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店舗・自宅併用賃貸マンション「ベレオプラス」

 積水ハウス・阿部俊則社長兼COOが先の決算説明会で絶賛した渋谷区神宮前の店舗・自宅併用賃貸マンション「ベレオプラス」を見学した。表参道駅から徒歩1分、大通りから1歩入った低中層住宅・店舗などが混在する地域に建つ、敷地面積約177坪の重量鉄骨造3階建て延べ床面積約923㎡だ。表参道の一等地にふさわしい、土地の魅力を最大限に引き出す企画力が光る。阿部社長が絶賛したのもうなずける。

 まずランドプラン。敷地は四角い整形地だが、建物をコの字型に配して、その凹んだ部分に中庭を設け、1階店舗へ誘導するアプローチの役割を果たすのと同時に、住宅部分の採光・通風にも配慮しているのが特徴だ。

 建物外壁には彫の深いシェルテック・コンクリートのほかに大判のタイルを貼りアクセントを持たせている。全体的に陰影の深いシンボリックな外観に仕上げている。

 外構には同社の「5本の樹」計画を盛り込んで環境・景観に配慮。外周は石積みとし、ふんだんに植栽を施している。玄関までのアプローチにも工夫を凝らしている。舗道は緩やかなカーブを描かせ「間」を持たせ、玄関には風除室を設置。エレベータホールも広い。同社が「ホテルライクスタイル」と呼ぶのも納得だ。

 賃貸住宅は1LDK3戸。エネルギーコストをゼロにすることを目標とする「グリーンファースト ゼロ賃貸」の一つで、IHのアイランドキッチン、太陽光発電システム、HEMSを採用。高家賃であるにも関わらず、建物完成前に全戸契約済みになったそうだ。

 阿部社長兼COOは、鉄骨造の課題の一つに「表情」(が乏しいという意味)を挙げたが、この「ベレオプラス」はそれを解消している。

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エントランスアプローチ

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 同社は先に平成29年1月期第2四半期決算を発表。ほとんどの事業セグメントの利益率の改善が継続していることから、通期の連結業績予想を当初計画から平成28年3月10日に発表した通気予想を売上高2兆円(前期比7.6%増)、営業利益1,750億円(前期比16.9%増)、経常利益1,780億円(前期比10.8%増)、当期純利益1,130億円(前期比34.0%増)にそれぞれ修正、4期連続での過去最高益予想をさらに上乗せした。

 阿部社長兼COOが「ベレオプラス」を絶賛したのは、業績好調の背景には同社の企画提案力があることをメディアにアピールしたかったからだろう。今度は木造「シャーウッド」で3・4階建てに挑戦してほしい。

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エントランス

 

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準々決勝戦で対決したポラス暮し科学研究所「軌条(きじょう)」(左)とポラス建築技術訓練校「ジャパドゥビ」

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稲山教授

 実物大の木造耐力壁を油圧ジャッキで〝綱引き〟をし、どこが一番強いかをトーナメント方式で競う「第19回木造耐力壁ジャパンカップ」が9月17~19日、静岡県富士宮市の日本建築専門学校で行われ、ポラスグループのポラス暮し科学研究所の「軌条(きじょう)」が準優勝した。また、ポラス建築技術訓練校の「ジャパドゥビ」が審査員特別賞を受賞した。コスト、デザイン、環境負荷など総合的評価を争う総合優勝は四国産業能力開発大学校の「壁SANUKI」が、トーナメント戦はkiba勝timbers(東京木場建材・東日本パワーファスニング・東大木質材料学研究室)の「HAMEX」がそれぞれ獲得した。

 「木造耐力壁ジャパンカップ」は、NPO法人・木の建築フォラムが主催して行なわれているもので、今回は10体が参加。17、18日の予選を勝ち抜いた8体が19日の準々決勝-準決勝-決勝戦を行った。試合は、耐力壁の土台を固定し、それぞれの桁同士の間にジャッキを装着し引き合って行い、破壊されたほうが負けとなる。破壊されない場合は、お互いの壁頂部の水平変位の合計が450mmに達した場合の水平変位の大きいほうが負けとなる。

