5物件、2018年度竣工10物件への導入を決めており、その後も順次導入する計画で、同社グループが管理するマンション他社が管理する管理組合へも提案していく。

 また、フルタイムシステム・原幸一郎社長は「当社分譲マンション宅配ボックスのパイオニアで、シェアは断トツの62.3%。全国宅配ロッカー登録者約150万人などのデータを持っているのが強み。付置義務化や補助金など国へも働きかけていく」と話した。

 近年のネットショッピングの普及やサービス拡大により、宅配個数は2010年度の32.2億個から2015年度には37.4億個に増加。また、単身世帯や共働き世帯の増加による再配達が社会問題となっており、国土交通省の調査によると、再配達による社会的損失はスギの木約1億7,400万本の年間CO2吸収量に相当し、不在配達に費やされる労働時間は年間9万人の労働力に相当するというデータもある。

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お披露目会場

◇       ◆     ◇

 報道陣の多さにびっくりした。「ライオンズマイボックス」を導入する第1号マンション「ライオンズライオンズ東綾瀬公園グランフォート」の記者見学会のときの倍くらいはあった。いかにわれわれメディアは刺身そのものより脇役のツマに興味を示すかを如実に示した。付和雷同、軽挙妄動、軽薄短小はわたしだけではない。いつもこれくらい記者が集まればマンションはもっと売れると思うがどうだろう。

  とはいえ、この取り組み・商品は間違いなく宅配事業者やマンション居住者の支持を得る。大ヒットする可能性も秘めていると思う。

 カギは付置義務化と補助金だ。落合専務は「駐車場の利用率はどんどん低下している。この付置義務の条件見直しと宅配ロッカーの付置義務化を進めてほしい」と話し、原社長も「補助金が出るよう運動していく」と語った。

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大京 「東綾瀬」で足立区初の全戸エネファーム搭載 全戸に宅配ボックスも(2017/3/17)

 

 

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フージャースコーポレーション営業企画部長・友野珠江氏(41

 フージャースコーポレーション営業企画部長・友野珠江氏(41)に突撃インタビューを敢行した。当欄既報のつくばエクスプレス柏たなか駅圏の「トレジャーランドプロジェクト(デュオヒルズ・ザ・グラン)」(253戸)を取材したとき、その場で取材を申し込み即決してもらった。

 テーマは〝業界を元気づける〟。この沿線に限ったことではないが、いま郊外マンションは価格下げ圧力が強まる一方で、どこも青息吐息。死屍累々の惨状を呈している。

 「柏たなか」は例えていえば荒涼たる砂漠、はたまた北の果ての極寒の地だ。そんな不毛の地に正気の沙汰とは思えぬ大量253戸を同社は敢然と供給した。

 見学する前は絶望感が支配したが、モデルルームを見て、ひょっとしたらあのリーマン・ショックでV字回復を成し遂げた同社のノウハウ・販売力、友野氏の〝元気〟をもってすれば劣勢を一変させるのではないかという予感・希望が記者に芽生えた。

 同業の皆さん、以下の友野氏の〝元気〟を煎じて飲もうではないか。やればできる勇気が湧いてくるはずだ。「女性活躍」などという奥歯にものが挟まった、糖衣でくるんだ万金丹の類の話ではない。( )は記者。

沈滞ムードを吹き飛ばすか フージャースコーポ「柏たなか」(2017/3/17)

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◇      ◆     ◇

 -まず「柏たなか」の商品企画から

 友野 わたし心配性でして(とてもそんなに見えない)。とにかく不安で、沿線の物件がばたばた倒れちゃう状況を見て聞いて、普通にやったら完売まで5年かかってしまう 、この危機感が商品企画と広告やチームのマインドに火をつけたというのが正直なところです。

 みんなで話し合ったんです。同じことやって、こっちが大成功あっちが大失敗になる確率って低いよねと。だから努めて前向きに対応し、今までにないものを作ろうと考えたんです。それがあの企画と販売事務所とモデルルームになったんです。

 つくば沿線は供給ラッシュで、駅ごとに大きな物件が2棟くらいあり、注目されていますが、「柏たなか」は誰も降りたことない(記者もそう)。最後のサンクチュアリみたいな取り残された駅。(利根)川を渡り一駅先はもう茨城。国境の街みたいなところ。でもポジティブに考えれば、最後の砦は〝ここは千葉県の入り口、つくばの最前線〟というポジショニングになる。これをしっか打ち出そうと。

