三井不動産 〝ワクワクする〟発表会 ベンチャー共創に50億円投資
左から百合本氏、北原氏、三井不動産ベンチャー共創事業部長・菅原晶氏
三井不動産は2月23日、本業強化・事業領域拡大に向け新産業を創造するため、総額50億円のコーポレートベンチャーキャピタルファンド(事業会社が自己資金によってベンチャー企業に対して投資活動を行う機能を有するファンド)「31VENTURES Global Innovation Fund 1号」を独立系ベンチャーキャピタル最大手のグローバル・ブレインと共同で設立したと発表した。
また、これまでのベンチャー企業向けオフィスの運営やビジネス支援を統合・強化し、「資金」「コミュニティ」「支援」の3つの柱でベンチャー企業との共創を目指す。
「31VENTURES Global Innovation Fund 1号」の運用期間は10年。対象地域は日本を中心とする北米、欧州、イスラエル、アジア諸国。
◇ ◆ ◇
同社はもう20年以上も前から様々なベンチャーオフィスを運営しており、昨年4月、「ベンチャー共創事業部」を立ち上げた時点で、このような展開になるのは予想されたが、総額50億円の投資額の多さに驚いた。額については、記者発表会で同社取締役専務執行役員・北原義一氏は「本気度を示した額」と述べた。
それ以上に驚いたのは、北原氏の挨拶だった。ベンチャー共創事業に賭ける意気込み、ビジョンを熱く語った。歯切れがよく、魅力的な語彙が飛び交った。何事もビジョン、哲学がないと成功しない。久々に感動的な挨拶を聞いた。以下に紹介する。
「当社の事業の柱であるオフィス、商業施設、分譲住宅を野球に例えるなら3番、4番、5番のクリーンアップ。しかし、これが20年先、30年先、永遠に続くわけではない」と切り出し、「ダーウィンは『変化に順応できるものが生き残る』といったが、それだけでは十分でない。変化の後追いだけでは進歩はない。そのためには、異端、異能を重視し、柔軟性のある社会に変えないといけない」
「社会を切り開くのは既存のベンチャーの専売特許でもない。当社のオフィス・商業施設のネットワークは約5,500社の50万人、60万人にのぼる。こうしたオフィスワーカーのベンチャースピリットを覚醒させ、化学反応、爆発を誘引したい。そこから新しい産業が生まれるかもしれない。わたしはワクワクしている」
「もう一つ重要なのは、短期的利益を求めず、中長期的視点で育てていくということだ。いまの(原油価格が下落し、株価が乱高下を続けている)経済状況は投機マネーによるものだ。金融によるマネーゲームは付加価値を生まない。格差を生むだけだ」
「われわれは歯を食いしばって中小企業を育てていく。並大抵の努力で報われる社会でもない。『魔の川、死の谷、ダーウィンの海』が待ち受ける。この困難を乗り切るために、わたしたちは経営資源を生かしベンチャーをサポートしていく。一緒に挑んでいく。日本の発展に寄与したい。さらには未来の子どもたちの笑顔のためにも取り組んでいく。真に豊かな社会を実現する、これこそがベンチャースピリットそのもの」
◇ ◆ ◇
「ワクワクしている」という言葉は北原氏から3度、パートナーのグローバル・ブレイン百合本安彦社長から1度、都合4度発せられた。記者もワクワクして聞いていた。
北原氏も百合本氏もワクワクしたのは、この事業が無限の可能性を秘めており、三井不動産の膨大なネットワークを駆使すれば、夢が夢でなくなる現実味を帯びているからだろう。
北原氏が記者団に「御社の強みは何か」と問われ、「国内最大級のネットワークだ」と答えた。挨拶でも述べたようにオフィス、商業施設の「B to B」のネットワークは5,500社50万人にも及ぶ。
これに対して、「B to C」の分譲事業はマンション・戸建てで年間6,000戸くらいを供給しており、毎年積みあがっていく。潜在的な顧客はその数倍だ。さらに三井不動産リアルティの仲介事業、三井不動産レジデンシャルサービスの管理事業、三井ホームの注文住宅事業などが加わる。これらも潜在的な顧客を加えると年間数十万人に達するはずだ。
