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 わが業界紙へいつもの愛情たっぷりのメッセージ。

 住宅新報が3月から年間購読料を約9%値上げし、税・送料込み17,280円(消費増税前の価格)にすると発表した。年間50回として1部約346円、12ページだから1ページ約29円だ。週刊住宅は8ページで19,980円(同)。1ページだと新報が29円、週刊住宅は50円。新報が圧勝なのか完敗なのか、敵に塩なのか、それとも徹底して潰しにかかる戦略なのか。不思議だ。

 値上げ後は「引き続き経費の削減に努める一方、紙面づくりでは〝企画主義〟を掲げ、紙面の充実に取り組みます」とあるから、業界関係者も応援すべきだろう。コーヒー代と思えばものすごく安いと思う。

 だが、記事そのものには注文を付けざるを得ない。小生の取材フィールドであるマンション・戸建てでいえば、新報の1月29日号、週刊住宅の2月4日号はそれぞれ1面で今年のマンション市場展望記事を掲載している。

 はっきり言えば、新報はひどい。あれやこれやのマクロデータを寄せ集めているだけに過ぎない。競馬予想だってもっとましなことを書く。同紙はもともと分譲分野の記事は精彩を欠くが、これでは〝企画主義〟が泣く。

 ついでに言えば、今年に入って三菱地所レジデンスは「本厚木」「高輪」「北千住」のマンション見学会を行ったが、同紙の記事は他のニュース・リリース記事と同じか少ないくらいだ。

 例えば「北千住」。発表会があったのは1月23日(金)で掲載は2月5日号だから2週間も空いている。当然他紙はとっくに報じている(弊紙のwebは当日)。さすがに他紙と同じ記事は書けないと判断したのかもしれないが、書こうと思えば1月29日号で書けたはずだし、それくらいのインパクトがあるマンションだった。北千住で坪単価が400万円に迫るなど業界関係者はだれも予想しなかったはずだ。なぜその驚きを記事にしないのか。この種の記事は刺身と一緒、鮮度が命だ。腐臭が漂うような記事を書いていたら読者は離れる。

 週刊住宅の展望記事はどうか。新報よりはましかもしれないが、見出しに「問われる商品企画」とあるのに、その商品企画そのものについての言及がほとんどない。記事にあるように価格設定と商品企画に的を絞った記事を書くべきだった。「晴海の価格を見てから決断したい」という顧客が目立つのであれば、「HARUMIフラッグ」について核心に踏み込むべきだ。

 小生は2016年に都が土地を売却した時点で「坪単価は250万円」と書いた。その当否を探るべく近く記事を書くことにしている。その要諦は「特定建築者募集要領」にある「敷地譲渡契約締結後、東京都の事由により事業計画を変更する場合及び特定建築者が応募時に提案した資金計画に比べ著しく収益増となることが明らかとなった場合は、敷地譲渡金額について協議するものとします」だと思う。いったい「著しく」とはどの程度のことなのか。事業者11社の中でもっとも収益率が高い東京建物の粗利益率は29.7%(2018年12月期)だが、三井不動産レジデンシャルは20%前後だろうし、低いところは10%あるかどうかだ。モノサシの基準をどこにするかで「著しい」もまた異なってくる。

 仮に「著しく収益増」となったらなったで、当初の開発法による不動産鑑定の適否、鼎の軽重が問われる。この点について都は、「弁護士などと相談しながら『著しく』という文言も含めて何が協議対象になるか判断していく」(都市整備部)としている。

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 批判ばかり書いてきたが、キラリと光る記事もあった。1月29日付新報1面の「住まい選びは街選び 上」という見出しの企画記事では、埼玉県のキャンペーン「住むなら埼玉!」が紹介されていた。

 県のキャンペーンは明らかに流山市の〝母になるなら流山〟の二番煎じだが、県住宅課へのホームページアクセス数は毎月2万件くらいだったのが倍増どころか多いときは7万件くらいに増加していると書かれていた。

 いま、「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ」という大炎上しそうなキャッチフレーズが踊る魔夜峰央氏の自虐的漫画「翔んで埼玉」が県内で爆発的にヒットし、映画化もされるのだという。結構なことだ。

 しかし、同紙の連載は次号で「柏の葉」を紹介したきり2回で終わってしまった。やるなら徹底してやるべき。多摩ニュータウンもやってほしい。小生は〝美しくなるなら多摩〟〝死ぬまで多摩〟を提案しているのだが…。

 面白い囲み記事もあった。2月4日号の週刊住宅1面コラムにいきなり「行く川の流れは絶えずして、しかも下の水にあらず」とあった。これは必ず落ちがある、川の下にまた川があると読み進めたが、何もなかった。川に落とされなかった。人のことは笑えないがギャハハハハ。

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「GRANODE (グラノード)広島」完成予想図

 大和ハウス工業は2月12日、広島市東区二葉の里5街区で開発を進めている中国・四国地方最大のオフィスフロア面積を誇る複合施設の名称を「GRANODE (グラノード)広島」に決定し、4 月1日開業すると発表した。

 「GRANODE 広島」はJR広島駅から徒歩4分、地上20階・地下2階建て延床面積約5万㎡(「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島」の約2個分)。オフィスフロア総面積および1フロア面積が中国・四国地方最大を誇るオフィス(3~11 階)のほか、商業施設(1・2 階)、全197室のホテル(13~20 階)が入居する。

