標準規約からマンションコミュニティ条項が消える? 第10回「管理ルール検討会」
国交通省は2月26日、第10回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)を開き、主な論点とその検討の方向性について話し合った。あと1回くらいの会合を開き、最終的な考えが示される模様だ。
同省から示された案によると、最大の論点である「第三者管理方式」については、「随時必要に応じて、外部の専門家に管理運営の執行権限を与え、区分所有者がそれを監視するという管理方式に移行できるよう、専門家を活用した多様な管理方式の類型を用意していく必要性があるのではないか」とし、「理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型」など3つのパターンを提案している。
専門家については、「専門性のある資格、能力認証を持つ者に幅広く門戸が開かれていることが望ましいのでないか(マンション管理士や理業務主任者に加え、例えば、弁護士、司法書士、建築士、マンション管理会社OB、企業法務担当経験者など)」としている。
また、専門家や理事会の役員についての報酬についても言及しており、「マンション全体の管理の適切なあり方を大所高所から検討し執行する役割を担う者であることから、役員がその個人的資質、能力を発揮してマンションの管理に寄与するものであれば、その点を考慮して報酬を支払うことも考えられる」として、役員や専門家に対して正当な報酬を支払ってもいいという方向性を示した。
しかし、その一方で、「役員としての不適格者の排除を確実、迅速に行なうことができるよう…役員の欠格要件の規定を設けることが適切」といった意見もあるとしている。その際の「利益相反取引」の要件などを具体的に示し、外部監査などのチェック機能が必要としている。
もう一つの論点である管理組合と自治会の関係、コミュニティ活動については、「管理費からの支出をめぐる意見の対立・内紛(合意形成阻害)や訴訟等の法的リスクを回避し、適正な管理、自治会活動を図る観点から、マンション管理と自治会活動の関係、特に自治会費の徴収方法の改善策を提示すべきではないか」とし、「標準管理規約第27条(管理費)」及び32条(業務)から、『地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成』という規定は削除してはどうか」としている。
さらに、「管理費の支出は、区分所有の対象となる建物並びにその敷地及び付属施設の管理という目的の範囲内で認められるという基本的な考えを示すことが適切ではないか」という声も盛り込まれている。
これに関連する声として、「会議での飲食については、議論や決議、ひいては管理の質を向上させるために必要か疑義があるものが多い(飲食が役員への対価、即ち報酬の代わりであるとしているマンションもあるが、今後報酬を払う場合も考えれば、ますます飲食の必要性は無くなってくる)」と、会議や様々なイベントでの飲食についても問題を提起している。
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第9回が行われたのが2012年8月29日だから、2年6カ月ぶりに開かれた。記者はこの日、他の取材があり会合を傍聴できなかった。どうしてこれほどの空白があったのか会合で釈明があったかどうか知らない。会合後の同省の担当者からも明快な答えは得られなかった。
記者の勝手な推測だが、検討会はコミュニティの評価、管理組合と自治会の役割などについて論議が紛糾し収拾がつかない事態となり、みんな頭を冷やそうということになったのではなかったのか。さらに言えば、検討会は空中分解し、そのままうやむやに済まされるのではないかとさえ思っていた。それほど真っ向から委員間の意見が対立していた。
それでも第10回目の会合を開くのは、お互いの主張を認め、この種の会合の答申にありがちな〝玉虫色〟の両論併記のあたりさわりのないものにまとめるためではないかと思った。
ところが、あにはからんや。甘かった。「悪法もまた法なり」だ。示された案は現行の区分所有法を楯にほとんど全てコミュニティを否定する内容となった。
