ワクチン接種効果 高齢者の感染・比率が激減 気掛かりな20歳未満の年少者の激増
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東京都の新型コロナ感染者は、70歳以上の高齢者の実数も感染比率も減少する一方で、20歳未満の年少者の実数、比率が増加するなど対照的な動きを見せている。高齢者や医療従事者へのワクチン接種が進んでいる効果がはっきり表れているが、年少者にも感染しやすいといわれる変異株の影響か、気掛かりな材料だ。
別表・グラフは、東京都の5月8日以降の新型コロナ感染者の推移を見たものだ。感染者は5月上旬では1,000人を超える日もあったが、その後は漸減し、6月14日には209人まで減少した。1週間ごとの感染者は5月上旬の5,000~6,000人台から6月の第3週は2,644人へ減少した。
この間の大きな特徴は、70歳以上の感染者・比率が確実に減少していることだ。5月8日は91人(比率8.1%)で、5月26日は83人(比率11.2%)にのぼっていたのが、この10日間では感染者は30人を割っており、比率も数%台に減少している。6月24日は2.5%、25日は2.7%と3%を割った。
都のデータによると、約311万人の65歳以上を対象としたワクチン接種者は6月24日現在、 1回目が1,660,474人、2回目が605,415人となっており、1回目接種者は53%となっている。また、約56万人の医療従事者を対象としたワクチン接種者は6月25日現在、1回目が494,036人、2回目が423,361となっている。
しかし、一方で気になるのは20歳未満の年少者の実数と感染比率の増加だ。5月9日は132人(比率12.8%)と100人を超えたが、その後は徐々に減少し、比率も10%前後で推移してきた。
ところが、6月23日には92人(比率14.9%)に増加し、実数・比率は増加傾向にある。変異株は若年層へも感染しやすいと報告されていることを裏付けているのか。
感染経路不明率も6月8日に60%を超えたのをきっかけに25日までの18日間で60%を割ったのは6月23日(58.3%)しかなく、18日間の不明率は62.8%に達している。都のデータでは、6月25日現在の7日間移動平均値は114.5%と増加傾向を示している。
隈研吾氏の〝十八番〟外観は吉野杉のルーバー 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ
「鍋島松濤公園トイレ」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団)
日本財団は6月24日、誰もが快適に使⽤できる公共トイレを渋⾕区内17か所に設置するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」の9カ所目となる、建築家・隈研吾氏がデザインした「鍋島松濤公園トイレ」のメディア向け見学会を行い、同日から⼀般利⽤を開始した。
タイトルは「森のコミチ」で、緑豊かな松濤公園に、集落のようなトイレの村をデザイン。ランダムな角度の耳付きの吉野杉の杉板ルーバーに覆われた5つの小屋は「森のコミチ」で結ばれて森の中に消えていくというもの。
⼦育て、着替え、車いすなど多様なニーズにあわせて、村を構成するひとつずつのトイレの、プラン、備品、内装も異なるそれぞれの個室を分棟とすることで、公園に開かれた⾵通しの良い、通り抜けのできる「公衆トイレの村」としている。
隈研吾氏は、「今回様々な候補地がありましたが、⼀番緑の深い鍋島松濤公園に設計することで、これまでの公共トイレのイメージを払拭できると思い、この場所を選びました。トイレだけでなく、動線となる道も含めて設計しています。建築物に加えて、その周辺の環境など、トータルな体験として捉えていただければと思います。 また、従来の公共トイレは全て均⼀なデザインでしたが、今回はお子さんが利⽤できるトイレや、イベントの多い渋谷の街に合わせて着替えができるトイレなど、小さな5つのトイレを設計しています。これまでの公共トイレと異なり、様々な人に使⽤いただける点も大きな特徴です」と述べた。
