〝劣等生〟と評価されたら…マンション管理状況の「格付け」は両刃の剣
石﨑氏
マンション管理業協会が検討している分譲マンションの管理状況の「格付け」について、同協会副理事長を務める大和ライフネクスト代表取締役社長・石﨑順子氏は、3月4日行われた「マンション管理事業と不動産有効活用」と題するメディア向け発表会・見学会で「〝マンションは管理を買え〟と言われるのに、そうなっていない。(中古の段階で)管理状況の優劣は価格に適正に反映されていない。『格付け』は、世の中に理解していただくことになり、管理会社のレベル向上にもつながる。協会の総意として取り組む」と語った。
詳細は同協会のホームページで「マンション管理適正評価研究会」(座長:齊藤広子・横浜市立大学教授)の「報告書 中間とりまとめ(案)」として公開されているのでそちらを参照していただきたい。
「格付け」の評価項目は約170項目に上り、日常管理体制のほか「修繕、大規模修繕などのハードの管理や滞納徴収などのソフトの管理を実施する上で致命的に重要となる管理組合収支関係が最も高い配点がなされており、管理組合体制と合わせて60%を占める割合となっている」(同報告書)。
格付けランクとしては「S:特に秀でた管理状態」「A:適切な管理状態である」「B:管理状態の一部に問題あり」「C:管理状態に問題あり」「D:管理不全の恐れがある」の5段階で、平たく言えば生徒の通信簿(小生の時代は5~1までの5段階)のようなものだ。
同協会は3月中にも国土交通省に報告するとしている。
◇ ◆ ◇
一通り全評価項目をチェックした。もっとも至極。異論を挟む余地はない。小生も〝マンションは管理を買え〟と数十年前から書いてはきたが、実際は新築マンションの基本性能・設備仕様、商品企画などの記事ばかりで、購入後の管理について触れたことはほとんど皆無だ。謝るほかない。
だが、しかし、マンションの管理状況の「格付け」より、やはり分譲マンションの基本性能・設備仕様、商品企画などが最重要事項で、この優劣が既存市場でも左右されると思うので、同協会が検討している評価項目の問題点を指摘したい。
第一に、基本情報の中には物件概要も記載されることになっているが、これは物件広告の段階で表示が義務付けられている項目とほとんど同じだ。
これはこれで重要だが、物件の住環境を左右する極めて重要な用途地域はなんであるか、基本性能、例えば免震であるとか制震であるとか、CASBB(東京都は「マンション環境性能表示」制度)やBELS、ZEHの取得状況、リビング天井高(階高)、廊下幅、ユニバーサルデザイン、その他設備仕様レベルも任意でいいから盛り込めるようにすべきで、きちんと評点に加えるべきだと思う。
これらの字句で検索すれば、売主、建設会社、さらには管理会社との関連も消費者はほとんど瞬時に把握できるようになる。どこのデベロッパーが基本性能も管理も優れたマンションを分譲しているか、どこの管理会社がレベルの低いマンションを管理しているか分かるではないか。
まあ、そんなことをしたら喜ぶのはごく一部のデベロッパーであり、そのデベロッパーの系列不動産流通会社であり、第一次取得層をターゲットとする独立系の中小デベロッパーや管理会社は苦境に立たされることになりそうだ。
研究会は「耐震診断未実施について0点とし、マイナス評価にしていない」というのは、仲介会社も買う側もそれらを価格に〝織り込み済み〟、つまり承知の上で売買するからとしているように、何も劣等生を暴き出すような「格付け」をしなくても市場に任せばいいという考えも無視できなくなってくる。
「管理不全の恐れがある」などとされたら、コロナウイルスのように世の中からはじき出される。だれが責任を取るのか。行政は救いの手を伸べるのか。結局は〝優勝劣敗〟〝先立つものは金〟という身も蓋もない現実社会をさらけ出すことになりはしないのか。こういうのを〝両刃の剣〟というのではないのか。
報告書では、「公開に対する抵抗感を軽減する仕組み、下位に評価されると考えられる管理組合でも公開が進む仕組みの構築が必要と考える」としているが、ここが問題だ。非公開の管理組合はマイナス点になるようだ。
