「ESSE」とコラボ 設備機器・収納の〝見える化〟徹底 京阪電鉄不「新越谷」
「ファインシティ新越谷」完成予想図
京阪電鉄不動産が分譲中の「ファインシティ新越谷」を見学した。用途地域は準工業地域だが、マンション化が進んでいるエリアの一角で、坪単価は165万円。販売は極めて順調だ。
物件は、東武スカイツリーライン新越谷駅から徒歩10分、JR武蔵野線南越谷駅から徒歩9分、越谷市大字西方字上手に位置する8階建て全179戸。専有面積は68.42~82.56㎡、現在販売中の住戸(15戸)の価格は3,446万~4,856万円(最多価格帯3,200万円台)。坪単価は165万円。竣工予定は2020年8月下旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
今年3月から販売を開始しており、現在、約半数が成約済み。
現地は長谷工コーポレーションの研究所跡地。用途地域は準工業地域だが、マンション化が進んでいるエリア。
建物はL字型で、標準階は南向きが5戸、西向きが18戸の23戸構成。70㎡の3LDKが中心。
主な基本性能・設備仕様は直床、リビング天井高2500~2550ミリ、ディスポーザー、食洗機、食器棚、ホスクリーン、ファミリーボードなど。
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いつものように単価を予想した。記者は東武伊勢崎線のマンション市場を熟知しているつもりだ。今春分譲され、瞬く間に売れたポラス「ルピアコート新越谷」(85戸)は坪単価210万円(これは安すぎ)。それより安いのはもちろんだが、新越谷駅周辺の朝まで飲める「越谷ゴールデン街」は凄い。ポテンシャルは「独協大」(草加松原)に負けないと読み、坪180万円とはじいた。
しかし、冒頭のように予想は大外れ。床暖房はないが、このスペックでこの価格では分譲できないはずだ。間違いなく割安感がある。同社と長谷工コーポはとてもいい関係だろうからこの価格で分譲できるのだと判断した。
それにしても、市場からこの価格でないと評価されないとすれば、東武鉄道をはじめとする関係者は考えたほうがいい。「北千住」は坪380万円で人気になっているが、伊勢崎線(スカイツリーラインは愛称)ではなく「千代田線」とみんな考えている。
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記者は基本的に嫌いなデベロッパーはなく、みんな好きなのだが、首都圏以外の電鉄(系)会社にはわが故郷の三交不動産を筆頭に頑張ってほしいと願っている。
なぜか。首都圏の電鉄会社は、JRと競争を強いられている京急を除けばそれぞれエリアの住み分けができている。人口も増加傾向にあり、恵まれた事業環境にある。しかし、地方、中でも関西圏の市場規模は首都圏の半分以下なのに各社が入り乱れて同じエリアで競争している。鉄道だけでは成長が望めないので、パイが大きい首都圏での不動産事業などを伸ばそうとしている。判官贔屓の記者は、首都圏デベロッパーの鼻を明かしてほしいと思っている。
特に関西圏は近鉄と京阪電鉄が好きだ。阪急阪神は、まだ強かった阪急ブレーブスのイメージが頭から離れず、憎き巨人の〝お助けマン〟の役割しか演じられない不甲斐ないタイガースがどうしてもぬぐいきれない。
近鉄は、三交の親会社であり、三交バスには通学の足として大変お世話になった。京阪電鉄は単に京都が好きだからだが、2014年に両社が組んで分譲した「王子飛鳥山」がきっかけでファンになった。
その時の両社の役員は、首都圏デベロッパーのようにオブラートで包んだような、奥歯にものが挟まったような物言いをしなかった。絶滅危惧の関西弁でまくしたてた。取材のし甲斐があつた。記者もストレートで真っ向勝負を挑んだ。(関西弁を堂々と話したハウスメーカー〝御三家〟の元会長・社長が第一線を退かれたのはとても残念)
京阪電鉄はその後、「イマジンテラス」「東松戸」などで卓越した商品企画力をアピールした。
今回の取材でも、同社首都圏事業部用地開発事業推進グループリーダー・武田秀和氏は、それと分かる関西弁ではなかったが、「販売事務所の設営やモデルルームは大成有楽さんを超えようと挑んだ。あの『三郷中央はよかった』」とはっきり話した。「えっ、大成有楽さんの名前を出していいですか」と聞き返したら「ノー」とは言わなかった。
読者の皆さんは大成有楽不動産の最近の商品企画をご存じか。この会社はこの数年間で劇的に変わった。本旨から外れるので触れないが、「三郷中央」の記事は添付したのでぜひ読んで頂きたい。
