目の前は海 賃貸ラボ&オフィス最大規模 三井不「リンクラボ新木場2」竣工
「三井リンクラボ新木場2」
三井不動産は5月18日、「都心近接型」賃貸ラボ&オフィス事業施設「三井リンクラボ新木場2」が竣工したのに伴うメディア向け内覧会を行い、同時に「(仮称)三井リンクラボ新木場3」の開発を決定し、オフィス需要に応える拠点「ライフサイエンスハブ新木場」を駅前ビルに開設したと発表した。
「新木場2」は、2021年に開設した「新木場1」に次ぐエリア2施設目で、延床面積はラボ&オフィス最大規模の約18,232㎡。様々な実験が可能なウェットラボ仕様としており、天井高は3000ミリ。初期費用を抑えて直ぐに入居できる70~100㎡を中心に、最大約4,000㎡まで対応する。高価な実験機器を共同利用できる共通機器室のほか研究用品、試薬などを購入できる無人コンビニ付きの「LINK-Stock」、ラウンジ、カフェ、会議室、外構・屋上テラスを備える。宿泊機能はないが、24時間利用も可能だ。
物件は、東京メトロ有楽町線・東京臨海高速鉄道りんかい線・JR京葉線新木場駅から徒歩7、江東区新木場1丁目に位置する敷地面積約9,002㎡、延床面積約18,232㎡、総貸付面積約14,588㎡。デザイン監修はQuality Innovation United Ltd.、基本計画は日建設計、設計・監理・施工は竹中工務店。竣工は2023年4月28日。
開発を決定した「(仮称)三井リンクラボ新木場3」は、新木場駅から徒歩6分、江東区新木場二丁目に位置する敷地面積約6,931㎡。2023年夏に着工し、2024年秋に竣工する予定。
また、新木場駅近くの新木場センタービル7階に25㎡から対応可能なコンパクトオフィス・会議室「ライフサイエンスハブ新木場」を開設。「新木場3」と合わせエリア4施設体制となる。
三井のラボ&オフィスは、一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)との協働や、入居企業を支援する三井のラボ&オフィスの新サービス「三井リンクラボ オープンイノベーション支援プログラム」などを推進することで、「コミュニティ」の構築、「場」の整備、「資金」の提供によりライフサイエンス領域のエコシステムの構築を加速させようという事業。
「都心近接型」と「シーズ近接型」の2つのコンセプトで展開しており、「都心近接型」は都心に集積する大学や医療機関などライフサイエンス領域のキープレイヤーとの共同研究、シーズの事業化、異業種企業とのコラボレーションを通じて、オープンイノベーションの創出を図るとともに、職住近接を可能にすることで、ワーカーの研究環境を整えているのが特徴。今回の施設は2020年竣工の「葛西」、2021年竣工の「新木場1」に続いて3施設目。2024年夏には大阪市の「中之島」、秋には「新木場3」が竣工する予定。
一方の「シーズ近接型」は、アカデミアや研究施設・先端医療施設などに近接するもので、2021年11月に第1弾「柏の葉1」が竣工している。今後も順次開設する予定。
「三井リンクラボ新木場2」(海側から)
目の前は海
共通機器室
◇ ◆ ◇
面積約151ha。皇居をはるかに上回る広大な広さでありながら、平成11年11月にそれまでの用途地域・工業専用地域を準工業地域に改め、なおかつ地区計画で「木材関連をはじめとする多様な生産・流通機能と商業・業務機能などが共存できる複合地区の形成を図る」目的以外の住宅や風俗系建築物、廃棄物処理場の建築を不可とした。駅周辺にはホテルや飲食店はあるが、遊興施設はなく、コンビニすらもほとんどない。それが「新木場」だ。
そんなエリアに、ライフサイエンス施設を設ける三井不動産の発想力の凄さに舌を巻くほかない。内覧会では、入居テナントの一つ、未来医療子どもボランティアネットワーク「キッズウェル・バイオ(ChiVoNet)」が紹介されたのだが、研究テーマは「再生医療」というからこれまた凄い。尻尾を斬られてもまた生えてくるトカゲなどの「再生する力」は人間にもあり、それを「再生医療」に生かそうと、乳歯の提供を受けて培養増殖を行っているとのことだった。
施設担当者は入居を決断した決め手について「第一は都心に近い立地。当社の本社は茅場町だが、ここは20分の距離圏。もう一つは人材の確保。共通の機器を安価で借りることができる」などと話した。
都心の喧騒から逃れ、様々な誘惑にも惑わされることなく、時には目の前の海を眺め仕事に打ち込める環境は、研究者にとって最高なのだろう。購入すればマンション1戸分もする機器が共通機器室にはいくつも備えられていた。
真逆の世界に生きる小生などは理解できないのだが…。
「(仮称)三井リンクラボ新木場3」
様々な目線でかつてない試み実現 東大・藤田誠卓越教授 「三井リンクラボ柏の葉1」(2022/6/22)
第6のアセットクラス「三井のラボ&オフィス」 住宅不可の新木場に開業(2021/7/8)
住宅不可の151ha〝処女地〟新木場にライフサイエンス拠点 三井不の新事業(2019/6/1)
「新たな飛躍へ向かってスタート」不動産協会・吉田淳一新理事長 60周年祝賀会
吉田氏(ザ・オークラ東京で)
不動産協会は5月17日、定時総会後に「設立60周年祝賀会」を開催し、冒頭、新しい理事長に就任した吉田淳一氏(三菱地所会長)が次のように挨拶した。同協会のこの種のリアルでのイベントは4年ぶりで、約450名が参加した。
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本日(17日)、不動産協会理事長に就任しました三菱地所の吉田でございます。
不動産協会設立60周年祝賀会の開会にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
