頂門の一針、蜂の一刺しにならないが アルヒ「本当に住みやすい街大賞」批判
アルヒ 本当に住みやすい街大賞 | ||||||
順位 | 2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2017年 | |
1 | 辻堂 | 川口 | 川口 | 赤羽 | 南阿佐ヶ谷 | |
2 | 川口 | 大泉学園 | 赤羽 | 南阿佐ヶ谷 | 勝どき | |
3 | 多摩境 | 辻堂 | たまプラーザ | 日暮里 | 赤羽 | |
4 | 大泉学園 | 有明テニスの森 | 柏の葉キャンパス | 川口 | 三郷中央 | |
5 | 海浜幕張 | 大井町 | 入谷 | 柏の葉キャンパス | 戸塚 | |
6 | たまプラーザ | たまプラーザ | 王子 | 勝どき | 南千住 | |
7 | 花小金井 | 小岩 | 武蔵小金井 | 南千住 | 大泉学園 | |
8 | 月島 | 花小金井 | 小岩 | 千葉NT中央 | 千葉NT中央 | |
9 | 船堀 | 千葉NT中央 | ひばりヶ丘 | 小岩 | 小岩 | |
10 | 新秋津 | 浦和美園 | 東雲 | 矢向 | 浮間舟渡 | |
アルヒ 本当に住みやすい街大賞 シニアランキング | ||||||
1 | ひばりヶ丘 | 武蔵小山 | 木場 | 大泉学園 | ||
2 | 稲毛海岸 | 南大沢 | 大泉学園 | 神田 | ||
3 | 相模大野 | 平塚 | 平塚 | 印西牧の原 |
ARUHI(アルヒ)は12月7日、「本当に住みやすい街大賞2022 TOP10」を発表した。ランキングトップは前年3位の「辻堂」で、2位は2020年と2021年連続して1位だった「川口」、3位には過去ランク外の「多摩境」が急浮上した。
以下、4位・大泉学園(前年2位)、5位・海浜幕張(同ランク外)、6位・たまプラーザ(同6位)、7位・花小金井(同8位)、8位・月島(同ランク外)、9位・船堀(同ランク外)、10位・新秋津(同ランク外)の順でベスト10入り。
昨年ランク入りしていた有明テニスの森(同4位)、大井町(同5位)、小岩(同6位)、千葉ニュータウン中央(同9位)、浦和美園(同10位)は圏外。
また、シニアランキングは1位・ひばりが丘(2020年の大賞9位)で、2位・稲毛海岸、3位・相模大野がいずれも前年ランク外から入った。
川口元郷駅前の醜悪なクスノキ(2020年写す)
瘤だらけの川口市内のイチョウ並木(2020年写す)
◇ ◆ ◇
記者はこれまで、機会あるごとにこの「本当に住みやすい街大賞」を批判してきた。根拠が希薄で、マンションデベロッパーの影が見え隠れし、そして何よりも住宅購入検討者をミスリードする危険性もはらんでいるからだ。
頂門の一針にならないことも、ましてやまだ死ぬ気はないので蜂の一刺しにもならないことを承知の上でまた書く。
同社はタイトルにわざわざ「本当に」という形容動詞を付しているように〝実はそうではない〟と解釈もできるように逃げの一手を打っている。人気タレントを呼んでイベントも行っているようだ。これがまた記者を不愉快にさせる。住宅購入検討者を何だと思っているのだ。馬鹿にするのはいい加減にしてほしい。金融機関のやることでは断じてない。
同社は一応、選定基準に住環境・交通利便・教育環境・コストパフォーマンス・発展性の5つを設定し、住宅や不動産の専門家が参画する選定委員会による公平な審査のもと選定しているとしているが、そもそもこれらの選定基準が妥当か、果たして数値化できるのか疑わしい。
「住環境」ひとつとっても、重視するのは緑環境か眺望か生活利便施設の集積具合かによって全く異なった結果になる。交通利便だって、勤務・通学を優先するならどこがいいか言えないはずだ。教育環境も同様だ。孟母三遷の教えなど正しいのかどうか、誰も分からない。そもそも最近のマンション立地は〝なんでもあり〟の高容積の商業・準工エリアが圧倒的に多いではないか。コストパフォーマンスだって、実際にものを見ないと判断などできない。講釈師見て来たように嘘をつく。無責任極まりない。
さらに、この「大賞」の致命的な欠陥は、もっとも肝心な誰にとって住みやすいかのかの視点が欠落していることだ。選ばれるのは富裕層が住みたくなるような街ではなく、背伸びしたら手が届く街かと思いきや、坪単価は400万円をはるかに突破する「たまプラーザ」がこの3年上位にランクインしており、やはり坪単価425万円の「勝どき」が今年ランクインした。同社は誰の味方なのか。
評点の乱高下も不可解だ。2020年と2021年トップの「川口」は、2020年が4.14だった。そして2021年は4.40に跳ね上がり、2022年には4.05へ下落した。わずか3年間にこれほど上下するほど街並みが変わったとはとても思えない。「川口」と覇権を争っていた「赤羽」は2021年忽然として姿を消した。何があったのか説明してほしい。
ほかのエリアも月光仮面のように疾風のように現れて疾風のよう去っていく。5年間ベスト10・シニアベスト3にランク入りしているのは「大泉学園」のみだ。記者も大泉学園はいい街だと思うが、ならばとうしで石神井公園が徒歩圏の「石神井公園」や、都心への連絡もいい「練馬」はランク外なのか。同線では「ひばりヶ丘」が2022年のシニアランクでトップになったが、西武ファンの記者だって首をかしげたくなるランクインだ。そんなに年寄りが住みやすい街か。
