カンナ社長 手づくり名刺入れ「お手入れ講座」を公開
宮沢社長(カンナ社長)の手づくり名刺入れの「お手入れ講座」
宮沢社長手づくりの名刺入れ
アキュラホームが10月28日、同社・宮沢俊哉社長が成績優秀者に贈呈している手づくり名刺入れの「お手入れ講座」を行ったのを取材した。約3時間、宮沢社長は20人くらいの参加者を前に「名刺入れの手入れは家と同じ。使いこなし、使い心地、使い応えを伝えるもの」だと、カンナ掛け薄削りの見本を示しながら話した。
名刺入れの贈呈は5年前から行っているもので、これまで113個を製作している。当初は1個作るのに7~8時間かかっていたのが、試行錯誤を重ね、改良も加えた結果、今では2~3時間で仕上げるという。
「カンナ社長」の異名を持つだけに、看板に傷がつくようないい加減な仕事はしない。形状や技、細部にもこだわる。一般にも販売されている四角形のものではなく、機械ではできない丸みを持たせた美しいものから、最近は大工さんが使う「大工道具箱」をモチーフにしたものに進化させた。材料はヒノキで、強度を持たせるために溝を掘ったり竹ひごを忍ばせたりしている。
カンナ掛けでは、ヒバ材をミクロ単位で削り、「どうですか、女性の肌と一緒。鏡のようにものを映すでしょう」と子どものようにはしゃいでいた。手入れ具合を見るコーナーでは、「これは使いこなせていないな」などと笑いながら役員には冗談も飛ばした。
11月8、9日には全国の腕自慢の大工さんがミクロンのカンナ削りの技を競いあう「第30回全国削ろう会」が小田原市で行われる。宮沢社長もこれに出場する予定だ 。
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薄削りをするカンナ社長 薄絹のような鉋屑がするすると吐き出された
文字が映る薄削りした板
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3個の名刺入れをもらっている同社カタクラ営業所所長・藤堂加奈子氏に話を聞いた。藤堂氏は入社10年目、営業時代は何度も優績者として表彰されており、所長となった現在は全国67ある営業所の中で上位の営業所をまとめている。
その秘訣は、「テクニックではありません。心です。当社の商品がどこにも負けないということを自信を持って伝えられるかどうか」と話した。職場については「男女の差がない環境がいい」と語り、社内でも良いモデルケースとなっているようだ。
名刺入れの手入れをする藤堂氏
宮沢社長を中心に「お手入れ講座」参加者の記念撮影
三交不 「グッドデザイン・ベスト100」に選出 特別賞候補にノミネート
「MSストラクチャー」
三交不動産が今年初めてエントリーした「グッドデザイン賞」で木造軸組構造「MSストラクチャー」、品質管理「C値測定による施工品質向上」、オリジナル杉合板「APボードが作りだすこれからの山のすがた」の3点が受賞した。このうち「MSストラクチャー」は「グッドデザイン・ベスト100」にも選出され、特別賞候補にノミネートされている。
「MSストラクチャー」は三重県の宮川流域の木材を積極的に用いた構造体。宮川森林組合から良質な木を確保し、大台町との第三セクターでプレカット工場を設立することで地元に雇用を生み出し、加工まで品質を確保する取り組み。「地場の林産業、木材産業、木材加工業から伝統工法を用いる住宅提供までをひとつのサイクルにまとめた総合的な木造住宅供給モデルとして、高く評価できる」「派生する端材や下等級材の二次利用などを含めた大きな構想に期待感がある」というのが受賞コメント。
「C値測定」は住宅の気密性能を測る尺度で、同社が請け負った全住宅に測定を実施。自社基準に達しない場合は再施工する。
「APボード」は構造用合板で、宮川森林組合と京都府立大学大学院の研究データに基づき、立木や丸太の時点で角材に向くものと向かないものを予測し、角材に向かないものを利用したもの。
