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 東急リバブルは7月21日、同社ホームページ上で展開している「スピードAI査定」機能に、これまでマンションに限定していた対象物件を拡大し、 一戸建・土地の査定も可能にしたと発表した。

 同社は2020年10月からマンションの査定価格を瞬時に算出する「スピ ードAI」を導入している。一戸建や土地はマンションに比べ物件の個別性が高く、一般的にAIによる査定が困難と言われてきたが、同社は過去10年間の市場売り出し価格データ(データベース会社からの提供)を基に、同社の営業担当者が直近1年間で実際に査定したデータや公示地価・路線価のデータも統合することにより、査定価格を瞬時に算出できる独自のAI査定を実現したという。

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 同社は今年3月、リバブルの営業経験5年以上のベテランと遜色ないレベルの「投資用区分マンションAIマッチングシステム」を開発し、本格稼働すると発表した。

 投資用マンションは、一般的なマンション査定とは異なり、利回りを最優先するのでAIがベテラン営業マンと同レベルの査定能力を発揮するのはありうることだと記者は理解したが、戸建てにも採用するというのにはさすがに驚いた。

 マンションも同様だが、戸建てはまさに玉石混交。再建築不可の既存不適格建築物も少なくなく、築後20年以上の中古戸建ての建物価格はほとんどセロと査定されている現行の商習慣をAIはどうするのか、戸建てと切り離せない街並みの評価はどうなるのか、どうして成約価格でないのか、安心R住宅とそうでない物件はどの程度の差額となるのか、宅建士の資格取得を考えているのかどうか、成績不振の営業マンは職を脅かされるのかどうか…興味は尽きない。

 昨日はリストの高額マンションに特化したAI査定システム「mAI List(マイリスト)」と対決してきた。勝ったか負けたかは、AIは応答せず(弱点はしっかり確認した)、AIの個人情報もあるだろうし、自尊心を傷つけるのも失礼だと判断し、原稿は事前に同社の優秀な担当者にチェックしてもらってから掲載することにした。週明けにも発表できるはずだ。

 東急リバブルのAIとの対決もしたい。同社にも取材を申し込んだ。AIは応じるだろうか。同社には、電話をしながら書類などのチェックを行い、同時に目の前の部下にも適切な指示を出す、同時に3つも4つもの仕事をこなした伝説の営業マンを目の当たりにしたことがある。この伝説の男のAIに対する評価も聞いてみたい。

 各社のAI同士で査定能力を競ったら面白いと思うが、この記者の挑発に各社のAIは乗るだろうか。他社のAI査定を狂わし、攻撃を加えるAIをAIが開発することは可能のような気がする。そうなったら業界は大混乱し、消費者もまたパニック状態に陥るのではないか。

東急リバブル 営業職5年以上と遜色ない物件選定AIマッチングシステム開発・稼働(2012/3/31)

カテゴリ: 2021年度

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「LIXIL PARK」

 LIXILは2021年7月21日(水)~9月5日(日)、「安心と快適を、すべての人に。」をコンセプトに、多様なニーズに対応した誰もが使いやすいトイレを設置した「LIXIL PARK」をフジテレビ1F広場で開催する。20日、報道陣に公開した。

 「LIXIL PARK」は、SDGsを推進するフジテレビジョンが主催する「THE ODAIBA 2021」の一環として実施するもので、「安心と快適を、すべての人に。」をコンセプトに、機能分散の考え方を取り入れ、車椅子使用、人工膀胱や人工肛門を造設したオストメイトの人、乳幼児連れの人に配慮した7種類の個室を用意。また、トイレ以外にも授乳室やカームダウン・クールダウン室も備えている。

 設置に当たっては、どんな場所にも設置可能、利用目的に応じて自由に空間形成が可能の可動式アメニティブース「withCUBE」を活用している。

 開催にあたり、40年以上もバリアフリー、ユニバーサルデザインを研究している東洋大学名誉教授・髙橋儀平氏は次のようにメッセージを寄せている。

 共生社会のトイレは個の尊厳が守れるトイレでなければなりません。つい数年前までは、何とか高齢者や車椅子使用者、乳幼児連れの方、オストメイトの方が利用できるようにと1つのブースにあらゆる設備を投入した、「バリアフリートイレ」「だれでもトイレ」がトイレ整備の基軸でした。近年では男女共用のバリアフリートイレに性的マイノリティの方、発達障害者や高齢者の介助者同伴による利用が加わっています。性別に関係なくストレスフリーで利用できるトイレブースが他にないからです。社会環境のバリアフリー化の進展とともに「バリアフリートイレ」への利用集中が増していました。そうすると広いスペースしか使えない車椅子使用者は行き場を失います。

 そこでダイバーシティの環境づくりを目指す私たちは、可能な限り個人の尊厳を守るために、多機能トイレや内部にある設備を利用者の特性ごとに他のブースに分散し、安心して選択できる個のトイレへとシフトしたのです。 

 「withCUBE」がこれからの社会の新たなトイレづくりの指標になると確信しています。

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ベーシック

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オストメイト配慮

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車椅子使用者配慮

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授乳室

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非接触パネル

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カームダウン・クールダウン室

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髙橋氏

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 記者は、一昨年からトイレの取材をするようになった。マンションや戸建てではどのような仕様になっているかチェックするようになった。日本財団の「THE TOKYO TOILLET」プロジェクトの完成した11のトイレも全て見学取材した。

 カームダウン・クールダウン室の提案はいい。さらに言えば、安全性をどう確保するか課題はあるが、少し横になれるとか、飲料水が飲める自販機を設置するとか、食事ができるとか機能を増やせば利用者は増えるはずだ。

