三井不動産 ライフサイエンス分野のイノベーション促進にLINK-J設立
左から菰田氏、岡野氏、植田氏
三井不動産と一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)は6月3日、産官学連携によるライフサイエンス(生命科学)領域でのオープン・イノベーションを促進し、新産業創造を支援する活動を開始すると発表した。
ライフサイエンスは、医学をはじめ、理学や工学、ICTや人工知能といった新たなテクロノジーなど対象は広範に及んでおり、LINK-Jはそのネットワークを通じ、分野を超えた内外の人的交流・技術交流を促進し、シーズやアイデアの事業化を支援するために設立されたもの。
LINK-Jの理事長には慶應義塾大学医学部長・岡野栄之、副理事長には大阪大学大学院医学系研究科長・澤芳樹が就任した。
事業運営のアドバイスを行う運営諮問委員会には理化学研究所理事・松本洋一郎氏、京都大学iPS細胞研究所所長・山中伸弥氏など13名の識者の参画を得ており、取り組みを支援するサポーターの参加も増やしていく。
LINK-Jは今後、参加メンバーを募り「交流・連携事業」としてシンポジウムやセミナーなどのイベントを提供していく。
三井不動産は、事業領域拡大のための新産業創造を重要な戦略として位置付けており、医療関係の企業が集積する日本橋を拠点とするライフサイエンス・イノベーション推進事業を展開していく。事業拠点として既存の「日本橋ライフサイエンスビル」「日本橋ライフサイエンスハブ」に、新たに「日本橋ライフサイエンスビル2」を加えた。
岡野氏は会見で取り組みの背景・経緯について、「この30年間で基礎医療、再生医療は革命的な発展と飛躍を遂げ、わが国の研究は世界トップクラスだが、臨床医療は立ち遅れている」などと話した。
会見に臨んだ三井不動産社長・菰田正信氏は、「ライフサイエンス・イノベーションの推進に挑み、日本橋のさらなる価値向上、世界の人々の健康長寿に関わる課題解決に貢献していく」と語った。
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配布されたニュースリリースや資料を読むと、三井不動産と「LINK-J」が目指す方向性がよくわかるのだが、会見で話された岡野氏、菰田氏、三井不動産常務・植田俊氏の合計約30分の話はかなり専門的な医療に関する言葉が飛び交った。
もちろん会見場には「よく分かった」というわが業界ではよく知られたT大卒のジャーナリストの方もいたが、記者はほとんど理解できなかった。記者の習性で、一言一句を聞き逃すまいとしたが叶わなかった。
同じように考えた記者もいたようで、「中学生でもわかるようにやさしく話してください」とその方は質問した。
同感だ。相手にもよるだろうが、人に話す場合〝難しいことはやさしく、やさしいことはより深く」が基本であることを誰かが言った。会見場には医療に詳しい記者もいただろうが、記者のように門外漢もいたはずだ。やはりわかりやすく話してほしかった。
それと、この種の会見でいつも思うのだが、登壇者のスピーチの長さと、文字数について考えてほしい。記者は、スピーチの文字数は1分間に250字くらいが適当ではないかと思っているが、それくらいに収まっている発表会などは極めて少ない。今日の発表者の言葉を文章にしたらいったい何文字になるか。1分間に400字くらいに達するのではないか。
評判になったオバマアメリカ大統領が広島平和公園で行った17分にわたるスピーチの日本語訳は約3,200文字だ。英語と日本語の違いはあるが、1分間にすると188字だ。政治家の言葉としてはどうかと思ったが、文章は優秀なスピーチライターが作成したはずで、名文なのは間違いない。
最近のスピーチでは記事にもした矢野龍氏(住友林業会長)が出色ものだった。
旭化成不レジ「アトラス調布」 「都市景観大賞(都市空間部門)」大賞受賞
旭化成不動産レジデンスは5月27日、同社が事業協力者および参加組合員として携わった、調布富士見町住宅の再建プロジェクト「アトラス調布」が、平成28年度「都市景観大賞(都市空間部門)」の最高賞である大賞(国土交通大臣賞)を受賞したと発表した。
