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 旭化成は1月8日、同社の子会社旭化成建材が施工した横浜傾斜マンションの杭打ちデータ流用問題に関する3名の弁護士からなる外部調査委員会の「中間報告書」を公表した。

 報告書は、昨年12月25日に国交省に提出された「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」(委員長:深尾精一・首都大学東京名誉教授)の「中間とりまとめ報告書」が指摘した問題と同様、ずさんなデータ管理、不明確な役割分担などが原因としたうえで、元請の三井住友建設、一次下請けの日立ハイテクノロジーズ、二次下請けの旭化成建材それぞれの建設業法や建築士法に関する違法性にも踏み込んでいる。

 また、事件発覚を受けて三井住友建設が行なった「試験の結果に基づいて支持層未達等杭が存在すると判断することには慎重であるべき」とし、近く行なわれる再検査結果を待たなければならないとしている。

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 これまでの同社の記者会見では三井住友建設や日立ハイテク、旭化成建材の建設業法、建築士法に関する違法性について暗示はされていたが、明言・明示はされていなかった。今回、報告書が初めて各社の違法性に触れた。

 今回の工事について報告書は「元請業者であるSMC(三井住友建設)は監理技術者を、下請業者である旭化成建材等は主任技術者を、それぞれ設置する必要があり、また、本件マンションのような共同住宅に関する建設工事は『公共性のある重要な工事』に該当するため、監理技術者及び主任技術者は、本件杭工事について専任の者でなければならない」とし、「SMCは、本件杭工事に関し、建築士法に基づいて工事監理者を、建設業法に基づいて監理技術者を、それぞれ置く必要があったが、それが誰であったのかは、旭化成建材に残された資料からは判明しなかった」と、建築士法や建設業法に触れる可能性を示唆した。

 この点について、三井住友建設は「永本副社長は、『試験的に打つ杭に立ち会い、残りは施工報告書で確認すればよい』とする国交省の標準仕様書に沿った対応だとして、『管理に落ち度はなかった』と強調した」(日経WEB版)と、監理に瑕疵はなかったとしている。

 さらに、「日立ハイテクは、事実上、旭化成建材と一体となって、SMCに対する営業活動を行う役割が大きかったが、その担当責任者は…本件杭工事現場に常駐していなかった可能性が高い」「日立ハイテクは、本件杭工事に関し、建設業法に基づいて主任技術者を置く必要があったが、それが誰であったのかは、旭化成建材に残された資料からは判明しなかった」と、建設業法に抵触するのではとしている。

 旭化成建材に対しては、「本件杭工事に関し、建設業法に基づいて主任技術者を置く必要があったところ、主任技術者は…法令が定める『専任』義務を果たしていなかった」と法令に触れる可能性を指摘している。

 事件発覚を受けてSMCが行なった「スウェーデン式サウンディング試験」については、「一般的に用いられる地盤調査方法の一つとして一定の信頼性があるとされているが、複数の専門家に対するヒアリング結果によれば、地表からおおむね10メートルを超える深度の支持層を測定するには必ずしも妥当な調査方法ではないとの見解も見受けられる」とし、横浜市が「建築基準法第12条第5項に基づく報告を行うよう求めているので、今後、これを踏まえた検証がなされるものと理解している」「SWS試験の結果に基づいて支持層未達等杭が存在すると判断することには慎重であるべき」とした。

 報告書は、「杭の施工さえ適切に行っていればデータはそれほど重要ではないという現場の感覚は、一般社会の感覚と大きく乖離しているといわざるを得ない」と、業界の体質についても言及した。

杭打ちデータ流用、ルール守れば再発防げる 国交省・対策委員会(2015/12/25)

杭打ちデータ流用問題 結局は大山鳴動…早々に幕引きへ 国交省・対策委(2015/12/12)

マンション杭打ちデータ流用問題 闇の多重下請け構造浮き彫りに(2015/11/16)

 

カテゴリ: 2015年度

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草月流とコラボした「植物の繭」 

 三井不動産は1月8日、東京駅丸の内駅舎の3Dプロジェクションマッピングなどで知られるネイキッドがプロデュースした「FLOWERS BY NAKED」を「日本橋三井ホール」で開催する。「花」をモチーフにしたもので、生花、オブジェ、映像、インタラクティブ、香り、飲食など五感で楽しめるよう工夫されており、「いけばな草月流」とのコラボレーション作品「植物の繭」も展示される。

