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「竹本邸」

 青木茂建築工房は11月17日、同社が設計・監理し、このほど完成した多摩市一ノ宮の「竹本様邸リファイニング工事」完成見学会を行った。

 プロジェクトは、昭和44年に建てられた診療所併用住宅と、昭和50年に増築された建物を2世帯住宅へ用途変更・増築を行い、耐震補強をリファイニング手法で再生するもの。

 オーナーの意向を受け、既存2棟を一体化し、耐震・耐久性を確保したうえで、1階ピロティを室内化、2、3階のバルコニーの新設、内装外装の一新、床段差解消・エレベータ新設によるバリアフリー化、現行法令へ適合させるための各種工事などを行った。

 見学会で挨拶した青木茂・同社代表は、「オーナーご夫婦、オーナー長女ご夫妻とお子さん、そのご主人のお母さん、オーナーの次女の4家族が住む住宅で、建築費が上昇する中で予算が予定の約3割アップしているが、オーナーとの打ち合わせで予算を修正して再契約した。それからはほとんどオーバーすることなく完成してほっとしている。難しい法規制をクリアするようアクロバチックな手法をたくさん用いた」と話した。

 既存建物は検査済証が存在せず、建設時以降に施行された昭和50年の第二種高度地区指定による高度斜線制限、昭和52年の日影規制について既存不適格となっていたが、平成26年7月施行の「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」に従い、建築基準法適合状況報告、12条5項報告、許可申請、建築確認申請などを約7.5カ月かけてクリアした。

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青木氏

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 青木氏が「アクロバチック」と

割りいう言葉で表現したように、難しい法規制を魔術師のように突破したことがすごい。改めて青木リファイニング建築物の真髄の凄さをみた。

 一言で言えば、更地にして建て替えた場合、クリアできない既存不適格部分(建ぺい率・容積率、斜線制限など)をそのまま残し、建物は耐震性・耐久性を確保し、新築よりコストを大幅に削減したことにより、建物の価値を従前よりはるかに上昇させたということだ。

 見込み違いもあったようだ。当初、確認申請まで4カ月で済むという計算が狂い、7.5カ月も掛かったことだ。建築費がどんどん上昇しているときだったので、青木氏も心配したそうだが、「オーナーに事情を説明し納得していただいた。追加工事費は仕様レベルを上げたにも関わらず約30万円で済んだ」という。

 既存建物を一体化させた痕跡はほとんど見当たらない。唯一発見したのは階段だった。1階から2階へ、2階から3階への階段のステップは14段だったが、3階から4階は15段だった。これは、階高の差によるものだ。

 唯一の難点だと思ったのは廊下・階段幅が尺モジュールになっていたことか。青木氏は「幅は広げられなかった」と語った。

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 青木氏は見学会で、「住宅は赤字になるのでやりたくないが、頼まれると断れない。新しい本も出版したが、みんな研究費に消える。僕は原稿料ももらっていない。」とこぼし、見学者を笑わせた。注文が殺到し青木氏がお手上げ状態になれば、行政も動き、継承者もどんどん育つのではないか。

 もう一つ。青木氏は「(建築)主事によって解釈がみんな異なるが、肝心なのはすべて考えを聞いて、それに沿うことだ」と語った。杭打ちのデータ流用が社会問題となっているいま、ものすごく貴重な言葉だ。

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 日本建設業連合会の「第56回BCS賞」の授賞式が11月16日に行われた。青木茂建築工房がリファイニングした「北九州市立戸畑図書館」も受賞作の一つで、「あべのハルカス」「JPタワー」「資生堂銀座ビル」など14作品が表彰された。

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バリアフリーになっているエントランス

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2階キッチン

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「春日部ザ・パークアソシエ パレットコート」(既分譲)

 ポラスグループの中央グリーン開発が11月14日、全190戸の大規模戸建て住宅「春日部ザ・パークアソシエ」の最終分譲となる「パレットコート」(40戸)の分譲を開始した。14、15日の2日間で第1期1次分譲12戸のうち11戸に申し込みが入るなど好調なスタートを切った。

 物件は、東武スカイツリーライン春日部駅から徒歩21分(バス便あり)、春日部市大沼4丁目に位置する開発面積約30,000㎡、全190戸の住宅地の一角。1期1次の土地面積は100.02~140.06㎡、建物面積は97.60~111.78㎡、価格は2,780万~3,990万円。構造は木造2階建て(在来工法)、施工はポラテック。入居予定は平成28年5月。