本日は、公務ご多忙中にもかかわらず、斉藤鉄夫国土交通大臣をはじめ関係省庁の幹部の皆様、また日頃からご支援、ご協力をいただいております友好団体や報道関係の皆様、多数のご出席をいただき、まことにありがとうございます。
不動産協会は、この度設立60周年を迎えることができ、関係する皆様方のご支援に感謝申し上げます。不動産協会は、昭和38年3月に社団法人として発足しました。当時のわが国は、高度経済成長がスタートし、人口や産業の都市への集中に伴い、都市が大きく拡大し、不動産開発が活発になった時代でした。会員会社が行う事業の環境整備に資する活動をより効果的に展開するために、それまで任意団体として活動してきた不動産協会を社団法人化し、不動産事業に係る法制度や税制についての調査・研究や政策提言等の取組みを本格化させました。
その後、昭和50年代の安定成長期を経て、昭和の終わりから平成にかけてのバブル期とその崩壊により、右肩上がりの時代は終焉しました。平成に入ってからは「失われた20年」といわれる経済の低迷期を経て、アベノミクスによる経済回復がなされました。次には、コロナ禍により経済が落ち込みましたが、今はコロナとの共存により経済活動が正常化し、新たな飛躍に向けてのスタートを迎えています。そうした中で、不動産業は時代のニーズに応じ、魅力的なまちづくりや良質な住宅の供給により、都市再生の推進や優れた住環境の創出などを通じて、日本経済の発展に寄与してきました。
ロシアによるウクライナ侵攻は、いまだ終結の兆しがなく長期化しており、エネルギーや原材料をはじめ、インフレの進行に拍車がかかっています。金利の見通し、海外経済の下振れ懸念など、経済の先行きについては不透明な状況にあります。こうした中で、わが国の経済を力強い成長に導くためには、住宅・都市分野における事業推進を強力に図っていくことが不可欠です。
国際的な脱炭素化の動きが加速し、わが国でも2050年カーボンニュートラルの実現に向けたGXを促進する様々な施策が進められており、まちづくりにおいても炭素中立型の経済社会の実現に向けた取組みをしっかりと行うことが求められています。
環境政策においては、経済合理性・社会課題解決の同時実現が不可欠であり、GX推進に向けた加速を後押しする環境整備に取り組むことが大切です。
都市政策については、国際競争力強化を牽引する新たな都市再生を推進し、都市と地方のリンケージや好循環を生み出すために、質の高い都市緑地創出の推進、面的エネルギーネットワークの支援促進等が求められます。
ダイバーシティ・インクルージョンなまちづくりを推進するために、ウォーカブルな空間形成を図り、多様な空間の一体的な利活用、DX等の活用による持続可能なエリアマネジメントの着実な進展、少子化・子育てへの対応等に向けた諸課題への取組みが必要です。
住宅政策については、安心安全でサステナブルな暮らしの実現に向け、良質な住宅ストックの形成・循環のために、ZEHなど環境性能の高い住宅の供給支援が重要です。
併せて、区分所有法改正による合意形成の円滑化など、老朽化したマンションの建替えの促進、適正な管理の実現を図る取組みの促進も求められます。
また、防災性能の向上に向けた対応を行うほか、子育て世帯などへの支援措置の充実を図るとともに、在宅勤務等の新しい働き方への対応に関する支援が必要です。
不動産協会としては、これを機にさらなる活動の充実を目指し、わが国の経済・社会の発展に向けて貢献できるよう、全力を尽くしてまいります。
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総会では、前理事長の菰田正信氏(三井不動産会長)は会長に、新たな副理事長に松尾大作氏(野村不動産社長)が、副理事長の沓掛英二氏(野村不動産取締役)が顧問にそれぞれ就任した。
新たなスタートへカンパーイ!
大手不動産流通5社の実績 売上高は東急 件数・取扱高は三井 単価は三菱、野村の順
大手デベロッパーの2023年3月期の決算が出そろったので、各社の不動産流通事業の売上高、営業利益、取扱件数、取扱高、単価を別表にまとめてみた。各社が公表している数字をそのまま集計したもので間違っていないと思うが、なにしろ記者は不動産仲介事業をほとんど取材したことがない。間違っていたら謝るほかないことを最初に断っておく。
まず、売上高。トップは東急リバブルで1,642億円。前期より11.9%伸ばした。以下、三井不動産リアルティ、住友不動産販売の順。営業利益も東急リバブルがトップで、前期より29.1%増の337億円。ただ、東急リバブルは自社開発マンションも手掛けているので、単純に売上高=手数料収入ではないはずだ。
取扱件数トップは39,106件の三井不動産リアルティ。前期より5.0%減らしたが、これで37年間トップの座を占めたことになるのか。2位は住友不動産販売で、前期の38,114件から8.5%減の34,906件。もし前期より3%増やしていたら、首位に躍り出たのに…。3位は29,577件の東急リバブル。前期より2.9%増やした。4位の野村不動産ソリューションズは9,985件。上位3社にはかなり差を付けられている。三菱地所グループの仲介会社は三菱地所ハウスネットもあるが、データは三菱地所リアルエステートサービスのみ。
取扱高は三井不動産リアルティがトップで、前期比1.4%増の19,184億円。2位は東急リバブルで、前期比15.4%増の18,213億円。このままの勢いなら、今期は三井不動産リアルティを抜く可能性がありそうだ。3位の住友不動産販売は13,961億円で、大手5社のなかで唯一前期より減らした。件数では上位3社に大きく引き離されている野村不動産ソリューションズは18.7%増の10,603億円で、住友不動産販売を追っている。
