三菱地所レジデンス 全国エリア48物件すべてに「オンライン接客」導入
三菱地所レジデンスは5月29日、すでに首都圏の分譲マンションで3月23日から導入している「オンライン接客」を全事業エリア48物件に拡大したと発表した。
同社は2019年8月、一部のマンションで同システムを先行して導入しており、好評価を受けたため、新型コロナ対策として都心エリア13物件に導入した。これまで145件の実績がある。
顧客からは、「小さい子供がいるため、ギャラリーに行かずに手軽にご案内を受けることが出来る点が良かった」(ザ・パークハウス 川口本町)「小さい子供がいるため外出自粛をせざるを得ない中でこのような取り組みが普及すると今後もマンション検討がしやすい」(ザ・パークハウス 三田ガーデン レジデンス&タワー)「妊娠中で移動が出来ないため、オンライン相談だと助かる」(ホワイトマークス溝の口)「関西から東京に転勤が決まったが、5 歳の子供もいる中、コロナで関西から家探しに動けず困っていたところ、オンラインでくわしく一通りの話が聞け、とても良かった」(ザ・パークハウス 青葉台二丁目)「アメリカ(LA)に住んでおり、コロナ禍において日本政府の水際対策もあって帰国する事が叶わなかったが、共用部や室内、眺望写真を交えて説明が受けられた上に質問も投げかけられたのでより具体的な検討へ進む事ができた」(ザ・パークハウス 高輪フォート)などの声が寄せられている。
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結構なことだと思う。もう20年前にも書いたことがあるが、マンションも戸建ても現地販売事務所の接遇は慇懃そのものだが、すぐにアンケートなどと称して根掘り葉掘り個人情報を引き出そうとする無礼極まりないことを平気で行った過去がある。今はそのようなことはなくなったはずだが…。
「オンライン接客」が一般化すれば、物件購入検討者も助かる。家族構成、交通便などにもよるが、夫婦と子ども1~2人でモデルルームを見学すると半日はかかり、食事代などを含めると5,000円くらいの出費になるのではないか。販売事務所にはキッズ・ルームを設けているが、子どもにとっては商談中の時間は退屈そのものだろう。その無駄が省けるのだから大助かりだ。
「オンライン接客」の良しあしが成約率に大きな影響を与えるのは間違いない。問題は、いかに丁寧に対応するかだろう。物件の商品企画もそうだが、説明しづらい設備仕様レベル、住環境などをどう伝えるのだろうか。
モデルルームを見学した後で〝オンライン接客とは全然違った〟などと言われないようしないといけない。顧客もまた、決して販売担当者の話しぶりや容貌だけで物件の良否を判断しないことだ。
月額1000円で専有部トラブルに24時間365日対応 創建 マンション用「家ドック」
創建グループの日本戸建管理は戸建ての維持管理サービス「家ドック」をマンションにもワンストップで対応する「家ドック マンションサービス」の運用を開始した。
会員限定で、月額1,000円(税抜き)支払うだけで24時間365日、出張費・緊急対応費0円でマンション専有部のトラブルに対応する。このほか、リフォーム相談、提携企業の優待特典サービスも受けられる。
詳細はWeb:www.m.k-nkk.comへ。
マンション選好の一つに 三菱地所レジ 生物多様性の取り組みがUNDB-J認定
三菱地所レジデンスは5月20日、同社の分譲マンション「ザ・パークハウス」における生物多様性保全への取組み「BIO NET INITIATIVE(ビオ ネット イニシアチブ)」が、2020年4月7日、「国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)認定連携事業」(以下、UNDB-J)に認定されたと発表された。
UNDB-Jは、2010年10月に愛知県名古屋市で開催されたCOP10(生物多様性条約第10 回締約国会議)で採択された「愛知目標」の達成に向け、各セクターの参加と連携を促進させるため、「にじゅうまるプロジェクト」などの中から委員会が推薦する連携事業を認定するもの。