 「春日部ザ・パークアソシエ」は7年前に、東武鉄道とコスモスイニシアが分譲開始した住宅地。電柱を地下化し、幅員8m(舗道2m含む)の道路はインターロッキング舗装、街の出入り口に防犯カメラを設置し、全戸に「セコムホームセキュリティ」を標準装備。建築協定を締結し、管理組合によるコミュニティにも配慮しているのが特徴。

 中央グリーン開発は5年前に、コスモスイニシアから事業継承を受け、戸建て58戸を分譲し、そして今回、東武鉄道から事業継承を受けて更に40戸を分譲するもの。

 この間、管理組合と協議を重ね、既存の街並みと融合するように通りに面した住宅の外観を揃えるなどの工夫を凝らしている。

 14日から分譲を開始し、好調なスタートを切ったことから、同社は来年5月の入居開始まで全戸完売する目標。

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モデルハウス

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「ペニンシュラキッチン」

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 東武伊勢崎線に居住する方々には失礼だが、春日部にこんな立派な住宅街があるとは全然知らなかった。コスモスイニシアと東武鉄道がかなり力を入れていたことがうかがわれる。それなのになぜ、ポラスグループに事業継承したのかその理由は書かないが、受けたポラスも力があるということだろう。

 今回のテーマは「4つのカフェスタイル」。3つの外観に4つのこのカフェスタイル、2つのキッチンを提案しており、全部で24通りの手づくり感が込められているのが特徴だ。外構もよくできている。

モデルハウス2棟を見学したが、よくできている。1階の天井高は約2.7mというのは同社グループの戸建てと一緒で、階段のステップは15段。食洗機は標準装備、引き戸は全て開閉ともソフトクローズ機能付き。

「ペニンシュラキッチン」には、熱・汚れ・傷・衝撃に強い高圧メラミンワークトップが採用されていた。デザインもよく、グレード感もする。

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街なみ

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インターロッキング舗装と植栽

 

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第3回「JEG DESIGN CONTEST 2015」(新宿・四谷区民ホールで)

 住宅エクステリアガーデン研究会(JEG)は11月16日、第3回「JEG DESIGN CONTEST 2015」プレゼンテーション大会を開き、関係者ら約450人が参加した。

 JEGとは、旭化成ホームズ//旭化成住宅建設、ウィズガーデン、住友林業緑化、東京セキスイハイム/東京セキスイファミエス、積水ハウス/積和建設東東京/積和建設神奈川、ナテックス/パナホーム、三井ホームと、今年から参加した大和ハウス工業の8社が共同運営・活動する機関で、それぞれ情報交換・意見交換などを通し、エクステリア ・ガーデンの共同テーマをもとに社員の教育プログラムや住宅営業担当への知識普及促進、商材や施行品質向上のための勉強会などを行っている。

 プレゼンション大会は、応募総数992点の中から二次審査を通過したエクステリア大型、エクステリアベーシック、ガーデン、街づくり・集合住宅の各部門4作品ずつ16作品の各担当者が作品のプレゼン能力を競い合うもの。

 16作品の中からもっともいい作品を選ぶグランプリは、積水ハウス・田原征幸氏の「四季の移ろいを感じる住処」だった。

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 記者は他の取材が入っていたので、ガーデン、街づくり・集合住宅部門のプレゼンしか取材できなかったが、なかなか面白い大会だ。

 作品としては住友林業緑化・藤崎太朗氏の「山桜咲く優遊の庭」、積水ハウス・飯沼宏貴氏と積和建設神奈川・前原尚一氏の「プライムヒルズ」もよかったが、記者がもっとも優れていると思ったのは、積和建設神奈川・佐藤勘才氏の「湘南の雑木の庭」だった。

 作品に対する施主の評価だけでなく、近所の人や街を歩く人の評価を補強材料にして、「エクステリアは生きた広告媒体」という特徴をよくアピールできていた。

 

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 長谷工グループは11月13日、マンションの事業企画から開発推進、設計、施工、販売、インテリア内装、管理までのすべての業務に女性社員が携わる「浦和駒場プロジェクト」を始動したと発表。同時に、プロジェクトの開始に合わせて、「長谷工グループで活躍する女性社員」(“ハセジョ”)を紹介する専用WEBサイト「フレー!フレー!ハセジョ!」を開設する。

