三井不動産 八重洲二丁目の再開発名称 「東京ミッドタウン八重洲」に決定
「東京ミッドタウン八重洲」
三井不動産は4月8日、参加組合員として事業参画している「八重洲二丁目北地区第一種市街地再開発事業」の街区名称を「東京ミッドタウン八重洲」に決定したと発表した。「東京ミッドタウン」の名称は「東京ミッドタウン」(六本木)「東京ミッドタウン日比谷」(有楽町)」に続く3施設目となる。
首都圏の大規模オフィスとしては初の「完全タッチレスオフィス」を実現するほか、様々なロボットや5Gを活用し、オフィスビル内でのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進。「グリーン電力提供サービス」を導入する。
施設は、JR東京駅地下直結(八重洲地下街経由)、中央区八重洲二丁目地内に位置する区域面積は約1.5ha。地上45階地下4階建て延べ床面積約283,900㎡のA-1街区と、地上7階地下2階建て延べ床面積約約5,850㎡のA-2街区で構成。基本設計・実施設計・監理は日本設計。実施設計・施工は竹中工務店。マスターアーキテクトはPickard Chilton。2022年8月竣工(予定)。
5階屋上テラス
◇ ◆ ◇
記者は、同社が「東京ミッドタウン日比谷」の内覧会を実施した2018年の段階で第3の「東京ミッドタウン」は「八重洲」であることを知っていた。「「書かないで」という約束を守ってきた。
さて、では第4、第5の「東京ミッドタウン」はどこか。これは記者も分からない。
〝ちがいを ちからに 変える街。渋谷区〟に沿う 東急不などコンソーシアム連携
「ニュートラル・イノベーション・ベース(NIB)」
東急不動産は4月6日、「渋谷桜丘エリアにおける 企業間連携の取り組みに関する記者発表」イベントをZOOMウェビナー形式で開催。同社の広域渋谷圏戦略の新コンセプト「未来シェアリング」をスタートさせ、その第一弾として桜丘地区の様々な企業と連携するプラットフォーム「ニュートラル・イノベーション・ベース(NIB)」を紹介した。
同社都市事業ユニット都市事業本部長 執行役員・鮫島泰洋氏は、「コロナ禍でもあるにもかかわらず、当社が実施した経営者インタビューでは、実に65%を超える企業が『渋谷でのオフィスは現状維持または増床』と回答。何よりも『創業・起業の息吹が感じられるエネルギッシュさ』に魅力を感じていただいている結果」などと、「未来シェアリング」「NIB」を立ち上げた背景について語った。
続いて登壇した一般社団法人渋谷未来デザイン プロジェクトデザイナー・金山淳吾氏は「桜丘は渋谷駅周辺の再開発プロジェクトの文化の中間地点。横の連携を通じて未来をシェアリングしていく」と語った。
コンソーシアム参加企業としてあいさつしたのはアカツキ執行役員・石倉壱彦氏、貝印上席執行役員・遠藤加奈子氏、cinra代表取締役・杉浦太一氏、FIREBUG代表取締役 プロデューサー・佐藤詳悟氏、Loohcs代表取締役・斎木陽平氏、MIRAI-INSTITUTE代表取締役・小柴美保氏、令和トラベル代表取締役社長・篠塚孝哉氏。
◇ ◆ ◇
イベント開始の14:00から終了時間の14:35まで、登壇者・参加者は前段で紹介したように9社・団体。このほかにも各社の担当者が2人と長谷部健・渋谷区長の応援メッセージも紹介されたので、登場したのは12人。1人当たりにすると〝3分クッキング〟より短かった。各社を紹介すると、アカツキは90社に投資している会社で、貝印は発酵食品を新しいスタイルで発信するそうで、FIREBUGはアーティスト、タレントのスタートアップなどを支援しており、Loohcsは高校生起業家を応援し、MIRAI-INSTITUTEはオフィスフリーのマーケティング会社、令和トラベルは、前日に行代理業の免許を取得したばかりの創業2日目の会社だった。