 開催に先立つ7日、プレス内覧会・オープニングセレモニーが行われ、ネイキッド代表・村松亮太郎氏と草月流家元・勅使河原茜氏、テーマソングを担当する水曜日のカンパネラ、コムアイ氏がゲスト出演しトークショーを行った。

 「FLOWERS BY NAKED」は1月8日~2月11日まで「日本橋三井ホール」で開催される。また、重要文化財「三井本館」や「仲通り」「コレド室町1~3」などのイルミネーション「NIHONBASHI ILLUMINATIONS collaborated with FLOWERS」も同時開催されており、春の花に見立てた三井本館の外壁が徐々に開花していく様子が表現されている。

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左からコムアイ氏、村松氏、勅使河原氏

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「Big Book」

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「BIG FLOWERS」

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生け花

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「DANDELION CLOCKS」

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 会場の入り口では、大きな本の造作〝Big Book〟と人の背を超える蓮のような花が出迎え。壁面にはフィボナッチ数列に基づいたモザイクが映し出され、息を吹きかけるとそれに反応して音とともに100万本の綿毛が舞い上がる「DANDELION CLOCKS」、ドクドクと鼓動が伝わる草月流とのコラボ作品「植物の繭」、和紙でできた桜に光り輝く花が舞う「桜彩」…。

 不思議な世界に人を引き込むのは間違いない。とくと写真を見ていただこう。約5,000円で「世界にたった1本のバラ」をプレゼントできる「BLANC」もおすすめだ。

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ピンク色に染まる三井本館(極彩色に染まるかと思ったが、そうではない。隣の三越、日本橋三井タワーがライティングされているので目立たない。派手にして重文がショックを受け風邪をひかないように配慮したためか)

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仲通り

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 野村不動産アーバンネット1月9日(土)、不動産仲介店舗「野村の仲介+」の「広尾センター」を開設する。

 今回の店舗開設により、「野村の仲介+」の部店数は首都圏63部店・関西圏5部店の計68部店となる。

 「広尾センター」は、東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩2分、外苑西通りに面した「広尾リープレックス・ビズ」5 階。センター長は中村偉氏。電話:03-5791-7691、FAX:03-5791-7695。

 

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 またまた、さらにまたやってくれました。アットホームがやってくれました。同社のいえ・まち・くらしの情報サイト「at home VOX(アットホームボックス)」(URL: http://www.athome.co.jp/vox)が1月7日、全国47都道府県出身の20~50 代男女1,457名を対象に「2016 年注目されそうな都道府県」について調査を行ったところ、第1位の「東京」に続き、第2位にはわが故郷「三重」(さんじゅうじゃありません)が入ったじゃありませんか。

 この情報サイトはいつも奇想天外な、とんでみないアンケートをやるが、今回は至極ごもっとも、星三つを献上したい。

 1位になった「東京」は、回答率18.19%で断トツだったが、その理由は「オリンピックに向けて、何かと注目されそう」「首都なので、いろいろと話題が生まれそう」「東京は常に注目されている」とのことらしい。

 さて、「三重」は回答率7.82%で「東京」に10ポイントも引き離されたが、3位「北海道」の7.55%を振り切り、4位「大阪」、5位「沖縄」、7位「京都」、17位「愛知」などを上回った。

 その理由はいうまでもなく「伊勢志摩サミット」。ニュースリリースによると「三重県民からの指示が54.84%と高いのも特徴」とある。(えっ、三重県民が投票するよう指示を出した? 温厚な三重県民がそんな姑息なことをやるはずがない。何かの、というより明らかに誤植)

 ちなみに最下位は回答率0.41%の「佐賀」。理由は「(佐賀に)住んでいるから」。ブービーは「愛媛」、以下、「香川」「奈良」「徳島」と続く。

 昨夜は、日本橋の「三重テラス」で食事をしようと思っていたが、「獺祭」の誘惑には勝てず、コレド室町の店に入ってしまった。北海道の「厚岸」にも入ろうと思ったが、予約いっぱいで入れなかった。カキが人気のようだが、三重には世界ブランドの的矢(まとや)のカキがある。小粒で濃厚。

 ほかにも三重の魅力はたくさんあるが、あまり書くと皆さんに怒られそうなのでこのあたりでとどめる。今年は三重だ!

