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「Rita School(リタ スクール)利他の郷」

 ナイスは4月21日、同社が施工を担当した横浜市戸塚区の保育施設「Rita School(リタ スクール)利他の郷」の完成現場見学会を開催した。同社グループが構造計算から施工(元請け)に至るまで一気通貫で対応した延べ床面積約340㎡の木造2階建て。内外装に同社オリジナル商品を採用するなど、自然素材をふんだんに用いているのが特徴だ。

 物件は、横浜市戸塚区吉田町に位置する建築面積約245㎡、延べ床面積約340㎡木造2階建て。旧東海道に面している。工期は2022年10月~2023年4月。設計は小野建築設計室。事業主は大覚寺真言宗宝蔵寺。木造使用量は躯体材が75㎥(うち国産材24㎥)、内装材が国産材11㎥。炭素貯蔵量は69t-CO2(189人が1年間に呼吸で吐き出すCO2に相当)。

 建物の1階は一般にも開放する三和土付きの「学びカフェ」、幼児用トイレ、フッドデッキ、八角堂(保育室)など、2階は八角堂(吹き抜け空間)、キャットウォーク、貸室2室、ルーフバルコニーなど。敷地の高低差を生かし、4層にも5層にも見えるよう設計されており、八角堂の天井高は9m、最大スパンは11m。

 「みんなの寺」をモットーとし、子どもたちが日本の風土を感じられるよう、自然素材を多用してほしいという事業主の要望に応えるため、サイディング、ルーバー、床材、羽目板などには同社オリジナルの宮崎県産飫肥杉の赤身のみを商品化した「ObiRED」を採用し、強度の必要なところは特許商品の「Gywood(ギュッド)」加工を施している。柱材はヒノキ。躯体材は欧州赤松。

 また、天井・壁面仕上げには、柿渋の抗菌・消臭・防腐力、漆喰の強さ、珪藻土の調湿力を兼ね備えるパーシモン社のパーシモンEウォールを採用しているのも特徴の一つ。

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八角堂

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薪ストーブ

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1階(手前が三和土)

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 同社が施工した木造建築物は結構取材している。みんないいのだが、今回は柿渋タンニンと米ぬか油、ごま油、桐油、ひまし油などの植物油を混ぜて壁などを仕上げているのに驚いた。

 柿渋は、記者の田舎でも漁網や住宅のいたるところに使用されていたのを知ってはいたが、現在はどこのハウスメーカーもデベロッパーも使用していないはずなので、この日、実演を行ったパーシモン社エイブル・エンジニアリングラボの林育美氏に「高価だから使わないのですか」と聞いたら、林氏は「いえ、そうではありません。1㎡当たり250円。石油そのものの輸入製品はこの3倍の値段です。油も自然油、唯一無二の柿渋のよさをみんな理解していない、勉強していないだけです」と即座に答えた。

 「石油そのもの」という言葉に頭をどやされた気がした。クロスには紙や布、まれに本革も採用されるが、ほとんどがケミカル製品の塩ビクロスだ。これは考えないといけない。

 住宅リフォームにも最適で、ビニールクロスの上にそのまま塗るだけで済むそうだ。カラーバリエーションは25色もある。和紙クロスも販売されている。

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パーシモンEウォール

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塗り壁実演

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 さすが寺院の「利他の郷」だと感服したのだが、刮目すべきことはほかにもあった。保育施設の奥まったところに本堂があるのだが、その一角にはヤギやニワトリの小屋のほか、1羽の雄鶏が飼育されていた。田舎で飼っていた玉子を産む雌鶏より一回り大きく、威風堂々そのもの。近づいても動じる気配はなく、頸を高く伸ばし、鋭い眼光で記者を睨みつけ〝コケコッコー(クックドゥードゥルドゥー)〟と一喝した。その時(鬨)を告げる声は気高く、寺院の雄鶏は格が違うと畏怖すら覚えた。

 雄鶏だけではない。本堂の男子用トイレには水を流さない小便器が採用されていた。女子用トイレを利用した人にも聞いたら同じ無水の和式トイレだったそうだ(小水はどのようにして流れるのか、傾斜が掛かっているのだろうか)。

 まだある。樹齢数百年と思われるイチョウの巨木には3匹のリスが生息していると教えられた。記者も目撃した。体長は尻尾を含めると30cmくらいあった。ほとんど真っ黒。樹皮にしがみつき移動する様はかわいいというより不気味。人間を恐れる様子もなかった。