今回は第16弾となり、「BIO NET INITIATIVE」を含めて10件が認定された。
「愛知目標」では、2050 年までの長期目標(Vision)として「自然と共生する世界の実現」、2020 年までの短期目標(Mission)として「生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急な行動を実施する」ことが掲げられた。
「にじゅうまるプロジェクト」は、生物多様性の損失を止めるための活動に取り組んでいる団体(自治体・企業・NGO・教育関係)とその活動を登録し、「愛知目標」の達成を目指しているキャンペーン。
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こうした取り組みが企業価値を判断する物差しとなり、マンション選好の目安の一つになってほしい。
UNDB-Jにはわが故郷・三重県からも毎年のように選定されている。今年は絶滅されたとされているアゼオトギリ保全勉強会が選定された。
東京都では、駒沢女子大学アクティ部の特定外来種の生物や植物の駆除活動が認定されている。
記者が住む多摩センターはいま、栽培も運搬も禁止されている特定外来種のオオキンケイギク(大金鶏菊)が大繁殖している。以前はマンションの敷地の法面くらいだったが、今年はいたるところで狂喜乱舞している。パンデミックかと恐怖すら覚えるほどだ。
花は菊のように美しいといえば美しいのだが、繁殖力が強い多年生なので一度根づくと根絶が難しい。在来種を駆逐しないか危惧されている。
駒沢女子大学アクティ部はこのオオキンケイギクの駆除活動を積極的に行っている。
オオキンケイギク(ウィキペディアから)
むしろ〝大健闘〟中古マンション・戸建て レインズの4月の流通市場動向に思う
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は5月15日、2020年4月の首都圏不動産流通市場の動向についてまとめ発表した。
中古マンションの成約件数は1,629件(前年同月比52.6%減)、坪単価(同機構は㎡単価で公表)は約168万円(同4.55減)、価格は3,201万円(同5.8%減)、専有面積は62.91㎡(同1.4%減)、築後年数は24年(前年同月は21年)。
中古戸建ての成約件数は686件(同41.5%減)、価格は2,722万円(同12.5%増)、土地面積は162.25㎡(同9.2%増)、建物面積は106.09㎡(同2.5%増)、築後年数は22年(前年同月は21年)。
新型コロナウイルスの感染拡大により、マンションと中古戸建ての成約件数減少率は1990年5 月の機構発足以降、過去最大となり、マンションの成約坪単価、成約価格は19年1 月以来15カ月ぶりに前年同月を下回った。
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記者は地場不動産仲介会社の営業体制がどうなのかよく分からないが、大手は多くが自粛しているはずで、成約件数が大幅に減少したのは納得できる。それほど悲観することはないような気がする。むしろ〝大健闘〟と言っていいのではないか。ほとんど市場がなくなった「観光産業」とは雲泥の差だ。
まず、マンション。築後年数が約3年増加しながら坪単価はそれほど下落していないのに注目したい。
東京都232万円(前年同月比0.9%減)、神奈川県138万円(同2.4%減)、埼玉県99万円(同3.8%減)、千葉県80万円(同11.3%減)という水準は、千葉県は下げすぎのような気もするが、東京は高水準を維持しているのではないか。
中古戸建ての土地面積が拡大しているのにはやや驚いた。記者はこれまであまり中古市場に注目してこなかったからだが、郊外部の戸建てを処分する層が増加しているということだろうか。仮に建物価格をゼロとして、土地価格は坪55万円の計算になる。土地が50坪あって価格は2,722万円(坪55万円)というのはものすごく安いのではないか。