 

 

 

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挨拶する不動協・木村理事長(ホテルオークラ別館で)

 不動産協会(理事長:木村惠司・三菱地所会長)と不動産流通経営協会(略称:FRK、理事長:田中俊和・住友不動産販売社長)は1月6日、合同の新年賀詞交歓会を開催した。アベノミクス効果が出てきたためか、参加者は例年より多い1,150名(昨年は1,050名)にのぼった。

 冒頭、挨拶に立った木村・不動産協会理事長は、バブル崩壊後20数年が経過したことで社会構造が変わり、非正規雇用の増加による中間層のレベル差、企業の国際競争の激化、国内需要の伸び悩み、労働力不足などの問題に対し、「これから先は今までの価値観では済まないことを念頭に置きながら、デフレ脱却、持続的な経済成長、希望が持てる社会の実現に向けて政官民が力を合わせて努力しなければならない」とし、「経済成長の面で住宅の安定的な投資が不可欠であり、合わせて大都市の競争力をつけ地域の活性化が大事な問題になってくる」と、業界の役割が大きいことを指摘した。

 また、昨年末の税制大綱では「ほぼすべて要求が認められた」ことを受け、これから先の施策・住宅着工動向などを注視し、住宅が成長をけん引することに貢献していくためにも状況によっては幅広い観点から機動的な政策を行っていただきたいと国に求めた。

 消費税については「消費税の動向に左右されない安定的な負担軽減も求めていく」とした。

 不動産協会では、社会構造の変化を受け、「これから先2025年、2030年の将来を見据え大都市や住宅はどうあるべきかについて政策提言をまとめている」とし、「大都市」「街づくり」「ストック形成」についてそれぞれ方向性を示した。

 「大都市」については、「大都市は持続的な成長、豊かな社会を実現する原動力であり、海外からヒト・モノ・カネ、情報、企業が集まりイノベーションできる場とし、グローバル競争に勝っていくためにも施策をスピーディに展開することが重要であり、ハード・ソフト両面での環境整備が必要」と述べた。

 「街づくり」では、子育て・就労、健康保持の構築が喫緊の課題であり、業界は街づくりを通じて政府が進める「一億総活躍社会」の実現に貢献していく必要性を強調した。

 「ストック形成」では、良質な新築住宅を供給するとともに、既存住宅はリノベーションなどを図りながら「多種多様なニーズに応え、日本の安定的持続的な成長と、国民が将来に希望の持てる社会の実現に向け邁進していく」と決意を述べた。

 乾杯の音頭を取った田中・FRK理事長は、「足元の不動産流通市場は昨年春以降2ケタの伸びを見せており、新税制は市況を下支えするはずで、我々は安心・安全の取引を通じて消費者に喜んでいただくよう取引の透明性を一層高め、流通市場の活性化のために創意工夫を凝らし一丸となって取り組んでいく」と話した。

 賀詞交歓会には石井啓一国交相など30名を超える国会議員も詰めかけ盛大な会となった。

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挨拶するFRK・田中理事長

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 岩沙弘道・不動産協会会長(三井不動産会長)がデフレ脱却に並々ならぬ決意を披露した。

 「今年の干支は丙申(ひのえさる)。前回60年前の丙申は〝もはや戦後ではない〟と言われた年だったように、今年こそデフレ脱却を宣言できる年にしなければならない。アベノミクスの果実は実りつつある」とし、「経済と消費の好循環を実感できるよう多様な雇用・働き方ができる取り組みをしっかりやっていくことが大事」などと述べた。

 「大手デベロッパーは地方の再生・活性化に消極的ではないか」という記者の質問に対しては、「都市と地方を対立軸として考えるべきではない」とし、「地方の活性化にも(当社は)しっかり取り組んでいますよ」と話した。

 来賓としてあいさつした野田毅・自民党 税制調査会最高顧問が気の利いた発言をした。税制改正では「私は90点くらいだと考えていたが、木村さんや岩沙さんからは『120点くらい』と評価された」と会場を笑わせたあと、「消費増税の反動などに過剰に反応することが海外からも批判される。われわれ日本人は合成の誤謬に陥っている。ビヘイビアを注意しなければならない」と語った。ミクロ、マクロ両面から物事を考えないといけないということだ。