 図鑑や映像でみるニホンリスでも中国で見たリスでもなかった。どうやら、日本全国で大繁殖している2005年に特定外来生物に指定されたタイワンリスのようだ。

 唯一無二の柿渋仕上げの八角堂で学び(英語も教えるそうだ)、ヤギやニワトリ、リスとも会話することができる「Rita School」は素晴らしいではないか。ただ、中国ではリスに近づいたら、現地の人に「人を襲うから危ない」と注意された。タイワンリスも狂暴化しないことを祈るのみだ。中国と台湾は違うのか。蛇足。

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雄鶏

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ヤギ(後方にニワトリ)

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無水トイレ

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タイワンリス(左の写真の立札の上の黒っぽいのがリス)

カテゴリ: 2023年度

神奈川県横須賀市が地方自治体で初めてChatGPTの活用を開始したと、多くのメディアが報じた。ChatGPTなるものを一度も利用したことがない記者は、下案を作成し、職員が校正を行ったという市のプレス・リリースを読んだ。自分の拙い記事を棚上げにして、AIの文章の粗を探してやろうという魂胆が丸見えなのは承知のうえだ。

文章は651文字。A41枚に収まる分量で、誤字脱字など一つもない(はず)。文末を「職員は、人にしかできない、人だからこそできる仕事に注力することで、市民の幸福を実現する取り組みを、進めてまいります」と締めくくっているのには感心した。頭の悪い人間をからかうのか慮るのか、あるいは両方の意図が込められているとすれば、これは脅威だ。〝人にしかできないものなどない〟と言われているようで、背筋が寒くなった。

いったい、人間の手はどれくらい加わっているのか。市の担当者に聞いた。職員の指示を受け、ものの数十秒で下案を作成したというから、ChatGPTの能力の高さを率直に認めざるを得ない。ただ、前述した文末は職員が「心、思いを込めるため」(担当者)加筆したようで、AIが忖度して作成した文章ではないことも分かった。

記者はこれに少し安堵したのだが、重箱の隅をつつくように文章をチェックした。文法、用法などの誤りがいくつか見つかった。以下に紹介する。

主語がない

書き出しは「横須賀市役所において」となっているが、「おいて」は場所を示す連語だから主語ではない。主語は言うまでもなく「横須賀市」だ。主語を省いても意味は通じるが、行政文書だから、ここはきちんと「横須賀市は、市役所内において」とすべきだし、そもそも「おいて」なる文言は古臭い。記者はほとんど使わない。

5W1Hが欠けている

リリースを発表したのは418日だが、肝心のChatGPTをいつから活用するのかの記述がない。どこかに「420日から」を入れるべきだ。

③…たり…たりの用法が変

AIと会話をしながら、質問に答えたり、文章を作ったり、言葉を翻訳したり、文章を要約することができます」という文章も変だ。会話をしながら質問に答えるのはAIだろうということは分かるが、ここは「質問を入力すると、ChatGPTは質問に答えたり」とすべきだ。記者もそうだが、ChatGPTが何者か知らない市民だっているはずだ。本当に会話が交わせ、質問もされるのではないかと誤解する。

また、一つの文章に「たり」が3つもあり、しかも「言葉を翻訳したり、文章を要約する」の用法も間違っている。「たり」を用いるなら「言葉を翻訳したり、文章を要約したりする」とするのが正解。

④「自治体初!」の根拠が示されていない

ChatGPTを採用するのは横須賀市が全国の自治体で初めてとタイトルにあるが、その根拠は本文には示されていない。全国の自治体は2,000近くある。裏付けは取れているのだろうか。どうして調べたのか。OpenAI社が把握しているのだろうか。情報をリークすることに問題はないのか。

このほか、主体は市なのかChatGPTなのか分からない部分もあるが、指摘はこれくらいにしておく。ChatGPTは学習能力もあるようだから、進化したらわれわれメディア記者の仕事がなくなる時代がやってくるかもしれない。以下、横須賀市の418日付プレス・リリース。

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令和 5 年(2023 年)4 18

報道機関各位

横須賀市デジタル・ガバメント推進担当部長

 

自治体初!横須賀市役所で ChatGPT の全庁的な活用実証を開始

横須賀市役所において、「ChatGPT」の全庁的な活用実証を行います。

ChatGPTは、OpenAI社によって開発された、自然言語処理技術を活用し人工知能が自然な会話を行うことができるシステムです。AIと会話をしながら、質問に答えたり、文章を作ったり、言葉を翻訳したり、文章を要約することができます。