さて、どこが大成有楽を超えたか。確かに収納も大成有楽の「オレンジ収納」に負けない出来栄えだったし、ディスポーザーの実演をはじめ傷がつきにくい床やクロス、単板ガラスと複層ガラスの違い、普通のシンクと静音シンクの違いなどを体感できるように〝見える化〟を徹底して行っていた。釣り具の錘を落とし、それぞれの音の響きかたを比べられる単純明快な仕掛けに記者は仰天した。
それでも〝これだけじゃ大成有楽を超えたことにはならない〟と正直思ったのだが、下足入れの提案を見てあ然茫然。女性用の靴はプラスチックの容器のようなもので片方ずつが上下に並べられており、男性用の靴はつま先とかかとの部分が逆にして置かれていた。こんな下足入れは初めて見た。
販売代理の長谷工アーベスト女性販売担当者によると、男性の靴は横幅が広いから互い違いに置いたほうがスペースは狭くて済み、女性の靴は上下にしたほうが多く収まるとのことだった。子どもの靴は100円ショップで売っているハンガーのようなもので吊るすとたくさん収納できるという。生活情報誌「ESSE」とコラボして提案しているのだという。
「ESSE」なんて知らないし、疑い深い記者は、これも「オレンジ収納」をパクったのではないかと社に戻り大成有楽に確認した。(大成有楽「三郷中央」は「AneCan」「Oggi」「美的」とコラボした)
女性の広報担当は「分かります。(靴を上下に重ねることは)わたしもそうしています。しかし、当社のオレンジ収納はもともと広くしているので、そのような提案はしていません」だった。(この女性も若いのに凄い。しっかり自社をアピールすることを忘れない)
これで京阪電鉄が大成有楽を超えたことが〝実証〟されたかどうかは分からないが、ユーザーにはしっかりと商品企画の意図は伝わっているはずだ。(履くとき右と左で異なる靴を履かないか心配だが)
このように、モデルルームは全体としてよくできていた。一つだけ指摘すれば、他社と同様フェイクの観葉植物のオンパレードだったのだが、子ども部屋だけは本物が飾られていた。逆ではないか。夫婦の部屋にこそ嘘偽りのない生気(字を間違えるな)に満ち目くるめく、明るい明日が信じられる本物を飾るべきではないか。
同社は「進取の精神」を理念に掲げる。首都圏デベロッパーと同じことをしていたら絶対に勝てない。〝負けたらあかんで東京に〟。
収納
下足入れ(写真ではよく分からないが、上2段は靴は互い違い、その下の女性用は上下に重ねることで7足入っているのが分かる)
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暇に飽かせてとりとめのないことを書き連ねた。こうなったらついでだ。東武鉄道と京王電鉄にエールを送る記事を書く。
国土交通省が発表している平成29年度の東京圏の鉄道45路線の1カ月(平均20日間)当たり遅延証明書発行日数は平均11.4日だ。ローカル線を除いてもっとも少ないのは東武東上線の3.0日で、以下、京王井の頭線の3.3日、東武伊勢崎線の4.2日、相鉄線の4.2日、京王線の5.0日と続く。
他の沿線では京急線の5.7日、京成線の10.0日などが平均値以下で、東急田園都市線11.2日、小田急線14.8日、東急東横線15.1日、東京メトロ東西線17.1日、千代田線18.4日など。ワースト3は中央・総武各駅停車19.2日、宇都宮線・高崎線19.0日、中央線快速18.8日だ。
記者はかつて、価格が2,500万円を超えると売れ行きがバッタリ止まることから〝魔の伊勢崎線〟と書いたことがあるが、複々線化などによって電車が停まる率は極めて少なくなったことがこのデータは示している。都心へのアクセスも日比谷線、千代田線、半蔵門線などの乗り換えができるので便利だ。
京急は早く着きすぎて国土交通省から大目玉を食らったことがあるようだが、決められた時間にきちんと着く東武鉄道はえらい。もっと街のポテンシャルをあげる努力をすべきだ。京王電鉄はいろいろ努力しているが、マンションの単価は東急線や小田急線に圧倒的に負ける。魅力を訴え切れないデベロッパーにも問題がある。
ラウンジ
記者のデスクに飾っているポトス(植木屋さんが事務所内の鉢植えのポトスを定期的に剪定し、伸びた枝をカットするので、その枝を貰ったもの。容器はペットボトルの上を切ったもの。もう3年になる。手入れはほとんどしないのにどんどん成長している。〝記事はラブレター〟愛情がこもった記事が書けるのはポトスのお陰かも。写真は6月に撮ったもので、道端のドクダミも入っている)
