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「日本の木 ニッポンの家具」ブース(東京国際展示場で)

 日本家具産業振興会は11月25日(水)~27日(金)、東京国際展示場で行われた「IFFTインテリア ライフスタイル リビング」で、国産材生産者、メーカー、若手デザイナーを繋ぐ「日本の木 ニッポンの家具」を出展。国産材活用の場を広げようというのが目的で、多くの家具メーカーのほか全国から公募で選ばれた27組41名のデザイナーがそれぞれの地域材を用いて展示した。

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 国産材を家具にも採用しようという機運が高まっているのは結構なことだし、初めて生産者-メーカー-デザイナーが三位一体で国産材活用をアピールするというので取材することにした。

 できれば小野由記子氏(小野意匠計画代表)かトークショーに出席された初日に取材したかったのだが、都合がつかず、最終日の27日に取材した。それでも多くの収穫があった。

 配布された資料によると、わが国の家具メーカー(100社回答)は輸入材を使用する割合が7割以上という回答が67%に上っており、国産広葉樹は量が少ないうえ、家具に適したサイズ(36~50㎝)のものが少なく、安定的に確保することが困難だとしている。

 その一方で、材料が入手しやすく、安定的で価格が安ければ国産材を使う「可能性がある」と答えたのは85%に上っていることも分かった。

 さらに、国産材活用のために何らかの取り組みを行っているのは41社あり、国産材を家具に採用する機運が高まっているという。これまで強度不足から用いられてこなかったスギ材も加工技術を生かして活用しようという動きもあるという。

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 若手デザイナーの作品をいくつか紹介する。まず、世界を舞台に活躍されているわが故郷・三重県鈴鹿市のHiroki Takada(高田浩樹)氏の作品。

 写真は北海道産のシナノキの古木を用いた作品で、箱根・彫刻の森美術館が購入を検討しており、今井敏・林野庁長官も腰かけられたそうだ。

 Takada氏の作品はニューヨークなどの美術館に多く展示されているそうだ。「ミラノサローネに出品したのがきっかけで、海外を中心に活動するようになった。わが国のようにコミュニティが濃密でないから、作品そのものが評価されるのがいい」とTakada氏が語っていたのはやや気になった。名刺も英語表記だった。

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Takada氏の作品と作品に座るTakada氏

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ヒノキ(左)と秋田杉を桶風にデザインした酒井篤志氏の作品

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鳥取の智頭杉を用いた白岡崇氏の作品

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「東京杉」を用いた伊藤洋平氏の作品

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広島・松岡製作所のキッチンと吉野杉をコラボした特注のシステムキッチン(350万円とか)

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静岡・焼津市の神野克昭氏の作品

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「もみの樹・渋谷本町」

 大和ハウス工業グループの大和ハウスライフサポートは12月1日、渋谷区本町に介護付有料老人ホーム「もみの樹・渋谷本町」をオープンする。

 「もみの樹・渋谷本町」は5階建て57室。専用面積は18.04~20.22㎡(全てワンルーム)。入居金は、一時金方式が1,015万~3,600万円(非課税)、月払い方式が590,600円(税込)。月額利用料は264,600円(税込)(管理費157,680円、特別サービス費58,320円、食費48,600円)。

 新宿副都心の夜景が眺められる最上階の5階には全面ガラス張りのメインダイニングや機能訓練室、理美容室を設置。屋上庭園も設けている。

 1階には、地域住民との交流ができるコミュニケーションスペースを設け、地域住民向けのセミナーやサークル活動なども開催する予定。また、初めての取り組みとして、大和ハウス工業が提案する5種類の介護支援用ロボットや機器を導入し、先進的なケアに取り組む。

 同社は現在、介護付有料老人ホーム「もみの樹」シリーズを3施設、自立型有料老人ホームと介護付有料老人ホームが併設された「ネオ・サミット」シリーズを2施設、計5施設を運営している。

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1階エントランスホール

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 旭化成建材は11月24日、過去10年間に同社が施工した杭打ち工事3,040件に追加調査した12件を加えた3,052件の調査結果をまとめ国土交通省に報告。データ流用は、前回報告(11月13日)の266件から、追加調査で判明した6件を含め94件増え360件となった。