 「フレー!フレー!ハセジョ!」サイトでは、「浦和駒場プロジェクト」の各担当セクションで活躍する女性や、建設作業所で活躍する女性工事チーム(“ハセジョ工事チーム”)の取組みなどを紹介する。

 「浦和駒場プロジェクト」は、長谷工コーポレーションが事業主の「ブランシエラ浦和駒場」で、JR京浜東北線浦和駅から徒歩18分、さいたま市浦和区駒場一丁目に位置する7階建て全146戸。売主は同社のほか大成有楽不動産。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。販売開始は2016年2月上旬予定。

 

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13日に行われた旭化成の会見(200人近くの報道陣が詰めかけた)

 横浜傾斜マンション問題で旭化成は11月13日、国土交通省に現時点での調査結果を報告。過去10年の3,040物件のうち調査が完了したのは2,376件で、このうち266件でデータ流用などが行われたことを明らかにした。流用に関わった「現場代理人」は50人以上で、すべてが下請け会社からの出向であり、このうちヒアリングが完了しているのは16人であることが分かった。

 高い専門的技術とコンプライアンスが求められる現場責任者が下請け業者に任せられ、工事を監督すべき建築士による監理がずさんなことが浮き彫りになった。

 この日、杭打ち大手のジャパンパイルが18件のデータ流用が行われていたと発表した。

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 旭化成は国交省に報告書を提出した13日の夕、記者会見を行った。過去10年に施工を行った3,040件のうち当日までに調査を終えたのは2,376件で、このうち266件にデータの流用などが行われたという。データ流用に関わったのは50人以上の同社の下請け会社からの出向社員だった。施工データが存在しない不明物件は118件だった。

 国交省から要請され、優先的に調査した学校、医療・福祉施設の602件は63件でデータの流用などが行われていたことが分かった。

 データ流用が行われた物件については、今後、元請や事業主による建物の安全確認に協力していく。

 今後はデータ流用の有無を確認中の546件については11月24日までに国交省へ報告し、不明の118件についても引き続き調査を継続していく。

 データの流用が行われた背景、動機などについては社内の調査委員会が外部調査委員会の指導や助言に基づいて徹底究明していく。

 データ流用が行われた266件の都道府県別の内訳は東京都51件、神奈川県30件、埼玉県と北海道26件、千葉県23件、愛知県21件。用途別では集合住宅がもっとも多く61件で、都道府県別の内訳は東京都16件、神奈川県12件、埼玉県10件、愛知県8件など。

データ流用に関わった50人以上の「現場代理人」

全て下請けからの出向社員

 会見に臨んだ平居正仁・同社調査委員長は「真相を解明すべく調査中なので、外部調査委員会などへの予見を与えたくない」とデータ流用が行われた背景、原因などについて核心に触れる発言はしなかったが、建設業界の多重下請け構造の暗部が浮き彫りになった会見だった。

 10年間で確認ができた2,376件のうちデータ流用があったのは11.2%に当たる266件だ。これが多いか少ないか判断材料はないが、建物の「安心・安全」に関わる工事で10件に1件以上の割合で〝不正〟があったというのは衝撃的だ。

 同社の報告に対して、石井啓一・国交相は「これほど多くのデータ流用が行われていたことは、極めて遺憾」とコメントした。

 「現場代理人」というのも不可解な存在だ。現場の最高責任者である人が、どうして下請けからの出向社員でいいのか。

 この現場代理人は、国家資格である施工管理技士と思われるが、施工管理技士は建築士や宅建士と異なり、業務上過失・規定違反を行っても法的な罰則規定がない。これも不思議だ。

 また、データ流用に関わった現場代理人からヒアリングが済んでいるのは50人以上のうち16人という数字にも驚いた。30人以上の人が所在不明などでヒアリングができていないという。

 ヒアリングは任意で法的な強制力はないにしろ、現場代理人には自ら進んで調査に応じるという倫理観はないのか。コンプライアンスの意識はないのか。職場を転々と渡り歩いている人なのか。深くかかわっていたのはごく少数のようだが、この人たちがいまも同じ仕事についていると思うと怖い。