横須賀市では、(株)トラストバンクが提供する自治体専用ビジネスチャットツール「LoGoチャット」にChatGPTAPI機能を連携させることにより、すべての職員が、普段業務で使用しているチャットツールにおいて、文章作成、文章の要約、誤字脱字のチェック、またアイデア創出などに活用できるようにします。これにより業務の効率化が見込まれるとともに、広く職員が活用していくことで、さまざまなユースケースを生み出していくことを期待しています。

なお、横須賀市では、ChatGPTへの入力情報が二次利用されない方式で使用し、また機密情報や個人情報は取り扱わない運用とし、情報の安全な取扱いを徹底します。

横須賀市では、「スマートシティ推進方針」、「横須賀市デジタル・ガバメント推進方針」に基づいて積極的にテクノロジーを活用し、様々な業務の効率的、効果的な実施を図っています。それにより、職員は、人にしかできない、人だからこそできる仕事に注力することで、市民の幸福を実現する取り組みを、進めてまいります。

なお、本リリースはChatGPTで下案を作成し、職員が校正を行いました。

カテゴリ: 2023年度

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「mitaseru(ミタセル)」

 三井不動産は4月19日、食材調達から調理人の確保、商品の製造代行までを担う食のプラットフォーム「mitaseru(ミタセル)」を4月から本格的にサービス開始すると発表。mitaseruは、2018年度に創設された同社グループの事業提案制度「MAG!C」の審査を経て生まれたもので、提案者の同社ビジネスイノベーション推進部事業グループ・松本大輝氏と佐々木悠氏のほか、参加店の菰田欣也氏(中華/ファイヤーホール4000)、松本一平氏(フレンチ/La Paix)、野永喜三夫氏(和食/日本橋ゆかり)が出席し、記者説明会・試食体験会・トークセッションを行った。

 mitaseruを開発した経緯について松本氏と佐々木氏は、日本の飲食事業は、世界からも高い評価を受けていながら、①他産業と比べても人手不足が顕著②立地や客席数が売上の制約となっている③国内マーケットの縮小など3つの課題を抱えており、さらに家事時間の半数を占める料理の負担の課題を解決し、「美味しさ」「手作り」「安心感」のある料理をいつでも好きなときに食べられるようにしたと説明。

 商品製造から販売までをmitaseruが請け負うため、飲食店は人材確保や設備投資などの負担なく事業拡大が可能で、店の料理と同じクオリティの味を多くの顧客に提供できるメリットがあり、顧客は予約困難店やミシュランガイドで星を獲得したお店の料理を取り寄せることを可能にしたと話した。

 一般的な監修商品とは異なり、有名飲食店などで実際に提供されている料理と同じレシピ・味にこだわりながら、専門シェフが手作りで調理し、調理後すぐに最新の急速凍結技術を用いることで、保存料は使用していなくとも鮮度をそのまま保存可能としているのが特徴。

 参加店舗は、「ファイヤーホール4000」(中華)「La Paix」(フレンチ)「日本橋ゆかり」(和食)のほか「Ata」(ビストロ)「牛タン焼専門店司」(和食)「後楽園飯店」(中華)「ざくろ」(和食)「讃岐うどん白庵」(和食)「JASMINE THAI」(タイ料理)「Series」(中華)など21店30品目でスタート。料金は800円台から5,000円台でレシピ付き。今後、顧客の意見を聞きながら店舗ラインナップやサービスの充実を図っていく。

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左から佐々木氏、菰田氏、松本氏、野永氏、松本氏(三井不)

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 試食体験会で提供された「具たくさんの豚汁」(日本橋ゆかり)「ビーフストロガノフ」(La Paix)「激辛!!火鍋肉団子」(ファイヤーホール4000)ともとてもおいしかった。それぞれのオーナー・シェフも「完成度の高さにびっくりした」(松本氏)「クオリティは高い。本格的なおふくろの味を体と心で満たせる味」(野永氏)「そんなことできるのかと半信半疑だったが、(mitaseruの)メンバーはみんな凄い」(菰田氏)などと絶賛した。

 気になったこともいくつかある。一つは、記者は試食に供された店の料理は食べたことはないが、実際にシェフ・オーナーがつくった料理をその場で食べるのとどれほどの味の差があるのかということだ。

 仮に、まったく味落ちがないとすれば、mitaseruが大量生産・大量販売したら価格は大幅に引き下げられる。店もその場でつくる手間はいらないから、冷凍食品を温めて提供することも可能になる。われわれは手間・暇をかけた料理だからこそ価値を認め、高額な料金を払う。店の味と冷凍食品の味が同じになったらどのような世の中になるのか。