ここで重要なのは、これらのネットワークはネットなどで構築したものではなく「フェース ツー フェース」がベースになっているということだ。これこそ他社(他業界)が真似のできない最大の強みだ。
同社の「ベンチャー共創事業」が他のデベロッパーを刺激し、それこそ「一億総活躍」社会を実現していく原動力になることを願いたい。
大和ハウス 軽量で組み立て自在 「Transight(トランサイト)」発表
大和ハウスグループのデザインアークは2月22日、2013年から開発を進めてきた新規事業プロジェクト「Transight(トランサイト)」のコンセプトモデルを発表。報道陣と関係者に公開した。
同社の事業領域である建材、インテリア、レンタル&オフィス事業だけでなく、あらゆる産業・商品がスマート化、IoT(自動認識、自動制御、遠隔計測など)化していく環境下で、新しいビジネスモデルを構築することで産業界のリデザインを牽引しようという狙いだ。
「Transight」のコンセプトモデルは、縦37cm、横71cm、奥行き45cmのアルミ製のフレーム一つのモジュールとして、用途によって組み合わせることができるもの。各モジュールは通電されており、家電や電子機器を組み合わせることができる。重さは1つのモジュールで5キロもないと思われる。特許を申請中。
同社は、これから検証を重ね、異業種との共同企画、共同開発を行なっていく。販売時期、価格などは未定。
◇ ◆ ◇
熱い発表会だった。会場の「ヒカリエ」会議室は約40名の報道陣に関係者らで優に100人を超えていた。
何が発表されるのだろうと固唾を呑んだ。早速、同社・島正登社長が「われわれは大和ハウスグループとして『新しい価値創造の架け橋』になるのが使命。新規プロジェクトはわたしも答えを持っていない。社員への問題提起でもあり、皆さんと一緒に最適の答えを出したい」と投げかけた。
続いて登壇した同社・嶋田二郎取締役営業本部長は「目指すのは現在の売上高(519億円を2020年までに倍増すること。産業構造のリデザインが急速に進んでおり、既存のルール、考え方では達成できない。新規事業は既存事業に影響を与えない新たなビジネスモデルを構築するために3年構想で立ち上げた」などと話した。まさに第4の柱に育てたいような口ぶりだった。
◇ ◆ ◇
島氏や嶋田氏の話を聞きながら、画期的な大発見、大発明かもと思ったが、冷静に考えた。同じような商品は、身近なものでは子どものレゴ、家庭向けではユニット家具・戸棚・本箱など近いものがある。
同社のプロジェクトの特徴は、ネジなどを使わず簡単に組み立てたりばらしたりすることができ、通電されていることなどだ。
この商品が、島社長も話したようにどのような答えを導くのか不明だが、「オープンプラットホーム」にするのは大賛成。使い勝手のいいものにすれば、オフィス・商業ビルなどのディスプレイなどに広く採用されるのではないか。軽量化(1ユニット5キロくらいか)を図れば緊急避難用のテント・小屋などにも使えそうだ。
野村不動産 着実に伸びるPMO 2019年までに倍増32棟に
「PMO平河町」
野村不動産は2月17日(水)~19日(金)、オフィスビル事業「プレミアム・ミッドサイズ・オフィス(Premium Midsize Office)」シリーズの18棟目「PMO平河町」が竣工したのに伴うオープニングイベント「PMO FORUM 2016」を一般企業向けに開催する。各分野のビジネス情報に精通した専門家によるセミナーのほか、PMOの建物を体験したり、多機能性のオフィス家具を展示したりして、課題解決のヒントにつながるよう工夫を凝らす。
PMO事業は、都心3区に立地を絞り、中規模オフィスながら大規模オフィスに劣らない設備機能や高水準のセキュリティ、デザイン、サービスを提供することをコンセプトに2008年に立ち上げたもの。
