大京穴吹不動産 「店舗間IT接客」メディア向けにデモンストレーション

「店舗間IT接客」デモンストレーション(左が対応車、右が相談者の設定)
大京グループで不動産流通事業を展開する大京穴吹不動産は6月16日、先に発表した「店舗間IT接客」のデモンストレーションを報道陣向けに行った。
「店舗間IT接客」は、同社の店舗・営業所からモニターを通じて現地担当者と遠隔地の不動産売買・賃貸の相談などができるもので、6月1日から導入している。今年10月から賃貸物件に限りIT重説が本格運用となるのに応えるもの。同社の全30都道府県71店舗で利用できる。予約制で、当面は賃貸に限定する。
同社は現在、8,000戸強の仲介扱い件数があり、首都圏顧客の売り依頼物件のうち約12%が遠隔地で、購入依頼も約7%あるという。沖縄の物件などは約50%が首都圏の購入者だという。
そうした顧客ニーズに対応するもので、月間約30件の相談を見込む。今後はグループの新築・中古の売買、リフォーム、インテリアのほか、税理士、介護、FP、ソフトサービスにも拡大していく。
この日は、同社スタッフが相談者になり、WEB会議システムを利用して同社大阪中央店、税理士、大京リフォーム・デザイン事務所とそれぞれ大阪の物件の売却、相続物件の相談、リフォーム済みの室内の模様などをリアルタイムで画面に映し出した。
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この種の対応を行っているのは、同社によるとアパマンくらいしかないのにやや驚いた。地方の相続物件や所有リゾートマンションの売却などは売却しても足が出たり、仲介業者も手数料収入で賄えない費用が掛かったり難しい問題もあるが、時代は間違いなくIT対応が普通になる。
今回の同社のデモンストレーションはものすごくわかりやすかった。いろいろな用途に利活用できるはずだ。
平均面積77㎡ 低め価格設定で競合に挑む 大和地所レジ・菱重プロパティーズ「戸塚」

「ザ・テラス戸塚グランターミナル」完成予想図
大和地所レジデンス(事業比率65%)と菱重プロパティーズ(同35%)が分譲を開始した「ザ・テラス戸塚グランターミナル」を見学した。駅から5分のフラットアプローチで後背地が森、道路を隔てた対面が大規模商業施設「サクラス戸塚」という立地。平均専有面積は77㎡のファミリーマンションだ。
物件は、JR・横浜市営地下鉄ブルーライン戸塚駅から徒歩5分、横浜市戸塚区戸塚町字二十ノ区に位置する11階建て全175戸。第1期1次(28戸)の価格は4,998万~8,298万円(最多価格帯5,600万円台)、専有面積74.51~93.29㎡、坪単価は260万円。竣工予定は平成31年1月下旬。施工は東亜建設工業・多田建設。
現地は、1階エントランス部分からヒルトップまで約8層分ある北下がりの斜面地。
建物は東南向き「ヴィラ ド デリス」とその背後にそれぞれ雁行させた東向きの「ヴィラ ド シエル」「ヴィラ ド ブリーズ」「ヴィラ ド エール」の4棟構成。住戸プランは平均専有面積77㎡のファミリー向けで60プランバリエーションの多彩な間取りを用意しているのが特徴。
基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、御影石カウンタートップ、食洗機、ミストサウナなど。メーターモジュールの廊下幅を確保しているのも特徴の一つ。

エントランス
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東戸塚と戸塚駅圏でのマンション供給が相次ぎ大激戦の様相を呈している。とくに戸塚駅圏では駅前の再開発が完了し、供給増と共に坪単価も高騰。駅近物件は300万円を突破した。
しかし、単価上昇はグロス価格の上昇につながり、7,000万円が厚い壁と言われている。
今回の同社の坪単価は、先行する三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 戸塚フロント」の坪270万円を意識した設定で、こちらのほうが駅から2分遠いこともあるが、低めに設定し、なおかつ面積を広くして競合に負けない商品企画にしている。93㎡のコーナーサッシ付きのモデルルームもよくできている。
同社広報担当の横山淳二氏から聞いたのだが、同社のマンション期末完成在庫は40戸程度、完成物件の5%しかないという。その理由を聞いたら、上場時と比べ平準化が進んでいるのが大きいという。
今回の物件は戸塚駅圏最大級(過去10年間においてJR東海道本線「戸塚」駅利用のバス便を除く新規分譲された物件で最大。MRC調べ、2017年1月現在)の規模で、森に隣接するというメリットをどうアピールするか。大手デベロッパーとの競合に挑む。