 幸い、大京さんが何もなかった10年くらい前、駅前で素敵な「ライオンズ柏たなかステーションプラザ」(83戸、2009年竣工)を分譲されていて、とても参考になりました。ライフステージにあった方を呼べたんだろうと。

 この駅の最前席に立つということは、駅格とかエリア格になる先頭バッターになること。だから妥協せず、使命感を持って色付けしないといけないとずっと考えていました。

 この不安感と使命感とが交錯していたときです。チームの広告担当者に相澤という32歳の女性がいるんですが、その相澤に「柏たなかでやるから担当よろしくお願いします」と話したら「ありがとうございます!」と快諾してくれたんです。ああそうか、こっちは不安でいっぱいなのに、何も知らない彼女にとっては大きな仕事の役割をもらってデビューすることはそんなにうれしいことなんだと。その声を聞いて吹っ切れましたね。チーム全体が元気出ちゃった。

 -わたしが担当者だったら引けますね

 友野 そうですよね。なんで1万㎡も買っちゃったんだろうと。普通はひるみますよね。繰り返しになりますが、だから誰も見たことのないものを作ろうと。どこに対しても圧勝できるものにしようと。プレハブ(販売事務所)もそう、シアターもそう、模型もそう、モデルルームもそう。みんな初めて見るもので固めようと。これが一貫したテーマです。

 -真っ暗闇の演出、アニメのシアター、プロジェクトマッピングがよくできていました

 友野 暗闇の演出も相澤の提案です。いまのマンションギャラリーは何から何までみんな一緒。買ってください買ってください、うちが一番というものばかり。それってもうおなか一杯。今回のギャラリーは滞在型で長い時間いらっしゃっていただくのだから、最後は家族みんなで笑ってください、奥さん笑ってください、お父さんも笑ってくださいと。アニメにしたのも、「君の名は」もそうですが、アニメはもはやオタクだけのものではなく広く一般に理解度が深まっており、共感を呼びやすいですよね。

 -販売事務所やモデルルームに造花でなく生花を飾っていたのもよかった

 友野 みんな生花です。うちの〝神〟と呼ばれる営業マンは「販売センターは生きものだから必ず生きものを入れなさい。花を愛で、育てる気配りができる人間になりなさいと」と仰いました(記者は若いとき〝花を愛せる人になって〟と女性に捨てられた。立ち直るのに3年かかった)。ですから当社は基本的に生花を飾るようにしています。根を詰めて話しているとき、花や緑が目に入ることでお客さんはほっと一息つける。男性社員もきちんと水遣りするように教育も行き届いています。

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 -御社は社員の女性比率(40%)が高い会社として知られ、商品企画にも生かされているが

 友野 専有部分でものづくりをしっかりやっているところが減っています。最近はどこも女性チームを作っていますが、姉が妹へというように継続させるのが難しい。どうしてだろうと考えたんですが、事業部制にすると担当ごとに変わってしまう。商品企画のDNAが伝承されない。それと彼女たちには決裁権がないんですね。ここが問題ですね。

 弊社はフラットだから、わたしのようなうるさ型が「ここが削られるとうちらしさがなくなります」というと通ります。やったからにはきちんと営業マンがお客さんに伝えなきゃなりませんから、営業マンがセールスできるように教育しないといといけない。そのツールも大事です。

 -友野さんの入社以来のキャリアについて

 友野 営業企画が最初で広告宣伝をずっとやっていまして、その幅ががばっと広がった感じですね。ただのチラシ屋、看板屋では全くダメと気が付いて、商品企画とか販売戦略へと、川下から川上に上ってきました。パースを描くにしてもものを知っていないと美しいパースを描けないし、売り方についてもお客さんを知っていなければ販売戦略を立てられないのと一緒です。

 -2008年のリーマン・ショックの時はもうおしまいかと思いました。ところが2010年にV字回復。不死鳥のようによみがえった。この年の株価上昇率は342倍でした

 小池 わたしは2008年入社です。

 友野 彼女たちは不幸でしたね。その時の社員は3分の1に減っちゃった。

 リーマン・ショックのとき生き残れたのは、お客さんのことを語れて、お客さんに近い会社で販売力があり、正面から販売代理の事業主様にきちんと説明できたことが大きかったと思いますよ。あのとき助けていただいた事業主体には感謝しきれません。