⽇本財団常務理事・笹川順平氏は、「プロジェクトは、今回の鍋島松濤公園トイレで9か所⽬になります。このプロジェクトは建築までが半分、適切に維持管理しながらご使⽤いただくことが残りの半分だと考えています。従来の公共トイレに持たれている〝暗い・汚い・臭い・怖い〟といったイメー ジを取り払うモデルケースになることを⽬指すべく、ご使⽤いただく皆さまにもご協⼒いただけますと幸いです」と語った。
「THE TOKYO TOILET」は、日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴であるはずの公共トイレが利用者に不評であることから、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使⽤できる公共トイレを2021年秋までに区内17カ所に設置するもの。プロジェクトには建築家の隈研吾氏、伊東豊雄氏、安藤忠雄氏、坂茂氏、槇文彦氏、クリエイティブディレクターの佐藤可⼠和氏など16人の専門家が参画している。トイレの設計施⼯は⼤和ハウス⼯業、現状調査や設置機器・レイアウトの提案はTOTOが担当している。
THE TOKYO TOILETの特設ウェブサイトはhttps://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/thetokyotoilet
撮影:永禮賢氏、提供:日本財団
撮影:永禮賢氏、提供:日本財団
※以下は全て記者写す
◇ ◆ ◇
上段は、日本財団のプレス・リリースをほとんどコピペした記事だ。隈氏は、実際にはたくさん面白い話をされた。忠実に再現したいのだが、申し訳ない。その後、別の取材があり、うちに帰ってから酒も入ってしまったので、記事を書けなくなった。
とりあえず、写真だけを紹介します。続きは明日、明後日にします。
(続き)
隈氏の木の格子デザインはたくさん見学してきたので、今回も鉄やコンクリではなく木がふんだんに採用されているのではないかという予感はあった。その通りだった。ただ、使用されている木の名前はわからなかった。スギのようには見えたが、木目が密で、記者の田舎・三重のスギとは異なっていた。
直接、隈氏から吉野杉であることを聞き、納得もした。三重のスギも美しいと思うが、関係者の間では吉野杉のほうが建築材としては使用部位にもよるが優れていると評価されているのだろう。
トイレの個室に採用されているメタセコイア、サクラ、コナラ、ケヤキ、イチョウなどの木片は、「相模原津久井産材」の廃材・端材になるものをそのまま生かしたことも聞いた。
素晴らしい公園トイレに仕上がったのは、隈氏と笹川氏のやり取りからもよく伝わってきた。
公衆トイレについて隈氏は、「1990年にバブルがはじけて、東京の仕事が全部キャンセルとなり、仕事がなくなったとき、いちばん最初に頼まれた仕事は高知県の梼原(ゆすはら)町の公衆便所でした。町長さんから『隈さん、公衆トイレの設計できる? 』と聞かれ、『公衆便所すごく得意です』と答えました。木を使った建物の設計は公衆便所から始まりました。私の人生にとっても大きな転機でした。30年たってもう一度公衆便所に出会え、公衆便所を通じて新しい都市像を提案できた。縁の深さを感じている」と語った。
笹川氏は、「最初に先生の事務所に伺い、依頼したときは断られると思ったが、『これまで関わったプロジェクトの中で一番面白そうだ』と仰っていただいて、とても嬉しかった。これまでの9か所のプロジェクトの中で自然との共生をテーマにしたのは今回が初めて。もっと驚くことに、トイレを楽しもうというコンセプトも今回が初めて」と返し、嬉しさを隠しきれない様子だった。
高知県梼原町は、隈氏の作品がたくさんある町として知られているが、公衆トイレが最初の案件だったのを初めて知った。
隈氏はまた、自らが審査委員長となり、在学生を対象とした東大赤門脇のトイレデザインコンペを行い、採用案も決定したと話した。
この件に関し、ネットで調べた。隈氏は講評として次のように述べている。
「小さな公共トイレを入り口にして、これほどに深い世界にはいってゆけるとは、僕自身正直なところ全く予想していなかった。