 公明党の井上義久幹事長は「地方都市にも目を向けていただきたい」と業界に注文した。

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岩沙会長

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記者会見する深尾氏

 業界自主ルールの徹底で再発は防げる-国土交通省・基礎ぐい工事問題に関する対策委員会(委員長・深尾精一首都大学東京名誉教授)は12月25日、横浜傾斜マンションに端を発した基礎杭データ流用問題に対する「中間とりまとめ報告書」をまとめ発表。横浜の事案を除き、データ流用は施工不良につながっていないという検証結果を踏まえ、建設業界が自主的に定めたルールを徹底すれば再発は防止できるとした。国交省は近く「告示」としてガイドラインを示す。

 報告書はA4判で40ページにのぼるもので、問題の概要・経緯について触れた後、発注者、設計・工事監理者、元請、一次下請け、二次下請けのそれぞれの課題を指摘。それぞれ責任の所在が明確化されていなかったことに遠因があるとして、国交省が施工ルールを定め、業界が自主的に定める施工ルールを誠実に実行することを求めている。業界の構造的な課題については、施工技術の継承を含めて腰をすえて検討すべきとしている。

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 「基本的なルールを業界が定め、それを業界全体で共有し守ればデータ流用はなくなる」-深尾委員長は石井国交相に報告書を提出したあとの会見で何度も繰り返した。

 その通りだろうと思う。報告書は過不足なく問題点が指摘されており、極めて明快な方向性が示されている。

 問題発覚からわずか2カ月で問題が収束の方向に向かっているのは、日建連を中心とする業界団体の自主規制が強く働いたからできないか。深尾委員長も「早期に方向性が示せたのは業界団体の真摯な取り組みがあったから」と否定しなかった。

 しかし、全て問題が解決したわけではない。データ流用と横浜の傾斜マンション問題の関連性は低いとはいえ、国民の建設業界に対する安心・安全の不安は今回の報告書でもっても払拭できないばかりか増大した。深尾委員長も「サラカンの監理に関しては改善の余地がある」と話し、横浜の問題が年明けの再調査待ちになったことに対しても「残念」と不快感を示した。記者団から元請の責任を追及する質問がたくさん出たのは当然だろう。原因を徹底解明して欲しい。

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 以下、深尾委員長に対する記者の質問と答え。

 -わずか2カ月で明確な方向性を示したが、その感想は

 業界団体が再発防止に真剣に取り組んだことが大きい

 -新国立競技場選定で、先生はA案、それともB案を支持されたのか

 ノーコメント。いろいろ言いたいことはあるがノーコメント。マスコミの姿勢も問題だ。僕のところに夜中に電話してきた(バカな)記者がいたし、伊東さんにあんなことをしゃべらしちゃいけない。デザインだけじゃないんだよ。ゼネコンなどとの共同提案なんだよ(先生、申し訳ない。われわれはつい建築家のデザインに目が行くんです。木造ファンの記者はA案)

 -今日はクリスマス。先生はこれからどうされるのか

 これからだよ。今年は業界の三大ニュースに全部関わったんだよ。大変だよ(深尾氏は今回の対策委員会委員長とJSCの技術提案等審査委員会委員、東洋ゴム工業のデータ改ざん問題に関する国土交通省の有識者委員会委員長を務めた)

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杭打ちデータ流用問題 「信頼回復」のカギは監理機能の厳格運用(2015/12/13)

杭打ちデータ流用問題 結局は大山鳴動…早々に幕引きへ 国交省・対策委(2015/12/12)

 

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 明和地所の国立マンション建設をめぐる訴訟で、国立市が同社に支払った損害賠償金約3,120万円は当時市長だった上原公子氏が賠償すべきとした裁判(東京地裁平成26年9月25日判決言渡し)の控訴審言い渡しが12月22日、東京高裁で行われ、小林明彦裁判長は東京地裁の原判決を取り消し、国立市の請求権を認める判決を言い渡した。