ウォーターコート
グロス7,000万円の壁突破した三菱地所レジ「ザ・パークハウス 戸塚フロント」(2017/6/14)
グロス7,000万円の壁突破した三菱地所レジ「ザ・パークハウス 戸塚フロント」

「ザ・パークハウス 戸塚フロント」完成予想図
三菱地所レジデンスが分譲中の「ザ・パークハウス 戸塚フロント」を見学した。戸塚駅西口から徒歩3分、駅前の市街地再開発が完了し、今後の開発が期待される「戸塚駅西口第3地区」の一角にあり、横浜市有地の公募売却によって建設されているもの。ハードルが高い「横浜市市街地環境設計制度」の適用により、通常約31mから約44mの高さ規制の緩和を受けている。2月から販売を開始し、現在、全106戸のうち約80戸が成約済み。
物件は、JR・横浜市営地下鉄ブルーライン戸塚駅西口から徒歩3分、横浜市 戸塚区戸塚町に位置する14階建て全106戸(ほかに店舗7戸、地域交流施設1戸)。専有面積は61.37~125.89㎡、6月末分譲予定の第3期(戸数未定)の価格は4,740万~6,750万円(最多価格帯5,900万円台)、坪単価は約270万円。竣工予定は2018年5月下旬。施工はフジタ。事業主は同社のほか大洋建設。
現地は、物件名にもあるように駅前の戸塚区総合庁舎、戸塚パルソ、トツカーナなどの駅前の再開発が完了し、今後開発が期待される「戸塚駅西口第3地区」のフロントに位置。
L字型の建物は、「横浜市市街地環境設計制度」の適用により、通常約31mから約44mの高さ規制の緩和を受けているのが特徴。デザイン監修は三菱地所設計の多田直人氏。格子を多用したシンボリックな外観で、基壇部には4種のタイルを採用し、一部ガラスカーテンウォール仕上げとしている。
1・2階に地域交流施設や「安心して利用できる店舗(未定だが、コンビニなどは不可)」が予定されている。
住戸は3階からで、採光面が多いプランが中心。ディスポーザ、食洗機、フィオレストーンカウンタートップが標準装備。
同社第一販売部販売グループリーダー・河嶋謙介氏は、「問い合わせは1,800件超、来場者は約700件。2月末から販売開始し、現在約80戸が成約済みの進捗は計画をオーバーしているが、当社の戸塚駅東口の物件も含め競合を避ける意味でもっと上を目指していた。現状、ファミリーがターゲットのグロスの壁とみていた7,000万円台は残り1戸、横浜市環境設計制度の恩恵を受けた11階以上も残り3戸なので、評価を得られたと考えている。7月には東口の駅近の『ザ・パークハウス戸塚ガーデン』129戸のモデルルームもできるのでぜひそちらも見ていただきたい」と話した。

ランドスケープ
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戸塚駅圏のマンションは昨年3月に伊藤忠都市開発他「クレヴィア戸塚」を見学した。まだ少し残っているようで、坪単価300万円(グロスで7,000万円)の壁は厚いのかと思っていた。
そのグロスの壁を三菱地所レジデンスは破った。駅近の資産性が評価されたのだろう。同社が東口で分譲予定の「ザ・パークハウス戸塚ガーデン」を検討しているユーザーも多いはずだ。いったいいくらの価格設定をするのか。坪300万円の壁を突破するか。
高さ規制について。もうばかばかしいからあまり書かないが、建築物の絶対高さ規制は緩和すべきだ。この物件は「横浜市市街地環境設計制度」の適用を受けてはいるが、それでもリビング天井高は2430~2455ミリだし、柱・梁型が結構出ている。公開空地や緑化率の確保以外に基本性能や天井高など居住性を制度の評価項目に入れるべきだ。優れたものは思い切った緩和をすれば、優良なストック形成につながる。人=居住性の視点が制度には欠けている。