 杭打ちデータを流用した理由は、データを計る機器のスイッチを入れ忘れた、雨に濡れてデータが消えてしまった、どこかに紛失したなどという。これまた信じられないお粗末なものだ。そんなミスを犯しても、きちんと報告・連絡・相談されていなかったことも明らかになった。

 このような実態は業界全体で常態化していることもうかがわせた。不具合を未然に防止する重要な任務を課されている設計・施工監理者がきちんとチェックしていない実態が浮かび上がった。

 この点について、平居委員長は「(今回の)監理は元請が行っている。この監理責任についてわれわれはコメントする立場にない」と明言を避けたが、国交省や横浜市からの要請を受けて資料を提出していることを明らかにした。

 横浜傾斜マンションについては、三井住友建設との不協和音も伝わっってきた。

 横浜の傾斜マンションでは、施工会社の三井住友建設が監理も担当しているが、三井住友は先の会見で自らの監理責任を否定した。

 今回の件では6本の基礎ぐいが支持層に未達とされているが、旭化成は「現場担当者は支持層に届いていると思っていると言っている。実際はどうなのか、施主の三井不動産レジデンシャルさんや三井住友建設さんに引き続きボーリング調査をお願いしていく」などと話した。

 なぜ、なぜ、なぜ-約2時間の記者会見で感じたのは「なぜ」ばかりだった。平居氏は何度も真相解明を口にした。闇の多重下請け構造にメスが入れられることを祈るばかりだ。

横浜傾斜マンション問題 どこも〝安全宣言〟を出せないのはなぜか(2015/11/16)

 

 野村不動産アーバンネットは11月11日、子育てワーキングママを支援する「ワーママ総研」を同社の情報サイト「ノムコムwith Kids」でスタートさせた。

 「ワーママ総研」は、アンケートやお宅訪問、コラムなどを通じて現在のワーママの事情を調査し、ワーママに役立つ情報を発信していく。

 ワーママが仕事と子育てを両立するためには、“夫”の理解と協力が欠かせないとし、「ワーママ総研」の立ち上げにあたり、夫の子育てや家事の分担に関する実態を調査。調査は、理想と現実のギャップを浮き彫りにしている。

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 育児や家事労働の理想と現実のギャップはいろいろなところが明らかにしているが、「ワーママ総研」も同様だ。調査は、25歳~44歳の子育てをする既婚女性600人からネットアンケートで聞いた。

 こどもの世話は夫と自分(妻)が半分ずつというのが理想と答えた人が43.5%であるのに対し、現実はほぼ自分がすると答えた人は58.1%で、子どもの食事の準備は25.7%の人が夫と半分ずつ分担するのが理想だが、現実はほぼ自分と答えた人は75.5%に達した。

 1日の家族団らん時間については、2時間以上の時間をとる家庭は平日が29.7%で、休日は81.2%となったが、7.2%の人は休日でも1時間未満しか団らんの時間をとっていないと答えた。

 世帯年収の割合は、57.5%の人がほぼ夫の年収と答え、「夫の収入のほうが多い」は30.8%だった。

 調査結果からみえてきた夫の家族とのかかわり方を、6つの動物の生態系にあてはめて紹介しているのが特徴で、「専業主夫」タイプはオオサンショウウオ、教育熱心な夫はビーバー、妻をサポートする万能「カジメシ」夫はハト、「イクメン」夫はコウテンペンギン、「子煩悩」夫はオオカミ、「無関心夫」はゴリラだそうだ。

「ワーママ」サイトはhttp://www.nomu.com/withkids/wm/index.html

 

 三井不動産レジデンシャルが10年前に分譲した「パークシティLaLa横浜」のマンションが傾いていると10月14日に報じられてからほぼ1カ月が経過する。その後、連日のようにマスコミで報じられている。国土交通省は旭化成建材に対し11月13日までに詳細な報告をするよう指示している。

 現段階ではどのような報告書になるか分からないが、10日、この問題をマンション販売現場はどう受け止めているのか、影響はどうなのかをアトランダムに電話で聞いた。

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 片っ端から電話した。しかし、「会社に聞いて」「責任者がいない」「答えられない」「コメントを差し控えるよう会社から指示を受けている」というところがほとんどだった。

