「三菱地所を、見にいこう。」ナイター 女優の桜庭さんが見事な始球式
桜庭さんによる始球式(これが限界。記者のカメラは数万円。プロは100万円もするレンズ付きのカメラを持っていた)
三菱地所は9月2日、TVCM「三菱地所を、見にいこう。」シリーズ新CMお披露目会と始球式を東京ドームで行われたプロ野球日本ハムVS千葉ロッテ戦で行い、女優の桜庭ななみさんが見事な始球式を演じた。試合開始前のほぼ30分間、日ハム大谷投手が登板する試合で「三菱地所を見にいこう」が球場を支配した。
桜庭さんは、2010年から同社のTVCMに出演しており、今回は新しいCM「日本全国」と「物流施設」篇の2本。
始球式では、桜庭さんは最少のエネルギーでもっとも遠くまで飛ばせる物理の法則を応用したのか、ピッチャーズマウンドから元日ハム・多田野投手も真っ青なきれいな45度角の放物線を描くボールを投げた。球は、ロッテ荻野の内角をえぐり、ワンバウンドで日ハム市川捕手のミットに吸い込まれた。西武・森なら真剣勝負でも絶対に空振りする絶妙なコントロールだった。
この投球に心を奪われたか動揺したのか、この日先発した日ハム大谷投手はいきなり四球を与え、次打者・角中に2ランを浴びた。試合は結局、ロッテが4-2で勝利。大谷は6回3失点でマウンドを降り、4度目の敗戦投手。
観衆は、大谷効果か桜庭効果か、はたまた三菱地所の底力か分からないが、前日より1万人近く多い約3.1万人だった。
イベントでは、同社が招待した子どもたち約100名によるベースランニング、「三菱地所の車」から登場した桜庭さんによる新CM発表会、両監督への花束贈呈式などが行われた。
「三菱地所の車」から登場した桜庭さん
子どもたちのイベント(日ハムやヤクルトファンはいたが西武ファンはいなかった)
関係者らで記念写真
桜庭さん(プロでなくたってこれくらいの写真が撮れる。被写体がいいからですが)
三菱地所 杉山社長「広島が気になる? ダメ、ダメ、今日は日ハムの応援なんだから」
東京都 「女性が輝くまち・東京シンポジウム」に250名参加
「女性が輝くまち・東京シンポジウム」(都庁で)
東京都は8月31日、「女性が輝くまち・東京シンポジウム」を開催した。国が主催する「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」と連携して行うもので、世界的に活躍するデボラ・ギリス氏(カタリスト プレジデント兼CEO)の基調講演や、パネルディスカッションを通じて、都の今後の目指すべき方向性をさし示した。約250名が参加した。
冒頭あいさつした舛添要一都知事は、「知事に就任した時から『女性活躍』は重要な政策の一つと考えていた。5年後には東京オリンピックが開催され、内外から多くの方が集まるが、人種や性別を超えて多様性の象徴となるようレガシーとして残したい。女性活躍の機運は高まってはいるが、まだまだ不十分。いま都の女性職員比率は3人に1人で、管理職比率は15%。国や民間レベルと比べ高いほうだが、管理職比率は近い将来20%に高めたい。地域ニーズを取り込んだ保育施設も都庁内に設置することを決めた。今回の成果は東京都女性白書にも反映させる」などと語った。
デボラ・ギリス氏は、女性活躍をめぐる世界の趨勢とわが国の現状や課題について語り、「世界に先駆けて女性活躍を国の重要課題として掲げた」ことや「男性が家事労働に参加し、育児休業を取得するロールモデルも出てきている」などと、高い教育を受けているわが国の女性が活躍できる機運が高まっていることを評価し、期待した。
◇ ◆ ◇
デボラ・ギリス氏はわが国の諸外国と比べて遅れている女性活躍の現状と問題点をあげつらうのではなく、外交辞令的ではあったが過不足なく語ったと思った。残念なのは、同時通訳はされたのだが、20分の間にかなり早口で話されたので、内容をよく理解することはができなかったことだ。
都は近くホームページでシンポジウムの模様を伝えるとのことなので、そちらを是非見ていただきたい。
左からデボラ・ギリス氏、舛添氏、ワドゥワ駐日インド大使
三菱地所 東京駅前に高さ390mなど4棟68万㎡の再開発に着手
「常盤橋街区再開発プロジェクト」
三菱地所は8月31日、東京駅日本橋口前に位置する常盤橋街区で計画を進めている「常盤橋街区再開発プロジェクト」の都市計画手続きを開始したと発表した。