過去にも書いたが、確かに区分所有法とコミュニティはなじまない。法はコミュニティなどまったく想定していない。コミュニティを多とする側は標準管理規約を唯一の拠りどころとしてきたが、やはり無理がある。理論武装が足りない。法の改正を迫るべきだった。
ここを衝かれた。しかし、それにしても法を振りかざす委員は、ようやくコミュニティや「絆」を真剣に考えるようになってきたデベロッパー、管理会社、マンション管理組合に冷水を浴びせかけるようなことをよくもやったものだ。記者はこの日2月26日は「マンションコミュニティが死んだ日」として忘れまい。マンション600万戸の居住者のみなさんも、管理組合とはそのようなものだということをしっかり認識すべきだ。
もう腹立ち紛れだ。案は役員を「マンション全体の管理の適切なあり方を大所高所から検討し執行する役割を担う者であることから、役員がその個人的資質、能力を発揮してマンションの管理に寄与するもの」と規定している。それができないから第三者管理方式が提示されたのだ。つまり、自らの財産の管理を行う能力、資格に欠けるマンションが多いというのだ。あろうことか、会議での飲食についても疑義があるとされた。
記者もマンション居住者だし理事の経験もある。組合員も理事も役割は「ひとりがみんなのために、みんなはひとりのために」が基本だ。少ない予算で様々なイベントや会議を行い、その後の発泡酒と乾きものの慰労会に疑義を挟まれたら、それこそ「理事などやってられない」になるのではないか。
「大所高所」…結構な言葉だ。しかし、多くの組合はそれぞれの知見を持ち合い懸命に努力してマンションの価値を維持しようと頑張っている。なんだか600万戸の居住者みんなが大所高所から判断する能力、資質に欠けていると言われているようで無性に腹が立つ。役員の「欠格要件」などを提示されたら、みんな理事になることをしり込みするはずだ。どこから「欠格者」の矢が飛んでくるかわからない。
適格者になれるのは、酒も飲まないタバコも吸わない(最近のマンションは共用部分での喫煙を禁止しているものが多い)ヒットラーのような独裁者しかいないのではないか。
「検討会」はやりたがらない理事を益々難しいものにし、その仕事を専門家に独占させるような管理を目論んでいるのではないか。
議決権割合を土地持分割合ではなく、価値割合つまり眺望、日照、方角などを加味した高額住居居住者の権利を土地持分割合に付加してはどうかという暴論も出るくらいだから、不公平を増大させ、格差社会をより進めようとしているとも受け取れる。
迷走する「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(2012/8/29)
軌道に乗るアクティブシニア向け「スマートコミュニティ稲毛」
「スマートコミュニティ稲毛」
11.4haにマンション771戸とクラブハウス、グラウンド
スマートコミュニティ(千葉市稲毛区、染野正道社長)は2月25日、アクティブシニア向けの所有権付きマンションと会員制クラブハウス利用権をセットにした「スマートコミュニティ稲毛」の記者発表会&内覧会を行なった。5年前から開発を行なっているもので、マンションは全5棟771戸の規模で、隣接する延べ床面積約34,000㎡のクラブハウスやゴルフ練習場、テニスコートなどを備えた約74,000㎡のグラウンドが利用できる。戸数は計画中も含め1,200戸くらいまで増やす計画だ。
マンションは、JR総武線稲毛駅からバス18分徒歩2分、千葉市稲毛区長沼町に位置する敷地面積約22,000㎡、4~14階建てA~E棟全771戸。今回竣工したD棟(103戸)とE棟(41戸)の専有面積は28.81~76.48㎡、価格は29㎡のタイプが1,890万~、76㎡のタイプが3,830万円~。施工は鵜沢建設。50歳以上の健常者が購入条件。
管理については、「管理者管理方式」を採用しており、同社の子会社が管理受託者となりマンション管理会社と委託契約を結んでいる。第三者管理方式に近いものだろう。