取扱高を取扱件数で割った1件当たりの単価が興味深い。取扱件数や取扱高と全く逆だ。もっとも単価が高いのは三菱地所リアルエステートサービスで、前期より5,233万円伸ばして29,732万円となり、他社を大きく引き離している。2位の野村不動産ソリューションズも前期比1,757万円増の10,619万円。3位は前期比669万円増の東急リバブルで6,158万円。3位は4,906万円の三井不動産リアルティ、4位が4,000万円の住友不動産販売。
どうしてこのような結果になるのか記者はよく分からないのだが、仲介戦略の違いか。三井と住友は全国展開し、東急と野村は大都市圏に絞り、三菱はリテールよりホールセールに力をいれているためか。三井も住友もホールセールに注力すればできないはずはないと思うのだが…。仲介ではなく直接取引を行っているからなのか。
仲介実績については、業界紙が毎年5月末に数十社を対象にしたアンケート調査によるランキングを発表している。どのような結果になるか注目したい。
延床876㎡の木造事務所 工期5か月、建築費坪110万円 ポラス「体感すまいパーク柏」
「体感すまいパーク柏」事務所棟
ポラスグループのポラテックは4月28日、千葉県柏市の「体感すまいパーク柏」内に完成した常磐事業支店の事務所をメディアに公開した。木造軸組み工法2階建て延べ床面積約876㎡で、住宅用の一般流通材と同社のプレカット工場で生産した構造部材のみで建設した、工期5か月、建築費110万円/坪の現し内装仕上げが特徴。
事務所は、東武アーバンパークライン豊四季駅から車で約7分、柏市旭町8丁目に位置する敷地面積約1.544㎡、木造軸組み工法2階建て延べ床面積876.94㎡。1階は商談用ブース7室など、2階は同社グループのアフターメンテナンスなどを手掛ける住宅品質保証の事務所。天井高は基本3m、最大4.5m。木造現し仕上げ。着工は昨年11月、竣工は今年4月。
ポラテック取締役・橋本裕一氏は「『体感すまいパーク柏』は2018年にオープンしたが、敷地が1,000㎡を超えると開発行為となり、許可が下りるまで時間がかかるので、事務所などを除いた4棟でスタートした。今回の事務所は開発行為に基づいて建設したもので、当社プレカット工場生産した構造部材と、一般に住宅用として流通しているものを使用して完成させた。これまではお客さんとの商談スペースが十分とれなかった難点を解消し、2階に新築とアフターを担当する住宅品質保証が入居するので、柏・松戸の事業エリアをフォローする拠点となる。他のエリアでも同様の事業を展開していく」と語った。
「体感すまいパーク柏」は2018年10月、「体感すまいパーク船橋」とともに開設。当初は4棟だったが、今年1月には新たなモデルハウス「和美庵(わびあん)」を完成させており全5棟体制となる。
橋本氏
エントランス部分
2階事務所
2階天井
◇ ◆ ◇
内覧会では、橋本氏のほか3名の方が設計、構造、非住宅木造施設などについて説明した。「有限要素法による基礎構造の計算で基礎梁・地中梁を削減した」など専門的なフレーズも飛び出し、素人の記者などはちんぷんかんだったが、現しの快適性は言うまでもなく、同社の木造建築力の凄さを少しは理解した。
第一は、工期の短さと建築費の安さだ。事務所は間口約37m×奥行き約13mだ。単純比較はできないにしろ、同社の30坪(100㎡)の分譲住宅の工期は100日弱というから、その8倍以上もある事務所の工期の短さに驚いた。
S造との単価差は分からないが、国土交通省の令和4年度の建築着工統計によると、事務所の工事予定額は木造が64.2万円/坪、S造が121.9万円/坪だ。いかに単価も安いかが分かる。木造はCO2削減、SDGs対応のほか、快適性、固定資産税、減価償却費などの節税効果も大きい。
二つ目は、2階の床仕上げだ。通常の事務所フロアはタイルやカーペット敷きだが、パナソニックの置敷きタイプOAフロア(フリーアクセスフロア)を採用、突板フローリング仕上げとなっている。施工がらくで着脱、配線、歩行性に優れているという。歩くと、マンションの直床よりは固いが、二重床仕上げより柔らかく感じる。(マンションには採用できないのか)
三つ目は、特注のYKK APのビル用サッシを採用し、敷地北側に走る東武線の線路の音を遮断するため、旭硝子の遮音・遮熱性能が高い額縁ガラスを採用していることだ。2階の事務所内では音はほとんど聞こえなかった。この額縁ガラスはマンションでも見学したことがある。意匠性にも優れている。
パナソニックの置敷きタイプOAフロア(中空部分は配線スペース)
1階の商談ブース(デスクトップはイチョウ、ヒノキ、カバザクラ、タブ、エノキ、スギ、モミノキなどの銘板で、床、壁、天井も本物の木が採用されている)
〝家に帰りたくない〟宿泊体験した社員 ポラス「体感すまいパーク越谷」出足上々(2022/1/8)
〝総合展示場からの脱却〟に拍手喝さい ポラスが宿泊可能な単独展示場 開設(2018/10/5)
16年ぶり分譲住宅が持家上回る 首都圏マンションは15.4%増 令和4年度住宅着工
国土交通省は4月28日、令和4年度の住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は860,828戸で、前年度比 0.6%減となった。利用関係別では持家248,132戸(前年度比11.8%減、昨年の増加から再びの減少)、貸家347,427戸(同5.0%増、2年連続の増加)、分譲住宅259,549戸(同4.5%増、2年連続の増加)。分譲住宅の内訳はマンション113,900戸(同10.8%増、4年ぶりの増加)、一戸建住宅 144,321戸(同 0.1%増、2年連続の増加)。分譲住宅が持家を16年ぶりに上回った。