管理費滞納、空き家・賃貸化公開の是非 神戸市 マンション管理支援制度で検討(2020/2/10)
単板ガラスを複層ガラスサッシとして施工 アパのマンション 建基法に不適合21棟
国土交通省は3月3日、アパグループが分譲したマンション21棟に採用した防火サッシが建築基準法に適合しないことが判明したとして、同社に改善するよう求めた。指摘を受けたアパは同日、該当する防火サッシの是正工事を実施すると発表した。
問題となったのは、アパ建設が平成14年から平成17年に施工したマンション21棟。サッシメーカーの旭物産が製造・出荷した網入り単板ガラスサッシを採用したにもかかわらず、網入り複層ガラスとして施工したことにしていたのが建基法違反の恐れがあるとされた。
◇ ◆ ◇
アパグループは耐震偽装問題で凝りているはずなのにまた問題を起こした。意図的か不注意かは分からないが、実際には網入り単板ガラスサッシを採用したのに、網入り複層ガラスサッシを採用したとして施工したのは言い訳のしようがない。
元谷外志雄・アパグループ代表も元谷芙美子・アパホテル社長も激怒しているかもしれないが、こんなことをやっていたら同社グループはいつまでたっても一流会社になれない。コンプライアンスを根本的に問い直すべきだ。
モリモト 全戸100㎡以上の億ション「ディアナガーデン鷹番」14戸分譲
モリモトが全戸100㎡以上の億ション「ディアナガーデン鷹番」14戸を非公開で分譲する。物件をホームページなどで公開する予定はなく、同社の会員向けなど限定で販売するようだ。
現地は、東急東横線学芸大学駅から徒歩5分。概要は不明だが、住所は目黒区鷹番3丁目、用途地域は第一種住居専用地域(建ぺい率80%、容積率200%)の住宅街の一角。専有面積は100㎡以上で、最大は最上階の172㎡(52坪)。価格は未定だが、坪単価は最低で500万円、最高は800万円くらいではないかと思われる。
住宅情報サイトのアクセストップ モデルルームの出来もいい モリモト「三軒茶屋」
「ディアナコート三軒茶屋」完成予想図
モリモトが3月下旬に分譲する「ディアナコート三軒茶屋」を見学した。表通りから一歩入った住宅街の一角で、公園・緑道に隣接。住宅情報サイト「SUUMO」のアクセスランキングで昨年末から最近まで1~3位にランクされている〝人気〟物件だ。
物件は、東急田園都市線・東急世田谷線三軒茶屋駅から徒歩6分、世田谷区三軒茶屋2丁目の第一種住居地域に位置する地下1階地上7階建て全40戸。専有面積は33.52~80.72㎡、価格は未定だが、坪単価は400万円台の後半になる模様。竣工予定は2021年5月上旬。設計・監理・デザイン監修はSKM設計計画事務所。インテリアデザインは建築家の横堀健一氏とデザイナーのコマタ トモコ氏。施工は未定。
現地は、世田谷通り、国道246号線、環状7号線のトライアングルの内側で、蛇崩川緑道と世田谷丸山公園に隣接・近接。
建物は内廊下方式、住戸プランは南向きが中心で、西向きが11戸、東向きが3戸。ワイドスパンが特徴で、南向き約57㎡の中住戸でも8.1m。公園が望める80㎡の東南角住戸は7カ所採光。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2450mm、ディスポーザー、食洗機、シーザーストーン天板、陶器製洗面ボウルなど。外壁タイルは「織部」を採用。
販売担当の永森大和氏は、「凄い反響。昨年末から「SUUMO」のアクセスランキングで常に1~2位。問い合わせ件数は約1,300件、来場者は約200組。会員向けに15戸が決定しており、一般分譲は25戸。モデルルームの評価が高い」と語っている。
モデルルーム
◇ ◆ ◇
同社の三軒茶屋駅圏のマンションは今回で5物件目。設備仕様レベルは過去の物件のほうが高かったと思うが、今回のモデルルームの全体的に落ち着いた明るいカラーリングが出来だった(照明の効果もあり)。