モデルルーム
伊藤忠都市×神奈川中央交通×横浜公社 官民協業の「戸塚」人気必至(2016/3/1)
〝第三の老い〟 管理員の実態調査に着手 マンション管理協・岡本理事長
マンション管理業協会(管理協)は6月13日、定時総会後の懇親会を開き、先に理事長に就任した岡本潮氏(東急コミュニティー会長)が冒頭、「フローからストックの時代へ大きく変換した今、住みやすい住環境を整えるマンション管理業の役割は益々増大する」などと話したうえで、建物と居住者の2つの〝老い〟への対応に加え、管理員などの従事者の高齢化と人材不足という〝第三の老い〟について具体的な実態調査を行うと話した。業務範囲を明確にする標準管理委託契約書の改定も行うと語った。
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〝第三の老い〟問題については、前理事長の山根弘美氏(大和ライフネクスト相談役)もしばしば語っており、いよいよ本格的な取り組みが始まる。
しかし、一口に管理員といっても雇用形態は非正規雇用の準社員、パート、アルバイト、派遣などが一般的で、実態を把握するのは難しい。
全国にどれくらいの管理員がいるのか管理協に聞いたが把握していないということだった。管理戸数約43万戸のマンション管理業トップの大京アステージはホームページで「管理員等(マンションサポーター)」は5,362名としており、大京グループの穴吹コミュニティの1,761名を合わせると7,123名(16年3月末)だ。管理戸数では大京アステージを上回る約44万戸の日本ハウズイングは「準社員」が3,826名(平均62.8歳)で、このほかパートなどの臨時使用人が6,336名としている。準社員は必ずしも管理員だけではないので正確な数字は把握できないが、双方を合わせると1万人を突破する。
マンションの全国ストック約634万戸と、両社の管理員の数などから類推して全国の管理員の数は8~9万人とみたがどうだろう。
同協会が何から手を付けるのか不明だが、管理員の実態を明確にしていただきたい。でないと「マンション管理業に従事する職員が、生きがいや誇りをもって業務ができる環境づくりを強力に推進」(平成29年度事業計画)することは困難ではないか。
標準管理委託契約書の改定も待ったなしだ。同協会の調査資料でも、業務範囲が不明確なことから〝サービス労働〟に対する管理員のストレスが高いと報告されている。マンション管理の車の両輪の一つである「コミュニティ」の価値をどのように測るのかという難しい問題もある。
懇親会では民泊新法について来賓の国会議員の方々も触れたが、記者はマンション管理組合がしっかり対応すれば混乱は起きないと思う。
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懇親会後、新旧役員の歓送迎会が同じ第一ホテル東京内のレストランで行われることを聞きつけ、レストランの前と対面の喫煙室、1階下のカフェで張り込みをした。何か大きなニュースがつかめるかもしれないと思ったからだ。
残念ながら「何もないよ」(ある役員)で空振りに終わったが、記者と同じようによくタバコを吸う役員などから今後の取材に役立つヒントを得た。
マンション管理協 管理員の待遇改善を重要課題に 呼称も変えてほしい(2017/3/24)
第3の高齢化-マンション管理従事者の高齢化、人材難に取り組む 山根・管理協理事長(2017/1/18)
マンション管理協 女性初の副理事長に石﨑順子氏(大和ライフネクスト社長)選任
マンション管理業協会(管理協)は6月13日、定時総会後の理事会で新しい副理事長に石﨑順子氏(大和ライフネクスト社長)を選任した。
石﨑氏は愛媛県出身。1960年4月26日生まれ。1983年3月、大阪大学法学部法学科卒業。同年4月、日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)入社。1985年5月、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。1999年1月、コスモスライフ(現 大和ライフネクスト)入社。2005年6月、同社取締役、2013年4月、同社常務取締役、2016年10月、同社代表取締役社長(現)。
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同協会の役員数は現在30名。このうち女性は、理事を務める弁護士の篠原みち子氏と石﨑氏のみ。副理事長に女性が選任されたのも初めて。
同協会は毎月のように理事会後に記者懇親会を開いている。石﨑も出席されるはずだ。発言が楽しみだ。男ばかりの組織に風穴を開けていただきたい。
〝しっかり造り込みをすれば売れる〟見本 大成有楽不「オーベル東林間レジデンス」