 2014年9月25日の第一審判決では、東京地裁は「元市長への求償権行使は信義則に反し許されない」として、市の訴えを退けた。これに対して、市が控訴していた。

 控訴審判決に対して上原氏は「とんでもない判決。年内に上告します」とコメント。国立市は「現段階で詳細を把握できておらず、コメントは差し控える」とした。

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 42席ある法廷の傍聴席は裁判が始まる午後2時までに満席となった。上原氏はいつものように和服姿で登場した。この日は、濃紺の地に薄い笹の文様をあしらったもので、帯は鮮やかな沖縄の伝統的な染色技法の一つ紅型(びんがた)。時おり支持者に笑顔を見せていた。

 判決言い渡しはきっかり2時に始まった。

 「主文 原判決を取り消す。被告訴人は国立市に対して3,120万円と…」-小林裁判長が判決を言い渡した。すかさず上原氏の代理弁護士が「説明がない…」と異議を唱えたが、小林裁判長は「判決要旨は差し上げることになっているので、法廷では読み上げません。これで終了」ぴしゃりと、打ち切りを宣言した。この間、20~30秒。

 傍聴席からは「ひどい!」「最低!」「悪代官」などの声が飛び交った。「わたしは皆さんと立場が逆で、国立市を支持するものですがコメントをいただけませんか」と声をかけたが、ほとんど無視され「お前は官憲か」とも言われた。(わたしは皆さんと考えが異なりますが、敵ではありません。聞く耳は持っています)

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 判決後、国立市は次のように市の見解を発表した。

 「本日平成27年12月22日、東京高裁にて国立市が上原元市長を被告として訴えていました損害賠償請求訴訟で、市の請求を認証する旨判決がありました。なお、現時点ではまだ判決の詳細を把握できておりませんので、コメントは差し控えさせていただきます」

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 上原氏と弁護団は判決後、記者会見を行い、次のような声明文を発表した。

 「控訴審においては、2013年12月19日における法規決議が違法であるか否か、放棄決議があるにもかかわらず市長が求償権の放棄をしないことが首長の権限乱用になるか否かが問題であった。この点について、本判決は、2015年5月19日、国立市議会が上原公子元市長に対して『求償権を行使せよ』との決議を行ったことを取り上げて、理由も付さずに権限乱用を否定した。

 …このような認定が横行すれば、地方自治・住民自治を委縮させ、発展を阻害することになる。

 …控訴審では…何ら論争が行われず、全く事実の審理が行われなかったにもかかわらず、独断と偏見に基づいて(原判決とは)正反対の判断が行われた。

 本事件は、住民自治のあるべき姿が根本的に問われている事件であり、このままでは、今後の地方自治をますます委縮させることになりかねない。

 上原元市長と弁護団は、ただちに、上告する予定である」

上原元国立市長に対する求償裁判 12月22日(火)に東京高裁判決言い渡し(2015/9/10)

国立 市議会勢力図が逆転 どうなる上原氏への損害賠償請求(求償権)(2015/5/1)

上原・元国立市長への求償は当然 議会「決議」の法的効力は?(2015/1/31)

「求償権の放棄」は問題 国立市は上原元市長に賠償請求すべき(2014/10/1)

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 自民党の「中古住宅市場活性化に向けた提言-『中古市場に流通革命を』-」に日本不動産鑑定士協会連合会(JAREA)が開発した中古戸建て住宅の積算価格査定システム「JAREA HAS」と、重要事項説明書、建物診断(インスペクション)、シロアリ点検調査報告書をもとに中古住宅の適正価格を査定するワンストップサービス「住宅ファイル制度」が具体的に盛り込まれたことから、JAREAが中古住宅の評価に関与する動きが強まっている。

 JAREAは平成23年6月、「不動産鑑定業将来ビジョン」を策定し、従来の鑑定評価「単一型ビジネスモデル」から「多様型ビジネスモデル」への転換を打ち出し、今後業務の拡大が期待される分野として「住宅」を掲げ、ビジネスモデルの研究・開発に取り組んできた。

 そして平成25年11月に住宅ファイル制度を提言して以降、JAREAの活動は加速し、今秋から近畿を中心に不動産業界向けに活動を強化している。業界向けの説明会には1回当たり100名を超える参加者があるという。

