翔んで埼玉 首位に「所沢」 高値更新マンション続々 RBAタイムズ
4月26日(金)発行の紙媒体「RBAタイムズ」1・2面を転載します。
「HARUMI FLAG」の単価予想は坪280万円に下方修正 「著しく利益増」協議回避へ
読者の皆さんには誠に申し訳ないが、先日書いた「HARUMI FLAG」の単価予想「坪300万円か」を「坪280万円か」に下方修正する。事業者は「著しく」利益が上がった場合は譲渡価格について協議することを回避する模様だ。
なぜ右往左往したのかというと、モデルルームを見学して当初予想の坪250万円を1割くらい上方修正したのだが、「坪300万円を超える」などの情報も飛び交っており、「坪300万円か」と記事にした。
しかし、前回も書いたように、坪300万円となれば間違いなく「著しく利益が上がった場合は、譲渡金額について協議する」ことになるはずで、そうなれば、東京都と鑑定評価を行った日本不動産研究所の顔に泥を塗ることにもなりかねず、協議を回避する意味でも限界とみられる坪280万円に抑えると判断した。
今後の集客状況次第では坪280万円を上回る可能性も否定できないが、スタート時点ではこの価格で分譲されると見た。3年前に予想した250万円から約11%の上昇だが、これくらいの外れ方なら皆さんにも容赦いただけるのではないか。当時でもかなり勇気がいった価格予想だったことを理解していただきたい。
従って、前回の「坪300万円か」の記事も修正する。ただ、事業主は「価格は未定」としているので、記事はあくまで記者の予想であることを断っておく。
文句なしにいい 街づくり・基本性能 坪単価280万円か 「HARUMI FLAG」(2019/4/24)
〝住むなら北千住!〟 坪235万円の三交不「プレイズ北千住」好調
「プレイズ北千住」完成予想図
三交不動産が分譲中のマンション「プレイズ北千住」を見学した。駅から徒歩13分とややあるが、3月から分譲開始し、これまでに全78戸のうち約半数が成約済み。極めて好調に推移している。
物件は、東京メトロ千代田線・日比谷線・JR常磐線・東武スカイツリーライン・つくばエクスプレス北千住駅から徒歩13分、足立区千住桜木一丁目に位置する14階建て全78戸。現在販売中の住戸(8戸)の専有面積は53.46~70.14㎡、価格は4,048万~5,698万円、坪単価は235万円。竣工予定は2020年2月下旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、墨堤通りに面した準工業地域だが、住宅・マンション化が進んでいるエリアの一角。建物は、道路に面した北東側を約6.4mセットバックさせ、南西側は隣地境界線まで約8.4~11.2mの駐車場、プライベートガーデンなどのスペースを確保。中層階からは隣接の帝京科学大キャンパス、墨田川が眺望できる。
住戸は全て南西向き。玄関に窓を設置し、風が流れるようにしているのが特徴の一つ。基本性能・設備仕様は、リビング天井高2500~2600ミリ、直床、食洗機、良水工房など。
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知らないことは恐ろしいことだ。初めて東京駅からJR上野東京ラインに乗った。北千住まで15分という近さに驚いた。北千住が「住みたい街」の上位にランクされるのはどうも胡散臭いが、都心へのアクセスの良さだけを評価すれば、人気になるのも分からないわけではない。
どうして初めて東京駅から乗ったのか。これは説明しないと分かってもらえないので、以下の馬鹿馬鹿しい話に付き合っていただきたい。
記者は東武伊勢崎線を木造の車両が走っていた頃から知っている。時間がゆったりと流れていた。ゆらゆらと効き目のない扇風機が頭上で回転し、ワックスの匂いが社内に充満していた。田舎弁をさらけ出し、だれとも協調しない伊勢出身の小生と相通じるものがあった。その後縁あってこの沿線に足げく通うようにもなった。マンションの見学回数もわが京王線を除けば他を圧倒しているはずだ。普通のサラリーマンが無理なく住宅を取得できる貴重な沿線だ。
ところが、習慣もまた恐ろしいもので、昔の東武伊勢崎線のイメージしかなく、都心からだとお茶の水、日暮里、御徒町、北千住などで乗り換えるコースばかりだった。乗り換えが不便なJR常磐線はほとんど乗らなかった。
今回は急いでいたのでネットで調べたら、何とオフィスがある東京から北千住までJRだと15分とあるではないか。15分と言えば東京-新宿だし、新宿-調布と同じだ。駅から3分の坪370万円台の三菱地所レジデンス「千住ザ・タワー」(184戸)は供給した130戸のうち9割を契約しているのも半分は理由が分かった。新宿、渋谷、品川もみんな30分圏内だ。(記者は都心への近さだけで街のポテンシャルを計らないが)