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試合後の壁の状態を食い入るように見つめる参加者

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 トーナメント決勝戦で「軌条」を30キロニートン当たりで破壊した「HAMEX」の設計を担当した東大木質材料学研究所博士課程・落合陽氏と同修士課程・佐々木賢太氏は、「土台にカラマツのLVLを採用し、ホゾの部分を浅くする一方で、長いビスを使って補強したのが勝因」と語った。

 耐力壁を紹介するパンフレットには「白鵬がツッパリを全力でかましてもビクともしない某ハウスメーカーのような堅固なストラクチャーを兼ね備えた銀河系最強の耐力壁」と自画自賛していた。試合後の強度検証では50キロニュートンだった(過去の記録は62キロニュートン)。

 大会の進行役を務めている東京大学木質材科学研究室・稲山正弘教授は、「今回の作品には私は関与していない。LVLを普及させるためにはコストと防腐・防蟻処理をどうするかが課題」と話した。

 LVL(LaminatedVeneerLumber)は、切削機械でスライスされた単板(Veneer)を平行に積層・接着して造られる木材加工製品。CLTより強度が高いとされるが、コスト面などで住宅の構造材に使われることはないという。

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優勝したkiba勝timbers(東京木場建材・東日本パワーファスニング・東大木質材料学研究室)「HAMEX」(左)と「軌条」

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カラマツのLVLを土台に用いた「HAMEX」

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「HAMEX」のメンバー

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落合氏(左)佐々木氏

 「HAMEX」に完敗した「軌条」のポラス暮し科学研究所・上廣太主席研究員は、「決勝戦までの戦いで弟分の『ジャパドゥビ』にダメージを受けていた」と敗因を語り、訓練校の健闘を称えた。

 「軌条」には補強材として湿ると強度が高くなるというグラスファイバーテープを土台部分に使用しており、地元の川の水を「聖水」としてスプレーでテープに欠けるなどのパフォーマンスを行った。

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 「軌条」に使用されている金輪(左)とグラスファイバーテープ

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 「軌条」のメンバー

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 20歳前後のメンバー8人で構成されているポラス建築技術訓練校の「ジャパドゥビ」が、金物を使用せず兄貴分の「軌条」に善戦したことなどが評価されて審査員特別賞を受賞した。稲山教授も「非常にいい」と褒めた。

メンバーは「本当は施工部門で1位を取りたかった。来年は1位になれるよう頑張る」と話した。

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上段左からポラスグループの小暮涼太、冨田力也、澤田渓史、工藤嵩大、下段左から落合敦哉、林竜樹、甲斐優輝、田川樹の各氏

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 素人の記者が注目したのは、東京理科大高橋研究室の「富士の鬼蜘蛛」だった。壁のほぼ中央に奇怪でしかも稚拙な(失礼)、とても耐力と関係があるとは思えない白い〝蜘蛛の巣〟が貼られていた。

 記者は固唾をのんで四国産業能力開発大学校の「壁SANUKI」との戦いを眺めたが、あっさり敗退した。蜘蛛の巣は全く反応せず、肝心の主(蜘蛛)も出現しなかった。審査員も「効果? ないですね。単なるデザイン」といま一つの評価だった。

 しかし、当事者は真剣そのもの。メンバーを指導した東京理科大工学部建築学科・高橋治教授は、「初めて大会に参加した。蜘蛛の巣に使用した材料は鉄よりも強い新素材の『テクノーラ』で、様々な製品に採用されている。木との接合が課題だが、来年は改良して再挑戦したい」と敗戦にも屈しなかった。高橋氏は「大会はちょっとレギュレーションが細かすぎるのではないか」と注文もつけた。

 新素材といえば、木の繊維でできている「セルロースナノファイバー」もあるではないか。新素材で構造材に新風を送ってほしい。

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四国産業能力開発大学校「壁SANUKI」(左)に敗れた東京理科大高橋研究室の「富士の鬼蜘蛛」