 現地は都市再生機構(UR都市機構)が2010年12月から施行している全13.8haの土地区画整理事業地内の一角。2014年5月、同社と広島テレビ、エネルギア・コミュニケーションズの3社が一般競争入札で取得した。

カテゴリ: 2018年度

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三井不動産は28日、多種多様なプレーヤーによる日本橋の街づくりを発信するWEBメディアCollaboration MagazineBridgine(ブリジン)」(https://bridgine.com/)をオープンした。

Collaboration MagazineBridgine」は、日本橋の「橋」とコラボレーションを意味する「Bridge」、メディアを意味する「Magazine」を組み合わせた造語で、街で活動する様々なプレーヤーの情報を紹介し、「人」を中心に日本橋の今とこれからについてメッセージを発信する。昨年秋に立ち上がった「nihonbashi β」の活動も取り上げる。

会話ができ、音も香りも風も吹く 日本橋「未来ののれん展」11/11まで開催(2018/11/2

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 国土交通省は2月7日、レオパレス21が施工した共同住宅で建築基準法に定めた仕様に適合していないこと、法定仕様に適合させるために改修を行うとの報告を受け、同社に対し、所有者等関係者への丁寧な説明、特定行政庁への報告、改修等の迅速な実施、原因究明及び再発防止策の報告、相談窓口の設置を指示したと発表した。

 この問題は、平成30年4月27日と5月29日に同社が公表した共同住宅の界壁の不備についてその確認や是正を求め、さらに同年10月4日、同社から新たな不備の疑いがある旨の報告があり、事実確認を求めていたもの。

 その結果、界壁は平成8年6月12日~平成13年9月17日着工の771棟、外壁は平成8年6月12日~平成13年9月17日着工の925棟、天井は平成8年3月16日~平成13年1月22日着工の641棟にそれぞれ不適合があったことを確認したとしている。

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 同社の報告によると、39,085棟の全棟調査を行った結果、1996年6月12日から2001年9月17日までに着工したゴールドレジデンス(GR)、ニューゴールドレジデンス(NGR)と、1999年9月14日から2001年2月9日までに着工したヴィラアルタ(AGR)に建基法に適合しない物件が確認されたとしている。

 新たに確認された不備物件の最大棟数はGRが1,660棟、NGRが679棟、AGRが153棟の合計2,492棟。

 不備が生じた原因として、同社は「建築現場における作業効率向上」「界壁の留め付け作業を簡略化」「発泡ウレタンの方が断熱性能及び価格において上位素材」「設計部署と発注部署との間で情報共有が図れておらず」「化粧板(化粧石膏ボード)とロックウール吸音板とは見た目が類似しており、一見してどちらか分かりにくいこと」「施工監理において不備が指摘できなかった」「遵法性の知識や意識の低さから起因」などとしているものの、問題発生の「具体的究明には到っていない」とし、今後も調査を継続する。再発防止のため「コンプライアンス統括部」を設置した。

 調査結果を受け、同社は平成31年3月期第3四半期累計で特別損失430億円を計上したが、平成30年12月末日時点での現金預金(連結)は892億円、自己資本(連結)は1,069億円(自己資本比率35.2%)と十分な水準にあると発表した。

 また、2019年2月から6カ月間、役員の責任として社長は20%、その他の役員は20%それぞれ月額報酬を返上する。

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 記者は同社のことは全く知らない。現社名に変更されるまでの「ミヤマ」は檜不動産やマルコーなどとともに住産協(現・全住協)の有力会員の1社だったが、仲介・賃貸業が主力だったせいもあり、創業社長・深山祐助氏も含めて取材したことは一度もない。

 著名なタレントを起用したテレビCMやスポーツのスポンサーにたびたび登場し、業績も悪くないので、企業理念である「新しい価値創造」に邁進しているのだろうと思っていた。

 そのことを証明するのかどうか、同社はゴメス社の2018年IRサイトランキングによると、不動産業ではNTT都市開発、トーセイに次ぐベスト3で、全業種359社全体でも30位にランクされており、「優秀企業・銀賞」を受賞している。

 そんな〝優良企業〟がこのような不祥事を起こすとは…。不備の原因はどう好意的に読んでも理解不能、説得力を欠く。製品に名前がついているはずだから、グラスウールと発泡ウレタン、石こうボードとロックウール吸音板の区別くらい素人の記者だってできる。「施工監理において不備が指摘できなかった」「遵法性の知識や意識の低さから起因」などありえない。不備をチェックするのが監理担当者の仕事であり、法を守らせるのが会社=社長の任務ではないのか。

 2001年以降の建物についても引き続き調査するとしているので、徹底して行うべきだ。そうでないと賃貸オーナー、入居者の信頼を回復することはできないだろう。問題の大きさから言って、役員報酬の返上は額も期間も少なすぎるような気がするが…。

 さらに言えば、問題発覚から9カ月も経過するのに「原因究明に到っていない」とはどういうことか。そして、また、現場監督は何をしているのか、検査済証制度が骨抜きになっていないのかなどと改めて考えさせられた。