クラブハウスは、商業施設イトーヨーカ堂をリノベーションしたもので4階建延べ床面積約34,000㎡。敷地面積約74,000㎡のグラウンド付き。レストラン、カフェ&バーラウンジ、フィットネスルーム、音楽スタジオ、カラオケルーム、アトリエ、ダンスホール、テニス、ゴルフ練習場などが利用できる。毎日行なわれるアクティビティメニューは数十にのぼる。初期費用は入会金、私設利用権が1人入居の場合190万円、2人入居の場合285万円。月額費用はコミュニティサービス費と朝・夕の食事費込みで1人利用が84,763円、2人利用が160,002円。
具合の悪いときは部屋まで食事の宅配を行なうほか、日常の安否確認、看護士の常駐、協力医院との連携、マンションとクラブハウスとの送迎バスなどのサービスも受けられる。
マンションの敷地は大地主の屋敷跡地。築300年以上の屋敷などがあったという。地主がイトーヨーカ堂を誘致して事業を始め失敗、屋敷を手放さざるを得なくなり同社が取得。イトーヨーカ堂の店舗も「格安」で取得しクラブハウスにリノベーションしたという。
染野社長
発表会に臨んだ染野社長は、「アメリカで人気になっているリタイア後の高齢者が健康なうちに入居し、終身で過ごすことができるCCRCを学んでわが国に生かそうと考えたのが事業のきっかけ。月額9万円の年金の範囲内で安心・安全の生活を楽しめるというのがコンセプト。5年前に始めたころは苦労したが、最近は順調に推移しており、会員数は600人になっている。クラブハウスの運営の損益分岐点は800戸くらいと考えており、隣接地でF棟103戸の分譲を始めるのをはじめ、G棟も計画中で、当面1,200戸くらいまで増やす。もう少し規模の小さいプロジェクトもやっていきたい。住民一人が年間200万円くらいを消費すると考えられ、1エリア1,000人として年間20億円が地元に還元でき、高齢者コストも大幅に削減できる」などと話した。
会員の属性は女性:男性比が58:42、単身:2人比が74:26、平均年齢が71歳。前居住地は都内と千葉県が各30%、その他首都圏が40%。永住希望が多いという。要介護者は現在13人。
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マンションとクラブハウス、グラウンドの合計敷地面積は約11.4ha。そのスケールの大きさに驚いた。他に事例がなく、ましてやリーマンショック後だ。事業を始めた同社・宮本雅史会長に信用力と資金力がないとできないことだと思った。よくぞここまでやってこられたものだ。年間100戸を上回る分譲スピードは、こういった高齢者専用分譲マンションのニーズが確実にあることをうかがわせる。
マンションは分譲当初、坪100万円くらいで始め、最近は坪130万円台で、今後は建築費の上昇の影響から坪165万円前後になるという。単価そのものは相場より高めだが、一般的な分譲マンションと単純な比較はできない。各住棟にはほとんど共用施設がなく、設備仕様も高くはないが、クラブハウスの利用権とセットで考える必要がある。今年1月に見学したフージャースコーポレーション「デュオセーヌつくばみらい」も坪170万円で販売は好調に推移している。
85歳のご主人と84歳の奥さんが楽しそうに焼き物を楽しんでいた。図書コーナーには入居者からの寄贈による図書約6,000冊が収められていた。貸し出し簿などへの記入も必要ない。これらの価値はマンション単価で測れない。
クラブハウス内
図書コーナー
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課題もありそうだ。入居者の高齢化に伴う重度要介護入居者の増加や死亡に伴う退去の増加だ。そうなった場合の中古市場での評価はどうなるのか。
染野社長は「クラブハウスなどの利用権付きなどを考えれば、一般的なマンションより評価は高くなるのでは。要介護の入居者には訪問介護などのケア事業も考えている」と話したが、ビジネスモデルの完成にはもう少し時間が必要かもしれない。
85歳のご主人の素焼きの作品(左)とご夫婦の合作(バイオリンがご主人の焼き物の、花は84歳の奥さんの粘土の作品)
根づくかシニア向け分譲マンション 「デュオセーヌつくばみらい」(2015/1/26)
ポラス 「第28回技能グランプリ」 大工部門で出場3選手全員が入賞
左から入賞した馬場氏、東吉氏、小林氏