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今年もたくさんのハウスメーカー、デベロッパーが「グッドデザイン賞」を受賞し、各社から受賞のニュースリリースが届いた。それらを記事にせず、三交不動産だけを取り上げる不公平をお詫びする。
なぜ同社だけなのかだが、記者は三重県出身で同社のファンだからだ。受賞は知らなかったのだが、同社の戸建事業本部注文住宅事業部長・小井(いさらい)智之氏に東京で行なわれた日本木造住宅産業協会のイベント会場でお会いし、そのニュースをもたらされた幸運もあった。
「MSストラクチャー」が「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれたのは嬉しい。住宅・不動産業界から「ベスト100」に選ばれたのは「MSストラクチャー」を含め7件しかない。森林・林業の再生・活性化は喫緊の課題でもあり、特別賞を受賞するよう祈っている。特別賞は11月4日に発表される。
三交不動産をご存じない方もいるだろうが、同社は三重交通グループの中核企業で、マンション分譲、注文住宅請負、戸建住宅分譲、不動産賃貸などの事業を展開。これまでに注文住宅は約20,000棟を完工、分譲戸建住宅では1,800戸の「杜の街」などを分譲中で、これまで約17,000戸・区画を供給している。いくつか見学したが、レベルも高かった。
大和ハウス 平成26年度「東京大学稷門(しょくもん)賞」受賞
「東京大学稷門(しょくもん)賞」受賞式
大和ハウス工業が今年4月、東京大学に寄贈した「ダイワユビキタス学術研究館」が今後の同大学の教育研究分野への貢献が期待されるとして、個人、法人または団体に贈られる「東京大学稷門(しょくもん)賞」を受賞した。
「ダイワユビキタス学術研究館」は、同大学院情報学環の坂村健教授が監修。世界最先端のICT技術を活用し、温度・湿度などを自動検知する「環境モニタリングシステム」、自分の場所を自動認識する「ユビキタス場所情報インフラ」が導入されている。
意匠・設備設計は同大学院工学系研究科の隈研吾教授が担当。杉板や土など自然素材を多用しているのが特徴。
「ダイワユビキタス学術研究館」
表も裏も美しい 東大「ダイワユビキタス学術研究館」完成(2014/5/14)
野村アーバン またまた刺激的CM 富裕層取り込む狙いか
今回の新CM
野村不動産アーバンネットは10月7日、「近居」をテーマにした新テレビCMの放映を開始した。
新CMは、一人で実家暮らしをする高齢の母親を心配し、同居を提案する息子夫婦に対し、迷惑をかけたくないとの思いから、広すぎる自宅を手放してケア付きマンションへの入居を希望する母の設定で、相談を受けた「野村の仲介+」担当者が提案した内容は…というもの。
「野村の仲介+」担当者役には、前回CMに引き続き、仙城碤さんを起用している。
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またまた同社が刺激的なCMを展開する。新CMのメイン画像には「ただ住まいを探すだけなら、不動産仲介なんていらないと思う。」が大きな文字で映し出されている。まるで自己否定しているようなセリフだが、不動産流通業に詳しいある記者は「サービス業の本質に切り込んだコピー」と評価した。
昨年10月1日からスタートした第一弾のCMのコピーは「家を買う 家を売る。その不安のひとつに、仲介業者はなっていないだろうか。」だった。
前回も今回も業界4位という位置だからこそできるCMであるのは事実だ。不動産流通業界は、全国展開する業界トップの三井不動産リアルティと、激しく追うがその差はなかなか埋まらない住友不動産販売が〝2強〟。この2強からやや離されている東急リバブルが3強で、野村アーバンはさらに遅れて4位という図式だ。