同プロジェクトは、団地住民が地域との関わりの中で持っていた課題(交差点の危険性や公園へのアプローチの悪さ)を調布市と共有化し、団地の建替えと同時に市道を付け替え、「コミュニティ街路」として再生することで解決した事業。
官・民・住民が一体となって新しい景観を生み出したプロセスや、再建後のマンションが石畳や植栽と一体的にデザインされたことなどが評価された。
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このマンションについては2度、3度見学して記事にしているのでそちらを参照していただきたい。
ランドスケープデザイン、住棟配置が秀逸で、住民や設計者のプロジェクトに込めた思いがひしひしと伝わってくる好物件だ。
アットホーム 今度は恐ろしくぞっとしない「転勤」の実態アンケート
不動産情報サービスのアットホームが再び三度四度また旅面白いというか、今度は恐ろしくぞっとしないアンケート結果をまとめ発表した。住宅購入をした後に転勤を命じられた既婚サラリーマン男性(現在転勤先で生活中)598名を対象に、購入した住宅をどうしているか、後悔はしていないか、夫婦仲はよくなったか、単身赴任者が自宅に帰る頻度などについて聞いたという。
それによると、「購入後に転勤で引越ししたけれど住宅購入して良かった」と答えたのは全体で77.8%にのぼり、後悔していないことがうかがわれる。ただ、単身者(全体で259名)と非単身者(全体で339名)とでは、その数字は88.8%、69.3%とやや差があり、非単身者の約3割は「良かった」とは思っていないようだ。
非単身者に購入した自宅をどうしたかについて聞いたところ、「売却」が37.5%、「賃貸」が26.8%、「家族や親族が住んでいる」が23.3%だった。
夫婦仲についての質問には、「単身赴任をして良くなった」が34.0%、「家族一緒に赴任して良くなった」が46.4%となった。「どちらでもない」は単身者が51.0%、非単身者が41.8%。「いいえ」は単身者が15.1%、非単身者が11.8%だった。
単身赴任者に自宅に帰る頻度を聞いたところ、もっとも多いのは「月1回」で30.9%、次いで「2週間に1回」が19.3%、「週に1度」が17.0%。「全く帰っていない」の4.6%を含めた「2カ月に1回」以上の人は30.0%に達した。
また、非単身者が「一緒に来てくれてうれしい」と答えたのは77.6%で、「実は単身赴任してみたい」という人も19.8%あった。
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記者は転勤の経験が全くないのでよくわからないが、妻が出産で実家に帰っていたときは毎晩のように飲み歩いていた。どこかの議員さんのような「浮気」では絶対ないが、いかがわしい店も利用したことがある。やはり単身居住は耐えられない。
なのに、回答者の30%が2カ月に1回以上で、「全く帰っていない」という人が4.6%もいるのにショックを受けた。回答者の年齢は50歳代が43.5%、40歳代が33.3%、60歳代が10.5%で、平均年齢は49.8歳だ。
この前、矢野龍氏(76)が木住協の会長職を退任するときのあいさつで「安田善次郎は『50、60は洟垂れ小僧、70は働き盛り、80、90は男盛り』と言った。その伝で言えばわたしは青春を謳歌する年齢。80、90で男盛りになれるかどうかは嫁さんとよく話し合う」と爆笑を誘ったが、洟垂れ小僧にも満たない血気盛んなサラリーマンがどうして一人で暮らせるのか。これはひどい。完全な家庭の破壊ではないか。企業にも問題がある。家に帰る費用くらい会社負担にすべきだ(そうしている会社は少ないはずだ)。
「孤閨」「鰥夫(やもめ)」が死語となり、男も女も〝おひとりさま〟が日常化、当たり前のぞっとしない時代になったようだ。こんな現状が続くなら「一億総活躍」は永遠に訪れない。
「実は単身赴任してみたい」という非単身者が19.8%あったというが、その気持ちはわからないではない。羽を伸ばそう、羽目を外そうというのは誰しも考えることだ。しかし、やってごらんなさい。どんなみじめな経験をさせられるか、やった人に聞くといい。
「消費増税先送りはプラスに働く」 プレ協・樋口武男会長