主婦目線の商品企画が抜群 ポラス 全85戸の「新越谷」販売好調(2019/4/12)
星野裕明氏がデザイン 柔らかな曲線が美しい外観 三井レジ「駒沢二丁目」
「パークホームズ駒沢二丁目」完成予想図
三井不動産レジデンシャルが近く分譲する「パークホームズ駒沢二丁目」を見学した。デザイン監修は「新丸の内ビルディング」「東京ミッドタウン日比谷」「パークコート渋谷ザタワー」「ドバイワールドトレードセンター」などを手掛けたホシノアーキテクツ・星野裕明氏。柔らかな美しいファサードデザインが特徴のマンションだ。
物件は、東急田園都市線駒沢大学駅から徒歩8分、世田谷区駒沢2丁目の第1種中高層住居専用地域に位置する地上5階・地下1階建て全53戸(販売総戸数37戸、事業協力者戸数16戸含む)。専有面積は42.91~94.81㎡、予定価格は5,00万円台~15,800万円台(最多価格帯9500万円台)、坪単価は414万円。建物は2019年10月下旬竣工済み。施工は川口土木建築工業。問い合わせは約1,000件。
現地は、戸建てやマンションなどが建ち並ぶ住宅地の一角で、前面道路を挟んだ北側は第一種低層住居専用地域。
敷地は南東-南西軸が長い長方形で、北西側の8.8m道路に接道。建物は内廊下方式を採用。住戸プランは42~49㎡の1LDLが3戸、53~64㎡の2LDKが11戸、73~94㎡の3LDKが23戸の10タイプ。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400~2450ミリ、フィオレストーン天板、ディスポーザー、食洗機、Low-Eガラスなど。
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見学は、今秋行われた三井不動産グループの記者懇親会で三井不動産レジデンシャル・藤林清隆社長から「皆さん、話題のマンションだけでなくしっかり造りこみをした『パークホームズ』を見ていただきたい」と言われたので、曲線美が特徴のこのマンションを選んで実現した。
確かに外観が美しかった。しかし、「あまり肩ひじを張らない雰囲気がある」「全体として自然を感じさせる表現をコンセプトとしてデザイン」「素材感のあるタイル、土を意識させるざらつきのあるタイル使用」(物件ホームページ・星野氏インタビュー)とあるように、しっとりと周囲の住宅地になじるような白を基調とした外観だった。エントランスの木を素材に用いたアートがまた美しい。
外観がアール形状のビルは珍しくないが、マンションは皆無ではないようだが、記者は同社が3年前に分譲した「パークコート青山ザ タワー」しか知らない。強烈な衝撃を受けた。同社はその後、「東京ミッドタウン日比谷」でも星野氏によるアール形状を採用した。
野村不動産は昨年、オーバル状の「プラウドシティ東雲キャナルマークス」を分譲し、来年初めには大和ハウス工業がアール形状の外観の「プレミスト東銀座築地」を分譲する。
〝マンション=ハコ〟のイメージを覆すアール形状のマンションが供給されるのに大賛成だ。
記者がいいと思ったタイプも、北側の1低層の住宅街に面したアール形状のバルコニー付き75㎡のLタイプだった。価格は1億円近くになるようだが、人気になるのは必至と見た。
モデルルーム
大和ライフネクスト マンション管理に関する総合研究所設立 情報発信開始
大和ライフネクストは12月2日、マンション管理会社として初の総合研究所「マンションみらい価値研究所」を10月1日付で設立し、分譲マンションの適切な維持管理や様々な課題に対する解決策を公開していくと発表した。
全国の分譲マンションストックは650万戸を超える中で、建物の老朽化、居住者の高齢化という「2つの老い」が顕在化し、激甚化する災害への対応も迫られるなど多くの課題を抱えている。
同社は創業以来40年以上にわたって得た多くの事例やデータ、知見を活かし、具体的な対策やマンションの将来像について継続して情報を発信していくという。
同日(12月2日)から下記のホームページを公開し、レポート掲載を開始した。
URL:https://www.daiwalifenext.co.jp/miraikachiken/index.html