 機能分散について。多機能トイレ・だれでもトイレは、普通の人も利用するから、障がい者など必要な人が使えないという問題が発生する。トイレだけでなく道路も建築物もバリアだらけだ。バリアフリー・ユニバーサルデザインの視点から総合的に考えないといけないと思う。

森に溶け込む淡い7色きのこ 伊東豊雄氏担当の日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/7/16)

「トイレは経営の問題」哲学の一端を垣間見た「ラスカ平塚」 トイレ考Ⅲ-4(2021/4/19)

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常盤橋タワー全景(街区南側より)

 三菱地所は7月19日、東京駅前の再開発プロジェクト「TOKYO TORCH」の第一弾「常盤橋タワー」が6月30日に竣工したのに伴う内覧会を行った。冒頭、同社執行役社長・吉田淳一社長は「日本はもちろん世界に誇れる新しいシンボルの第一歩となるビルが完成した。日本を明るく元気にする、新たな価値を創造する場として育てていく」とあいさつした。内覧会には約90名のメディア関係者が参加した。

 現段階で丸の内・大手町エリア最高峰となる高さ212mの38階建て「常盤橋タワー」は、オフィスフロアのうち2フロアを就業者向けの共用空間として整備し、共用空間で人との出会いやつながりを生み出す就業者向けチームビルディング・マインドリッチプログラムの実施するほか、就業者専用アプリ「TOKYO TORCH App for 常盤橋タワー」を導入して館内共用スペースの予約/カフェテリアでの注文・決済/非接触セキュリティを可能にし、ロボット実装による施設管理の高度化を図り、「先進的なオフィストイレ」を導入する。

 街区中央に位置する約7,000㎡の大規模広場「TOKYO TORCH Park」には、地方と連携した「錦鯉が泳ぐ池」(新潟県小千谷市)、「佐渡島の金鉱石」(新潟県佐渡市)、「つくばの天然芝」(茨城県つくば市)、「うるおいある緑化空間」(静岡県裾野市)も設けられている。

 地階から3階の商業ゾーン「TOKYO TORCH Terrace」には、日本初出店1店舗/東京初出店4店舗/新業態5店舗を含む13店舗が7月21日から順次オープンする。飲食店舗は「TOKYO TORCH Park」を望むテラス席を備えている。

 環境配慮では、国内の都心複合ビル開発プロジェクト初のゴールド認証のSITES®予備認証、DBJグリーンビルディング認証(申請中)、SEGES、ABINC認証を取得している。

 入居テナントはクラレ、東京海上ホールディングスグループ、古河電気工業グループなど9割が入居決定済み。

 施設は、地上38階・地下5階建て(高さ約212m)延べ床面積約146,000㎡。着工は2018年1月。設計監理は三菱地所設計。施工は戸田建設。約8,000人が就業する。「TOKYO TORCH」の全体完成は2027年度。わが国最高峰の地上63階建ての「Torch Tower」の施工は未定。

 吉田社長は、「コロナの影響を受けリモートワーク、在宅勤務が増え、効率化、時間ロスをなくすよさが認識され、IT系企業を中心にオフィス面積を縮小する動きがある。しかし、ここにきて、社内外の人と心を開いてコミュケートし、オーブンイノベーションを起こす働く場、コミュニケーションの場、イノベーションを起こす場としてのオフィスの重要性がアメリカを中心に世界的に再認識されつつある。常盤橋タワーには時間、空間の過ごし方など人間性が発揮できるオフィスのあり方新しい提案、工夫を行っている」と語った。

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TOKYO TORCH Terrace(街区西側より)

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エントランスロビー

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2F オフィスロビー(天井高は5m)

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Hall &Kitchen ゾーン

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Hall &Kitchen ゾーン

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就業者専用ラウンジ

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ラウンジ内厨房

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ラウンジ

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「テラゾウ」

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「TOKYO TORCH Park」

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「TOKYO TORCH Park」
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「TOKYO TORCH Park」

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スマートフォン認証

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吉田社長

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 記者は、オフィスビルのことはよくわからないのだが、これまで取材した範囲内では最高レベルではないかと思う。

 何が最高かといえば、同社の丸ビルや新丸ビル、三井不動産の日本橋の一連のビルにも採用されている100尺(31m)デザインが美しいのもさることながら、約7,000㎡の「TOKYO TORCH Park」だ。規模としては東京駅丸の内駅前広場と同じくらいで、丸の内・大手町エリアでは同社の「ホトリア広場」や東京建物の「オーテモリ」など素晴らしい緑空間があるが、こちらの方が緑の量と質で圧倒する。差し渡し1m、樹高にして20~30mはありそうな既存樹のケヤキの巨木が10本以上植わっている。

 2027年度完成予定の「Torch Tower」との間の幅45m×長さ120mの通路も再整備され、隣接する常盤橋公園と合わせれば2haの屋外空間が生まれる。都心部の緑のネットワークでは虎ノ門ヒルズ(オーバル広場)-オークラ庭園-赤坂インターシティと肩を並べるかもしれない。

 吉田社長が「わたしは存じ上げないが、値段の高いものは1億円するそうだ」と語った〝泳ぐ宝石〟といわれる錦鯉がまたいい。50匹が放たれそうだ。「佐渡島の金鉱石」は重さ2トン。値段を聞いたら「値は付けられない」とのことだった。ただの石ころか金銀が含まれているのか、錦鯉もそうだがこっそり盗もうとする悪党からどうやって守るのか気になった。