同事業は、東京圏の国家戦略特別区域計画の特定事業として進めているもので、東京駅周辺で最大となる敷地面積3.1ha に及ぶ大規模複合再開発。大手町連鎖型再開発プロジェクト第4 次事業として、街区内の下水ポンプ場や変電所など都心の重要インフラの機能を維持しながら10 年超の事業期間をかけて段階的に4 棟のビル開発を進める。
東京の新たなランドマークとなる高さ390mの超高層タワーや東京駅前の新たな顔となる約7,000 ㎡の大規模広場などを整備する。総延べ床面積は約680,000㎡。全体竣工は2027年度の予定。
「類まれな」レベルの高さ 野村不・三井レジ「桜上水ガーデンズ」完成
D棟屋上部分からクラブハウス、B、C棟を望む
野村不動産は8月27日、このほど建物が完成した三井不動産レジデンシャルとの共同建て替えマンション「桜上水ガーデンズ」を報道陣向けに公開した。敷地約4.7haの建て替えは23区内最大級のマンションで、全9棟が免震、既存樹を多数残したランドスケープデザイン、駐車場の地下・屋内化とその屋上緑化、〝3~5戸1〟エレベータ、天井高約2.6mの居住空間など総合的な評価では京王線のナンバー1マンションが完成したといえそうだ。
物件は、京王線桜上水駅から徒歩3分、昭和40年完成の「桜上水団地」(17棟404戸)を9棟878戸に建て替えたもので、敷地規模約4.7haの建て替えプロジェクトとしては23区最大級。6階建て14階建て全9棟を全棟免震構造にしたのも都内では例がないと思われる。事業主は同社(事業比率50%)と三井不動産レジデンシャル(同)で、野村不動産が幹事会社。事業コンサルは日建設計。設計は日建ハウジングシステム、施工は大林組・清水建設。建物の絶対高さ制限は31mだが、地区計画によって45mに緩和されている。
従前の豊かな緑を継承しているのも特徴の一つで、法定容積率200%を160%に抑えることで緑化率・空地率を高め、世田谷区の保存樹に指定されたケヤキの大木など既存高木を180本残したランドスケープデザインとしている。駐車場(476台)を地下・屋内化しその屋上を緑化している。
住戸プランでは、従前の〝2戸1〟階段を継承するため〝3~5戸1〟エレベータを設置して両面バルコニータイプを多くし、天井高約2.6mを確保した。
見学会に臨んだ同社住宅事業本部マンション建替推進部部長・岩田晋氏は、「団地の将来を考える会が発足したのは平成元年。当社と三井さんが事業協力者として参画したのが平成14年。この間、合意形成に向け、組合員の人数だけあった様々な意見を考えられないような長い時間をかけ、苦労してまとめられた地権者の方々の努力がすべて。180本というびっくりするほどの既存樹を残し、免震、地下駐車場、両面バルコニーなど、四半世紀を経て類まれなマンションに生まれ変わった。当社は完成済みも含めて16件の建て替え事業に参画しているが、老朽化マンションの再生は社会的使命」と語った。物件は竣工を待たずに完売している。
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地権者の〝持ち出し〟がない建て替えマンションとしては都心部の条件に恵まれているところはともかく、準都心・郊外ではこれが最後かもしれない。タワーマンション以外では、全棟免震の記録では、ナイスの「ヨコハマオールパークス」12棟1,424戸の例があるが、都内ではこのマンションが初めてかもしれない。
既存樹180本のうち区の保存樹木は14本。2013年に竣工した大成有楽不動産「芦花公園」の保存樹木は10数本。残念ながら正確には何本だったかは当時取材できなかったのだが、「数本」というのは普通は5~6本だろうが、3~4本をいう場合もある。果たして多いのは今回の「桜上水」か「芦花公園」か。規模が小さいので、密度としては「芦花公園」に軍配はあがるがどうだろう。保存樹木に指定されると、剪定など維持管理に補助が出るはずだ。
「桜上水ガーデンズ」エントランス部分
クラブハウス前から
クラブハウス屋上のテラス・ガーデン(手前はヨーロッパから取り寄せたという日本に1台しかない卓球台)
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岩田氏が「類まれな」と形容したが、これは〝誇大広告〟でも大げさな表現ではない。記者も心底からそう思った。と同時に、想像をはるかに超えるレベルの高さに、記者のイマジネーションの貧しさに頭をどやされたような、穴があったら入りたいくらいの恥ずかしさを覚えた。
このマンションについては、分譲開始前に記者発表会が行われており記事にした。