カテゴリ: 2018年度

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真庭市へ移築後のイメージパース

 三菱地所は2月14日、岡山県真庭市と隈研吾建築都市設計事務所と共同で、木質系の建築資材「CLT」を活用した「CLT晴海プロジェクト」に取り組むと発表した。

 同社が事業主となり、同社所有の東京都中央区晴海の土地に、隈研吾建築都市設計事務所がデザイン監修した岡山県真庭市産のCLT材を使用した施設を建築。施設は2019年秋から2020年秋までの1年間、CLTの魅力を伝えるとともに文化・情報の発信拠点として運用し、その後、部材をリユースし、岡山県真庭市の国立公園蒜山(ひるぜん)に移築する。移築後は、観光及び芸術・文化発信拠点として利用される計画。

 事業推進に当たり地方創生推進交付金制度や企業版ふるさと納税制度などの活用検討も進めている。

 プロジェクト発表会に臨んだ三菱地所・吉田淳一社長は、「わが国の国土の約7割を占める森林だが、国産材の利活用は進んでおらず2割くらいしかない。日本を盛り上げるために三菱地所グループでどんな形で行動を起こせるかを考えた結果の一つ。CLT活用は若手社員の提案もあり、今後の当社グループのみならずこれからの日本を担っていく若い人の気持ちがCLTに向かっているということで非常に心強く思っており、会社としてもバックアップする。プロジェクトは、我々グループが掲げている街づくりを通じて真に価値ある社会の実現に貢献する基本使命の一つとして実現した。日本の社会課題解決、地域活性化、地方創生につなげたい」などと挨拶した。

 太田昇・真庭市長は、「真庭市の面積は岡山県最大。製材業もさかんで、バイオマス発電やCLTょ活用したホテル、マンションなどの事例もたくさんある。施設は千載一遇のチャンスと捉え、地域の活性化、人口増につなげ、都市と地方を結ぶモデルにしたい」と抱負を語った。

 隈研吾氏は、「今回のプロジェクトは、世界一の技術と美しさを持っている日本の伝統建築から進化し続ける木組構造の延長線にあることを内外にアピールするものとなる。画期的なCLT利用の実例になる。

 木は木造住宅だけというイメージだったが、CLTは木を都心の中層建築にも使えるようになる。大きく都市を変え、CLTをたくさん使うということは空気中のCO2を固定することになるので、地球温暖化防止策にもなる。晴海の地に建て、さらにそれが真庭に行くというストーリーが完結する。地方活性化のレガシーともなる。

 これまでのCLTは壁材、構造壁としての利用イメージが強いがが、今回は構造梁として利用できることを見せ、しかも、その美しい素材を魅せる外装にしているので、木肌の美しさを堪能できるデザインにした。

 また、解体して運びやすいCLTのメリットを生かしたジョイントシステムも開発した。CLTは都市と地方を結ぶプロジェクトには最適な材料だ。パビリオンの中は、木洩れ日が入ってくるような日本らしいさわやかで清々しい、ヒノキ材に囲まれたオーガニックな空間とした。建設地は、近くにオリンピック選手村と公園がある絶好の敷地。世界の人たちが見て〝日本のCLTはすごい〟と言っていただけるものにした。

 それが、地方創生のリーダーといえる真庭市の国立公園のサイクリングロードの要になる場所に移設される。施設はアートギャラリー、カフェ、特産品販売などの多様な利用が考えられている。パビリオンは都市の中でもシンボリックなものだが、蒜山・大山の美しい山を背景にした自然ともよく調和したものとなる」と説明した。

 発表会には、来賓として「CLTで地方創生を実現する議員連盟の中谷元氏、あきもと司氏、石井正弘氏と、飛び入りで逢沢一郎氏も出席した。

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左から吉田氏、太田氏、隈氏

 晴海の建設地は、都営大江戸線勝どき駅から徒歩数分の敷地面積約6,529㎡の同社所有地。建物は1階建てパビリオン棟と2階建て屋内展示棟の延べ床面積約1,500㎡。構造は木(CLT)造・鉄骨造の混構造。2019年5月に着工、9月竣工予定。設計・監理は三菱地所設計。デザイン監修は隈研吾建築都市設計事務所(協力江尻建築構造設計事務所)。施工は三菱地所ホーム。

 CLT(Cross Laminated Timber)は、1995年頃からオーストリアを中心として発展してきた新しい構造材で、板の層を各層で互いに直交するように積層接着した大判パネル。CLTを利用するためのわが国の取り組みは2010年ごろから本格的にスタート。2016年4月、建築基準法関連告示の施行により、通常の構造計算により設計できるようになった。森林・林業の再生、国産材利活用の観点からも普及が期待されている。

 三菱地所は、仙台市でわが国初のCLT床材を利用した高層賃貸マンションを建設中で、沖縄県・下地島空港の旅客ターミナル施設でも構造材にCLT材を採用する。

◇      ◆     ◇

 演出効果を狙ってか、イメージ図や模型は隈氏が話をするまで伏せられていた。それを見た記者は〝すごい〟のため息を漏らした。

 隈氏は約10分間のスピーチで「美しい」「素晴らしい」「画期的」などと10回は発言した。「美」は建築家にとっても究極のテーマなのだろう。高さが約17.5mもあるパビリオン空間にどのような木漏れ日が差し込むのか。隈氏自身が語ったのだから「画期的」な「美しい」施設になるのだろう。「美」とは何かについては、機会があったら書いてみたい。