坪370万円台で売れるのだから、駅から徒歩13分の坪235万円のマンションが売れるのもまた当然ではないか。
駅から現地まではほぼ真っすぐで、歩道が賑やかなのもいい。マンションに近接する帝京科学大の女子大生が群れをなして歩いていた。「皆さんは歩くの苦にならないの? 」「全然、平気。痩せるし健康にいい」などと屈託のない笑みを浮かべ瞬く間に記者を置き去りにしていった。
都心への近さを優先する人には〝住むなら北千住〟はありかもしれない。
モデルルーム
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街路樹についても一つ学んだ。都道の墨堤通りは名前の通り、墨田川の堤防沿いに整備された道路で、住居表示に「千住桜木」とあるのは通り沿いにサクラが植えられていたのだろう。
ところが、不思議なことに道路沿いのサクラは八重桜でみんな樹齢が若かった。記者のように年老いて樹勢が衰えたために植え替えられたのだろうと思い、都の街路樹担当に聞いた。
そうではなかった。従前はスズカケノキ(プラタナス)だったのだが、電線地中化のために2~3年前にサクラに植えられたもので、道路・歩道幅も広くないため種類も枝がまっすぐ伸びる「天の川」になったのだという。
スズカケノキは公害に強いとの理由で56年前の1964年東京オリンピックのときにたくさん植えられたのだそうだ。
そしていま、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて「東京都無電柱化推進計画」に基づき電線の地中化が進められており、スズカケノキは管理がし易い他の樹木に変更されつつあるという。
駅すぐの繁華街
現場(左の樹木が「天の川」⇒サクラにしては風情に欠けるが…)
風致地区巧みに生かした住戸プラン・ランドスケープ秀逸 大和地所レジ「上大岡」
「ヴェレーナシティ上大岡」中庭
大和地所レジデンスが分譲中の「ヴェレーナシティ上大岡」を見学した。駅から徒歩13分とやや距離があるが、建ぺい率40%(容積率150%)、高さ規制15mの厳しい風致地区規制を巧みに生かした平均100㎡、1戸当たり約53本の植栽など商品企画・ランドスケープデザインが秀逸だ。
物件は、京急本線上大岡駅から徒歩13分、横浜市磯子区汐見台三丁目に位置する建ぺい率60%(風致地区により40%)、容積率150%の第一種中高層住居専用地域に位置する敷地面積約12,739㎡、5階建て全132戸。現在分譲中の住戸(15戸)の価格は4,498万~5,758万円(最多価格帯5,300万円台)、専有面積91.25~103.88㎡、坪単価175万円。竣工予定は2020年2月下旬。設計・監理はオンズデコ一級建築士事務所。施工は森組。
今年1月から契約を開始し、成約済みが70戸超と極めて好調に推移している。
現地は、日吉、山手、本牧、根岸とともに横浜市の数少ない風致地区。建ぺい率40%、容積率150%、高さ規制15m以下、隣地境界線からの外壁の後退距離1m以上、敷地面積50mにつき1本以上の植栽、戸数制限など厳しい規制が設けられている。一部の1階住戸から富士山も見える。
敷地は荏原製作所の社宅跡地。隣接地にはジョイント・コーポレーションが分譲して人気になった「ジェイパークヒルズ上大岡」が建っている。電線は地中化されている。
建物は、比高差5m以上の傾斜地を巧みに生かした南・南西向き中心の6棟構成。平均居住面積は約100㎡。同社オリジナルの奥行き4mのオープンエアリビング・バルコニー(約13.6畳大)は30~40戸。100㎡住宅は間口8m(一部)で、廊下幅は1400ミリ(他の住戸もメーターモジュール)。
その他、主な基本性能・設備仕様は、リビング最大天井高2440ミリ、二重床・二重天井、キッチン3.5畳以上、天然御影石キッチン・洗面カウンター、食洗機、ミストサウナ、1620バス、ソフトクローズ機能付き引き戸など。
販売担当者の課長代理・嶋倉利泰氏は「これほど素晴らしいマンションを造ると、自信をもってお勧めできる」と鼻息が荒い。
100m住宅
奥行き4mバルコニー
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文句なしに素晴らしい。記者のような足腰が弱った高齢者に坂はきついが、記念すべき新元号「令和」にふさわしい「今年のベスト3マンション」の一つに選ぶことをほぼ確定した。