『インクルーシブな社会の実現』が重要であるということについて、反論する人はいないであろう。しかし、その総論に賛成な人も、それが具体的にどんなトイレのプランニングになり、どんなデザインになるべきかと問われると、はたと考え込んでしまうだろう。それほどに、僕らは無意識にトイレを使い、無意識に様々な人たちをエクスクルード(排除)したり、差別したりして、毎日を過ごしているのである。建築に携わり建築を作っている人間が、実はその問題に対して最も無意識で、無知であったかもしれない。
審査していて、その事実をつきつけられ、僕自身にとっても貴重な体験をさせていただいた。
大学という場所は、専門家を育てる場所である以上に、専門家が傲慢と偏見に陥りやすいことを教えるべき場所でもある。今回のコンペは、小さなトイレを通じて、そのとても大事なことを発信できたように、僕は感じた」
この隈氏の言葉は重くて深い。これまで9か所すべてのトイレを見学してよかった。「THE TOKYO TOILET」プロジェクトは凄い展開を見せてきた。「無意識にトイレを使い、無意識に様々な人たちをエクスクルード(排除)したり、差別したりして、毎日を過ごしている」われわれの意識を劇的に変えるはずだ。
今回採用されたスギの学名「クリプトメリアヤポニカ(Cryptomeria japonica)」は「隠れた日本の財産」というではないか。隈氏の作品は5年、10年、20年と時間が経過することで色合いが変化し、周囲の風景によく馴染み、同化していくに違いない。
隈氏(左)と笹川氏
「鍋島松濤公園」入口
〝汚い・臭い・暗い・危険〟公共トイレ利用率13.5% 日本財団 18歳意識調査
安藤忠雄氏が担当した「神宮通公園トイレあまやどり」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団)
⽇本財団は6月22日、オリンピックを契機に⽇本の「おもてなし」⽂化としても注⽬の⾼まる「公共トイレ」をテーマに実施した「第38回18歳意識調査」結果をまとめ発表した。
調査は、2021年5月14日~18日、全国の17歳~19歳男女1,000名を対象にインターネットにより実施したもので、外出した際に公共トイレを利⽤すると答えた⼈は70.5%に上る⼀⽅で、設置場所によって利⽤率やイメージに大きな差があることが明らかになった。
調査によると、「デパートや映画館など商業施設内のトイレ」の利⽤率が57.1%ともっとも⾼かったのに対し、「公園内や歩道にあるトイレ」は13.5%と低い数字となった。「公園内や歩道にあるトイレ」は、他の設置場所と⽐べ「汚い(67.6%)」、「臭い(28.6%)」、「暗い(23.4%)」、「危険(22.8%)」といったネガティブなイメージが特に強く、「綺麗」や「安全」といったポジティブなイメージを想起する⼈は約3%に留まっている。
とりわけ、⼥性の場合は「危険(27.2%)」というイメージを持つ⼈が多く(男性では18.4%)、安全⾯や防犯⾯の改善を求める声も多く寄せられた。
公共トイレの現状が「おもてなし」⽂化の象徴としてふさわしいかという質問には約3 割が「そうは思わない」と回答。その理由として掃除不⾏き届き(71.2%)、⼊ろうと思えないような外観(36.9%)、盗難などの利⽤者のモラル(30.3%)などが挙げられた。
◇ ◆ ◇
「公共トイレ」が嫌われているのは、国土交通省などの調査でも明らかになっているが、若い人も同じであることを今回のアンケートは示している。
だからこそ、記者は同財団の渋谷区の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトを支持し、応援したい。6月24日には、隈研吾氏が設計・デザインを担当した「鍋島松濤公園トイレ」が公開される。隈氏は何を語るか楽しみだ。
「THE TOKYO TOILET」の第1号が開設されてからもうすぐ1年が経過する。同財団と渋谷区には、他の公共トイレと比べ、利用者にどのような変化があったか、維持管理費などはどれだけ差があるのか公表してほしい。
コンセプトは温故知新 デザインはNIGO®「神宮前」 日本財団 渋谷区公園トイレPJ(2021/5/31)
三井不レジ・野村不・三菱地所レジ JR三河島駅前の再開発 都市計画決定