記者は、スタートアップ、ベンチャーキャピタル、アクセラレーターなどよくわかっていないにもかかわらず、横着にも事前に参加会社の概要などをチェックしなかったので、ほとんど何のことかわからなかった。質疑応答もなかったが、あったとしても多分、何を聞いていいかわからなかったはずだ。
長谷部区長のメッセージ「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」も分かるようでよくわからなかった(ダイバーシティの街づくりを推進するという意味か)。
一つだけよくわかるのは、「ちがいを ちからに」というのは渋谷区の専売特許ではないということだ。東急不動産はもう10年も昔から〝平均点主義〟の新卒採用をやめている。話すとよくわかる。ユニークな考えの人がたくさんいる。
メールで東急不動産に「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」で予定されている住宅約170戸は分譲なのか賃貸なのか質問したが、「現時点では決まっていない」とのことだった。記者は分譲を期待しており、そうなれば「目黒」の少なくとも2倍以上の坪単価でも売れると思うのだが…。
的外れの日本テレビの報道 報じるべきは減らないコロナ経路不明の実態
食事もできる「ラスカ平塚」の屋上庭園
日本テレビの昼の番組だったと思うが、この日(4月5日)、大阪府(あるいは市か)の3月の新型コロナ感染者経路判明者2,208人の感染経路別内訳が報じられていた。
もっとも多いのが家庭内で42.1%、以下、その他職場などが29.1%、施設内21.2%で、飲食関係は0.9%だった。この0.9%に報道スタッフは怪訝な表情を浮かべていた。
記者は、大阪府、あるいは大阪市の状況はよくわからないが、大都市圏での感染経路不明者が多いのは常識だ。東京都の場合は、累計感染者約12.3万人(4月4日現在)のうち経路不明者は約6.5万人、経路不明比率は53.2%に達している。この6日間は55~59%と増加傾向にある。大阪府(または市)もほぼ同様のはずだ。
もう一つは、職業など属性不明の問題だ。今年1月10日に書いた記事を添付する。昨年10月1日から1月3日までの都の感染者36,858人のうち職業不明者は15,448人で、不明率は実に41.9%に達している。こんなことがあり得るか。
新型コロナ 爆発的に増加 感染者の〝職業不明〟割合 都は40%超(2021/1/10)
経路判明者のうち内訳が家庭や職場、施設、学校などが多いというのは当然だ。それらの場で新型コロナが自然発生するわけはないからだ。第一波のときから、感染経路を徹底してたどるというのが感染を抑制する基本のはずだった。経路不明者がなかなか減らないからこそ、政府も法律を改正し、積極的疫学調査を強化しているのではなかったか。
テレビが調査して報じるべきなのは、菅総理も「経路不明者の大半は飲食関係という専門家の知見がある」と話した、その飲食関係の実態だ。(因果関係がはっきりしないのに、飲食だけが責められるのは気の毒だと思う)
記者は、もう1年以上も外食はしなくなったのでどのような状況なのかはわからないが、外から眺める限りでは昼食時などはどこも混みあっている。夜の会食も多いような気がする。(いつもの馴染み同士だったら大丈夫なのかもしれないか)
しかし、それらの飲食店が感染源なのかどうかはどこもよくわからないのではないか。無症状の人が感染を拡大させているといわれるが、これまた徹底した検査を行わないと正確なデータは集まらないはずだ。
記者は、緊急事態措置として一部の自治体が実施しているように公園を開放し、飲食や喫煙を可能にし、国交省も推奨している道路での営業をどんどんやるべきだと思っている。この前、「ラスカ平塚」の屋上庭園で久々に外食したが、人はまばらで感染リスクは全くといっていいほどないはずだ。コンビニでおにぎりを買って公園などの野外で食べるのもいい。
「ラスカ平塚」の屋上庭園
大和ハウス 樋口武男氏編著「積極精神に生きる―創業の人・石橋信夫の心とともに」