ベンチャー企業、外資系企業向け、老舗企業に評価されたほか、大企業のサテライトオフィス需要も取り込みながら着実に実績を積み上げ、これまで供給した17棟はすべて満床となっている。
事業が軌道に乗ってきたことから、2016年から2019年までに新規15棟を計画し、供給済みを含めてシリーズ累計で32棟、総貸床面積約28,000坪に拡大する。供給エリアも都心3区から都心5区へ広げる。
一般企業向けイベントに先立つ15日、報道陣向けのオープニングイベントに出席した同社都市開発事業本部執行役員・中村治彦氏は、「われわれの事業は多岐にわたっているが、お客さまのニーズを捉え、ものづくりにこだわる当社のDNAは変わらず根底にある。PMOもお客さまのニーズを捉えることを出発点にしており、昨年までに100社超の企業と契約でき、竣工した17棟は満床となっている。これからもユニークで元気な中小企業向けのサポート、ソフトサービスに磨きをかけていく」と話した。
オープンパントリーの提案
◇ ◆ ◇
同社の都市開発事業本部 ビルディング営業部 部長代理 営業四課長・福岡雄一郎氏が約20分間、PMO事業についてパワーポイントを使用しながら説明した。20分間はやや長いような気もしたが、福岡氏は過不足なく要領よく話した。「あー」「えー」などの機能語や言い間違いもほとんどせず、「事業を立ち上げた2008年はちょうどリーマン・ショックの時で、その後の数年間は思い出したくないほど苦労したが、現在は拡大期、巡航速度に入っている。約10年でここまで到達することができた。ハイエンド型の需要は今後も増大する」などと語った。
2019年までの総貸床面積約28,000坪がどのような規模であるかを説明するため、「丸ビル」が約22,000坪であることを引き合いに出した。一言でPMOの事業の大きさを言い表した。
竣工した「PMO平河町」は最高の立地。平河町駅から徒歩1分の9階建て延べ面積約566坪。ビルのほぼ正面に自民党本部や議員会館が(国会議事堂は確認できなかった)、議長公邸は眼下に見える。最近は国会議員の口利きやら失語、失言、挙句の果ては不倫から議員辞職に追い込まれる不祥事にうんざりしているのだが、福岡氏のほぼ完ぺきな話に溜飲が下がる思いをした。大手デベロッパーのレベルの違いを見せつけた。
質疑応答では、ビルディング開発部長・廣瀬政男氏の〝答弁〟も冴えた。ここまで事業を伸ばせた要因などについて、同社の優位性を上げ、「他社がほとんどやっておらず、競合するのは賃貸マンションや小規模のホテルくらい。当社の事業は有効率も高く、プレミア付きの賃料が提案できているし、稼働率も高い。こうした優位性がキープできている」「マンションと同様、PMOファン、ストックが蓄積できている」などと語った。
同社が当日に発表したニュースリリースもA4判1ページに要領よく内容がまとめられていた。ニュースリリースもこれくらいがちょうどいい。
イベントに出席した左から中村氏、廣瀬氏、ビルディング営業部長・井上一馬氏、同事業部長・生田誠氏、福岡氏
住友不動産 東京・名古屋・大阪のモデルハウスで「Pepper」導入
ヒト型ロボット「Pepper」
住友不動産は2月12日、東京・名古屋・大阪の3大都市にある注文住宅のモデルハウスに今年からソフトバンクロボティクスが開発・提供するヒト型ロボット「Pepper」を導入、大阪は大阪弁、名古屋は名古屋弁でそれぞれ顧客対応を開始したと発表した。
「Pepper」は、お客さまを出迎え、会社紹介やキャンペーン情報などの案内、商談中の顧客の子どもと遊んだりして、おもてなしと楽しさを提供する。
例えば、大阪の千里第一モデルハウスでは、「大阪弁で住友不動産を紹介するで~。覚えたてやから、ツッコミは堪忍な~」、名古屋の名古屋港モデルハウスでは「名古屋弁で住友不動産を紹介するでね。覚えたてだで、変でも許してちょ~」などとなる。
◇ ◆ ◇