 -わたしも大丈夫かと思いながら見学しました

 友野 「ザ・クイーンズガーデン稲毛」(稲毛バス16分、278戸)、「デュオヒルズつくば学園都市」(つくばバス10分、234戸)、「プレミアムフォレスト」(柏バス10分 、182戸)など4物件を中心に3カ月で2,000件の来場者集めろというミッションがあったんですが、あのときは本当に火事場の馬鹿力で集めて売りましたね。

 -女性活躍も大事だけど、男も含めて働き方を変えないと。本来、そんな言葉はなくさないといけない。御社には昇進、昇給などの男女差別は全くないですか

 友野 わたしは人事評価会議にも出ていますが、昇進、昇格での男女差別は全くないですね。

 子育てだろうが介護だろうが、男性でもそうするのが当たり前という風土があり、常態化しています。(保育園の送りなどで)9時半に出社してもだれも何も言わない。フラット、風通しがいいと情報が抜けるんですよね。廣岡社長も子育てに積極参加されているので社員も見習いやすい。

 乙部 小池 友野 女性の活躍についてメディアの方によく聞かれるですが、もともと活躍しているのにそういうこと言われると逆に違和感を覚えますね。

 男女平等というと、女性が男性に合わせるイメージが強い。メディアもそう取り上げる。しかし、それって違うんじゃないかと。バリバリでなく普通に働いているのに、それが新しいと言われるとそれも違和感ですよね。

 友野 マスコミに登場するいわゆるバリキャリ女性は〝わたしは当たり前にやってきた〟とおっしゃいますが、すごく歯を食いしばって言っているなと感じますね。絶対この方、以前の勝間和代さんみたいに死ぬほど働いているに違いないと。そういう部分って出ちゃいますよね。ある会社に勤めている知人の女性が上司の女性に怒られたとき〝わたしは出産をあきらめてここまで来たのよ〟と言われたそうです。えっ、女性同士そんなことまで言うのと驚いちゃいました。これは断ち切らないといけない。

 -わたしはインタビュー記事では年齢を入れるようにしています。二文字で済む。読者は自分より上なのか下なのか、その人の生きてきた時代背景も分かる。友野さん、どうです?

 友野 いいですよ。41歳です。〝性別も年齢も突破できれば生き残れる〟-これが私のテーマ。人徳を積めば性別も年齢も関係ないと思いますね。

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◇      ◆     ◇

 インタビューは、フージャースホールディングス広報・IR担当の乙部真理氏と小池彩子氏も参加して行った。女性が3人集まると姦しいとはよく言ったもので、記者が質問しなくても実によくしゃべる。言葉一つひとつが新鮮、吟醸酒を飲んでいるように気分がよかった。その場の雰囲気が伝わるように、記事は手を加えずなるべく話した通りに書いた。

 「女性活躍」なる言葉は、女性が活躍できていない性差を受けている社会だからこそ大きなテーマになっているのであって、本来的にはそのようなフレーズはあってはならないし、死滅させないといけない。

 今回、同社の友野氏にインタビューをお願いした目的は、比較的差別が少ない会社で、しかもマンションの心臓部ともいうべき商品企画部の部長をされているからであって、その企画はどうして生まれるのかを聞くためだ。〝男女の差別をなくせ〟などと大上段に構えて書くつもりは最初からなかった。

 結果は大成功。友野氏や乙部、小池氏から発せられる言葉は、経営者や役員、商品企画担当者、さらには女性の方にも五臓六腑にしみわたるはずだ。一語一句をかみしめていただきたい。

 メディアで取り上げられる女性活躍の〝見本〟のような人が「痛々しい」と彼女たちに映るのはなぜか、これは男も考えたほうがいい。記者も含めひょっとしたら男に都合のいい視点でしか女性を見ていないのではないか。〝出産をあきらめて頑張る〟-これは〝保育園落ちた。日本死ね〟と同じ。女性の置かれている立場を如実に現わしている。

 友野氏は「パースを描くにしろそのものを知っていないと描けない」と話した。これも真理だ。レオナルド・ダ・ヴィンチが絵画を描くために解剖学を学び、筋肉や腱、臓器まで克明にドローイングしたことはよく知られているが、ものを知るとはそのようなものだ。記者の経験でいえば、リッツ・カールトンの「クレド」は宿泊することで深く理解できたし、マンション管理員の仕事が「科学」であることも1日講習を取材したからわかったことだ。