トップに上昇した「辻堂」は、駅北口の再開発「湘南C-X(シークロス)」によって街並みが一変したのは十分承知しているが、ならば「藤沢」「茅ヶ崎」はどうしてランク外なのかさっぱり理解できない。
今年の大賞で3位に突如浮上した「多摩境」と10位にランクインした「新秋津」も不可思議だ。住宅購入検討者でこの2つの街をイメージできる人は10人に1人もいないだろう。
「多摩境」は知人も住んでいるので批判などしたくないが、このレベルの街なら首都圏に100も200もあるはずだ。「多摩境」がベスト3に入るのならなぜ同じ沿線のわが「多摩センター」はランク外なのか。「南大沢」は昨年のシニアランキング2位に入ったが、それだったら「永山」だって同レベルだ。同じ京王線では、他の沿線と比べ圧倒的に割り負けしている「調布」「府中」「聖蹟桜ヶ丘」もランク上位の評価が妥当ではないか。安藤忠雄氏が設計した建物が500mにわたって建ち並び、桐朋や白百合女子大の学生さんも多い「仙川」もいい。
「新秋津」には仰天した。ここは西武線との連絡に2~3分はかかる。生活利便施設も乏しい。マンション分譲など最近はまったくないはずだ。審査講評では戸建てが3,000万円台で買えるとあるが、質を無視すればこんなところは数えきれないほどある。(不動産に掘り出しものなどない)
言いたいことは他にもある。マンション業界関係者ならお分かりのはずだ。どことは言わないが、大型物件が分譲中か、あるいは分譲予定されている街・駅が突如浮上し、その役割が終えると忽然と姿を消す。同社は忖度などしていないだろうが、デベロッパーの影が見え隠れする。これが実にいやらしい。袖の下をもらっているのではないかと勘繰りたくなる。
◇ ◆ ◇
以下は番外。記者の独り言と受け取っていただきたい。記者はお金があったら住みたいのは「3A」の「赤坂」「青山」「麻布」や「渋谷(松濤)」「田園調布」「成城学園」「駒込(大和郷)」「大森(文化村)」などもいいが、何といってもいいのは「東京」だ。マンションの価値として坪単価3,000万円どころか5,000万円の価値はあると思う。三菱地所はどうして分譲マンションを建てないのか。このほか、都心部なら「人形町」「四谷荒木町(四谷三丁目)」「神楽坂」界隈もいい。
このほか、記者も悪くないと思うのだが、呑み助には24時間営業の安い飲食店が駅前に軒を連ねる「南越谷」がお勧めだ。競馬・ギャンブル好きには「府中競馬場」「多摩川競艇」「立川競輪」「浦和競馬場」「中山競馬場」「船橋競馬場」などに近い武蔵野線はどうか。毎日のように楽しめる。
夜景が美しいのはどこでもそうだろうが「竹芝」「桜木町」「元町・中華街(山下公園)」、海好きには「三浦海岸」、フーゾク街なら「新宿・歌舞伎町」「黄金町」「川崎・堀之内」(今でもあるのか)だろう。
これから検討する人には「南船橋」がお勧めだ。三井不レジが昨年分譲したマンションの坪単価は204万円だった。これから駅前の約4.5haの再開発が三井不動産・三井不レジなどによって推進される。数年後に街並みは一変する。
20年、30年先を見通すなら、最大の〝穴場〟は「新木場」しかない。ここは地区計画により151haの規模にわたり住宅不可となっている。現在のオフィス賃料は都心の10分の1の水準だ。木場の役割が終えた現在、地区計画の見直しが行われるのは間違いないとみた。ひょっとしたら「HARUMI FLAG」の第2弾はここではないか。
取り留めないことを書いてきた。つまり〝住めば都〟-どこもいいのだ。住みたくなくても離れられない人はたくさんいるし、住みたくても先立つものがない人のほうが圧倒的に多い。住宅購入検討者を惑わす、デベロッパーのプロパガンダに擦り寄るような大賞はやめていただきたい。
「ローカル」の大事さ浮き彫りSUUMO「住み続けたい街ランキング」(2021/10/6)
幸福度トップ自治体は鳩山町 根拠希薄・無神経な大東建託ランキングやめるべき(2021/9/8)
大和ハウス 湘南最大級全914戸の「プレミスト湘南辻堂」が完成(2021/1/22)
不快な臭い芬々 〝住みやすい〟街ランキング調査 無聊をかこつ記者のつぶやき(2020/12/14)
駅前4.5haの再開発も三井不グループに決定 三井不レジ「南船橋」人気加速か(2020/10/23)
川口元郷-現地-川口 徒歩30分 街路樹は1本もなし 「本当に住みやすい街大賞」? (2020/2/25)
らしき建築物発見!住宅不可の151haの江東区・新木場に88人が住む不思議(2019/6/4)
「一般社団法人 日本ウッドデザイン協会」設立 会長に隈研吾氏
最前列左から三菱地所執行役社長・吉田淳一、竹中工務店取締役社長・佐々木正人、ユニバーサルデザイン総合研究所所長・赤池学、建築家・隈研吾、農林水産大臣政務官・下野六太、林野庁長官・天羽隆、農林中央金庫代表理事理事長・奥和登、住友林業代表取締役会長・市川晃の各氏
農林中央金庫、住友林業、竹中工務店、三菱地所、ユニバーサルデザイン総合研究所は12月8日、建築家・隈研吾氏を会長とする「一般社団法人 日本ウッドデザイン協会」を設立したと発表した。これまで林野庁補助事業としてユニバーサルデザイン総合研究所が実施してきた顕彰事業である「ウッドデザイン賞」を同協会が引き継ぐ。
同協会は、木を活用した社会課題の解決を目指す取組みを「ウッドデザイン」と定義し、「ウッドデザ イン」に関わるあらゆる分野の調査、研究、開発、事業創造、普及と啓発を通じ、あらゆるステークホルダーとの連携により木のある豊かな暮らし、木材利用、森林・林業の成長産業化、地方創生を推進して、脱炭素化等、環境と資源に配慮した持続可能な社会の実現を図るのが目的。