樋口会長
プレハブ建築協会・樋口武男会長(大和ハウス工業会長兼CEO)が消費増税問題について、「足元の住宅市場は集合住宅は大変好調に推移しているが、一戸建ては伸び悩んでいる。消費増税が実施されれば戸建てに影響するのを懸念している。増税の先送りは住宅業界だけでなく全体の景気にとってプラスに働くことを期待したい。財政出動も必要ではないかと考えている」と、安倍総理大臣が増税の先送りを指示したことに理解を示した。5月31日に行われた同協会の定時総会後の記者会見で語った。
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増税の先送りについては、住宅生産団体連合会(住団連)・和田勇会長(積水ハウス会長兼CEO)が5月26日の木住協の懇親会で「いつも駆け込みやその反動で苦い思いをさせられる。今回はどうやら延期になりそうな雲行きで、拍手喝さいしている」と述べた。
一方、不動産協会の木村惠司理事長(三菱地所会長)は5月12日に行われた同協会の総会後に「早めに決めていただき、軽減措置など対応もきちんとしていただきたい。先送りしても5年、10年にはまた問題が浮上する」と、消費増税を実施すべきとの考えを示した。また、岩沙弘道会長(三井不動産会長)も「景気対策を立てたうえで実行すべき。財政が厳しいのは論を待たない。政府が国際公約として掲げているプライマリーバランスの黒字化は喫緊の課題」と語っている。
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このように、住宅業界とデベロッパーのトップの考えが真っ向から対立している。どちらが正解か記者も分からないが、肩透かしを食らったような気分だ。
安倍総理は再三「リーマンショックのような事態が起きない限り実施する」と語ってきた。景気判断は海外動向も重視すべきなのは当然だろうが、海外リスクはいつも伴う。世界を揺るがすような災害・内紛・戦争の火種は山ほどある。それこそ天が降ってくるという杞憂が現実のものになるのではないかという危機感が充満している。
しかし、そんな心配ごとを選挙の道具にしていいのか、釈然としない。「景気の気は気持ちの気」というではないか。賃金は上がっていないが、企業業績も雇用も上向きだ。せっかく2020年のオリンピック・パラリンピックに向け景気の回復に期待が掛かる中、増税の先送りは消費マインドを冷え込ませないか心配だ。肝心の「三本の矢」の矢を放つ寸前で待ったをかけられたような失望感を感じる。8合目あたりの梯子を外されたような気分だ。今日の樋口会長もだれかに遠慮しているのか、歯切れが悪かった。いつもの樋口節が聞かれなかった。
私見だが、増税が先送りになっても一戸建てが劇的に上向くとはとても思えない。むしろ逆ではないか。様子見を決め込むユーザーが増えるような気がしてならない。
革命的な開発か 調理削減 伊藤忠都市の新「モット・キッチン」 「田端」に採用
「クレヴィア田端」完成予想図
伊藤忠都市開発が6月下旬に販売開始する「クレヴィア田端」を見学した。同社がオージス総研、インブルーム、タカラスタンダード、東京ガスと協働で開発した新「モット・キッチン」を導入した物件で、同社のオリジナルキッチン「モット・キッチン」の改善活動で新たに実施した「行動観察」により〝お客様も気づいていなかった声無き潜在ニーズ〟を盛り込んだというのがセールスポイントだ。
物件は、JR山手線・京浜東北線田端駅から徒歩9分、北区田端新町3丁目に位置する14階建て全33戸。専有面積は65.35〜75.52㎡、予定価格は4,700万円台〜7,000万円台(最多価格帯5,400万円台)、坪単価は280万円の予定。竣工予定は平成29年3月下旬。施工はイチケン。設計・監理は三輪設計。売主は同社のほか三信住建。
現地は、明治通りから一歩入った近隣商業エリアの一角で、3方道路の敷地。住戸は全戸南西向きで角住戸比率が78%。二重床・二重天井で食洗機、ミストサウナが標準装備。
モデルルーム キッチン