デザイナーはてっきり鈴木みずゑさんだと思い、「鈴木さんは新境地を開いた」と感じたのだが、そうではなかった。横堀健一氏とコマタ トモコ氏だった。両氏が担当したマンションの記事を添付する。いずれも素晴らしかった。
価格は坪480万円くらいになりそうで決して安くはないが、これがモリモトの力か。この2カ月近く住宅情報サイトのアクセスで、大手デベロッパーの大型物件などを抑えて上位を維持し続けているのに驚いた。プランもいい。早期完売しそうだ。
建設現場(左後方がキャロットタワー)
公園と緑道(右側の樹木の後ろが現場)
Wリビングの提案がいい コスモスイニシア「イニシアクラウド渋谷笹塚」(2016/10/24)
デザイン・プラン・仕様レベル高い モリモト「ディアナコート日本橋浜町」(2016/10/11)
日本初 野村不&竹中 構造部に木質系部材を採用したマンション「神田駿河台」
「プラウド神田駿河台」完成予想図
野村不動産と竹中工務店は2月27日、柱・壁などの構造部に木質系構造部材を使用した日本初の木造ハイブリッド高層分譲マンション「プラウド神田駿河台」を分譲すると発表した。
野村不動産が建築主として事業を企画し、竹中工務店が設計と施工を担当するもので、建物を構成する構造部材として木質系構造部材を使用。中層階(2~11階)には単板積層材(LVL)と鉄筋コンクリート造耐震壁を組み合わせた「LVLハイブリッド耐震壁」を、高層階(12~14階)には直交集成板(CLT2)を用いた「CLT耐震壁」と耐火集成材「燃エンウッド®」を使用する。
いずれの部材も表面を耐火被覆材などで覆うことなく木肌を現して使用し、積極的に木構造を住宅のインテリアとして視覚化している。共用部エントランスの壁や床・住戸内の天井の一部に無垢の杉材を使用し、木の温もりを演出する。
構造部材に使用される木材は全て国産材(鹿児県産スギ、山梨県産アカマツなど)を使用している。
施工を担当する竹中工務店は、中大規模建築の木造化に積極的に取り組んでおり、これまで事例は約20件ある。
物件は、JR御茶ノ水駅から徒歩5分、千代田区神田駿河台一丁目に位置する敷地面積約580㎡、鉄筋コンクリート・木造ハイブリッド構造14階建て全36戸。専有面積は48.51~79.66㎡。設計・施工は竹中工務店。竣工予定は2021年3月下旬。4月にモデルルームをオープンする。
◇ ◆ ◇
やったぜ!野村!快哉を叫びたい。小生は10年くらい前から森林・林業の再生、緑環境の保全に関する記事を積極的に書いてきた。CLTも応援したく、ことあるごとに取材してきた。昨年は、三菱地所が「高森」「下地島空港」「晴海プロジェクト」の3連発で話題を独占した。「下地島空港」は、飛行機が怖い小生は石垣島空港で乗り継ぎだったので離着陸合わせ8回も死ぬ思いで取材した。
野村不動産は先の「亀戸」でも全館空調を全934戸のうち872戸に採用し、全戸に二重サッシ・樹脂サッシを採用すると発表した。
これで、同社はESG経営、SDGsの取り組みで他のデベロッパーと肩を並べたどころか一歩リードしたのではないか。
三井不動産は、昨年竣工した「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」(施工:清水建設)の外観を本物のスギの板で覆った。
企業の優劣は、このように人にやさしい・地球環境にやさしい事業をしているかで決まる時代は掛け声ではないことを今回のニュース・リリースで実感した。
マンションの現地もよく知っている。山の上ホテルの下、つまり谷に当たりお茶の水の一等地ではない。近隣に分譲事例はないが、モリモトが4年前に分譲し、人気になった「ピアース千代田淡路町」は坪単価420万円だった。これよりはるかに高くなるのは間違いない。坪単価500万円はちょっと高いような気がするが…。人形町、築地などとの比較からすれば坪550万円もあるか。
凄い!全館空調、二重&樹脂サッシ採用 野村不「亀戸」934戸 単価300万円台半ば(2020/2/19)
さすが三井不動産 わが国初の本物の木造〝杉乃木〟ホテル「神宮外苑」に誕生(2019/11/13)