ポラスグループは2月23日、特級、1級及び単一等級の技能者がその熟練の技を競う「第28回技能グランプリ」の大工部門で、同社グループのポラスハウジング協同組合から参加した東吉雄一氏が第2位を、小林保博氏と馬場和樹氏が敢闘賞を受賞し、参加した3名全員が入賞したと発表した。
今回の第28回大会は2月20日から23日の4日間、全28職種から444名が参加。大工部門では41名が参加。優勝1名、第2位3名、第3位3名、敢闘賞7名がそれぞれ表彰された。
ポラスグループの入賞は第25回から今回の第28回まで4大会連続。
東急リバブル 新規出店加速 今年度11店舗目の「久が原」「武蔵浦和」
東急リバブルは2月23日、売買仲介店舗「久が原センター」(東京都大田区)、「武蔵浦和センター」(埼玉県さいたま市)の2店舗を3月1日(日)に開設すると発表した。
今回の出店により、今年度の売買仲介店舗新規出店数は11店舗となり、売買仲介と賃貸仲介をあわせた全国のリバブルネットワークは157カ所となる。
新規出店は多かった昨年の12店舗に迫る勢い。出店スピードは最近の三井不動産リアルティ、住友不動産販売を上回る。
三菱地所レジ他「西新宿タワー60」 第1期325戸 平均2.19倍で即日完売
三菱地所レジデンス、相鉄不動産、丸紅は2月23日、「ザ・パークハウス西新宿タワー60」(全954戸)の第1期325戸の登録申込を2月22日に締め切り、最高14倍、平均2.19倍で即日完売したと発表した。2014年10月のモデルルーム事前案内会開始以降、2,000件超の来場があった。
第1期の価格は3,198万~35,000万円(最多価格帯6,100 万円台)、専有面積33.90~156.99㎡。登録総数は7,474件。
登録者の年齢は40 歳代(25%)、50 歳代(25%)が中心。居住地は新宿区(19.4%)、その他23 区内が中心。家族数の最多は2 人家族(36.4%)。
バブルだ!中古が新築を上回る 三井レジ「パークリュクス銀座mono」
「パークリュクス銀座mono」完成予想図
「春が来た」というより「春爛漫」のこの日2月23日、「バブリー」というより「バブル」そのもののマンションを見学した。三井不動産レジデンシャルが今週末28日に抽選分譲する「パークリュクス銀座mono」だ。場所は「銀座八丁目」、坪単価は415万円だが、単身居住にキャピタルゲインを狙う投資用にと申し込みが殺到しており、第1期55戸は即日完売の可能性が高い。
物件は、東京メトロ銀座線・日比谷線・丸の内線銀座駅から徒歩10分(都営大江戸線築地市場駅から徒歩3分)、中央区銀座8丁目に位置する13階建て70戸。第1期(55戸)の専有面積は25.23~43.40㎡、価格は3,188万~5,358万円(最多価格帯3300万円台)、坪単価415万円。入居予定は平成28年6月下旬。施工は松井建設。
2月21日から申し込みが始まっており、締め切りは2月28日。ほとんどの住戸に申し込み、あるいは申し込み希望が入っている。抽選は28日。
現地は、ビル、マンションなどが建ち並ぶ一角。元駐車場。近くには三井ガーデンホテル、東京吉兆、竹葉亭などがあり、築地市場へも徒歩5分。
住居は北西向き。2・3階のメゾネット72㎡を除きすべてがコンパクトタイプ。
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坪単価415万円と聞いて、「高いがこんなものだろうと」と納得もした。2、3年前だったら坪350万円でも高いと思うが、もう銀座、日本橋では坪400万円以下はあり得ない。
それより、どんな人が購入するのだろうと思った。案の定というか、投資狙いの顧客が殺到しているようだ。申し込み・購入希望の人の半数近くはそのような人たちだ。つまり、勝っても住んでもいいという人たちで、築地市場の再開発が決まれば値上がりするだろうからと、インカムよりキャピタル狙いの人がいるというから驚きだ。不動産のプロも買っているという。
さらに驚いたのは、銀座の中古マンションの相場が450万円になっているというのだ。外国人が投資用に古いビルやマンションを買いあさっているのが相場を引き上げている要因のようで、同社のマンションは中古相場より安いのが人気を呼んでいる要因の一つだ。賃貸でも表面利回りで5%弱が期待できるという。