 これは今回の取材と関係ないが、実に腹が立つ許せない事実について触れておく。ある東証一部上場会社の女性役員が忽然と消えたことだ。その前に男性役員が退任したときはきちんと有価証券報告書に記載していたのに、その女性役員が退任したときは全く記載されなかった。監査人は「知らなかった」と話した。記事にしようと思い原稿を書いたが直前でやめた。ご本人に迷惑を掛けたくなかったからだ。

 これはおまけ。記者の信条は〝人生は愛〟、モットーは〝記事はラブレター〟。好きな女性は〝みんな好き〟。友野さんのような業界の女性は男性よりはるかに仕事ができると確信している。他では、一番にしないと怒られるからかみさんだが、昔の人では平塚らいてうと市川房江。作家では野上弥生子、宮尾登美子、小池真理子、それと家父長制度の生け贄になった金子みすゞ。女優では吉永小百合さん。最近ではNHKキャスターの鈴木奈穂子さん。〝しっかり考えなさいと〟目で語るのが素敵だ。

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左から乙部、小池、友野の各氏

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 ここまで辛抱強く読んでくださったわが業界の良識人には良薬は口に苦しの記事にはなったはずだ。万金丹はわが故郷・伊勢の万能薬です。

 

 

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「アールブラン馬込」完成予想図

 モリモトの「アールブラン馬込」を見学した。馬込駅から徒歩5分の全45戸。坪単価を割安感のある300万円台の前半に設定して早期完売を狙う。

 物件は、都営浅草線「馬込」駅徒歩5分、大田区中馬込2丁目に位置する5階建て全45戸。専有面積は54.51~75.05㎡、価格は未定だが、2LDKが4,800万円台から、3LDKが5,400万円台から。坪単価は300万円台の前半になる模様。竣工予定は平成30年2月上旬。設計・監理は長谷建築設計事務所。デザイン監修は南條設計室。インテリアデザインは石倉雅俊氏(ウィ・アンド・エフヴィジョン)。施工は森本組。販売開始はゴールデンウィーク明けの予定。

 現地は、環七通りから一歩入った中層マンションなどが立ち並ぶ住宅街の一角。敷地は3方道路に囲まれており、1フロア7~11戸。70㎡以上が9戸で50~60㎡台が36戸。全体としてグロスを圧縮しているのが特徴。逆梁ハイサッシ、ディスポーザ、玄関・廊下は大理石仕上げ。

 専有圧縮して建築費の上昇を目立たなくする典型的な物件だが、近隣物件の坪単価は300万円をはるかに超えて来ており、価格的な競争力がある。設備仕様レベルも他のアールブランとほぼ同じ。

 販売担当の同社・加藤滉大氏は「来場者は、2月にモデルルームをオープンしてこれまで約150件、毎週15件ペース。極めて順調に集客できている。お客様の評価も高い」と自信を見せていた。

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モデルルーム

 

 野村不動産アーバンネットは4月6日、2017年4月1日時点の「住宅地価格動向」「中古マンション価格動向」調査結果をまとめ発表した。

 首都圏の住宅地価格・中古マンション価格ともに、1~3月期(四半期ベースでの比較)では全エリア平均の変動率は2013年7月調査以降、連続してプラスを維持した。

 住宅地の価格変動率は、首都圏エリア平均で0.2%(前回:0.3%)となった。全エリアで上昇率が低下したもののプラスを維持。「値上がり」地点と「値下がり」時点が減少し、「横ばい」地点が増加した。

 中古マンションの価格変動率は、首都圏エリア平均で0.1%(前回:0.3%)となり、エリア別の平均変動率は東京都下、神奈川県以外のエリアでプラスとなった。「値上がり」地点と「値下がり」地点が減少し、「横ばい」地点が増加した。

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「WORKSTYLING八重洲」

 三井不動産は4月6日、新しい働き方の実現に貢献する「WORKSTYLINGプロジェクト」を立ち上げ、ワークスペースの様々な課題に対応する法人向け多拠点型シェアオフィス「WORKSTYLING」の提供を開始したと発表した。

 生産性の向上や多様な人材の活用(ダイバーシティ&インクルージョン)が求められる企業と、一方で企業ワーカーは長時間労働の是正が課題となる中、効率的でクリエイティブな仕事がこれまで以上に求められている企業ワーカーのニーズに応えるもので、同社が掲げる「その先の、オフィスへ」というステートメントを具現化した。開設に当たっては2,000人を超える企業ワーカーによる利用実績と500件を超えるヒアリングを実施した。