 もう一つは、特許の問題だ。調理レシピは特許も可能らしいが、門外不出の秘伝の調理レシピがわが国だけでなく全世界に流出しないかということだ。

 まあ、しかし、料理は味はもちろんだが、もてなす人の心・愛情が伝わるものだし、その場の雰囲気、調度家具、什器、そえものも重要な役割を果たすから、記者の危惧などは当たらないことを祈ろう。

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ファイヤーホール4000_激辛火鍋肉団子

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La Paix_ビーフストロガノフ

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日本橋ゆかり_具たくさんの豚汁

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 リリースには「MAG!C」は、「当社グループ社員一人一人の『妄想』を起点に、会社を巻き込み『構想』『実現』へ昇華させ、そのイノベーションにより『不動産デベロッパー』の枠を超えた『産業デベロッパー』というプラットフォーマーを目指す」提案制度とある。

 これら「妄想」「構想」「実現」「産業デベロッパー」の文言は、同社が昨年12月9日に行った社長交代記者会見場で、植田俊社長(当時同社取締役専務執行役員)が語ったフレーズそのものだ。つまり、「MAG!C」は植田氏の発意によるものだろうか。

 今後、「MAG!C」から何が飛び出すか興味津々。

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Ata 真鯛のブイヤベース

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司_ほろほろ牛タン

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千陽_心技体

「産業デベロッパー目指し、日々妄想」植田俊・三井不動産次期社長(2022/12/11)

 

カテゴリ: 2023年度

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伐採されたイチョウ

 東京都千代田区は4月12日、「神田警察通り道路整備工事における暴力行為について」というタイトルの樋口高顕区長名の文書を区のホームページに掲載し、「4月11日(火曜日)早朝、神田警察通り道路整備工事の作業において、安全確保のフェンスを設置中に、工事の反対者の体当たりなど暴力的な妨害行為により、警備員と区職員の2名が転倒させられ負傷する事案が発生しました。警備員は全治4~6週間の重傷で、区職員は軽傷を負っています」と報告した。

 これに対して「神田警察通りの街路樹を守る会」は4月13日、樋口区長宛てに「ホームページ掲載文の撤回・謝罪を求める通知文」を提出。「私たち住民を『工事の反対者』と呼び、『暴力的な妨害行為』を行って警備員と区職員を転倒させて負傷させたという全く事実でないことを広報したことは…一般の区民から分断させようとする誤った広報活動」であり、「直ちに撤回し、私たちに対して謝罪することを求める」と抗議している。

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神田警察通り道路整備Ⅱ期工事区間

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 〝暴力事件〟が起きたのは4月11日の午前4時過ぎのようだが、双方の言い分は真っ向から対立している。区側にも住民側にも与しない、イチョウの味方である記者は現場を見ておらず、コメントのしようがないのだが、区側には明らかな嘘が少なくとも2つある。

 区の文書では「この間、一時、工事を見合わせました。しかしながら、双方の一致点を見出すことはできず、また『守る会』等の工事に反対する一部の方々による妨害行為もあり、工事が進められない状況になりました。その後、工事に反対する一部の方から、損害賠償請求訴訟、住民訴訟が提訴されるなど、双方が歩み寄るかたちで工事を行うことは難しいものと判断するに至りました」とあるが、整備事業を議会決定したのは令和3年10月13日であり、その後、工事には着手せず中断し、再開を決定したのは令和4年4月25日だ。この間、住民による妨害行為はなかったはずだ。反対運動を「妨害行為」と呼ぶなら、もう何をか言わんやだ。

 この「妨害行為」によって工事が進められなくなり、「双方が歩み寄るかたちで工事を行うことは難しいものと判断するに至りました」というのも明らかに虚偽だ。話し合い継続を断念し、「現在の一致点が見出せない状況が長く続けば、意見の対立を深め地域に亀裂を生じさせることにもなりかねないと認識」「(令和4年4月25日から神田警察通り道路整備Ⅱ期工事を再開したのは)行政として苦渋の決定」をしたのは樋口区長で、損害賠償請求訴訟、住民訴訟が提訴されたのは、そののち令和4年5月以降だ。

 行政文書は正確でなければならない。文書作成は職員が行ったのだろうが、関係者が読めば明らかに間違いであることは分かる。区長の鼎の軽重が問われる。

 ただ、工事をさせまいとイチョウに抱きつく住民の方もいかがなものか。中には若い方もいらっしゃるが、皆さんは記者と同様おじいさんおばあさんばかりだ。健康が心配だ。

 警察署にも一言。守る会の通知文によれば、救急車が出動したのを受けて住民が110番通報し、警察官を呼びだしたところ「私たちは中立の立場。区と住民とでよく話し合ってほしい」と話したそうだ。警察官とは〝事件〟が起きた目の前の神田警察署の警察官か。区が言う「反対者の体当たりなど暴力的な妨害行為」とは認識していなかったということか。さすがと言うべきか。