この業界地図は当分変わらないというのが業界関係者の見方だが、リバブルは先に都内に4店舗を一挙に開設した。首都圏でのシェア争いで2強を追撃しようという戦略だ。
一方の野村アーバンは、かつて〝その他〟グループでしかなかったマンションブランドを〝プラウド〟に変更して一挙にトップグループに躍り出たように、仲介分野でも独自性を発揮して〝プラウド〟の軌跡をたどるように首都圏や関西圏でのシェア争いに加わろうという狙いだ。
従来の発想では考えられない今回の「近居」は、相続・贈与税の改正をにらみ、〝プラウド〟はもちろん野村証券グループとしての強みも取り込み、富裕層ビジネスで他社をリードしようという深謀遠慮もうかがえる。
昨年のCM
ポラス 越ケ谷小3年生107人を対象に「蔵の曳家」体験イベント
「蔵の曳家」体験イベント
ポラスグループは10月2日、越谷市の越ケ谷小学校3年生を対象とした江戸時代末期に建てられた「蔵」の曳家(ひきや)体験イベントを行った。
蔵は約150年前に建てられたという漆喰塗の2階建て延べ床面積約48㎡、重さ約100トン。父母約50人と引率の先生、関係者らが見守る中、子どもたち107人は綱引きの要領で約2m蔵を移動させ、歓声を上げた。
畑佐 柊磨(はたさ とうま)くんはイベント後、「蔵はとても大きいのに、昔の人はこうやって動かしていたんだと思いました。これからも越谷のいいところをいっぱい見つけていきたいと思います」と感想を語った。
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越谷は旧日光街道沿いの宿場町として発展し、蔵などの歴史的建造物が残っているが、所有者の高齢化、建て替え・開発などによって歴史を感じさせる街並みが失われつつある。
住宅開発用として取得した敷地に築150年と言われる蔵が建っていたため、移築・改修して、敷地約100㎡とともに市に寄付する方向で調整を進めている。
当初、コーポラティブ方式での分譲を考えていたが、参加者がなかったために、蔵と親和性のある外観・外構計画による分譲戸建て(4戸)を建設する。来年11月に分譲する予定。
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このプロジェクトは、同社が発表したときにも取材しているので、そちらも参照していただきたい。
子どもたちが3班くらいに分かれて楽しそうに蔵を曳いているのを見て、記者はいつもの歪んだ性格が頭をもたげた。〝100トンもある蔵を子どもの人力で曳けるわけがない〟と考えたのだ。どんぴしゃり。ジャッキで動かしている裏方の職人がいた。その職人もニヤリと笑った。
よせばいいのに、記者は校長先生だけに「実際はジャッキで動かしているんですよ」と耳打ちした。校長先生も知らなかったようだ。どうか、このことを子どもたちには知らせないでいただきたい。
この記事に対して早速、同社広報から注文が付いた。広報は「隠れてジャッキを操作したのではありません。始動を補助するためにジャッキを使ったのであって、子どもたちが動かしたのは事実です」と話している。(これに対して記者は反論しない。人力で動いたかどうかが問題ではなく、子どもたちが昔はこのような大切なものを保管する土で作られた蔵があったことや、人力で動かすこともあったということを学ぶことに意義があるからだ)
なぜ、このひねくれ者の記者の性格を書くのか。先週行われた三菱地所グループの記者懇親会で、同社取締役会長・木村惠司氏は誤報問題で揺れる朝日新聞を引き合いにし「記者のみなさんにお願いがある。インテリジェンスのあるマスコミになってほしい」と語った。
記者はインテリジェンスのかけらもないが、メディア・リテラシーはいつも意識しているつもりだ。みんなが右を向いたら記者は左を向く性格だ。
分譲戸建てはいったいいくらになるかも気になるが、蔵だけでも数千万円の価値がありそうだし、現段階ではなにも書かない。
戸建ての落ち込み賃貸、ストックがカバー 木造も健闘 積水ハウス2Q決算