 「WORKSTYLING」契約法人は、すべての拠点を10分単位のタイムシェアで利用することが可能で、法人毎の総利用時間を月次で集計し請求する従量課金システムを採用する。専用のWEBアプリで利用者の入退館履歴、個室や会議室の利用状況を一元管理し、契約法人は社外で働く社員の勤怠管理を簡単に行うことができる。法人の承認をうけた個人のみが利用することでセキュリティを向上させ、受付にはコンシェルジュが常駐し高いセキュリティを確保する。

 ユーザーは、個室・会議室・オープンスペースなど多彩なスペースのほか、テレビ会議システムも利用可能。専用のWEBアプリにより全拠点の個室・会議室の検索・予約ができる。ディスプレイやキーボード・充電器などの貸出なども受けられる。

 施設は、記者発表会場となった汐留と八重洲、霞が関、新宿、大崎、品川、渋谷、池袋、横浜、船橋の10拠点を開設し、2017年度中に主要なエリアに約30カ所の拠点展開を目指す。施設の大きさは50坪~150坪、収容人数は40~150名。利用時間は平日の8:00~21:00。料金は10分間300円。

 主な契約法人は味の素、コクヨ、資生堂ジャパン、日建設計、日商エレクトロニクス、日本ユニシス、富士ゼロックスなど。同社も働き方変革の取り組みの一環として4 月から利用する。

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テレビ会議システム

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1人用個室

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感覚を刺激するグッズ

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ドリンクリフレッシュコーナー

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 至れり尽くせりの施設だ。コーヒーは飲み放題。女性専用の個室もあり、大きな姿見があり、髪をセットする道具も置いてあった。

 何よりうれしいのは、2~4人くらいは入れる喫煙コーナーが設けられていたことだ。クリーンエア スカンジナビアが開発した製品で、三井不動産グループが販売代理店になっている。ドアを閉めなくても煙や臭いが外に出ないスグレモノだ。

 参考までに。同社は同じ喫煙コーナーを本社内にも設置しているそうだ。えらいのは、全てではないが大規模マンションの共用部分にきちんと喫煙室を設けていることだ。吸う人も吸わない人も気持ちいい空間を設置するのがデベロッパーの役割だ。取材後、同社の3名の名前をもとに名づけられた中河内いずみ著「場の力」(丸善プラネット、本体1,200円+税)をもらったが、これはいろいろ考えるヒントになる好著だ。

 10分間で300円という利用料金が高いか安いか。プロジェクト説明会に参加したメディア関係者の「ちょっと高い」という声もあれば、尊敬する先輩記者は「会社が払うのだから安い」とこともなげに言った(会社が払う料金も結局は労働によって賄われると記者は思うが)。まあ、みんながコスト意識を持って働けばいいということだ。

 記者もすぐ時給に換算した。時は金なり。1時間もあればかなり原稿は書ける。〝それくらい仕事しているぞ〟と答える自分と〝その分、給与から差し引くぞ〟という別の自分がいた。酒が飲めないのは残念。軽くたしなむ程度の酒は飲まない人より認知症にかかりにくいという研究もあるし、食欲をそそる効果も間違いなくある。適度の酒は脳を活性化させるとわたしは信じている。

 希望をいえばシャワールームだ。オフィスビルでシャワーが使えるようにならないかとずっと思っている。三菱地所は「大手町パークビルディング」でシャワー室を設置した。財務省には省内に職員用の浴室がある。シャワーブースは10人くらいだそうだ。

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「WORKSTYLING汐留」

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喫煙コーナー(左)とボルダリングコーナー

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ガチャガチャコーナー

 


 

 

 

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「Transightモジュラーシステム(Transight MS)」

 大和ハウスグループのデザインアークは4月5日、新規事業プロジェクト「Transight(トランサイト)」第一弾商品「Transightモジュラーシステム(Transight MS)」を店舗やオフィス、教育施設、展示会などに向け販売開始したと発表した。

 「Transight」とは、様々な業種・業態との協業により、これまでにない空間ワクワクする体験・夢のあるビジネスを追及し、あらたな価値を生み出すことを目的に2013年に立ち上げた概念・共創プロジェクト。