「オーベル東林間レジデンス」完成予想図
大成有楽不動産が販売中の「オーベル東林間レジデンス」を見学した。駅から徒歩5分、区画整理された戸建てが建ち並ぶ住宅街の一角で、坪単価190万円という値付けとよく工夫されたオリジナル収納などの商品企画が評価され、第1期48戸が順調に売れている。
物件は、小田急江ノ島線東林間駅から徒歩5分、相模原市南区東林間四丁目に位置する6階建て全79戸。専有面積は65.41~86.83㎡、現在分譲中の住戸(5戸)の価格は3,360万〜4,490万円。坪単価は190万円。竣工予定は平成30年1月下旬。設計・監理はジムス建築設計事務所。施工は大成ユーレック。販売代理は大成有楽不動産販売。
現地は、駅から徒歩5分。周辺は土地区画整理事業によって区画割された住宅街の一角。3方道路の敷地は容積率200%の第一種中高層住居専用地域だが、敷地の南面は一戸建てが建ち並んでいる。建物はコの字型で、住戸は南東向き(全体の72%)が中心。
前面道路幅約6mに面した部分は幅約60m、奥行き約2.6mの「サウスガーデン」とし、住戸のテラス側から道路に向かって樹高を下げる工夫を行っている。
住戸の商品企画では、同社オリジナルの「オレンジラボ」をフル装備。マルチシェアストレージ(共用収納)、マルチシューズシェルフ(下足入れ)、マルチクローゼット、オレンジキッチンなど使い勝手がよく収納量を増やせるようにしているのが特徴。
同社マンション事業本部マンション事業部事業室(第二)主任・堀内文普氏は、「東林間でのマンション供給は8年ぶり。これから大量の供給が始まるので競合に負けない商品企画にした。狙い通り、〝待ってました〟というお客さまが多く、極めて順調に売れている。歩留まりも高い。東向きは3,000万円台からだが、近く分譲される物件に負けない」と話した。
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坪単価はぴったりだとおもう。この前も書いたが、小田急線小田原線海老名駅西口では約3,000戸のマンションがこれから供給される。一方、小田急江ノ島線では、東林間駅の隣駅「中央林間」駅圏では同社も売主になっている857戸もの「ドレッセ中央林間」が分譲される。さらに「町田」や「相武台前」では野村不動産の「オハナ」もある。大激戦となるのは必至だ。
同社の今回の物件は、住環境がよく駅に近いという利点もあるが、高値追求は難しいと読んでいた。坪190万円はぴったりだと思う。
一つ強調したいのは収納、とりわけ今回初採用した「オレンジドレッサー」がよく工夫されていることだ。
①掃除がしやすい②化粧がしやすい③収納がたっぷり-この3つを満たしているもので、掃除がしやすいように壁付水栓を採用、化粧がしやすくするためには三面鏡のガラスは顔と30㎝くらいにし、ゴミ箱などが入る底板なしスペースを設けている。全体的なデザインも美しい。
〝しっかり造り込みをすれば売れる〟見本のようなマンションだ。