大和ハウス工業の最高顧問(前代表取締役会長)・樋口武男氏が編著した書籍「積極精神に生きる―創業の人・石橋信夫の心とともに」(PHP研究所、価格:1,100円・税込み)が3月22日発刊された。
同社創業者・石橋信夫の生誕100周年を今年9月に迎えるのを記念して、石橋が遺した50の言葉を厳選し、書籍化したものだ。
創業者から薫陶を受けた樋口氏は本著で、「創業者精神が息づく言葉を、現代の表現にして取り上げ、私なりの理解と解釈を添えたが、私は著者ではなく、編著者としてこの本を書いた。この本の著者は、私であって私ではない。『創業の人・石橋信夫』と私の『同行二人』による成果物としたかったったからだ」とし、「『石橋信夫』という唯一無二の存在によって育まれた創業者精神は、当社グループの社員だけでなく、世の中でいま活躍されていて、これからの経営を担う多くのビジネスパーソンにも参考になると信じている。それだけの普遍性と不変性があると思うからである」と述べている。
樋口氏は1938年、兵庫県生まれ。1961年、関西学院大学法学部卒業後、鉄鋼商社に勤務。1963年、同社入社。1984年に取締役、1991年に専務取締役、1993年、経営不振に陥っていたグループ会社の大和団地代表取締役社長に就任 し、再建を果たす。2001年、合併により大和ハウス工業代表取締役社長に就任。2004年、代表取締役会長兼CEO。2020年、最高顧問。著書に「熱湯経営―『大企業病』に勝つ」(文春新書)など多数。
◇ ◆ ◇
記者は、小説はよく読む方だと思うが、ビジネス書とか自己啓発・箴言本などはほとんど読まない。
しかし、この本は石橋を「経営の師とも、人生の師とも、父ともいえるような大きな存在」という樋口氏の経営哲学、人生観がストレートな言葉で語られている。実践の裏付けもある。よくあるその種の本とは異なると思う。
なによりいいのが読みやすいということだ。小難しい観念論でもって読者を混乱させるこの種の本と一線を画す。50の言葉(テーマ)はどこから読んでも不都合は生じない構成になっている。それぞれのテーマは、1ページ分の見出しと、3~5ページの本文からなり、1ページは12行(通常の文庫本は17行前後)、1行は33字(同40字前後)と短く、1文当たり多くて5行、ほとんどが1~2行だ。年寄でもらくに読める。
さらにうれしいのは、文庫本サイズで、ページ数も256ページと手ごろ、しかも、帯付き、ビニールカバー付きなので、ポケットに入れて持ち運べるということだ。
しかし、文章が短くすらすらと読めるからといって読み捨てるような本でもない。それぞれの言葉には深い意味が込められてはいるからだ。
例えば154ページ。「社会に出て、企業で働くようになったら、会社よりも仕事よりも、まずは自分を愛することを大切にしたい」と石橋、または樋口氏はいう。これは文字通り読めば、いわゆる自己中心、ナルシストに陥りかねないが、そうでないことは他の言葉をよめばすぐわかる。人を愛せない人は自己を愛することはできないし、自分自身が愛せる人に値するかどうか冷徹な目で自分を見つめることも必要だと石橋も樋口氏も他の項目で説く。若い人に薦めたい本だ。
分かりやすいといえば、同社芳井敬一社長の今年の入社式訓示もそうだ。芳井氏は新入社員に対する希望と期待について「1つ目は、挨拶の徹底」「2つ目は、知識の蓄積」「3つ目は、感謝の気持ちを表すこと」「4つ目は、『リセットキー』を持つこと」と呼び掛けた-難しいことではあるが、これは社会人としての基本だ。
デザイン一新 藤沢翔陵高/不可解 防衛省補助金 青木茂建築工房リファイニングPJ
「藤沢翔陵高等学校 校舎改修事業」
青木茂建築工房は4月2日、同社が設計・監理を担当した「藤沢翔陵高等学校 校舎改修事業」の完成見学会を開催した。見学会は3部構成(1部定員50名)で、ほぼ満席となった。
同事業は、築54年(2017年:計画時点)の高等学校校舎3棟を一体化とするゾーニングと内外装一新を図ったもので、防衛省の防音工事と文部科学省の耐震補強工事の補助金を3か年に渡り受給するものだ。