 もう一つ、素晴らしいのは3階と8階の共用部分だ。床、壁、建具家具などに自然素材をふんだんに用い、観葉植物もフェイクは一つもなかった。フェイクだらけだった「大手町パークビル」内の同社本社オフィスとは対照的だ。

 オフィスの標準階の天井高2850ミリというのは低くはないが、高くもない「並」と評価したが、1階エントランスから2階ロビーの吹き抜け空間は高さ13.5mあり、白が基調の2階ロビーがいい。壁材には、セメントに骨材や顔料を練り込んで、研ぎ出して仕上げる左官技術の美しい「テラゾウ」が多用されている。

 TOTOと協業した3階の先進的なオフィストイレを提案した「nagomuma restroom(ナゴムマ レストルーム)」は、男女とも個室ブースは六角形で、手洗いと鏡が付いていたのには驚いた。

 個室ブースを六角形にしたらデッドスペースは生じないのか疑問に思ったが、それよりも、入ったきり出てこなかったらどうするのか気になった。そこでストレートに聞いた。6分くらい経過したらブース内の照明を明るくし、退室を促すそうだ(坂茂氏の公園トイレのように外から見えるということではなさそう)。空き状況も表示するが、これなどはそれこそスマホであと何分したら空きそうだとか確認できるようにすれはいいと思うし、いっそのこと時間貸しで利用できるようにすれば予約が殺到し、行列ができるトイレとして評判を呼ぶのではないか。

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「TOKYO TORCH Park」

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「錦鯉が泳ぐ池」(新潟県小千谷市)

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「佐渡島の金鉱石」(新潟県佐渡市)

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「つくばの天然芝」(茨城県つくば市)

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「うるおいある緑化空間」(静岡県裾野市)

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nagomuma restroom [撮影:傍島利浩氏]

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「羽田市場」

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オープン記念の特別価格1500円のキンメの煮つけの定食(見本。右は記者が注文して飲んだノンアル―コールのビール。水槽の貝はミルガイ、サザエ、アカガイ、カキ、ツブガイ、ホタテ、ホヤ、アサリ、ホッキガイ、ミルガイ、アワビなど)

三菱地所 常盤橋PJの街区名称「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」に決定(2020/9/17)

 


 

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 東京都のコロナ感染者は、7月14日以降4日連続で1,000人を超えるなど、昨年末の第4波の感染爆発前夜と同様の様相を呈しているが、年代別では大きく変化しており、ワクチン接種が進むかどうかが感染抑制のカギを握っていることをデータは示している。

 別表・グラフは、第4波の感染爆発前夜の昨年12月20日から今年1月2日までの二週間の感染者約1.1万人と、今回の第5波の感染拡大が止まらない7月4日から7月14日の二週間の感染者約1.2万人の年代別・性別感染者数を都のオープンデータをもとに比較したものだ。

 感染者は約1,000人増加しているが、年代別では明らかにワクチン接種効果が顕著なのが分かる。70歳以上の感染者は昨年末では1,067人で、全体に占める割合は9.7%に達していたが、今年7月には349人へ67.3%も減少し、全体に占める割合も2.9%へ激減している。

 60歳代と50歳代も減少しており、昨年末と今年7月の比較では、60歳代は736人から502人へ234人、50歳代は1,509人から1,425人へ84人それぞれ減少。比率も60歳代は6.7%⇒4.1%へ、50歳代は13.7%⇒11.8%へ減少した。

 その一方で、若年層の増加が目立っている。20歳代は昨年末の2,984人から今年7月には3,846人へ862人増加したほか、30歳代は2,171人から2,477人へ306人、40歳代は1,751人から2,122人へ371人、10歳代は563人から895人へ332人、10歳未満は241人から509人へ268人それぞれ増加。

 全体に占める割合では、20歳代は27.1%⇒31.7%、30歳代は19.7%⇒20.4%、40歳代は15.9%⇒17.5%、10歳代は5.1%⇒7.4%、10歳未満は2.2%⇒4.2%へそれぞれ増加している。

 性別では、10歳代の女性が231人から462人へ倍増しており、10歳代男性を上回っており、10歳未満の男女とも倍以上に増加している。

 ワクチン接種が急がれる。

「職業不明」実に47% 「その他」も4500人 東京都のコロナ感染者の職業(2021/7/17)

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「木芽(もくめ)」vol.179(2021.春夏)

 日本木造住宅産業協会(木住協)の季刊誌「木芽(もくめ)」vol.179(2021.春夏)に掲載されている「公的統計データから『見える』建築物木造化の動向」を読んだ。定期的に発表されているデータのようだが、記者は知らなかった。多くの方に参考になるはずなので紹介する。

 公的統計データとは、国土交通省の建築着工統計調査で、同協会の女性スタッフが3日がかりで分かりやすく再整理したものだ。平成18年度から令和2年度の15年間の全建築物の全棟数、床面積、うち木造の棟数、床面積、木造化率のほか、住宅、事務所、店舗、学校校舎、病院・診療所ごとの木造の棟数、比率と都道府県別の用途別木造化比率が2ページにわたって掲載されている。

 建築物の着工等数、床面積は、この15年間で最多だった平成18年度の棟数72.8万棟、床面積187,614万㎡から令和2年度には53.4万棟(平成18年度比26.7%減)、114,300万㎡(同39.1%減)へそれぞれ大幅に減少している。

 しかし、木造は健闘しており、平成18年度の50.7万棟、6,395万㎡から令和2年度は40.7万棟(同19.7%減)、4,978万㎡(同22.1%減)と全体の減少幅より小さく、令和2年度の木造化比率は棟数比率76.3%(同6.6ポイント増)、床面積比率43.5%(同9.4ポイント増)と上昇している。