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〝鬼蜘蛛〟

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東京理科大高橋研究室「富士の鬼蜘蛛」メンバー

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 予選で敗退し、作品を見ることができなかった初参加の日本工学院専門学校の「竹筋壁」も面白いと思った。貫(ぬき)の部分に竹を用いているのが特徴で、メンバーは「学校では座学ばっかり。木にも用具にも触るのが初めて」と語った。担任の同校建築学科・井口純先生は「竹を構造材に採用するのは珍しいのではないか。いい経験になった。来年も挑戦したい」と意欲を見せた。

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日本工学院専門学校の「竹筋壁」メンバー

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解体作業(作業をする人数、男女差、時間、一定の枠から部材などが飛び出した場合のペナルティ、掃除などもきめ細かに評価される)

ポラス 4年振り7度目の耐力壁トーナメント優勝 総合は滋賀職能大が4連覇(2015/8/14)

 マンション管理業協会は9月21日、「管理組合として民泊を禁止または容認する場合の管理規約の例および考え方を作成・公表いただきたい」とする内容の要望書を石井国土交通大臣宛に提出した。

 要望書では、「分譲マンションは、そのほとんどが区分所有者が生活の本拠を置く実住型で、平穏に暮らすことを目的としており、不特定多数の者が出入りする民泊は、これを阻害するものとして、関係方面から多くの反対意見が表明されており、一方、リゾートマンションや繁華街等に位置する一部の投資型マンションでは、その利用形態から民泊制度を活用したいニーズもあるのが現状」とし、「国土交通省が作成・公表する現行の『マンション標準管理規約』では、民泊のような利用形態は想定されていないことから、これに準拠する各分譲マンションでは、管理規約上、民泊はそもそも認められていないと考えてよいか、また、今後、認める場合・認めない場合にどのように規定すればよいか混乱が生じています」としている。

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 この要望書に対して国交省がどのような回答をするかだが、法律に照らし合わせると、マンションでの民泊は不可と解されるのではないか。

 区分所有者の権利義務を定めた区分所有法第6条では、「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と定めている。民泊利用が区分所有者の共同の利益に抵触する可能性が高いと理解されそうだ。

 また、マンションの規約の設定、変更などを定めた同法第31条では、前段で「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする」とあり、また後段では「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と規定されており、規約変更によって民泊利用を可能にするのは大きな壁がある。

 さらに、国土交通省が作成した「マンション標準管理規約」の専有部分の用途を定めた第12条には「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」としている。

 常識的に考えるなら、「専ら住宅」は他の用途を想定していない。ただ、「専ら」の文言は「主として」とも解されるので、住宅以外の用途を完全に排除したものではないとも受け取れる。

 なので、投資用マンションなどでは民泊を認める動きが出てくる可能性もありそうだ。

 

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「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)完成予想図

 京阪電鉄不動産(事業比率55%)、総合地所(同44%)、長谷工コーポレーション(同1%)の3社共同マンション「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)」を見学した。南武線尻手駅から徒歩14分とやや距離はあるが、坪単価は173万円。圧倒的な価格の安さが人気で、第1期131戸に102戸の申し込みが入った。

 物件は、JR南武線尻手駅から徒歩14分(矢向駅から徒歩15分)、横浜市鶴見区江ヶ崎町に位置する7階建て全338戸。専有面積は68.70~85.50㎡、3LDK、70㎡台が3,500万円台中心で坪単価は173万円。竣工予定は平成30年2月上旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。

 現地は、尻手駅からはやや距離があるが、敷地面積約1.3haの敷地に建物をロの字型に配し、その中央の3,000㎡超に中庭を設置。9つの企業とコラボして共用施設の充実を図り、入居者のコミュニティ支援を前面に打ち出したのが特徴。