 これはある程度予想はしていた。販売現場の担当者の口が堅くなったのは、あの構造計算書偽装問題が発覚した10年前くらいからだ。あれ以来、現場の生の声を聞くことはほとんど不可能になった。フィルターのかかった広報を通じてのコメントしか出なくなった。

 少し横道にそれるが、姉歯事件のときの各社の対応を振り返ってみたい。

 事件が発覚したとき、ヒューザーが姉歯と関わっているという噂は当日のうちに業界内を駆け巡った。大手、中小を問わずほとんどのデベロッパーから「当社は姉歯とは関係ございません」という趣旨の〝安全宣言〟が発信された。

 今回はどうか。野村不動産が新聞社の取材に対して「現在販売中のマンションには旭化成建材は関わっていない」旨のコメントを発したが、記者の知る限り、ホームページなどで〝安全宣言〟を発表したところはほとんどいない。

 これは何を意味するのか。姉歯のときは物件数が限られており、特定するのが容易だった。しかし、今回の事件は旭化成建材だけに限ったことではなく、杭打ち業界全体への疑惑が広がりを見せており、デベロッパーも対応に苦慮しているからではないかと思う。

 マスコミ報道も問題の核心にふれる報道など皆無に近い。問題なのは「施工監理」が機能していないことだと思う。マスコミは「管理」と「監理」を混同しており、「設計監理」に触れているところはない。それだけ「設計監理」が有名無実化していることを世間にさらしたということだ。

 設計監理が機能していないのではないかという疑惑はすぐ確信に変った。11月2日に行われた旭化成の会見で平居正仁副社長は「データ流用する環境があった」とコメントし、その前の会見でも「工期を守らないといけないプレッシャーを受けていた」旨の発言もしている。

 「データ流用する環境があった」「工期プレッシャー」は同社に限らず業界全体に蔓延しているということを平居氏は示唆したと記者は受け止めている。

 物件を施工・監理した三井住友建設はどうか。同社は11月12日、事件が発覚してから初めて会見を開いた。

 報道によれば、「横浜のマンション建設で三井住友建設の社員は、2次下請けの旭化成建材が杭を打った473本の大部分で立ち会っていなかったという」「永本副社長は、『試験的に打つ杭に立ち会い、残りは施工報告書で確認すればよい』とする国交省の標準仕様書に沿った対応だとして、『管理に落ち度はなかった』と強調した」(日経WEB版)とある。

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 話しを元に戻す。電話による取材にマンション現場担当者はほとんど口を閉ざしたが、4人だけ答えてくれた人がいる。そのコメントを紹介する。

 「来場者が減ったという印象はない。現場では、お客さんから聞かれるだろうとQ&Aを作成しているが、ほとんど質問はない。肩透かしを食った格好だ。影響は軽微だと考えている」

 「一人二人、聞かれる方があったが、予想したほどではない。引き渡し直前の50戸のマンション現場でも、『大丈夫か』という問合せがあったのは2~3件。影響は少ないのでは」

 「今回の問題になっている件はPC杭。当社は現場での杭打ちが多いので問題はない。それにしても旭化成建材が悪いのは言うまでもないことだが、ゼネコンも施主も見抜けなかったのは残念。大手デベロッパーはたくさん建築系大学卒の社員を抱えており、毎週のように各現場の状況をチェックしているはず。それを見逃すとは。ゼネコンもゼネコン。オフィスビルなどと異なりマンション施工は花形ではないから優秀な人材を配置しない。チェックする人の問題」

 「鴨居は地盤が弱いというのは業界の常識。当社は旭化成建材を使ったことはないが、他の業者に問題が広がらないか心配。どこも安全宣言できないのは、すべての分譲物件を調査するには時間がかかるからだ」

 わずか4件のコメントだけでは現場への影響の度合いは計れないが、事態を静観しているというのが現状ではないか。最近、マンションの現場取材を断られるケースもあり、デベロッパーが非常にナーバスになっているという印象も受ける。

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 何度も書くが、今回のデータ改ざんはあの姉歯の問題で国中が大騒ぎしているさなかに隠然と行われていた。もう救いようがない。建設業界を侵す「宿痾」という言葉以外見つからない。

 元請けの三井住友建設の会見も不可思議だ。施工監理に問題はなく、「信頼を裏切られた」と永本副社長はまるで他人事のように話したが、監理チェックを怠ったと言わざるを得ない。建設業法、建築士法が問われる問題だろうと考える。