 データ流用が多いのは東京都73件(前回51件)、北海道50件(同26件)、神奈川県35件(同30件)、埼玉県31件(同26件)、千葉県23件(同23件)、愛知県23件(同21件)など。前回は546件が継続調査中で、118件が調査不明となっていた。調査不明は今回も変わらず118件のまま。

 同社の報告を受け、石井国交相は同日、「今回の報告により、旭化成建材がくい工事を施工した物件に関して、13日に報告があったものを含め、360件のデータ流用が行われていたことは、極めて遺憾。既にデータ流用が判明した物件も含めて、早急に安全性の確認を行うよう指示している」とコメントした。

マンション杭打ちデータ流用問題 闇の多重下請け構造浮き彫りに(2015/11/16)

 

 

 

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「竹本邸」

 青木茂建築工房は11月17日、同社が設計・監理し、このほど完成した多摩市一ノ宮の「竹本様邸リファイニング工事」完成見学会を行った。

 プロジェクトは、昭和44年に建てられた診療所併用住宅と、昭和50年に増築された建物を2世帯住宅へ用途変更・増築を行い、耐震補強をリファイニング手法で再生するもの。

 オーナーの意向を受け、既存2棟を一体化し、耐震・耐久性を確保したうえで、1階ピロティを室内化、2、3階のバルコニーの新設、内装外装の一新、床段差解消・エレベータ新設によるバリアフリー化、現行法令へ適合させるための各種工事などを行った。

 見学会で挨拶した青木茂・同社代表は、「オーナーご夫婦、オーナー長女ご夫妻とお子さん、そのご主人のお母さん、オーナーの次女の4家族が住む住宅で、建築費が上昇する中で予算が予定の約3割アップしているが、オーナーとの打ち合わせで予算を修正して再契約した。それからはほとんどオーバーすることなく完成してほっとしている。難しい法規制をクリアするようアクロバチックな手法をたくさん用いた」と話した。

 既存建物は検査済証が存在せず、建設時以降に施行された昭和50年の第二種高度地区指定による高度斜線制限、昭和52年の日影規制について既存不適格となっていたが、平成26年7月施行の「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」に従い、建築基準法適合状況報告、12条5項報告、許可申請、建築確認申請などを約7.5カ月かけてクリアした。

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青木氏

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 青木氏が「アクロバチック」と

割りいう言葉で表現したように、難しい法規制を魔術師のように突破したことがすごい。改めて青木リファイニング建築物の真髄の凄さをみた。

 一言で言えば、更地にして建て替えた場合、クリアできない既存不適格部分(建ぺい率・容積率、斜線制限など)をそのまま残し、建物は耐震性・耐久性を確保し、新築よりコストを大幅に削減したことにより、建物の価値を従前よりはるかに上昇させたということだ。

 見込み違いもあったようだ。当初、確認申請まで4カ月で済むという計算が狂い、7.5カ月も掛かったことだ。建築費がどんどん上昇しているときだったので、青木氏も心配したそうだが、「オーナーに事情を説明し納得していただいた。追加工事費は仕様レベルを上げたにも関わらず約30万円で済んだ」という。

 既存建物を一体化させた痕跡はほとんど見当たらない。唯一発見したのは階段だった。1階から2階へ、2階から3階への階段のステップは14段だったが、3階から4階は15段だった。これは、階高の差によるものだ。

 唯一の難点だと思ったのは廊下・階段幅が尺モジュールになっていたことか。青木氏は「幅は広げられなかった」と語った。

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 青木氏は見学会で、「住宅は赤字になるのでやりたくないが、頼まれると断れない。新しい本も出版したが、みんな研究費に消える。僕は原稿料ももらっていない。」とこぼし、見学者を笑わせた。注文が殺到し青木氏がお手上げ状態になれば、行政も動き、継承者もどんどん育つのではないか。

 もう一つ。青木氏は「(建築)主事によって解釈がみんな異なるが、肝心なのはすべて考えを聞いて、それに沿うことだ」と語った。杭打ちのデータ流用が社会問題となっているいま、ものすごく貴重な言葉だ。