 川崎駅へ1駅で、圧倒的な価格の安さから9月13日に抽選分譲した第1期131戸には102戸の申し込みが入った。プライベートガーデン(専用庭)を設けた1階住戸は7階住戸と価格がほとんど同じだったにも関わらず、抽選になる人気で完売となった。4月からの来場者は約400件。申込者のうち約15%が東京都大田区の居住者で、歩留まりが高いのが特徴。

 京阪電鉄不動産首都圏事業部東京営業部所長・高橋和寿氏は、「3LDKで3,500万円台中心という価格を何とか維持し、入居者がマンション全体を自然にシェアしながら自発的にコミュニティを形成していく仕掛けを施した。第1期が好調なスタートを切れたことで、〝郊外の販売不振〟の打開策に一つの答えを出せた」と語った。

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アコースティックライブ

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 「第一次取得層の取得限界は3,500万円というのがわたしの信念」-同社・高橋氏が前回取材した「ファインシティ東松戸モール&レジデンス」でこう語ったが、今回の「イマジンテラス」でもこの信念が貫かれている。

 この思いに記者も共感できる。ファミリー向けの3LDKで3,500万円台というマンションは、よほどの遠隔地マンションでないと供給できなくなってきた。ローン金利がただ同然になのは救いだが、一般所得層の実質賃金はバブル崩壊後低迷したままだ。その一方で、一挙にマンション価格が上昇してしまった。消費者の消費マインドも一向に上向く気配がない。

 このような状況下で、どこが需要を創造するかずっと注目してきたのだが、同社が敢然と「3LDKで3,500万円台」に挑戦。結果を出している。いま郊外マンションの第1期分譲で成約できるのはせいぜい数十戸だ。いかにこの物件が〝人気〟になっているかよくわかる。

 プロジェクションマッピングを活用した模型やモデルルームはよくできている。アウトドア用品ブランド「LOGOS」商品を盛り込んだ1階の専用庭付きモデルルームタイプが人気になったのも頷けるし、押入れクローゼットの提案もいい。

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「LOGOS」の提案を盛り込んだ1階住戸(モデルルームタイプ)

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押入れ収納

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 8月26日付の同社「ファインシティ東松戸モール&レジデンス」の記事と同様、高橋氏は「面積を70㎡台に抑え、基本性能は守りながらオプション工事にできる設備仕様はオプションにしている」と話した。

 広告上の豪華さを競う一方、マンションの原価構成が一般消費者にはわかりづらいことが郊外の販売不振の原因にあるのではないか。「価格の上がる設備仕様のハードを競うより、コミュニティ支援によるソフトを充実させる」。記者は同社の正直な企業姿勢を支持するし、

きちんと説明責任を果たしていると思う。関西の狭い商圏でJRや他の私鉄と戦っている京阪電鉄(不動産)の強かな戦略がここにも見えてくる。〝三方よし〟など今のマンション市場ではありえない。

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中庭

第一次取得層向けの郊外マンションは復活するのか(2016/8/30)

〝三方一両損〟で3,500万円の3LDKを死守 京阪電鉄不「東松戸」が大健闘(2016/8/26)

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ン「RHYTHM Ekkamai(リズム エカマイ)」完成予想図

 三菱地所レジデンスは9月20日、タイ・バンコクのデベロッパーAP社と共同で分譲した第8号プロジェクトマンション「RHYTHM Ekkamai(リズム エカマイ)」(総戸数326戸)を9月3日から販売開始し、9月8日までわずか6日間で全戸完売したと発表した。タイの平均年収は140万円くらいだそうだ。

 都心からのアクセス・生活利便性に優れ、人気のあるスクンビットエリアに位置する地上32階建て。専有面積は30㎡~80㎡、価格は536万バーツから。日本人向けの現地販売ツアーを行い、総戸数の約1割である計30戸に申し込みが入った。

 バンコクは所得の上昇・人口の流入・核家族化の進行・公共交通機関の拡張等により、都心部での分譲マンションへのニーズが高まっており、同社グループは2014年からタイ・バンコクでの住宅事業に参画し、約2年間で計8物件、約6,500戸の販売を行ってきたが、約8割が分譲済み。同社は今後も事業を加速し、年間3~5物件、総売上200億バーツ規模での事業展開の継続を目指す。