販売担当者も「北西向きですから日照も、採光も眺望も期待できませんとはっきり説明している。一挙に70戸売らないのは、契約がおっつかないから」とのことだった。同社は隣接地で10階建て50戸の建築確認も取っているが、分譲するか一括で売却するかは未定だ。
野村不動産が近くモデルルームをオープンする「プラウド日本橋三越前」には事前の問い合わせが殺到しているようで、物件ホームページには「ご予約無しでご見学頂けますが、大変な混雑が予想される為、個別のご案内が出来ない場合がございます。また、混雑の状況次第では、入場制限をさせて頂く場合がございます。予めご了承下さい」とある。
都心部のマンションはいよいよ狂乱の様相を呈してきた。「いつか来た道」だ。こういう記事がまたバブルをあおるのだろう。
「オハナ」との競合はプラスに サンケイビル他「ルフォンソレイユ船橋美し学園」
「ルフォンソレイユ船橋美し学園」完成予想図
サンケイビルと阪急不動産が共同で分譲中の「ルフォンソレイユ船橋美し学園」を見学した。建築費の上昇で郊外部もどんどん分譲価格が上がってきている中で、このマンションは坪140万円。今後供給される物件は150万円を突破するのは確実で、その意味で割安感がある。販売も堅調とみた。
物件は、東葉高速鉄道船橋日大前駅から徒歩4分、千葉県船橋市坪井東3丁目に位置する7階建て全186戸。専有面積は70.02~90.10㎡、3月に分譲予定の第2期(戸数未定)の予定価格は2,568万~4,428万円(最多価格帯3,300万円台)、坪単価は140万円。竣工予定は平成27年8月下旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は三井不動産レジデンシャル。昨年11月から第1期74戸が供給済み。
建設地は、UR都市機構が開発した「船橋美し学園 芽吹の杜」(65.4ha、計画人口7200人)の一角に位置しており、すぐそばにはビオトープ化されたせせらぎ「坪井せせらぎの道」が流れ、良好な住環境が形成されている。
建物はコの字型に配置されており、南向き中心に平均76㎡のファミリー向けが中心。ミキハウス子育て総研の認定を受けている。
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東葉高速鉄道沿線の取材は、開業した平成8年前後から行っており、一つ隣駅の「八千代緑が丘」は数回訪ねている。分譲戸建てが1億円を超えても売れていた時期があった。
ところが、この「船橋日大前」駅は降り立ったことがない。街開きからまだ8年しか経過していないそうで、やはり開発途上という印象はぬぐえない。それでも駅前には281戸の大型マンションが建ち、一戸建ては駅周辺に数百戸は建っていそうだった。
今回取材したマンションは戸数が多いが、単価は間違いなく割安感がある。これから分譲される千葉や埼玉県の新築は最低でも坪150万円以上になるのではないか。
そのモノサシになりそうなのが、「北習志野」駅圏の野村不動産「オハナ北習志野」(241戸)だ。駅から徒歩13分とややあるが、いったいいくらで供給するのか。圧倒的な人気を呼んだ「プラウド船橋」(1,497戸)よりは安くなるような気はするが…。
双方で400戸を超える。競合するのは間違いないが、それだけ注目度も高まる。過去の事例もそうであるように、競合は相乗効果となってプラスに作用するのではないか。日本橋、大手町まで電車に乗れば30分圏だ。三井と野村の販売合戦もみものだ。
野村不動産 「新宿野村ビル」に日本初の制振装置
野村不動産、野村不動産オフィスファンド投資法人、竹中工務店の3社は2月19日、「新宿野村ビル」で日本初の制振装置「デュアルTMD-NT」を建物52、53階部分にあたる屋内に設置し、超高層建物における長周期地震動発生時の揺れを大幅に軽減すると発表した。設計・施工は竹中工務店。2015年1月に着工し2016年9月に竣工の予定。
TMD(Tuned Mass Damper=チューンド・マス・ダンパー)」は、建物の揺れと逆方向に動くおもりを用いて、建物の揺れを抑制する装置。建物の揺れ時間が半減し、揺れ幅も大幅に低減するほか、居室内の工事は行わないため専有面積を損なわず、工事中の事故などの危険性も大幅に削減できるという。