マンションでは先日見学した伊藤忠都市開発「クレヴィア豊洲」の販売事務所でロボットくんが記者に反応した。記者よりずっと頭がよさそうに見えた。見つめられると、性格や心まで見透かされているのではと不安を覚えた。
しかし、これは記者がへそ曲がりだからこそそう感じたのだろう。ロボット導入は面白い。ただ、首都圏のお客さんに大阪弁やら名古屋弁で対応したら却ってマイナス、まとまるものも壊れるのではと心配したので、同社広報に問い合わせた。東京では標準語で対応するとのことだった。
まずは安心したのだが、乱れきっている日本語に標準語はあるのかとも思う。ならば、記者は伊勢志摩サミットで全国区になった伊勢の「な言葉」がお勧めだ。語尾に「そやなぁ」「あのなぁ」と「あ」を付けるのが特徴だ。優しく聞こえるので、間違いなく商談に役立つ。全国どこでも通用すると思うがどうだろう。
もう一つついでに設問。慶大の入学試験に出た問題。「尊敬」と同じ標準発音アクセントは次のうちどれか。(1)国民 (2)真実 (3)後世 (4)生命 (5)帝王 (丸谷才一「完本 日本語のために」より) 「Pepper」くんが正解すれば、わたしは土下座する。
横浜傾斜マンション問題 再調査の結果待ち 旭化成が中間報告書
旭化成は2月9日、旭化成建材が施工した杭工事の施工データ流用問題に関する社内調査委員会の中間報告書をまとめ発表した。
多数のデータ流用を発生させた原因・背景については、「既に発表された国土交通省の基礎ぐい工事問題に関する対策委員会(有識者会議)・弊社外部調査委員会の分析と同様でありました。即ち、①データが紛失し易い環境であった②データ紛失時の対応ルールが未整備であった③データ軽視の意識が蔓延していた④旭化成建材の管理が不十分であった」とし、再発防止策については、①管理の範囲に抜けがあった②例外的に見える事象の発生時の反応③固定化した組織の問題などに対する改善措置を水平展開し、体質強化を図り信頼の回復に努めていくとしている。
横浜の傾斜マンション問題については、「社内調査委員会および外部調査委員会によるヒアリング調査の結果、該当する現場責任者およびオペレーターは、一様に杭は支持層に到達しており、施工は適切に行っていると述べており、杭工事の施工上の瑕疵を隠蔽する目的で施工データの流用を行ったことを示す証言または資料はこれまでの調査では発見されなかった」とし、「杭の施工不具合の有無を明らかにする再調査が2016 年2月8日現在実施中であり、結果が明らかになるには時間がかかる模様であり、上記の施工不具合に関する事実関係は、現時点では明確になっていない」としている。
わが国初のツーバイフォー6階建て実験棟 完成へ
「ツーバイフォー6階建て実大実験棟HRT-Project」(つくば市で)
日本ツーバイフォー建築協会は2月4日、国立研究開発法人・建築研究所と共同で研究・建設を進めている茨城県つくば市の「ツーバイフォー6階建て実大実験棟HRT-Project」を関係者に公開した。
再生可能な循環資源である木材の利用促進に寄与するとともに、ツーバイフォー工法の新たな展開にチャレンジするリーディングプロジェクトとして位置付けられているもので、ツーバイフォー工法による木造の6階建てはわが国初。今春に国交大臣認定を受け、様々な実験・検証を経たのち実用化を目指す。
建物は延べ床面積206.09㎡、高さ17.309㎡。施工は西武建設。完成は平成28年3月。アメリカ針葉樹協議会、岡山高次木材加工協同組合、カナダ林産業審議会など多くの団体・企業が協力。国土交通省の補助も受けている。
6階建て1、2階部分に使用する外壁・間仕切り壁には壁倍率14倍相当が必要なため、新たな間仕切り壁を開発、構造用合板の両面(12ミリ)張り(通常は片面9ミリ張り)、釘打ち本数、釘長の増加を図っている。
また、6階建て建築物の実現に必要な2時間耐火壁・床(3~6階は1時間耐火壁・床)を適用し、様々な検証を行い、建築基準法に基づく大臣認定を取得、普及につなげていく。床はCLT、ストレストスキンパネル、LVL、I型ジョイント、平行弦トラスを採用。