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 海外のマンション市場は全く分からないが、〝すごい〟のひとことだ。1バーツ2.92円で換算すると、日本円にして価格は1,565万円から。坪単価で172万円だ。

 先週末、南武線尻手駅圏の京阪電鉄不動産「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)」を見学したが、坪単価は173万円だった。タイ・バンコクとほぼ同じだ。

 「イマジンテラス」は第1期131戸に対して102戸に申し込みが入り大健闘しているのだが、バンコクのマンションはその3倍の戸数がわずか6日間で完売するとは。年収倍率でいえば、日本もタイも同じくらいか。

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「ザ・ガーデンズ東京王子」完成予想図

 三井不動産レジデンシャル・近鉄不動産・大和ハウス工業・三菱地所レジデンス・長谷工コーポレーションは9月16日、5社が共同で分譲している「ザ・ガーデンズ東京王子」の売れ行きが好調につき追加販売すると発表した。

 8月27日から9月3日まで第1期1次として今年の都内最多315戸を供給し、約300組の登録申し込みがあったため、第1期2次として9月下旬に追加供給する。

 物件は、JR東十条駅から徒歩5分、北区王子五丁目に位置する総開発面積約4.3haの全864戸。第1期1次(315戸)の価格は4,878万~7,588万円(最多価格帯5,900万円台)、専有面積は68.19~85.09㎡。5月からのモデルルーム来場者は約1,600組。

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 このマンションについては、別掲の記事を参照していただきたい。売れ行きがいいというのは業界内ではよく知られていたが、この種のプレスリリースが発表されるのは久々だ。300戸超の分譲で即日完売するのは当たり前だったからだ。

 ところが、ここにきて都心部も郊外部も市況が怪しくなってきており、リリースは売れ行きが好調であることをアピールし、秋の商戦につなげようとする狙いがありそうだ。

 今年の一挙供給の多さでは、相鉄不動産他「グレーシアタワー二俣川」が380戸を供給して好調なスタートを切った。

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 このリリースにタイミングよく、9月18日付の朝日新聞デジタルは、北区の魅力をPRするポスター「住めば、北区東京。」と、そのポスターを描いた漫画家・清野とおる氏を紹介している。漫画のタイトルは「東京都北区赤羽」で、「作者が主人公になり、赤羽を舞台に出会った人や発見したものなど多彩な魅力を独自の視点から取り上げた作品」(朝日新聞)だ。清野氏は13年前、板橋区から赤羽に引っ越したという。

 その「北区赤羽」のマンション坪単価は300万円をはるかに突破する。一般所得層が買えなくなってきている。東十条も取得限界にあるが、赤羽より坪数十万円は安い。「住めば、北区東京。」が効果を発揮することを期待したい。

 隣の区、板橋区(一部豊島区)では今から6年前、野村不動産が「プラウドシティ池袋本町」全785戸をわずか半年で完売して話題となった。来場者は12,000組に達した。最多価格帯は「東京王子」より約400万円安い5,500万円台だった。

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清野とおる氏が描いた北区の魅力をPRするポスター「住めば、北区東京。」の一つ

「ザ・ガーデンズ東京王子」(864戸)は坪260万円台(2016/7/8)

記録的な一挙供給量380戸 「グレーシアタワー二俣川」は坪280万円(2016/8/22)

 

 

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「クレヴィア千鳥町」完成予想図

 伊藤忠都市開発は9月16日、ライフスタイルに合わせて間取りの設計変更や収納仕様、浴槽形状などを選択できる「カスタムオーダーメイド」を導入した「クレヴィア千鳥町」(総戸数61戸)のマンションギャラリーをオープンしたと発表した。