「新宿野村ビル」は1978年に竣工した大臣認定を取得している超高層ビル。現時点でも十分な耐震性能を有しているが、東日本大震災により長周期地震動に対する対応が問われていることから、今回の工事に踏み切ったという。
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同じような工事は三井不動産が「新宿三井ビル」で鹿島建設の施工により行っているが、三井不は錘を天井から吊るす方式であるのに対し、野村不はレールの上に錘を載せる方式を採用する。理屈は同じだが、技術が異なることから双方が日本初ということのようだ。
三井新宿ビル 重さ1,800t、マンション52戸分の制振装置一部完成(2014/9/2)
三菱地所レジ「Reビル事業」 第3号は〝リビングのようなオフィス〟
「ザ・パークレックス小網町ビル」
無縁なものが融けあうオフィス・街へ オープン・エー馬場氏
三菱地所レジデンスは2月19日、中小ビルを再生する「Reビル事業」の第3号物件「ザ・パークレックス小網町ビル」のリノベーションが完了したのに伴い記者見学会を行った。
Reビル事業は、築年数の経過などにより競争力が低下し、継続的運営が困難となっている中小事務所ビルを一括賃借。子会社であるメックecoライフやリノベーション物件サイトのパイオニア「東京R不動産」との連携により耐震補強やリノベーション工事を行い再生し、賃貸物件として供給するもの。
同社がビル事業などを行っている「大・丸・有」の周辺エリアをターゲットにしており、事業を通じて新築マンション事業や再開発事業にもつなげる狙いがある。
ビルオーナーなどの意向もあるが、おおよそマスターリースは8年間、3カ月くらいで耐震・バリューアップ工事を施し、投資資金は4年くらいで回収する計画。利回りは約20%を見込む。今後3年間で15棟、5年間で30棟の規模を目指し、既存ストックの有効活用という社会的要請にも応える。
「ザ・パークレックス小網町ビル」は中央区日本橋小網町に位置する築42年の8階建て延べ床面積約1,176㎡。用途は店舗・事務所。“Workspace as Living room”をテーマに「キッチンフロア」「リビングフロア」「サンルームフロア」の異なる仕様の3フロアを用意し、「暮らすように働くオフィス空間」を提案している。
1階 ビフォー(左)とアフター
3階ビフォー(左)とアフター
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「Reビル事業」は第1号物件で見学しているので、事業の意図はよく分かる。同社グループ全体から見れば微々たるものだが、やがて大輪を咲かせるかもしれない。無限の可能性を秘めていると思う。
この日は、東京R不動産の共同創設者でオープン・エー代表取締役・馬場正尊氏の話を興味深く聞いた。
馬場氏は、グーグルなどアメリカ西海岸のビルの新潮流について、「オフィスの中に自転車通勤者用の自転車置き場があったり、遊園地や公園のようなものもあったりで、それぞれ無縁だったものが融けあう空間が増えている」などと話した。
今回のリノベーションでも「居住することと仕事をすることの垣根を取った。このようなオフィスに対する中小企業やベンチャー、クリエイティブ企業の潜在的なニーズは間違いなくある」などと話した。
馬場氏
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記者も馬場氏の考えに同感だ。会社のオフィス環境がどうなっているのか知らないが、おそらく喫煙、離席、私語は厳禁。休憩中も退社後も「他社の人と話すな」などと秘密結社のように管理されている会社もあるはずだ。
もちろん業種によってはそのような拘束も必要だろうが、新しいアイデア、発想はもっと自由な雰囲気でこそ生まれる。記者は昔からそうだが、机に向かって考えるというより、休みながら煙草を吸いながら酒を飲みながら、つまり四六時中考える。〝九時五時〟で働いている感覚はまったくない。7~8時間、ぶっ続けで野球の取材はできるが、1時間以上机に座ってなどいられない。