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 日本建設業連合会の「第56回BCS賞」の授賞式が11月16日に行われた。青木茂建築工房がリファイニングした「北九州市立戸畑図書館」も受賞作の一つで、「あべのハルカス」「JPタワー」「資生堂銀座ビル」など14作品が表彰された。

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バリアフリーになっているエントランス

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2階キッチン

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第3回「JEG DESIGN CONTEST 2015」(新宿・四谷区民ホールで)

 住宅エクステリアガーデン研究会(JEG)は11月16日、第3回「JEG DESIGN CONTEST 2015」プレゼンテーション大会を開き、関係者ら約450人が参加した。

 JEGとは、旭化成ホームズ//旭化成住宅建設、ウィズガーデン、住友林業緑化、東京セキスイハイム/東京セキスイファミエス、積水ハウス/積和建設東東京/積和建設神奈川、ナテックス/パナホーム、三井ホームと、今年から参加した大和ハウス工業の8社が共同運営・活動する機関で、それぞれ情報交換・意見交換などを通し、エクステリア ・ガーデンの共同テーマをもとに社員の教育プログラムや住宅営業担当への知識普及促進、商材や施行品質向上のための勉強会などを行っている。

 プレゼンション大会は、応募総数992点の中から二次審査を通過したエクステリア大型、エクステリアベーシック、ガーデン、街づくり・集合住宅の各部門4作品ずつ16作品の各担当者が作品のプレゼン能力を競い合うもの。

 16作品の中からもっともいい作品を選ぶグランプリは、積水ハウス・田原征幸氏の「四季の移ろいを感じる住処」だった。

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 記者は他の取材が入っていたので、ガーデン、街づくり・集合住宅部門のプレゼンしか取材できなかったが、なかなか面白い大会だ。

 作品としては住友林業緑化・藤崎太朗氏の「山桜咲く優遊の庭」、積水ハウス・飯沼宏貴氏と積和建設神奈川・前原尚一氏の「プライムヒルズ」もよかったが、記者がもっとも優れていると思ったのは、積和建設神奈川・佐藤勘才氏の「湘南の雑木の庭」だった。

 作品に対する施主の評価だけでなく、近所の人や街を歩く人の評価を補強材料にして、「エクステリアは生きた広告媒体」という特徴をよくアピールできていた。

 

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 野村不動産アーバンネットは11月11日、子育てワーキングママを支援する「ワーママ総研」を同社の情報サイト「ノムコムwith Kids」でスタートさせた。

 「ワーママ総研」は、アンケートやお宅訪問、コラムなどを通じて現在のワーママの事情を調査し、ワーママに役立つ情報を発信していく。

 ワーママが仕事と子育てを両立するためには、“夫”の理解と協力が欠かせないとし、「ワーママ総研」の立ち上げにあたり、夫の子育てや家事の分担に関する実態を調査。調査は、理想と現実のギャップを浮き彫りにしている。

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 育児や家事労働の理想と現実のギャップはいろいろなところが明らかにしているが、「ワーママ総研」も同様だ。調査は、25歳~44歳の子育てをする既婚女性600人からネットアンケートで聞いた。

 こどもの世話は夫と自分(妻)が半分ずつというのが理想と答えた人が43.5%であるのに対し、現実はほぼ自分がすると答えた人は58.1%で、子どもの食事の準備は25.7%の人が夫と半分ずつ分担するのが理想だが、現実はほぼ自分と答えた人は75.5%に達した。

 1日の家族団らん時間については、2時間以上の時間をとる家庭は平日が29.7%で、休日は81.2%となったが、7.2%の人は休日でも1時間未満しか団らんの時間をとっていないと答えた。

 世帯年収の割合は、57.5%の人がほぼ夫の年収と答え、「夫の収入のほうが多い」は30.8%だった。

 調査結果からみえてきた夫の家族とのかかわり方を、6つの動物の生態系にあてはめて紹介しているのが特徴で、「専業主夫」タイプはオオサンショウウオ、教育熱心な夫はビーバー、妻をサポートする万能「カジメシ」夫はハト、「イクメン」夫はコウテンペンギン、「子煩悩」夫はオオカミ、「無関心夫」はゴリラだそうだ。

