コスモスイニシア 仲介店舗の概念を変えるリノベーション特化型店舗 表参道に新設
「&Renovation渋谷青山営業所」
コスモスイニシアは9月10日、マンションリノベーション特化型の店舗「&Renovation渋谷青山営業所」を青山・表参道の一等地にオープンする。「あなたの〝好き〟や〝憧れ〟をもっと身近に」がコンセプトで、従来の仲介店舗とは全く異なるショールームのような体感型とすることで新たな需要を掘り起こす。
提供するのは①イニシアパッケージ②ホームデコレーション③リノベーション済マンションの3つ。
イニシアパッケージは、同社の新築マンションブランド「INITIA(イニシア)」仕様をパッケージ化することで、従来のリフォーム会社、リノベーション専門業者、デベロッパー系などと一線を画すデザイン・感性にこだわった商品を提供する。
ホームデコレーションは、イニシアパッケージの6つのデコレーションから好みのものを選択できるようにすることで、設計料を無料にするなどコストダウンを図る。
リノベーション済マンションは、同社の新築マンションと同様の設備仕様にするほか、シニア向けやトランジットジェネラルオフィスとコラボしたデザイナーズホテルのような商品も供給する。住宅設備は最大10年保証とし、工事費は65㎡で約1,000万円を実現する。
同社は1970年に創業して以来40年を超え、新築マンションを約10万戸、一戸建てを約1,000戸供給している。供給量はデベロッパートップクラスで、最近はデザインにこだわった商品企画が評価されている。
同社はリノベーション事業を新築に次ぐ事業の柱として位置づけており、今年度引き渡し予定戸数275戸を2年後の2018年度には400~450戸を目指す。青山の一等地に店舗を構えたのは、今後、新築でも都心部で供給していくことから双方のニーズを商品に反映させていくのが狙い。
店舗は、東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅から徒歩3分、渋谷区神宮前5-52-2、青山オーバルビル地下1階。店舗面積は約50坪。営業時間は10:00~18:30。連絡先は0120-1248-61。
エッジ スタイル
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同社の新築マンションについてはここ数年、木質感にこだわったりアンティークな建具・家具を採用したりしてデザインを一新したのは実感しているが、今回の店舗もその延長線上にある。
どこも真似ができないというのはいかにも同社らしいのだが、今回の店舗は一般的な不動産仲介店舗とはまったく異なるし、大手デベロッパーが力を入れ出したワンストップ型店舗とも趣が異なる。どちらかと言えばインテリア・家具メーカーのショールームやサロンに近い。
ここまで徹底し、しかも表参道の一等地に設けたところに、同社のリノベーション事業にかける意気込みが伝わってくる。
ただ、どこにもない店舗だけにどう認知させていくのか、どう集客するのかという課題もありそうだ。様々なイベントを仕掛ければ大ヒットするかもしれない。
ホームデコレーション
中堅所得層でも手が届く坪350万円 スターツ・安田不の定借「千桜タワー」
「アルファグランデ千桜タワー」完成予想図
スターツグループのスターツデベロッブメントと安田不動産が分譲している「アルファグランデ千桜タワー」を見学した。神田や日本橋も徒歩圏の都営新宿線岩本町駅から徒歩1分、免震工法を採用した期間70年の定期借地権付きで坪単価は350万円。中堅所得層でも手が届く価格帯が評価され、好調な売れ行きを見せている。
物件は、都営地下鉄新宿線「岩本町」駅徒歩1分、千代田区神田東松下町に位置する25階建て全276 戸(事業協力者住戸27戸、非分譲住戸65戸含む)。専有面積は56.14〜110.51㎡、坪単価は350万円。竣工予定は平成30年6月中旬。設計は山下設計・大成建設。施工はスターツCAM・大成建設共同企業体。事業主はスターツコーポレーション。売主はスターツデベロップメントと安田不動産。
プロジェクトは、千代田区立千桜小学校の跡地と隣接の民有地を一体として開発するもので、区のコンペによって応募7社(グルーブ)の中からスターツグループが選定された。評価されたのは免震工法を採用したこと、建物の高さを抑え周辺環境に配慮したこと、防災機能を備え公開空地を確保したこと、定期借地権付きとしたスキームであること、周辺住民・地権者・住宅購入者・区のいずれにも偏らない計画であることなど。