三井不動産レジデンシャル、野村不動産、三菱地所レジデンスは6月21日、事業協力者として参画している「三河島駅前北地区第一種市街地再開発事業」の都市計画が同日決定されたと発表した。住宅予定戸数は約760戸(一般住宅、シニア住宅)。2026年度の竣工を目指す。
同事業は、JR常磐線三河島駅北側に位置する老朽化した木造建築物が多い約1.5haの区域で、再開発により駅前にふさわしい拠点性・利便性を備えた施設として住宅・商業・業務施設・体育館を一体で整備する。
これまでの経緯は、1999年1月に協議会発足、2004年6月に準備組合設立が設立されている。2022年度に再開発組合設立認可(予定)で、2023年度に建築工事着工(予定)、2026年度に竣工(予定)する。
三菱地所「丸の内ストリートギャラリー」 オールナイトニッポンで音声ガイダンス
三菱地所と彫刻の森芸術文化財団は6月21日、「第42回丸の内ストリートギャラリー」の作品全16点中13点を対象に、有楽町に本社を構えるニッポン放送の「オールナイトニッポン」とのコラボ企画として、同番組パーソナリティによるアート作品の音声ガイダンスサービス「丸の内ストリートギャラリーガイダンスproduced by オールナイトニッポン」第3弾を開始したと発表した。
同企画では、丸の内仲通り各所に配置されたアート作品の台座にある二次元コードをスマートフォンで読み取ることで、各パーソナリティが作品を紹介する音声ガイダンスを聴くことができる。
音声ガイダンスを担当するのは女優・歌手・タレントのファーストサマーウイカ、HIPHOPユニット・Creepy Nuts、フリーテレビプロデューサー佐久間宣行、お笑いコンビ・三四郎、お笑いコンビ・マヂカルラブリー、YouTuber芸人のフワちゃんの各氏。
三菱地所は、1972 年から丸の内仲通りに彫刻を展示する「丸の内ストリートギャラリー」を実施しており、「第42回丸の内ストリートギャラリー」はその一環。
同企画は2022年3月末まで実施する。公式サイトはURL:http://www.allnightnippon.com/project/marunouchi/
「われは南瓜」(草間彌生)
「コズミック・アーチ'89」(鹿田淳史)
Hard Boiled Daydream (Sculpture/Spook) #1」(金氏徹平)
◇ ◆ ◇
いい企画だ。コロナ禍で外出もままならないが、記者は東京駅に行ったら、三菱一号館美術館の広場に面した丸の内ブリックスクエア1階のワインバー「マルゴ丸の内」に寄ることにしている。オープンタイプなので安心して安くておいしい、ほかなら倍くらいの値段のワインが飲める。
この広場には、公式サイトにも紹介されているアギュスタン・カルデナスの「拡散する水」(カラーラ産 白大理石)、エミリオ・グレコの「うずくまる女」(ブロンズ)、バーナード・メドウズの「恋人たち」(ブロンズ)が展示されている。
バーナード・メドウズ「恋人たち」
エミリオ・グレコ「うずくまる女」
アギュスタン・カルデナス「拡散する水」
「街の欠片」(記者写す)
「街の欠片」(記者写す)
三菱一号館美術館前の広場(「マルゴ丸の内」から撮影。「拡散する水」も写っている)
埼玉県 緑被率最低0.04の蕨市とワースト4の0.18の戸田市で異なる街路樹の量と質
写真①(左側が「KITATODA SOLID」の建設現場)
タカラレーベンが分譲中の埼京線「北戸田駅」圏3物件を見学した。駅から徒歩12分「KITATODA ATOMOS」72戸、駅から徒歩9分「KITATODA LUMINOUS」33戸、駅から徒歩7分「KITATODA SOLID」36戸だ。いずれもよく売れているのだが、面白いことに、この3物件の所在地は「ATOMOS」がさいたま市、「LUMINOUS」が戸田市、「SOLID」が蕨市と全て異なる。行政界が異なることで価格、購入者にも微妙な影響を与えているのだが、3物件の現場を歩いて、街並みの違いにも気づいた。その量と質の違いから先に書く。
写真②(左の「KITATODA SOLID」側と道路を挟んだ対面の街路樹の樹種が異なるのか剪定前なのか)
◇ ◆ ◇
西武池袋線秋津駅は、駅そのものが東京都と埼玉県の都県またぎになっており、さらに東村山市、清瀬市、所沢市の3つの市境にもなっているのはよく知られているが、今回の「北戸田」駅もよく似ているのはまったく知らなかった。