会長に就任した建築家・隈研吾氏は、「『ウッドデザイン』は木材を使って社会と暮らし、都市と地域に新たな価値をもたらす、多様な連携による活動の総称です。そして、日本ウッドデザイン協会は、木材を使って持続可能な社会、個性ある地域、豊かで安心な暮らしをデザインするための、新たなプラットフォームです。この2年あまりで社会にもたらされた劇的な変化は、人々の価値観を大きく変え、自然との近さや発想の柔軟性がより求められるようになりました。木材はこうした価値観に応える最良の素材です。協会の目的を達成するためには、業種や分野の枠を超えた、多くの方々の参画が不可欠」とコメントした。
◇ ◆ ◇
同協会設立の案内が届いたとき、「ウッドデザイン賞」内部で内紛が勃発し、分派活動を開始するのかと思ったが、そのまま顕彰事業を引き継ぐとのことでめでたしめでたし。
記者は、ユニバーサルデザイン(UD)こそが全てを包含する概念だと思っているのだが、UDが普及するにつれて「グッドデザイン賞」「キッズデザイン賞」などが幅を利かすようになっている。「〇〇デザイン」を付した公益法人は20も30もある。そして、それらの賞の中には、国民の支持率が3割にも満たないことがある、もらっても全然嬉しくない「内閣総理大臣賞」が必ずといっていいくらいある。
100も200もある、連日どこかで授賞式がある「文学賞」と同じで、それぞれが相殺しあい、その分だけ有難みが減殺されるのではないかと心配するのだが、「日本ウッドデザイン協会」そうならないことを祈るのみだ。
日本橋川に面した大規模再開発 三井不&野村不「日本橋一丁目中地区」着工
「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」
三井不動産と野村不動産は12月7日、「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」を12月6 日に着工したと発表した。東京八重洲・日本橋エリアで進行中の数か所の市街地再開発事業の一つで、日本橋川を臨むテラス・デッキ、賑わいを創出する広場を複数設け、既存の日本橋船着場の舟運ネットワークとも連携するなど、両社はリーディングプロジェクトを目指す。
同プロジェクトは、東京メトロ銀座線・東西線・都営地下鉄浅草線日本橋駅に直結する総面積約3.0haの規模で、両社は地権者、参加組合員、業務受託者として参画。業務施設・業務施設からなる4階建てA街区、住宅・商業施設からなる7階建てB街区、オフィス、商業施設、ホテル、居住施設、MICE施設、ビジネス支援施設などからなる52階建てC街区で構成。都市計画・事業コンサルタント・基本設計・実施設計・監理は日建設計。デザインアーキテクトは日建設計、PELLI CLARKE PELLI ARCHITECTS,INC。施工は日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業建設共同企業体。竣工予定は2026年3月末。
メインタワーのC街区には、オフィス・居住施設・ホテル・MICE・ビジネス支援施設などを整備。39~47階には、全197室のヒルトンの最上級ラグジュアリーブランド「ウォルドーフ・アストリア東京日本橋」が入居するほか、48~51階にはビジネスパーソンの中長期的な滞在にも対応し、コンシェルジュサービスも備えた約100 戸の居住施設を予定している。5~8 階には都心最大規模を誇るMICE施設を設置する。
A街区は、1930年(昭和5年)に竣工した貴重な近代建築物として中央区指定有形文化財に指定されている日本橋野村ビル旧館の風格ある外観を保存活用する。
B街区には、日本橋川沿いの賑わいにつながる商業施設、多様なライフスタイルに対応可能な約50戸の住戸を予定している。
また、環境負荷低減への取り組みとして、C 街区地下に「電気」と「熱」を供給するエネルギーセンターを設置し、施設全体の省エネルギー化を推進する。
デザインアーキテクトには日本橋三井タワー、日本橋室町三井タワーをデザインした「ペリ ク ラーク ペリ アーキテクツ」を起用。着物・川・暖簾をイメージした日本橋の街並みに調和し、国際金融拠点に相応しいグローバルデザインを実現する。
現在、八重洲・日本橋エリアでは、同プロジェクトのほか「TOKYO TORCH」「八重洲一丁目北地区」「八重洲一丁目東地区」「八重洲二丁目中地区」「TOKYO MIDTOWN YAESU」「日本橋一丁目東地区」「日本橋室町一丁目地区」などの再開発計画が目白押し。
オフィスエリア テラス
東京都の外国人 コロナ前より8.3%減 区別トップは江戸川3.5万人 新宿抜く
今日も取材は1件もなし。しょうがないので、暇に飽かせてコロナ禍で激減している東京都の外国人の動向を調べてみた。令和3年10月の外国人は約52.3万人で、コロナ前の令和元年10月と比べ実に約4.7万人、8.3%も減少した。区・市部でもっとも多いのが江戸川区の3.5万人で、2年前トップだった新宿区を抜いた。国籍別でもっとも多い中国人はこの2年間で約2.0万人、8.7%減少している。
東京都の住民基本台帳による令和3年10月現在の外国人は522,732人(令和元年同月比8.3%減)で、23区は435,020人(同9.3%減)、市部は86,408人(同2.3%減)となっている。