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結構な取り組みだ。記者も約40年にわたって分譲マンションの取材を行っており、〝マンションは管理を買え〟などという記事も書いてきたが、本質に迫れるような記事はほとんどない。強いてあげれば、マンションコミュニティを亡き者にする動きにささやかな抵抗を示したくらいだ。
「2つの老い」と自然災害に適切に対応するには、コミュニティしかないと思っており、最近、山本理顕・仲俊治著「脱住宅『小さな経済圏』を設計する」(平凡社)を読んだ。同書は、次のようにわれわれに迫る。
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今の住宅はサラリーマン(賃労働者)のための住宅である。私たちは、建築家に限らず、社会学者も政治学者もそれが唯一の住宅モデルだと思い込んでいる。「一住宅=一家族」モデルである…日本人はみんなそういう住宅に住んでいると思い込んでいる。そして、今の社会はそうした住宅を前提にして組み立てられている…。
賃労働がこれからも最も有力な働き方なのだろうか。今の「一住宅=一家族」モデルが唯一の居住形態であるという考え方はこれからも有効なのだろうか。もしそれがすでに有効性を失っているとしたら、「一住宅=一家族」に代わる私たちの未来の居住形式はどのように設計できるのだろうか。その可能性は私たち建築家がどのような建築空間・都市空間を設計できるのか、という想像力に多くを委ねられている…。
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山本氏が学長を務める名古屋造形大学は今年8月、定期刊行誌「都市美」を創刊した。創刊号は「コミュニティ権 新しい希望」を特集としているようだ。取り寄せて読むことにしている。
「マンションみらい価値研究所」にも、コミュニティを大きなテーマの柱に据え、情報を発信してくれることに期待したい。同時に、デベロッパーもまた「一住宅=一家族」モデルは果たしてこれからも有効かどうか考え直していただきたい。
第一種低層住居専用の大規模低層マンション 住友不「シティハウス下目黒」
「シティハウス下目黒」模型
第一種低層住居専用地域(1低層)に位置する住友不動産の大規模低層マンション「シティハウス下目黒」を見学した。元東京学園高校跡地の全195戸で、林試の森公園には徒歩5分の立地。単価予想が悩ましいマンションだ。
物件は、JR山手線目黒駅からバス9分徒歩4分・東急目黒線武蔵小山駅から徒歩15分、目黒区下目黒6丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率70%・容積率150%)に位置する敷地面積約8,449㎡、地上4階、地下1階建て全195戸。専有面積55.24~100.35㎡、価格は未定。竣工予定は2021年6月上旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。分譲開始は2020年2~3月。
現地は、明治22年にわが国初の商業高校として開校された東京学園高校跡地で、明治から昭和の初めまで目黒競技場として利用されエリアに近接。その近接地には2013年竣工に竣工した同社の敷地面積約9,700㎡の「シティテラス下目黒」(175戸)があり、全49戸のほとんどが1億円以上だったにも関わらず人気になった三井不動産レジデンシャルの都市型戸建て「ファインコート目黒」もある。総面積約12.1ha、外周を歩くと約45分の「都立林試の森公園」には徒歩5分。
敷地はほぼ正方形で、3方接道。建物はロの字型。建築基準法第55条第2項の規定に基づき建物の絶対高さ規制10mの緩和を受けている。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、ディスポーザー、食洗機、御影石キッチン天板、Low-Eガラスなど。
現地
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価格は未定だが、単価予想は難しい。記者は信じられないのだが、商・工・住混在の坪単価400~500万円台の〝駅近〟億ションが飛ぶように売れている。
このマンションは、目黒駅から歩くのは大変で、しかもかなりきつい権之助坂もある。バス利用でも駅から十数分かかる。交通利便重視のユーザーは選択の埒外かもしれない。
その逆に、低層の良好な住宅地を最優先する人にとってはたまらない立地だろう。嫌悪施設などが禁止され、良好な低層の街並みが将来にわたって担保される価値は何物にも代えがたい。