建物の1階から7階までは店舗、事務所、非分譲住戸で分譲住戸は8階以上。住戸は50~60㎡台の小家族向けから70~80㎡台のファミリー向けがバランスよく配置されているのが特徴。共用部分には江戸小紋や江戸切子をモチーフにしたデザインが施されている。最上階のプレミアム住戸は突板仕様の建具・壁が採用されている。
これまで178戸が供給され、販売は極めて好調に推移している。
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この前は、やはり期間70年の定期借地権付き「ブランズ世田谷中町」を紹介したが、今回もまた同じ期間70年の定借マンションだ。都心部や準都心部のマンションは地価・建築費の高騰で中堅所得層の取得が困難になりつつあるが、この二つのマンションは何とか手が届く範囲内だ。「千桜」は、3LDKが5,000万円台で取得できる。人気になるのも当然だ。
現地は千葉周作の道場があったところだそうで、「神田東松下町」は「神田紺屋町」「神田東紺屋町」「神田鍛冶町」「神田北乗物町」などに隣接・近接しており、昔ながらの下町の風情が残っているところもある。きれいとは言えないが神田川もすぐ近くに流れる。
広告表示では、岩本町駅まで徒歩1分(80m、広告表示では駅の出入り口までの距離を表示することになっている)だが、私道を通れば数十秒で行けるそうだ。記者はその私道を見つけられなかった。そもそも私道は許可なく立ち入ることは不可だ。土地所有者は黙認するのだろうか。
エントランス
東急不動産 「東急プラザ銀座」が「SEGES:都市のオアシス2016」に認定
屋上テラス「KIRIKO TERRACE(キリコテラス)」
東急不動産は9月5日、「東急プラザ銀座」(東京都中央区)が、優れた緑地を対象とする都市緑化機構の「SEGES(シージェス、社会・環境貢献緑地評価システム):都市のオアシス2016」に認定されたと発表した。
「SEGES(シージェス):都市のオアシス」は、都市緑化機構が「環境への配慮」「安全性」「公開性」の点で優れた緑地を認定するもの。
「東急プラザ銀座」は、都市部における積極的な緑化の取り組みと、魅力的な街づくりに寄与する地域貢献が高い評価を受けた。生物多様性保全にも配慮した屋上テラス「KIRIKO TERRACE(キリコテラス)」の壁面緑化は高さ6.5メートル、全長64メートル、約50種の草花を用いて四季の移り変わりと植物の豊かな色彩を演出している。
「都市のオアシス2016」には、このほか「グランツリー武蔵小杉」(川崎市、イトーヨーカ堂)、「Tri-Seven Roppongi」(港区、ペンブローク・リアルエステート・ジャパン・エルエルシー)、「モリパーク アウトドアヴィレッジ」(昭島市、昭和飛行機工業)、「東京ガーデンテラス紀尾井町」(千代田区、西武プロパティーズ)、「キリンビール横浜工場」(横浜市、キリンビール)が認定された。
東急不動産の記念碑的マンション 定借「ブランズシティ世田谷中町」は坪308万円
「ブランズシティ世田谷中町」(右)と「グランクレール世田谷中町」完成予想図
東急不動産が9月中旬に分譲する大規模複合マンション「ブランズシティ世田谷中町」を見学した。敷地規模が約1万坪(シニア住宅含む)の第一種低層住居専用地域に位置する低層マンションで、期間70年の定期借地権付き。同社の記念碑的なマンションの一つになるのは間違いない。
物件は、東急田園都市線桜新町駅・用賀駅から徒歩15分、世田谷区中町五丁目の第一種低層住居専用地域に位置する4階建て6棟構成の全252戸。専有面積は70.58~90.98㎡、予定価格は5,800万円台~9,400万円台(最多価格帯6,600万円台)、坪単価は308万円。期間70年の定期借地権付き。竣工予定は2017年7月下旬。設計・施工・監理は長谷工コーポレーション。
現地は、NTT東日本の社宅跡地。敷地規模1万坪超の第一種低層住居専用地域に位置するマンションは、世田谷区内では過去に三井不動産他「パークシティ弦巻」しかなく今回は2件目。
街づくりコンセプトは〝LOVE &INNOVATION〟。米国・ポートランドの街を参考に世代が交流しあう循環型のモデルシティを目指す。東京都の「一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅整備事業」第一号案件でもある。