過熱(加熱)に順応、冷え込みに強い「木造」証明
積水ハウスは9月4日、2014年度第2四半期決算を発表。売上高9,101億円(前期比7.7%増)、営業利益717億円(同28.7%増)、経常利益752億円(同30.5%増)、純利益421億円(同23.9%増)となり、上半期過去最高の売上高となり、5期連続の増収増益。請負型、ストック型、開発型とも増収増益となり収益構造の安定化が業績を押し上げた。
セグメント別では主力の戸建住宅は消費増税の反動減で影響は受けたものの1棟単価が上昇し、相続税対策などで大幅に伸びた賃貸住宅が戸建ての落ち込みをカバーした。また、リフォーム、不動産フィー事業も高水準で推移し、戸建て分譲やマンションは利益率が改善した。国際事業では政治・経済改革の影響を受けた中国は不振だったが、オーストラリア、シンガポール、アメリカはいずれも販売は好調に推移している。
通期予想では売上高1兆8,200億円(前期比0.8%増)、営業利益1,420億円(同7.6%増)、経常利益1,490億円(同30.5%増)、純利益860億円(同7.8%像)を見込む。配当も期初予想通り50円(前期43円)に増配する予定。
受注状況では、消費増税の反動減を受け、戸建住宅は期初予想の15.3%減を大幅に上回る33.3%減となり、他の事業でカバーしたものの全体で10.2%減となった。
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記者は木造ファンだから書くのだが、同社の木造戸建てブランド「シャーウッド」が同社主力の「鉄骨戸建」を激しく追い上げ、消費増税の駆け込み反動減の厳しい環境下でも大健闘している。過熱(加熱)にも冷え込みにも「木造」は強いことを証明した。
同社の当第2四半期の戸建請負事業の鉄骨戸建(以下「鉄」)売上げ戸数が4,941戸(前年同期比4.8%減)、売上高が1,502億円(同13.1%減)となっている。一方、木造のシャーウッド戸建(以下「木造」)は戸数が2,102戸(同1.8%増)、売上高が721億円(同1.2%増)となっている。
また、分譲住宅事業の「鉄」の売上げ戸数が802戸(同8.7%減)、売上高が224億円(同9.2%減)となっている。これに対して「木造」は戸数が334戸(同5.9%減)、売上高が0.4%増)となっている。
受注高も同様だ。「鉄の」戸建請負の第2四半期受注棟数は「鉄」が3,302戸(同40.7%減)で、「木造」は1,743戸(同29.8%減)、分譲の「鉄は」639戸(同29.9%減)で、「木造」は308戸(7.2%減)だ。
絶対数が大きく異なるので単純比較はできないにしろ、木造が大健闘していると受け取れる。
この傾向は今期だけではない。ここ数年来続いている。2011年度の戸建請負の「鉄」が10,905戸だったのに対し「木造」は3,807戸だった。2013年度は「鉄」は10,658戸(2011年比2.3%減)であるのに対し「木造」は4,392戸(同15.4%増)となっている。つまり「鉄」はやや頭打ちで、「木造」がものすごい勢いで「鉄」を追い上げている構図だ。このまま「鉄」が横ばいを続ければ、10年後には「木造」が逆転する可能性もある。
この話をすると同社関係者は笑って取り合わない。営業マンの配置構成は「鉄」が7に対し「木造」は3だという。ならばこの比率を変えたらどうなるのか、あるいはまた鉄と木造の垣根を取っ払ったらどうなるか。これは興味深い。
同社も営業マンも受注するのなら鉄だろうが木造だろうがどちらでもいいはずだ。決めるのはお客さんだ。これは言い過ぎかもしれないが、住むなら鉄より木がいいに決まっているではないか。国も木造の普及促進に必死だ。同社の鉄と木造の数値は今後も注視したい。
体操ニッポンが始球式に登場 三菱地所 新CM発表イベント
オーロラビジョンに映し出された三菱地所の新CM(手前は体操ニッポン6選手)