首都圏の総戸数は302,403戸(同1.8%増)、持家は53,138戸(同13.3%減)、貸家は131,419戸(同3.8%増)、分譲住宅は116,676戸(同8.2%増)。
首都圏マンションは総数が56,337戸(同15.4%増)、都県別は埼玉県5,158戸(同6.9%増)、千葉県6,481戸(同61.1%増)、東京都32,036戸(同9.7%増)、神奈川県12,662戸(同17.7%増)。
このほか、地方のマンションは24,346戸(同5.5%増)となり、平成20年の32,570戸に次ぐ多さとなるとともに、近畿圏の24,657戸(同13.2%増)に肩を並べた。
「Stay in the Garden」具現 木目デザイン壁に感動 三井不 横浜MMにホテル開業
sky pool LA MAGNOLIA内観
三井不動産&三井不動産ホテルマネジメントは4月26日、「三井ガーデンホテル横浜みなとみらいプレミア」を5月16日(火)に開業すると発表。同日、ホテルをメディアに公開した。「三井ガーデンホテルズ」を宿泊特化型から多様な滞在目的を満たす「Stay in the Garden」へリブランディングしてから初の施設で、アール状のデザインを多用し、レストラン&バー、プール、ジェットバス、フィットネスジムなどを備え、多様なニーズに応えられるようにしているのが特徴。内覧会後にはレストランの朝食ビュッフェ試食会も行われた。
施設は、横浜高速鉄道みなとみらい線みなとみらい駅から徒歩5分、JR根岸線桜木町駅から徒歩約10分、横浜市西区みなとみらい3丁目に位置する敷地面積約10,082㎡、延床面積121,726㎡(ホテル部分約17,700㎡)のパナソニックホームズ、鹿島建設、ケネディクスの3社が開発した27階建て「横浜コネクトスクエア」の1~2階、20~27階部分の全364室。客室面積は25.4~46.1㎡(平均30㎡)。設計は鹿島建設。施工は鹿島・フジタ・馬淵・大洋共同企業体。開業は5月16日。
デザインコンセプトを「YOKOHAMA SKY CRUISING」とし、1階エントランスを“深海”に見立て、20階のロビー&ラウンジ、サロン、テラスエリアは“船舶デッキ”として設計。ロビー&ラウンジは天井高4m超、長手方向40m超で、波・帆をイメージした壁面、ピアノ演奏が流れるサロン&テラスを演出。ガーデンホテルとしては初のスカイプールのほかレストラン・バー、フィットネスジムなどを配置している。
客室は平均30㎡で、電子レンジ・洗濯機付き、トリプルベッド付きなど多様なニーズに応えるようにしており、全ての客室に「ReFa(リファ)」の最新ドライヤーを設置している。
20階のレストラン「RISTORANTE E’VOLTA-Unico Polo-(リストランテ エボルタ-ウニコ ポーロ-)」は、“世界を旅するリストランテ”をコンセプトに、唯一無二(UNICO)の食との出会いや粋(VOLTA)な時間を提供する。朝食ビュッフェにはレストランの〝売り〟の一つ「至福のプレミアムフレンチトースト」を用意する。
sky pool LA MAGNOLIA屋外
1階エントランス
20階ロビー
レストラン
朝食イメージ
46㎡のエグゼクティブコーナーキングツイン(1泊6万円くらいか)
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大丈夫かと思ったことが二つある。一つは、みなとみらいエリアにこんなにたくさんホテルができて大丈夫かということだ。いったいいくつのホテルがあるのか、ざっと調べてみた。
記者が最高峰とみている「横浜ロイヤルパークホテル」(603室)を筆頭に「横浜ベイホテル東急」(480室)、「横浜東急REIホテル」(234室)、「ヨコハマグランド インターコンチネンタルホテル」(594室)、「ザ・スクエアホテル横浜みなとみらい」(232室)、「ウェスティンホテル横浜」(373室)、「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」(146室)、「ニューオータニイン横浜プレミアム」(181室)、「横浜桜木町ワシントンホテル」(553室)など、今回のホテルを含めて10か所、客室数は3,760室だ。それぞれコンセプト、ターゲットは異なるのだろうが、客の奪い合いにはならないのか。
もう一つは、レストランの朝食ビュッフェで提供される「至福のプレミアムフレンチトースト」だ。記者はかつて子どもに食べさせるためによく作ったが、ここのレストランのそれはとてもパンとは思えない柔らかさだ。同席した記者の方も「ケーキそのもの」と感嘆の声をあげた。
フレンチトーストを食べる目的の女性が殺到し、朝からこんな甘いものを食べて大丈夫かと余計な心配も頭をよぎった。
フレンチトーストと言えば、昨年、三菱地所の丸ビル1階にオープンしたHUGEのカフェ「THE FRONT ROOM」の〝売り〟の一つである「SHIBUichi BAKERY(シブイチ ベーカリー)」のパンを用いたフレンチトーストもとても柔らかく美味しかった。どちらに軍配が上がるか。
試食会で提供された朝食ブュッフェメニュー(左下がフレンチトースト)
◇ ◆ ◇
フレンチトーストもそうだが、女性客を取り込もうという狙いか。今回見学したホテルの特徴は、海や船などをイメージし、アール形状を多用したデザインと、「Stay in the Garden」を具現化したプール&ジェットバスなど多様な付帯設備を装備していることだ。
記者はエレベーターホール・客室ドア回りの壁の木目調デザイン壁にほれ込んだ。昔の掘っ立て小屋や番屋に用いられた素朴な木の壁(記者は本物の集成材に見えたが、シート張り)の演出は意表をつくもので、この壁が長手方向80m超の廊下に張り巡らされている。素晴らしいと思った。同業の記者の方に同意を求めたが、だれからも無視されたのだが…。