この先、マンションは新築価格がどうなるかだが、供給量、価格設定は抑制気味になってもすぐ〝損切処分〟することはなさそうで、コロナの収束がどうなるかにもよるが、第一次取得層向けは堅調に推移するような気がする。それだけ賃貸が全ての面でプアということだが…。
記者は、秋以降の郊外部の新築マンションや戸建てがどう動くかに注目している。今後、テレワークが浸透すれば、都心部の専有面積が狭いマンションや土地が狭い駅近の戸建てを志向しない層が増加するはずだ。もっと先、週休3日、フレックスが当たり前になったら住宅市場は劇的に変わる。
首都圏マンション 令和元年度の着工戸数 前年度比9.7%減の5.5万戸
令和元年度(平成31年4月~令和2年3月)の首都圏マンション着工戸数は約5.5万戸-国土交通省は4月30日、令和2年3月の住宅着工動向をまとめ発表。令和元年度の首都圏マンションは前年度比9.7%減の55,250戸となった。
都県別では、東京都が前年度比8.0%減の34,833戸、神奈川県が同18.8%減の11,204戸、埼玉県が同23.2%減の4,304戸、千葉県が同26.1%増の4,909戸。
三菱地所レジ・近鉄不 浦安市最大級 ZEH-M装備の「新浦安」528戸始動
「ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラ」
三菱地所レジデンスと近鉄不動産は4月14日、千葉県浦安市で開発を進めている市内最大級の低層4階建て15棟(総戸数528戸)のプロジェクト名称を「ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラ」と決定したと発表した。
物件は、JR京葉線・武蔵野線新浦安駅からバス13分徒歩1分、浦安市高洲6丁目の第一種住居地域、第一種低層住居専用地域 に位置する敷地面積約47,199㎡。4階建て15棟のマンションと木造平屋建てブックカフェ、2階建て共用棟で構成。専有面積は74.84~147.76㎡、価格は未定。建築デザイン総合監修はSKM設計計画事務所。共用部の一部のインテリア及びデザインはSAZABY LEAGUEが担当。施工は長谷工コーポレーション。
浦安市で過去10年以内に供給された物件で総戸数500戸以上の新築マンションはなく、浦安市最大級のスケールとなり、空地率は全体の54%、緑地面積は約7,800㎡。
リモートワークに対応したコ・ワーキングスペースの設置や平均96㎡のゆとりある暮らしを提案する。ザ・パークハウス初となるZEH-M(ゼッチ・マンション)Readyを採用し、エネルギー消費率50%以上の削減を実現する。
2020年9月にモデルルームをオープンし、12月に販売開始する予定。建物完成は2021年10月上旬~2022年11月上旬。
広告キャラクターに香取慎吾さんを起用し、テレビCMを4月20日から放送開始する。
香取慎吾さん
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新型コロナがなければ今すぐにでも取材に出かけたいが、モデルルームは9月。それまで我慢することにしよう。現地は、三井ガーデンホテルに隣接し、スターツのマンション・戸建て街区「QUWON(クオン)新浦安」に近接している。いったいいくらになるか。
新型コロナの影響は不透明だが…2020年着工戸数は分譲が持家を14年ぶり逆転か
持家と分譲住宅の着工戸数推移
マンションと建売住宅の着工戸数推移
新型コロナの感染拡大が住宅市場にどのような影響を与えるか現段階では何とも言えないが、最小限に収まっても2020年は2006年年以来14年ぶりに分譲住宅が持家戸数を上回る可能性が高くなった。
先に発表された2020年2月の分譲住宅の着工戸数は20,362戸(マンション9,353戸、建売住宅10,907戸)となり、持家19,557戸を上回り、令和元年9月に続いて分譲が持家を上回った。