「オレンジドレッサー」
「お蔵入りしたコンバスが亡霊のようによみがえった」 トータルブレイン久光社長

冒頭の間取り図は、間口が6m、奥行きが10mの専有面積60㎡の3LDKプランだ。これを見て「これはうちのマンションじゃない」と言い切れるデベロッパーはどれだけいるだろうか。ほとんど皆無ではないか。
マンション建設費が高止まりで推移するいま、デベロッパーはグロス価格を抑えようと懸命になっている。その苦肉の策として18坪の3LDKが登場した。
この現状を、かつて長谷工コーポレーション(当時長谷川工務店)の専務から長谷工不動産社長などを歴任したトータルブレイン・久光龍彦社長(76)は皮肉交じりに次のように語った。
「もう30年以上も昔、故・佐藤美紀雄先生に散々叩かれて困り果て、お蔵入りさせた田の字型の『コンバス』が亡霊のようによみがえった。これはダメですね。デベロッパーは考えなきゃ」
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久光氏が語った「コンバス」とはどのようなものだったかを少し長くなるが紹介する。
「コンバス(CONdominiumu BUilding System)」は、長谷川工務店が昭和48年に編み出したマンションの究極の経済設計工法だ。間口が6m、奥行きが10mないしは11mの専有面積は60㎡(18坪)から66㎡(20坪)というという3LDKプランだ。形状が「田の字」型であるため「田の字型プラン」と呼ばれた。
この経済設計プランは、絶対的な住宅不足解消とマンションの大衆化に貢献した。同社はマンション施工№1という位置を不動のものとした。
コストを抑制するためには戸数を確保する必要があったため、ほとんどが住環境に難があり規制が緩やかな工業系用途地域に建設されたのも特徴だった。
ところが〝不況下の大量供給〟が続いた昭和57~58年、郊外の施工比率が30~40%にも達し、どこに行っても同じ間取で住環境に難がある「コンバス」に対する風当たりが強まった。
批判の論陣を張ったのは住宅評論家の故・佐藤美紀雄氏だった。自称〝弟子〟の記者も徹底して〝長谷工叩き〟の記事を書いた。
記者がもっとも腹が立ったのは、同社とデベロッパー各社がこの20坪の「コンバス」を「全戸住宅金融公庫付き 広い3LDK(64.40㎡)・2,230万円から」と堂々と広告で謳ったことだった。
当時、建設省は国民の豊かな住生活を確保するため住宅建設五箇年計画を策定し、第4期五箇年計画(4期五計)では誘導居住水準として都市居住型は4人家族で91㎡、平均居住水準として4人家族で86㎡の目標を掲げていた。
この4期五計を武器に記者は「御社は国の政策に逆行しているではないか。どうして20坪にも満たない間取りを〝広めの3LDK〟などと宣伝するのか」と捻じ込んだことがある。天下の長谷工が応じるはずはなく、けんもほろろ門前払いを食らった。
ところが、マンションが売れないのは「長谷工」のせいと、施工が長谷工であることをわからないようにする「長谷工隠し」を行ったデベロッパーが現われた。野村不動産だった。新聞広告に施工会社を掲載せず(公取の違反ではない)、現場では長谷工施工を示す「HK」マーク付きのシートに覆いをかけた。記者は「長谷工隠し始まる」と記事に書いた。
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いまはどうか。オリンピック景気に沸くゼネコンは、叩かれてばかりいた積年の恨みつらみを晴らそうと反攻に出た。「マンションはやらない」と公言するスーパーゼネコンの幹部がいるほどだ。
困り果てたデベロッパーがそれこそ手すり足すり、長谷工に「とにかく安くしてくれ」と泣きついているのが現状だ。かつて長谷工がコンバスを売り込んだのと逆の現象が起きている。
〝長谷工頼み〟がどの程度のものかを示すデータがある。2016年度の首都圏供給戸数に対する同社の施工シェアは100戸以上で56.0%、400戸以上だと実に60.4%に達する。つまり大規模マンションの2戸に1戸は同社施工ということになる。
冒頭の間取り図は、コストを最優先するデベロッパーが過去の遺物であるコンバスを思い出し、長谷工に再びやらせて出来上がった。
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残念ながら、亡霊のようによみがえった「コンバス」は成功しているとはいいがたい。では、どうすればいいか。久光氏が一つの解決策を示した。
「わたしが長谷工不動産の社長に就任し、コンバスから脱却しようと社運をかけたのが『モアクレスト』でした。第一弾の『西台』はよく覚えています」
「モアクレスト西台」は、昭和62年に竣工した東武東上線東武練馬駅から徒歩7分の11階建て全181戸のマンションで、もちろん施工は長谷工コーポレーション。売主は長谷工不動産。最多価格帯は4,900万円台、坪単価は180万円だった。
分譲開始は昭和62年2月。第1期79戸が最高72倍、平均27.0倍で即日完売した。引き続いて4月に分譲された第2期89戸も最高84倍、平均26.5倍の競争倍率で即完している。図面が示せないのは残念だが、バルコニー側に3室設けたワイドスパンの71㎡プランや、LDKが18畳大で主寝室が7.9畳大のプランなどを盛り込んでいる。
今では信じられないような人気だが、当時、不動産市場は〝狂乱〟状態で、62年2月の供給量3,596戸の月間契約率は91.5%だった。
記者は当時、マンションと建売住宅の全物件の販売状況を毎月調べており、中古でも築9年の「ドムス青山」が坪2,320万円(8億8,000万円、125㎡)で成約されたと記事にしている。
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昭和62年当時と今はまるで逆だ。第一次取得層の所得が伸び悩み将来不安もぬぐえず、デフレ脱却も絶望的でシュリンクする一方の新築マンション市場の中で果たして田の字型プランは有効か。考え直す必要がありそうだ。
「デフレ脱却絶望的。郊外マンション価格は下がらない」トータルブレイン・久光社長(2017/5/30)
海老名でマンション5物件2,000戸 先陣切るサンケイビル・名鉄不 約半分が供給済み