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同社が2009年に開発した「モット・キッチン」が優れているのは理解しているつもりだが、正直に言えば、どこが「新」なのか、同業他社と比較してどこが優れているのかさっぱりわからなかった。自分でも愕然とした。
種を明かせば、記者はかつて約10年間〝主夫〟を完璧とまではいかないかもしれないが、とにかくこなした。マンションの水回りに関しては〝主婦〟に負けないぐらいの知見があった。
過去形になったのは、最近はまったく家事労働をしなくなり、そのために収納やら動線やらについてまったくわからなくなった。ダイコン1本の値段もわからなくなった。完全に記者の知識はさび付いてしまった。
なので、読者の皆さんは同社のニュースリリースを読むか、モデルルームを訪ねてコンセプトブックをもらって読んで、実際にそのキッチンを見るしかない。記者は何の役にも立たない。
そのニュースリリースを要約すると、開発経緯は、2014年の調査で「収納量」と「作業スペースの広さ」の好不評が大きく割れたため、その原因究明と解決の糸口をつかむべく、行動観察調査の実績豊富なオージス総研と協働し「行動観察」を実施したとある。
「行動観察」では、モット・キッチン利用者4名に自宅で普段通りの調理準備から片付けまで約3時間録画。全12時間の映像を分析し、「無意識行動」や「思い込み・諦め」の中にストレスの原因となる問題が潜んでいることを明らかにした。
そして、「収納・動線」「設備機能」「セレクト・カスタマイズ」「フォローサービス」の4つの面から改善を図り、新「モット・キッチン」の開発につなげたという。
試作品の検証結果では、調理時間が20%、移動歩数が25%、屈伸回数が70%それぞれ軽減されたという。
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検証結果で調理時間が20%、移動歩数が25%、屈伸回数が70%それぞれ削減されたというのはすごいデータだ。リリースによると、同一人物がイタリアン4品4人分を一般的なシステムキッチンと試作品をそれぞれ使用して比較した場合、一般品より試作品のほうが調理時間が約55分から約44分へ20%、移動歩数は509歩から383歩へ25%、屈伸回数は13回から4回へ70%削減された。
この結果から、仮に朝昼晩だと調理時間、移動回数、屈伸回数は2倍かかるとすると、調理時間は20分、移動回数は150歩、屈伸回数は18回削減される。1年にすると…。この〝価値〟は大きい。家事労働をやったことがある人は分かるはずだ。後片付けもラクになるはずだから、新「モット・キッチン」は革命的な開発かもしれない。
新「モット・キッチン」のよさは分からないが、坪単価予想はドンピシャリだった。販売担当者は坪単価について最初は口をつぐんでいたが、「わたしの予想では280万円」という質問に「280万円くらいで考えています」とのことだった。山手線沿線の徒歩9分というのはインパクト、割安感がある。早期に完売するとみた。ライフステージの変化に対応したプラン提案もよかった。
現地
「time flies like an arrow 光陰〝矢野〟如し」 木住協・矢野会長(住林会長)が退任
矢野氏
日本木造住宅産業協会(木住協)の会長を15年間にわたって務めた矢野龍氏(住友林業会長)が退任したことを書いたが、矢野氏は総会後の懇親会で、15年間の会長職を「time flies like an arrow 光陰矢野如し」と絶妙な言い回しで振り返った。
記者は、この矢野氏(76)と大和ハウス工業会長兼CEO・樋口武男氏(78)、積水ハウス会長兼CEO・和田勇氏(75)をハウスメーカーの〝雄弁御三家〟と呼んでいる。三社とも関西が発祥で、三氏とも年齢が近く、〝毒〟を含んだ関西弁を平気で使い、自らの土俵に引き込む話術が巧みというのが共通している。
矢野氏は登壇するといきなり「今まで皆さん大切な話をされていた。やっとわたしの番が回ってきた。自由になった喜びを話せるときがきた」とジャブを放った。(それまで国交省、林野庁など5名の挨拶があった)
そして、すかさず「在任期間を振り返ると『time flies like an arrow 光陰矢野如し』」と、流暢な英語を交えカウンターパンチを繰り出した。会場は一瞬あっけに取られたようだったが、やや間を置いて笑いが漏れた。矢野氏は北九州大学外国語学部卒で、住林では10年間アメリカ勤務経験があり、「僕は通訳の資格も持っている」英語のプロだ。