2020年1~2月の住宅着工戸数でも、分譲住宅が38,218戸(前年同期比9.2%減)となり、持家の37,594戸(同12.4%減)を624戸上回っている。
カギを握るのは持家トップメーカーの積水ハウスと建売住宅トップの飯田グループホールディングスの動向だ。
積水ハウスの2020年1月期決算は過去最高の売上高・利益を更新し絶好調だが、戸建て住宅の1棟単価は3,993万円(坪95.8万円)で、2015年度比10%増加している一方で、消費増税、新型コロナの影響などからここ半年は受注が前年比マイナスになっている。今期売上高は前期比11.5%減を予想し、戸数でも前期の10,663戸から9,300戸へ減少する見込みだ。分譲住宅も前期2,589戸から2,350戸へ減少するとしている。
同社は、先に発表した2022年度を最終年度とする第5次中期経営計画でも、第一次取得層向けの戸建て事業を強化するとしているが、全体的には高級ブランド、CRE・PRE、ライフスタイル提案、新規事業、国際事業、フィービジネスなどを強化して戸建て住宅や分譲住宅の落ち込みをカバーする戦略を打ち出している。
一方の飯田グループホールディングスはどうか。同社の2019年3月期の分譲戸建て計上戸数は、積水ハウスの戸建て住宅の約4倍に当たる41,602戸だ。分譲戸建ての住宅着工に占めるシェアは全国で29.5%(首都圏は33.3%)に達する。
圧倒的なシェアを占めているのは、徹底した規格化によるローコスト住宅(同社は「好価格」と呼ぶ)を実現しているからだ。グループの1棟当たり平均分譲価格は約2,700万円で、大手ハウスメーカーやデベロッパーの物件と比べると半値以下だ。
このところの地価の上昇で利益率は下降気味で在庫も増加しているが、圧倒的な価格競争力を武器に戸数を伸ばそうとするのは間違いない。
もう一つ、分譲マンションはどうかだが、全国の着工戸数はここ6年間11万戸台で推移している。新型コロナの影響で10万戸を割り込むのではないかと思われるが、リーマン・ショック後の2009年の約7.7万戸までは減少しないのではないか。
居住形態が異なる分譲マンションと建売住宅を一括りにし、それを持家と比べるのもどうかと思うが、新型コロナの影響を最小限に見積もっても、2020年は持家も分譲住宅も20万戸台の前半にとどまり、僅差の差で分譲住宅が持家を上回るとみた。新型コロナ感染が収束しV字回復するのを期待したいが…。
三方よし オリンピック選手村 コロナ軽症者向けの一時滞在施設利用
NHKは4月7日、安倍総理大臣が新型コロナ感染拡大を防止する「緊急事態宣言」を行った後、「医療崩壊は何としても防がなければならない。宣言によって、例えばオリンピックの選手村や警備にあたる機動隊のための施設を、軽症者などを収容する医療施設とすることが可能になり、中等症以上の方々への医療提供に余裕が出てくる。しっかりとやっていきたいと述べた」と報じた。
同様の発言は小池都知事も3月27日に行っており、オリンピック選手村を軽症者の一時滞在施設として利用される可能性が強まった。
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選手村を軽症者受け入れ施設にすることについては、ネット上で賛否両論が飛び交っているが、記者は基本的に賛成だ。
購入者サイドや〝専門家〟からは「資産価値が下がる」「心理的瑕疵物件になる」などの声が聞かれるが、物件そのものの価値は変わらず、資産価値が上がるか下がるかはその時の市場動向であり、ある意味ではその価値を決定するのは購入者自身かもしれない。
そもそもオリンピック・パラリンピックの選手村として利用されることは当初から決まっており、その特殊要因を勘案して分譲価格も決定された。このマンション「晴海フラッグ」が世界的なアスリートの宿泊施設となるのは、〝レガシーマンション〟として人気を呼ぶ要因の一つになるのではないかと考えているくらいだ。
それが、新型コロナ患者の一時滞在施設に転用されるのを、ほとんどの購入者は歓迎しないのはよく分かる。だれだって嫌だろう。「心理的瑕疵」の主張も理解できる。