「海老名 ザ・レジデンス」完成予想図
サンケイビル(事業比率49%)・名鉄不動産(同)・長谷工コーポレーション(同2%)3社が共同して分譲している「海老名 ザ・レジデンス」を見学した。この物件を含め5物件約2,000戸もある小田急線・相鉄線海老名駅西口エリアのマンション計画の先陣を切る全412戸の大規模物件で、まずまずの売れ行きを見せている。
物件は、JR相模線海老名駅から徒歩9分、小田急線・相鉄線海老名駅から徒歩11分、海老名市泉二丁目に位置する15階建て全412戸(Ⅰ工区:206戸、Ⅱ工区:206戸)。専有面積は67.02~83.38㎡、現在分譲中の住戸(15戸)の価格は3,948万〜5,398万円(最多価格帯4,300万円台、4,500万円台)、坪単価は200万円強。竣工予定は平成30年7月。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
昨年11月から分譲されており、これまで平成30年1月完成予定のⅠ工区:206戸を供給済みで、約180戸が成約済み。
現地は工業地域だが、2015年に開業した「ららぽーと海老名」をきっかけにマンションやオフィス・商業施設計画が相次いで発表され、もっとも注目されているエリアの一角に建つ。
エントランス・空間デザイン監修はウイ・アンド・エフ ヴィジョン(石倉雅俊氏)。ディスポーザ、御影石キッチンカウンター、食洗機が標準装備。月額500円からの全戸平置駐車場付きが特徴で、購入者の95%が利用希望者。
販売担当長谷工アーベスト東京支社受託販売部門販売二部販売部長・三宅聡一郎氏は、「横浜に近い。3路線が利用可能。沿線に大企業の工場などが多く、都心志向でもない。街の将来性期待などが評価ポイントで、100%平置駐車場にしたことで95%の購入者が利用希望していることからも、この企画がヒットした」と話している。

エントランス
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三宅氏の言葉が全てを物語っている。坪単価200万円強は高いような気がするが、土地代がただでも160万円以下ではできないはずで、「ららぽーと海老名」に徒歩5分の立地を考えれば〝安い〟と考えられなくもない。
それにしても、かつては田んぼばかりだった海老名西口エリアの開発計画がすごい。これから続々マンションが分譲される。
今回のマンションの近くで三井不動産レジデンシャルが「パークホームズ海老名フォレストプレミア」84戸(施工:長谷工コーポ)のモデルルームをオープンするほか、同社はもう1棟供給する。
「ららぽーと海老名」に隣接するエリアでは相鉄不動産・伊藤忠都市開発・鹿島建設の3社JVの免震タワーツイン「グレーシアタワーズ海老名」477戸(施工:鹿島)が建設中で、今秋に分譲される。坪単価は200万円をはるかに突破するのは間違いない。記者は坪230万円くらいが妥当ではないかと見ているが、相鉄不「二俣川」は坪単価280万円で圧倒的な人気になった。ひょっとすると250万円くらいになるかもしれない。
このほか、新日本住建「(仮称)ファインスクエア海老名」40戸(施工:西野建設)もある。
さらに、詳細は決まっていないが、小田急電鉄が駅前の約3万5千㎡に及ぶ複合ビッグプロジェクト「ViNA GARDENS」を進めており、2025年までタワーマンション3棟を完成させる予定。1棟当たり約300戸トータルで900戸くらいになると予想される。同社は事業主で、マンションの建築主は小田急不動産と三菱地所レジデンス。施工は三井住友建設。年内には概要が見えてくるはずだ。
小田急は「長期ビジョン2020」で海老名駅を「沿線中核駅」として重要なエリアと位置付けており、昨年3月、海老名駅にも特急ロマンスカーが停車するダイヤ改正を行った。このプロジェクトに相当の力が入っている。