「ワーママ」サイトはhttp://www.nomu.com/withkids/wm/index.html

 

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匠の技について講話する宮沢社長(さいたま市立春里中学校で)

 「親方に弟子入りしたい」-国土交通省は10月31日(土)、子どもたちに建設業の社会的な役割やものづくりの素晴らしさを知ってもらおうとさいたま市教育委員会と連携、市内の小・中学校を対象としたキャラバン「建設産業ものづくり体験授業」を実施。「カンナ社長」ことアキュラホーム・宮沢俊哉社長のかんな掛けを目の当たりにした生徒は「親方(宮沢社長)に弟子入りしたい」「親方のようになるには何年かかりますか」「自分もなりたい」などと感動を語った。

 体験授業は、建設業界に対する世の中一般のネガティブなイメージを払しょくし、建設業の魅力を発信しようという取り組みの一環として行われたもので、今回は市立新和小学校と春里中学校を対象に行われた。この種の授業は工業高校では行われているが、小・中学校では初の試み。

 市内見沼区の春里中学校では、8時45分から開会式が行われ、1年生約270名が建設産業の紹介、かんな掛け、釘打ち、のこぎり挽き、壁塗り、作業ロボット体験のほか、地滑り、トンネル工事、液状化などについて正午まで学んだ。

 体験授業には土木学会や埼玉県左官業協会が、業界からはアキュラホーム・宮沢社長がかんな掛けを、大和ハウス工業が作業ロボットスーツの体験・実演をそれぞれ行った。

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かんな掛け(左)と釘打ち体験

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宮沢社長

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目を輝かせてかんな掛けを観る生徒

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 かんな掛けにはミクロン(1000分の1単位)の技を持つアキュラホームの宮澤俊哉社長が講師として参加。自ら大工として弟子入りしてから、トップレベルのかんな掛けができるようになった経緯をわかりやすく話し、実際に匠の技を生徒の前で披露した。

 しゅるしゅると薄絹のような「かんな華」がむき出され、鏡のようになった表面に生徒たちは歓声を上げた。質問コーナーでは、「何年で技は身につきますか」「親方に弟子入りしたい」「コツはありますか」「好きな木はなんですか」などと宮沢氏を質問攻めにした。

 生徒たちは「とても楽しかった。自分も大工になりたい」「ワクワクの連続」「ロボット体験がおもしろかった」などと異口同音に感動を語った。

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約24キロのペットボトルを楽々と持ち上げる生徒

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壁塗り(左)と地滑りの実験をする生徒

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「三井ショッピングパークららぽーと海老名」

 三井不動産は10月29日(木)、神奈川県海老名市の駅直結型のリージョナル型ショッピングセンター「三井ショッピングパークららぽーと海老名」を開業する。開業に先立つ27日、報道陣など関係者に公開した。

 「三井ショッピングパークららぽーと海老名」は、小田急小田原線、相鉄線、JR相模線の3路線が乗り入れる「海老名」駅と新たな連絡デッキで直結した敷地面積約33,000㎡、4階建て述べ床面積約121,000㎡、店舗数263店舗の商業施設。

 空間デザイン・ショップ・イベントの複合的な組み合わせによって新しい海老名のコミュニティの場となる施設のセントラルゾーン「EBICEN(エビセン)」が設置されており、単に人が集まり買い物をする場所から「ひと」「もの」「こと」が複合的に集まり、交流する場所になるよう空間デザインに工夫を凝らしているのが特徴。

 「エビセン」内には大人のための学びや体験を提供する「大人ゼミ」、親と子のコミュニティコアとなる「コドモゼミ」が設けられている。

 プレス説明会で同社常務執行役員・石神裕之氏は「駅直結型野263店舗からなるワンストップショップを実現した。地域の発展に貢献していく」と話した。
 初年度は売上げ300億円を目指す。