 住宅着工も平成18年度の60.0万棟、10,849万㎡から令和2年度には45.9万棟、6,578万㎡へとそれぞれ23.5%、39.4%減少しているが、木造は平成18年度の47.3万棟、5,889万㎡から令和2年度には38.4万棟、4,540万㎡へとそれぞれ18.8%、22.9%の減少にとどまっている。このため、令和2年度の木造化率は棟数比率で83.6%(平成18年度比4.8ポイント増)、床面積比率は69.0%(同14.7ポイント増)と上昇している。

 このほか、木造化率が低かった事務所、店舗、学校校舎、病院・診療所も全て木造化率は上昇している。令和2年度の木造化率は事務所が棟数比率で37.7%(平成18年度比14.4ポイント増)、床面積比率で9.2%(同2.4ポイント増)、店舗が棟数比率28.2%(同2.0ポイント増)、床面積比率5.0%(同1.5ポイント増)、学校校舎が棟数比率12.7%(同6.0%増)、床面積比率4.2%(同2.3ポイント増)、病院・診療所が棟数比率51.7%(同17.5ポイント増)、床面積比率11.2%(同5.1ポイント増)となっている。

 都道府県別データで木造化比率が高いのは、事務所は秋田県(57.3%)と山形県(51.9%)、店舗は北海道(45.4%)と新潟県(40.1%)、学校は秋田県(28.1%)、岩手県(24.1%)、宮崎県(20.6%)など、病院・診療所は秋田県(58.5%)、新潟県(58.5%)、山形県(55.4%)、石川県(54.9%)、和歌山県(54.5%)、宮城県(53.9%)など。

 木造化比率がもっとも低いのは沖縄県で、事務所は2.4%(全国平均30.4%)、店舗は3.9%(同26.2%)、学校校舎は0.1%(同8.6%)、病院・診療所は2.5%(同41.5%)と全て全国平均より桁違いに低い。

 これらのデータからはっきりするのは、「木の時代」は着実に前進しているということで、2050年のカーボンニュートラルの追い風も受けて、加速度的に木造建築物は増加するのではないか。

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総数155,893人の職業分布

 東京都に新型コロナ緊急事態宣言が発令されてから6日間が経過する。効果が表れるのはこれからだろうが、感染者は7月16日現在、27日連続して前の週の同じ曜日を上回り、この3日間は1,000人を突破した。ワクチン接種の効果で高齢者の感染は激減しているが、これまでの20~40代に加え20歳未満や50歳以上の感染者の増加が目立つ。何とか感染を抑制する資料にならないかと、都のオープンデータから感染者の職業分布を調べた。

 別表・グラフは、7月16日現在の東京都の新型コロナ感染者186,698人の職業分布を示したものだ。

 都が感染者の職業を公表するようになったのは昨年の10月1日からで、1週間ごとに更新しているため、昨年9月30日までの25,637人と、今年7月12日以降の5,945人の合計31,582人の職業欄は記載がないはずだが、オープンデータでは記載のないのは30,797となった。(なぜかは分からない。データは自動的に計算してくれるはずなのに…)

 また、職業欄には少数ではあるが歌手、マスコミ、ホテルマン、舞台関係、建築士などもあり、これらの職業を数値から除外した結果、集計できたのは186,690人となり、記載がない30,797人を除いた155,893人のデータをもとに以下に概観することを最初に断っておきたい。

 このうち、もっとも多いのは職業欄が「-」の人で73,847人、比率は実に47.4%に達する。これは感染者に答えられない事情があるのか、それともショック状態に陥り答えられない状態にあったのか、経路不明比率が6割近いことと関連があるのかどうかなど数字からはわからない。

 職業が記載されている人のうちでもっとも多いのは32,164人の「会社員」で、判明している人に占める比率は20.6%となっている。以下、無職8,871人(比率5.7%)、学生8,385人(同5.4%)、その他4,511人(2.9%)、自営業3,376人(同2.2%)、施設職員2,787人(同1.8%)、接客業2,690人(同1.7%)の順。

 この結果を皆さんはどう読み解かれるか。記者は異議を唱えたくないが、姿かたちが見えない強敵のコロナと戦うにはあまりにも漠としており、感染源をたどったり、何らかの傾向を探ったりして対策を練る武器にはなりえていないと思う。

 感染者の半分近くの人の職業が分からないというのもさることながら、以前にも書いたように、「パート」「アルバイト」は雇用関係を示すもので職業ではない。「その他」も約4,500人いるが、これは感染者が高熱にうなされ、ろれつが回らず聞き取り不能の結果なのか、それとも厚労省の職業分類や総務省の産業分類にも当てはまらない反社会的な団体・活動をしている人なのか。昨年5月に「新型コロナ 感染経路不明者が減らない理由 〝闇社会〟〝二重就業〟も一因」の記事を書いたら、約6.7万件(関連記事を含めると約7万件)のアクセスが殺到したが、それと関連があるのかと考えると、なんだか怖い。

 データには首をかしげたくなるものもたくさんある。幼児には20~50代の女性が10人、小学生には20代以上が13人、学生には10歳未満が123人、主婦には男性が3人、教員には10歳未満が1人、無職には10歳未満が297人、施設職員には10歳未満が5人、会社員には10歳未満が2人それぞれ含まれる。

 これは、故意か過失か判然としないが、聞き取り調査票に記入する担当者やデータをチェックする人はどうしてこのような単純なミスを見逃すのか。現場の混乱ぶりを表すものであれば、単純なミスとして片づけられない問題が孕んでいるように思う。