三菱地所は8月29日、「体操ニッポン」のオフィシャルスポンサーとして協賛することを決定したことに伴い、東京ドームで行なわれたプロ野球、北海道日本ハム-千葉ロッテのゲームスポンサーとして「『三菱地所を、見に行こう。』ナイター」と銘打って体操ニッポンを応援する新CMのお披露目を行なった。
イベントは試合開始の30分前に開始。同社が招待した子どもたちのベースランニングと西武-日ハムの投手として活躍した柴田保光氏と柏原純一・日ハムコーチとの対決に続き、内村航平選手ら世界選手権男子日本代表選手6人が登場。同社の「体操ニッポン篇・丸の内篇・商業施設篇」30秒3本がオーロラビジョンに映し出され、内村キャプテンの挨拶、日ハム・栗山監督と伊東・ロッテ監督への花束贈呈、6人の同時投球による始球式などが行われた。
体操ニッポン6選手から両監督へ花束贈呈
「西武? まだいけるんじゃないの」柴田氏
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「『三菱地所を、見に行こう。』ナイター」は昨年に続き2回目。今年も広島ファンの杉山博孝・三菱地所社長、竹添昇・日ハム社長からコメントを取るのを楽しみにしていたが両氏は欠席。肩透かしを食らった。
セレモニー終了後には内村選手の囲み取材もあったが、テレビのわずか3分の代表質問一つで打ち切り。「三菱地所をどう思うか」などの気の聞いた質問をする記者はいなかった。
西武ファンの記者は西武のBクラスが決定的で、日ハムが勝とうがロッテが勝とうがどっちでもよく、せめて6人に三菱地所の印象などを聞こうと思ったが、こちらも肩透かし。
ならは観戦者にインタビューしようと移動する際、エレベータ内で4人の選手と一緒になった。すかさず「三菱所って知ってました? 」の質問を発した。みんなうなずいた。そこで「三菱地所ってどういう印象ですか」と二の矢を放った。「……」ややあって、「体操ニッポンと同じ。元気で明るくいい会社」と記者の知る三菱地所のサクラが〝名答〟を代弁した。
6選手の同時投球始球式
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三菱地所も日ハムもイベントを取り仕切る広告代理店も策がない。観客は1時間も前から詰め掛けている。この日は約3万人。社長や監督、CMキャラクターなどのトークショーなどを交えたらもっと面白いイベントになるはずだ。
白井健三選手(左)と内村航平選手
旭化成不動産レジデンス 品川区中延2丁目の防災街区整備事業に参画
旭化成不動産レジデンスが先ごろ、密集市街地の防災機能の確保を目的とした「中延二丁目旧同潤会地区防災街区整備事業」の準備組合結成の届けが完了したと発表した。東京都の「防災街区整備事業」はこれまで3事業が完了、2事業が告示されており、正式に認可されれば6例目になる見込み。
同事業は、東京都の「木密地域不燃化10年プロジェクト」の不燃化特区先行実施地区である東中延1・2丁目、中延2・3丁目エリア内のコア事業として位置づけられている。
同社は、2013年10月に品川区から旧同潤会地区共同化推進支援業務委託を受け、2014年3月15日に事業協力者として選定されている。コーディネーターの首都圏不燃建築公社、施設計画コンサルタントの日建ハウジングシステムなどと今後本組合結成に向けた取り組みを行っていく。
防災街区整備事業とは、「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」に基づく事業で、木造家屋が密集し防災上の不安を抱えた地区を対象とし、密集市街地の防災機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図ることを目的としている。