この飛び切りの「arrow」と「矢野」を掛けた〝親父ギャグ〟に意想外にもたいした反応を示さない参加者に愛想をつかしたのか目を覚まさせようと思ったのか、矢野氏はG7サミット各国の代表者の年齢を紹介した。
「ドイツのメルケル首相とフランス・オランド大統領は61歳、安倍さんも61歳、オバマ氏は54歳、イギリス・キャメロン首相は49歳、カナダ・トルドー首相は44歳、イタリア・レンツィ首相はわたしの娘と一緒の41歳…みんな若い。わたしは76歳。立派な後期高齢者になりました。安田善次郎は『50、60は洟垂れ小僧、70は働き盛り、80、90は男盛り』と言った。その伝で言えばわたしは青春を謳歌する年齢。80、90で男盛りになれるかどうかは嫁さんとよく話し合う」と爆笑を誘った。(故・安藤太郎氏は90歳を超えてもゴルフをされていた。家庭での主導権は奥さんが握っていた)
ここから15年間を振り返って会長職として印象に残る活動を紹介。「住宅税制についてはちゃんとすべき。これは和田さん(住団連)、市川さん(木住協)に何とかしていただきたい」と注文をつけた。
最後は「政治家とは仲良くできなかったが、国交省とは天敵の那珂さんをはじめ亡くなられた山本さん(元山口県知事)などと仲良くさせていただいた。井上さん(前住宅局長)とは戦わない」などとジョークを飛ばす一方で、「(わたしの後任の)市川さんはIQが相当高いし、品格がある。わたしとの比較においてだが。座右の銘は『至誠一貫』です。必ず皆さんのご期待に応えるはず。これからも木住協を支援していただきたい」と締めくくった。
後で聞いたら〝天敵〟の那珂(正)氏(元住宅局長)はゴルフのライバルで、「勝ったり負けたり、百獣(スコア110)の争い」だそうだ。歯が立たない井上俊之氏とは戦わないという。
山林取得については「疲弊している森林・林業の振興のため引き続いて増やしていく。国のためだ」と話した。住友林業は数年前に三井物産を抜き森林保有面積で第三位に上昇している。
〝マネシタ電気〟〝三流電気〟〝早いだけ電気〟など関西企業の地盤沈下が目立つが、「住林」「ダイワ」「積水」がわが国の住宅業界をこれからもリードするのは間違いない。「上方」経済を象徴する〝能弁雄弁御三家〟もまた永遠に不滅だ。
すてきナイス 一戸建てが大幅増 業績に寄与 今期は1,000戸目標
すてきナイスグループは5月27日、2016年3月期決算の業況説明会を開き、日暮清社長は「営業利益が消費税の駆け込み需要があった2014年3月期を除けば過去最高の26億円になったのは、一戸建ての『パワーホーム』が大幅に伸び、建築資材事業にも寄与し、リスクの大きいマンションから一戸建てへ名実とも転換したのも大きい」などと語った。
売上高は2,386億円(前期比101.2%)、営業利益は16億円(同160.8%)、経常利益は11億円(同229.5%)だった。このうち住宅事業の一戸建ての売上高は257億円(前期168億円)、マンションは196億円(同226億円)だった。
2017年3月期は売上高2,450億円、営業利益16億円、経常利益11億円を目指す。このうち一戸建ては売上高340億円、マンション196億円を予定している。
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記者が知らないだけで周知の事実だろうが、同社の日暮清社長の1時間20分にわたる業績説明を聞きながら、わが耳を疑い目からうろこが落ちた。同社は昨年、「マンションは免震しかやらない」と大胆な宣言をしたが、その理由もわかった。
それは、大手の寡占が進む一方のマンション事業では徹底した差別化を行う一方で、納材-資材-プレカット-施工-販売の強みが最大限発揮される一戸建てにシフトしようという戦略だ。前述のように、2016年3月期のマンション事業は196億円(前期226億円)で、一戸建ては257億円(同168億円)となり、売上戸数もマンションが321戸(同443戸)に対して一戸建ては733戸(同458戸)と売上高、戸数とも一戸建てが上回った。