 活動を強化していることについて、JAREA住宅ファイル制度特別委員会副委員長・村木康弘氏は、「ポイントは民法の改正です。平成27年3月、民法改正要綱案が閣議決定され、次の国会で審議が始まると思いますが、現行では規範重視、つまり不動産慣行ルールが認められているのに対して、改正民法では欧米型の契約重視、契約内容や契約違反の有無を個々の契約文言によって判断するようになります。不動産売買では取引の対象となる住宅の仕様や維持管理の状態等についてきちんとした報告書を作成することがトラブルを防ぎ取引を円滑にすることにつながります」と話す。

 戸建ての場合、建物の価値が築20年でゼロとなるような従来型の査定を改め、土地と建物をそれぞれ評価し、建築士(インスペクター)による建物診断、防蟻業者によるシロアリ点検保証と不動産鑑定士の住宅価格調査をセットにした住宅ファイルを添えて契約することをJAREAは提案している。

 住宅ファイルが適切かどうかを買主がチェックし、相違がある場合は売主に対して修繕や減額を申込みことができるようにし、売主が応じない場合は契約を解除できる特約条項も盛り込むことを提言している。

 「不動産の仲介の営業マンだって建物の評価はプロではありませんし、インスペクター、シロアリ業者などと私どもが一緒になって、どの場面でも使えるスキームにして将来価値を含めた不動産の価値のお墨付きを行おうというもの。JAREA HASの精度も高いと自負している」と村木氏はいう。

 住宅ファイルはワンセットで約16万円を予定している。現段階では費用は売主が負担する形をとっている。

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 不動産鑑定士とはどのような職種で、現状はどうなっているかを概観しよう。

 不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価に関する法律に基づき制定された国家資格で、不動産鑑定士試験に合格した者のみが一定の手続きを経て不動産の鑑定評価を行うことができる。法律に違反した場合は刑事罰の対象にもなる。

 不動産鑑定士の試験範囲は多岐にわたり、40近くの法律法規と不動産の鑑定評価に関する理論の理解が求められる。試験は、マークシートの短答式(宅建は4肢択一だか鑑定士は5肢択一)のほか論文も課される。

 難易度が高いためとバブル崩壊後のデフレ経済の進行により受験者は漸減しており、平成18年の約4,600人から27年度は約1,500人へと3分の1へ減少している。合格率は6%程度で推移しており、合格者の年齢はほとんどが30歳以上となっている。

 国土交通省 土地・建設産業局の平成24年度「不動産鑑定士・不動産鑑定業の現状」によると、不動産鑑定業者のほとんど97.6%が都道府県知事登録で、業者数は10年前と比較して415業者(14.0%)増の3,375業者となっている。

 不動産鑑定士は、10年前と比較して352名(7.5%)増の5,057名で、うち1,025名が大臣登録業者に所属している。

 不動産鑑定業者の依頼先別報酬割合は民間法人が83.1%(平成12年は68.0%)、国・地方公共団体、公団などが15.7%((同9.6%)、個人は1.2%(同2.0%)。一方、知事登録業者は民間法人が53.3%(44.9%)国・地方公共団体・公団などが13.6%(同46.6%)となっている。

 不動産鑑定業者1業者当たりの平均報酬額は、大臣登録業者は横ばい、知事登録業者は減少傾向にあり、知事登録業者の22年度報酬額は721万円(平成12年は1,053万円)。

 不動産鑑定士1人当たり平均報酬額は、大臣登録業者は1,246万円(同1,342万円)、知事登録業者は589万円(同822万円)。

 大臣登録業者の依頼目的は「売買」「担保」「資産評価」で約7割を占め、「証券化」が増える傾向にある。知事登録業者は「課税」が40.6%(24.8%)を占めている。

 このように、何年も勉強し難しい試験に合格した割には厳しい罰則もあり、報酬は伸び悩んでいる-これが不動産鑑定士業界の現状だ。不動産鑑定士業界が、これまで携わってこなかった住宅分野に進出しようとしているのは、業界が掲げるスローガン「官から民へ」が象徴するように、住宅分野へ進出することによって停滞気味の現状を打破しようということのようだ。