いかに希少か。少し説明しよう。東京23区の場合、1低層の全用途地域に占める割合は平均19.4%で、もっとも比率が高いのは杉並区の64.1%だ。以下、練馬区58.5%、世田谷区50.7%、中野区40.7%となっており、目黒区は40.2%で5番目だ。逆に千代田区、中央区、台東区、墨田区、江東区、北区、荒川区の7区はゼロで、港区は0.1haが1低層だが割合は0.0%しかない。渋谷区は11.5%、文京区は10.7%、新宿区は6.6%、品川区は5.6%。ちなみに大阪市は1低層ゼロだ。
どうだろう。都心3区はともかく、住宅地としてポテンシャルが高いのは1低層が多いことが分かるはずだ。この希少価値を金額に置き換えたらいったいいくらになるか。価格は市場が決めることだからこれ以上書かないが、皆さんはどう評価するか。林試の森公園には外来種や雑種にどんどん浸食され絶滅するのではと危惧されているカントウタンポポが自生しているという。
参考までに、1低層のマンション記事を添付する。
林試の森公園(ホームページから)
一戸当たり土地持ち分67㎡ 日土地ほか「バウス武蔵境」 悩ましい都市計画道路(2019/9/11)
隣接するUR賃貸と一体となった3ha超の低層 住友不「シティテラス荻窪」(2016/3/2)
23区最大の第一種低層 三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上鷺宮」(2014/4/4)
東京建物・日土地「上野」の第1期1次分譲は40戸
当欄既報の東京建物・日本土地建物「Brillia 上野Garden」の第1期1次販売戸数が40戸であることが分かった。全98戸のうち分譲対象は77戸なので、約52%が一挙に供給される。
第1期1次の価格は6,388万~15,898万円(最多価格帯8,100万円台・8,400万円台各3戸)、専有面積は49.83~106.63㎡。登録受付期間は2019年11月30日~12月9日、抽選日は12月9日(月)16:00~。
〝バラバラでアンバランス〟 ミレニアル世代に受けるか 日鉄興和不「勝どき」
「リビオレゾン勝どきnex」完成予想図
日鉄興和不動産が10月9日に発表していることなので旧聞に過ぎるが、これまでのマンションのモデルルームの常識を根底から覆す同社の〝バラバラでアンバランス〟なコンセプトルームを体験した。ミレニアム世代の単身女性向けプランで、〝古稀〟の記者はあっけにとられると同時に〝これは受けるかも〟と直感した。
同社のニュース・リリースをご存じない方は何のことやらさっぱり分からないだろから、まず、同社の6ページからなるリリースを要約する。
同社が運営するシングルライフのための暮らし・住まいの研究所「+ONE LIFE LAB」(プラスワンライフラボ)は2017年12月、プランニングチーム「素敵なうさぎライフ研究所」(うさ研)を立ち上げた。
その背景には、「既成のルールや価値観に縛られず独自の感性を持つと言われるミレニアル世代(1980年代〜2000年代序盤生まれ)の意識や生活行動は、住生活においても従来の常識を覆す新しい市場を生み出す可能性を秘めている」ことから、「これまでのマンション企画をゼロから見直すこととし」「かつて欧米から『うさぎ小屋』と呼ばれた日本の小さな家…『うさぎ小屋』ライフは、とても素敵なものにできるのではないか」という発想がある。
「うさ研」は、「都内に居住するミレニアル世代の単身女性を対象にエスノグラフィーを中心としたリサーチを実施。その結果、自分らしい個性的な生き方を愛するミレニアルズは、画一的な枠組みに収められることを好まず、自分にふさわしい個性を住まいに対しても求める願望があることが明らかになり」「『大衆』に向けて設計された平均値発想の間取りや仕様・設備ではミレニアルズの真の期待に応えることはできない。均整のとれた汎用性を目指すのではなく、コンパクトマンションの優位性を活かして、ちょっといびつでアンバランスな個性を持つ人にぴったりな『自分らしい居場所』を作れないだろうか。そんな発想から、“アンバランスな私たちのアンバランスな住まい”『i-Be2』は生まれた」と結論付けている。
「i-Be2」とは、私(=「i」)がもっともっと自分らしく(=「Be2」)生きられるという意味と、「いびつ(仏Baroque)」の意味を重ね合わせたネーミングだ。その結果、生まれたのが今回のコンセプトルームだ。
コンセプトルームは、①worcube(ワーキューブ)②sportio(スポルティオ)③ambientum(アンビエンタム)の3つ。