 「Transight MS」は、このプロジェクトの基幹となるもので、業界初のPSE(電気用品安全法)に適合した組立式通電型モジュラーシステム。縦38㎝、横71㎝、奥行き45㎝を一つのモジュール単位で規格化・工業製品化されたアルミア材のフレームを差し込んでひねるだけで組立・分解・組換が可能。女性でも簡単に店舗や施設のレイアウトができる。フレームに内蔵された通電機能により電気電子製品、IoT機器、デジタルサイネージの搭載も可能。カラーバリエーションは白を基調に9色。価格は枠のみが57万円から、大型モニタ、ミラーガラス・引き出し付きが149万円から。初年度売り上げ1億円、2020年には30億円に伸ばすのが目標。

 同社常務取締役営業本部長・嶋田二郎氏は「時間とともに価値を高める、可変・拡張、オープンプラットホームの3つがキーワード。業界の枠を超えて様々なパートナーと組んで、空間デザインだけでなく働く環境、働き方などすべての景色を変える変幻自在のプロジェクト」と胸を張った。

 また、同社執行役員経営企画部長・山﨑洋一氏は「経営企画は拍車を掛けたりブレーキを掛けたりするのが仕事だが、わたしは推進役としてプロジェクトに携わってきた。個性とノウハウ、コストとの戦いもあったが、ワクワクする取り組みで、きらりと光るアイデアが実現した」と語った。

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鮮やかな「赤」(752-010)がいい

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 山崎氏も話したのだが、〝ワクワク〟してプレゼンを聞いていた。値段がやや高く一般家庭が利用するまでは時間がかかるが、無限の可能性を秘めているというのが直感だ。

 いま話題のセルロースナノファイバーなどと組み合わせれば、積み木やレゴのように住宅が組み立てられるのではないかと。外観もモンドリアンの絵画のようにできるはずだ。建設現場の足場や型枠にも応用できるかもしれない。

 この話を山崎氏にしたら、山崎氏は「おっしゃる通り。実はベトナムから住宅は作れないかという話を受けた」と明かした。職人がいなくても3D技術と組み合わせた家がつくれる時代がやってくるかもしれない。その時、大和ハウスは何を作るのか、考えるとワクワクするではないか。

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山崎氏

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 売上高が3兆4,600億円(平成29年3月期予想)もある会社が初年度売り上げ目標1億円の新商品の発表会を開くというのがいい。同社は広報活動にも力を入れており、グループ全体で2016年度は184件のニュースの類を発表している。おそらく住宅・不動産業界では断トツのはずだ。売り上げが大きいから当然という声もあるかもしれないが、売上げが1兆円もあるのに法律で決められた決算数字くらいしか発表しない会社もわが業界にはある。

 嶋田氏と山崎氏のプレゼンがまたよかった。山崎氏はシステムを構築した経緯について「40歳代の5人が集まって、建築でも家具でもない自分で使いたいと思う概念として考えだし、具体的な形にした」と話し、商品化までこぎつけた大きな利用として「時間とお金を確保したこと、うまくいっていないことを相談すること」と語った。

 なるほどと思った。そこでもう少し具体的に話してほしいと質問した。山崎氏は「商品化には4年間かかったが、基本的には3年間で商品化すること、5年間で黒字にすることが条件だった。社長(島正登氏)が大和ハウスの商品開発出身で理解があった。社長との距離も近く口頭で相談することでコミュニケーションが図れた。書類にするとさし障りが出てくるものや説明しきれないことも伝えられた。相談とは応援・支援をしてもらうもの」と説明した。

 いわゆる「報連相(報告・連絡・相談)」は、耳が痛くなるほど会社員は聞かされているが、なかなかこれが機能しない。売上げが5.6兆円、グループ従業員が18.7万人のあの東芝グループのスローガンは「人と、地球の、明日のために。」だ。〝光る東芝〟はどこからおかしくなったのか、高邁な哲学をないがしろにしたのは誰か、報連相はどこにいったのか。

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嶋田氏

大和ハウス 軽量で組み立て自在 「Transight(トランサイト)」発表(2016/2/22)

 

 

 

 

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清水寺の「音羽の滝」をコンセプトにした〝ツリーシャワー〟のサクラ(小野寺衆氏の作品)

 大和ハウスグループのデザインアークの新商品「Transight(トランサイト)モジュラーシステム」を取材するために出かけたのだが、取材会場の六本木のビルは鍵がかかっていた。案内状を見たら日にちは4月5日だ。あっ1日間違えた。