分譲マンションのほかに、シニア住宅「グランクレール世田谷中町」(サービス付き高齢者向け住宅シニアレジデンス176戸・ケアレジデンス75戸)と、グランクレールの敷地にはコミュニティサロン、カルチャールーム、介護事業所、認可保育園が併設される。コミュニティサロンは東京都市大学と連携して様々な空間設計・プログラム企画を行う。
「ブランズシティ世田谷中町」は全住棟が南東向き。各棟の間にはシーズンプロムナード、プライベートキッチンガーデン、キッズベース、ハーヴェストガーデンなどを整備。五感で感じる自然を演出し、みんなが集まる仕掛けを施す。用賀駅への直通専用シャトルバスも運行する。
住戸は70㎡台のファミリー向けが中心。御影石のカウンターキッチン・洗面カウンター、ミストサウナが標準装備。
シーズンプロムナード
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上野毛駅近くに設けられているゲストサロンに入ってすぐ、回転すしの小型コンベアに老若男女、様々な生活シーンを描いた工作物が流れているのが目に飛び込んできた。壁の棚には米国・ポートランドのグッズが並べられていた。
「循環型モデルシティ」のコンセプトが集約されており、なかなかいい仕掛けだと感心したら、その奥の模型もまたよくできていた。先週は約4.7haの第一種低層住居専用地域の野村不動産「プラウドシティ阿佐ヶ谷」を見学し、その圧倒的な緑に驚いた。今回はそれより規模は小さいが、1万坪に広がる4階建ての美しいスカイラインが表現されていた。
定期借地権付きというのもいい。プランはショートスパンの70㎡台の住戸も少なくはないが、だからこそ、普通のサラリーマン層でも容易ではないが何とか手が届く価格帯になるのではないか。所有権分譲だったら、坪単価は300万円台の後半になっていたはずだ。
見学しながらずっと同社の他の大規模マンションと比較して考えていた。最近ではタワー型の「みなとみらい」が出色だったが、中低層型のマンションでは2001年竣工の「東急ドエル イディオスあざみ野」(321戸)が真っ先に浮かんだ。確か大手銀行の社宅跡地だった。
今回はNTTの社宅跡地だ。シアターやパンフレットには「ブランズの集大成」とあったが、間違いなくそう言える。同社の記念碑的マンションの一つに加えたい。
コミュニティサロン
ゲストサロン
東急不HDグループ 「世田谷中町プロジェクト」で東京都市大と産学連携(2016/8/9)
アキュラホーム 先進的モデルタウン「浦和美園E-フォレスト」分譲開始
「浦和美園E-フォレスト」
アキュラホームは9月3日、さいたま市浦和美園地区の先進的モデルタウン「浦和美園E-フォレスト」の販売を開始する。
「浦和美園E-フォレスト」は、さいたま市の「スマートホームコミュニティ整備事業」に採択された街づくりプロジェクトで、同社は全33区画のうち6区画を担当する。
創エネ・省エネ・高気密高断熱のハイスペック住宅を建築し、その周辺にコモンスペース(つどいの庭)を配置。住人同士のコミュニティの場として子どもたちが安全に遊べるゆとりの空間を提案している。
物件は、埼玉高速鉄道浦和美園駅から徒歩6分、さいたま市緑区下野田に位置する全6棟のうち3棟。土地面積は150.00~187.99㎡、建物面積は104.79~109.74㎡、価格は4,850万~5,180万円。
インテリックス 東証1部昇格に伴う「感謝祭」に960名参加
「インテリックス感謝祭」(セルリアンタワー東急ホテルで)
山本社長
インテリックスは9月2日、東証2部から1部へ6月9日付で指定変えされたことに伴う「感謝祭」を行い、不動産流通会社中心に関係者ら約960名が参加し祝った。
冒頭、挨拶した山本卓也社長は、「東証1部に上場できましたのも、ひとえに支えてくださいました皆さんのお陰。感謝申し上げます」と語った。
来賓として登壇した日本土地建物販売・古屋雅弘社長は、「1995年に創業され、リノベーションの風を初めて業界に吹き込まれた」と祝辞を述べた。
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同社がここまで急成長するとは夢にも思わなかった。渋谷に本社機能を移した2000年ころだったか、〝買い取り再販〟の同社が伸びているという噂を聞いて取材に行った。〝買い取り再販〟に対してはいいイメージを持っていなかった。バブル期に流行った〝マンション転がし〟の別名ではないかと。