驚いたのは客室の床が直床だったことだ。洗面、トイレ、浴室などは分譲マンションのそれとよく似ているのは最近の傾向だろうと思ったが、ホテルの直床というのもトレンドなのか。
アール形状の家具など
記者が感動したエレベーターホール(壁は本物の木に見えたが、シート張り)
廊下
ルームサイン
総延長80m超の廊下
尾根幹線沿線23か所66haの再生・活性化へプラットフォーム創設 多摩市
「多摩ニュータウン尾根幹線沿道まちづくりプラットフォーム2023」
多摩市は4月25日、「多摩ニュータウン尾根幹線沿道まちづくりプラットフォーム2023」を開催した。八王子・日野市のイノベーションの取り組み、橋本駅のリニア新幹線の開業、宅地開発が進む稲城市に囲まれているポテンシャルの高さを生かし、団地再生・活性化、雇用の創出を生みだそうというのが狙いだ。土地利用変換を予定している対象エリアは約66haにも及ぶ。
冒頭、多摩市都市整備部長・佐藤稔氏は「平成25年に多摩ニュータウン再生の取り組みに着手し、今年1月には『南多摩尾根幹線沿道土地利用方針』を策定した。方針は、現在整備中の尾根幹線の4車線化と公的賃貸住宅の団地再生の動きを契機に、尾根幹線沿道の新たな賑わい、雇用の場を創出するべく、住宅用地から他の用途変更を含めた土地利用変換を図るのが目的。今後の人口減少や歳入確保の面からも市として重要な政策の一つとして考えている。プラットフォームで頂いたご意見・ご提案は現在進めている都市計画マスタープランの改定に参考にさせていただく」と挨拶した。
プラットフォーム創設は、令和5年1月に策定した「南多摩尾根幹線沿道土地利用方針」に基づき、多摩NTを東西に横断し、町田街道に接続する延長約16.5㎞の暫定2車線の南多摩尾根幹線道路が令和11年度に全線4車線となるのを契機に、土地利用変換を行い、多摩NTの再生・活性化を図ろうというのが目的。
土地利用転換を検討する対象エリアは都営諏訪団地(2.8ha)、UR永山団地(3.9ha)、都営貝取団地(1.3ha)、UR豊ヶ丘団地(4.1ha)、都営落合団地)2.12ha)、公社落合団地(3.4ha)の賃貸住宅のほか都立永山高校(4.6ha)、諏訪小学校(2.4ha)、旧南永山小学校(2.6ha)、旧南豊ヶ丘小学校(2.8ha)、鶴牧中学校(3.4ha)の教育機関と多摩東公園(7.1ha)、諏訪南公園(2.7ha)、一本杉公園(10.1ha)の公園など23か所約66.53ha。これらを「諏訪・永山沿道エリア」「貝取・豊ヶ丘・南野沿道エリア」「落合沿道エリア」「唐木田・鶴牧沿道エリア」の4つのエリアに分けている。
事務局は市に置き、沿道の土地・建物所有者である東京都、UR都市機構、JKK東京からの支援を受け、コーディネートの役割を果たす多摩市ニュータウン再生推進会議と大学、事業者(登録が必要)、地域団体などが参加し、プラットフォームに寄せられた意見・提案を論議する。意見は令和6年度に予定している「多摩市都市計画マスタープラン」改定の参考にする。
今年度は先行モデルとして「諏訪・永山沿道エリア」を選定し、先行モデルのうち「旧南永山小学校」(2.6ha)「UR永山団地」(3.9ha)「都営諏訪団地」(2.8ha)を対象とした令和4年度の1000社民間事業者アンケート結果を報告。回答は56票あり、商業施設(27票)、物流産業施設・運輸施設(15票)、スポーツ施設(14票)、キャンプ場・グランピング施設(9票)、情報通信産業施設(9票)、大学・教育施設(7票)、製造・工場(6票)、研究施設(5票)、病院・医療施設(4票)などが施設立地ポテンシャルとして高い評価を受けたと説明した。
土地活用に当たり興味のある街づくりテーマとしては、「新たな雇用の創出」「職住近接」「安心安全の防災拠点」などの地域貢献への関心が高く、不動産業・小売業、スポーツ・レジャーを中心とした多様なテーマへの関心があるとしている。
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遅きに失した感は免れないが、「雇用の創出」「ニュータウンの再生」が実現するのであれば、市民の記者もそうだが、だれも反対する人はいないはずだ。事業者アンケート結果は、多様な用途利用が可能で、ニュータウンのポテンシャルの高さを証明している。
実現には課題がないわけではない。前段で紹介した土地利用変換を予定しているエリアの尾根幹線道路北側(駅側)の用途地域はほとんどが建ぺい率60%、容積率200%の第1・2種住居地域、準住居地域などだ。〝なんでも可〟の商業系地域はひとつもなく、唐木田駅に近い一部の地域が準工業地域になっているのみだ。
他の用途の利用を可能にするには用途地域・地区計画を変更し、建ぺい率、容積率の緩和も必要になる。その際、課題となるのは近隣住民などの同意を得られるかどうかだ。
とくに都市公園の廃止・変更については、都市公園法の高いハードルがある。同法16条では「公園管理者は…みだりに都市公園の区域の全部又は一部について都市公園を廃止してはならない」とし、例外的に認めているのは①都市公園の区域内において都市計画法の規定により公園及び緑地以外の施設に係る都市計画事業が施行される場合その他公益上特別の必要がある場合②廃止される都市公園に代わるべき都市公園が設置される場合などとしている。
この条文に照らし合わせれば、一本杉公園などを他の用途に転換するのは容易ではない。ただ、市は多摩中央公園内に公設・公営の図書館を建設し、近くオープンするように、公園機能を残しながら民設・民営の施設を設けるのは可能のはずで、市内の他の公園にもこれは適用できるのではないか。