 記者は都市のど真ん中でどうして「現わし」の建築物が建つのか不思議に思ったので隈氏に質問した。隈氏は「仮設建築なので防火の要求はない。真庭市の公園も(都市計画は)無指定なのでその要件を満たさなくてもいい」と話した。

 もう一つ、隈氏などは「CLTは軽くて強い」などと語った。記者は逆にCLTはかさ張るので重くて運びづらく、土地が広い大規模建築には適しているが、一般住宅への普及は難しいと思っているので、この点についても聞いた。隈氏は「強度をうまく利用すればかさばらない。輸送費もリーズナブルなものに抑えられている」と話した。

 隈氏はまたジョイントにもたくさんチャレンジしていると強調した。

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左から太田市長、吉田社長、隈氏(大手町パークビル1階の実物を背景に)

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夜間イメージ図

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パビリオン棟内イメージ図

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実物大パーツ(高さは約3.5m、重さは全体で約800キロ、パネルは約300キロ。五層積み上げる)

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施工を担当する三菱所ホームソリューション事業本部ソリューション第一事業部長・鈴木正人氏(昨夜、パネルの荷下ろしからビル内までの運搬を8人がかりで行ったとか。自分も作業に加わったのかは話さなかった。RBA野球最弱チームの元エース・主砲・監督)

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パビリオン模型(天井はガラス、構造はCLTと鉄骨との混構造)

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移築予定地の真庭市の「国立公園蒜山」イメージ

 

わが国初CLT床材を利用した高層建築物 三菱地所 仙台「高森2丁目」現場見学会(2018/9/15)

カテゴリ: 2018年度

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エントランス

 三井不動産は2月7日、京都・二条城の東側に隣接する250年以上にわたり三井総領家(北家)の居宅があり、三井グループゆかりの地で、フラッグシップとなるホテル「「(仮称)京都二条ホテルプロジェクト」の概要を発表した。

 計画地は、地下鉄東西線二条城前駅から徒歩3分、京都市中京区油小路通二条下る二条油小路町に位置する敷地面積約7,451㎡。施設は地下1階、地上4階建て延床面積約18,987㎡。客室数161室。開業予定は2020 年夏。設計・施工は清水建設。

 現地は、二条城の東側・堀川通りに面し、17世紀末頃より昭和中頃まで三井総領家(北家)の居宅があったところ。2015年に同社が取得し、2018年3月に工事着手した。

 開発に当たっては、三井総領家時代に存在した回遊式庭園のコンセプトを踏襲し、現在のデザインと技術を用いて庭園と水盤からなる約1,300㎡超の空間を新たに設ける。

 建築・デザインには、マスターデザインアドバイザーに栗生総合計画事務所・栗生明氏を、ランドスケープデザインにプレイスメディア・宮城俊作氏、客室・ロビーのインテリアデザイ ンにAFSO のアンドレ・フー氏、SPA・レストランのインテリアデザインにSTRICKLAND・赤尾洋平氏をそれぞれ起用。国内外のトッププレーヤーが共演する。

 客室は平均50㎡超で、約210㎡のプレジデンシャル・スイートルームも設置する。

 ホテルの運営は三井不動産リゾートマネジメントが行い、総支配人にはザ・リッツ・カールトン東京営業部長、フォーシーズンズホテル東京 丸の内 セールス&マーケティング部長、マンダリンオリエンタル東京副総支配人を歴任した楠井学氏が就任する。

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 ニュース・リリースを読んで驚いた。そんな計画があることなど全然知らなかった。起用する建築家やデザイナーの経歴からして、最高峰のホテルにするのだろう。気迫が伝わってきた。

 同社はこれまで、「マンダリンオリエ ンタル東京」、「ザ・リッツ・カールトン東京」を誘致し、三重県志摩市の「NEMU RESORT」に「AMANEMU(アマネム)」を開業。今後も「ハレクラニ沖縄」「フォーシーズンズ・ホテルズ・アンド・リゾーツ」、「ブルガリ ホテルズ&リゾーツ」を開業する。

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庭園と水盤

三井不 「ホテル ザ セレスティン京都祇園」開業 〝日本一の朝食〟メニュー(2017/8/29)

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「多摩ニュータウン再生プロジェクト第6回シンポジウム」(パルテノン多摩で)

 多摩市は2月4日、多摩ニュータウン再生の取り組みについて情報共有、意見交換する「多摩ニュータウン再生プロジェクト第6回シンポジウム」を開催した。定員250名の会場はほぼ満席となった。

 今回は、東京藝術大学准教授で、鳩山ニュータウンなど県内の団地再生に取り組んでいる建築家・藤村龍至氏(42)の基調講演が〝目玉〟で、「多摩市ニュータウン再生推進会議」の学識委員、市民委員、多摩市長による活発な座談会が行われた。

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西浦氏(左)と楊氏

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 シンポジウムは三部構成。第一部は、多摩市ニュータウン再生推進会議職務代理者の西浦定継氏(明星大学理工学部総合理工学科教授)から「多摩市ニュータウン再生推進会議からの報告」があり、同市民委員・楊光耀氏が「永山駅周辺再構築ビジョンについて」と題する基調報告を行った。