同協会会長・市川俊英氏(三井ホーム社長)は、「国交省や海外も含め多くの団体・企業の協力で実現したわが国初のリーディングプロジェクト。高い耐火性、強度を備えており、1~2年後には実用化したい。良質で環境に優しい木の住宅の普及に貢献していく」などと語った。
1階天井に用いられている岡山県産のスギによるCLT
1、2階部分の外壁見本
◇ ◆ ◇
木造による中層建築物の実現に一歩近づいた。市川会長も「1~2年後には実用化したい」と意欲を見せ、建築研究所・坂本雄三理事長も「木造住宅は世界的にも注目されている」と、大きな流れであることを強調した。関係者はCLTが普及すればツーバイフォーによるオール国産も可能になると話した。
現場の隣接地ではCLT協議会のCLT棟も建築中で、3月には完成する。CLTは接合に難点があるとされていたが、解消されたようだ。ツーバイフォー6階建てと同時に4月には公開される。
一つ残念だったのは、ツーバイ6階建ての外壁はサイディング仕上げだったことだ。耐火・防火基準を満たすためにはやむを得ないことなのだろうが、木の良さ・美しさを覆い隠すことにはどうしても納得できない。
2時間耐火も厳しすぎる。実験棟の1~2階の壁は表も裏もボードが3枚も張られ、全体で壁の厚さは約30センチもあった。大都市では火災が発生すれば数分で消防車が駆けつけるではないか。一律に規制するのではなく、地域、用途などによって柔軟に対応すべきだろうと思う。木造建築物はわが国の文化だ。厳しい規制は文化の衰退につながる。
CLT棟
手前の建物がCLT棟、右後方がツーバイ6階建て
柏の葉キャンパス地区 低炭素モデル都市としてAPECのコンペで銀賞
表彰式の様子(アメリカ合衆国ホノルル市、現地時間2015 年12 月15 日)
柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)は2月4日、柏の葉アーバンデザインセンターを拠点に、公・民・学が連携して「環境共生都市」の実現を目指す柏の葉キャンパス地区が、アジア太平洋経済協力(APEC)「2015 ESCI ベスト・プラクティス・アワード」の「ローカーボンモデルタウン」部門にて銀賞を受賞したと発表した。
「ESCI(エネルギー・スマートコミュニティ・イニシアティブ)」は、APECの加盟国や地域が連携し、効率的な交通、省エネビル、スマートグリッド、ローカーボンモデルタウンなどの分野で、事例やノウハウの共有を進めており、各分野で優れた取り組みを実践する組織について、毎年「ESCI ベスト・プラクティス・アワード」として表彰している。
柏の葉キャンパス地区は、環境共生都市として進めている低炭素化への総合的な取り組みが評価され受賞となった。
東建・日立アーバン 分譲マンションとの一体開発によるサ高住「戸塚」開業
「グレイプスシーズン戸塚」
東京建物と日立アーバンインベストメントは1月31日、両社の共同事業によるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)第2弾「グレイプスシーズン戸塚」開業した。
同物件に近接する分譲マンション「ネクサスシーズン戸塚」(平成27 年10 月竣工、全74 戸引渡済)との一体開発を行い、親子の近居、マンションからの住み替えを可能にしているのが特徴。また、選択により自立から看取りまで対応可能とし、日立製作所が開発したMEMSを活用した見守りシステムを採用している。
現時点で分譲マンションの入居者の家族がサ高住に入居する事例は一件だが、分譲マンション購入者からは、「サ高住がマンションの近くにあると将来必要なタイミングでサービスを受けたり、移り住むことも可能だから安心」との声があるという。