 物件は、東急池上線千鳥町駅から徒歩5分、大田区千鳥三丁目に位置する9階建て。専有面積は55.45~94.82㎡、竣工予定は2017年8月下旬。設計・監理は古沢建築工房。施工は鍜治田工務店。

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VRゴーグルを用いた様子

 大京グループの大京穴吹不動産は9月15日、同社のスマートフォンサイトでの売買・賃貸物件紹介にVR(仮想現実)技術を用いた疑似体験システム「ぐるっとネットdeオープンルームVR」の提供を開始したと発表した。

 VRゴーグルと呼ばれる箱型の装置にスマートフォンをセットし、上下左右に動かすことで室内全体を見ることが可能となる。現在約880物件(売買物件約700件、賃貸物件約180件)がVRゴーグルを用いた見学に対応している。全国の営業拠点70店舗で利用できる。

 同社は今年5月からホームページ(http://www.daikyo-anabuki.co.jp/)で売買・賃貸物件を360度のパノラマ画像で閲覧できるサービス「ぐるっとネットde オープンルーム」を始めたが、より利便性を高めるためVR(仮想現実)技術を用いたバーチャル見学システムを今回導入したもの。

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「グレイプス辻堂西海岸」

 東京建物と東京建物シニアライフサポートは10月20日、神奈川県内最大規模となる総戸数158戸のサービス付き高齢者向け住宅「グレイプス辻堂西海岸」を開業する。1964年に完成した総戸数1,311戸の「辻堂団地」再生事業の一環として開発されたもので、地域包括ケアの拠点を目指す。同社グループが目指すCCRCのモデルケースとして位置付けられている物件でもある。開業に先立つ9月12日、メディアに公開された。

 物件は、JR東海道線辻堂駅から徒歩20分(バス7分「辻堂団地」徒歩2分)、藤沢市辻堂西海岸二丁目に位置する5階建て全158戸(ほかに(訪問介護事業所・通所介護事業所)。専用面積18.80~67.59㎡、月額賃料36,000円~325,000円、月額管理費15,000円(浴室あり)・20,000円(浴室なし)、基本サービス(税込)37,800円(1人入居)・64,800円(2人入居)、食材費(税込)は3食30日分で27,540円。共用施設はラウンジ、食堂、共同浴室、健康相談室、多目的ルーム、シアタールーム、屋上テラスなど。東京建物が事業主となり、東京建物シニアライフサポートが貸主となり、ツクイが運営を受託する。設計・施工は大末建設。

 現地はUR都市機構(当時日本住宅公団)が1964年に完成させた全1,311戸の「辻堂団地」の一角にあり、URと東京建物が期間50年の定期借地契約を締結し、高齢化率が約40%まで進んでいる団地の再生事業の一環として開発するもの。

 同社グループのサ高住のブランド〝グレイプス〟のコンセプトでもある「自分らしく生きる」生活をサポートすることに重点が置かれており、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所、医療機関と連携するほか、辻堂団地からの移り住み、隣接する保育園との多世代交流、近接する松下政経塾とのイベント開催、商店街「なぎさモール辻堂」との連携、東京建物が分譲を予定している隣接マンション(詳細未定)との連携も予定している。

 住戸プランは、一人入居から二人入居までが可能なワンルームから2LDKまでの全37タイプ。ワンルーム(19㎡)と1DK(36㎡)を続き部屋として利用できるも用意する。

 これまで70歳代後半の女性が中心に約150組の来場があり、第1期として76戸の募集を行い、30件の入居申し込みがあったという。

 見学会に出席した東京建物シニアライフサポート・加藤久利社長は、「当社グループのサ高住は本件で10棟目。これまで医療機関や地域連携など様々な取り組み・仕掛けをしてきたが、認知症の方が保育園児と会話され、笑顔を見せたりする姿を拝見すると多世代交流の効果があることを実感できる。今後もCCRCを加速させる」と話した。来年度は新宿区大京町で初の有料老人ホーム53戸と、全124戸の「用賀3丁目」などサ高住4棟374戸を供給することも明らかにした。