 第二部では、藤村氏が「市民目線での魅力づくり・ブランディングについて」基調講演を行った。

 埼玉県出身の藤村氏は、埼玉県の鳩山、椿峰、白岡各ニュータウンなどでの具体的な団地再生の取り組みについて紹介し、公的補助がなくてもマルシェなどの活動を通じて地域や行政を巻き込むことは可能と語った。

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藤村氏

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 藤村氏が鳩山ニュータウンの再生に取り組んでいることは承知していた。しかし、あの鳩山を再生することなどは絶望的だと思っていた。学者先生の道楽、趣味の域を出ないと高をくくっていた。

 ところが、まったく逆だった。自らが先頭に立って青息吐息の「鳩山」や「椿峰」に若者を呼び込み、2,000人、3,000人規模のマルシェを開き、自治体を動かす活動を実践しているではないか。推進会議委員長・上野淳氏(首都大学東京学長)は「極めて刺激的」「動く建築家」と絶賛した。

 記者も感動で胸が震えた。なぜそうなったか、別掲の記事(鳩山ニュータウンに吹いた風に想う)を読んでいただければわかっていただけるはずだ。西武ライオンズファンの記者は「椿峰」も度々取材しており、戸建て購入を真剣に考えたほど素晴らしい団地だった。何と藤村氏が「椿峰」出身と聞いて、なんだか他人には思えなくなってきた。バブルで消えた日本新都市開発は「中堅所得層に良質な住宅を」という哲学があった。

 徒手空拳でそこまで入れ込まなくてもいいのに、本業が疎かになっていないのかと心配もしたので、ご本人に聞いた。「大丈夫です」とのことだったし、推進会議委員の松本真澄氏(首都大学東京助教)が「本業のほうが有名なんです」と付け加えてくれたので安堵したのだが…。

 「鳩山」には、一低層の壁をぶち壊し念願の飲食店もオープンしたという。必ず取材に行く。桜の春まで待つか、それとも今が旬か。

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 第三部では、コーディネーターを務めた上野氏の呼びかけに応じで、パネリストがそれぞれ多摩ニュータウンの魅力などについて次のように語った。以下、発言順。

 小野澤裕子氏(推進会議市民委員) 落合で育ち、地元で建築事務所を設けている。多摩は環境もいいし空気がきれい。子育てもしやすい。坂が多いが、足腰が鍛えられる。コミュニティ形成ができる街づくりに期待する。〝駅近〟マンションもいいが、遠くても住みやすく買いやすい住宅にカスタマイズすることは可能

 加藤岳洋氏(推進会議市民委員) 永山で活動している。10年前に引っ越してきた。ニュータウンは今の時代に合わなくなった部分もあるが、開発当初は英知を結集したはず。ポジティブな発想に転換し、多摩の魅力を次世代につなげていきたい。情報発信力が弱いのは課題

 楊光耀氏(東大で建築を研究中) 多摩には大学が多い。若者も多い。これは大きな魅力。企業誘致の拠点をつくれば若者が集まってくる。尾根街道はイノヴェイティブな街づくりの可能性を秘めている

 阿部市長 多摩には元気な年寄りが多い。ニュータウンは歩車分離なので安全な街でもある。乗降客は3駅で18万人にのぼり、府中、調布に引けを取らない。昼間人口も多い。京王も小田急もアクセスがぐんとよくなった。街のポテンシャルを挙げる取り組みを強化していく

 松本真澄氏 街づくりの骨格がしっかりしているのが何よりの魅力。時代にあわなくなってきたもの、例えば住宅転用などを容易にするアイデアが欠け、融通が利かないハードルが課題。高齢者の居場所は大事だが、さらにその上の85、90歳のお年寄りをどうするか、うまく起動する仕組み必要。しかし、とにかくやるしかない。市民が動きやすい行政の支援に期待

 藤村龍至氏 ニュータウンは戦後の街づくりの生きた教科書。もっと情報を発信すべき。ニュータウンを見学して、個人的には落合・鶴巻が好きだ。プラスワン住宅など当時の実験住宅は今の時代にむしろあっている。民間を行政がサポートするという発想の転換も必要

 これらについて、上野氏は緑のネットワークの価値を強調し、尾根街道の開発の可能性や留学生向けのシェアハウス、企業誘致などに期待したいと話した。

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左から小野澤氏、加藤氏、松本氏

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上野氏
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 パネリストの方々が異口同音に話した「情報発信力が弱い」ことについて。

 これはその通りだと思う。不動産メディアの端くれであり、多摩市民でもある記者は忸怩たるものがある。マスメディアもそうだろう。

 少しだけ言い訳をさせていただく。小生は〝オールドタウン〟などと一度も書いたことがない。むしろ逆に多摩市や多摩ニュータウンの魅力をことあるごとに伝えてきた。この40年の記者生活の中で〝頑張れ〟という叱咤激励の意味も込めて数十回は書いてきたはずだ。このシンポジウムも所用で参加できなかった1度を除き取材し、記事にもしてきた。

 では、どうすればいいか。阿部市長は市が運営するweb「丘のまち」を紹介したが、これは形式張っていて、最高の中身のものもあるが、一般の方が気軽にアクセス・投稿できるようにはなっていない。

 このシンポだって、開催の告知はしているが、肝心のシンポで誰が何を話したかを市はまったく発信していない(どこかにあるのか)。これは完全にアウトだ。情報を共有しようという姿勢が決定的に欠けている。