100㎡住宅は同社の〝十八番〟だから驚きはしないが、坪175万円の安さだから、100㎡でも5,000万円で買うことができる。しかも、オープン・エアリビングバルコニー、プライベートガーデン付きだとリビング・ダイニングを含めると約40畳大の居住空間が生まれる。先日見学した約190㎡の野村不動産「恵比寿」のモデルルームは価格が6億8,000万円だったが、リビング・ダイニングの広さは約40畳大だった。設備仕様は異なるが「恵比寿」と同じ6億8,000万円に住む気分が味わえる。
もう一つ、いかにこのマンションがすばらしいかを証明する。植栽の豊かさだ。シアターに全体敷地約12,739㎡に約7,000本の高木・中木・低木を植栽すると映し出された。この数字だけで一瞬にしてレベルの高さを確信した。ランドスケープデザイン監修は東邦レオ。
この数字が何を意味するか分からない方も多いはずなので、他のマンションを例示して説明する。
12,739㎡の132戸に約7,000本の低・中・高木を植栽するということは、1戸当たりに換算すると約53本だ。また、敷地10㎡当たりだと約5.5本の樹木数だ。
以下は、記者がここ数年間に見学し、樹木数を記事にした物件の中で多かったものだ。売主「物件名」戸数、敷地面積、樹木数(1戸当たり樹木本数、10㎡当たり樹木数)の順。
・三井不レジ他「幕張ベイパーク スカイグランドタワー」826戸 18,000㎡ 11,200本(14本、6.2本)
・ポラス「ルピアグランデ浦和美園」340戸 12,000㎡ 約13,000本(38本、10.8本)
・積水ハウス「グランドメゾン品川シーサイドの杜」687戸 約13,000㎡ 約15,000本(22本、11.5本)
・東京建物「Brillia Towers 目黒」940戸 約23,000㎡ 900本(1本、0.4本)
・住友不動産「シティテラス吉祥寺南」268戸 約16,000㎡ 約2万本(75本、12.5本)
・東急電鉄「ドレッセ二子新地」434戸 約16,000㎡ 約14,000本(32本、8.8本)
・積水ハウス「グランドメゾン白金の杜ザ・タワー」334戸 約6,800㎡ 約2万本(60本、29本)
このほかに樹木数が多かったのは、野村不動産・三井不動産レジデンシャル「桜上水ガーデンズ」と積水ハウス「グランドメゾン江古田の杜」もあるが、残念ながらこの2物件はどれくらい植栽されていたか把握できていない。ここに紹介した物件より多いかもしれない。
もう一つ、樹木数には低・中・高木全てを含むものと低木を除くものも含まれている可能性があることを断っておきたい。低木を含めるのと除くのとでは数字は大きく変わってくる。
さて、これらの物件と「上大岡」を比較していただきたい。1戸当たり樹木数のもっとも多いのが住友不「吉祥寺南」の75本、次が積水ハウス「白金の杜」で60本、「上大岡」は3位だ。10㎡当たりだと、積水ハウス「白金の杜」が突出しており29本。同社「品川シーサイド」も11.5本で、〝5本の樹計画〟がいかにすごいかをこの数字も物語っている。
「上大岡」の5.5本は他より少ないが、記者が過去数年間に見学したマンションは年間100件として700件くらいだから、そのうちの上位に入るのは間違いない。
東建「目黒」のランドスケープデザインは抜群だったが、1戸当たりにすると1本で、10㎡当たりだと0.4本だ。意外だったのはポラス「浦和美園」。1戸当たり38本、10㎡当たりでも10.8本。売れ行きが絶好調というのも納得だ。
そこでデベロッパーに提案。みなさんはいかに自分ところのマンションの希少性が高いか手を変え品を変えアピールしているが、発想が貧しい。樹木数も加えたらどうか。間違いなく積水ハウスがトップだろうが、どこが次位になるか。
とても嬉しい取材が出来たので、その後駅前のイタリアンでワインを2杯飲んだ。宅建の資格がない記者であってもこの物件の販売を担当したら、瞬く間に売る自信がある。少なくとも他社には絶対ない魅力を10くらいは伝えられる。
オープンエアリビング
文句なしにいい 街づくり・基本性能 坪単価280万円か 「HARUMI FLAG」
全体像
2020東京オリンピック・パラリンピック選手村に利用され、その後は分譲・賃貸住宅などとなる「HARUMI FLAG」の事業主10社は4月23日、メディア内覧会を開催し、販売センター「HARUMI FLAGパビリオン」を4月27日(土)にオープンすると発表した。分譲は7月から。
「HARUMI FLAG」は、中央区晴海にある約13haの土地に分譲マンション4,145戸、賃貸住宅1,487戸を合わせた5,632戸や商業施設を含めた24棟を建築し、保育施設や介護住宅などを取り入れ、人口約12,000人が住む街とする計画。