3物件間の距離はそれぞれ歩いて10分前後か。道に何度も迷い、休憩を挟みながら歩いたために2時間くらいかかり、万歩計は1万歩を軽く超えた。
戸田市の「LUMINOUS」、さいたま市の「ATOMOS」の見学を終え、最後の「SOLID」に向かう途中、行政界が変わったためか、街路樹に明らかな変化が表れた。
写真①②③は、敷地東側と南側に都市計画道路が走っている「SOLID」の東側道路の南北に伸びる錦町富士見線の街路樹を写したものだ。コンクリートの植栽マスにサツキツツジとは異なる低木が植えられており、その上に丸く剪定されたサザンカが植えられていた。
冬場に美しい花を咲かせるサザンカは歩道や垣根などにはよく用いられるが、街路樹として植えられているのを見たことはない。垣根などで見る樹高はせいぜい2~3mだ。樹形も面白く、葉っぱは丸く剪定されていた。
このような街路樹もありかと不思議に思いながら、道路を右折した。「SOLID」の所在地は蕨市だが、敷地のすぐ裏に戸田市との市境が走っており、敷地南側は東西に伸びる蕨中央通り線だ。
これまた不思議なことに、錦町富士見線には先に紹介したサザンカの街路樹が植わっているのに、蕨中央通り線の蕨市の中心街に向かうところには最近植えられたような〝貧弱〟な街路樹しかないことだ。(写真④)
ところが、数十歩も歩かないうちに、だしぬけに立派なブルーパシフィックと思われる地を這う樹木とカツラの街路樹が目に飛び込んできたる。(写真⑤)
行政界が異なるといってしまえばそれまでだが、街並みの連続性は無視されていた。
写真③
写真④(蕨市側)
写真⑤(戸田市側)
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これまで埼玉県の貧しい「緑」環境については戸田市、三郷市、越谷市、八潮市、白岡市などを記事にしてきた。県の「緑の量と県民意識の相関関係の調査」の市町村別緑被率によると、前段で紹介した蕨市は0.04で圧倒的な最下位だ。以下、ワーストランキングは0.11の草加市、0.15の川口市、0.18の戸田市となっており、さいたま市も下から13番目の0.37となっている(県平均は0.67)。
緑被率の低さは住民の緑の満足度にもストレートに表れており、最低が八潮市で草加市-蕨市-桶川市-川口市-越谷市-戸田市-久喜市などとなっている。
ところが、不思議なもので、蕨市民のアンケート調査では環境に対する満足度は高く、「公園や街路樹等の緑が豊か」とする意見が176 件(有効回答573件)ともっとも多く、「公園や緑の不足」を指摘している人は15件しかない。
県と蕨市のアンケート調査結果がこれほども差が出るのかはともかく、市が行った事業者アンケートでは、環境に配慮した取り組みを実施する上での問題点として「手間や時間がかかる」が42.4%、「費用がかかる」が39.4%もあったのは残念だ。
「緑」に関する意識の差なのだろうが、蕨市、戸田市、北戸田が最寄り駅のさいたま市南区には第一種も第二種も低層住居専用地域は1か所もない。アルヒ「本当に住みやすい街大賞2020」第1位の川口にも、川口駅から徒歩圏には低層住居地域はない。逆に、これらの市には工業系用途地域はかなりの比率を占める。
住宅地として人気が高い東京都世田谷区と比べてみよう。同区の用途地域は、第一種低層住居専用地域が全体の51.3%を占め、第二種低層住居専用地域の1.5%を合わせ52.8%が低層住居専用地域で、その他の住居系を合わせ実に91.3%を占める。商業地域は7.7%で、工業系は1.0%にしか過ぎない。緑被率は平成28年度時点で23.56%。同市は2032年度までに33%を目指している。
区は2018年から都市緑地法に基づく緑化地域制度を導入しており、建ぺい率60%地区の敷地面積300㎡~500㎡には10%以上の緑化率を、敷地面積150㎡~200㎡未満には中木3本の植栽をそれぞれ求めている。
蕨市はどうか。同市の開発指導要綱では、500㎡以上の開発行為に対して事業区域の5%以上の緑化を求めている。つまり世田谷区の半分だ。
緑の多寡が街のポテンシャルを大きく左右する。埼玉県には県を挙げて緑化に取り組んでほしい。