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神田警察通り道路整備Ⅰ工事区間

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区役所前で横断幕を掲げる「神田警察通りの街路樹を守る会」(3月30日写す)

「約束を反故。許せない」住民怒る 健全木のイチョウ 新たに4本伐採 千代田区(2023/2/7)

 

 


 

 

カテゴリ: 2023年度

 三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の事業者4者は4月14日、東京都から4月6日付で受けた「神宮外苑地区におけるまちづくりに関する再要請」に答える形で「神宮外苑地区まちづくりを進める意義等について」を発表。都の指摘を真摯に受け止めており、新たな取り組みを今秋にスタートし、4月からプロジェクトサイトの構成や文章、デザインを刷新し、より見やすい内容にリニューアルしたと報告した。

 都は、令和4年5月26日付文書で「外苑の成り立ちを踏まえた幅広い都民参加や既存樹木の保全、わかりやすい情報発信などに取り組み、多くの都民の共感と参画を得ながらまちづくりを推進するよう」求めていたにも関わらず、4月6日付で「未だ具体的な取組内容や実施時期などが示されていない」と再要請していた。

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 今回、改めて都から都民の共感と参画を得るよう要請されたのを受け、報告では、「4列のいちょう並木が伐採される」「神宮外苑のみどりが減る」というのは誤解、憶測であり、4列のいちょう並木を保存し、みどりの量と樹木本数を増やすと強調。計画地のオープンスペースは現行約21%から再開発後は44%へ、緑の割合は25%から30%へ、樹木は1,904本から1,998本に増えるとしている。

 これは理解できる。4事業者のうち「経年優化」をスローガンに掲げる三井不動産は、同社の分譲住宅、オフィス・商業施設などの取材を通じて、他のデベロッパーに負けない充実した植栽を施しているのを知っている。今回の開発でもみどりをふんだんに採用するのは間違いない。

 しかし、今年2月17日付記事でも書いたが、問われるのは緑・樹木の質だ。計画では伐採樹木741本の具体的な樹種、樹齢などは記載されていない。

 この伐採樹木の明細をきちんと公開し、その是非を問うべきだ。例えば聖徳記念絵画館前の広場の再生。「広場の再生」とは、戦後、軟式野球場として利用されてきた約40,550㎡の敷地をテニス場・駐車場としてリノベーションすることだが、「再生」などといわれると、記者も20数年間RBA野球大会の取材で通った軟式野球場は老朽化し、樹勢も衰えているかのような印象を受ける。

 軟式野球場をテニス場にリノベーションするその是非はともかく、ここには樹齢100年くらいの立派なヒマラヤスギ、イチョウ、コブシ、ケヤキなどの巨木がグラウンドを囲むようにたくさん植わっている。この先100年も200年も生きるはずだ。

 計画では巨木はほとんど伐採されるようだが、巨木を避けてテニス場を整備することはできないのか。上位計画には「歴史的景観を将来に継承」とあるではないか。

 どうしても伐るのなら、参加者を募り伐採式を行い、伐り倒した樹木の墓碑銘くらいつくってほしい。〝ここに神宮外苑の樹齢100年の御神木眠る〟と。

 いま、千代田区の神田警察通りの街路樹である樹齢60年のイチョウ30本が「枯損木」として伐採されようとしている。神宮外苑と千代田区の街路樹問題の根は同じ-樹木をないがしろにするのは人間をそのように扱うのと一緒だ。

緑、樹木は増えるが問われるのは質 三井不動産など「神宮外苑」再開発 施行認可(2023/2/18)

これは事実か「枯損木記載は都の慣例に倣ったもの」千代田区の主張 住民訴訟(2023/1/17)

 

カテゴリ: 2023年度

 国土交通省は3月31日、令和5年2月の住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は64,426戸(前年同月比0.3%減)で先月の増加から再びの減少、利用関係別では、持家が18,368戸(同4.6%減)で15か月連続の減少、貸家が24,692戸(同4.7%増)で24か月連続の増加、分譲住宅が21,062戸(同1.8%減)で3か月ぶりの減少。分譲住宅の内訳はマンション9,750戸(同0.2%増)で3か月連続の増加、一戸建住宅は11,202戸(同3.3%減)で、4か月連続の減少。