そして、その後、「リノベックスマンション」を見学した。玄関ドア、サッシなどの共用部分は従前のままだが、室内をほとんど一新したモデルルームをみて「なかなかいい商品を供給する」と思った。それでも、「リフォームマンション」などを手掛ける会社もたくさんあり、どこまで伸びるか半信半疑だった。
その後の急伸ぶりについては省略するが、2005年にジャスダックに上場、2008年には国交省の「第2回超長期住宅先導的モデル事業」にも採択された。同社が中心になって2009年に立ち上げた自主規制団体「リノベーション住宅推進協議会」も「リノベーション」を一般化させる原動力となった。2015年のリノベーションマンションの販売戸数は15,680戸に達している。
単なる1業者の中古マンション再生の商品名でしかなかった〝リノベックス〟を〝リノベーション〟という一般名詞まで引き上げた功績は計り知れない。
山本社長は「プレーヤーが多すぎる」と競争が激化している現状をこう表現し、今後は不動産小口化商品「アセットシェアリング」など新規事業にも注力していくという。
木住協 平成27年度の木造着工は約8.8万戸 全国のシェア19.8%
日本木造住宅産業協会(木住協、会長:住友林業社長)は8月31日、平成27年度の木住協自主統計調査の結果をまとめ発表した。
会員の住宅着工戸数は92,439戸(前年比105.1%)となり、このうち木造戸建ては88,489戸(前年比104.2%)と増加した。国交省の住宅着工統計に占める会員会社の木造戸建てのシェアは19.8%となり、前年の19.5%より0.3ポイント増加した。
「平成25年小エネルギー基準適合住宅」の戸建て着工戸数は53,714戸となり、前年より36,396戸増加(前年比310.2%)し、会員会社が着工した戸建て住宅に占める割合は60.7%になった。
長期優良住宅の着工戸数は31,032戸(前年比107.5%)で、会員が着工した戸建て住宅に占める割合は35.1%になった。
会員会社が着工した戸建て住宅に占める太陽光発電搭載住宅の割合は27.9%だった。
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木造ファンの記者にとって数値がよくなっているのは嬉しいが、会員433社のシェアが19.8%なのはやや寂しい。
これほどの会員を抱えながらシェアが伸びないのは、中小零細をカバーしていないこともありそうだが、年間で約4万戸、1日当たり約100戸の戸建てを分譲しているガリバー企業の飯田グループホールディングスが加入していないのも大きな要因だ。仮に飯田グループが加入したら、他の数値はともかく、着工シェアは一挙に30%近くに伸びる。
飯田グループへの取材をやめて10年以上が経過するが、圧倒的なシェアを占める飯田グループを取材しないのはやはり問題がある。応じてくれるかどうかは分からないが、取材を復活することをこの日決めた。
タカラレーベン「レーベン府中西府」 駅前でスーパー、保育園、小学校が近接
「レーベン府中西府」完成予想図
タカラレーベンが分譲中の「レーベン府中西府」を見学した。JR南武線西府駅から徒歩1分の全48戸で、坪単価は230万円。4月から販売しており、8月26日時点で28戸が成約済み。コンスタントに売れている。
物件は、JR南武線西府駅から徒歩1分、府中市西府町1丁目に位置する7階建て全47戸。専有面積は43.49~87.98㎡、坪単価は230万円。竣工予定は平成29年1月下旬。施工は埼玉建興。設計・監理はトータルブレイン。売主は同社のほか三信住建。
現地は、2009年に開業した西府駅のすぐ前。道路を挟んだ対面にはスーパーがあり、保育園へは徒歩1分、小学校は徒歩2分の立地。
住戸は南東向きと南西向き。二重床・二重天井、食洗機、超微細な気泡により洗浄力が高く温浴効果もある「たからのバブルマイクロトルネード」が標準装備。
4月から販売開始されており、これまでに地元住民中心に28戸が販売済み。
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西府駅圏のマンション取材は約3年前、三信住建が分譲して早期完売した「プレミアムレジデンス府中西府駅前」45戸以来だが、今回はその隣接地。当時、まだ空き地だった対面にはスーパーもあった。