その記事を読んでいただきたいのだが、記者も当時の記事を読み返した。特徴は過不足なく、つまりニュースリリースに盛り込まれていることは紹介できていると思う。
しかし、当時、記者は坪単価330万円というのはかなり高いと考えた。そこで、「単価設定について『高くないか』と質問した。当時の同社広報部長・北井大介氏は『マンションの価値は単価だけではない。二度と出ない立地で、免震や緑化も図った。最上級のマンションで、価格は妥当と考える。お客さまにも評価されるはず』と答えた」と書いている。北井氏の仰る通りだが、それでもずっと今日の見学会まで「高い」と思っていた。
そして今日、完成した建物をみた。最初にエントランス部分の差し渡し1mくらいありそうな世田谷区の保存樹に指定されているケヤキの大木が目に飛び込んできた。舗道は本物の石が採用されていた。これには度肝を抜かされた。
記者は京王線に長く住んでおり、主だったマンションはそれなりに見てきているから言えるのだが、総合的な評価は、このマンションが間違いなく京王線ナンバー1と確信を持って言える。(井の頭線には三井不動産レジデンシャル「パークシティ浜田山」があるが)
問題は、分譲開始前の記者発表会でどうして「最上級のマンションになる」という確信が持てなかったのかということだ。過ちを犯した最大の原因は、「高い」という先入観が先走り、物件を総合的に評価しなかったことだ。駐車場地下化、3~5戸1エレベータ、日建設計、既存樹180本などの価値を過小評価したことだ。
もう一つ、これは言い訳になるのだが、記者は年間100件くらいのマンションの取材を行っている。その多くは分譲開始前や分譲中で、せいぜいモデルルームを見たりニュースリリースを読んだりして商品企画の良否などを判断する。その判断はそれほど間違っていないと思う。
ところが、完成後のマンションを見学するのは年間で20件あるかどうかだ。デベロッパーが竣工見学会をあまりやらないからだ。売れるか売れないか、高いか安いかの判断はできても、実際にどのような建物になるか分からない-これが記者の決定的な欠点、弱点、泣きどころだ。
さらに言わせていただければ、これはデベロッパーにもその責任の一端がある。販売時に見学会を行っても完成後の見学会はあまりやらない。ここに問題がある。記者を育てる意味でも各社はどんどん竣工見学会をやるべきだ。実際のものをみないとその良否はわからない。最近見学会を行ったコスモスイニシア「武蔵新城」、大京「港北ニュータウン」も素晴らしかった。
駐車場の屋上を緑化した「スクエアガーデン」
既存の大谷石や銘板を配した「ビンテージガーデン」
「スムストックの認知度と販売士がカギ」 優良ストック住宅協議会・和田会長
和田会長
ハウスメーカー10社とその流通グループで構成される「優良ストック住宅協議会」が8月26日、記者会見を開き、同協議会会長・和田勇氏(積水ハウス会長兼CEO)は、建物と土地の総額表示で、築20年を経過すると建物の価値がほとんどゼロになる現在の中古住宅の査定方法を改め、土地と建物価格を分離評価して、良質なものが適正に評価される仕組みを構築しなければならないと語った。
現在、国は諸外国と比較して大きく立ち遅れている中古住宅・リフォーム市場規模を2010年時点の10兆円から2020年には20兆円に倍増させる目標を掲げており、木造戸建ては築後20~25年で住宅の市場価値がゼロとなるような取り扱いを改め、住宅の使用価値を適切に評価する方法と評価の根拠となるデータを整理する必要があるとし、その他インスペクション、リフォーム一体型ローンのあり方などを検討している。
同協議会は7年も前から土地と建物を分離評価するなど独自の価格査定方法を採用し、実績を積み上げてきた。今回の会見は、国の動きを加速させ、ハウスメーカーの戸建ては築年数が経過しても市場で適正に評価されていることをアピールする狙いがある。
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「優良ストック住宅推進協議会」が発足したのは7年前の2008年。任意団体が「優良ストック」として認定するのはいかがなものかと記者は思ったが、趣旨には大賛成だった。しかし、いかんせん10社の流通部門が束になってかかっても大手流通会社1社の営業網にかなわないし、発足当時の各社の足並みはそろっていなかった。
その後、どうなるのだろうと静観していたが、このところ中古住宅流通の市場拡大・活性化が大きなテーマになり、中古査定の見直し機運が高まるにつれ、「スムストック」が俄然注目を浴びるようになってきた。