「エコアイランドにふさわしい施設整備」 三菱地所・吉田社長 下地島空港竣工式典(2019/3/17)
主タイプは69㎡の3LDK 単価は160万円台か 長谷工不「ブランシエラ川口」
「ブランシエラ川口 The Airy Site」
昨日(2月25日)は川口-川口元郷の「緑」について書いたが、長谷工不動産が4月に分譲する「ブランシエラ川口 The Airy Site」を紹介する。
物件は、埼玉高速鉄道川口元郷駅から徒歩14分(JR川口駅からバス5分徒歩5分)、川口市朝日1丁目の第2種住居地域に位置する7階建て全118戸。 専有面積は58.53~90.32㎡、予定価格は3,000万円台~5,000万円台(最多価格帯3,500万円台)。竣工予定は2020年12月下旬。設計・監理は長谷工コーポレーション、株式会社T設計工房。施工は長谷工コーポレーション。
現地はマンションが建ち並ぶ芝川沿いの一角で、敷地西側が芝川、南側が戸建て、西側が道路を挟んで朝日中央公園。
住戸プランは、芝川に面した46戸が71㎡以上、南向き49戸が69㎡台、公園に面した22戸が58~72㎡。
主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2420mm、ウゴクロなど。
◇ ◆ ◇
川口-川口元郷の住環境については昨日書いた記事を参照していただきたい。「川口」は、アルヒの「本当に住みやすい街大賞2020」のトップに選ばれたようだが、これについてはもうコメントしない。見方は人それぞれだ。
だだ、評論家が推奨する割にはマンションの売れ行きはいま一つだ。現在、この物件も含めて6物件825戸が分譲中・販売予定だ。竣工してかなり残っている物件もある。
例外なのは、2年前の野村不動産「プラウドタワー川口」200戸だ。記者も絶賛したが、基本性能・設備仕様が抜群によかった。立地条件もまずまずだった。
なぜ、売れ行きが芳しくないか。一つには商業系や準工立地が多く、住環境に難点があることが指摘できる。街のポテンシャルを引き上げるのは同市の喫緊の課題だと思う。
もう一つは、緑環境・街のポテンシャルとも関係があるのだが、価格の壁だ。
いま工事中の「川口栄町3丁目銀座地区第一種市街地再開発事業」では、野村不動産が475戸のマンションを分譲することになっている。価格は坪300万円をはるかに突破するのは間違いない。
しかし、これは例外だ。川口元郷エリアでは坪単価200万円、20坪で4,000万円が大きな壁になっているようだ。同じ沿線では4年前、ポラス中央住宅が戸塚安行駅から徒歩2分の「ルピアコート川口戸塚」200戸を早期完売したが、坪単価は158万円だった。つまり3LDKで3,500万円台に抑えたのが勝因の一つだと思う(記者は苦戦必至だとみていたが)。
さて、「ブランシエラ川口」はいくらに価格を設定するか。芝川に面した46戸は坪単価180万円を超えるのではないか。一方で、もっとも戸数が多い南向き住戸は面積を69㎡に圧縮しており、徹底して第一次取得層にターゲットを絞り込むとみた。坪単価は160万円くらいに抑えると見た。
ついでに芝川について。ネットなどで調べたら、浸水被害なさそうで、カモが泳いているくらいだから水質も改善されつつあるとか。しかし、清水には程遠く、どす黒い水はよどんでいた。近所の人は「臭うのよね」と話していた。
駅前の河津桜はすでに八分咲き
川口元郷-現地-川口 徒歩30分 街路樹は1本もなし 「本当に住みやすい街大賞」? (2020/2.25)
〝二者択一は終わりにしよう〟 川口初の免震×長期優良 絶好調 野村不動産のタワー(2018/5/14)
東急不動産 埼玉初の総合病院との一体開発「ブランズ川口元郷」 好調スタート(2017/1/16)
ポラスグループ 埼玉高速沿線でマンション強化 200戸の「川口戸塚」分譲開始(2016/7/30)
フレー!フレー! ハセジョ 長谷工コーポ他「ブランシエラ浦和駒場」(2016/2/10)
川口元郷-現地-川口 徒歩30分 街路樹は1本もなし 「本当に住みやすい街大賞」?