 一方、国は住宅のストックが量的に充足し、環境問題や資源・エネルギー問題が深刻化する中で、これまでの「住宅を作っては壊す」社会から「いいものを作って、きちんと手入れして、長く大切に使う」社会へと移行することが重要であるとし、中古住宅流通・リフォーム市場規模を2010年の10兆円から2020年には20兆円へと倍増させようとしている。

 そのための具体的な方策として、①消費者にとって必要な情報の整備・提供②不動産価格の透明性の向上③先進的な不動産流通ビジネスモデルの育成・支援④宅建業者と宅建士の資質の向上⑤住み替え支援とストックの流動化の促進-に取り組んでおり、不動産鑑定士業界もその流れに沿ってビジネスモデルの研究・開発に取り組んでいる。

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 不動産鑑定士業界の不動産流通分野への進出が成功するかどうか。現状では不透明の部分もある。

 報酬額もその一つだろう。建築士(インスペクター)による建物診断、防蟻業者によるシロアリ点検保証付きとはいえ、16万円という価格に消費者はどう反応するか。大手のハウスメーカー系やデベロッパー系は、似たようなサービスを無料で提供しているところもあるように、不動産鑑定士によるサービスは、全宅連系の「社会的信用力」を補完する役割にとどまることも予想される。

 個人的な意見を言わせていただくなら、どうして中古住宅の売買で「宅建士」「建築士」「不動産鑑定士」の3つもの「士」が連携・協力しなければ「安心・安全」が担保されないのか、それだけ劣悪な戸建てがどんどんストックされ、今現在も再生産されているということなのだろうか。

 

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A案(技術提案書よりJSC提供)

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B案(技術提案書よりJSC提供)

 新国立競技場の技術提案書が日本スポーツ振興センター(JSC)から発表された。応募したのは2つのグループで、A案は隈研吾氏・大成建設・梓設計、B案は伊東豊雄氏・竹中工務店・清水建設・大林組・日本設計によるものと報道されている。

 案が公表されてから、様々な形で報道されているので詳細は省くが、双方とも素晴らしい。わが国を代表する建築家とスーパーゼネコンの競演となるわけで、これ以上の舞台はない。

 個人的には国産材のスギやカラマツがふんだんに用いられているA案に賛成だが、デザイン的には1辺が1.3~1.5mもある四角のカラマツの集成材72本を列柱として配したB案も捨てがたい。双方のいいと取りをしてほしいのだが、そのようにはならないのが残念だ。

 さて、どちらが採用されるか。以下は木造ファンの記者の独断と偏見の予想記事だ。

 われわれ素人は公表されたデザイン(完成予想図)で判断するが、JSCは①業務の実施方針(20点)②事業費の縮減(30点)③工期短縮(30点)④維持管理抑制(10点)⑤ユニバーサルデザインの計画(10点)⑥日本らしさに配慮した計画(10点)⑦環境計画(10点)⑧構造計画(10点)⑨建築計画(10点)-の9項目(満点は140点)に係数をかけて採点する。外観デザインや「日本らしさ」などは配点が少ないので、これがどう影響するか。そもそも「日本らしさ」とは何ぞやと問われて明快に答えられる人などいないはずだ。

 とはいえAかBか、JSCは決着をつけなければならない。選ぶのは次の7名からなるJSCの技術提案等審査委員会だ。

審査委員
秋山哲一・東洋大学教授
工藤和美・建築家/東洋大学教授
久保哲夫・東京大学名誉教授
香山壽夫・建築家/東京大学名誉教授
深尾精一・首都大学東京名誉教授
村上周三・東京大学名誉教授(審査委員長)
涌井史郎・東京都市大学教授
           (50音順)

 この委員のうちA案を熱烈に支持するのは涌井氏だ。他の先生方は建築が専門であるのに対し、涌井氏の専門はランドスケープデザイン。森林・林業の荒廃を憂慮されており、国産材が多用されているA案に肩入れするのは間違いない。最近はテレビのコメンテーターとしても活躍されており、話術も巧みだ。正攻法でもからめ手でも相手を説き伏せる。

 他の方はわからない。香山氏や工藤氏も木を用いた作品をたくさん造られているが、選択に迷うのではないか。涌井氏に丸め込まれるような人でもなさそうだ。

 秋山氏は構造が、久保氏は耐震がそれぞれ専門だ。シンプルで施工がしやすいと思われるB案を選ぶかもしれない。総工費は双方とも1,500億円弱だが、A案の工期は36カ月で、B案は34カ月。B案のほうが2カ月短い。これは明らかにB案が勝る。A案支持者はこれをどう反駁するか。森林の効用を涌井氏はぶつはずだ。