坪単価230万円は当時の200万円強から高くはなっているが、これも地価・建築費の上昇を考えるとやむを得ないのかもしれない。
モデルルームは、同社の他のマンション同様かなり派手だが、一つの提案としては面白い。
第一次取得層向けの郊外マンションは復活するのか
ここ最近ずっと考えているのは、どうしたら郊外マンションが売れるかということだ。念頭にあるのは一般的な夫婦と子どもが1~2人の家族が無理なく取得できる「3,500万円以下のファミリーマンション」だ。居住面積を70㎡とすると、坪単価165万円以下だ。
この坪165万円以下というマンションはこのところの地価・建築費の上昇でほとんど絶望的になってきている。これが記者を悩ませている。
●マクロデータ
マクロデータでみてみよう。
まず、首都圏マンション市場の概観から。不動産経済研究所(不動研)の調査によると、2016年上半期(1~6月)の首都圏マンション市場動向は、①供給量が前年同期比19.8%減の14,454戸となり、微増となった埼玉県以外の都県は二ケタ以上の大幅減②初月契約率は平均68.4%で、前年同期の76.1%より7.7ポイントダウン。上半期としては7年ぶりの70%割れ③1戸当たり価格は5,686万円で、430万円(8.2%)の上昇④3.3㎡(1坪)当たり単価は270万円で、前年同期より22.8万円(9.2%)上昇――などとなっている。
郊外マンションの価格動向については、2015年の平均分譲価格(坪単価)は神奈川県が5,080万円(238万円)埼玉県が4,295万円(196万円)、千葉県が4,050万円(180万円)となっており、2016年上半期も上昇傾向が続いている。
供給量も激減している。これまでもっとも供給量が多かった2000年(全体で9万5,635戸)には神奈川県の供給量は約25,000戸で、埼玉、千葉県は約10,000戸だったのが、2015年には神奈川県が約8,000戸で、埼玉県も千葉県は4,000戸を割り込んだ。
こうした結果、2000年は全供給戸数のうち34.2%に当たる3万2,754戸が66㎡以上で3,500万円以下のファミリー向けマンションだったのが、最近では戸数も比率も減少し、その比率は20%を割り込んでいると思われる。
これほど市場が縮小しているのは需要がないからではない。国土交通省の調査によると、全国の住宅不満は平成5年の35.4%から平成25年には22.1%へ13.3ポイントも改善はしているが、マンションの主な需要層である賃貸居住者の住宅不満は50%を超えるはずだ。賃貸の質が劣っているからマンションへの移住を考える〝賃貸脱出派〟が分譲市場を支える構造に変化はない。
それでも需要が潜在化したのは、供給サイドが需要に見合う商品を供給できないからだ。住宅ローン金利が2.95%(固定金利選択型10年)と史上最低水準にあり、それだけ買いやすさは増しているものの、借金をすることに変わりはなく、将来の経済・雇用不安などの理由から需要が顕在化してこないというのが現状だ。
●プレーヤー
次にマンション市場のプレーヤーの動向について考えてみる。
長谷工コーポレーションの「CRI」の調査によると、大手デベロッパー7社の今年上半期の供給量は7,678戸で、前年同期比5.1%減だ。
大手のメインターゲットは富裕層・アッパーミドルだ。大手が後半供給を伸ばすかどうかわからないが、昨年の1万6,961戸(全体に占める供給比率41.9%)を下回ると見ている。タワーマンションの供給が増えそうになく、中堅所得層向けの一部の物件で売れ行きが芳しくないからで、年間では1万6,000戸を下回るのではないかと見ている。
一方で、中堅のメインターゲットは第一次取得層だ。後半戦のカギを握るのは、この第一次取得層向けのマンションが売れるかどうかにかかっているのだが、これは悲観的に見ざるを得ない。中堅の供給シェアはリーマン・ショック前の2007年は73.4%だったのが昨年は58.1%にまで低下している。大手の寡占化が進行し、全体として大手の動向に左右されるのが中堅だ。
どちらかと言えば、大手は大量宣伝・大量集客によって需要を喚起し、地引網のように顧客を獲得する戦法を得意とする。中堅はこの戦法が取れない。徹底した差別化を図り、きめ細かな対応で大手と互角に戦ってほしいと願うほかない。
●社会・経済状況の変化
需要が顕在化しない理由を、社会・経済状況からアプローチした。