築20年で建物の価格がゼロになり、建物と土地の価格をひっくるめて総額表示する従来の査定方法でなく、建物と土地を分け、しかも建物は構造躯体のスケルトン(S)の耐用年数を50年、設備仕様のインフィル(I)を15年として分離査定し、価格査定により透明性を持たせたのは業界に大きなインパクトを与えた。
協議会のデータによると、一般的な木造住宅の査定価格は築20年以降ではゼロになるのに対し、スムストックは築31年以降でも273万円で成約しており、21年以降の平均建物価格は517万円となっている。
いいものが評価される時代の流れと、協議会がスムストックの普及に力を入れてきた結果、価格を査定し営業も行う「スムストック住宅販売士」は2013年の1,986名から2014年には3,023名へと52%も増加した。
成約件数も飛躍的に伸びている。10社の戸建てストックは約353万棟あり、このうち年間約1.4万棟が流通しており、10社の流通捕捉率は前年の5.4%から2014年は9.3%の1,297棟に増加すると見込まれている。
「いつまでにスムストックを10社で1万棟(捕捉率9.3%から71.4%)に引き上げるのか」という記者団の質問に、和田会長は「そりゃ3年以内にやらなきゃいかんでしょ。10社のトップが集まって決意を約束したんだから」と語った。
1万棟に伸ばすためには倍々のスピードでないと達成できず、和田氏も強調したように「スムストック」の認知度を高め、販売士を増やすことができるかどうかがカギとなる。
和田氏の強気発言の裏には、スムストックが中古市場で適正に評価されれば新築やリフォームの受注増につながり、ハウスメーカーとその流通グループの市場での評価を高めたいという狙いがありそうだ。本気度が伝わる会見だった。
同協議会は今年7月、組織をより活性化させるため独立事務所を設置した。
「女性活躍」は待ったなし コスモスイニシア執行役員・岡村さゆり氏に聞く
岡村氏
コスモスイニシアの執行役員 内部統制室長、経営管理本部 経営企画室長・岡村さゆり氏(51)が今年4月1日付で執行役員 経営管理本部副本部長に就任した。同社の女性の役員は2012年に走内悦子氏が就任しており、現在全10名中2人が女性の執行役員になった。社外取締役・監査等委員の坂東規子氏を含めると16名の取締役・監査役・執行役員のうち3名が女性だ。
わが国の上場企業の女性役員比率は1.2%と極めて低いことはよく知られているが、不動産業界も例外ではない。大手デベロッパーには女性役員は過去も現在も一人もいない。不動産上場会社で女性役員がいるのは、役員6人のうち2人が女性のフージャースホールディングス、社外取締役に女性が一人いるヒューリック、上席執行役員に2名の女性がいるサンケイビルくらいだ。ゴールドクレストにも女性役員が1名いたが、2年前に退社している。この役員の退社の新聞辞令は発動されたが、有価証券報告書にはその情報が開示されることはなかった。これでは「男女共同参画」が泣いている。情けない限りだ。
同社は分母が小さいこともあるが、役員比率が20.0%、監査役などを含めた比率でも18.8%と極めて高い。
さて、コスモスイニシアに話を戻すと、記者は同社の40年のマンション事業を取材してきた。「女性活躍」とわざわざ男性と対比して書かなければならないほど、女性差別的な雇用を行ってきていない会社だとずっと思ってきた。自由闊達な社風があるからこそ男女差別がないからこそ、優れた商品企画が生まれるのだと思っている。今回、岡村氏にインタビューするのも、この仮説が正しいことを証明しようという試みもある。
では、同社のマンションの商品企画とはどのようなものか。創業時代にさかのぼって概観してみる。
同社の創業は1974年。当時の日本リクルートセンター(現リクルート)が環境開発として不動産業をスタートさせた。当時、リクルートは創業社長の故・江副浩正氏が強烈なカリスマ性を発揮しており、時代の寵児としてマスコミに度々登場していたこともあり、業界にも衝撃が走った。しかし、その一方で、〝素人集団に何ができる〟と冷ややかに異端児のように見るデベロッパーは少なくなかった。
しかし、記者は〝この会社はマンション業界に新風を吹き込む〟と確信していた。当時、江副氏が「三井(不動産)さんの頭脳と大京(観光)さんの足腰を見習いたい」と語ったのを鮮明に覚えている。ずいぶん欲張りな会社だなと思ったものだ。