区・市部でもっとも外国人が多いのは江戸川区で35,424人(5.3%減)。以下、新宿区34,572人(同18.6%減)、足立区33,241人(同3.8%減)の順。増減率から推測すると、2年前にトップだった新宿区は足立区に抜かれて3番目になるのは時間の問題だ。足立区を筆頭に減少幅が小さい城東エリアは居住費が安いためか、あるいは外国人のコミュニティが存在するためか。新宿区、豊島区、中野区など都心部の減少が目立つのはやはりコロナの直撃を受けたためか。
国籍別でもっとも多いのは中国の206,110人(同8.7%減)。居住地は江東区、足立区、江戸川区でそれぞれ1.4万人台。2位の韓国は84,028人(同10.7%減)。居住地は新宿区の8.7千人、足立区の6.9千人がやや抜けている。3位はベトナムの34,815人(同6.2%減)。居住地は江戸川区、豊島区、足立区、新宿区が2千人台となっている。
フィリピンは32,709人(同3.0%減)で、地域別では足立区、江戸川区、大田区2~3千人台。ネパールは24,566人(同6.2%減)で新宿区、大田区、豊島区が2千人台。台湾は17,465人(同15.5%減)で1.5千人の新宿区が多い。アメリカは17,384人(同10.0%減)で、居住地は2.5千人の港区が突出しており、世田谷区、渋谷区がそれぞれ1.8千人、1.3千人。インドは12,967人(同3.4%減)で、地域別では5.1千人の江戸川区と2.4千人の江東区で全居住者の58.2%を占めている。
上位10か国で唯一増加しているのはミャンマーで10,678人(同7.1%増)。政情不安の反映か。
この2年間、市部で外国人が増えているのは立川市、青梅市、昭島市、東村山市、国分寺市、東大和市、東久留米市、稲城市、あきる野市など。
女性比率の高いのは港、目黒、世田谷 男性が多いのは台東、中野、江戸川 23区人口
今日は1件の取材も入っていないので、この前、コスモスイニシア「イニシアテラス目黒学芸大学」を取材したとき、「目黒区」は女性の人気が高いことを話題にしたので、その裏付けをとるため男女比の人口構成を調べてみた。
令和3年1月現在の同区の人口は約28.1万人で、男性は約13.3万人、女性は約14.8万人だ。男性を1とした場合、女性の人口割合は1.116となっている。
他区はどうかというと、比率が高い順では港区がトップで1.121となっており、次いで目黒区、以下、世田谷区(1.111)、文京区(1.104)、中央区(1.099)、杉並区(1.084)、渋谷区(1.082)の順。
逆に男性が多いのは台東区(0.955)、中野区(0.983)、江戸川区(0.084)、新宿区(0.094)、千代田区(0.095)の順。23区平均は1.038で、10区が女性の比率が平均を上回っている。
26年前の平成7年はどうだったか。女性比率が高いのは港区(1.121)、渋谷区(1.103)、中央区(1.094)、目黒区(1.094)、千代田区(1.091)、文京区(1.077)の順で、男性比率が高いのは江戸川区(0.950)、足立区(0.967)、大田区(0.974)、江東区(0.981)の順。23区平均は1.012)で、12区が区平均を上回っている。
平成7年と令和3年を比較して、女性比率が高まったのは練馬区(0.068ポイント、以下同じ)、世田谷区(0.060)、江東区と大田区(0.051)、板橋区(0.044)などで、逆に女性比率が低下したのは千代田区(0.096ポイントマイナス、以下同じ)、中野区(0.045)、台東区(0.044)、新宿区(0.043)など。
さて、皆さんはこの数値をどうみられるか。いい加減なことを言うと〝お前、それ差別だ〟と言われかねないので言葉を選ばないといけないが、女性比率が高い区は住宅地としても人気が高いエリアということは間違いなさそうだ。
平成7年から女性比率を下げた千代田区は大学の郊外への移転が進んでいるためか、新宿、渋谷、中野区などは新型コロナ禍で外国人を中心に人口が減少しているのと関係があるのかどうか。
いずれにしろ、目黒区の人口に占める女性の割合が高いことは証明できた。年代別では、14歳以下の年少人口の男女比は男性のほうが上回っており、30歳を超えると女性比率が目立って高くなっていることからも、生産年齢以上の女性が移り住んでいることは容易に推測される。目黒区に限ったことではないが、いわゆる〝おひとり様〟も圧倒的に多いことが分かる。
どうして目黒区が女性に〝人気〟なのかは詳細な分析が必要だが、区内には中目黒、青葉台、駒場、鷹番、碑文谷、自由が丘、緑が丘など良好な住宅地を形成しているところが多く、交通便も東急東横線、東急目黒線などでターミナル駅まで十数分圏と近いのもその要因ではないか。
また、良好な住宅地を形成し、都心に便利な割にはいかがわしい街が少ないことも挙げられるかもしれない。住居費は高くなっても安全・安心を優先する賢い選択(男性が愚かという意味ではない)をしていると記者は思う。
蛇足だが、美しい地名のところに住んで、雄をおびき寄せる意図があるのかどうかは不明で、もちろん記者をごみのように捨てた彼女は目黒区に住んでいたことと関連があるのかどうかも分からない。
行政サービスが他区とどう異なるかについては調べていただきたい。
まちづくり・観光・環境分野で連携 三菱地所&長野大学