 深尾氏はニュートラルの立場を貫くのではないか。あの杭打ちデータ流用問題では、国交省・対策委員会委員長としてわずか2カ月で対応策をまとめ挙げたように、うまく収めようとするのではないか。

 こうしてみると、A案もB案も甲乙つけがたく、がっぷり四つに組んだまま勝敗が決まらない場面も十分予想される。

 となると、審査委員長を務める村上氏がキャスティングボートを握る。村上氏は現在、建築環境・省エネルギー機構の理事長を務めており、ことあるごとに省エネ、サステナブルを口にされる。やはり鉄やコンクリより木を愛されているはずで、Aに軍配を上げると見た。よって評決は4:3でA案の採用が決まる。

 森喜朗会長のコメントに左右される委員ではないだろうが、少なくとも国民は逆にA案支持に回るはずだ。「森さんは(自分が嫌われるのを承知のうえ)A案に支持が集まるように発言したのでは」とうがった見方をする人もいるが…。

 明日(18日)は、隈研吾氏がデザイン監修した三井不動産レジデンシャルの「パークコート 赤坂檜町ザ タワー」を見学する。素晴らしいマンションだろうから、きちんとレポートする。

◇       ◆     ◇

 JSCから新国立競技場の技術提案書が公表された翌日12月15日夕、農林水産省は林業関係9団体の長らと意見交換を行った。農水省側からは森山農林水産大臣をはじめ伊東副大臣、齋藤副大臣、加藤政務官、農林水産事務次官、農林水産審議官、大臣官房長、総括審議官、林野庁長官、林野庁林政課長が出席した。会議は非公開で行われた。

 記者はてっきり「和の大家」隈研吾氏らのA案が選ばれるための決起集会だと判断した。

 この年末の忙しい時期に9団体の長と大臣や事務次官などが会合を持たなければならない緊急の事案はほかにないはずで、A案の採用を突破口に森林・林業の再生・活性化の動きを加速させようという狙いだろうと読んだ。

 ところが、会議に同席した林野庁の担当者は、「たまたま時期が重なっただけ。会議の冒頭、大臣が『木の案が出されてよかった』というようなことをおっしゃったが、A案が採用されることを企図した会議では全くなかった」と否定した。

 

カテゴリ: 2015年度

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目黒区総合庁舎

 わが国の建築家村野藤吾(1891~1984)の代表作の一つ目黒区総合庁舎を見学する機会に恵まれた。1966年に竣工し、千代田生命保険の本社ビルとして使用開始され、総合庁舎としては改修が施されたのち2003年1月から「開かれた庁舎」として再生・利用されているものだ。

 詳細は同区のホームページでも公開されているが、建物の内外に村野や職人、美術家のこだわりが垣間見られる。とにかく写真を見ていただきたい。

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エントランスホール(ホールは中央を中心に非対称になっている。左側側は建物の外に柱があり、右側は水を張った床と柱があり、その外側に水盤・庭園がある。天井には明り取りがある。壁にポスターなどは一切張らず、時々コンサートなどが行われるそうだ)

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3階部分から中庭、茶室を望む(縦の格子はアルミ製)

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らせん階段(正確に丸くしているのではなく、フリーハンドで円を描いているのがわかる)

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茶室(もちろん一般の人も利用できる)

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会議室の床と巾木(カバ桜か、チェリー材か。遮音対策のために床と壁はゴムのようなもので遮断されている)

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喫茶室の壁(デザインは当時のままで、腰壁も無垢材が使われていた)

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本館と別館をつなぐ渡り廊下(以前は電車と同じような蛇腹が使用されていたという)

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庇足元の「石」(これも意味があるそうだ。広場にはヘンリー・ムーアの作品もあるそうだが、見逃したか)

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隣接する中目黒しぜんとなかよし公園から見た庁舎(この公園ももとは敷地の一部だった)

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公園内に設置されている「平和の石」。昭和61年、広島市から寄贈されたもので、被爆した旧広島市庁舎の階段の一部

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