校舎は昭和38年3月に1号館が、同年12月に2号館と1号館と2号館を渡り廊下でつなぐ3号館がそれぞれ竣工。その後、増改築が行われてきた。
校舎は防衛省の防音工事対象区域に該当することから昭和62年から昭和63年にかけて1号館・2号館の防音工事が実施されたが、老朽化による機能性・耐震性の低下などが見受けられることからリファイニングが実施された。
校舎は、小田急江ノ島線善行駅から徒歩1分、藤沢市善行7丁目に位置する鉄筋コンクリート造地上4階、地下1階建て延床面積約7,789㎡。設計・監理は青木茂建築工房、金箱構造設計事務所、森村設計。施工は日本建設。竣工は2020年12月。
3号館正面
外観デザイン
内観デザイン
◇ ◆ ◇
この日は小田急線が人身事故のためダイヤが乱れており、記者が着いたときは説明会が半分くらい過ぎたときだった。教室は広く、最後尾に座ったためよく聞き取れなかった。
青木氏の説明によると、建物の価値を下げず、開放的な空間にしたのが最大のリファイニングの特徴のようだった。不要な外壁、給水塔、空調ダクト、建具などを撤去し、耐震壁、袖壁などを新設することで、〝見えない〟部分にその技が注ぎ込まれたようだが、〝見えない〟ものは見えない。
当たり前だが、説明を受けなくともよく見えたのはデザインだった。廊下壁、階段ステップ、サッシ周りにスクールカラーである「紫紺」のほか赤、青、黄などのアクセントカラーを多用し、従前はほとんど白一色だったのをカラフルな校舎に一新した。
素敵なデザインだと思ったので、担当者に「受験者が激増したのではないか」と質問したが「分からない」とのことたった。
◇ ◆ ◇
これは取材後に気づいたことだが、防衛省による補助金について。神奈川県には厚木、座間、相模原、横須賀などに米軍や自衛隊の施設があり、航空機の騒音対策として防音工事などに補助金が交付されるのはよく理解できる。
ところが、記者が善行駅に降り、次の取材先に向かう1時間20分の間に、小鳥の鳴き声は聞こえたが、飛行機の音は全く聞こえなかった(加齢による難聴の影響もないはず)。そこで、地元の複数の人に聞いた。全ての人が「たまに飛ぶこともあるが、音はほとんど気にならない」とのことだった。
さらに調べた。南関東防衛局の資料によると、厚木飛行場における住宅防音工事・移転対象区域図には善行駅の東側エリア、つまり藤沢翔陵高校がある善行7丁目などはその区域に入っていない。
善行駅近くの不動産会社にも電話で聞いた。「厚木飛行場は9割方岩国に移転した。航空機の影響? 全くない。そもそも防音工事の対象エリアにも入っていない。重説? その必要もない」とのことだった。
藤沢翔陵高校の1~3号館の校舎の全ての窓に2個のクレセントがついていた。数えたわけではないが、その数は1,000個をはるかに超えるはずだ。背が届かないようなところもあった。誰が開け閉めするのか。生徒にやらせるのか。夏冬はともかく、窓を開けっぱなしにしておいたほうが、学習効果は高まるのではないか。防衛省の補助金は誰のためか…。今年度の防衛関係予算は5.5兆円だ。
クレセント
I'm fine 桜もハナニラも満開 青木茂建築工房「目黒」リファイニング完成(2021/3/22)
マスク越しに強烈な匂い 平塚駅前公衆トイレ 利用者はほとんど男性 トイレ考Ⅲ-3
平塚駅前の公衆トイレ
この日(4月2日)午後5時過ぎ。「ラスカ平塚」の素敵なトイレを見学し、最上階にあるイタリアンレストランの、セキレイも訪れるコロナと無縁の屋上庭園でとてもおいしいシェフズサラダを食べ、白ワインを2杯飲んで気持ちよくなり、帰途についた。
平塚駅に着き、一服しようと喫煙所を探していたら「公衆トイレ」の看板が目にとまった。これは見ないといけないと思いのぞいた。その途端、高くはないがそれほど安くもないはずのマスクを着けているにもかかわらず、あの大好きな「くさや」とはまた別の悪臭が襲い掛かった。
いったい誰が利用するのか、観察することに決めた。20メートルくらい離れたビルの陰からトイレに入る人の数を数えた。17:10から17:40までの30分間に19人。男女の内訳は、男性が16人、女性が3人だった。