三菱地所と長野大学は12月3日、東北信地域を中心とした長野県内の地域課題解決や地域活性化の促進に向け、連携協力に関する協定を2021年12月1日に締結したと発表した。
両者は、2022年度以降に①先進的都市開発やまちづくりに関する講座等の開講②三菱地所が手掛ける都市開発プロジェクトなどのフィールドワークやインターンシップの実施③先進的なまちづくり事例や事業スキームに関する共同研究や情報交換――などを通じてまちづくり・観光・環境分野を中心に将来を担う高度職業人の育成のための教育プログラムを実施する。
◇ ◆ ◇
昨日は、オリックス不動産と立命館アジア太平洋大学の産学連携に関する協定書締結の記事を書いたばかりで、先週も積水ハウスと琉球大学の共同検証プログラムを紹介した。みんな結構なことだ。地方なのがとくにいい。山林、漁業、観光資源が豊富なわが三重県の大学ともどこか連携していただけないか。
杉乃井ホテルの実地型学習を提供 オリックス不&立命館アジア太平洋大が協定
左から深谷氏、米山氏、似内氏
オリックス不動産と立命館アジア太平洋大学(APU)は12月2日、観光事業経営とグローバル大学の連携で地域活性化と人材育成を目指す「友好交流に関する協定」を締結し、2022年4月から同社が運営する「別府温泉 杉乃井ホテル」で有給型インターンシップを開始すると発表した。
同社は、杉乃井ホテルをはじめ全国で47の旅館・ホテル・水族館などを運営しており、先に「うめきた2期」のホテル事業担当幹事会社として3つのホテル運営会社をヒルトン大阪と阪急阪神ホテルズに決定した。地域と施設の長期的なブランド価値を向上させる「地域共創プロジェクト」を各施設で推進していく。杉乃井ホテルは現在もAPUの学生アルバイト約100名を受け入れている。
APUは、大分県別府市に2000年4月学部、2003年4月大学院をそれぞれ開学。学生数は5,744名(うち2,651名は国際学生)。教員数は166名(専任教員のみ)。
「自由・平和・ヒューマニティ」「国際相互理解」「アジア太平洋の未来創造」を基本理念に掲げ、世界95か国・地域から学生を受け入れてきた。観光学分野の教育研究にも力を入れており、大分県と県内外22市町村と包括連携を結んでいる。2023年には「持続可能な観光と社会」を研究テーマとする「サステイナビリティ観光学部」の設置を予定している。
協定締結式に臨んだオリックス不動産取締役社長・深谷敏成氏は、「APUの学生さんに実地型学習を提供する機会を設け、観光学の基礎学習とビジネス実務体験を一気通貫で感じていただけるよう、特徴あるカリキュラム作りをサポートしていく」と述べた。
APU副学長・米山裕氏は、「本学では人材育成における実際の課題やその解決に取り組む実践を非常に重視しており、今回の協定によって学生が大きく成長すると確信している」と話した。
杉乃井ホテル&リゾート代表取締役・似内隆晃氏は、「今回の産学連携は初の試み。今回の協定を通じ『他にはない体験価値』を提供するとともに、ホテル全体のホスピタリティの向上を図り、『訪れるお客さま』『地域』『当社施設』にとっての好循環を作ってまいりたい」と述べた。
◇ ◆ ◇
別府温泉は、高校のとき修学旅行で行ったきりだが、もちろん「杉乃井ホテル」の名前は知っている。同社によると、ホテルの客室総数は802室、従業員数は900名。客室数:従業員数は1:1.12だ。
旅館・ホテルといっても、ラグジュアリーホテルからビジネスホテルまであり、付帯施設も千差万別、まさに玉石混交の業界だ。一口には論じられないのだろうが、この杉乃井ホテルの従業員の多さにびっくりした。従業員全員ではないにしろ地域の雇用をホテルが支えていることなど考えてもみなかった。
そこでネットで調べてみた。最高のホスピタリティを提供していると記者が思う「ザ・リッツ・カールトン東京」 は客室245室で、従業員数は420名とある。客室数:従業員数は1:1.71だ。これが伝説の「クレド」を生んだ源泉なのか。
わが国トップクラスの客室数を誇るホテルはどうか。客室数:従業員数は1:0.15だ。客室料金を低く抑えられる秘密はこんなところにも表れている。
住宅市場は好調だが コロナ禍で増加する住宅ローン リスク管理債権
新築分譲住宅市場も中古住宅市場も好調に推移している。新型コロナの影響が心配されたが、ウィズ・アフターコロナを見越した在宅勤務・テレワーク・フレックスの浸透により、郊外部のマンションや戸建ても売れ行きはむしろコロナ前よりよくなっている印象を受ける。
このまま堅調な市場が続くのかどうかはいまひとつ読めないが、コロナの打撃を受けている飲食業、旅行・観光業、その他サービス業などの経済への影響はこれからと思われ、住宅ローン破綻が懸念される。
別表は、住宅金融支援機構のここ10年間のリスク管理債権推移を見たものだ。住宅金融公庫時代の直接融資による既往債権貸付金残高は平成23年度は21兆4,972億円だったのが平成27年度には11兆4,692億円とほぼ半減し、年々積みあがっていた買取債権貸付金残高(12兆8,323億円)と逆転した。その後も、既往債権は減少し続け、令和2年度は6兆1,837億円となっている。買取債権は増加し続け、令和2年度は18兆64億円となっている。
一方、既往債権のリスク管理債権額は平成27年度に1兆1,373億円となり、貸付金残高に占める割合は9.92%と10%を割り、その後も比率は徐々に減少していたが、令和2年度は9.14%と前年度の9.05%から0.09ポイント上昇している。