東京都の防災街区整備方針(2008年)では都内64地区、約3,770haが防災再開発促進地区に定められているが、これまで事業完了したのは板橋区の「板橋三丁目地区」、足立区の「関原一丁目中央地区」、「墨田区京島三丁目地区」の三地区のみで、告示済は品川区の「荏原町駅前地区」と目黒区の「目黒本町五丁目地区」の2カ所がある。
ポラス 学生・建築デザインコンペに458作品が応募 5作品が入選
受賞したみなさん
ポラスグループが8月5日、「第1回POLUS-ポラス-学生・建築デザインコンペティション」の公開審査会を行ない、応募458作品の中で最終審査に残った入選5作品のうち、入居者と街の人々がコミュニケーションできるシェアハウスを提案した東京芸大大学院・杉山由香氏と東京電機大大学院・藤井健太氏の「じじばばシェアハウス」を最優秀賞に選んだ。
コンペは創業45周年を記念したもので、木造による1棟~最大10棟の「自立型の共生を表現した住宅」が応募条件で、応募作品は458件。入賞5作品について各入賞者のプレゼン、質疑応答などが関係者や報道陣に公開された。
審査委員長の青木淳建築計画事務所・青木淳氏は、「社会的なテーマであり、それを木造で建築するという具体的な面もあり、アイデアを盛り込むという全領域をカバーしたコンペ。5作品ともそれぞれ方向が異なりバランスがよかった。これからの木造住宅の環境づくりのきっかけになる」と講評した。
主催者のポラスグループ・中内晃次郎代表は、「木造住宅にかかわる就業者は少なくないのに、学生さんの関心はRCやS造に向きがちなので、45周年を機会にこのようなコンペを行なった。予想をはるかに越える応募があったことに感謝したい。作品のレベルも高く、夢のある提案をたくさん行なっていただいた。作品の実用化を検討しており、現在2つの作品で具体化を進めている」と挨拶した。
受賞した杉山氏は「私なりのメッセージを伝えられて非常に嬉しい。これからも考えを深めブラッシュアップしていきたい」と、藤井氏は「質疑応答に上手に答えられない点もあったが、さらに精進していく」とそれぞれ喜びを語った。
最優秀賞の杉山氏(左)と藤井氏
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住宅に関するコンペはたくさん行なわれているが、プレゼン、質疑応答、審査投票が公開されるのはほとんど前例がないはずだ。記者もワクワクしながら一部始終を見守った。
5作品の中で一番いいと思ったのは、25票満点(審査員5人で一人5票)のうち8票を獲得した最優秀賞に次ぐ6票を得た芝浦工大大学院・吉澤芙美香氏と同・青柳野衣氏の「屋根裏の知恵」だった。
古書店が古書の交換会を行なって循環させているのにヒントを得て、有効に使われていない戸建ての屋根裏をつなぎあわせ、住民同士が自由に出入りできるようにすれば街の図書館になるという提案だった。戸建ての居住部分と屋根裏の間には多目的に利用できる緩衝スペースを設けることも盛り込まれていた。
これには驚いた。権利関係や容積率、高さ制限などの問題があると思ったが、「屋根裏」はヨーロッパの小説にはしばしば登場するし、本来、絶対的所有権を主張する戸建てに共同利用できる空間を提案するという発想がとても面白いと思った。
審査員からは技術的な問題が指摘されたが、「大丈夫だと思います」の「思います」は余分だった。「大丈夫です」と答えていたら最優秀賞に輝いたのではないか。
他では、森林・林業の再生をテーマにした東京電機大大学院・坂本裕太氏の「式年遷住」もよかったが、テーマの割りには提案が平凡だったのが残念だった。街全体を活性化させるようなダイナミックなアイデアを盛り込んでほしかった。それでも、他の審査委員が1作品に2票というのが最多だったのに対し、3票を投じた青木審査委員長が懇親会で「君のが一番よかった」と坂本氏声をかけられたのは、記者も嬉しかった。
青木氏(左)と中内氏
左から審査委員のUID一級建築士事務所・前田圭介氏、法政大学准教授・赤松佳珠子氏、青柳氏、青木審査委員長氏、吉澤氏、審査委員の東大生産技術研究所教授・今井公太郎氏、ポラス暮し科学研究所所長・菅原庸光氏