また、物流施設に対しては「嫌悪施設」のイメージが強く、近隣住民の反発も予想される。これについては、三井不動産常務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏(当時、現在専務)が「物流施設はもはや嫌悪施設ではない」と語ったように、丁寧に説明すれば市民の理解は得られるはずだ。
これは課題ではないが、市の担当者が現状認識について「多摩ニュータウンは現在も発展している」と語ったのには、異議を唱えざるを得ない。
何をもって「発展」と捉えるかだが、多摩市エリアに限ると多摩NTの人口は減少に転じているではないか。高齢化率も3割を超え、今後加速度的に進行する。
かつて「金妻」の撮影舞台になった多摩NTは、バブル崩壊で暗転した。多摩そごうが2010年に撤退し、その後、三越が規模を縮小し入居したが、その三越も撤退した。温泉・宿泊も可能だった「ウェルサンピア多摩」も2010年に閉鎖された。京王プラザホテル多摩も今年1月、33年の歴史に幕を閉じ、恵泉女学園大学も2024年度以降の新規学生募集を終了すると発表した。多摩NTの地盤沈下は否めない。多摩NT居住者の誰一人として「街は発展している」などと思っていないはずだ。
市場の評価も同様だ。都心へのアクセスはほとんど同じの、〝健幸都市〟をスローガンに掲げる多摩市と〝母になるなら・父になるなら流山〟の流山市の地価公示を見てみよう。
民間のデータによると、「多摩センター駅」圏の平均地価公示は平成元年の236万円/坪をピークに下落・横ばいを続けており、令和5年度はピーク時の3分の1の82万円/坪まで下落している(小生のマンションも同様)。一方の「流山おおたかの森駅」圏はどうか。この10年間上昇を続けており、令和5年度は110万円/坪となり、これまでピークだった平成3年の106万円/坪を上回った。多摩センターより4割以上高い。(つくはEXの開業は平成17年だが)
信じられない現象だ。井崎市長と流山市民の方には失礼だが、緑の絶対量、歩車分離の街、生活利便施設の充実度などを総合的に評価すると、多摩センターのポテンシャルは流山おおたかの森よりはるかに高いと思う。見比べていただきたい。
なぜ、逆転現象が起きたか。その一つの理由として、多摩市は市の魅力を伝える情報発信力が弱いからだと考えている。令和3年度の多摩市政世論調査では、住まい環境について「緑の豊かさ」(70.9%)「空気がきれい」(47.1%)「日当たり・風通し」(57.5%)などが極めて高い数値を示している。これを徹底してアピールすべきだ。
〝健幸都市〟も結構だと思う。市民の評価も高く、前述の世論調査では67.6%の人が「よい取り組み」と答えている。また、不幸1~幸福10の10段階で1つを選ばせる設問では、1と2を選んだ人は2.9%、9と10を選んだ人は26.2%だ。一方で、議会(議員)に「期待していない」人は24.0%にも達している(記者は選挙に行っていない)。
これらの結果から判断すると、わが多摩市民は〝幸福〟で〝而立〟している人が多く、楽観的に物事を考える人が多いことが分かるのだが、小生などは〝健幸都市〟のスローガンを目にするたびに「健康でない、幸せでない」自分と社会のことを自覚させられる。他国を侵略し、人と人が殺しあい、軍事力の強さでもって国力を競い合い、小生のように選挙に行かない人が増え、議員に期待しない人が4人に1人の割合もあるというのに、どこが幸せなのか。そもそも何が幸か不幸かの前提条件を示さない設問は意味がないではないか。個人的なことだが、〝あなたを受動喫煙から守ります〟とし、駅周辺での喫煙をほとんど禁止したのにも小生は我慢がならない。われわれ喫煙者を駆逐するのか(市のアンケートによると喫煙者は7.7%とか。結構なことだ)。港区は公園や舗道に喫煙所をたくさん設け、分煙を推進している。
流山市はどうか。子育て世代向けに極めて明確なメッセージを発信している。一定規模以上のマンションには保育施設の併設を義務付けるなどの施策も行っている。多摩市と流山市の差は、前向きか後ろ向きかにあるような気がする。多摩市も若年層を呼び込みたいなら、分かりやすい施策を打ち出すべきだ。
明星大学・西浦定継教授は10年も昔に、「何もしなければ多摩ニュータウンの人口は50年後(2060年)の人口は半減する。座して死を待つしかない」と警告を発した。市は危機感を持って多摩NTの再生・活性化に取り組んでいたら、もっと違った結果になったのではないか。
まあしかし、佐藤氏は「多摩市は変わったといわれるようにしたい」と語った。あと何年かかるのか、小生はそれまで生きていられるのか…。
ショック!ホテルに続き恵泉女学園大学も閉学へ 地盤沈下する多摩センター(2023/3/23)
〝生きた実験場〟〝やるしかない〟 多摩NT再生 第6回シンポ 藤村氏もエール(2019/2/8)
「最早、後発でない」「嫌悪施設でもない」 三井不 ロジスティクス本部長・三木氏(2018/5/21)
「リニア、圏央道は広域連携を進める絶好の機会」明星大・西浦教授(2013/10/23)
「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」西浦・明星大教授(2014/1/29)
問い合わせ98件⇒470件へ4.7倍増 東南アジア不動産への投資加速 リスト
リストグループのリストインターナショナルリアルティ(LIR)は4月24日、同社が販売している東南アジア不動産に関する2023年3月期の問い合わせ件数は前年度の98件から4.7倍の470件に達したと発表した。
問い合わせがもっとも多い国はフィリピン、次いでタイで、目的は投資が9割以上を占めている。