①worcube(ワーキューブ)は、自宅を仕事場として使えるよう工夫を凝らしたもので、仕事場と生活感を切り離すため独立キッチンとし、床は掃除がしやすい塩ビシート、仕事道具が収まる壁面収納などとしているのが特徴。
②sportio(スポルティオ)は、身体を動かすことが大好きで、生活の中心にスポーツがある人向けで、玄関に土間を設け、リビングと洋室の境を取り払い、天井にはエキスパンドメタルを配し、チューブトレーニングなどができるようにし、靴など汚れものが洗えるシンクを設置している。
③ambientum(アンビエンタム)は、ストレスを解消し、コクーン(繭)のように〝自分に帰る場〟を提案。天井には人工(リリースは人口)天窓を設置、部屋の中でも太陽に包まれたような気分にひたるようにしている。直線部分は丸みを持たせ、床は天然板素材を採用している。
コンセプトルームは近く分譲する「リビオレゾン勝どきnex」で体験できる。物件は、都営大江戸線勝どき駅から徒歩9分、中央区勝どき5丁目の準工業地域に位置する敷地面積約710㎡、13階建て全96戸。専有面積は25.12~32.18㎡、予定価格は2,900万円台~4,200万円台(最多価格帯3,800万円台)、予定価格からして坪単価は400万円台の前半になる模様。竣工予定は2021年2月下旬。施工は新日本建設。販売代理は伊藤忠ハウジング。
①worcube(ワーキューブ)
②sportio(スポルティオ)
③ambientum(アンビエンタム)
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ずいぶん長くなってしまったが、百聞は一見に如かず。「西日暮里」「月島」と同様、同業の方にも見学することをお勧めする。先に書いた同社の「月島」は、狭くて高いコンパクトに飽き足りない層をターゲットにしている。「勝どき」は逆に、専有面積を10坪(33㎡)以下に絞り、その空間を最大限に生かそうという提案だ。
つまり、大激戦のコンパクトマンションニーズを〝独り占め〟しようという目論見が見え隠れする。
一つ、記者からの提案。人工天窓はいい。そこまでやるのなら、さらに一歩進めて「自然採光システム」の導入を考えてはどうか。コストがかかるので大規模でないと不可能だが、マンションの立地、方位を劇的に変えるはずだ。
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ミレニアル世代の分析については異論がないわけではなく、記者はリリースの通り〝バラバラでアンバランス〟なのがミレニアル世代だと思うが、果たしてどうか。弊社のミレニアル世代数人に同社の分析結果を読んでもらって、その感想を聞いた。以下がその回答だ。
「そうかしら。わたしはちょっと違う」
「家を買おうとは思わない。地震が怖い。マンションを買っても土地は残らない。賃貸でいい」
「家を買うお金があったら、何かに投資・運用する」
「旦那さんに頼るよりたくましく自立して生きたい」
また、ミレニアル世代の男性は「高望みしないというのが我々の世代」と語り、ミレニアル世代を超えた女性はミレニアル世代を「小島よしおさんの〝そんなの関係ねぇ〟じゃないですか」と評した…これってまさに〝バラバラでアンバランス〟ではないか。
高くて狭いコンパクトに飽き足りない需要 取り込む戦略か 日鉄興和「月島」(2019/11/27)
テーマは「モロッコブルー」「西日暮里」に旅好き女子のインテリア 日鉄興和不(2019/10/22)
どうなる分譲マンション・戸建て市場 独断と偏見の私論(2018/12/14)
大成有楽不動産「銀座築地」 同業他社に一括売却か
「オーベルアーバンツ銀座築地」ホームページから
つい先日記事にした大成有楽不動産の「オーベルアーバンツ銀座築地」が「販売計画の見直し」により、モデルルームの受付を中止していることが分かった。
同社は「販売計画の見直しを行っている以上のことは話せない」としている。
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記者はこのマンションを取材した際、基本性能・設備仕様は高く、周辺の競合物件に負けないと判断した。記事でも「(販売担当の)庄司氏は余裕しゃくしゃくに見えたが…内心をそのまま吐露したのか、それとも戦々恐々の心奥を悟られまいと虚勢を張ったのかまでは読めなかった」と書いた。多分、余裕綽々だったはずだ。