男性の中年利用者に話を聞こうとしたら「忙しい」と断られた。通りかかった若い女性3人組は「トイレ? 入ったことない。キャハハハハ」とのことだった。
最近は駅も公衆トイレもきれいになってきたと思っていたが、そうでないところもあることを確認できた。
男性用トイレ
公衆トイレは奥の3階建て建物の1階にある
大和ハウス 再生可能エネルギー100%の街づくり「船橋グランオアシス」完成
「船橋グランオアシス」
大和ハウス工業は4月1日、千葉県船橋市の大規模複合プロジェクト「船橋グランオアシス」が3月31日に完成したと発表した。
東武野田線塚田駅から徒歩4分、船橋市行田一丁目の「AGCテクノグラス中山事業場」跡地の約5.7haに、11階建て571戸の分譲マンションのほか、賃貸住宅(262戸)、分譲戸建て26区画、商業施設棟を合わせ約5.8haを整備した。施工から暮しまで再生可能エネルギー電気100%の街づくりを実現したのが特徴で、総事業費は約260億円。
◇ ◆ ◇
分譲マンション「プレミスト船橋塚田」は昨年10月に取材した。記事も添付するので参照していただきたい。売れ行きは極めて好調で、同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏も先月18日の「記者レクチャー会」でも「あと半年で完売する」と語った。
ランドスケープデザインが優れているのが特徴で、「中庭」や回廊の植栽が素晴らしい。
富士を観ながら…日本トイレ協会「特別奨」受賞 「ダイヤゲート池袋」 トイレ考Ⅲ-2
「ダイヤゲート池袋」男性用トイレ
京阪電気鉄道の「淀屋橋駅」とともに、日本トイレ協会「グッドトイレ選奨2020」の「特別奨」を受賞した西武鉄道・西武プロパティーズ・日建設計の「ダイヤゲート池袋」を見学した。14階の男性用トイレは南西窓側に設けられており、全体としては白が基調で、鉄道の運行図表をモチーフにしたダイヤグラムをモチーフにした手洗いボウルや、淡いブルーのガラスが採用された大便器ブースが目を引いた。美しくて素晴らしいトイレだ。
「ダイヤゲート池袋」は、JR・西武線池袋駅と西武デパートに近接する豊島区南池袋一丁目に位置する敷地面積約5,530㎡、地下2階地上20階建て免震延べ床面積約49,661㎡。設計・監理は日建設計。施工は大林・西武建設工事共同企業体。総事業費は約380億円。2019年2月に竣工。
同ビルは、西武旧本社ビルを建て替えたもので、「大きな樹を植えよう」をコンセプトに、建物の構造体をそのままデザインに活かし、太いV型の柱で構成する足もとは「樹の幹」、その上のタワーボディの外殻を包むトッププレースは「豊かに繁る葉と枝」に見立て、飽きのこない「おおらかな建築」としているのが特徴。
地下は駐車場、1・2階は商業店舗、4~18階が西武ホールディングス、プリンスホテル、西武プロパティーズが入居するオフィスフロア。基準階フロアは約2,100㎡・奥行き18mの無柱空間で、天井高は2,800mm。
記者が見学したのは14階の男性用トイレ。南西向きの窓側に設けられていた。入口に入るとすぐ、白が基調のボウルとパソコンのタブレットのような大きな鏡がセットになった手洗いが目に飛び込んできた。ボウルはダイヤグラムがデザイン化されていた。他ではまずないタイプだ。窓面は直射日光を遮る太陽光自動制御ブラインドが設置されているのもすぐわかった。
その奥の窓に面した小便器は普通だが、晴れた日には富士山を眺めることができるのが特徴だ。小便器の背後の大便用ブースの扉には淡いブルーのガラスがあしらわれており、清潔感をひき立たせていた。便器はTOTO製。
トイレは自席で利用確認ができ、大便器は超節水型を採用し、雨・空調ドレン水の再利用により、年間雑用水の約75%が再生水となっている。