 姉歯事件は結局、元一級建築士個人の犯罪という形で結論付けられたが、その後、住宅瑕疵担保履行法の施行、確認・検査の厳格化を定めた建基法改正まで発展した。

 今回はどのような展開を見せるのか。

後を絶たないマンション施工不良「設計監理」機能は働いているのか 姉歯に懲りたはずなのに 建設業界を侵す宿痾(2015/10/17)

 

 

 

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「プレスブース」

 大和ハウス工業の2016年3月期第2四半期決算は、売上高1兆5,355億円(前年同期比15.9%増)、営業利益1,304億円(同62.8%増)、経常利益1,291億円(同56.8%増)、四半期純利益927億円(同50.4%増)となり、いずれも過去最高を記録。戸建住宅、賃貸住宅、マンション、住宅ストック、商業施設、事業施設の6セグメントで増収増益となった。

 好業績を受けて、通期業績予想も売上高3兆1,800億円(期初予想3兆円)、営業利益2,400億円(同2,000億円)、経常利益2,280億円(同1,920億円)、当期純利益1,540億円(同1,250億円)に上方修正。配当金も期初予想の年間70円から80円(創業60周年記念配当10円含む)に増配する。

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 11月10日、飯田橋にある同社東京本社で「マスコミ向けスモールミーティング」が行われた。ミーティング終了後、大先輩記者のF氏から「大和ハウスが自由に出入りできるプレス向けのブースをつくった。入ってみよう」と声を掛けられた。

 プレス向けのブースは水道橋駅寄りの1階エントランスを入って左側の角にあった。広さは約10畳大。

 中央に4人くらいが掛けられるテーブル付きソファが設えてあり、雑誌約20誌、同社のリリースや社史、パンフレット、大型テレビ、コピー機、広報直通の電話機もある。コーヒーもブラジル、キリマンジャロ、モカ、コロンビア、エスプレッソの5種から自由に飲めるようになっていた。もちろん、パソコンを持ち込めば原稿も書ける。

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 せっかくだからと、F氏とコーヒーを飲むことにした。紙カップにインスタントの粉末を入れて、コーヒーメーカーのお湯のボタンを押したのだが、全然湯が出ない。そこで、「これは広報に連絡したほうがいい。湯が出ないではないかと」F氏をそそのかした。Fしは備え付きの電話機で連絡した。

 間もなく広報の女性2人が降りてきて、「ここ(湯が出る口の背後にある突起物のようなもの)にカップを当てながらボタンを押すと出ますよ。チャイルドロックのように、危険防止のためにこうしているんです」と利用の仕方を説明してくれた。

 F氏も記者もこの種のウォターサーバーはほとんど利用したことがないことが露呈した。「あなたたちは子どもよ」と言われたような気がした。

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 これはいい。大和ハウスもなかなかやるもんだ。どんどん利用したほうがいい。原稿を書くのもよし、雑誌を読むのもよし、広報に連絡し、いろいろと情報を仕入れることもできそうだ(対応してくれるかどうかは分からないが)。タバコも2階に上がれば喫煙室がある。記者はすぐ賃料をはじき出したが、これは書かない。

 同社によると、スペースを設けたのは今年5月で、これまで多くの記者が利用しているという。記者ならだれでも利用できるが、受付で利用する旨声掛けすることが必要だ。

 F氏によると、かつて積水ハウスが記者向けのスペースを提供していたというが、いまはどこのハウスメーカーもやっていないという。記者の知る限りデベロッパーもこの種のサービスはやっていない。国など行政がやっている記者クラブ制度は、記者は上手に活用していないという意味で反対だが、民間は記者を育てる意味でこの種の便宜は図っていい。大和に拍手喝采。

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「ファインコート三鷹フォレストプレミア」

 3物件目の三井不動産レジデンシャル「ファインコート三鷹フォレストプレミア」。こちらは敷地延長部分やカーポートに工夫を凝らすことで、各住戸に光りと風を取り込む商品企画が抜群だ。