日暮社長は「リスクも大きいマンションから回転率も高い一戸建てへの転換に成功した。今期は900戸が目標だが、社内的には1,000戸を掲げている。注文住宅も前々期が198戸で、前期は293戸と伸びており、ここも伸ばしたい」などと話した。
皆さんもご存じだろうが、デベロッパー各社は戸建て事業に意欲を見せている。今に始まったことではない。もう10年も昔、異業種も含め〝雨後の筍〟のように戸建て事業に参入した。
しかし、記者の知る限り成功したのは数えるくらいしかない。用地の取得競争も激しく、一戸一戸積み上げていく事業は手間がかかり、伸び悩んでいるところがほとんどだ。大手デベロッパーも三井不動産レジデンシャルと野村不動産のみが突出しているだけの状況が続いている。
そうした中、ナイスが戸建てを増やすとは聞いていたが、2012年3月期の299戸から4年間で2.4倍増とは驚異的だ。今期1,000戸とは信じられない。三井の今期分譲戸建ては700戸で、野村は650戸が目標であることからもナイスの数字がすごいことが分かるはずだ。
なぜそれほど伸ばせるのか。日暮社長も話したように「基本性能」はセールストーク、販促にはつながらない。どこも基本性能の良さを掲げているからだ。
ではどこが異なるのか。日暮社長は「1戸、1戸、お客さんが口コミで広げてくれるのが大きい。前期で大幅に伸ばしたのは、こうしたことの積み重ね」と話した。
記者はもう一つ、地域のコミュニティ支援も含めたワンストップの仲介店舗「ナイスカフェ」の貢献もあると思うが、この点について日暮社長は「当社の営業はマンション、戸建て、仲介などで垣根を設けない」と語った。ある仲介店舗の所長は「自分でも本業が何であるかわからない」と話した。それくらい徹底しているからこそ、マンツーマン、フェースツーフェースの営業に徹しているからではないかと記者は勝手に解釈している。
あるいはまた、この驚異的な伸びは同社の社風にもあるような気がしてならない。記者はRBA野球大会の取材を通じて同社チームの選手とはよく話すが、チーム内における上下関係などまったくなく、アットホームな雰囲気であるのが他のチームと異なる。これは試合では弱点になることもある。〝仲良しクラブ〟では野球は勝てない。しかし、選手は動ずることがない。城戸伸一朗監督も「学生サークルの延長みたい」と自らのチームを評す。
同社にはわが国の家族経営的な雰囲気を感じるのだが、それがうまく機能していると思えてならない。同じような会社があった。穴吹工務店だ。かつての穴吹は全国マンション供給トップまで上り詰めた会社だが、成長の要因は「大工さんなど施工関係者がうちのマンションを親戚や友人・知人に勧めてくれるのが大きい」と、故・穴吹夏治社長から聞いたことがある。
ナイスもまた「ナイスグループは、社員および当社に関連するすべての人々の福利増進に努めます」を社是に掲げる。創業者の平田周次氏の経営哲学がしっかりと受け継がれている-今回の説明会で改めて感じた。
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これも知らなかったのだが、同社は日本初のCLT構造とRC構造の混構造を採用した「仙台物流センター」を7月にも着工し、12月に完成させる。延べ床面積100坪で、階段室をRC造にして耐震力を強化し、床と壁は木造、梁は集成材にするそうだ。海外ではこうした混構造は当たり前のように採用されていると聞くが、わが国にはほとんど前例がなく、建築確認に時間がかかったそうだ。
もう一つ。同社は平成26年度の国交省「木造建築技術先導事業」に採択された隈研吾氏と大成建設による提案「栄光学園の新校舎」建設でも、材料の調達、ハイブリッドの構造設計、施工を担当する。構造設計では橋梁の建設に用いられる技術を採用し、規格材で9m超の大スパンを実現する。
住団連・和田勇会長 「消費増税が延期になりそうなのに拍手喝采」
住宅生産団体連合会(住団連)・和田勇会長(積水ハウス会長兼CEO)が消費増税について「いつも駆け込みやその反動で苦い思いをさせられる。今回はどうやら延期になりそうな雲行きで、拍手喝さいしている」と述べた。5月26日に行われた木住協の懇親会で、来賓として挨拶した中で語った。