 首都圏マンションは5,472戸(同1.9%減)で、都県別では東京都2,816戸(同11.6%減)、神奈川県1,218戸(同3.1%減)、埼玉県332戸(同37.2%増)、千葉県1,106戸(同23.7%増)。

 令和4年度では、総戸数787,135戸(前年同期比0.3%減)で、内訳は持家230,648戸(同11.6%減)、貸家314,842戸(5.5%増)、分譲住宅236,496戸(同5.0%増)。暦年と同様、分譲住宅が持家を16年ぶりに上回る可能性が高まった。

 

カテゴリ: 2022年度

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「新橋ぷらっとホーム」

 野村不動産は3月31日、事業協力者として参画している「新橋駅西口地区市街地再開発事業、以下本再開発事業」区域内の遊休地を活用し、街の賑わいづくりの拠点として、環境に配慮した木造の「新橋ぷらっとホーム」を建設したと発表。再開発事業後も見据えたエリアマネジメントによる、地域活性化の拠点として地域の情報発信やイベント等を開催していく。

 室内に木材を多用した1階には、カフェ・イベントスペースを設け、地域の情報発信や賑わいづくりのためのワークショップなど定期的なイベントを実施。2、3階には再開発準備組合事務所を設置する。

 建設に係るCO2排出量は約93トン、鉄骨造、RC造と比べそれぞれ約63トン、約17トン削減が見込まれ、構造躯体に使用する木材は32㎡、炭素固定量は49トン(CO2ベース)。建築地(94.10㎡)の約18倍の広さにスギを植林したときの炭素固定量に相当。使用した一部木材は解体後に本再開発事業における新設建物へ再利用する。

 物件は、JR・東京メトロ銀座線・都営浅草線新橋駅から徒歩3分、港区新橋3丁目の敷地面積94.04㎡、木造3階建て延床面積213.75㎡。1階カフェ・イベントスペース、2・3階事務所。設計・施工は住友林業、竣工は2022年12月。1階カフェ・イベントスペースは、営業時間:平日8:00~21:00、主なメニュー:ブレンド(400円)、シングルオリジン(550円)、レトロプリン(450円)。

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再開発計画エリア(新橋駅西口)

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再開発計画エリア(新橋駅西口)

カテゴリ: 2022年度

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「西参道公衆トイレ」

 日本財団「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの最後の17か所目、藤本壮介氏による「西参道公衆トイレ」を見学した。目がくらむほどの白に圧倒された。ヘンリー・ムーアクラスの芸術品かもしれない。これで17か所全て見学したことになる。

 場所は、京王新線初台駅から徒歩7分、渋谷区が首都高速から賃借している舗道上。広さは10坪くらいか。表も裏も床も壁も蛇口もブース内も全て真っ白。見学したときは昼時で、真上から太陽に照らされていたためか影もなく、床と壁の境目も分からず、目がくらんだ。カメラもどこに焦点を当てていいか戸惑ったようで、みんなピント外れ。

 白といえば、槇文彦氏の「恵比寿東公園トイレ」もそうだが、こちらは陰翳もあるので周囲の景観に溶け込んでいる。藤本氏のトイレは、地面の黒のアスファルトや周辺の建物などと隔絶された空間に映った。主張しないようで、これほど存在感のある公共トイレは他にないのではないか。

 欲をいえば、藤本氏は世界一広いトイレも設計したというではないか。手洗いをもっと大きく深くして水も貯められるようにすれば、ウオータースライダーとして子どもにあそばせるのに最適だ。どこかでやったら名所になるはずだ。

 藤本氏は1971年、北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞(ラルブル・ブラン)に続き、2015、2017、2018年にもヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。国内では2025年、日本国際博覧会の会場デザインプロデューサーに就任。千葉県市原市の小湊鐡道飯給(いたぶ)駅にある広さ約200㎡の公衆トイレが世界一広い屋外女性専用トイレとして、ギネスに認定されている。

 コンセプト 器・泉(うつわ・いずみ)公衆トイレは都市の中の水場、街の泉であるといえるのではないでしょうか。トイレを利用する人だけではなく、さまざまな目的を持った多様な人々に開かれた、公共の水場としての手洗い空間を提案します。それはみんなのための、ひとつの器(うつわ)です。中央が大きく凹んだこの形は、様々な高さの手洗い場をひとつの形に内包したもので、子供からお年寄りまでが、この器を囲んで手を洗い、水をくみ、会話をして、小さなコミュニティが生まれるきっかけとなるはずです。 水を囲んで人々が集う場所として、新しい公共空間のあり方を提案したいと思います。

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石積みの擁壁と銅屋根が印象的 マーク・ニューソン氏「裏参道公衆トイレ」(2023/3/31)