パビリオンは、三井不動産レジデンシャルが分譲中の「パークタワー晴海」のパビリオンに呉越同舟の隣接地。ARやVRなどの最新技術を活用し、臨場感のある実際の暮らしが体験できるコーナーやモデルルーム5室が設けられている。
106タイプ
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異例の内覧会だった。昨年10月に開設したオフィシャルサイトに対するエントリー数か約15,000件に達し、見学予約は6月中旬まで満席の約3,000件あるというビッグプロジェクトだ。普通ならひな壇に10社の幹部が顔をそろえ、代表者(三井不動産レジデンシャル)が挨拶し、メディアの質疑応答時間を設けるはずだが、この日は同社東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部推進室・古谷歩氏が約15分にわたって概要説明を行ったきりで、質疑応答はなし。
なので、聞きたいことが山ほどあった記者は完全に気勢をそがれた。もっとも聞きたかった価格(単価)については、「専有面積は60㎡から150㎡。価格は未定。5,000万円台から1億円超」(古谷氏)としか説明されなかった。
95タイプ
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街づくりや住宅の基本性能・設備仕様は文句の付けようがない。素晴らしい。並みの坪300万円台、400万円台クラスよりはるかに優れている。
書き出したらきりがないので最小限にとどめ列挙する。街づくりでは、メイン道路・舗道は飛行機が緊急着陸したハドソン川と同じくらいの幅(最大約110m)。新橋へ10分圏内というBRTを活用したマルチモビリティステーション。設置率約45%全1,300台の駐車場は地下。中高木約3,900本。共用施設は51カ所。水素ステーション。1週間程度の災害時発電機能。CASBEE最高ランクS、世界初の「LEED-ND計画認証」取得…。
住戸プランでは、マスターアーキテクトに光井純氏を起用し、6つのゾーンをそれぞれの建築家・デザイナーが担当。日本設計、日建ハウジングシステム、三菱地所設計なども参画。住戸は2階以上。平均面積は85㎡、100㎡以上は約310戸。ゆとりあるアルコーブ。廊下はメーターモジュール。ドア幅は900ミリ。天井高2500ミリ以上。ワイドスパン。2100ミリサッシ高。キッチン収納付き。ビューバス、全戸エネファーム+蓄電池搭載…。
これは好みだが、記者は敷地南側の「SEA VILLAGE」(設計:日本設計・長谷工コーポレーション、施工:長谷工コーポレーション)の分節手法を用い、一部アクセントカラーのブルーを用いた波型バルコニーデザインが気に入った。全体的には光井氏の好みのデザインとなっている。
88タイプ
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これだけのものを見せつけられると先日書いた坪250万円予想を上方修正せざるを得ないが、譲渡契約の「敷地譲渡契約締結後、東京都の事由により事業計画を変更する場合及び特定建築者が応募時に提案した資金計画に比べ著しく収益増となることが明らかとなった場合は、敷地譲渡金額について協議する」ことを回避し、坪280万円程度に抑える模様だ。
記者は、あの昭和60年の天皇在位60年記念硬貨と61年秋に分譲された民活マンション第一号「西戸山タワーホウムズ」、そして62年2月に売り出されたNTT株の「3大財テク商品」と同じように、このレガシーマンションが坪250万円で分譲されれば申し込みが殺到し、さらにオリンピック、新元号の三点セットでデフレ脱却が実現するのではと夢見たのだが、坪280万円は微妙な価格だ。戸数が多く、BRTを活用したマルチモビリティステーションがうまく機能するかも読みづらく、最寄り駅の勝どき駅の混雑などを考えると何とも言えない。
坪280万円なら〝離れ業〟ともいうべき開発法による評価手法を用いた不動産鑑定士の顔に泥を塗ることにはならないのではないか。
参考まで紹介するが、「西戸山」576戸の来場者は約6万人に達し、申し込み倍率は実に44.2倍だった。
73タイプ
模型(手前が「SEA VILLAGE」)
シアター(手前のお二人はそのままおててつないで入水しそうな雰囲気がある)
「HARUMI FLAG」土地代の安さ 価格に反映を 坪250万円が妥当と考えるが…