小田急「ViNA GARDENS」
三井不動産リアルティ2016年度の売買仲介取扱件数約39,000件 31年連続トップ
三井不動産リアルティは6月5日、同社グループの2016年度の不動産売買仲介取扱件数が全国で38,612件となり、31年連続で全国No.1を達成したと発表した。前年度比2.1%の伸びだった。
世の中の風と流れを活写せよ Webとの融合目指せ 業界紙の役割
これまで数回にわたって「週刊住宅」の破たんや業界紙のあり方について書いてきた。業界関係者の声を伝えた。これで最後にする。
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国土交通省の記者クラブに投げ込まれるプレス・リリースや各社からメディア向けに発信される情報は毎週100本くらいに達するはずだ。これほど集まれば、コピー&ペーストすれば紙面は埋まる。果たしてそんな記事ばかりを書いていないか考えてみる必要がある。もしそのような記事ばかりを書いていたら何年たっても一人前の記者にはなれない。書いた端から本人も忘れてしまう。
記者が気になるのは、ハウスメーカーやデベロッパーなどがわざわざ発表会や見学会を開いても、そのとき配布されるリリースを引き写したり話の内容をそのまま紹介したりする記事が少なくないことだ。例えばマンションの記事。読者が知りたいのは設備仕様レベルや価格、ユーザーの反響などだが、主催者が「価格は未定」と語ればそのまま「価格は未定」と書く。これは記者として失格だ。主催者の伝えたいことを過不足なく書くのは当たり前だが、読者が知りたいことに迫らなくてはわざわざ発表会に出向く意味がない。客観的な記事などありえない。記者の主観による記事だから読まれるのだ。勘違いしていないか。
プレス・リリースの扱いも考えたほうがいい。毎日発信される情報はほとんどの場合、ホームページで閲覧できる。幸い、不動産流通研究所のWeb「R.E.port」は毎日丹念に拾って記事にしている。解説記事は少ないが、これを読めば日々の業界の動きは分かる。記者は重宝している。舌を巻くほど要領よくまとめられている記事もある。
Webについて。日刊不動産経済通信は有料だから見出ししか読めないが、住宅新報も週刊住宅もお粗末極まりない(なかった)。毎日更新はされているが、掲載されるのは、業界でいうゴミ記事ばかりだ。ゴミ記事を掲載することで週刊紙購読に結びつけようという狙いだろうが、これは逆効果だ。一部でいいから重要な記事を配信するとか、サマリから有料購読につなげるような工夫をすべきだろう。
わが国と単純比較できないが、ニューヨーク・タイムズ(NYT)の電子版有料購読者数が今年1月からの3カ月間で30.8万件増加し、191万件に達したと報じられた。わが国の日経新聞の日経電子版有料会員数は公称50万人。紙媒体との融合に一定の成果をあげている。Webを活用しないと業界紙も生き残れない。充実させれば新たな読者を開拓できるのではないか。
業界紙の取材先であるデベロッパーやハウスメーカーのほとんどはBtoC企業だ。企業が業界紙に求めるのはもちろん他社の動向だが、同時に消費者のニーズはどこにあるのか潜んでいるか、将来はどうなるかのヒントとなる情報だ。いわば業界紙の役割は企業と消費者を結びつける橋渡しだと思う。世の中の「風と流れ」を活写し伝えることだ。この役割を果たすためには担当分野についての専門知識を習得するのはもちろんだが、消費者の視点からものごとを見る姿勢が欠かせない。企業目線と消費者目線はときとして衝突する。その緩衝材としての役割も大きい。
デザイン、レイアウトについても一言。日経新聞が今年3月、日曜日に16ページの「NIKKEI The Style」の連載を開始した。用紙に高級白色紙を使用し、カラー写真やグラフィックをふんだんに盛り込んでいるのが特徴だ。
記者はこの「NIKKEI The Style」に驚愕した。日経の読者からは株式の情報が少なくなったという声が聞かれるが、同社は他の一般紙読者をターゲットにしているはずだ。
一般紙ですら紙面刷新に真剣にとりくんでいるのにわが業界紙は20年も30年も昔のデザイン、レイアウトを踏襲している。ここで細々したことは書かないが、全国紙といういい見本がある。見習ってほしい。
「住宅新報」1紙になったのだから、同紙には「週刊住宅」の分まで頑張っていただきたい。「このほど」などといつの風やら流れかわからない記事を書いていたら、そのうちにどぶに捨てられる。
流れに乗れず逆らえず 記者は病葉か 「週刊住宅」破たんに思う(2017/5/9)
「週刊住宅」破たん わたしはこう考える ④(建築家)(2017/5/9)
週刊住宅」破たん わたしはこう考える ③(不動産流通会社広報担当)(2017/5/8)