川口元郷駅前は河津桜が八分咲き
長谷工不動産が4月下旬に分譲する「ブランシエラ川口The Airy Site」を見学した。この記事を書く前に、川口元郷駅から徒歩14分の現地を見学し、食事を兼ねてタバコを吸おうと思ったら駅周辺には適当な店がなく、仕方なく川口駅まで20分くらいかけて街を歩いたときに感じたことを先に書く。
「川口元郷」は、大京の「エルザタワー」を皮切りにこれまで数物件のマンションを取材している。個々の物件のレベルは高かったが、用途地域がほとんど準工業地域であるため緑が少なく、街全体が汚いという印象が強く残っている。
この日(2月25日)は、駅前の河津桜が八分咲きくらいでとても美しかったのだが、よかったのはこの一角のみ。
駅前にはクスノキが3本あった。無残にも高さ4mくらいでちょん切られていた。胴吹き枝・ひこばえだらけだった。こんなかわいそうなクスノキはほとんど見たことがない。怒りが込み上げた。クスノキは基本的に剪定が必要ではなく、そのままでも樹高20~30mの美しい樹形をつくる。
そして、駅から北に向かって岩槻街道(国道122号線)を歩き、途中で交差する八間通りを眺めたが、現地まで街路樹は1本もなかった。14分も歩いて街路樹に1本も出会わない郊外住宅地など他にない。
正確に言えば、街路樹らしきものはないわけではなかった。十二月田交差点から少し入ったタカラレーベンのマンション沿いに樹種は不明だったが、樹木が植わっていた。市の公園課に確認したら街路樹はイチョウで約100本あるとのことだった。
しかし、そのイチョウは高さ3メートルくらいでぶった切られており、写真のように瘤だらけだった…イチョウには瘤があったか…イチョウではない気もする(街を歩く人数人にも訪ねたが、イチョウと答えた人は一人もいなかった)。
〝これじゃマンションも売れない〟と落胆しながら駅まで戻り、タバコを吸う場所もないので仕方なく六間通りを歩き川口駅に向かった。この間も街路樹は一本もなし。この前書いた「八潮」と似たり寄ったりだ。
こんな醜いクスノキは見たことがない(川口元郷駅前で)
こんな瘤だらけのイチョウは見たことがない
◇ ◆ ◇
マンション建設現場の道路を挟んだ東側には、ところどころに芝生のようなものが生えているだけのグラウンドのような朝日中央公園があった。高木はケヤキ5本のみ。「野球、サッカーなど球技は禁止」の看板。
外周約300mはジョギングできるようになっていた。後期高齢者らしき男性に声を掛けた。「1週300m、30周が目標」とか。おばあちゃんにも聞いた。(何周走るんですか? )「…周」(えっ、50周? )「5周だよ、1.5キロ。50周走ったら死んじゃうよ」
この広場はどのように利用するのか(朝日中央公園)
◇ ◆ ◇
川口駅に着き、帰りの電車に乗ろうとしたとき、だしぬけに「本当に住みやすい街大賞2020」の看板が小生の眼を射た。どこかで聞いたような気がしたので社に戻り確認した。
アルヒが選定したものだった。「住環境・交通利便・教育環境・コストパフォーマンス・発展性の5つの基準を設定し アルヒの膨大なデータをもとに住宅や不動産の専門家が参画する選定委員会による公平な審査」を経て選んだという。
「川口」は、「銀座通り商店街の再開発が進行中、2023年には商業施設を含む地上29階の複合タワーマンションが完成予定、今後の更なる街の発展が期待できる。浦和や大宮駅に比べ東京都心に近いわりに、地価や物件価格がリーズナブル」というのが選定理由になっている。
以下、赤羽、たまプラーザ、柏の葉キャンパス、入谷、王子、武蔵小金井、小岩、ひばりが丘、東雲の順でベスト10入りしていた。