審査会場(ポラテック本社)
木造のポラテック本社ビル1階
積水ハウス和田勇会長は住宅のキッズデザイン・UD普及活動に軸足を
第8回キッズデザイン賞優秀賞が決定
和田会長
キッズデザイン協議会(会長:和田勇・積水ハウス会長兼CEO)は8月4日、子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つデザインを顕彰する「第8回キッズデザイン賞」の最優秀賞など36点を決定した。
全受賞作品の中からもっとも優れた作品に贈られる「内閣総理大臣賞」にはマツダ「MAZDA TECHNOLOGY FOR KIDS」が選ばれた。車酔いをさせないスムーズな運転の習得を目指すプログラム、子どもによる誤始動を防ぐシステム、子ども歩行者を発見しやすいミラーの開発などが評価された。
8作品の中で住宅関連では、積水ハウス「子どもの生きる力を育むまち、子育て世帯応援タウン~ニッケガーデン花水木~」が経済産業大臣賞に選ばれた。
積水ハウスはこのほか、同社がキッコーマンなどと共同開発した「子どもの生きる力をはぐくむ『弁当の日』応援プロジェクト」が消費者担当大臣賞を、「震災で得た教訓を生かした、子どもと女性にやさしい『おりひめトイレ』」が復興支援デザイン部門賞をそれぞれ受賞した。
「ニッケガーデン花水木」
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記者発表会の冒頭で挨拶した和田会長は、「昨年から内閣総理大臣賞を新設したこともあり、今回の応募作品は過去最高の408点(第1回は287点)になった。子どもの安心・安全、健やかな成長を願う理念を実現する質の高い製品を開発し、日本にとどまらず世界にアピールしていきたい」と語った。
その通りだと思う。記者は住宅・マンションを取材フィールドにしているので、子どもはもちろん大人にもそしてお年寄りや身障者にも使い勝手がいいユニバーサルデザイン(UD)の視点でいつも考えている。
その意味からすると、確かに積水ハウスは間違いなく業界の最先端を走っている。しかし、デベロッパーを含めた業界のUDの取り組みはまだまだ遅れている。同社の取り組みが突出していること自体が情けない。
戸建てだろうがマンションだろうが住宅には子どもやお年寄りに危険なところがいっぱいある。ダイワサービス会長でマンション管理業協会理事長の山根弘美氏は1歳にもならないお子さんを浴室で溺死させたのを今でも悔やんでいる。小さい子どもの頭部にあるドアノブは凶器にもなる。廊下・階段の幅はメーターモジュールにほとんどなっていない。健常者が車椅子利用を強いられるようになったとき、果たしてどれくらいの住宅が軽微な改良でそのまま使用することができるだろうか。転居、建て替えを余儀なくされる住宅は相当数にのぼるはずだ。白内障や色覚障害者に配慮した住宅なども少ない。
そこで提案だ。キッズデザインとUDを含めた常設の展示場をぜひ都内に設置してほしいということだ。住宅部門でのUD、キッズデザインに関する実物、商品、書籍などを常設・常備し、若い研究者、学生が常時利用・研究できるような施設だ。キッズデザイン賞の審査委員長を務める益田文和・東京造形大学教授も「おっしゃる通り、キッズデザインはUDの視点が必要。常設の展示場は設置したい」と後押しした。
費用は年間どれくらいかかるか分からないが、同社の売上額の100分の1どころか1000分の1くらいで十分だろう。そのような施設を設けたところで社会から称賛されても、株主その他から批判されることは絶対ないはずだ。
和田氏は同社を立派な会社に育てたのだから、これからは会社や業界の利益よりも社会の利益を最優先する社会貢献活動に軸足を移していただきたい。〝5本の樹計画〟〝積水のUD〟が住宅・不動産業界の〝当たり前〟になるような活動だ。
益田教授