物件は、JR東海道本線・横須賀線・湘南新宿ライン・横浜市営地下鉄ブルー ライン戸塚駅から徒歩14分、横浜市戸塚区戸塚町に位置する6階建て74室。専用面積は19.38~53.86㎡、月額賃料は83,000 円〜254,500 円。貸主は東京建物シニアライフサポート、運営受託はツクイ。施工は大末建設。
スウェーデンハウス 同社初のサ高住 「大多喜」オーナーは順天堂大駅伝の総監督
「大多喜ガーデンハウス」
スウェーデンハウスは1月29日、同社初のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「大多喜ガーデンハウス」が竣工するのに伴い報道陣に公開した。
断熱性能UA値が0.38W/㎡・k(寒冷地の基準は0.87で、数値が小さいほど断熱性能が高い)で、気密性能C値が0.83c㎡/㎡(寒冷地基準は5.0で、数値が小さいほど気密性能が高い)という高気密・高断熱が特徴で、欧州アカマツが腰壁などにふんだんに採用されている。
同社取締役営業本部長・鈴木雅徳は、「高気密・高断熱の性能には自信あった。もう少し早くやるべきだった。今回の受注でサ高住のノウハウも蓄積できた。これから非住宅の分野にも力を入れていきたい」などと挨拶した。
物件は、千葉県夷隅郡大多喜町に位置し、建物は木造2階建て延べ床面積約984㎡。居室数は25室(19.22~19.54㎡)。月額賃料は約20万円(食費込み)。
建物内(腰壁はすべて欧州アカマツ)
◇ ◆ ◇
セレモニーが始まる前だ。ストラップ付の眼鏡をかけ、「7」と「5」のデザインをあしらった赤と紺のストライプのネクタイを締めた白髪のお年寄りが現れた。報道陣を睥睨するように会場を見渡したあと、いきなり「どーも、どーも」と声を発し、正面に据えられた椅子に座った。それは威風堂々の言葉がぴったりの、全身にオーラをみなぎらせた姿だった。
いったい何が起きたのかわからずあっけにとられていると、司会者からそのお年寄りがサ高住のオーナーの川崎病院・宮野武理事であることが紹介された。
宮野氏の独演会はすぐ始まった。
「どーも、皆さん。レインボーブリッジを通り、アクアラインを渡って、さらに山奥の、私も若いころは全く知らなかった『大多喜』というこんな田舎によくおいでくださった…徳川家康の四天王の一人、本多忠勝が築城したところで…千葉県にはここと佐倉しか城はない…」「わたしはこの土地を愛しています。私どもの病院は祖父が明治40年に始めて108年間、この田舎で、僻地で営々とつないできた」などと街と病院を紹介。
「5年前、女房の『二人で木の家に住もう』という提案で、スウェーデンハウスの家を建てた。大満足。真冬でもコタツが要らない。:そのころサ高住を作ることを考えた。数か所見て回ったが、どこも魅力的でなかった。お年寄りを収容すればいい、隔離しておけばいいというものではない。要介護度の高い方は私どもの老健に移ってもらって、ここは要介護度が1から2の低い入居者と一緒に酒を飲み、コミュニティを作るのが目的だから、楽しくなるような建物でなくては具合が悪い。そこで、夏涼しく冬暖かいスウェーデンハウスにすることを決めた。場所も街中に建てることを決めた。スーパーも学校もすぐ近く」
「私は赤ちゃんのプロで、戦後、錦糸町の貧民街で次々生まれる赤んぼうや貧しい子どもたちの医療に携わった。全くカネと縁がない。儲からない仕事には慣れている。町内だけで入居者を埋めるのは難しい。ぜひこのサ高住を宣伝していただきたい」
「今日は(小雨が降る)寒い中、おいでくださった皆さんも温かいということを実感されたはず。どうです、結露も全くない。とてもいい日によくいらっしゃいました」
これで終わりではない。何やらパンフレットを取り出し、「私は40年間、朝5時に起きて駅伝に応援に行っている。総監督にも5年前就任した。今年は6位に入賞した。わたしが死ぬまでに優勝させたい」と、順天堂大学のJ友会会長・駅伝強化担当理事であることを自ら紹介。同大の駅伝パンフレットを報道陣に配った。
宮野氏の独演会に完全に主役の座を奪われた鈴木本部長は苦笑するしかなかった。