 この前、日本看護協会出版会編集部編「新型コロナウイルス ナースたちの現場レポート」の感想文を書いた際、以下のようにレポートを引用した。

 「『何かあったら、あなたが責任をとってくれるんですか』と返され…問答となってしまい、終わりが見えなかった。なかには1時間近くこのようなやり取りが続いたこともあった。…次第に私は、この業務が相談者の役に立っているのか疑問に感じるようになった。電話は途切れることなく鳴り続けていた。1つの相談が終わり受話器を置くと、息つく暇もなく眼前の電話が鳴る。数をこなし、たらい回しを続けているだけの機械のように思えてくる」(坂井志織氏)

 「(電話相談は)1週間に1~2回順番が回ってきたが、連続36時間対応することもあった。事情があって事実を話したくない方などの調査に2時間以上要することもあった」(東口三容子氏)

 「(積極的疫学調査は)感染症対策として最も重要だ。濃厚接触者と感染源の特定とハイリスク者の追跡により、感染拡大を最小限に抑えることになる。…(患者の発生は)公表は、住民の感染予防の注意喚起が目的だが、個人や店舗を特定し攻撃するようなクレーム、SNSへの投稿、噂の流布など、患者の人権に配慮のない言動は後を絶たない」(竹林千佳氏)

 都のデータとこれら現場の声を照らし合わせると、もう一度、積極的疫学調査のあり方を見直すべきではないか。せっかくの都のオープンデータは生かされていないし、都民に届いていないといったら失礼か。

 コロナは年齢も性別も貴賎も美醜も賢愚も区別なく襲うのだから職業などどうでもいいと考え、聞き取りを適当に済ますことはすでにして敗北主義だ。わずかな手がかりでも感染源に迫るのが科学者の立場のはずだ。

 都の7月16日現在の累積感染者186,698人のうち感染経路不明者は108,566人で、不明比率は58.2%に達しており、6月以降の46日間で不明比率が60%を切ったのはわずか10日間しかない。具体的な科学的根拠を示さず、「経路不明の大半は飲食関係」の一点張りで、酒類の販売中止と営業自粛を求めるだけでは関係者の怒りを買うのもよくわかる。

全国121万人の看護師の万感の思いここに 「ナースたちの現場レポート」を読んで(2021/7/14)

新型コロナ感染者 職業の最多は「不明」35% 退院後の心のケア必要 都のデータ(2020/11/16)

新型コロナ 爆発的に増加 感染者の〝職業不明〟割合 都は40%超(2021/1/10)

新型コロナ 感染経路不明者が減らない理由 〝闇社会〟〝二重就業〟も一因(2020/5/11)

 


 

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左から豊永氏、水智氏、本田氏(虎ノ門ヒルズビジネスタワーで) 

 TERASS、ケラー・ウィリアムズ・ジャパン、リストサザビーズインターナショナルリアルティの3社は7月15日、報道陣向け「不動産エージェント合同セミナー」を開催した。個人エージェント(仲介者)が大半を占め、で社会的地位も高い米国の「不動産エージェント」をわが国でも普及させようと〝先進企業〟3社が手を組んでアピールしようというのが目的のようで、話はとても面白く説得力があり、記者はすっかり支援者になった。

 セミナーの冒頭、TERASS代表取締役社長・江口亮介氏、ケラー・ウィリアムズ・ジャパン代表・寺田香織氏、リストサザビーズインターナショナルリアルティ広報・市原奈津美氏がそれぞれ「不動産エージェント」の導入背景や実績などについて説明。

 江口氏は、2012年にリクルートに入社し、SUUMOの広告企画、商品戦略などに関わり、2019年4月、「もっと自由に働ける環境を作りたい」とベンチャー企業として同社を起業。日本でも様々なサービス分野で店舗からポータル、個人経済へと大きな流れが生じており、不動産仲介業でも同じ流れが起きるのは必至と語った。コロナ禍が追い風となり、同社の2021年2月現在の累計仲介取扱高は34.2億円となり、2023年3月までにエージェントを500人に増やす計画を掲げている。

 寺田氏は、ケラー・ウイリアムズ(KW)の2020年度のエージェント+スタッフは約19万人、取引数は約126万件、取引高は約44兆円、加盟店は1,060+店と世界最大の規模を誇り、2019年12月に日本に進出してからKW TOKYOだけでも約50名のエージェントが活躍しており、計画中も含めて7店舗で展開すると語った。

 市原氏は、同社はオークションハウス「サザビーズ」を起源とし、高級不動産売買の取引を得意としており、北海道から沖縄まで全国各地の物件案内や顧客対応が柔軟に行え、働きやすい環境を整えるため2021年4月にエージェント制度を導入したと話した。正社員とエージェントの雇用関係も選択制で柔軟に対応しており、宅建の資格がなくても現地案内や現地調査を行えるのが特徴のようだ。近い将来50人体制に増やす計画だ。

 引き続いて、江口氏をモディレーターに、ケラー・ウィリアムズ・ジャパン所属の豊永美悠氏(36)、TERASS所属の水智崚氏(30)、リストサザビーズインターナショナルリアルティ所属の本田貴大氏(35)によるトークセッションが行われ、それぞれエージェントを選択した動機・目的、お客さんの反応、課題などについて語り合った。

 豊永氏は、約60万人のフォロワーを持つインフルエンサーとしても活躍しており、オーストラリアでライセンスも取得している。「結婚-妊娠-出産-子育て-介護といった生き方とは異なるもっと多様性に富んだ継続できる働き方があるのではないかと、8年前、オーストラリアに住んでいたときエージェントになることを決断した」と語り、顧客とは売買成立後も付き合いが継続できており、「女性の方がどんどん参加してほしい」と呼び掛けた。