 しかし、ただでは起きないのが記者だ。東京ミッドタウンの春爛漫をお届けする。

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建築中の「パークコート赤坂檜町ザ タワー」

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話題のマンションももうすぐ完成

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「GALLERIA」

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川畑氏(左)と池田氏

 旭化成ホームズは4月3日、4月1日付で社長に就任した川畑文俊氏(前取締役兼専務執行役員)と会長に就任した池田英輔氏(前社長)の合同会見を行った。

 池田氏は「タイミング的には業績が横ばい状態にあり、踊り場に差し掛かっており、若返りを図り新しい成長へ向かって脱皮するにはいい機会。その意味で川畑くんは待望の大型社長。身体もそうだが中身も備わっている。入社以来、トップの業績を常に続けてきた。明るさ、若さもある。わたしが3年前に社長に就任したときから次の社長候補として考えていた」と既定路線であることを明かした。

 川畑新社長は「ここ3年間はスタッフとして商品企画などを見てきたが、それまでは入社以来一貫して現場ライン。強みである〝現場〟に密着して舵取りをしていく。市場は踊り場にあるが、当社は2025年までに売上げ1兆円を目指しており、その礎を築くのがわたしの役割。戸建ては当社が営業エリアとする都市部でまだまだ伸びしろがある。シェアアップを目指す。そのための営業力強化に努める。№1と自負している戸建ての建て替え、マンションの建て替え、賃貸住宅も伸ばせる余地がある。新規事業の3本柱のシニア・中層・海外やこれまでやったことのない分野にも積極的に投資し、人材育成にも力を注ぎたい」と述べた。

◇       ◆     ◇

 川畑氏が話し終えると、池田氏がすかさず「緊張した川畑くんを初めて見た」とおどけたが、どうしてどうして記者には全然そうは見えなかった。それどころか、堂々たる体躯はまさに待望(大望)の大型重量級社長そのものだった。

 一つ不思議に思ったのは、川畑氏は昭和33年生まれの大阪府出身で、昭和57年に関西学院大学を卒業しており、雰囲気は関西人なのにほとんど関西弁を発しないことだ。

 同じハウスメーカーの積水ハウス・和田勇会長、大和ハウス工業・樋口武男会長、住友林業・市川晃社長も関学出身で、いつも関西弁でまくしたてるのと対照的だ。

 川畑氏に「どうして関西弁を使わないのか」という質問をぶつけたら、「大学を卒業してすぐ旭化成工業(現旭化成)に入社し、仕事はずっと東京。妻も東京・杉並の生まれ。だから関西と東京のハーフのようなもの。夫婦喧嘩をして関西弁になると、妻は本気で怒っていることを理解してくれるので関西弁のメリットはある」と話した。

 ついでに「川畑さんは8代目の社長だが、最重量社長の誕生でいいですか」と聞いたら、「もちろん。僕、身長は184㎝あるんですよ。体重? これは社外秘。池田会長から『お前の体重は経営リスク』と言われているので」と体重は明かさなかった。傍にいた池田会長に「会長の2倍はありそう」とけしかけたら、池田氏もうなずいた。

 和田氏、樋口氏、市川氏と3人もの関学出身の先輩にいじめられないか心配だが、持ち前の体格と若さで撥ね返すか。それとも〝関学閥〟タッグを組んで業界を席巻するか。いや、待てよ。もう学閥が通用する時代じゃない。三つ巴どころか四つ巴になって死闘を演じるか。そうなったら体格と若さに勝る川畑氏が圧勝するか。

 思い出を問われると、「入社1年生のとき、大阪に帰って母親に『契約したお客さんにごちそうになったんや』と話したら、『普通と逆やな、結構な仕事やなあ』と言われ妙に納得した」と初めて関西弁を使った。体重を気にしているようには全然見えなかったが、「体重を落とすため趣味のゴルフと日々の散歩は欠かさない」とのことだ。

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川畑氏

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「変わる暮らしと住まいのかたち」シンポジウム(すまい・るホール)

 アキュラホーム、ジャーブネット、住宅金融支援機構、都市住宅学会が後援する「住みごこち・住みごたえ・住みこなし推進研究会(3住研究会)」(委員長:高田光雄・京都大学大学院教授、4月1日からは京都大学名誉教授・京都美術工芸大学教授)が3月29日、第3回シンポジウム「変わる暮らしと住まいのかたち」を開いた。