「幡ヶ谷」「笹塚」の強烈なメッセージ 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2023/3/29)

日本財団「THE TOKYO TOILET」13か所目 後智仁氏のトイレは植栽にも注目(2022/7/23)

日本初の手をつかわないトイレ「Hi Toilet」誕生 佐藤カズー氏デザイン 日本財団PJ(2021/8/12)

森に溶け込む淡い7色きのこ 伊東豊雄氏担当の日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/7/16)

誰もが使いやすいトイレ「LIXIL PARK」 フジテレビ広場で公開LIXIL 7/21~9/5(2021/7/20)

佐藤可士和氏担当の恵比寿駅西口は「白」の箱 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/7/15)

隈研吾氏の〝十八番〟外観は吉野杉のルーバー 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/6/25)

マスク越しに強烈な匂い 平塚駅前公衆トイレ 利用者はほとんど男性 トイレ考Ⅲ-3(2021/4/3)

富士を観ながら…日本トイレ協会「特別奨」受賞 「ダイヤゲート池袋」 トイレ考Ⅲ-2(2021/4/1)

多様化する利用目的 少ない車いす対応 マンホールトイレ 畢生のトイレ考Ⅲ-1(2021/3/31)

トイレ紙1日使用量 男性3.5m 女性12.5m 年間排泄量15t 畢生のトイレ考Ⅱ(2021/3/30)

櫂 糞尿譚 陰翳礼讃 水琴窟 シカの糞…虚々実々 記者畢生のトイレ考(第1回)(2021/3/29)

安否確認イベントに過去最多65%参加 三菱地所レジ・コミュニティ 津田沼「奏の杜」(2021/3/14)

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カテゴリ: 2022年度

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「裏参道公衆トイレ」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団、クレジットなしは記者撮影)

 前回、全17か所の日本財団の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトのうち、田村奈穂氏の「東三丁目公衆トイレ」と、小林純子氏「笹塚緑道公衆トイレ」は立地条件にハンディがあると書いたが、もう一つあった。マーク・ニューソン氏の「裏参道公衆トイレ」だ。

 場所は、JR代々木駅からと徒歩11分、首都高速4号線の高架下。広さは10坪あるかどうかだ。「裏参道」の名前の通り人通りも少ない傾斜地で、誰が利用するのだろうと考え込んでしまった。

 しかし、その傾斜地を利用した石積みの擁壁、銅製の四角い屋根に郷愁を誘われ、いとおしくなった。

 同財団の資料によると、ニューソン氏はオーストラリアのシドニーで生まれ、1986年にシドニー大学を卒業。同世代で最も影響力のあるデザイナーのひとりと評されており、クライアントにはLouis Vuitton、Montblanc、Hermès、Nike、Dom Pérignon、Jaeger-LeCoultre、Ferrariなどとある。

コメント 私にとって、このトイレは内からも外からも信頼でき、誠実さが感じられるデザインであることが重要です。明るい内装は、私の好きな色であるグリーンの単色でシームレスかつ衛生的に仕上げられています。このトイレのデザインでは機能性、シンプルさ、そして心地よく永続的な空間であることに重点を置いています。渋谷にたくさん存在する隠れた名所のように、このトイレが魅力的でとても便利な存在になることを願っています。

コンセプト 私のデザインは、銅製の「蓑甲(みのこ)屋根」をはじめとする日本の伝統的な建築の引用が中心となっています。トイレが賑やかで超近代的な場所にあっても、神社仏閣や茶室、農村部などによく見られるこの屋根の形が、潜在的に心地よさや安らぎを感じさせるものにしたいと思いました。銅のピラミッド型屋根の緑青は、時とともにこの建築物を街に溶け込ませ、東京を織りなす構造の一部となることでしょう。

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「裏参道公衆トイレ」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団)

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千代田区都市計画審議会(千代田区庁舎で)

 東京都千代田区は3月30日、都市計画審議会を開催し、二番町地区地区計画の変更について審議し、予定の2時間を30分以上オーバーしても意見はまとまらず、岸井隆幸・審議会会長(計量計画研究所代表理事)の「採決を取るか取らないかを採決しましょう」という発意によって採決した結果、議決に加わらない岸井氏を除く出席16名(定員20名、欠席1名、行政機関の麹町警察署長、麹町消防署長は棄権)のうち「採決すべき」6名、「採決すべきでない」10名となり、結論は先送りとなった。

 この結果、都市計画法第19条が定める「市町村は、市町村都市計画審議会(略)の議を経て、都市計画を決定するものとする」ことは持ち越しとなった。今後のスケジュールは未定。