 水智氏は、「不動産業界が大嫌いな住宅購入専門エージェント」という肩書がついており、「不動産業界は大きな課題を抱えている。サラリーマンは役割が分担されており、利益を上げるためのノルマも課せられている。これでいいのかとずっと考えてきた。もう自分でルールを決めてやるしかないと決断し、購入者サイドに特化してエージェントを始めた。働き方の選択肢が増えることは業界のためにもなるはず」「前職では1日11~12時間の勤務時間と往復2時間の通勤時間を要した。無駄も多かった。今では以前と比べ4分の1くらいの業務量で、前職と同じくらいの報酬が得られている」と語った。水智氏は購入者向けのユーチューブの発信にも力を注いでいる。

 本田氏は、同社のトップセールスマンにもなった経歴の持ち主で、「10年近く営業職に就いてきたが、いろいろな方とお付き合いするうちに不動産営業だけでは満足できなくなってきた。もっと楽しく面白い人間になろうと。そこで会社とも相談してエージェントになった。雇用されているときのように休日の申請を出さずに済み、好きな時に旅行もできる」と、現在のエージェントに満足しているようだった。

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江口氏

◇       ◆     ◇

 「不動産エージェント」の将来性を暗示するかのような、実に楽しい分かりやすいセミナーだった。

 前の取材を済ませ、会場となっている「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」に着いたのが12:30頃。セミナーまで1時間30分の空きがあった。まず一服と喫煙室に入ったら、だしぬけに「開所利用のルールをお守りください。ルールが守られない場合は、予告なく閉鎖させていただく場合がございます」と、すぐに合成とわかる慇懃無礼な声を背後から浴びせかけられた。小生に向けられた声かと思ったら、そうではなく1分間に10回も繰り返した。

 エンドレスでしゃべらされる機械も大変だなあと同情しつつ、残りの時間をどうするか思案し、ひとまず「虎ノ門ヒルズ」のガーデンを散策してから、コロナから逃げるため3階にあるオープンタイプのレストランでノンアルコールの白ワインとビールを飲んだ。ワインはぶどうジュースそのもので、ビールはホップの味はしたが何だか炭酸が強く薬草の香りがしたので満足できなかった。

 そんな後だったので、セミナーの1時間というものはイライラが雲散霧消し、本物の酒を味わったようなとても爽快な気分になった。

 主催者のその後の配慮もよく行き届いている。いつでも何度でもセミナーの模様を視聴できるようYouTubeのURLメールが送られてきたし、追加の質問にも答えるという。これほど丁寧な対応は10に一つあるかないかだ。

◇       ◆     ◇

 ただ一つ、「不動産エージェント」が消費者から圧倒的な支持を得るには大きな壁・課題があるような気がする。「安心・安全」の取引が担保できるのかという点だ。アメリカではエージェントが当たり前になっているといっても、わが国では男女を結びつける仲人のような売り手と買い手の双方から報酬を得るシステムが定着している。その是非はともかく、企業の看板が消費者の「安心・安全」を保障してくれるのは事実だ。

 一方で、エージェントは、弁護士のような仕事ではあるが、法的には規制するものはないはずで、悪意のエージェントをどう排除するのかという課題は残る。そうでなくとも不動産取引にはトラブルがつきものだ。本物の詐欺師というものは、自分が騙していることを自覚していないから始末が悪い。額が額だけに、取り返しのつかない事件にも発展しかねない。

 とはいえ、弁護士資格のように難しい資格制度を導入するのは現実的ではないし、宅建資格でいいかどうかについても異論がでるはずだ。米国はどうなっているかわからないが、米国方式がそのままわが国に通用するのか。今度はこれをテーマにセミナーを開いてほしい。さらにまた、不動産流通会社に属している営業マンを加えたセミナーを開けば参加者が殺到するのではないか。

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虎ノ門ヒルズステップガーデン&オーバル広場

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カテゴリ: 2021年度

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「代々木八幡公衆トイレ」

 日本財団は7月16日、誰もが快適に利用できる公共トイレを渋谷区内17 カ所に設置する「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの11か所目となる「代々木八幡公衆トイレ」が完成したのに伴うメディア向け見学会・撮影会を行った。トイレの一般利用は同日から開始される。

 デザインを担当したのは、プリツカー建築賞などを受賞した世界的な建築家・伊東豊雄氏で、タイトルは「Three Mushrooms」。隣接する代々木八幡宮の森から生まれた3本のキノコのようなトイレ。個室型のトイレを3つに分散させることで回遊性を生み出し、行き止まりがなく視線が抜けることで防犯性を高めているのが特徴。

 伊東氏のコメントは次の通り。

 公衆トイレは男性の僕でも出来るだけ利用したくないと考えていました。そこで今回、落ち着いて安心して利用できる、さり気ないデザインに是非トライしてみたいと思い、喜んでお受けしました。今回設置した代々木八幡公衆トイレは、「夜間でも女性が利用できるような安心感を抱けるトイレ」や「デザインが目立たず、さり気なく利用できるトイレ」になってほしいと思っています。

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伊東豊雄氏(写真提供:日本財団)

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 伊東氏の人柄そのもののトイレだ。地上から上に向かって淡いブラウンから白までの7色のグラデーションのデザインは、小さな丸い折り紙を張り付けたような、あるいは点描画のような仕上げで、世も末の絶望的なあのきのこ雲でも七つの大罪でもない、背後の代々木八幡の森にしっとりと溶け込んでおり、幸せを呼び込むラッキー7のそれで、童話の世界に引き込まれそうな雰囲気を漂わせている。