並みのデベロッパーではないことはすぐ発揮された。〝異端ぶり〟がいかんなく発揮されたのが、「コスモ蕨」だった。1985年竣工の12階建て全150戸で、60㎡台の3LDKが中心だった。記者はその間取りに驚嘆した。マンションが分譲された昭和57年、58年当時は〝不況下の大量供給〟が続いており、マンションはさっぱり売れなかった。供給したその月内に半分も売れればよいほうだった。京浜東北線も例外ではなかった。〝死屍累々〟という言葉がぴったりのように、大量の売れ残りマンションがあった。
同社は、そのマンション不況に大胆というか不敵というか、挑戦状をたたきつけた。「蕨」は間口が約8m、奥行きも8m、つまり8×8=64㎡のほぼ正方形のプランが中心だった。当時、ルービック・キュービックが流行っていたからだろうか、同社はこのプランを〝キュービックプラン〟と呼んだ。
プランを正方形にすることで、南側にLDKと居室2室、つまり南面3室を確保するという離れ業を演じたのだ。今でもそうだが、60㎡台の3LDKといえば、間口はせいぜい6m前後で、まるで羊羹を切ったような形状の住戸が一般的だ。それが経済設計だった。その業界の常識破りのキュービックプランがユーザーに支持されたのは言うまでもない。
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あれから約40年。同社は昨年、創業40周年記念マンションとして「イニシア武蔵新城」を分譲した。まさに〝キュービック〟プランを髣髴させるものだった。40年を経過してなお同社の創業時のDNAがしっかりと継承されていることに記者はまた衝撃を受けた。このマンションについては、記者は昨年の「ベスト3」マンションの一つに選んでおり、記事にもしているので詳細はそちらを参照していただきたい。
ご存じのように、同社は業界の異端児、独立系であるがゆえに好不況の波に翻弄されても来た。
その後、リクルートコスモスに社名を変更し、株式を店頭公開し、マンション供給量で王者・大京観光(現大京)を脅かす存在となり、バブルの追い風もあり億ション市場でナンバー1の存在になった。しかし、1988年のリクルート事件あたりから雲行きが怪しくなり、バブル崩壊後は一転して事業縮小、人員整理の氷河時代へ突き落されることになる。この間、リクルートの実質的なダイエーグループ入りと離脱-外資の出資とMBOスキームを活用したリクルートグループからの独立-リーマン・ショックによる事業再生ADR手続-大和ハウスグループ入りへと波乱の歴史をたどる。2009年には社員の約半数360人の希望退職も募っている。
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岡村氏は開口一番、「わたしは1982年(昭和62年)入社。それまで環境開発の社員はリクルート採用だったのですが、独自採用するようになって2年目でした。現在もそうですが、当社には〝一生うちで頑張ります〟というような社員はあまり入社しない。元々のリクルートの社風が残っています。ですから30歳くらいから起業する人が多い。
これは社内用語なのですが、当社では、退職時に『退社』ではなく、『卒業』と表現することがあります。わたしの同期入社は200人いたのですが、現在、残っているのは8人だけです。定年退職者はまだ一人もいません。社員は貴重な人材でコストもかかっていますので、残ってほしいのですが…」と語った。
社歴40年で新卒採用者での定年退職者が一人もいない。こんな会社はほかにあるだろうか。もちろん同社は前述したように、2009年には大量の希望退職者を募集している。やむなく退社せざるを得なかった社員もたくさんいるのだろうが、同社はキャリアを踏み台にステップアップしようという野心家集団とも受け取れる雰囲気が社員にある。
話は横道にそれるが、リクルート同様、コスモスイニシアは人材養成会社でもある。不動産会社にも同社出身者がたくさんいる。フージャースホールディングスの廣岡哲也社長は岡村氏と同期のコスモスイニシア出身だし、ゴールドクレストもSOHOの草分け的な存在のスペースデザインもリクルート出身者が創業した。カフェ・カンパニーの楠本修二郎社長は、リクルートコスモスの広報担当者として在籍していた。
岡村氏の話に戻る。岡村氏は「男女差別? 全くないですね。今年の新卒採用は32人ですが、男女比は17:15。昨年も半々でした。意図的に半々にしているのではなく、男女の垣根を取っ払い、公平に採用したらこういう結果になったということです。同じ年代の学生を平等に評価すると、女性のほうがしっかりしていると採用担当者が考えた結果でしょうか」と笑った。