 こうなったらついでだ。阿部市長、「健幸都市」も結構だが、伊崎流山市長の「母になるなら流山」「父になるなら流山」には歯が立たない。それを真似た「住めば、北区」「住むなら埼玉!」もたいしたことないが、そこそこ効果があるようだ。

 どうせやるなら「死ぬまで多摩市」はどうか、「美しい人は多摩市」もいいかも。

 市内にある6つの大学についても。エリアに4つある足立区・北千住駅近くのマンションは坪300万円台の後半だ。6つもある市内は駅から10分ちょっとの坪200万円が四苦八苦している。大学ももう少しはエリアのポテンシャルを上げるために汗をかいてほしい。

 桜美林大学については苦言を呈せざるを得ない。旧「ウェルサンピア多摩」跡地の多摩アカデミーヒルズは、市民もよく利用していた宿泊、浴場、プールを閉鎖した。あろうことか、プール跡地と旧落合中学校のグラウンドと図書館の〝不等価交換〟を計画していた。市民などの反対で計画は立ち消えになったが、建学の精神はどこへ行ったのか。

 恵泉女学園は立派。多摩センター駅前の美しい景観形成に多大な貢献をされている。キャンパスも学生も教員も美しい。松村先生(女ではない)頑張れ!

 この記事は、クレジットさえつけてくれればいかように利用されても結構です。むしろどんどん攪乱じゃなくて拡散していただきたい。

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あの熱気どこに 多摩市 第5回 多摩NT再生プロジェクトシンポ(2018/2/5)

人・街・未来を語り合う 多摩市 第2回「多摩NT再生シンポジウム」(2016/2/5)

多摩ニュータウンの課題を解決し、魅力をどう発信するか(2014/2/13)

「多摩NTにおける人的不良在庫」 吉川徹・首都大教授が軽妙発言(2016/6/6)

「さくら茶屋にししば」など全国先進事例を報告 第2回「住宅団地再生連絡会議」(2017/1/23)

全国276団体が参加する「住宅団地再生連絡会議」設立 国土交通省(2017/1/31)

カテゴリ: 2018年度

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「セレサージュ表参道」 

 コスモスイニシアの共同出資型の投資用不動産「セレサージュ表参道」が1月末に竣工し、販売を開始した。2017年に販売した「セレサージュ代官山」に次ぐ第2弾で、店舗6区画は全て入居契約・申し込み済み。3月から契約を開始する。

 物件は、東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線表参道駅から徒歩6分、渋谷区神宮前三丁目に位置する地下1階地上4階建て、延床面積約995.33㎡。全6区画。建物は1月に竣工済み。

 募集総額は26.5億円、募集口数は530口、申込単位は1口500万円、最低申込金額は二口1,000万円。予定利回りは4.29%、運用期間は15年間。

 現地は、都営青山北町アパートの建て替えとともに、民間活力を生かしながら青山通り沿道との街づくりを段階的に行い、賑わい・文化・緑をつなぐ最先端の文化・両行の発信拠点を目指す約4ヘクタールの「北青山三丁目地区まちづくりプロジェクト」に近接。

 契約・入居が決まっているのは複数の美容室・美容院のほかゴルフクリニックなど。

 

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「鯛」

 2008年の北京オリンピック野球日本代表に選ばれながら、星野仙一監督から一度も経験がない左翼を守らされたことによって準決勝戦と3位決定戦で3失策を犯し、その後の野球人生を狂わされた元西武ライオンズの主砲・G.G.佐藤さん(本名:佐藤隆彦氏)のお父さんで、地盤改良会社トラバースの社長・佐藤克彦氏(74)が、玄人はだしの絵画展をポラスグループ中央住宅の分譲地「ザ・マインドスクェア葛西」のモデルハウスで行っている。

 「ザ・マインドスクェア葛西」は、東西線葛西駅から徒歩14分の全5戸。土地面積は100.50~103.13㎡、建物面積は91.23~101.93㎡、価格(4戸)は6,490万~7,690万円。

 絵画展の企画を行った中央住宅東京事業所長・南部好克氏は、「事業所を開設して10余年が経過し、1,000戸を超える実績を残して来れた。わたしの父が不動産業だった縁で、佐藤さんは小さい頃から存じあげている。佐藤さんの会社の近くの喫茶店で話し合っていたとき、佐藤さんが描かれた絵がたくさんあったので、それから企画が始まった。この種のイベントはこれまでやったことがないが、少しでも地域に貢献できたらうれしい」と経緯を語った。

 佐藤氏に話を聞いた。( )内は記者。

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佐藤氏(左から2人目)と同社関係者

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「あさやけ」

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遭難時の「危機一髪」

◇       ◆     ◇

 (絵を描くきっかけは)「平成に入ってから。危機一髪の物語があるんだよ。友人に誘われて東京湾へ好きな釣りに行ったんだよ(夜釣りですか? )いや、昼間(意味が通じなかったよう)。マリンスタジアムの沖だった。海がひどく荒れていてね、小さな和船だったもんだからね、2度ほど大波に襲われて、もう死ぬかと思った。その体験・光景を残そうと絵に描いた。NHKがその絵があることを保安庁から聞き出し、取材に来て、テレビにも放映された。まあ、きっかけはこんなもんだ」