日本トイレ協会の「特別奨」は、一般投票で投票が多かったトイレに贈られるもので、同協会ホームページによると、眺望のいいところにトイレを設置するのは「オーナーの希望」とある。これは、西武鉄道会長・後藤高志氏のことだろうか。
〝富士山を見ながら放尿できる〟トイレといえば、大和ハウス工業の水道橋の本社ビルもそうだった。同社に確認したら、周辺にビルが建ち並んでしまったことから、今では上層階からも富士山は見えないそうだ。
多目的トイレ
手洗い(正面やや左に見えねのは住友不動産のマンション)
女性用のトイレサイン
◇ ◆ ◇
読者の皆さんは「旧本社ビル」を知らないだろうが、記者はもう30年くらい昔、特に用事もないのによく通った。当時、西武はどこよりも早く勤務席での禁煙を決めていたが、接客ブースでの喫煙は可能だったので、西武不動産広報担当のMさんと一緒にライオンズの話をし、タバコを吸いながら取材ネタを引き出したものだ。
Mさんは寡黙な人で、空振りも多かったが、その前後に必ず寄った西武デパートが親会社の西洋環境開発の女性広報担当者は美しい方で、何らなの情報をもたらしてくれた。
今回、30年ぶりに訪ねて驚いたのは、16階の西武グループ3社の100数坪はありそうな受付だった。ここもダイヤグラムをモチーフにした黒が基調で、大きな生花が中央に据えられていた。グループの西武造園が定期的に活け替えるのだそうだ。写真も添付した。こちらも素晴らしい。
ついでに一つおまけ。真偽のほどは分からないが、明治大学が人気になったのは「女性用トイレをきれいにしたから」と、当時の理事長が話したのを聞いたことがある。取材を申し込んだら、広報から断られた。
西武グループ 受付
4階免震装置
「ダイヤゲート池袋」南側から
多様化する利用目的 少ない車いす対応 マンホールトイレ 畢生のトイレ考Ⅲ-1
片山正通氏「恵比寿公園トイレ」(日本財団提供)
国土交通省が平成28年に行った「日常でよく利用するトイレに関するアンケート調査」(女性414名、男性470名)は、わが国のトイレを考えるうえで参考になる。記事にもしたので、再録する。
外出先でトイレを利用する場合に重視することについては女性も男性も「清潔であること」がそれぞれ76.6%、68.1%を占めたが、洋式便器と和式便器のどちらを好んで使用するかの問いには、「和式」「どちらかといえば和式」が女性は19.3%なのに対し男性は7.3%。かなり差がでた。
利用場所も微妙に異なる。利用場所について女性が「よく利用する」「時々利用する」場所ごとの比率を紹介する。( )内は男性。
①駅61.4%(76.9%)②交通施設77.6%(77.5%)③コンビニ53.2%(75.1%)④大規模商業施設93.3%(90.2%)⑤公園など9.7%(32.1%)⑥職場68.4%(86.2%)。
この逆、女性が「ほとんど利用しない」「利用しない」場所ごとの比率を見てみよう。( )内は男性。
①駅38.4%(23.2%)②交通施設22.0%(12.2%)③コンビニ45.1%(24.3%)④大規模商業施設6.0%(8.7%)⑤公園89.9%(66.8%)⑥職場30.5%(12.4%)になっている。
この差異から読み取れるのは、トイレに求める清潔度合いや使用目的が男女間で異なることだ。男性はどの場所でも比率が一定しているが、「用足し以外はしない」つまり用足しの目的が達せられれば場所を選ばないことがうかがわれる。
一方、女性は目的を達するために場所を選び、我慢をし、耐え忍ぶ意志の強さがあることが見て取れる。駅のトイレは、「清潔感がない」(64.3%)「清掃が行き届いていない」(40.1%)「行列に並ばなければならない」(44.0%)などの「不便・不満・不安」が寄せられた。
男女とも総じて満足度が高い大規模商業施設だが、女性の「不便・不満・不安」の第1位は「並ばなければならない」で47.6%(男性15.5%)もあった。公園では「並ばなければならない」は2.4%だが、「安心して利用できない」女性は51.4%(男性31.9%)にのぼった。