 物件は、京王井の頭線三鷹台駅から徒歩20分(三鷹、吉祥寺、久我山、千歳烏山からのバス便あり)、三鷹市牟礼7丁目に位置する全13戸。土地面積は114.66~116.65㎡、建物面積は91.08~92.94㎡、第1期(戸数未定)の予定価格は5,900万円台~7,000万円台(最多価格帯6,100万円台)。構造は2×4工法2階建て。施工はエステーホーム。入居予定は平成28年2月上旬。販売開始は12月上旬。

 現地は、三鷹台駅からだと距離があるが、三鷹、吉祥寺、久我山、千歳烏山からのバス便が利用できるのが特徴だ。ここも従前は畑。

 建物デザインを担当するのは三井ホームデザイン研究所・稲垣秀晃氏、アレス建築設計事務所・小泉弥生氏、小川建築設計・高橋慶郎氏。マナーハウスの意匠を採り入れた「エーシェントマナー」、木調の垂直ラインを強調した洋館の「ティンバーピラー」、フランク・ロイド・ライトの水平ラインを取り込んだ「インガルスプレーリー」の3つのスタイルを採用している。

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工事中だが、手前は3棟のカーポートを集約し、その奥は2棟の敷地延長部分を緑化している

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敷地延長部分

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 この物件の特徴は、隣り合う住戸の敷地延長部分に緑をたくさん配することで路地風空間とし、カーボードを3棟分連ねることで、空間の広がりを持たせていることだ。敷地境界にフェンスなど設けず、限られた敷地・空間をそれぞれが共有・補完しあい、光と風を取り込む工夫がなかなかいい。

 設備仕様などは「つつじヶ丘」とほとんど同様だ。都心に近いだけこちらのほうが価格は高くなりそうだ。

 モデルハウスでは、リビングの折上げ意匠天井とそれに続くDENの提案がいい。外観に塗り壁調サイディングを施した住戸もあった。

 同社は今年、三鷹市牟礼3丁目で「ファインコート三鷹台」全30棟を分譲したがわずか3カ月で完売したという。こちらも早期完売しそうだ。

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敷地延長部分の路地空間(左側は未完成)

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外観

三井不レジ 外構に力入れる都市型戸建て「国立シーズナルコート」30戸(2015/11/9)

三井不レジ 都市型戸建て「つつじヶ丘」 記者も惚れ込んだデザイン(2015/11/9)

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「ファインコートつつじヶ丘シエルガーデン」

 三井不動産レジデンシャルがモデルハウスをオープンしたばかりの「ファインコートつつじヶ丘シエルガーデン」を紹介する。デザインが突出してよく、同社関係者も悦に入っているようだ。

 物件は、京王線つつじヶ丘駅からバス7分バス停徒歩6分、調布市深大寺東町4丁目の建ぺい率40%、容積率80%のエリアに位置する全20戸。土地面積は113.46~116.27㎡、建物面積は90.59~92.63㎡、予定価格は5,200万円台~6,500万円台(最多価格帯5,700万円台)。構造は木造軸組み工法2階建て、施工はポラテック。入居予定は平成28年3月下旬。

 現地は、駅からややあるが敷地は従前畑だったことからもわかるように畑などの緑が多く、深大寺や神代植物公園へも徒歩18~22分。敷地は北東-北西軸がやや長い長方形で、南側の幅約6mの開発道路のほかに、東南-北西方向に幅約4.5mの開発道路を設置して、各住戸に開放感を持たせているのが特徴。

 建物は、建築家などによく紹介されるアメリカ・ニューヨーク州郊外の「Forest Hills Gardens」をモチーフにしたハーフティンバー、アールデコ、スパニッシュタイプを採用し、ロートアイアン調のブラケットや照明、リースフック、門柱などディテールにも細かな工夫を凝らしている。

 住戸プランは、エネファーム、HEMS、食洗機、ミストサウナ、防犯ガラス、電動シャッターなどが標準装備。

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 モデルハウスを見た途端〝これはいい〟と思った。冒頭に載せたハーフティンバーの外観デザインもいいし、深い陰影を持つアールデコやアーチ状の窓があるスパニッシュもいい。

 デザインがいいと思ったのは記者だけでなく、「国立」の記事でも紹介した池田氏もぞっこんで、「写真を見せたら、他の幹部もみんな出来栄えを褒めていた」と話した。

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吹き抜け

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開発道路に面した住宅

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三井不レジ 都市型戸建て「三鷹フォレストプレミア」 光と風、取り込む(2015/11/9)

 

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