CO2の削減問題については、「動きを加速させないといけない。そのためにはストック、中古住宅の省エネが重要だ。わたしは『中古住宅』という呼称を改めるべきだと思っているが、いい言葉が見当たらない。『既築』(〝鬼畜〟と記者は理解したが)では具合が悪い」と話した。
安倍総理大臣はG7伊勢志摩サミットで、世界経済の現状について「リーマンショックの前と似た状況にある」という考えを表明したが、宣言には「リーマンショック」の文言は盛り込まれなかったようだ。安倍総理は、消費増税について再三「リーマンショック級の出来事があれば、消費税率の引き上げを延期する可能性がある」考えを示している。
木住協 6代目会長に市川晃氏(住友林業社長) 矢野前会長は退任
市川氏(写真提供:週刊住宅)
日本木造住宅産業協会(木住協)の新しい会長に市川晃氏(住友林業社長)が就任した。5月26日行われた定時総会後に発表した。平成13年度から27年度まで会長を務めた矢野龍氏(住友林業会長)は退任した。
市川氏は、「木住協は今年4月で30周年の節目の年を迎えた。わたしで6代目の会長になるが、わが国の住宅市場で木造住宅の割合は増加しており、期待も大きい。需要の柱としてしっかり社会を支えていきたい。責任の重大さも感じている」と述べた。
28年度の重点項目として、木造耐火建築物、省令準耐火構造の普及に向け2時間耐火を含めた新たな大臣認定や追加承認に努めることや、技術者不足を考慮した生産性向上に向けた調査・研究の実施、国産材の利用促進などを盛り込んだ。
総合地所「ルネ世田谷千歳台AYUMIE」 扁平梁、ハイサッシなど採用
「ルネ世田谷千歳台AYUMIE」完成予想図
総合地所が5月24日、「ルネ世田谷千歳台AYUMIE」のメディア向け見学会を行った。同社が長谷工コーポレーショングループ入りしてから初めて双方で商品企画を練った物件で、「学住近接」が売りの物件だ。
物件は、京王線千歳烏山駅から徒歩17分、世田谷区千歳台6丁目に位置する6階建て全64戸。第1期(13戸)の専有面積は60.70~81.36㎡、価格は4,998万~7,898万円。坪単価は286万円。完成予定は2017年2月中旬。施工は長谷工コーポレーション。「AYUMIE」は「歩みの家」が由来。5月24日から分譲開始されている。
現地はバス便(芦花公園駅バス12分、バス停徒歩3分)で、現地は中層マンションなどが立ち並ぶ一角。保・幼・小・中・高のすべてが500m圏内に揃った“学住近接”立地。敷地・建物は南北に細長い形状で、各住戸は東向き。道路を挟んだ対面は生産緑地とサ高住の建設予定地。
外観デザインは、水平ラインを強調し、タイル、アルミルーバー、ガラスの3素材によって重厚感を演出している。敷地の北側にはケヤキの既存樹を残している。
設備仕様は、二重床・二重天井、7m以上のワイドスパン、食洗機、ディスポーザ、バックカウンターなどが標準装備。扁平梁を採用することでハイサッシも実現した。
現在、資料請求は約300件、来場者数は約100件。来場者の居住地は世田谷区が約75%、年収は500~600万円台(約6割がダブルインカムで世帯年収は1,000万円以上が50%)。予算額は4,000~5,000万円が34%、5,000~6,000万円が35%。
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千歳烏山駅からだと道路が狭いのがネックだが、現地はかつてマンションがたくさん供給されたエリアだ。駅に近い物件の価格・単価差がかなりあったために、一部不振物件もあったが売れ行きはまずまずだった。芦花公園にも近くファミリーにはいい住宅地だ。
今回の同社の坪単価286万円はやはり高いという印象を受ける。しかし、この前、野村不動産「大田六郷」の記事でも書いたように、都内23区で坪単価250万円以下というのは絶望的な状況だ。人気沿線の駅から相当距離のある物件でもことごとくこれくらいの単価になることを覚悟しなければならない。
モデルルームタイプは南側にキッチンが設置されており、扁平梁のよさもよく表現できている。。「AYUMIE」は「三重県」と関係があるのかと思ったが、そうではなかった。