東京R不動産のような会社が既成概念をぶち壊してほしい。考えてみれば、昔の会社はどこからどこまでが仕事で勤務外などといった垣根はなかった。お茶を飲むふりをしてお酒を飲んでいた人も少なくないはずだ。動き回らなければ新鮮な情報などつかめなかった。
15万円/坪の耐震補強・リノベ費用で賃料50%アップ地所レジ中小ビルリノベ事業(2014/5/29)
目の前が公園 災害時は地域の避難場所に 日土地「荻窪天沼」全戸申し込み
「ソアラノーム荻窪天沼」
日本土地建物が先に竣工させた高級賃貸マンション「ソアラノーム荻窪天沼」を見学した。さすが日土地、最高の賃貸マンションだ。
物件は、JR中央線荻窪駅から徒歩7分、杉並区天沼3丁目に位置する5階建て全89戸。専用面積は44.82~71.25㎡、賃料は140,000~207,000円(平均1万円/坪)。設計は三菱地所設計。施工は戸田建設。賃貸運営は東急リロケーション。
敷地は元勧業銀行社宅があったところ。戦後しばらくは幹部用の木造住宅が建っていたという住宅街の一角。
目の前は、1955年から1970年頃までは料亭「天沼池畔亭」もあった西武鉄道グループの元オーナー堤義明氏が所有していた「天沼弁天池公園」。2007年に杉並区に売却され、現在の公園になっている。
建物は、昔の歴史、文化を継承するため木調の縦格子を多用、災害時には地域住民の避難場所としても利用できるよう共用部分を開放する。
家賃はエリアの相場のようだが、昨年12月からリーシングを開始し、竣工までにすべて申し込みが入った。
エントランス
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同社からニュースリリースが送付されてきたので、そのままリライトして記事にする選択肢もあった。しかし、平面図を見ると南西向きの2棟が雁行する形で配され、中庭も設置されていた。設計は三菱地所設計だ。コンセプトは「AMANUMA PARK TERRACE~緑と共に暮らす」。
ぴんと響くものがあった。日土地の戸建てやマンション、ビルは30年以上前から取材している。多くというよりほとんどの銀行・証券系デベロッパーはバブル崩壊後に破たんしたが、同社は見事に乗り切った。バブルに浮かれなかったのが生き残った最大の要因だろうと思う。
当時、同社は大規模戸建てを継続して分譲していた。同業他社は1団地で年間数百戸を供給したのに、同社はせいぜい数十戸しか供給しなかった。もちろん毎回即日完売した。売れるのにどうして多く供給しないのだろうと不思議に思ったものだが、大量供給していたら間違いなく今はない。バブル崩壊後も同じようにコンスタントに供給し即日完売した団地はそうないはずだ。
そんな会社がありきたりの賃貸マンションの竣工にあわせてわざわざわざわざニュースをリリースするわけがないと読んだ。
そこで、同社広報に電話して現地見学となったわけだが、みぞれ交じりの冷たい雨が降る中、現地について驚愕した。目の前はいかにも歴史を感じさせる公園があった。その公園に向き合うように建物が建っていた。縦格子が見事に公園と調和していた。同社は資産として残すために賃貸にしたようだ。
エントランス・ラウンジは2層分。随所に本物の石が用いられていた。災害時には地域の住民が避難できるよう開放するという。LPガスを熱源とするLPG対応キッチンを備え、共用部は非常用発電で3日間電力を供給し、マンホールトイレも設置した。中庭にはデッキを敷き詰め、各住戸の門扉はアルミ製だが、ロートアイアンを思わせるよう工夫が凝らされていた。
共用部を地域住民に開放することにしたのは、現地で説明を受けた同社住宅事業部部長・野田久登氏の経験も生かした。野田氏は3.11のとき仙台に出張で帰って来られなかったそうで、それが商品企画のヒントなった。「マンションで防災対策を完結させるようプランニングしました。見学のとき、若いお客さんがまず目の前の公園を見てにっこりされ、建物や中庭を見て驚かれた。その笑顔がとても嬉しかった」と野田氏は話した。
記者もこれが嬉しかったのだが、野田氏は記者の拙い記事をいつも読んでくださっているようで、これもまた嬉しかった。
やはり現地取材に限る。寒さが吹っ飛んだ。
ラウンジ
公園から見たマンション(手前はクスの大木)
公園の弁天池(今は人工)と料亭の名残を残す山門