「HARUMI FLAG」の分譲価格(単価)に関する記事・書き込みがネット上でヒートアップしている。明後日(23日)にはメディア向け説明会が行われるので取材してレポートするが、その前に、記者自身の立ち位置をはっきりしておきたい。
記者は、東京都がデベロッパー11社に「HARUMI FLAG」の用地約13.4haを約130億円で売却した時点で「東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟」(2016/8/4)のWeb記事を書き、その価格の安さ(容積率1種当たり坪8万円)から判断して分譲坪単価は250万円と予想した。
記事を書いた当時は、Web記事は日経新聞のWeb「住宅サーチ」に転載されていたこともあり、ものすごい反響がありアクセスが殺到した。
都民も〝異常な価格の安さ〟に驚いたようで、「譲渡価格は違法・不当であり、損害の回復等必要な措置を講じることを求める」住民監査請求(2017年5月19日付)が提起され、監査委員は手続き、鑑定評価手法、譲渡価格の妥当性など全てにおいて適法・適正に行われたとして住民監査請求を退けた(2017年7月19日付)。
鑑定評価手法については、事業地は選手村として一時使用され、開発期間が長期にわたる特殊要因を考慮した結果、通常の取引事例比較法ではなく、「開発法」による評価手法が用いられ、土地価格は予想される住宅の販売総額・賃貸収入額を契約時点の価格に割り戻し、その額から想定される支出(建築工事費、販売経費など)を差し引いて適正に算定されたとしている。
これを不服とした住民ら「晴海選手村土地投げ売りを正す会」は2017年8月18日、小池百合子東京都知事を被告として、売却妥当額との差額1,200億円を支払うよう不動産会社11社に請求せよという民事訴訟を提起し、現在審理が行われている。
裁判がどうなるかはともかく、監査委員が全て適法・適正と判断を下した以上、これ以上この問題に深入りはしない。以下は監査委員の裁定を是としたうえで、いくつか問題を提起する。
まず分譲価格(単価)について。基本的にはいくらで売るかはデベロッパーの自由裁量であり、買うか買わないかは消費者が決めることだ。われわれ外野がとやかく言う問題でない。
しかし、今回の事業地は都民の財産だ。地価公示の10分の1以下という安値で売買されたのであるから、デベロッパーはそれに見合う適正価格で分譲し、土地値が安い分だけ購入者に還元すべきというのが記者の意見・主張だ。
いったい、1種8万円という値がどれほど安いか。アクセス、規模、開発期間などが「HARUMI FLAG」とよく似ている「幕張ベイパーク」の例を紹介する。
2015年、三井不動産レジデンシャルら民間7社が千葉県企業局から用地約17.5ha(計画戸数約4,500戸)を取得した額は280億円(1坪52.6万円)だった。容積率は300%くらいのはずで、1種当たりだと17.5万円となる。「HARUMI FLAG」の2倍以上だ。
この「幕張」の現在の坪単価は210万円だ。もちろん単純比較はできないが、「HARUMI FLAG」を坪250万円と予想・主張するのは的外れでないと思う。
この予想・主張を〝補強〟する材料もある。都とデベロッパーが交わした敷地譲渡契約には譲渡契約金額の変更に関する次のような条項がある。
「敷地譲渡契約締結後、東京都の事由により事業計画を変更する場合及び特定建築者が応募時に提案した資金計画に比べ著しく収益増となることが明らかとなった場合は、敷地譲渡金額について協議するものとします」
いったい「著しく」とはどの程度なのかについて、都は「『著しく』がどの程度のことを指すか弁護士と相談する」としているが、極めて難しい問題だ。モノサシなどないからだ。
記者は、そのモノサシとしてマンションの売上から原価(土地取得費、建築工事費)を差し引いた粗利益率を考えた。直近の11社のマンション粗利益率は29.8%(2018年12月期)の東京建物が断トツで、他の三井不動産、住友不動産、三菱地所、野村不動産、東急不動産などは20%前後だ。
つまり、東建の粗利益率30%を越えたら「著しく」と考え、その分岐点は坪250万円とはじいた。
ただ、デベロッパーはみんな欲張りで、30%程度の粗利益率では「著しく」とは考えないふしもあり、基本性能・設備仕様レベルが高くなるともっと高くなるか。これは自信がない。
そしてまた、「良心に従い、誠実に鑑定評価等業務を行うとともに、不動産鑑定士の信用を傷つけるような行為をしてはならない」(不動産鑑定士法)不動産鑑定士によって「(公示地価の10分の1以下の)敷地譲渡予定価格は合理的な根拠に基づき算出され、かつ厳正に審査された、適正な価格である」(監査委員)とすれば、「著しく収益増」となる事態にはならないとも考えられる。