投資家が東南アジア不動産へ関心を持った理由として、①都心の不動産と比較するとより高い利回りが期待できる②価格が高止まりしている日本国内の不動産より、キャピタルゲインを大きく狙える可能性がある③今後値上がりする前に購入しておきたい④コロナ禍のピークが過ぎ海外渡航がしやすくなった⑤日本国内に対する経済不安など。
同社ウェルス事業部アジアチーム執行役員・船津修一氏は次のようにコメントしている。
「日本国内のお客様の東南アジア不動産に対する関心は高いと感じており、日本の不動産をいくつか保有している方がポートフォリオの見直し時に新たに東南アジアの不動産を選択されています。特にフィリピンは出生率や生産人口も増え今後の経済の急成長が見込まれることから投資対象として選ばれています。購入者は主に日本国内の会社経営者が多く、キャッシュでご購入される場合が多い。
現在も円安の状況が続いていますが、それ以上に東南アジアの成長に期待される方が多く、円安による負の影響を感じることはあまりありませんでした」
成約事例として、タイの「フォーシーズンズ プライベートレジデンス バンコク チャオプラヤリバー」(376.46㎡)の販売価格THB189,150,000(JPY737,685,000)、フィリピンの「グランドハイアット マニラ レジデンス サウスタワー」(120.50㎡)の販売価格PHP48,160,592(JPY115,585,420)、フィリピンの「オウレリア レジデンス」(292.78㎡)、販売価格PHP139,634,925(JPY335,123,820)をあげている。レートはPHP=2.4円、THB=3.9円。
「フォーシーズンズ プライベートレジデンス バンコク チャオプラヤリバー」
「グランドハイアット マニラ レジデンス サウスタワー」
「オウレリア レジデンス」
◇ ◆ ◇
伸び率は凄いが、記者は驚かない。お金に国境も人格もない。投資効率の高いところへ流れるのは当たり前だ。
国税庁の令和3年度のデータによると、総所得が5,000万円以上の納税者は90,074人(前年度比16.4%増)で、このうち1億円以上の人は27,395人(同21.3%増)だ。
データが異なるので単純比較はできないが、東京都港区の課税標準額1億円超の納税者は令和4年5月現在、1,250人(前年比23.9%増)となっている。わが国の億万長者の約5%が港区に住んでいるということだ。これまた凄い数字だ。
東京ドーム15個分 大和ハウス 同社最大の物流タウン「DPL流山プロジェクト」完成
DPL流山プロジェクト(左から「DPL流山Ⅰ」「DPL流山Ⅱ」「DPL流山Ⅲ」「DPL流山Ⅳ」)
大和ハウス工業は4月24日、千葉県流山市で開発を進めてきた全4棟のマルチテナント型物流施設からなる同社最大の物流タウン「DPL流山プロジェクト」(総敷地面積316,716㎡、総延床面積737,346㎡)の4棟目の「DPL流山Ⅱ」が4月28日に竣工し、全体が完成すると発表した。2016年7月に第1号の「DPL流山Ⅰ」を着工してから工期は約7年となる。
同プロジェクトは、都心から25km圏内、常磐自動車道「流山インターチェンジ」から約2.5km、首都高速6号三郷線・常磐自動車道「三郷インターチェンジ」から約6.6kmに位置。「DPL流山Ⅰ」「DPL流山Ⅱ」「DPL流山Ⅲ」「DPL流山Ⅳ」の計4棟のマルチテナント型物流施設から構成。総敷地面積316,716㎡、総延床面積737,346㎡。延床面積は東京ドーム15個分に相当し、同社最大規模となる。
物流施設内に従業員の働き方改革の支援として、テナント企業の従業員専用の保育施設、ドライバーステーション、カフェテリアなどを完備しているほか、免震システム、非常用発電機、防災備蓄倉庫、マンホールトイレなどを設置するなどBCPにも対応。あわせて、全棟に太陽光発電システムを搭載(発電出力:約10MW)し、随所に「サクラ並木ゾーン」や「ツツジ・メタセコイア並木ゾーン」などを設け環境にも配慮している。
災害時対策として、「DPL流山Ⅰ」では同社と流山市は協定を結び、約500名分の防災用品を備蓄するほか、災害時に施設内のカフェテリアなどを一時避難場所として提供し、最大1,200名の受け入れを可能としている。また、「DPL流山Ⅳ」では地域の子ども食堂と連携し、近隣に住む小学生を対象としたイベントを開催するなど、地域共生活動をおこなう。
「DPL流山Ⅱ」は、地上4階建て、敷地面積約60,662㎡、延床面積約140,453㎡。構造・規模はプレキャスト・プレストレストコンクリート造一部鉄骨造・免震構造、地上4階建て。施工は西松建設。全区画が賃貸借契約締結済み。
樹木医の果たす役割は何か (一財)日本緑化センターの回答
「健全木」が「枯損木」として伐採された千代田区神田警察通りのイチョウ
わが敬愛してやまない樹木医が街路樹を「健全木」と診断したにもかかわらず、東京都千代田区は「枯損木」として議会に報告し、伐採することを決めた。それは、生き物である街路樹を道路の附属物としてモノ扱いする無神経な行為であり、樹木医の尊厳を貶めるものだ。なぜそのようなことがまかり通るのか、ずっと疑問に思っており、澱のように心の奥深くに沈殿している。
その疑問を解くべく、樹木医制度を管轄する(一財)日本緑化センターに問い合わせたところ、同センター事務局から回答があった。質問と回答を以下に紹介する。
◇ ◆ ◇
【問1】自治体の財産である街路樹などの樹木を診断するのは、どのような法律的根拠があるのか。処分する場合は、必ず診断を受けなければならないのか
【回答】法的根拠はございません。自治体において、街路樹や公園樹木を伐採する際に「専門家による診断を実施し、その結果を見て判断する」というルールを定め、それに基づいて行っているかどうかということです。とはいえ近年は、樹木を自治体の判断のみで伐採を計画すると、地域住民から要望や苦情等を受けるケースが多いため、特に重要な樹木の場合は、専門家(樹木医)の判断を仰ぐケースが多いようです。