後で聞いたら宮野氏は75歳。ネクタイのデザインの謎が解けた。順天堂大の名誉教授でもある。
宮野氏
宮野氏のネクタイ
◇ ◆ ◇
東京駅から高速バスで約80分。千葉県大多喜町は、天然ガスが出るところということは高校の教科書に書かれていたので地名だけは知っていた。福島県の大喜多と間違えないようにしていた。
しかし、この町は天然ガスだけでないことはすぐわかった。「ゴルフ銀座」(宮野氏)と呼ばれるほどゴルフ場が多いところとして知られているようだ。いたるところにゴルフ場の案内看板があった。町内には5カ所のゴルフ場がある。鉄筋造の大多喜城もあるように城下町として栄えたようだ。
そんな町にどうして同社のサ高住があるのか、その理由は先に書いた。記者も同社の建物を真冬に見学するのは初めてだったが、ほとんど瞬時にして建物の特徴を理解した。宮野氏が「大満足」と語った通りだ。
外断熱の戸建て・マンションとほとんど同じだ。心筋梗塞と脳卒中による死亡率は1月と2月を中心とする冬季がもっとも高いが、少なくともこの建物は専用部分と共用部分の温度差はほとんどない。「温度のバリアフリー」が実現されている。
来年の駅伝は順天堂大を応援しようかしら。
廊下に掲げられたモネの庭園と思われる写真(宮野氏が直接撮られたもので、全部で50点くらいあった。写真は宮野氏の趣味のようだ)
不動産買い時感が減退 野村アーバンネット調査
〝不動産は買い時だと思わない〟人が増加-野村不動産アーバンネットは1月28日、不動産情報サイト「ノムコム」の会員を対象としたネットによる「住宅購入に関する意識調査結果(有効回答数1,421人)をまとめ発表したが、不動産について「買い時」「どちらかといえば買い時」と答えた層は前回調査(2015年7月)より4.9ポイント減の41.3%で、逆に「買い時だと思わない」と答えた人は35.9%と前回より4.9ポイント増加した。
「買い時と思う」理由は、「住宅ローンの金利が低水準」69.1%(前回比4.7ポイント増)、「今後、10%への消費税引き上げが予定されている」51.5%(同11.3ポイント増)に続き、「不動産価格が落ち着いている(割安感がある)」が33.1%(同17.2 ポイント増)となった。前回調査で理由3位だった「今後、不動産価格が上がると思われる」は22.7ポイント減少して16.9%となり、理由6位となった。
「買い時だと思わない」理由については、「不動産価格が高くなった」68.2%(前回調査時は64.4%)がもっとも多かった。
不動産の価格については、「上がると思う」が33.4%と前回調査より6.2ポイント減少。「下がると思う」の回答は24.3%と前回より5.4ポイント増加した。
マンションくい打ち工事のデータ改ざん問題の住宅購入検討への影響度については、「影響を受けなかった」が49.4%、「影響を受けた」が35.3%となった。
影響を受けた理由としては、「建物の構造や基礎部分の つくりを気にするようになった」64.9%、「分譲時の売主や施工会社を重視するようになった」57.6%となり、「当面様子を見ることにした」の回答は33.9%にとどまった。
◇ ◆ ◇
不動産は「買い時だと思わない」と考えている人が前回調査時より3.8ポイント増とジワリ増えているのは気になる材料だ。ニュースリリースではどのような層の人がそう思っているのか不明だが、第一次取得層の人であるとすれば深刻に受け止めなければならない。この先、郊外マンション価格はそれほど上昇しないと思われるが、すでに取得限界を超えていると受け取っているのだろうか。
ならば中古があるといいたい。中古に対しては拒絶反応を示す人もいるが、最近の新築は地価・建築費の上昇で専有面積を圧縮したり、基本性能・設備仕様を落としている物件も多い。築浅の中古のほうが質が高い物件も少なくない。その意味では、不動産流通会社の出番が到来したと取れなくもない。
杭打ちデータ流用問題はそれほど市場に影響を与えていないのは予想していた通りだ。