男女差別がない証拠に、同社にはユニークな就業形態がたくさんある。「当社はずいぶん前からフレックス制を採用しています。コアタイムもありません。朝は何時に出勤してもいいが、夜8時以降は働くのを止めようという動きが強まっていますし、『週3回は子どもを保育園に送りに行く』という男性社員もいます。水曜・木曜が定休の社員は半期に一度、その前後の日を特別休暇としたり、メモリアル休暇も取得するよう促進したりするため1万円の手当を出しています。介護や看護のための時短勤務制度もあります。また、ステップアップのための特別休暇制度はリクルート時代からの流れです」-岡村氏は次々とこれらの制度が〝当たり前〟であるかのように話した。ただし、制度だけではなく、子育て中の働き方など、まだまだ取り組み課題はあるとのこと。
こうしたワークライフバランスの取り組みは、高木嘉幸氏が平成21年に社長に就任してから加速しているようだ。「高木はオーストラリア勤務が20年くらいありまして、男女の雇用差別などないのを長く経験しているからでしょうか、差別がないのは当たり前であり、女性があらゆる仕事にコミットすべきと考えている」と、岡村氏はトップの姿勢にも言及した。
こうした取り組みは銀行にも評価された。同社は今年5月、三井住友銀行の「SMBCなでしこ融資」が実施された。これは、同行が融資実行に際し企業の女性活躍推進の取り組み状況を独自の基準で"見える化"するもので、「女性活躍が期待できるグロース企業」として認定された。同社は経営幹部の多様な人材登用、在宅勤務制度、時短勤務、フレックス勤務、有期雇用から無期雇用へ選択できる「プロ社員」制度などが評価された。これまで10社以上が「SMBCなでしこ融資」会社に選ばれている。
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岡村氏は26歳で結婚。子どもはいないが、30代で女性ばかり20人もいる部署でその職長としてマネジメントを学んでいる。「女性が20人もいると、結婚を間近に控えたり、子育ての人もいたりしますから、とにかく話をよく聞きました」-岡村さんが26歳で結婚したのはバブル崩壊の年だ。バブルの発生と終焉、その後の敗戦処理-再生に取り組んできた岡村氏には定年まで勤められて(役員定年はいくつなのだろうか)、後に続く女性(男性も含めてだが)を育ててほしい。
冒頭に書いた「商品企画が優れているのは男女差がないから」という仮説はやや我田引水だが、「武蔵新城」の例で証明されたと記者は考えている。マンションの販売現場でも女性責任者の活躍をたくさん見てきた。もう一つ、同社は新しいブランド「INITIA CLOUD(イニシアクラウド)」を立ち上げた。先日行われた記者見学会の記事も参照していただきたい。
同社のホームページの採用ページトップ写真(一升瓶をぶらさげたり、ゴルフクラブを握ったりしている女性が前面に登場している)
「女性活躍」待ったなし 不動産業界の取り組み/野村不HD・宇佐美広報部長に聞く(2015/8/17)
コスモスイニシア 新ブランド第一弾「イニシアクラウド二子玉川」公開(2015/8/25)
今年のベスト3マンション 野村・立川 三井不・三田綱町 イニシア・武蔵新城(2014/12/25)
大京 間取りや設備を選べるシステム開発「鴨居」のマンションに初導入
「ライオンズ横濱鴨居ザ・リゾーティア」完成予想図
大京は8月26日、多様化するライフスタイルに応えるため、マンション専有部の間取りや設備を選べる「WHITE CANVAS SYSTEM(ホワイトキャンバスシステム)」を開発し、「ライオンズ横濱鴨居ザ・リゾーティア」に初導入すると発表した。
同システムは、「東京ガス都市生活研究所」と協力して開発したもので、性別や年代、子どもの有無、子どもの年齢などの属性や家族構成別に様々なライフスタイルに合わせた間取りを選択し、それをベースに室内設備の仕様までカスタマイズできるようにした。6つの間取りプランと3つの収納空間、キッチンやバスルームなどの室内設備を自由に組み合わせることができる。今後、物件の特性に合わせて同システムを順次採用していく。
「ライオンズ横濱鴨居ザ・リゾーティア」は、JR横浜線鴨居駅から徒歩12分、横浜市緑区白山一丁目に位置する7階建て全99戸。専有面積は60.47~80.45㎡、価格は未定。竣工予定は2016年6月30日。