買取債権のリスク管理債権比率は、平成28年度から令和元年度までは1%以下で推移していたが、令和2年度は1.53%と前年度より0.67ポイント上昇。
令和2年度の既往債権と買取債権を合わせたリスク管理債権額は8,414億円(前年度比10.2%増)で、貸付金残高24兆1,900億円(同1.3%増)に占める割合は3.48%(同0.28ポイント増)となっている。
この数字をどう見るかだが、東京商工リサーチの調査によると、全国107行の2021年3月期のリスク管理債権は7兆6,831億円(前年度比16.0%増)で、4年ぶりに7兆円台に乗せ、リスク管理債権比率は1.33%で、前年の1.19%より0.14ポイント上昇している。
この東京商工リサーチの調査結果からして、同機構の既往債権のリスク管理債権比率は極めて高い水準にある。令和3年度がどうなるか注視する必要がありそうだ。一方の買取債権比率も令和3年度はコロナの影響で高まるのは間違いない。今後の景気・金利動向から目が離せない。
ネガティブにならざるをえない 無残な街路樹 ネイチャー・ポジティブを考える
「都市の生物多様性フォーラム~『5本の樹』で実現する豊かな暮らし~」
11月26日行われた「都市の生物多様性フォーラム~『5本の樹』で実現する豊かな暮らし~」で積水ハウスESG経営推進本部環境推進部部長・佐々木正顕氏は「今回のフォーラムは当社の自慢話をするために開いたのではありません。生物多様性を客観的、具体的に評価する方法が見つかったので、これを皆さんと共有し実践していくことが狙いです」と感極まった様子で語った。
その通りだと思う。各氏もその姿勢を絶賛した。一つ気になったのは、オンライン参加の東北大学大学院生命科学研究所教授・藤田香氏が「もう1、2年の間にカーボン・ニュートラルと同じようにネイチャー・ポジティブという言葉は定着すると思います」と述べたように、皆さんは生物多様性の未来をポジティブにとらえていることだった。農学者は普段自然と接しているためか、大らかな人が多い。
だが、しかし、日ごろマンションや分譲戸建ての現地取材を行い、街並みを眺めまわしていると、生物多様性は一顧だにされず、ただひたすらに自滅の道を突き進むのではないかとネガティブに考えざるを得ない。
ついこの前だ。船橋市・二和向台の駅前商店街の樹齢数十年と思われるイチョウの街路樹が高さ6mくらいに強剪定されており、枝は瘤だらけ、葉っぱを広げることもできず、黄色く染まることも許されない無残な姿を見て、涙が出るほど悲しかった。行政と造園業者の暴挙愚行ではあるが、問題はそれを容認する住民がいるということだ。
藤田氏が勤務する仙台は何度か取材したが、二和向台とは対照的に実に緑が豊富で美しい。だからこそ「ネイチャー・ポジティブは当たり前」などと言えないのではないか。写真を載せた。藤田氏にもぜひ見ていただきたい。人への誹謗中傷は厳しく糾弾されるのに、樹木虐待はどうして許されるのか。さっぱり分からない。
二和向台のイチョウ(左)と墨田区向島のスズカケ
◇ ◆ ◇
前段に関連することだが、記者は今から10年くらい前、危機的な状況にある森林・林業や、電信柱のように強剪定される街路樹を何とかしないと考え、取材対象に加えることにした。手始めに2012年5月から「街路樹が泣いている ~街路樹と街を考える~」記事を8回にわたり書いた。手ごたえはあった。アクセスは軒並み3,000件を超えた。その後、ことあるごとに自治体の対応を批判する記事を書いてきた。記録に残っている2012年以降の「街路樹」に関する「RBAこだわり記事」は111件ヒットした。
記者の守備範囲であるマンションや分譲戸建ての取材では、積水ハウスの「5本の樹」の植栽計画は他を圧するのを目の当たりにしてきた。「5本の樹」「生物多様性」「緑被率」「緑環境」で記事を検索したらそれぞれ40本、34本、20本、19本ヒットした。合計で224本だ。
記者は年間、RBA野球記事を除き住宅・不動産などに関する記事を400~500本書いている。8年間で3,200~4,000本だ。「街路樹」「5本の樹」「生物多様性」「緑被率」「緑環境」の記事の比率は5.6~7.0%だ。これが多いのか少ないのか判断する材料はないが、一定の読者の方の心を捉えたのではないかと思っている。主な記事を添付したので読んでいただきたい。
どれくらい読まれているか少しチェックしてみた。もっとも多いのは「またまた『街路樹が泣いている』千代田区 街路樹伐採で賛否両論」(2017/9/8)の約9,400件だ。積水ハウス関連では「スマートコモンシティちはら台」「グランドメゾン狛江」「グランドメゾン仙川」などが5,000件を突破している。
◇ ◆ ◇
もう一つ、データが異なるといえばそれまでだが、わが国の住宅着工統計には「敷地面積」「緑環境」の視点が欠落している。あるのは都道府県別の総戸数、総延べ床面積、総敷地面積だけだ。追っていけばどれだけ狭小敷地化が進んでいるか大雑把に捉えることはできるだろうが、どこがどのように変化しているか把握できないはずだ。
都市計画法、建築基準法も考えたら不思議な法律だ。商業地域は一応建ぺい率は定められているが、耐火建築物にすれば建ぺい率は100%だ。ここにも緑環境の視点はまったくない。(自治体によっては建物をセットバックすることを求めているほか、地区計画や総合設計制度などはあるが)