しかし、今回の事態は、医療崩壊が起きるのか、経済社会の崩壊を招くのか防げるのかの瀬戸際だ。ここで購入者が賛意を示せば全国民から賞賛される。欧米などでは、コロナと戦う医療関係者に向かって手を振る市民の姿が報道されているではないか。購入者が〝わたしの買った部屋を使用して〟などと表明したら大喝采を受ける。ひょっとしたら国や都が、協力してくれたお礼として固定資産税、都市計画税などの減免を行うかもしれない。
〝損して得取れ〟という言葉があるではないか。購入者の方には、目先の利益を追うより大局的な視点で考えていただきたい。国民を敵に回すのは得策ではない。
軽症患者も購入者に感謝するはずだ。どこかのホテルのように数坪の狭い部屋に閉じ込められるのと異なり、選手村の住戸の多くは80㎡台もある。多分、複数の人が同居する形にならないだろうからストレス解消にもなる。よって三方よしとなる。
コスモスイニシアとリコー共創 住空間×働き方テーマに新提案 リノベに採用
「コモリワーク」(左)と「ドマワーク」
コスモスイニシアとリコーは4月3日、両社の住空間×働き方をテーマとした価値創出プロジェクトで発案されたアイデア「コモリワーク」と「ドマワーク」をコスモスイニシアのリノベーションマンション2件に採用、3月に完成したと発表した。
コスモスイニシアのクリエイターとリコーのデザイナー共創したもので、「家の中で仕事に集中する」ことと「仕事以外の空気に触れ、気分転換や着想を得る」相反する要素を両立させているのが特徴。
「コモリワーク」は、リビング・ダイニングにつながる洋室に、家族と程よい距離感を保ちながら、集中して机に向かうことができるスペース。高い視点から室内や窓の外の様子を眺められるようにしているほか、超至近投影が可能なリコーの超短焦点プロジェクターを採用し、ガラスの両面に映像を映し出すことができるようになっている。
「ドマワーク」は、玄関と一体となる土間のような空間を設けたもの。リビングの扉を境に床の素材を切り変えることで「住まい」と「仕事場」の境界を演出。複数名でも作業しやすい広さを確保し、「ドマワーク」とキッチンの間に窓を設け、緩やかなつながりを持たせる工夫も凝らしている。「ドマワーク」に設置した「リコー インタラクティブホワイトボード(電子黒板)」は、ディスプレイに直接文字を書き込んだり、遠隔地に画面をリアルタイムに共有したりすることができる。
「コモリワーク」(左)と「ドマワーク」
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昨日の伊藤忠都市開発の「理想の新婚部屋」もよかったが、この日の「コモリワーク」や「ドマワーク」も、夫、または妻がリビングなどでパソコンを使い、相手から嫌がられるのを避けたいカップルにぴったりの提案だ。
専有面積約67㎡の「エド・コモン西早稲田」(東西線早稲田駅から徒歩13分)に設置された「コモリワーク」は1.2×2.0mくらいの2段になっているスペース。約30cmのステップを3段上がった床から90cmの上段が仕事や趣味室など多目的に利用できるようになっている。腰掛けることも、そのまま寝転がることもできる。下段は収納その他の利用も可能だ。
ステップの高さが高いのは気になるが、何段も設けると専有面積に含まれるので適当でないようだ。(後付けなら違法にならないのがみそか)
5.2畳大の「ドマワーク」は、この種のプランはモデルルームでも提案されているが、キッチンと窓でつながっているのが新しいアイデアだ。これも受けるに違いない。管理規約の〝専ら居住〟を改め、法人登記を可能にすれば人気を呼びそうだ。
「コモリワーク」中央が上段
「エド・コモン西早稲田」の神田川
住宅新報「『ハルミ』の竣工ずれ込み確定」報道 これはない 裏取りは取材のイロハ
3月31日付(3月30日発売)「住宅新報」の「コロナに揺れる住宅・不動産市場 五輪延期 業界に余波 『ハルミ』第2期は6月以降に」の記事を読んで驚愕した。次の文面だ。