 (G.G.佐藤さんはまだ西武に入っていなかった? )「そう、まだ入団前の法政大の学生。あのとき父が死んでいたら野球の選手にならなかったかも」(G.G.佐藤)

 「当時は釣りばっかりやっていたが、本業では住宅づくりを始めたんだ。船橋のだれも手掛けない、土地が安い傾斜地ばかりを仕入れてね。東大の先生が驚くほどの軸組パネル工法をあみだし、特許も取得して売り出した。20棟くらい建てたか。あまりにも素晴らしいもんだから、周りの建売業者はみんな貧相な自分たちの住宅をシートで覆ったほどだった。取引先だった旭化成ホームズの部長さんも視察に来てね。『斜面地はうちはやらないから、バッティングはしないからいいか』と不問にしてくれた。ただ、あれは時代を先取りしすぎちゃった」

 (しかし、いまは凄い売上ですね)「180億円くらいか。目標は200億円」

 (話は絵に戻りますが、これまでどれくらい描かれているんですか、売らないのですか)「年間3作品くらいか。トータルで50~60作品。この前、会社を辞めたかわいい子にプレゼントしたこともあるが、売らないね。金がないわけじゃないからね。展覧会? 応募なんかしない」(記者も絵を描くからこの気持ちはよくわかる。魂を込める自分の分身を金で売りたくはないのだろう)

 ここで、南部氏が「絵画展は1月26日に始めたばっかりですが、先日の土日には18組くらいお客さんがいらっしゃるほどの盛況でした。購入されたインド人のお金持ちを含めて2人の方が『絵を譲ってほしい』と希望されていますが…」と話した。「お金に困っているわけじゃないからね…」(社長、社長の絵にG.G.佐藤さんのサインを入れたらとんでもない値が付きますが)「……」

 (いったい、いつ絵を描かれるんですか)「朝8時から1時間くらい。9時から17時まで仕事。それからまた1時間くらい描いて。夜の社員との会議に出かける」(飲み会? )「それもあるが、日替わりで社員と歓談するんだよ。税務署にも経費として落とせるよう認めさせた。飲むとね(どれくらい飲まれるんですか)ビールをジョッキで3杯、焼酎割を2~3杯。酒を飲むとね、頭が回るんだよ」(社長、頭が回るというのはちょっと税務署に具合が悪い。だだの飲み会じゃないですか)「そうそう。酒を飲むとね、血の巡りがよくなっていいアイデアも浮かぶんだよ。そして終わるのが9時半ころ。土曜、日曜はかみさんと一緒」

 (それにしても、ずいぶんお元気そうですね)「入れ歯は一本もないよ。メガネ? これはガラス。視力は1.0だからね。糖尿? 全然ない」

 (G.G.佐藤さん、お父さんのように絵を描かれたら? )「目覚めたら…」

 同社広報マンの「一番のお気に入りの作品は? 」との問いに「(熱海の40号くらいの絵について)ほら、空に全くムラがないだろ。小さな建物もきちんと描かれているだろ。これはね、独学で会得した技術があるんだ。しかし、人物、とくにこの人(自分のこと)が描けないんだよね…」

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佐藤父子

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◇       ◆     ◇

 佐藤氏は1944年、愛知県生まれ。法政大学卒。1976年、東京西神田に測量会社を起業。1989年、トラバースに社名変更。趣味は絵画のほか囲碁(3段)、将棋(2段)、海釣り、ウクレレ演奏。

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絵を鑑賞される来場者(左上の「あさやけ」が最高に素晴らしい)

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うまく撮れていないがこれも素晴らしい

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「ザ・マインドスクェア葛西」

G.G.佐藤のトラバース ピンチ 「プロは一人」の制限で予選敗退も(2018/6/9)

元西武梅田RBAも初打席初安打 決勝打 トラバース快勝 エイブル 移籍小笠原を見殺し(2018/6/14)

カテゴリ: 2018年度

 毎週火曜・水曜日はモデルルームが休みなので暇に飽かせて「住宅新報」の連載「明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見」を読んだ。率直な感想を思いのままに書き連ねる。きつい表現もあるかもしれないが、いつも通りわが業界紙に頑張ってほしいからで、他意はまったくない。

 この連載は、2013年9月24日発行号から始まったもので、1月22日付最新号で第267回だ。5年以上もよく継続していると感心するのだが、記者はこれまでほとんど読んだことがない。読者である不動産のプロもやや物足りないと感じるのではないか。なぜか。一言で言えば、それは虚心坦懐にものを見る姿勢、〝なぜ〟という問いかけにやや欠けるからではないか。世間の常識を疑ってかかるのが学問の初歩だと思うがいかがか。

◇       ◆     ◇

 最初に俎上に載せるのが最新号の4年生・Tくんの「邸宅の門」だ。

 Tくんは、「街を歩いていると、広い敷地に立つ(文のまま)格式のある建築物が目についた。もっとも、建築物はくたびれ、門は空き家のように疲弊しているが、人が住んでいる。豊かさを物語る格式の高さと、手入れが行き届かない現状のアンバランスが、ひときわ目を引く」と書き出している。

 その門とは「薬医門」のことで、以下、14行にわたって延々と門の説明が続き、さらに伝統的な建築物がなくなってきたことから始まり、技術革新と低コストを背景に最近の敷地の狭い住宅が主流になり、職人の減少などにより伝統的家屋の修復が難しくなってきたことまで綴り、その保全に取り組む必要があると説く。