日本ホームステージング協会 「ホームステージャー1級」第一期生6名誕生
「ホームステージャー1級」合格者と日本ホームステージング協会関係者
一般社団法人日本ホームステージング協会(代表理事:杉之原冨士子氏)は8月26日、同協会の資格認定制度「ホームステージャー1級」の第一期合格証授与式を行った。
「ホームステージング」は、売却予定の自宅の資産価値を高め、より早くより高く売却するために専門のコーディネーターが家具や小物を含めたトータルコーディネートでインテリアを演出し、不動産売買のお手伝いするサービスのこと。わが国では馴染みはないが、米国では30年以上前から当たり前のように行われ、ホームステージャーという職業として活躍しているという。
同協会は、わが国でも中古住宅流通が増え、ホームステージングなしには売却できない時代が到来すると予測し、日本独自のホームステージングの普及とホームステージャー育成を目的に2013年8月設立。
「ホームステージャー」は、1日の受講と認定試験に合格した「2級」と、より専門的な知識と実践的な提案力を養う2日間の講座と認定試験に合格した「1級」があり、今回の授与式は1級合格者6名が対象。合格者3名(欠席3名)に同協会から合格証が授与された。
合格証を授与した同協会理事・野口幸恵氏は、「ホームステージングはわが国にはまだ浸透していないが、ホームステージングの活動が必要な時代は必ずやってくる。合格された第一期生の皆さんは、インテリアに特化したコーディネーターとは異なる総合プロデューサーとして活躍していただきたい」と挨拶した。
合格した小沼景氏(decora社長)は「18年前からリフォーム会社を経営しており、この資格を生かしてよりスピーディに不動産の取引ができるようにしたい」と話し、舘岡伸博氏(TSUNAGU不動産)は「新しい資格で営業マンとして売りになるものとして差別化を図っていきたい」と語った。もう一人の合格者の前田大樹氏(ポラスグループ中央住宅マインドスクェア事業部主任)は「欲しかった資格で、身が引き締まる思い。今後、不動産の価値をあげられるよう現場力、提案力を高めていきたい」と抱負を語った。
左からそれぞれ合格した前田氏、小沼氏、舘岡氏(写真右は野口氏)
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「ホームステージング」なる言葉があることすら知らなかった。似たような資格ではいずれも民間の資格制度「インテリアコーディネーター」と「インテリアプランナー」があり、前者は全国に約5.5万人、後者は約8.6千人いる。
これらの資格と「ホームステージング」が異なるのは、片付けや掃除、引っ越し・保管なども含めたトータルな「家の演出」によって売却予定の住宅の価値を高めようという点にあるようだ。
同協会の代表理事を務める杉之原氏は、引っ越しや梱包が主な業務の「サマンサネット」を経営しており、「引っ越しの際にお客さんの自宅にうかがうと、とにかく荷物が多い、遺品などの処理にも困っていらっしゃる。売却のネックにもなっている。片づけを勧めるのだが、『片付け』からのアプローチではなかなかビジネスにつなげられない。しかし、米国ではホームステージングが当たり前になっている。ここにヒントを得て、協会を立ち上げた。これから空き家が激増する。遺品整理もビジネスになる時代がやってくる。これまでとはまったく異なった視点で住環境の提案ができる人材を育てていきたい」と話した。
取材をしながら、盲点を突いたビジネスだと思った。新築だろうと中古だろうと売買の際にもっとも悩む問題の一つに収納がある。マンションの場合、ほとんどのユーザーは「収納が足りない」という不満を抱えている。
記者は、〝マンションの坪単価は200万円も300万円もするのだから、不要なものは捨てろ〟というのが持論だが、いざ自分のこととなると例えば本が捨てられない。片づけも掃除も苦手だ。
このようにどう判断していいか分からない人に、プロとして的確なアドバイスができる人というのはありがたい存在だろう。いまは遺産、遺跡、古民家、骨董・古美術、リサイクル、リユース、レトロなどが流行り言葉になっている。ホームステージングがこれらの業種と連携すれば新たなビジネスも発生するかもしれない。
東急リバブル カラーセレクトプランのシミュレーションツール開発