【問2】診断費用はいくらくらいか。目安をお聞きしたいと思います
【回答】樹木医報酬につきましては、「独占禁止法」に抵触するため一律に定められておらず、一概にはお答えできません。聞き取りや現場の実態を見ますと、国土交通省の定める設計業務委託等技術者単価(設計単価)を参考にしている方もいるようです。しかしながら、この金額も業務発注の方法(随意契約、一般競争入札)により、必ずしも一律ではありません。
また、当然のことですが、診断のメニューによっても大きく変動します。目視による診断だけなのか、樹木周辺の土壌条件も調べるのか、あるいは樹体内部の状況を特殊な機器で測定するのかなどにより、1本当たりの単価は大きく変動します。
【問3】樹木医が故意で誤った診断を行った場合、どうなるか
【回答】これは、当然あってはならないことです。例えば、発注者の意向を受けて、故意に実態と異なる診断書を作成したという明白な事実があれば、認定団体である当センターとしても免許剥奪等の措置を検討することとなります。
これまで当センターの実施する樹木医研修では、科学的試験と分析・評価に基づき、その結果を正しく施主へ伝えることが真の技術者であり、自らの意思に反した判定、判断を行うべきでないことを強く指導しています。
なお、これまでのところ、幸いにしてそのような事例の報告は受けておりません。
【問4】樹木医が「健全」と診断した樹木を、自治体が「枯損木」として処分した場合(その逆に「枯損木」として診断された樹木を自治体が対応しなかった場合)、樹木医は異議を唱えることはできるのかどうか
【回答】基本的に、樹木医が診断業務を受け、その後の結果(自治体の対応)までを継続して確認するケースはほとんどないのが実態ではないかと思われます。理由としては、樹木医の診断結果はあくまでも当該樹木について権限を有する自治体側が判断するための参考資料であり、そこに法的強制力はないからです。つまり、診断結果をみて、その後どのような対応をするかは、あくまでも自治体の判断に委ねられます。
以上のことから、樹木医が診断後に自治体の対応を確認し、異議を申し立てるといったケースはほとんどないか、極めて稀だと思われます。
【問4-イ】異議を唱えるとすればどのような手段を取られるのか
【回答】診断を発注した部署あるいは担当者に対し、「なぜそのような対応をしたのか」、「診断結果とは違う対応となっていないか」、その説明を求めることは可能であると思います。
【問4-ロ】異議が唱えられないとすれば、診断制度は有名無実化されると考えるがいかがか
【回答】多くの自治体が樹木医の診断結果に基づき適切な判断を行っていることは、全国の新聞やニュースで樹木医の活動が盛んに取り上げられていることからも確かであり、樹木の専門家が各地で樹木の診断を行うことで、適切かつ安全に維持されている樹木や街路樹は格段に増えていると考えています。
一方で、樹木医の質や技術者としての倫理を高めていくことは、今後とも引き続き認定団体として十分に力を入れていく考えです。
【問5】当初は、樹木医を国家資格にしようという考えがあったとお聞きしていますが、どうしてそうならなかったのか。今後、国家資格に格上げしようという動きはないのか
【回答】当センターとして、資格に国家資格も民間資格も差はないと考えております。樹木医制度の創設は1991年、全国各地にある巨樹・名木・古木林等の樹勢回復・保全に関する人材の育成と技術の開発・普及を図り、ふるさとや自然を愛する機運を高め、緑化の推進に資することを目的として、林野庁の補助事業である「ふるさとの樹保全対策事業」として、当初より民間資格として発足したものです。
従って、資格制度の発足当初から樹木医は国家資格ではありませんが、国(林野庁)の全面的なバックアップを受けて創設された資格であること、受験資格や合格基準が厳しく定められていること、関係各所からの評価や知名度及び信用度の高さなどから、国家資格への格上げは考えておりません。
◇ ◆ ◇
皆さんは樹木医をご存じか。(一財)日本緑化センターが平成3年度から実施している「樹木の調査・研究、診断・治療、公園緑地の計画・設計・設計監理などを通して、樹木の保護・育成・管理や、落枝や倒木等による人的・物損被害の抑制、後継樹の育成、樹木に関する知識の普及・指導などを行う専門家」(同センターホームページ)のことだ。令和4年12月現在、認定者総数は3,173名で、単純計算すれば毎年100人強が認定されていることになる。同センターのホームページによると、平成22年度は第2次審査に応募した461名に対して、合格者は116名(合格率25.2%)となっている。
認定を受けるための受験資格は、実務経験(業務経歴)5年以上で、第1次審査の業績審査と筆記試験(択一式試験&論述式試験)、第2次審査の樹木医研修として講義の動画配信(2週間程度)&6日間の実習及び資格審査(科目試験・樹種の識別に関する適性試験・面接試験)に合格した人が樹木医として認定・登録される。
試験の難易度はよく分からないが、合格するには、日本緑化センターが発刊している必須テキスト「最新・樹木医の手引き(改訂4版)」(B5判700ページ、定価:9,350円)を読みこなさないといけないうえ、幅広い知識が要求され、文章をまとめる能力も試されるので、かなりハードルは高そうだ。
わが国には樹木の種類は1,000くらいあるそうだ。樹木医の皆さんは一見して樹種と樹齢、健康状態を判断することができるのだろうか。人間技とは思えない。
これは事実か「枯損木記載は都の慣例に倣ったもの」千代田区の主張 住民訴訟(2023/1/17)