 このTくんの主張に対し、教員は、「持ち家の価値保全が重要課題の今、住宅への追加投資が『割に合わない』社会を改める必要がある」と締めくくる。

 ごもっともだ。しかし、へそ曲がりで馬鹿を自任する記者はこのような羽織袴と白無垢の欺瞞に満ちた結婚式のような正論はちっとも面白くない。

 もっと具体的に書くべきだ。「くたびれた」は、例えば「老醜をさらしながらそれでも美しい花を咲かす樹齢数百年の石割桜」か、あるいは(書けば単位を貰えないかもしれないが)「着たきりスズメの我が教官」くらいまで踏み込んで、読者をひきつけるべきだ。

 「疲弊」も「くたびれている」のとほぼ同義語。これも「わが両親の夫婦関係と懐具合と同じくらい疲弊している」と書けば誰も文句はつけない。

 「空き家のようだが、人が住む」と書くのは住人に対して失礼。そのような状態になった理由も千差万別のはずだ。きちんと住人に理由を聞くべきだ。その答えにヒントがある。予想するに「先立つものがない」からだろうが、その問題を解決するためにはどうすればいいか、そこでTくんの主張が生きてくる。そんな広い敷地なら売り払ったほうが高値で売れるとか、歴史的建造物に指定すべきだとか、公的資金を投入して保全すべきだ…などと。

 ついでに言えば、人も建築物も年月を経れば「くたびれる」し「疲弊」もする。その老いを覆い隠すサイディングやケミカル建材が当たり前のように使われるほうがおかしいのではないか。経済効率を最優先するいまの価値観を疑ってみてはどうか。

◇       ◆     ◇

 第254回では、恵比寿ガーデンプレイスのマンションの外観が美しいと2年生Kくんが書いていた。記者もそう思う。あのカルロス・ゴーンさんが住んでいたマンションとは対照的だ。

 しかし、このマンションは住戸内に柱や梁型が結構出ているのが難点だ。外観だけでは善し悪しが測れないということだ。人と同じだ。よく観察する以外に本質・本性を見抜く手だてはない。

◇       ◆     ◇

 最高に面白いのもある。第237回の3年生・Sくんの「閉ざされた公園」だ。「小さい頃、『子供は外で遊べ』とよく言われた…公園の広場は子供が元気に走り回り、鬼ごっこやサッカーをする楽園のはずだったが、そこは閉鎖されていた」と書き出し、「閉ざされた広場は、私権を強く主張する住民や真の公共の福祉を考えない行政ほかが招いた結果だと思う」と言い切る。

 記者も10年前くらいだったか、ある主婦から「子どもを外で遊ばせるようなことを最近のお母さんはしない。危険だから」と聞いて絶句したことがある。

 どこの公園もそうだ。大書きされた入り口の看板の禁止事項には、キャッチボール、サッカー、ゲートボール、ゴルフ、大声、ごみ捨て、花火、犬の散歩などのほかに、喫煙は許されているのに酒気(飲むなとは書いていない)がダメというものもある。いったい酒気を帯びているかどうかを誰が確認するのか。利用時間は平日の9時から午後4時まで、土・日曜日は閉園するものまである。

 Sくんが指摘するように、檻のようにフェンスで囲まれているものも少なくない。主客が転倒している。大事なのは公園か人間か。獣害に悩む農村と同じ光景だ。檻の中に閉じ込められているのは人間のように思えてくる。

 Sくんは都市公園法を読んだことはあるだろうが、禁止事項には「何人も、みだりに…」(第11条)とある。みだりは「妄り」「濫り」(「淫ら」は記者、「みだら英泉」は皆川博子さんの小説)とも書くが、嫌な言葉ではないか。一種の法律用語だ。お上は「公園」すらわれわれを支配する道具にしようと考えていることが分かる。管理責任というものだ。

 しかし、Sくん、東京都は公園の中にマンションを建てさせ、その代わりに公園の維持管理をマンション管理組合に負担させるという画期的な〝民設民営〟制度を活用したことがある。残念ながら1件で終わってしまったが、わが多摩市は中央公園に図書館を建設することを決めた。保育園などの設置例も出て来た。公園の用途も時代とともに変わっていい。

 もう子どもが公園で遊べないのなら飲食、遊戯、宿泊などが行えるようにしたほうがいいというのは言い過ぎか。

◇       ◆     ◇

 もう一つ、公園ついでだ。これは不動産の不思議とは関係ないし、小生が言うのでもない。あのロダンが「講演」を頼まれて言った言葉だ。

 「それをお約束する事は出来ません…『教授』というものはもう意味のない言葉です。値打ちのない言葉です。何にも知らない人たち、自分の道を持っていない人たちがみな教授にかつぎ上げられたがるのです。それに、私(ロダン)に出来る最上の講義はそこにあります。私の製作を見ればいいのです!

 聡明な若い人たちはそれを見て何かの助けになるだけのものを得るでしょう。見る事です!そして仕事することです!」(岩波文庫「ロダンの言葉抄」高村光太郎訳)

 冒頭にも書いた。とにかく全てを疑い、たくさん見ることを皆さんに勧めたい。

カテゴリ: 2018年度
 

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