〝都心に戸建てを〟オープンハウス 〝一家に1本の樹を〟プロジェクト始動(2021/6/15)
貧弱な戸田市の緑・街路樹 市民の満足度が上がらないのは行政の責任(2012/3/13)
街路樹比較 戸田市は35人に1本 多摩市は15人に1本の割合(2012/3/14)
続々「街路樹が泣いている~街と街路樹を考える」 支離滅裂の「新三郷」(2014/10/24)
続「街路樹が泣いている~街路樹と街を考える」流山と越谷、三郷の差(2014/10/17)
貧しい街路樹 低い緑被率 「緑」に対する市民の不満率44% 「八潮らしさ」を考える(2020/2/15)
樹齢30年以上 戸建てより低く〝伐採〟された「白岡ニュータウン」のケヤキの街路樹(2016/4/27)
コロナ感染経路不明6割超はなぜ/高齢者の感染割合低下くっきり
新型コロナの緊急事態宣言期限の6月20日まであと3日となった。政府は、沖縄を除く他の都府県の宣言を解除し、まん延防止等重点措置に切り替えると伝えられている。記者が気掛かりなのは、感染経路不明比率がこのところずっと6割を超えていることだ。
6月8日(火)から6月15日(火)の8日間の東京都の感染者は3,000人で、このうち感染経路不明者は1,927人、経路不明比率は64.2%に達している。国の基準では「感染者が急増」「医療供給体制に支障」段階のステージⅢに該当する。
経路不明比率は、大阪府が60%を超えるなど他の道府県でも上昇傾向にあり、気になる材料だ。その理由は、感染率が高いとされる変異株の影響なのか、あるいは感染症対策業務に追われている医療・介護現場や保健所が疲弊しているためか、積極的疫学的調査に限界があるのか、厚労省はきちんと説明すべきではないか。
この問題について考えるヒントを日本看護協会が与えている。同協会会長・福井トシ子氏は4月23日、国民と同協会会員向けに発信したメッセージの中で、医療・介護現場からの「悲痛な叫びに胸が締め付けられる」「(医療・介護現場は)限界に近付いている」と語っている。
また、同協会は令和4年度税制改正要望の中で、看護職員は2人にひとりの割合で何らかの暴力・ハラスメントを受けており、さらに労災支給決定事案のうち看護師の精神障害割合が高く、そのほとんどが女性で約半数は30代以下としており、ストレスの要因は患者からの暴力や悲惨な目撃が8割、発生時刻は深夜が多いと、深刻な勤務環境の改善を求めている。
経路不明比率が5割を割らないのは、このような保健所を含めた過酷な医療・介護現場の労働環境にもあると思わざるを得ない。
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高齢者のワクチン接種が進むにつれて感染者に占める高齢者の感染比率が低下傾向にあるなど、光明も見えてきた。
別表・グラフに70歳以上の感染者と感染比率を示した。これによると、5月下旬までの比率は10%前後で推移していたが、6月に入ってからは7%を割る日が多くなっている。今後は職域接種の効果も期待できそうだ。
大和ハウス 森林破壊ゼロに向けた4つの方針決定
大和ハウス工業は6月16日、同社の環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」の実現に向けた新たな取り組みとして、森林破壊ゼロの達成に向けた4つの木材調達の方針を策定したと発表した。
今回策定したのは、①森林破壊ゼロの方針を策定しないサプライヤーからの木材調達は原則禁止②人権問題に関する方針を策定しないサプライヤーからの木材調達は原則禁止③トレーサビリティが確保された木材のみを調達④これまで木材調達調査の対象としてきた構造材や下地面材、桟木、フロア材に加えて、型枠合板パネルや主要設備、建具、クロスも追加-の4項目。
同社は2010年10月、森林破壊ゼロに向けた木材調達の取り組みを開始。森林管理の国際機関による認証を受けた木材や再生木材などの利用を推進しており、同社グループの評価基準に基づくSランクの木材比率は2019年度には約94%まで向上している。
「Challenge ZERO 2055」では、創業100周年となる2055年までにグループ、グローバル、サプライチェーンを通じて「環境負荷ゼロ」の実現を目指しており、2030年までに建設する建物における木材の調達に伴う森林破壊をゼロにし、2055年までに全事業における材料調達による森林破壊を根絶することを目指している。