 記者はこれまで開設された11か所すべてのトイレを見学したが、好きなベスト3を選ぶとすれば槇文彦氏の「恵比寿東公園」、隈研吾氏の「鍋島松濤公園トイレ」、そして今回の伊東豊雄氏の「代々木八幡公衆トイレ」を挙げる。

 安藤忠雄氏の「神宮通公園トイレ」は恐れ多く、外から眺めるのがいい。

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佐藤可士和氏担当の恵比寿駅西口は「白」の箱 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2012/7/15)

素晴らしい槇文彦氏、田村奈穂氏、片山正通氏 日本財団 渋谷公園トイレPJ(2020/9/21)

隈研吾氏の〝十八番〟外観は吉野杉のルーバー 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/6/25)

縦格子の円形平屋デザインが美しい 安藤忠雄氏の「神宮通公園トイレ」完成 日本財団(2020/9/7)

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「恵比寿駅西口公衆トイレ」

 日本財団は7月15日、誰もが快適に利用できる公共トイレを渋谷区内17か所に設置するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」の10か所目の「恵比寿駅西口公衆トイレ」が完成したのに伴うメディア向け撮影会を行った。トイレは同日から供用が開始された。

 担当したクリエイターは、国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロのグローバルブランド戦略、カップヌードルミュージアムなどのトータルプロデュースを手掛けた佐藤可士和氏で、タイトルは「WHITE」。佐藤氏は次のようにコメントしている。

 <清潔・安心・調和>。多様性を受け入れる社会の実現を目的に実施された「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの参加にあたっては、公共のトイレに求められる“あたりまえのこと”をコンセプトとして臨みました。アルミルーバーにより明るく軽やかな印象を持たせ、都市の街並みに自然と馴染む静かな佇まいを心がけました。今回のプロジェクトは新築ですが、街中に存在する多くの公共トイレが<清潔・安心・調和>を獲得できるようなリノベーションの可能性も視野に入れながら考察しています。本プロジェクトのさまざまなデザイン案のトイレと共に、東京の公共空間の在り方を考えていくきっかけになることを願っています。

 「THE TOKYO TOILET」は、暗い、汚い、臭い、怖いといったイメージが強い公共トイレを性別、年齢、障がいを問わず、誰もが快適に利用できるものにしようと同財団が取り組んでいるもので、これまで設置済みの9か所を含め2021年度中に渋谷区内17カ所に設置する。

 設計デザインには建築家の隈研吾氏、伊東豊雄氏、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏など16名が参画。トイレの設計施工には大和ハウス工業、設置機器・レイアウトにはTOTOが協力している。

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ピクトサイン(デザインは17か所全て佐藤氏が担当)

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内部もほとんど白一色

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 写真を見ていただきたい。建屋は四角形で、アルミに白い塗装を施した横ルーバーで覆われている。ピクトサインも薄いグレーなので、一見してとてもトイレとは思えない外観なのが特徴だ。

 道行く人20人くらいに声を掛けた。トイレであることが分かった人と判別がつかない人は半々。分かった人は恵比寿駅をいつも利用する人が大半だった。

 すぐそばで宝くじを売る女性は、「以前のトイレは汚かった。いつから使えるの? 渋谷区に17か所? えっ、全部で17億円? 」と驚いていた。

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現地はJR恵比寿駅(アトレ恵比寿)と日比谷線恵比寿駅出入り口のすぐそば(奥の白い建物)

隈研吾氏の〝十八番〟外観は吉野杉のルーバー 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/6/25)

 

 


 

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 書評家・東えりか氏が朝日新聞で紹介しなかったら読まなかったはずの日本看護協会出版会編集部編「新型コロナウイルス ナースたちの現場レポート」(A5版/756ページ、税込み定価:2,860円)を小生も読んだ。

 同書「はじめに」は、「2020年1月の中国・武漢への自衛隊の災害派遣から、第3波が来る12月までの約1年間にわたる、医療・ケア現場の様子と日々の暮らしを綴ったレポート。医療従事者としての使命感、未知のウイルスへの恐怖心、差別・偏見に対する怒りや悲しみ、大切な人への思いなど、看護職であり生活者でもある1人の『人』としての姿を垣間見られる貴重な記録」とあり、執筆者は162人、756ページに上ると記されている。

 それぞれ執筆者の文量は少ないもので2ページくらい、多いものでも10ページくらいの完結型なので、小説と違ってどこから読んでもよく理解できるのが特徴で、これまで報じられてきた医療現場の映像とはまた違った説得力がある。

 小生は比較的冷静に読めたのだが、同編集部に寄せられている読者の感想文に衝撃を受けた。「表紙を見るだけで、涙がでます」とあるではないか。小生も、滂沱の涙と鼻水でハンカチをべとべとになるまで濡らし、電車に乗っているのが恥ずかしくて途中下車した小説はたくさんあるが、表紙を見るだけで涙がでる書物に出会ったことは一度もない。

 読後感想文には「この本は、国民全員が読むべき!」ともある。ぽっぺたをひっぱたかれたような気になった。

 多分この読者の方も当事者で、この書籍には全国121万人といわれる看護師の皆さんの万感の思いが込められているのだろう。

 以下長くなるが、同編集部の了解も得られたので、生々しい現場レポートを引用する。(順不同、敬称略)