このランクを辿る途中、小生は嫌な予感がした。意図的というか恣意的というか、何やらきな臭いデベロッパーの匂いがしたからだ。案の定、審査委員長はわが業界ではよく知られているS氏で選定委員はO氏だった。
これのどこが「公平な審査」なのか。S氏、あるいはO氏がそれぞれ「本当に住みやすい街」と書けば文句はない。誰がどこを「本当に住みやすい街」に選ぼうが勝手だからだ。
だとしても、住めば都だ。住環境、交通利便、教育環境など「5つの基準」は人それぞれ、何を重視するかで評価は全く異なってくるはずだ。その根拠を示さないと、たまプラーザと柏の葉キャンパスの住民は〝どうして川口や赤羽が上なんだ〟と激怒するかもしれない。
小生だって、(マンションの価格などで)たまプラーザと柏の葉キャンパスには負けるかもしれないが、ベスト10入りした街に総合力では絶対負けないと思う。(何をもって優れているかも問題だが)住環境で多摩センターに勝てる街があったら名乗り出てほしい。
最後に、住んで18年の川口市民の男性(42歳)の声を紹介する。「川口はいいところですよ。人情味があって、大型ショッピングモールがあって、開発も進んでいる。市は教育にも力を入れている。学力が上がっている。子育てにはとても住みよいですよ」
読者の皆さん、「街路樹が泣いている」と「RBA」で検索していただければ、小生の記事が少なくとも10本はヒットするはずです。ぜひ読んで頂きたい。街のポテンシャルを引き上げるのは緑だと確信するからです。
1カ月未満で全戸の半分以上62戸販売 コスモスイニシア「板橋 桜」好調スタート
当欄既報のコスモスイニシア「イニシア板橋 桜レジデンス」が好調なスタートを切ったようだ。2月8日に第1期1次として35戸が分譲開始され、その後引き続いて第1期2次5戸が完売となり、2月22日から第1期3次22戸が追加販売された。
全152戸のうち一般分譲対象外住戸は36戸なので、分譲戸数は116戸。既に半分以上の62戸が販売開始されたことになる。
このままのペースで進めば桜が見ごろの春までに完売するのではないか。一昨日書いた記事の東京カンテイのデータによると板橋区のマンション平均販売日数は65日だ。竣工は2021年2月なので、同社は細かく期分けし、全戸「即日完売」を狙うのか。
来場者殺到 眼前に桜並木が美しい石神井川 コスモスイニシア「板橋 桜レジデンス」(2020/2/4)
「AERA」はマンションの「本当の価値」を明らかにしたか 東京カンテイには感服
「AERA」2月24日号「マンション新常識」記事(マーカーは小生がつけたもの)
朝日新聞出版「AERA」2月24日号に掲載された「マンション新常識」の記事を興味深く読んだ。「『販売日数』が示す真の価値 価格じゃ見えないマンションの裏側」と題する全4ページで、筆者は住宅ジャーナリスト・山下和之氏と同誌の編集部。
もっとも注目したのは、東京カンテイが提供した首都圏、名古屋市、大阪市、京都市などの2014年~2018年にかけて分譲されたマンション全物件のデータだった。
データは定量的に処理されているため、具体的なマンション名などは1件も記されていない。販売開始から終了までの平均日数、最長日数と即日完売-半年以内-1年以内-1年超の分布、4年間の平均価格の推移などが分かりやすく図示されているのみだ。
驚いたのは販売日数だった。首都圏でもっとも販売期間が短いのは墨田区の22日で、以下、荒川区28日、大田区38日、台東区42日、足立区62日、板橋区65日、新宿区66日、北区74日などとなっており、人気エリアというより、都心周辺の住宅地としてのポテンシャルが低い区部が上位を独占していることだった。