われわれはAIにひれ伏すのか SREのAI査定価格と成約価格比較レポートに疑問
ソニーグループ発のSREホールディングスが経済産業省と東京証券取引所の「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2021」のグランプリに日立製作所とともに選定されたことを一昨日紹介した。名だたる大企業を抑えてわが業界からグランプリを獲得したのはとても嬉しいのだが、この会社のことはいま一つよくわからないところがある。
同社は選定発表の3日前の6月4日、「首都圏の駅別中古マンション価格騰落率を調査」と題するニュースリリースを発表しているが、これが実に不可解。なんだかAIに翻弄・嘲笑されているようで気分がよくない。不動産流通業は労働集約的な業種だと思っていたが、AIが幅を利かす時代に突入したのか。
調査は、駅から徒歩15分以内、築5~15年、専有面積50㎡以上、間取り1R以外という条件を設定し、2020年1~3月の中古マンション成約価格と2021年3月末時点での不動産価格推定エンジンを用いたAI査定価格を70㎡換算して比較し、その騰落率を算出したというものだ。
ランキングとして発表されているのは首都圏175駅圏で、調査は住宅評論家の櫻井幸雄氏と共同で企画し、調査結果の分析を同氏が行ったともある。
このレポートを読んで疑問に思ったことがある。レポートには「中古マンション成約価格」の元データに関する説明がないことだ。同社の企業規模からして首都圏175駅圏の成約価格を得ることは不可能なはずだし、同業から異端児扱いされている同社が他の大手不動産流通会社から成約価格の情報提供を受けることなどもありえない。成約価格の元データを明らかにしないのは調査レポートとして体をなさない。
記者は、成約価格はレインズ情報によると推測するのだが、レインズは「レインズから取得した成約情報は、購入や売却等を検討する顧客に対して取引価格を設定する場合の『意見の根拠』としてのみ明示することができる」としており、成約情報を広告・宣伝などに利用することを禁じている。レポートは広告・宣伝ではないにしろ、釈然としないものを感じる。
さらに腑に落ちないのは、成約価格とAI査定価格を比較することの可否だ。AIであろうと宅建士であろうと査定価格をいくらにするかは勝手だろうが、それと成約価格を比較することの意味はどこにあるのか。業界では成約価格より査定価格が1~2割高くなるのは常識だ。むしろ、中古市場が好転していることを考えれば、騰落率が100%以下の駅圏が47もあるのが不思議だ。
ランキングとして発表されている具体的な駅圏についても触れてみよう。
同調査によると、騰落率が139.9%でトップの西武池袋線ひばりケ丘の成約価格は3,376万円(坪単価159万円)で、AI査定価格は4,723万円(坪単価223万円)となっている。
ひばりケ丘駅圏の成約価格が坪159万円というのは〝安い〟と感じなくもない。同駅に限らず西武池袋線は新築も中古も他の沿線に比べ〝割り負け〟していると記者は思っている。
一つ例示する。2007年に分譲された駅前の西武不動産販売他「ひばりタワー」322戸だ。記者は当時、各地のタワーマンションが相次いで高値を更新していたのを考慮し、坪単価は300万円前後と予想したが、実際に分譲されたのは坪285万円くらいだったはずだ。高額住戸は完売までかなり時間がかかった。
いまこの「ひばりタワー」をAIに査定させたら坪250万円くらいではないか。しかし、平均坪単価223万円というのはありえない価格ではないか。
もう一つ、西武池袋線と同じように〝割り負け〟が著しいわが京王相模原線の京王多摩センター駅圏はどうか。レポートでは、成約価格は3,804万円(坪単価179万円)で、AI査定価格は3,701万円(坪単価174万円)となっており、ランキングでは156位だ。
駅近の免震「ザ・パークハウス 多摩センター」は「ひばりタワー」に負けない坪250万円くらいで、街のポテンシャルは多摩センターのほうが上だと思うが(もちろん異論もある)、AI査定価格はひばりケ丘駅が坪223万円で、京王多摩センターは49万円も安い174万円なのか。AIに〝根拠を示せ〟といえば答えてくれるのか。