用足し以外にトイレを利用する人が多いことも分かった。男女とも駅や交通施設、大規模商業施設では「身だしなみを整える」目的が多く、女性はさらに「化粧」が加わる。
このほか着替え、おむつ替え、ゴミ捨て、携帯やタブレットの操作、荷物の整理などが一定数あり、少数だが睡眠、休憩・休息、読書、食事もある。職場トイレでの睡眠は女性2.0%、男性1.2%、休憩・休息は女性4.8%、男性3.4%の回答があった。
記者は、アンケートで女性の「ほとんど利用しない」「利用しない」が89.9%に達した公園トイレの問題を解消するものとして、日本財団の「渋谷公園トイレプロジェクト」に期待している。こちらも記事にしたので参照していただきたい。
もう一つ、これが一番言いたいことなのだが、分譲マンションも一戸建ても、車椅子利用になったときトイレに困らないようリフォームしやすい広さと位置をデベロッパーやハウスメーカーは考えてほしい。一時期、ドアを回転式にしたり、介助者が入れるスペースを確保したりして工夫を凝らしたものがあったが、最近はみんなどこも同じだ。残念でならない。
最後に、非常時の用便・トイレについて。長々と書いてきたのは蘊蓄を披歴するためではない。記者は10年前、新浦安の液状化被害を取材したとき、簡易トイレが使えず、歩いて10分の駅やホテルのトイレを利用する若い女性がたくさんいたのを目の当たりにした。この前の三菱地所レジデンス・三菱地所コミュニティがエリアマネジメント組織の奏の杜パートナーズと共同で実施した6回目の津田沼「奏の杜」防災訓練で、たくさんの参加者から非常時のトイレを心配している人が多いことも知った。
確かに、非常時の公設トイレは使いづらい。汚くて入ることをためらうのもよく理解できる。マンホールトイレはいいと思うが、国土交通省によると、平成26年度末で全国のマンホールトイレの設置基数は約20,000基で、人口比では7,000人に1基に過ぎない。
家庭用として一番いいのは生ごみとしても捨てられる凝固剤入り簡易トイレだと思うが、備えている家庭は少ないのではないか。
記者は、非常時に便意・尿意を催したら、恥ずかしがらずにどこでもいいから用を足すべきだと思う。インドでは、ヒンズー教が人糞を「不浄」なものとして忌み嫌うかだろうが、人口13億人のうち5~6億人は今でも野外トイレというではないか。その点、記者の姉はすごかった。東京に来たとき、女性用の駅トイレが混んでいたようで、男性用に「ごめんな、女性用がいっぱいでなあ…」と堂々と入った。恥ずかしいやらうれしいやら。
東京駅「グランスタ東京」の女性用(左)と男性用トイレ
トイレ紙1日使用量 男性3.5m 女性12.5m 年間排泄量15t 畢生のトイレ考Ⅱ(2021/3/30)
櫂 糞尿譚 陰翳礼讃 水琴窟 シカの糞…虚々実々 記者畢生のトイレ考 Ⅰ(2021/3/29)
安否確認イベントに過去最多65%参加 三菱地所レジ・コミュニティ 津田沼「奏の杜」(2021/3/14)
「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団PJ(2020/9/15)
素晴らしい槇文彦氏、田村奈穂氏、片山正通氏 日本財団 渋谷公園トイレPJ(2020/9/21)
〝駅なのか街なのか〟JR東日本最大規模の「グランスタ東京」8/3開業 トイレに注目!(2020/7/30)
マンション・戸建て トイレはTOTO、LIXIL、パナソニックがデッドヒート(2020/3/24)
デベロッパーも取り組んでほしい 「TOTO商品はすべてがユニバーサルデザイン」(2020/2/3)
東京都 空き家のワンストップ相談事業 ミサワホーム、東急など5事業者を決定
東京都は3月30日、空き家所有者や空き家活用希望者からの相談に無料で応じるワンストップ相談業務「東京都空き家利活用等普及啓発・相談事業」の事業者を、応募があった9事業者の中から5事業者を決定したと発表した。事業は4月から開始する予定。
事業者は特定非営利活動法人空家・空地管理センター、ジェクトワン、東急、ネクスト・アイズ、ミサワホーム。