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エビセン フラット

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 何度見てもこういった商業施設はよく分からない。しかし、「大人ゼミ」と「コドモゼミ」はその企画意図がよく伝わってきた。買い物に興味のない人の手持ち無沙汰を解消してくれるスペースだ。

 「大人ゼミ」に出店している大阪屋の子会社・リーディングスタイルの書籍・雑貨・カフェを複合した新しい形態の書店「BOWL」がなかなか面白い。

 「BOWL」には、裏表紙の紹介文しか頼りにできないミステリアスな「あらすじ百景」、著者、著者の誕生日などの情報しか得られない「BIRTHDAY BUNKO」コーナーがあった。書籍はビニールに包まれている。いわゆる〝ビニ本〟だ。

 これは本屋としては邪道だとは思ったが、〝中身は何だろう、どんな作品だろう〟というワクワク、ドキドキ感を満たしてくれる。ビニ本商法にのるかそるかの勝負の気配も伝わってくる。記者は自分の誕生日である「4月6日」の「久生十蘭」(1902年4月6日生)を購入した。読み終えてはいないが、面白い。同じフロアには大手の「有隣堂」書店があるが、テーマを絞り、目利き力で勝負すれば十分戦えると思った。

 今年6月、出版取次ぎ4位の栗田出版販売が民事再生の申請を行なったのに衝撃を受けたが、大阪屋も出版取次ぎが本業だ。取り次ぎも本屋も不況を嘆くだけでなく、発想の転換が求められているのだろう。

 「コドモゼミ」は、同社社有林の間伐材を用い、東京おもちゃ博物館が監修したスペース「Wood Egg」が人気を集めそうだ。

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「Wood Egg」

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内観
 

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 国土交通省は、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」の報告書がとりまとめられたのを受けて、「マンションの管理の適正化に関する指針」及び「マンション標準管理規約」の改正(案)をとりまとめ、パブリックコメント(意見公募)を開始した。

 ここでは、「マンション標準管理規約(単棟型)及び同コメントの改正案」の管理費に含まれるものを定義した第27条と、管理組合の業務を定めた第32条について、記者の考えを紹介する。

 改正案では次のように記載されている。やや長いが引用する。

 ② 従来、本条第10号に掲げる管理費の使途及び第32条の管理組合の業務として、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(に要する費用)」が掲げられていた。これは、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するコミュニティ形成について、マンションの管理という管理組合の目的の範囲内で行われることを前提に規定していたものである。しかしながら、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈の懸念があり、とりわけ、管理組合と自治会、町内会等とを混同することにより、自治会費を管理費として一体で徴収し自治会費を払っている事例や、自治会的な活動への管理費の支出をめぐる意見対立やトラブル等が生じている実態もあった。一方、管理組合による従来の活動の中でいわゆるコミュニティ活動と称して行われていたもののうち、例えば、マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第3条に定める管理組合の目的である「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限りにおいて可能である。

 以上を明確にするため、第27条第10号及び第32条第15号を削除するとともに、第32 条第12号を「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」と改めることとした。

 (略)

 ③ 管理組合は、区分所有法第3条に基づき、区分所有者全員で構成される強制加入の団体であり、居住者が任意加入する地縁団体である自治会、町内会等とは異なる性格の団体であることから、管理組合と自治会、町内会等との活動を混同することのないよう注意する必要がある。

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 改正案は「『地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成』との表現には、定義のあいまいさから拡大解釈の懸念」があるとし、「管理組合と自治会、町内会等とを混同」していることから、混同を避ける意味で、第27条10号及び第32条第15号(その他組合員の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために必要な業務)を削除するとともに、第32条第12号を「マンション及び周辺の風紀、秩序及び安全の維持、防災並びに居住環境の維持及び向上に関する業務」と改めるとしている。

 その一方で、「マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動は、それが区分所有法第3条に定める管理組合の目的である『建物並びにその敷地及び附属施設の管理』の範囲内で行われる限りにおいて可能である」ともしている。