◇      ◆     ◇

 こういうのを大岡裁きというのか。都計審の終了予定時間より30分以上経過したあたりだった。「徹底して論議すべき」「採決していただきたい」という声を受け、(それまでほとんど意見を言わなかったはずの)岸井氏は「採決すべきか、すべきでないかを採決してはどうでしょうか」という旨の声を発した。

 この意図を各委員は理解したのかそうでないのか(小生は高校のとき、このような採決の仕方を経験しているが)、しばし沈黙のあと、岸井氏の提案を受け入れ採決となった。

 結果は上段に書いた通りだ。誰が採決に賛成したか反対したか、その数は問題ではない。都計審の審議が民主的に行われているかどうかが問われている。その意味で、区の都計審はきちんと機能していると思った。(前回の都計審では「公聴会など開く意味がない」と民主主義を否定した委員もいたので心配していたのだが)

◇      ◆     ◇

 区は審議の冒頭、区の地区計画変更案の実現手法・提案の妥当性について29ページにわたる資料を提出し、約20分にわたって説明した。総合設計制度を適用した場合の容積率約540%と、区の計画案である容積率約700%を採用した場合、どれほどの差異(主に経済的効果)があるかを示したものだった。

 例えば、広場の整備。現状2,000㎡の広場を総合設計の場合は900㎡、計画案では2,500㎡とし、現状、総合設計制度ともゼロの緑地を計画案通り整備すれば約150㎡確保できるとして運用基準に基づく評価容積として約95%の効果があるとしている。このほか、同様の手法を用いて駅前プラザは約34%、地域交通広場は約27%、歩道上空地は約64%、地下鉄通路拡幅は約695…などだ。トータルで約778%の効果があるとしている。

 記者は一通り読んで、これは却って墓穴を掘るのではないかと思った。資料は、日テレの提案をそのまま区の提案として発表したに過ぎず、その妥当性について科学的な検証を経ていないと判断したからだ。ある委員も「日テレの案をA案、区の案をB案とすれば、両方とも同じ。裁判になったら支えきれない」と語った。

 容積率を総合設計の容積率540%から計画案の700%(約30%)にしたら、建設コストもその分かかるが、建物の経済的価値が高まることなど素人でも分かる。その価値を積み上げたら総合設計よりはるかに価値が高まるのは当然だ。

 問題なのは比較した総合設計(案)は、わざわざ( )付きにしているように、地域交通広場、駅前プラザ、緑地、地下通路の整備などを考慮していないことだ。総合設計制度を用いてこれらを整備することは不可能なのか示すべきだ。

 まだある。区はエリアマネジメント拠点施設の評価を1%としているが、どうして約250㎡(坪1,000万円として約7.6億円)もある施設の効果は1%なのか。エリアマネジメント関係者が知ったら激怒するはずだ。 

 そして、決定的に問題なのは、地区計画変更案によって建物の高さが「-30m高くなる」と赤字で示しながら、「圧迫感の低減等景観配慮」として「具体的設計を進める中で高さ抑制、デザイン的配慮」と記載しているのみだ。これは意味不明。そのマイナスの価値を測っていないのはなぜか。経済的価値と社会的価値を両立させようという視点が欠落している。

 地区計画変更に反対している区民のその最大の理由は高さ規制緩和だ。60mを90mにしても問題がないことを区は示すべきだ。(小生が区の担当者ならスカイツリー、東京タワー、富士山、牛久大仏、ゴジラ、ウルトラマン…を引き合いにして反対者を黙らせる…これらは「故郷」と一緒。遠くから眺めるから美しいのだが…)

 また、委員の中には、景観か(反対派)V.S.バリアフリーか(賛成派)の二項対立の構図を描こうとしているが、そうではない。双方とも大切なことだ。今回の問題は、区は上位計画である都市マスタープランを無視し、みんなで決めた地区計画の構成員であり、その代表者でもある日テレが札束で頬を張るような挙に出たことにある。区の公平性、企業市民の倫理が問われているのである。 

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傍聴席

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全国初 町会の民主的運営を問う裁判提起 二番町(日テレ通り)再開発の是非(2023/3/16)

異常事態に発展 二番町と外神田再開発、街路樹伐採 反対する区民ら共同声明(2023/3/14)

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「地区計画変更には大きな疑義」東洋大・大澤准教授 日テレ本社跡地再開発(2023/2/23)

「約束を反故。許せない」住民怒る 健全木のイチョウ 新たに4本伐採 千代田区(2023/2/7)

 


 

 

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