 「納体袋に収納するまで、個人防護服の交換と遺体周辺の清拭消毒を三度繰り返すため、1時間半程度要する。…家族は『ああ、袋に入っている』『顔が見える』とお別れの数分間を過ごされる。業者が棺の蓋をテープで密閉すると、もう顔を見ることができない。この数分間の顔を見せることが非常に大事な看取りのケアだと考える」(佐藤奈津子)

 「いざ病棟内に入ると、思っていた何倍も何十倍も状況は悪かった。患者数は1病棟40人ほどいたが、3分の2は陽性患者であり、それを看護師2人で看ていた。看護師もまた、約半数が陽性となって休んでいたのだ」「火葬場に向かう際も、病院内で棺へ移すのだが、袋ごと棺に入れ、蓋を閉めた後にテープでぐるぐる巻きに固定し、消毒スプレーをびしょびしょになるまで噴霧する。…人生の最期に、全身防護服で顔もよく見えない人間に囲まれ、テープでぐるぐる巻きにされるなんて、本人は生前思いもしなかっただろうなと思うと、いたたまれない気持ちになった。看取る際もマスクを外すことも許されず、即時病院のドアを閉めなくてはならないこの状況を呪った。なぜ、こんなことになってしまったのかと毎日思った。病棟に戻り、こっそり一人で泣いた」(中島ひとみ)

 「病棟看護師の残業は増え、病院の方針に恨みが募るくらい皆、疲弊していた。『自分は所詮使い捨ての看護師なのだ…』何度も思った」(むつき つゆこ=仮名)

 「コロナウイルスの由来となった『太陽コロナ』が日食で陰った太陽の暗闇周辺を明るく輝かせているように、看護師の働く姿は本当に美しく輝き、笑顔は患者さんの希望の光になっている。2020年は人類の歴史に残る年になる。私たちが今、まさに実践している看護こそが、歴史として後世に語り継がれるのである」(山田眞佐美)

 「疲れ切って、ベッドに入ってもなかなか寝つけない。薄闇に天井を見やると、涙が自然にあふれてくる。こんな日がもう3日ぐらい続いている。悔い無き人生を締めくくるべく、穏やかにがんばろうと決めた矢先だというのに…」(深井喜代子)

 「『濃厚接触』を『濃厚な接吻』と思い込んでいた夫は、その意味を知ると、思わず笑いだした私に、理解できる説明がなかったことを真剣に怒った。専門用語を翻訳し、生活の知恵や工夫につなげることができるレベルにすることこそ、看護職が力を発揮しなければならないことだ」(吉田千文)

 「保健所はこの30年間で半減してしまった。多くの都道府県で職員採用も抑制したため、保健所保健師は全国的に30代後半から40年代前半の中堅層が薄い」(村嶋幸代)

 「『何かあったら、あなたが責任をとってくれるんですか』と返され…問答となってしまい、終わりが見えなかった。なかには1時間近くこのようなやり取りが続いたこともあった。…次第に私は、この業務が相談者の役に立っているのか疑問に感じるようになった。電話は途切れることなく鳴り続けていた。1つの相談が終わり受話器を置くと、息つく暇もなく眼前の電話が鳴る。数をこなし、たらい回しを続けているだけの機械のように思えてくる」(坂井志織)

 「(電話相談は)1週間に1~2回順番が回ってきたが、連続36時間対応することもあった。事情があって事実を話したくない方などの調査に2時間以上要することもあった」(東口三容子)

 「(積極的疫学調査は)感染症対策として最も重要だ。濃厚接触者と感染源の特定とハイリスク者の追跡により、感染拡大を最小限に抑えることになる。…(患者発生の)公表は、住民の感染予防の注意喚起が目的だが、個人や店舗を特定し攻撃するようなクレーム、SNSへの投稿、噂の流布など、患者の人権に配慮のない言動は後を絶たない」(竹林千佳)

 「本書を読み進めていくと、想像を絶する困難な中でも看護職の強い使命感に支えられた行動力に感謝と敬意の気持ちが膨らむばかりでした。初期の頃は重症化した患者さんは家族にも会えず、亡くなった後でさえ遺骨になってからの対面という現実に、残された家族の切なさ、看取った看護師が感じた憤りや悲しさ、申し訳なさをひしひしと実感し、涙せずにはいられませんでした。つらく理不尽な現実も含めて、新型コロナに看護職がどう立ち向かったのか、貴重な歴史書となり得る本だと思っています」(髙橋則子=読者)

◇       ◆     ◇

 皆さん、いかがか。小生は常磐大学特任教授・吉田千文氏の「『濃厚接触』を『濃厚な接吻』と思い込んでいた夫は、その意味を知ると、思わず笑いだした私に、理解できる説明がなかったことを真剣に怒った」に仲良し夫婦を思い浮かべたのだが、吉田氏のご主人の思い込みに同感だ。

 小生はこの1年5カ月、徹底してコロナから逃げている。外食をやめたのは自分の判断で、かみさんに濃厚接触を拒否されたのは自業自得・自己責任だが、東京都の多くの区市は公園での飲食・飲酒を禁止し、公衆喫煙所なども閉鎖した。「経路不明者の大半は飲食関係」などとする専門家の知見とやらを唯一の根拠に、再三再四の緊急事態宣言で国は飲食店などでの酒の提供自粛を求めた(ほとんど強制)。

 どなたか執筆者の方は医療現場を「まるで戦場のよう」と形容されていたが、飲酒・喫煙を禁止するのはヒットラーと同じだ。暴動どころか、こぶしすら上げられない情けない世の中になってしまった。

 ここまで辛抱強く読んでいただいた皆さんに感謝する。が、しかし、小生の言いたいことはこれからだ。あとは明日以降。

カテゴリ: 2021年度
 

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