「主要大手ディベロッパー10社が事業主となる『ハルミフラッグ』の第2期の販売開始時期が6月以降に延期されることが3月23日に発表された。五輪開催の1年延期で、竣工も22年秋からずれ込むことが確定した」
小生は「晴海フラッグ」の販売延期が「3月23日に発表」されたことも「竣工がずれ込むこと」も全く知らなかった。完全に出し抜かれたと思った。
記者という商売は、他社(他者)に〝抜かれる〟(先駆けを食らう)ことを耐え難い屈辱と感じる習性が身につき、もっとも嫌う。逆に他社を出し抜こうとするから勇み足もする。
しかし、ほとんど瞬時に、この記事はろくに取材もせず、あれやこれやの〝専門家〟のコメントで補強した合成酒ともいうべき〝フェイク〟ではないかという疑問が沸々と湧きあがった。「晴海」の販売延期は「発表」されたものではない「事実」を小生は握っていたからだ。
「晴海」の次回販売が延期されることを小生は3月23日(月)のホームページで確認した。すぐ記事にもした(記事参照)。幹事会社の三井不動産にも確認した。「現時点ではオリンピックの開催時期は決まっておらず、竣工、引き渡し時期について確定的なことは言えない」というのが同社広報の回答だった。
つまり、3月23日の時点で「晴海フラッグ」の販売延期は「発表」されていなかった。あくまでも物件ホームページ上での「告知」「お知らせ」の類だ。オリンピックの概ね1年延期が発表されたのは翌日の3月24日(火)で、開催日が7月23日に決まったのは3月30日(月)だ。
同紙の発行日は3月30日だが、編集作業は3月28日(金)までに終了しているはずだから、28日の段階で「オリンピック延期」=「竣工延期」と確定するのはあり得ないと考えた。
そこで、4月1日(水)、同紙と「晴海フラッグ」事務局に次のように問い合わせた。
「私(記者)は、『販売延期を3月23日に発表』ではなく、ホームページで『公開』だと理解していますし、その時点で『竣工も22年秋からずれこむことが確定』してはいなかったと思います。いかがでしょうか」と。
「晴海フラッグ」からは、三井不動産広報を通じて「『3月23日に発表』ではなく、ホームページで『公開』⇒ご指摘の通り」「『竣工も22年秋からずれこむことが確定』⇒こちらもご指摘の通りで、竣工時期については我々からコメントしておりません。現在五輪延期に伴う影響について確認中ですので、現時点では回答を控えさせていただいております」との回答を得た。
記者はこの三井不動産広報の回答を信じる。まだ竣工時期を決めかねているはずだ。
一方、同紙の営業本部からは「正確には、6月以降に延期が確定、竣工はずれ込む見通しとの内容にするべきでした。編集の段階で誤解を生む表現となってしまいました。申し訳ございませんでした」とメールが送られてきた。
しかし、「竣工はずれ込む見通しとの内容にするべきだった」という新報の回答には納得しかねる。仮に「見通し」などと分かったような分からないことを書けば、読者の混乱を招くだけだ。
小生は同紙の記事の「このほど」を止めろとしつこく書いてきた。ものごとを曖昧にするなという警告だ。今回の記事もこれと同根だと思う。日時を大事にしないから、確認もせず適当に「3月23日」と書いたとしか思えない。裏を取るのは取材のイロハだ。「ハルミ」などとカタカナ表記にしたのも理解できない。
百歩譲って、竣工がずれ込む確たる証拠を握っているのであれば、その通りに書くべきだった。
そうでなければ、事の重大性を全然理解していないということになる。何事もそうだが、約束を守ることは至上命令だ。マンションの竣工時期、引き渡し時期(入居開始)を守るのは至上命令であることは業界の常識だ(天変地異の特約はあるが)。事業者やゼネコンの都合で竣工、引き渡し時期が変更されたら、まずその会社は生き残れない。
セザールがいい例だ。同社は上場した後すぐ数物件のマンションの引き渡し時期を変更した。小生はその〝嘘〟を暴いた。それから同社は業績悪化の一途をたどり、結局、東証上場後13年で破綻した。
記事を書いた新報の記者の方にいいたい。過ちては改むるに憚ること勿れ。これを契機に日々生起する事象に真摯に向き合っていただきたい。