 同社グループが目指すCCRC(Continuing Care Retirement Community)とは、①健康でアクティブな高齢者が居住できる②介護が必要になっても生活を継続することができる③地域(多世代)との交流・地域機関(医療)との連携体制がある④新たな仕掛けを作るだけではなく、既存コミュニティを活用し無理なく継続するコミュニティを形成する-など。

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エントランス

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食堂・カフェ・バーラウンジ

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食堂テラス

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隣接する保育園(右側の建物)とは扉一つでつながっている

◇       ◆     ◇

 同社グループのサ高住を見学するのは6棟目か。これまでのものより今回は規模が倍くらいあるので共用施設の充実ぶりが目立った。アプローチ・エントランスも立派だし、3人が一緒に入れる共同浴室、シアタールームまであった。住戸プランも夫婦が住める50㎡以上が22戸も用意されている。屋上テラスからは江の島、富士山が展望できる。

 注目したいのがコネクティングルームプランだ。どのような使い方がされるかわからないが、介護度が異なる、あるいは仲が悪い夫婦、兄妹、姉弟などが想定されているようだ。

 もう一つ、取材で驚いたことがある。他の記者が運営受託するツクイに入居者の「徘徊」について質問したところ、同社サービス付き高齢者向け住宅事業第二本部本部長・中村こずえ氏は「私どもには『徘徊』という認識はありません」と答えた。「(特養などの)施設とは異なり、サ高住はあくまでも住宅。入居者の方と1対1で向き合うことが大事」と語った。

 なるほどと思った。記者は特養も有料老人ホーム(なんて差別的な法律用語か)も体験宿泊したことがあるが、夜中に「徘徊」する人や「奇声」(失礼)をあげる人がいて一睡もできず、家に帰って半日寝込んだ。「私どもには『徘徊』という認識はありません」-何と重い言葉か。

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共同浴室

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ヒノキ風呂の共同浴室(左)とフィットネスルーム

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モデルルーム

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新規に大臣認定を取得した「FRウッド」

 鹿島建設、住友林業、ティー・イー・コンサルティング、三井住商建材の4社は9月9日、鹿島の純木質耐火集成材「FRウッド」の部材仕様を合理化し、約4割のコストダウンを実現した純木質耐火集成材の新規大臣認定を取得、9月から販売を開始したと発表した。

 「FRウッド」は東京農工大学、国立研究開発法人 森林総合研究所、ティー・イー・コンサルティングと鹿島が共同で開発し、2012年3月に鹿島が大臣認定を取得。東京都内の飲食店舗「野菜倶楽部oto no ha Café」に実適用している。①国産スギ材を多用②木材を被覆せずに「あらわし」とし、かつ「構造部材」として利用可能③荷重支持部の周囲に難燃薬剤を注入し1時間の耐火性能を確保④鉄骨造より36%、鉄筋コンクリート造より47%の環境負荷低減が可能-などが特徴。

 今回新たに取得した大臣認定は、①薬剤注入方法の改良により燃え止まり層の厚さを60mmまたは75mmから「50mm」にスリム化②インサイジング処理を1600孔/㎡から「800孔/㎡」に半減③梁の荷重支持部(無処理層)をスギから構造性能が優れた「カラマツ」へ変更-など仕様合理化によって約4割のコストダウンを実現した。

 4社は今後、公共施設や教育施設、福祉施設など様々な建築用途を対象に、小規模から大規模な建物まで幅広く展開していくとし、混合構造の提案も行っていく。さらに、2時間耐火仕様についても、すでに加熱実験により耐火性能を確認しており、新たに大臣認定を取得し、実用化する。

④FRウッド(柱)インサイジング処理付.jpg ⑤新認定の純木質耐火集成材(柱).jpg
従前(左)と新認定

⑥FRウッド(梁)_.jpg ⑦新認定の純木質耐火集成材(梁).jpg
従前(左)と新認定

 

鹿島建設・住友林業 スギ耐火集成材を初採用「oto no ha Cafe」(2013/5/15)

 

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