仮に「著しく収益増」となる事態が発生したら、それこそ不動産鑑定の鼎の軽重が問われることになる。
従って、「HARUMI FLAG」の坪単価は〝妥当〟とされる可能性が高い-というのが現時点での記者の考えだ。
監査委員は「本件事業の今後の実施に際しては、重要な決定に当たり、専門家の意見を十分に聞く等の内部牽制体制を強化することや、意思決定過程及び決定内容についてきめ細やかな対外説明を行うことなどにより、これまで以上に透明性の確保に努められたい」と意見を述べている。
この意見を汲み、当事者からきちんとした説明がされることを願うのみだ。
恵比寿駅圏の最高峰 坪900万に迫る 野村不「恵比寿ヒルサイドガーデン」が人気
「プラウド恵比寿ヒルサイドガーデン」
恵比寿駅圏の坪単価記録を大幅に更新した野村不動産「プラウド恵比寿ヒルサイドガーデン」(88戸)を見学した。坪900万円弱で、住友不動産が先に竣工した「シティタワー恵比寿」(310戸)の坪750万円を大幅に塗り替えた。売れ行きも好調で、約7割が成約済みだ。
物件は、JR恵比寿駅から徒歩5分、渋谷区恵比寿南三丁目の第一種住居地域に位置する敷地面積約4,035㎡、地下2階・地上11階建て全88戸。専有面積は60.00~200.20㎡、坪単価は900万円弱。竣工予定は2020年1月中旬。設計・監理は日建ハウジングシステム・鴻池組。施工は鴻池組。
現地は、商業エリアを抜けた第一種住居地域に位置する南北に細長い四方道路の傾斜地で、比高差は約7メートル。敷地は元公務員宿舎。
建物は、敷地面積が3,000㎡以上で緑化率を21%に高めたことで高さ規制30mを39mに緩和されており、通常なら13階まで建築可能だが、敢えて11階建てとしているのも特徴。建物の北側の一部はホテル・レストランになる。
住戸プランは内廊下方式で、スケルトン・インフィルを採用。さらに水回りの位置のレイアウトを容易にする「ミライフル」システムを採用。住戸は南向きに加え南西向き。
インテリアデザインはHBAを起用。主な設備仕様は、リビング天井高2620~3150ミリ、グローエ水栓、ヴィトラ社手洗いボウル、ジェシー社水栓金具、スカラベオ社の陶器手洗いボウルなど。
1月から分譲を開始し、これまでに約7割が成約済みと好調。
過去20年間、山手線内徒歩5分以内の物件は276件で、うち住居系は58件、恵比寿駅が最寄りは6件(うち野村は今回を含め3件)しかなく、しかも今回の敷地面積は約4,035㎡と広く、この希少性が富裕層の心を捉えた。
ドレッシングルーム
◇ ◆ ◇
190㎡のモデルルームの出来が出色だ。洗面・浴室はラグジュアリーホテルのスイートと同様で、来場者の評価も高いという。
オーダーメイド仕様だが、バスルーム・ドレッシングルームの広さは約8.3畳大、リビングは約40畳大。壁は突板パネルか大理石。キッチンカウンタートップは水晶の比率が94%のサイルストーン。
玄関扉はクリスタルをイメージした京都・傳來工房によるアルミ素材の扉をそれぞれ採用。玄関の施錠・開錠はTeblaリーダーのボタンを押すだけで可能だ。
リビングルーム
バスルーム
住友林業 バンコクで初の高級マンション311戸 平均6,700万円台
住友林業は4月18日、タイ・バンコクの現地企業と共同開発したランドマークとなる高級分譲マンション「Hyde Heritage Thonglor」を4月から本格販売したと発表した。同国では初の開発プロジェクト。
同社の100%子会社Sumitomo Forestry Singapore Ltd.(SFS社)と現地のProperty Perfect PCL社(PF社)、PF社傘下のGrande Asset Hotels & Property PCL社(GA社)の3社合弁の特定目的会社Grand Star社(GS社)が分譲するもので44階建て311戸。販売価格 3,800万円から(平均分譲価格約6,700万円)。GS社の出資比率はSFS社49%、GA社40%、PF社11%。
PF社、GA社はタイで戸建とマンションの分譲事業、ホテル事業を展開する大手不動産開発会社で、この2社とは第2弾のリバーサイド高級分譲マンションの共同開発も決定しており、タイ・バンコクで長期的なパートナー関係を継続し、質の高い住宅を提供するとしている。
販売順調に納得 坪単価200万円は希少 大和ハウス「東京王子」
「プレミスト東京王子」完成予想図
大和ハウス工業・コスモスイニシアが分譲中の「プレミスト東京王子」を見学した。バス便ではあるが、南東のバルコニー側前面に幅約100mの隅田川・スーパー堤防などが広がり、坪単価も23区内では希少な200万円。この1カ月強で全222戸のうち70戸を成約するなど順調なスタートを切った。