 同研究会は平成26年6月に発足し、27年に「変わる家族と住まい」、28年は「変わる女性と住まい」をテーマにそれぞれシンポジウムを行っており、今回が最終回。

 高田氏は基調講演の中で、戦後の3つの失敗として「伝統木造」を捨てたこと、寸法からメートル法に変えたこと、京間モジュールを江戸間に変えたことを上げた。また、これからの街づくり・家づくりは入れ子思想を取り込み、多様なシナリオを描き、漸次的な意思決定を行い、選択肢を多くするシナリオ・アプローチが重要と述べた。

 その後、研究会メンバーの大久保恭子・風代表取締役、園田眞理子・明治大学教授、野間光輪子・日本ぐらし代表取締役、檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授、山本理奈・東京大学大学院助教がそれぞれの研究成果をもとに変容する暮らしとこれからの住まいについて議論した。

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高田氏

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左から大久保、野間、檜谷、山本の各氏

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 高田氏の「入れ子」「シナリオ・アプローチ」も興味深かったが、面白かったのは園田氏の話だった。いきなり「シンギュラリティ」(人工知能が人類の知能を超える転換点)などという難しい話を持ち出し、「わたしはペシミスト、悲観論者。いつも明るい伊藤さん(圭子氏、アキュラホーム住生活研究所所長)のように楽観的な未来を描けない。3.11がトラウマになっている」と本音とも冗談とも取れる言葉を発し、持論を展開した。

 耳目を集めたのは、人口・世帯減少、産業構造の変化、エネルギー転換の3つの深層問題を串刺しできる解答として提示した「ご当地資本・主義」だ。その具体的事例として「Shre金沢」「高森のいえ」を紹介した。

 「ご当地資本・主義」は園田氏の造語で、2013年に発売され大ヒットした「里山資本主義 日本経済は『安心の原理』で動く」(角川書店、藻谷浩介/NHK広島取材班)を連想させる瑞々しさがある。

 これを「サブシステム」として機能させるというのは「里山資本主義」と同じだが、ご当地の様々な資本を駆使してという意味の「・」(ナカグロ)がミソだ。

 「家守り×まち守り=〝むら〟の時代」という概念も説得力がある。高田氏から「コミュニティではだめなのか、まち(街)ではいけないのか」という問いに園田氏は「コミュニティという言葉は使いたくなかった。やはり〝むらむら〟という言葉もあるように『むら』にこだわった」と話した。

 「コミュニティ」でなく「むら」にこだわるのは記者もよく理解できる。10年前だが、「『コミュニティ』なる文言には記者は違和感を覚える。どうして外来語を使わなければならないのか。わが国では古くから町内会、隣組(戦前には大政翼賛団体になったのでこれは不可)があり、寄り合いなどがあり、『講』もあった。緩やかだが解けないという意味を込めて『もやい講』などもいいのではないか」(危機に瀕するコミュニティ デベロッパーにも責任の一端)と書いた。

 「むら」は行政単位「村」のイメージとの兼ね合いもあり、「コミュニティ」に変わる概念として使用されるには時間もかかりそうだが、普及してほしいと思う。

 平成23年の紀伊半島大水害で大きな被害を受けた奈良県・十津川村の復興再生プロジェクト「高森のいえ」がまたいい。映し出された画像がとても美しかった。

 「高森のいえ」は園田氏がプロジェクト推進委員長を務め、村の中心部にある特別養護老人ホーム「高森の郷」に隣接して建設されたもので、「高齢者向け住宅棟(単身及び二人世帯用)」、「一般向け住宅棟(子育て世帯用)」、「ふれあい交流センター棟」で構成されている。イベントなどが行われるセンター広場も整備されている。建築物は構造材、板材及び造作材(全て10齢級程度の杉・桧の間伐材)を使用し、約95%が「十津川産材」となっている。

 プロジェクトには日本建築士会連合会会長を務める三井所清典氏(アルセッド建築研究所)も参画しており、三井所氏は「山古志村の復興住宅の経験が生きた。造成費がとても安く済んだ」と話した。これまでにない「むら」のモデルになる可能性を秘めている。

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園田氏

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「高森のいえ」(資料提供:園田眞理子氏)

以下は十津川村提供

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全景

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全景

04.全景(北面)_PANO_20170318_140407.jpg
全景

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全景

11.高齢者向け住宅(1号棟:北面)_IMG_20170318_130133.jpg
高齢者向け住宅

42.高齢者向け住宅4号棟(南面)_IMG_20170318_125024.jpg
高齢者向け住宅

51.一般向け住宅(北面)_IMG_20170318_124923.jpg
一般向け住宅

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ふれあい交流センター

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住宅棟中庭

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センター広場

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