そして、何よりも記者が懸念するのは、1977年の三大都市圏の樹木・鳥・蝶の種数、多様度指数、個体数を100%とし、今後日本で新築される物件の30%に「5本の樹」計画が採用された場合、その回復効果は84.6%まで上昇する予測データ通りに推移するかどうかだ。植栽など全くない分譲戸建てが主流の現状のままだと、「5本の樹」に賛同しそうな同社を含めた大手ハウスメーカー・デベロッパーが束になってかかっても30%に届かないのではないか。
これを何とかしないといけない。先に住宅着工統計には住宅の敷地面積に関するデータはないと書いたが、敷地が20坪以下の狭小敷地では「5本の樹」を植えるのは難しい。これを排除するために、金融機関や投資家にそのような住宅を供給する会社への投資・融資を控えるよう呼びかけることはできるのか、あるいはまたそのような住宅購入を考える消費者に対してどのような姿勢を取るのか、極めて難しい問題が立ちはだかっている。気候非常事態宣言や女性活躍も同様だ。強制力を持たせたりクオータ制を採用したりすることの是非は難しい。藤田氏が語ったようなポイント制、クレジットは可能なのか。
この問題をクリアしないと、1977年に戻るのは難しいのではないかと思うがどうだろう。
画期的 世界初の生物多様性定量化システム公開 積水ハウス&琉球大学(2021/11/27)
怒り心頭 イチョウは殺していいのか 船橋・二和向台の無残な街路樹(2021/11/12)
緑の質量に圧倒 エントランスに樹齢100年巨木「江古田の杜」街びらき(2018/9/23)
またまた「街路樹が泣いている」 千代田区 街路樹伐採で賛否両論(2017/9/8)
いい加減にしてほしい モデルルームのケミカル製品・造花の氾濫(2017/5/23)
続「街路樹が泣いている~街路樹と街を考える」流山と越谷、三郷の差(2014/10/17)
異形のスカイツリーに怒れるスズカケ 押上の街路樹「街路樹が泣いている」(2017/3/20)
呉越同舟効果 「5本の樹」の本領発揮 積水「品川シーサイド」1期207戸!(2017/3/24)
農学、環境、家政学者の会合はおおらか 国交省「都市公園あり方検討会」(2015/3/17)
国分寺崖線の借景、「5本の樹」もいい 積水ハウス「グランドメゾン仙川」(2015/2/3)
積水ハウス「スマートコモンシティちはら台」に見た街づくりへの覚悟(2014/9/13)
積水ハウス 安藤忠雄氏発案の巨大緑化モニュメント『新梅田シティ』完成(2013/11/5)
〝宮脇檀さんにまた会えた〟 積水ハウス「コモアしおつ」(2013/9/14)
「里山を見るような見事な植栽 積水ハウス『グランドメゾン狛江』竣工(2013/9/12)
植栽が見事な積水ハウス「白金」タワーマンション(2013/8/20)
街路樹が泣いている(8) 奇形ばかり海浜幕張・電柱そのもの府中街道の街路樹(2012/6/5)
街路樹が泣いている ~街路樹と街を考える~ ①(2012/5/1)
画期的 世界初の生物多様性定量化システム公開 積水ハウス&琉球大学
左から司会者の方か、佐々木氏、久保田氏、河口氏、仲井氏、道家氏、原口氏、オンライン参加の東北大学大学院生命科学研究所教授・藤田香氏
積水ハウスは11月26日、同社の「5本の樹」計画の成果と琉球大学が研究・開発したビッグデータシステムを共同検証し、世界初の都市の生物多様性の定量評価の仕組みとして構築した「ネイチャー・ポジティブ方法論」を誰もが取り組めるよう公開したと発表した。
「5本の樹」計画は、〝3本は鳥のために、2本は蝶のために、地域の在来樹種を〟という思いを込め、その地域の気候風土・鳥や蝶などと相性の良い在来樹種を中心とした植栽にこだわった庭づくり・まちづくりの提案で、2001年に開始して以来累計で100万世帯、樹木数にして東京都の街路樹100万本の17倍に該当する1,700万本超に達している。
「ネイチャー・ポジティブ方法論」は、同社と琉球大学理学部久保田研究室・シンクネイチャーとの共同検証によって実現したもの。同大・久保田康裕教授が立ち上げ、シンクネイチャーが管理運営する「日本の生物多様性地図化プロジェクト:J-BMP」を基に、同社が20年間に植栽した樹木本数・樹種・位置情報の蓄積データを分析し、定量的な実効性評価を可能にした。この種の成果は世界初という。
共同検証の結果、生物多様性の劣化が著しい三大都市圏の在来種は約10倍に、鳥の種類は約2倍に、蝶の種類は約5倍に増加したことが確認できたという。
また、1977年の三大都市圏の樹木・鳥・蝶の種数、多様度指数、個体数を100%とし、2070年までの変動をシミュレーションした結果、「5本の樹」の効果は41.9%まで回復し、今後日本で新築される物件の30%について「5本の樹」計画が採用された場合、その回復効果は84.6%まで上昇する予測データを発表した。
同日行われた「都市の生物多様性フォーラム~『5本の樹』で実現する豊かな暮らし~」で基調講演を行った同社代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、「私事だが、家の庭に枝垂れウメを植えたらウグイスではなくメジロが飛んできた。梅に鶯は嘘であることが分かった」などと紹介しながら、「(ネイチャー・ポジティブ方法論を実現できたのは)久保田先生との出会いが転機になった。その検証効果に大変驚かされた。ここまで成果を生むとは思っていなかった。コツコツやってきたことが実を結んだ。生物多様性を定量化、数値化できた世界初のイノベーション。大変意義深い。これを公開し、みなさんと一緒に共有したい」と語った。