物件は、JR京浜東北線・東京メトロ南北線王子駅からバス約8分、徒歩3分の北区豊島4丁目に位置する15階建て222戸。専有面積は68.58~88.42㎡、6月上旬分譲予定の第2期(戸数未定)の予定価格は3,400万円台~5,900万円台(最多価格帯4,100万円台)、坪単価200万円。竣工予定は2020年2月中旬。施工は長谷工コーポレーション。
現地の用途地域は工業地域だが、住宅化が進んでいるエリア。用地はUR都市機構から同社など4社が取得したもので、敷地北側に今春開業した大規模商業施設との住商一体複合開発。
南東に面したバルコニーの前面には幅約100mのスーパー堤防-隅田川があり、その先は高速道路が走っている。敷地東側と西側にはそれぞれ広場も整備される。
主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2450~2550ミリ、ディスポーザー、スロップシンクなど。スマートウェルネスサービスも提供する。
◇ ◆ ◇
約100m先の高速道路をどう評価するかだが、販売担当の大和ハウス工業マンション事業部第二事業部営業第一課販売事務所長・松本諭吉氏は、「距離は問題でなく、音を気にされるお客さまがいらっしゃるのでしっかり説明している。複合開発でこの価格の安さは他にないはず」と話した。
確かに坪単価はやすい。記者は近隣の物件が強気な価格設定をしていたので坪単価は220~230万円くらいとはじいていたが、坪200万円というのは23区では城東エリアに一部あるくらいだろう。
バス利用時間も含めてほとんど都心まで30~40分圏というのは魅力だ。第一期で70戸を成約できたのも納得だ。
建設現場
春風駘蕩 販売順調に進む 三井不レジ「幕張ベイパーク」街びらき
第1弾「幕張ベイパーク クロスタワー&レジデンス」(497戸)
三井不動産レジデンシャルは4月13日、千葉県・幕張新都心で開発中の首都圏最大級のプロジェクト「幕張ベイパーク」の街びらきイベントを行った。街びらきは第一弾マンションが完成し、商業施設がオープンしたのに伴うもの。というい、熊谷俊人・千葉市長ら多くの関係者や地域の人たちが順調なスタートを祝った。計画では開発面積約17.5haに約4,500戸の住宅のほか商・職・学・遊などの複合タウンを目指す。
冒頭のプレス説明会で、三井不動産レジデンシャル執行役員千葉支店長・各務徹氏は、「2017年に千葉県企業庁から当社など7社が用地を取得し、約4,500戸の住宅、居住人口1万人のミクストユースの街づくりを進めている。一棟目が完成し、2棟目の販売も順調なスタートを切った。向こう10年間、持続可能な魅力的な街づくりを進める」と挨拶。
同社千葉支店事業室長・井上茂氏は街づくりの概要について説明し、米国ポートランドの街づくり思想に学び、デザインガイドラインを定め、エリアマネジメントを導入し、街の活性化を論議する6回にわたるディスカッションを行ってきたことなどを報告した。
同社から寄贈された「ツリーデッキ寄贈セレモニー」に出席した千葉市長・熊谷俊人氏は、「今日はとても暖かくいい天気。未来を象徴するようで嬉しい。末永く次世代に残す街づくりを進めていく」と述べた。
「幕張ベイパーク」は、京葉線海浜幕張駅から徒歩13分、千葉市 美浜区若葉3丁目に位置する開発面積約17.5ha、予定総戸数約4,500戸の複合タウンの総称。平成27年、三井不動産レジデンシャルを幹事会社とする7社が千葉県企業局からに用地約17.5haを280億円(1坪52.6万円)で取得した。
マンションのほか、商業施設「イオンス タイル幕張ベイパーク」やエリアマネジメント拠点「幕張ベイパーク クロスポート」、コミュニティ創造型コワーキングス ペース「TENT 幕張」、スポーツ・アウトドア、医療・健康施設、保育・教育施設などを10年間かけて整備する。
現在分譲中の第2弾「幕張ベイパーク スカイグランドタワー」は免震構造の48階建て全826戸。4月下旬販売予定の第1期3次(戸数未定)の価格は3,605万~9,590万円(最多価格帯4,600万円台)、専有面積は64.98~112.16㎡。売主は同社のほか野村不動産、三菱地所レジデンス、伊藤忠都市開発、東方地所、富士見地所、袖ヶ浦興業。入居予定は2021年3月下旬。施工は熊谷組。デザイン監修は光井純氏。
2017年11月、第1弾「幕張ベイパーク クロスタワー&レジデンス」(497戸)が分譲開始された。残りは未供給を含め50戸と好調。