なので、販売計画の見直しと聞き、これは分譲価格を見直し〝釣り上げる〟と読んだのだが、どうもそうではないようだ。
推測するに、同業他社から〝専有卸で譲ってくれないか〟というオファーがあり、同社がそれに応えたようだ。
どこが買ったかは分からないが、隣接する大和ハウス工業でもコスモスイニシアでもなさそうだ。基本性能・設備仕様レベルからして、大手デベロッパーも含めてどのようなブランド名になろうと、その名を汚すことにはならないはずだ。
同じように販売直前になって卸売された最近の事例では、三菱地所レジデンスがタカラレーベンに売却した「レーベン上尾GRAN MAJESTA」がある。また、大成有楽不動産は昨年、建築途中で千代田区二番町のマンションを売却している。
高くて狭いコンパクトに飽き足りない需要 取り込む戦略か 日鉄興和「月島」
「リビオレゾン月島ステーションプレミア」完成予想図
日鉄興和不動産が12月に分譲する「リビオレゾン月島ステーションプレミア」を見学した。月島駅から徒歩2分で坪単価は400万円台の前半。コンパクトではあるが専有面積を40㎡以上確保することで差別化を図り、周辺の高単価コンパクト需要を吸収しようという戦略と見た。
物件は、東京メトロ有楽町線、都営大江戸線月島駅から徒歩2分、中央区佃2丁目に位置する13階建て全79戸(非分譲住戸6戸含む)。専有面積は40.39~65.23㎡、予定価格は4,400万円台(1LK)~8,300万円台(3LDK)、坪単価は400万円台の前半になる模様。設計・監理はT設計工房。竣工予定は2020年11月下旬。施工は新日本建設。販売代理は伊藤忠ハウジング。
現地の用途地域は商業地域(一部第2種住居地域)で、敷地東側は幅員36mの清澄通りに面し、南側と西側はそれぞれ約2.7mの公道に接道。道路を挟んだ西-北-東側は2~3階建ての土地が細分化された木造住宅など。
住戸は2階以上で、1フロア5~6戸構成。内廊下方式を採用。清澄通りに面した南東向き住戸は45㎡・45㎡・55㎡、北西向きは45㎡・45㎡・55㎡が中心。もっとも広い65㎡は上層階の1戸のみ。
主な基本性能・設備仕様は、直床、食洗機、フィオレストーン天板、ミストサウナ、キッチン床下収納、Low-Eガラス(コーナーサッシのみ)など。
エントランス
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このところ、「築地」と「上野」のコンパクト中心のマンションを6物件見学している。トータルで約600戸だ。坪単価は軒並み400万円以上で、中心は450万円。10坪(33㎡)でもグロスは4,500万円だ。
もちろん、このほか都心部では数十棟のコンパクトが分譲されている。どこかが割を食うのは必至だ。
「月島」は、他のエリアと比べると単価相場はやや低く、劣勢は否めないと思っていたが、この物件に限ってはそうではない。「築地」などの〝狭くて高い〟コンパクトに飽き足りない単身者やDINKSの需要を取り込もうとする、相場の低さを逆手に取った戦略がありありだ。
専有面積も最低で40㎡を確保して2LDKとするとともに間口も5.1mと広い。この戦略が奏功するかどうかだが、45~55㎡の2LDK(41戸)は、子どもが生まれても何とか3人で暮らせる。「築地」とは単価差にして約50万円。さて勝敗は…。
1~3LDK全てがワイドスパンの間取り秀 明和地所「武蔵小杉」
「クリオ武蔵小杉ガーデンマークス」完成予想図
明和地所が11月22日から販売を開始した「クリオ武蔵小杉ガーデンマークス」のモデルルームを見学した。新幹線と府中街道が交差する地点だが、1LDK・2LDK・3LDKのいずれのプランもワイドスパン&正方形で使い勝手がいいマンションだ。
物件は、東急東横線・目黒線武蔵小杉駅から徒歩13分(JR武蔵小杉駅から徒歩11分)、川崎市中原区市ノ坪の準工業地域に位置する7階建て64戸(事業協力者住戸6戸、管理事務室1戸含む)。第一期(9戸)の専有面積は33.45~73.41㎡、価格は3,082.5万円~6,546.4万円、坪単価は300~320万円になる模様。竣工予定は2021年3月下旬。設計は共同エンジニアリング。施工はノバック。
現地は、新幹線高架と府中街道が交差する準工エリアで、マンション化が進んでいる一角に位置。敷地は元パチンコ屋。
敷地は、北東側が府中街道に面し、南東側が新幹線高架に近接した南北軸に細長い形状。標準階の住戸プランは西向き3LDKが4戸、東向き1~2LDKが5戸、西向きと東向きと独立した形の68㎡の3LDKが1戸の1フロア10戸構成。