正直、嘘だろうと思った。大手デベロッパーが販売リスクを考えもっとも嫌がる地域ではないか。2014~2018年に取材したマンションの記憶を辿っても、それらのエリアで売れ行きが好調だったのを思い出せなかった。墨田区でいえば、錦糸町で分譲し、好調だった三井不動産レジデンシャル…しか思い浮かばない。足立区でも北千住の三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスの早期完売マンションしか出てこない。
そこで早速、同社に具体のマンションデータを教えていただきたいと申し込んだ。短時間完売ベスト100とかロングランマンション100、デベロッパー別販売スピード、戸数別販売速度などとして再構成し、記事にしようと思ったからだ。
甘くはなかった。「AERA」の記事にも登場する同社市場調査部上席主任研究員・井出武氏から「センシティブな内容を含むので、データは具体のマンション名などを公表しないという条件付きで提供した」と断られた。
あっさり引き下がるほかなかった。記者は、前職で20年以上、首都圏の新規マンションと分譲戸建ての販売状況をまとめ記事にしていた。捕捉率はマンションは約9割、分譲戸建ては4~5割だったと思う。デベロッパー別、施工会社別、用途地域別の売れ行きの違いなども記事にした。例えば準工立地の物件の売れ行きが悪いとか、住居系立地の三井不動産のマンションがよく売れるとか、竹中工務店施工マンションが好調…などだ。
しかし、個別物件の販売日数などはとても追いきれないので記事にしたことなど一度もない。東京カンテイが全国のマンションのデータを詳細に把握しているのに驚嘆した。
同社が設立されたのは1979年だが、目黒駅近くの雑居ビルで話を聞き、記事にしたのを思い出す。分譲パンフレットの収集から始めたはずだ。小生も取材したパンフレットは事務所に保管していたが、膨大な量にのぼるので捨てることにした。一部数千円から1万円以上のものもあったはずで、保管していたら凄い財産になったに違いない。
同社のその後の事業展開などはよく知らないが、新築マンションのデータだけでなく、一戸一戸の中古流通のデータも把握していると聞いた。年間10万戸として数百万戸のデータを握っているのではないか。富の源泉は情報だ。同社の将来が末恐ろしい。悔し紛れに一点だけ弱点を指摘すれば、具体のマンションの基本性能・設備仕様レベルは把握できていないはずだ。
◇ ◆ ◇
記事をまとめた山下氏はよく存じ上げている。マンションだけでなく、記者も顔を出すあらゆる取材現場で山下氏と出くわす。〝現場主義〟に徹している方だと思う。
ただ、残念だったのは、記事には前段で書いたように具体のマンションは一つも出てこず、全4ページの紙面のうち見出し・図表が約57%を占め、記事の60%以上は東京カンテイの図表の説明やあれやこれやのマクロデータの寄せ集め、不動産コンサルタントなどのコメントであることだ。
記事の冒頭にある取材テーマでもある「モノの値段は需要と供給のバランスで決まる。それが経済の大原則のはず。ならば、売れていないのに(太字は小生)価格が上がり続けるのはおかしい。現在の不動産市場では、価格が必ずしも市場価値を反映していないのではないか。だとしたら、知りたいのは『本当の価値』だ」としている「本当の価値」を記事は明らかにしていないのではないか。