ランキング2位の日暮里駅のAI査定手価格7,566万円(坪単価357万円)というのは新築並みの価格だ。これもあり得ない。
同社のホームページには「業界最高水準の精度を誇るAIが、人間では処理できないほどの大量なデータや様々な条件から売却の推定価格を算出します」とある。
その結果、今回の査定価格がはじき出されたとしたら、われわれには反論の余地はないのか。DX銘柄審査員は同社を「破壊的なビジネスモデル」と絶賛した。われわれはAIにひれ伏し、盲従していいのかというひねくれ根性が頭をもたげてくる。
そういえば、「DX注目企業2021」(カスタマーケア部門)に選定された東急不動産ホールディングスの東急リバブルは同社の「投資用区分マンションAIマッチングシステム」が「営業経験5年以上の担当者が行う物件選定と遜色ないレベルを実現したと発表した。同業他社も含めAI同士、さらに宅建士を交えて戦ったらどこが勝つのか、雌雄を決してほしい。小生が知るRBA野球関係者の宅建士はAIに絶対負けないと信じる。
DX銘柄2021グランプリ 日立製作所とともに不動産業のSREホールディングス(2021/6/8)
ヤフー&ソニー不 〝マンション流通革命、はじまる。〟サービス開始(2015/11/5)
東急リバブル 営業職5年以上と遜色ない物件選定AIマッチングシステム開発・稼働(2021/3/31)
「サ高住の最高峰 浜田山」を超える 三井不動産 36階建て421室「西麻布」着工
「(仮称)パークウェルステイト西麻布計画」
三井不動産レジデンシャルは6月7日、同社のサービス付き高齢者向け住宅シリーズ「パークウェルステイト」初の都心立地の最高峰フラッグシップ物件「(仮称)パークウェルステイト西麻布計画」を5月31日に着工したと発表した。2024年秋の開業を予定している。
物件は、港区西麻布4丁目の敷地面積約約7,018㎡、36階建て延べ床面積約45,977㎡。居室数は421室(一般居室361室、介護居室60室)、専用面積は約39~約142㎡台。着工は2021年5月、竣工予定は2024年夏。設計・施工は大林組。外観デザインは日建ハウジングシステム、ミサワアソシエイツ一級建築士事務所、インテリアデザインは日建スペースデザイン、外構デザインはSWA Group、照明デザインはシリウスライティングオフィス、介護・看護パートナーは東京海上日動ベターライフサービス、医療連携は医療法人社団慶永会。
計画では、港区西麻布四丁目の視認性高い立地に位置した36階建て総居室421室の大規模シニアレジデンスにふさわしい品格のあるデザインに加え、六本木通りに面して常緑樹を多く植栽するなど周辺環境にも配慮し、共用空間にはラグジュアリーホテルのようなロビーラウンジやライブラリーなどを配置、約2,200㎡のプライベートガーデンも整備する。
また、最上階の2層吹き抜けダイニングでは、有料老人ホームとしては初めて帝国ホテルに調理・サービス提供を委託する予定しているほか、慶應義塾大学病院と連携したクリニックの開設をはじめとする医療・介護サービスを行う。
再生可能エネルギー活用などのCO2 排出量削減対策や非接触型セキュリティなどを導入して感染症対策にも取り組む。
このほか、「パークウェルステイト」は、2019年に開業済みの「浜田山」(東京都杉並区)のほか、「鴨川」(千葉県鴨川市)「千里中央」(大阪府豊中市)「麻布計画」(千葉県千葉市)が2024年秋までに開業する予定。
水景
ダイニング
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同社のサービス付き高齢者向け住宅第一弾「パークウェルステイト浜田山」を見学している。見出しに〝サ高住の最高峰〟と書いたが、「西麻布」は立地条件やサービス内容からして賃料は「浜田山」を上回るのは間違いない。「最高峰」を超えるものにふさわしい見出しは見つからない。「雲上」しかないのか。
設備仕様レベルについては「浜田山」が参考になるはずで、そちらの記事を参照していただきたい。
サ高住の最高峰 月額賃料は約94万円(59㎡) 三井不レジ「浜田山」竣工(2019/5/29)