各務氏(左)と吉田氏
左が第一弾、右が第二弾の「幕張ベイパーク スカイグランドタワー」模型
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いまの千葉県のマンション市場環境は順風、追い風ではなく、逆風、向かい風だ。船を漕ぎ出せばたちまちダッチロール状態に陥る可能性が高い、視界不良の荒海という形容も成り立つかもしれない。
少なくとも数字は厳しい市況を映し出している。別表は、千葉県の分譲共同住宅の着工戸数の推移だ。平成18年は折からのブームで約21,100戸を記録したものの、その後は激減、平成30年は3,320戸まで落ち込み、18年比で84.3%減だ。
ここまで落ち込んだ最大の理由は、リーマン・ショックの影響で千葉県を地盤としてマンションデベロッパーが軒並み退場を余儀なくされたからだ。
そして、都心の一等地では坪単価1,000万円が相場になっている時代だ。代わって登場した大手デベロッパーも、高値追求ができる販売リスクが低い他エリアにシフトしているからだ。
千葉県でも市川駅や本八幡駅圏の〝駅近〟は坪300万円を超える物件が散見されるようになったが、300万円の壁は厚い。購買力の限界と建築費の上昇の板挟みに各デベロッパーは呻吟しているはずだ。火中の栗を拾いたくないというのが本音ではないか。
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プレス説明会に各務氏が出席されることは分かっていた。各務氏には15年前、全701戸の平均面積が120㎡というわが国のマンションの歴史に名を刻む「新浦安」の取材で話を聞いており、その後、「武蔵小杉」の取材などでもお会いしている。隣の井上氏はどこかで逢っているはずだと必死で記憶を手繰り寄せた。すぐにRBA野球の同社の選手だったことを思い出した。10年ぶりくらいか。
嬉しさがこみ上げてきたのだが、ここは心を鬼にして、前述した厳しい千葉の現状にどう立ち向かうのかストレートに聞いた。
「各務さんも井上さんもよく存じ上げている。応援したいし、ネガティブな記事など書きたくないが、海浜幕張駅から遠く、京葉線は乗り換えに不便。しかも予定戸数1,000戸の『検見川浜』もある。双方合わせると『HARUMI』と同じくらいの規模。並行して走る総武線とも競合する。他都県はどんどん価格が上昇し『翔んで埼玉』も千葉よりはるかに高い。イメージが劣る千葉で正気の沙汰ではない。どう売るのか」と。
これに対し、各務氏は「貴重な質問ありがとうございます」と断り、「これまで『日本橋』『柏の葉』『豊洲』『ミッドタウン』などと同様、継続して賑わいを創造していく。ここも順調なスタートを切れた」と同社の「経年優化」の理念を語った。
それでも、その言葉を真に受けられなかった。相当苦戦を強いられているのではないかと。
ところが、2017年11月に分譲開始した第一弾「幕張ベイパーク クロスタワー&レ ジデンス」497戸は未分譲を含め残りは50戸と聞き、信じられない思いがした。これほど短期間に売れるとは夢にも思わなかった。坪単価は分譲前に「常識的な坪200万円を少し超えるくらいの値段を設定すると思う」と書いたが、その通り210万円だった。
坪単価は第一弾とほぼ同じの第2弾「幕張ベイパーク スカイグランドタワー」も今年2月から分譲を開始し、すでに226戸が販売済みだという。このペースで行けば10年間に約5,000販売することになる。
基本性能・設備仕様、住戸プランは間違いなく水準以上だ。モデルルームは非常によくできている。
売れ行きのいいのとモデルルームの出来をつぶさに見て、評価を改めた。「正気の沙汰ではない」などと、各務氏と井上氏に投げつけた〝罵声〟に近い批判的な質問はそっくり返上する。大変失礼しました。
さて、この日(4月13日)、千葉・幕張に吹いた風は何と形容すればいいか。パタパタ、ヒラヒラ、ゆらゆら、サラサラでもないし、順風満帆は平凡に過ぎる。微風でもない。飄々も適当でない。熱風は言い過ぎだろう。春風、そよ風、薫風はどうだろう。春風駘蕩がぴったりか。
巷では開発面積約13ha、総戸数5,632戸の「HARUMI FLAG」が喧しいが、この風は「HARUMI FLAG」を揺るがすかもしれない。記者の〝口撃〟を軽くいなした各務氏は馬耳東風か柳に風か。
「ツリーデッキ寄贈セレモニー」(演奏協力は全国大会で何度も優勝している幕張総合高校シンフォニックオーケストラ部、樹木はサルスベリ)
幕張海浜公園から望む
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