最近の労働力調査では就業者、就業率、失業率などの数値は改善が見られるが、正規・非正規の雇用形態に変化はそれほどみられない。
総務省の調査によると、1990年に881万人だった非正規雇用者数は、2015年に1980万人と2倍以上になっており、正規・非正規雇用者の合計に占める割合は1990年の20.2%から2015年には37.5%へと2倍近く上昇している。正規は1990年代の半ば以降ほぼ一貫して減り続けている。
一般労働者(正社員・正職員)の平均賃金1,958円/1時間であるのに対して、正社員・正職員以外の平均賃金は1,258円/1時間とかなりの差がある。非正規雇用の増加は高齢者だけでなく、全階層でも増加しているのが特徴だ。
世帯構成も激変している。1980年(昭和55年)には専業主婦世帯1,114万世帯に対し共働き世帯は614万世帯だったのが、2015年(平成27年)では共働き世帯が1,114万世帯なのに対し専業主婦世帯は687万世帯となっており、ほぼ正反対の関係になっている。
少子化が進んでいるのに待機児童・学童保育問題が大きな課題になっているのは、このようにバブル経済の崩壊による経済・社会構造が一変したからだ。
これら就業のあり方も含めた雇用の問題、待機児童・学童保育の問題を解決しないと、第一次取得層向けマンション市場の本格回復は難しいと言わざるを得ない。
●若年層の意識
若年層の意識はどうか。厚労省の2013年時点で若年層(15~39歳)の意識調査では、現在の生活に「満足している」「どちらかといえば満足している」人の割合は約6割にのぼる。その理由は、経済的な豊かさ(5.7%)より精神的な充実(82.6%)を挙げる人が圧倒的に多い。
一方で、日本の未来は明るいかという問いでは、「(どちらかといえば)そう思わない」と回答した人が45.1%と半数近くを占め、「(どちらかといえば)そう思う」と回答した人(19.2%)の倍近くある。
不安の理由は、財政悪化や社会保障制度に対する不安を挙げる人が72.9%にのぼり、経済不安(60.9%)、雇用不安(49.2%)などとなっている。
経済的な豊かさより精神的な充実に重きを置き、いまの生活には満足している一方で、社会保障制度、経済不安、雇用不安などから明るい展望を持てない若年層の姿が浮かび上がる。
さらに、若年層の意識を探るのに何か手がかりがつかめるかもと思い、第155回芥川賞を受賞した36歳の村田沙耶香氏の「コンビニ人間」を読んだ。村田氏の体験をもとに描かれた小説で、主人公は、コンビニで働いているときだけ存在感が感じられる36歳の恋愛経験のない独身女性だ。
読んでみてさっぱり理解できなかった。選考委員の山田詠美氏が「十数年選考委員をやってきたが、候補作を読んで笑ったのは初めて。そして、その笑いは何とも味わい深いアイロニーを含む」と語っているが、記者はどうしてこのような作品が選ばれるのかということも含めて「訳が分からない」というのが正直な感想だ。奥泉光氏の「主人公の孤立ぶりには慄然とさせられる」や、村上龍氏の「(主人公は)実はどこにでもいる」という選評に近い。
芸術作品も時代を反映するとすれば、「コンビニ」の内も外も狂っているのがいまの社会なのか。
三井不動産 青木茂建築工房と業務提携 リファイニング建築手法を活用
三井不動産は8月30日、青木茂建築工房と業務提携し、同社のリファイニング建築手法を活用して、旧耐震基準建物等の老朽化不動産の再生コンサルティングサービスを開始すると発表した。同事業を通じて練馬区と大田区の2カ所で事業推進中。今後老朽化不動産の再生事業を本格的に進める。
リファイニング建築とは、青木茂建築工房の独自の建築手法で、リフォームやリノベーションと異なり、耐震診断・補強を行ったうえで既存躯体の約80%を再利用しながら、建て替えの60〜70%のコストで、大胆な意匠の転換や用途変更、設備一新を行い、建物の長寿命化を図る新たな再生手法。全て現行法に適合させることも大きな特徴。
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同社がリファイン建築手法を採用するのはうすうす感じていた。2013年に同社は「マンション再生セミナー」を実施したが、その時の講師の一人が青木茂氏だった。青木氏はリファイニング手法の優位性を力説されていた。
「再生建築学の設置を」 青木茂氏、三井不動産のセミナーで語る(2013/12/10)