1LDKは5,000mm、2LDKは6,200~6,750mm、3LDKは8,000~10,700mmのワイドスパンが特徴。
モデルルーム(コンセプトルーム)
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現地は観ていないが、一昨年、伊藤忠都市開発の学生マンション第一号「クレヴィアウィル武蔵小杉」を見学した際、周辺の街並みは観ているし、以前、マンションの取材で府中街道を歩いたことがあるのでおおよその住環境は分かる。
モデルルーム・パンフレット図面を見て驚いたのはプランのよさだった。70㎡台の3LDKのスパンはすべて8m以上。しかも、洋室-洗面-浴室のウォークスルークローゼットの動線がよく工夫されている。
ワイドスパンは3LDKだけかと思ったら、30㎡台の1LDKも40㎡台の3LDKも全て5m以上のワイドスパンだった。
いま一つ単身女性の選好基準が分からないが、単身男性のニーズはあると見た。
73㎡のプラン
33㎡のプラン
東海・近畿・西日本の電鉄系4社連合軍 大激戦の「中央林間」で604戸 幹事は名鉄不
「グランアリーナレジデンス」
名鉄不動産(事業比率40%)・近鉄不動産(同30%)・京阪電鉄不動産(同15%)・JR西日本プロパティーズ(同15%)電鉄系デベロッパー4社JVによる商・医・育・住の複合大規模マンション「グランアリーナレジデンス」を見学した。田園都市線つきみ野駅から徒歩12分の全604戸で、始発駅・中央林間駅へシャトルバスを運行する。坪単価はたまプラーザ、あざみ野圏の半値以下の180万円くらい。
物件は、東急田園都市線つきみ野駅から徒歩12分、大和市つきみ野1丁目の準工業地域に位置する敷地面積約22,840㎡、14階建て全604戸(第1工区339戸・第2工区265戸)。専有面積は68.82~85.48㎡、次回分譲予定の第2期6次の価格は2,900万円台~5,100万円台(最多価格帯3,800万円台)、坪単価は180万円くらいになる模様。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は第1工区が2021年2月下旬、第2工区が2021年8月下旬。販売代理は長谷工アーベスト。今年7月から分譲が始まっており、約110戸が成約済み。
現地は、イオンの跡地。先に開業した「グランベリーパーク」へは車で約3分。敷地内に保育施設が併設されるほか、敷地に隣接してイオン系スーパーマーケットのほか医療施設、戸建て(49区画)が予定されている。田園都市線の始発駅・中央林間駅まで約9分のシャトルバスが運行される予定。
建物は、西向きのA・B棟、南向きのD・E棟、中庭を望む南向きC棟の5棟構成。敷地内に平置・自走式駐車場100%(500円~)、3台が置けるサイクルポート604区画(1,200円/年)。
主な基本性能・設備仕様は、直床、デイスポーザー、リビング天井高2450~2550mm、食洗機、床暖房など。
中庭
「niko and …」がプロデュースしたグランドラウンジ
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モデルルームは72㎡と81㎡の2タイプが用意されており、81㎡のほうはアパレル、雑貨、家具などを展開する「niko and …」がマンションでは初めてプロデュースしたものだった。
多目的に利用できるDEN(約5.5畳大)とストックルーム(約3.9畳大)を設けているのが特徴だが、記者は濃紺の建具・ドアがとてもいいと思った。モデルルーム仕様は有償オプションで約70万円と聞いたが、ローンに組み込める「アイセルコ」が利用できる。
同じ田園都市線のたまプラーザ駅やあざみ野圏は坪単価350万円から400万円に迫ろうかというところまで上昇している。一般的な一次取得層の取得限界をはるかに超えている。
「グランアリーナ」はこれらのエリアの半値以下の価格だ。中央林間駅圏では現在、東急・大成有楽不動産・相鉄不動産・総合地所4社の大規模マンション「ドレッセ中央林間」857戸(ウエスト街区452戸、イースト街区405戸)も分譲中で大激戦だが、東海、近畿、中国・四国の電鉄系デベロッパー連合軍の「グランアリーナ」が首都圏の電鉄会社(系)に真っ向勝負を挑む構図が面白い。価格的にも断然優位に立つ。戸数が多いだけに長期戦は必至と見たが、記者は三重県出身なので、応援は…どっちも頑張れ。
モデルルーム