東急リバブルは8月25日、リノベーションマンション「L’GENTE LIBER(ルジェンテ・リベル)」で、タブレット端末を利用してカラーセレクトプランの組み合わせをシミュレーションできるアプリケーション「たてものみらいchanger」を試行導入したと発表した。
アプリケーションは、セールスビジョンが東急ホームズ監修のもと、主に中古物件を取り扱う不動産仲介会社向けに開発したもの。カメラで撮影した物件の写真をもとに、タブレット端末で、アプリ内に格納された建物の部材・建材・色調などを自由に組み合わせ、リノベーション後のイメージを手軽にシミュレーションできるツール。
同社は、現在販売中の「ルジェンテ・リベル向ヶ丘遊園」のカラーセレクトプラン用にカスタマイズし、業界に先駆けて導入した。この物件では、床と建具の色調を「ウォルナット」「ナチュラル」「ホワイト」の3種類から選べる。
コスモスイニシア 新ブランド第一弾「イニシアクラウド二子玉川」公開
「イニシアクラウド二子玉川 イースト・ウエスト」完成予想図
コスモスイニシアは8月25日、新しいマンションブランド「INITIA CLOUD(イニシアクラウド)」の第一弾「イニシアクラウド二子玉川」のモデルルーム見学会を一般公開に先駆け報道陣向けに行った。第2種低層住居に位置する41戸の規模で、5つのコンセプトと3つのテーマが盛り込まれており、ありきたりのプランに飽き飽きしているユーザーの心を捕えそうなマンションだ。分譲は10~11月の予定。
先行分譲する「イニシアクラウド二子玉川 イースト」は、東急田園都市線二子玉川駅から徒歩22分(バス7分徒歩6分)、世田谷区岡本二丁目の第2種低層住居専用地域(高さ制限12m)に位置する4階建て41戸(ウエストとあわせ2棟67戸)。専有面積は77.19~98.34㎡、価格は未定だが坪単価は約295万円の予定。竣工予定は平成28年1月下旬。施工はライト工業。
現地は、丸子川が近くに流れ、その北側には国分寺崖線が走る住宅地の一角。敷地は元果樹園で、四方が道路に囲まれている。住戸プランは西南西向きと東北東向きで、ワイドスパンの77㎡の3LDKが中心。
間取りはクランクインの玄関がほとんどで、ライフスタイルやライフステージによって間取りが変えられるのが大きな特徴。各居室はスライドウォール・引き戸を開閉することで1LDKから3LDKまで自在にレイアウトできる。
また、テーマの一つでもある「タッチ」では、リビングドアはナグリ調仕上げにしたり、床は凹凸のある木目調フローリングにしたりして、素材感や自然の肌触りが味わえるように工夫を凝らしている。キッチン、洗面所、玄関収納のカウンタートップはシーザーストーン。引き戸はソフトクローズ機能付き。
このほか、コンセプトを生かすようキッチンも含めた全居室に床暖房を設置し、ベランダのバルコニーは隔壁で仕切るのではなく独立性を確保しているのが珍しい。食洗機、リビングの物干しポールも標準装備。
LDK モデルルーム
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まず、単価。駅から距離がややあるので坪300万円はしないだろうが、280万円で果たして分譲するかと必死で頭を回転させていたが、坪295万円と聞いて落ち着くところに落ち着いたと納得した。
坪単価を300万円以下に抑える一方で、居住面積を3LDKではやや広めの77㎡を確保しているのがミソだ。グロスで7,000万円を切るような価格設定だと思う。
「INITIA CLOUD(イニシアクラウド)」のコンセプトはしっかり伝えられていると思う。間取りを自由自在に変更できるのも、木のぬくもり・優しさを感じさせる素材の採用も、ここ数年の時代の流れだ。ありきたりのプランでは満足しない層にターゲットを当てたのは正解だろう。全居室が冷暖房付きで、独立型バルコニー付きというマンションなどそうないはずだ。
ひとつだけ、主寝室くらいは独立型で遮音性に配慮してもいいのではないかと考えたが、販売担当者によると、「2枚引き戸を壁にするには30~40万円くらいの費用で済むが、逆に壁を引き戸に変更する場合はその3倍の費用がかかる」とのことだった。なるほど、よく考えたものだ。
手前の主寝室とその奥の居室は2枚引き戸で開閉できるようになっている
手前のリビングと隣接の居室は3枚引き戸で開閉できる
玄関・ホール(クランクイン型となっている)
コスモスイニシア 「‘柔らかさ’のある住まい」テーマの新ブランド「INITIA CLOUD」(2015/6/30)