もうこれ以上深入りしないが、小生は供給物件を十把一絡げにして契約率が高い低い云々と書くのはいかがと思う。マクロデータはものを見えにくくするからだ。仮に坪単価500万円の20坪の億ションが即日完売し、同じ坪単価の10坪の5,000万円マンションが完売まで1年かかったとしたら、これをどう解釈、説明するのか。
販売総額は15,000万円だから平均価格は7,500万円となるが、これが市場価格でないことは明らかだし、果たして売れ行きがいいのか悪いのか誰も説明などできない。デベロッパーだって足して二で割るようなそんな乱暴な売り方をしない。誰に売るかを真っ先に考えるからだ。
◇ ◆ ◇
最初に記事を書いてから1日経過した今、「販売日数」は実際のマンションの販売期間とは関係ないことに気が付いた。
前述の井出氏は期分けした物件もそれぞれ1物件としてカウントすると語った。仮に、全部で100戸のマンションを期分けせず1年間かけて販売した場合の販売期間は1年だ。一方、100戸のマンションを1期10戸としてそれぞれ即日完売し、全体として販売期間は1年間だったとすると、東京カンテイのデータには10物件が「即日完売」したことになる。
つまり、後者の「即日完売」は見せかけであり、実際には前者のマンションの売れ行きと同じだということだ。これで、城東、城北エリアのマンションの販売期間が極端に短い謎が解けた。違いますか? 井出さん、山下さん。
隣接のサカタのタネのメタセコイア圧巻 大京のZEH-M「仲町台」 販売好調
「ライオンズ横濱仲町台ヴィアーレ」
先に紹介した「ライオンズ長津田グランリーフ」に続き、大京「ライオンズ横濱仲町台ヴィアーレ」を紹介する。こちらも環境省「高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)支援事業」に認定されており、駅に近く住環境に恵まれた物件で、全29戸のうち残りは未分譲含め8戸のみ。
物件は、横浜市営地下鉄ブルーライン仲町台駅から徒歩4分、横浜市都筑区仲町台1丁目に位置する7階建て全29戸。専有面積は66.54~70.56m²、坪単価は290万円。竣工予定は2020年12月7日。設計は日企設計。施工は大京穴吹建設。デザイン監修は船田徹夫氏。昨年末から分譲を開始し、未分譲住戸を含めて残り8戸と好調。
現地は、駅からはインターロッキング舗装された線路沿いを歩いて4分。敷地は元駐車場。標準階の住戸プランは1フロア5戸構成。東-南-西の3面採光プラン6戸はすべて成約済みのようだ。
主な基本性能・設備仕様は、BELS★5つで、エネルギー消費量を33%削減、Low-E複層ガラス、二重床・二重天井、リビング天井高2400mm、御影石キッチンカウンター、食洗機など。
販売を担当する同社本店営業一部係長・山内康平氏は、「最初はお客さまも〝(価格が)高い〟という印象を持たれたようですが、ZEHのよさを説明させて頂くと納得されます。早期完売を目指します」と話した。
◇ ◆ ◇
この物件の特徴の一つとして強調したいのは住環境のよさだ。線路を挟んだ対面のサカタのタネの本社敷地内のメタセコイアは圧巻。数えてはいないが20本くらいあった。美しい円錐形の樹形はこの街に似合う。隣接地には緑に包まれた地区センターもある。
船田氏のデザインもなかなかいい。販売事務所のパネルとパンフレットに記載されているに船田氏の写真は小生が30年くらい前に拝見したのとほとんど同じだった。お若いのにびっくりした。先生は歳を取らないようだ。
どうして「長津田」を先に紹介したかは、「長津田」の記事と合わせて読んで頂ければわかるはずだ。
モデルルーム