仲井氏
その後行われたパネルディスカッションには、出席者が次のエンドースメントコメントを寄せた。(順不同)
立教大学特任教授/不二製油グループ本社CEO補佐・河口眞理子氏 生物多様性の定量化・数値化は、生物多様性の保全にむけて社会を動かすためのカギを握っています。「5本の樹の実効性評価」は、個人レベルの庭木植栽を国レベルの生物多様性の定量評価は待ち望まれてきた生物多様性の定量化に成功した画期的な取り組みです
河口氏
国際自然保護連合日本委員会事務局長・道家哲平氏 「5本の樹」というアプローチは、都市開発から、個人住宅という多くの人々に生物多様性 のための行動の選択肢を提供する手段であるということも、注目すべき点と考えています
道家氏
MS&ADインターリスク総研フェロー/MS&ADインシュアランスグループホールディングスサステナビリティ推進室TNFD専任SVP・原口真氏 住宅の省エネルギー基準の適合義務化、市民が生活実感を持って消費も含む生活様式を変えていければ、日本の都市はレジリエントでサステナブルな社会への移行に大きく貢献することになります。また、ESG投資家に対して情報開示義務を負う、都市開発、建設の事業セク ターにとっても希望をもたらすツールとなることでしょう
原口氏
琉球大学理学部教授/シンクネイチャー代表取締役・久保田康裕氏 生き物の分布、生き物の遺伝子、生き物の機能、生き物の食う食われる関係を網羅した生物多様性ビッグデータは、積水ハウスの事例のように、ビジネス活動がダイレクトに自然資本の保全再生に貢献することを科学的に証明します。相反するように見える経済収益活動と生物多様性の保全再生活動は、お互い科学的に調和され、ビジネスを通じたネイチャー・ポジティブ、すなわち社会変革を推進します
久保田氏
◇ ◆ ◇
同社の「5本の樹」計画をずっと応援してきた記者もとても嬉しい。何が嬉しいかといえば、「ネイチャー・ポジティブ方法論」を独り占めしないで一般に公開したことだ。「5本の樹」計画は商標登録されているはずだが、その思想・取り組みは全てのハウスメーカー・デベロッパーに通用することだから、なんとか一緒に実践できないものかとずっと考えてきた。
それが今回実現した。佐々木氏は、「これは知的財産でもあるので『それ公開していいのか』という論議が社内であり、社長にその話をしたら、『何せこいことを言っているんだ。これはうちだけがやってもイノベーティブに日本を変えることはできないではないか。であれば、これを広く公開してうちがやってきたことを一緒に取り組んでいくことが大事なんだ』としかられました」と舞台裏を明かした。仲井社長の英断にも拍手喝采だ。
そして忘れてはならないのは、〝安かろう悪かろう〟のぺんぺん草も生えない住宅が蔓延している中で、高いものは1本数万円(もっと高いのもあるか)する在来種の樹木をお客さんに勧めてきた同社営業マンの苦労だ。
その苦労を報いるため、20年間、1本1本、植えた樹木を緯度、経度に落とし込んでデータ化する作業を同社はずっと続けてきた。これまた凄い。
今回の「ネイチャー・ポジティブ方法論」を編み出すのに久保田教授は10年かかったそうだが、それを実効あるものにしたのは同社の地道な取り組みだ。
◇ ◆ ◇
どことは言わないが、心当たりのあるシンポジウム・フォーラム関係者は多いはずなので余談だが書く。スピーチ・プレゼンの話すスビートは1分間に300字が適切とされている。早口でまくし立てるとその瞬間は理解できても、心に残らない。右から左へ左から右へと頭の中を素通りしていく。
先日、あまりにもひどい講演を経験した。ある講演者は20分間に70~80枚の文章・画像をプロジェクターに映しながら話した。1分間に3.5~4.0枚だ。記者は必至でメモを取り、読もうと思ったがあきらめた。そんな芸当誰ができるというのだ。前に座っていたメディア関係者2人は講演中ずっと眠っていた。
これは例外ではない。1分間に300字のスピードで話す講演者・プレゼンテーターは10人に一人か二人くらいではないか。
今回の仲井社長、久保田教授&積水ハウスESG経営推進本部環境推進部部長・佐々木正顕氏の講演は、計ったわけではないが、メモを取れるほどのスピードだった(NHKの講座なみ)。一語一語が理解できた。重要と思われるフレーズを何度も繰り返したので理解度はより高まった。「5本の樹」だけでなく、各社広報担当は今回の同社を見習ってほしい。(パネルディスカッションの各氏の話は省略した。1時間の話し言葉を書き言葉に変換するのは大変)
もう一つ。佐々木部長は、同社には40人もの樹木医がいることを紹介した。記者は、同社の社外取締役を務めていた涌井史郎氏が語った「木の名前、虫の名前、鳥の名前を覚えると、一歩歩くごとに人生3倍楽しくなる」という言葉を思い出した。樹木医とはそんな人ではないか。機会があったら同社の樹木医にインタビューしてみたい。資格を取得すると医者や弁護士のような高収入を得られるのか、高額な手当はつくのか。記者は樹木や草花の図鑑を眺めるのだが、すぐ名前を忘れる。どうしたら覚えられるかも教わりたい。
フォーラムで紹介された、239ページ、発行部数40万冊という同社の隠れたベストセラ―「庭木セレクトブック」はいい。木の名前と鳥の名前が一緒に覚えられるかもしれない。こんな本は他にないはずだ。注文を付けるなら実寸の葉っぱや実を載せてほしい。
佐々木氏