 前段の部分は是非はともかくとして分かりいい。問題は後段の部分だ。極めてわかりづらい。

 例えば街の美観・清掃活動を行い、慰労・懇親会に1万円の経費で酒食を提供するとしよう。この場合、その経費に見合ったマンションの資産価値の向上が実現したかどうかと問われれば、どれだけの人がそれを客観的に証明できるだろうか。結局は、管理費の目的外使用と指摘されるのを恐れてやらなくなってしまうのではないか。「親睦を目的とする飲食の経費などは、マンションの管理業務の範囲を超える」と言われたら、様々な行事はお茶か水だけの(これもただではないが)実に味気ないものになり、すぐに解散ということになりかねない。管理組合は前段と後段の解釈を巡ってジレンマに陥るのは必至だ。役員のなり手不足どころか、やる気をそぐ動きを助長しないか心配だ。

 コミュニティとは何かという根本的な問題もあるし、国が管理組合という集合住宅居住者のコミュニティ活動に足かせをはめていいかどうかも疑問だ。

 多くの管理組合が実施している餅つき、夏祭りはもちろん、わが国では古くから七夕祭り、お月見、クリスマス(最近はハローウィンも加わったようだが)などが年中行事として行われている。これは文化だ。文化がすたれば地域コミュニティは間違いなく崩壊する。

 マンション居住者(管理組合)が、地域のコミュニティにどうかかわるかは居住者(管理組合)の主体的な判断に委ねるべきだ。主体者が自主的に判断する、これが自治だ。多様な管理形態があってしかるべきだし、それぞれの管理組合の創意工夫がそのマンションの市場での価値を高めることにつながると思う。国が細かな点まで関与する問題ではない。

 マンションの資産価値はどうしたら向上できるのかという難問も横たわる。

 ユーザーがマンションを購入する際の選考ポイントとなるのはもちろんそのマンションの基本性能、居住性能だが、それだけではない。周辺の居住環境、地域の防災・防犯意識、そのたあらゆる要素を総合的に判断して決断する。街のポテンシャルが低下すれば、その街に存在するすべてのマンションの資産評価は下がる。

 そうならないよう、街のポテンシャルを向上させるためにも、管理組合は町内会や商店街、PTAなどと共に主体者として行政とも連携を図り、コミュニティ活動に積極的にかかわっていくべきだと考える。マンション単体では資産の維持・向上を図るのは限界がある。

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 そもそも、今回の「検討会」は多くの現場の多様な声を無視、封殺し、一部の委員のみの意見を反映させたもので、審議は極めて非民主的に行われてきた。

 このことについてはその都度記事にしてきた。オブザーバーの反対意見に対して、「しどろもどろなそんな意見では、わたしの(講義)では不可(単位はやらないという意味か)」と恫喝した委員もいた。 「検討会」は、多くの異なった意見・考えを持つ有識者から意見を聞き、どう調整してとりまとめを行うかが本来の姿だと考えるが、これでは単に「意見を聞き置く」セレモニーに過ぎない。なのに、どうして論議に3年も(2年半の中断あり)時間をかけるのか。

 この2年半の間に何があったのか、記者は知る由もないが、この検討会を主導した人たちは、管理が困難なマンションについては、欧米で採用されている「第三者管理方式」を積極的に導入すべきという論陣も張った。議決権についても専有持分比率だけでは不十分で、価格価値で判断してはどうかという意見も飛び出した。

 仲間意識とか思いやり、絆などは一顧だにせず、ものごとを合理的か否かしか考えない、こういう人たちのことを新自由主義者、ネオリベラリストと呼ぶのだろうかといま考えている。

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 国土交通省は10月21日、「マンションの管理の適正化に関する指針」及び「マンション標準管理規約」の改正(案)に関するパブリックコメントを開始すると発表した。期間は平成27年10月21日(水)から平成27年11月19日(木)まで。

 最終とりまとめで示されたマンション標準管理規約の改正について、業界関係者やマンション管理組合がどのような反応を見せるかが注目される。

 国交省は改正案の概要の一つとして「コミュニティ条項等の再整理」をあげ、「防災・防犯、美化・清掃などのコミュニティ活動は可能であることを明確にし、判例も踏まえた条項として各業務を再整理。(第27条、第32条)」としている。

標準規約からマンションコミュニティー条項が消える? 国交省の検討会(2015/2/27)

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