日本初の非常時発電と日本一の松 大京の「ライオンズ小岩グランテラス」で見た
「ライオンズ小岩グランテラス」完成予想図
大京が7月下旬に分譲する「ライオンズ小岩グランテラス」を見学した。小岩駅から商店街を抜けて徒歩11分。自家発電機に頼らなくても万が一の停電時に太陽光発電と蓄電池で3日間以上の電力を供給する日本初の「ライオンズセーフティアクション」を標準装備し、樹齢600年以上の枝ぶりが見事なことから国の天然記念物に指定されている善養寺の〝日本一の名松〟も近くにある。〝日本初〟と〝日本一〟の両方が揃った稀有なマンションだ。進化した「L'KITCHEN」も見られる。
物件は、JR中央・総武線小岩駅から徒歩11分、江戸川区東小岩4丁目に位置する14階建て全51戸。専有面積は65.25~84.37㎡、価格は未定だが坪単価は230万円になる模様。竣工予定は平成29年3月21日。設計・施工は穴吹工務店。
現地は、昔ながらの商店も多い昭和通り商店街を抜けて、すぐの近隣商業と第一種住居地域にまたがるエリアに立地。住棟は南東向きで、建物から南面側道路まで約37メートルの駐車場スペースなどがあり、その先は低層の住宅街が広がっている。1フロア4戸構成。
商品企画は、自家発電機に頼らなくても万が一の停電時に太陽光発電と蓄電池で3日間以上の電力を供給する日本初の「ライオンズセーフティアクション」が採用されているほか、進化型の「L'KITCHEN」と「ライオンズプラスエコ」が標準装備。
「ハンドエリアボックス」付きキッチン
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非常時の3日間電力供給は、大規模タワーマンションなどでは常識となりつつあるが、大規模な設備も必要でメンテ費用もかかる。しかし、同社が初採用したシステムはそれほどスペースを必要とせず、コストも抑えられるのが大きな特徴だ。
進化型の「L'KITCHEN」がなかなかいい。写真のように同社が開発した「ハンドエリアボックス」はマグネット付きで調理・洗剤などがコンパクトに収納できるようになっている。
もう一つは、これも業界初というユーティリティイシンクだ。ユーティリティシンクそのものは最近の流行りで、記者もたくさん見ている。なので、販売担当の女性が「カボチャが切りやすく…」などと話しているのを「何をいまさら」と聞き流していた。
しかし、ここで同社建設管理部担当部長兼商品開発課長・中山雄生氏が講釈をたれだして唸ってしまった。従来のユーティリティシンクはミドルスペースに水切りがついてはいるが、ここで固いものを調理することはできない。ところが、今回のシンクは同社が独自に開発したもので、まな板が置けるようになっていて、カボチャなどの固いものも切れるのだという。確かにカウンタートップで切るよりその下のほうが力を加えないで切れる。これは理に適っているスグレモノだ。魚をさばいたり肉料理をしたりするときは重宝するはずだ。その良さは調理した者でないとわからない。
中山氏によると、これから洗面室も進化型を登場させるという。
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同社の本店営業一部担当課長・神立浩之氏に案内してもらって現地まで歩いた。神立氏によると「都のデータによると小岩は錦糸町と同じくらい商店が多い」そうで、これには驚いたが、それよりもインターロッキング舗装の両側には、(焼き鳥屋が多いのはしっかり確認しなかったが)何と畳屋、銭湯、自転車屋に、結納品を扱っている店まであった。店先には今が満開のアジサイもたくさん植わっていた。こんな光景は湾岸にももちろん都心にはない。
単価は、このところの地価・建築費の上昇で坪250万円もあると見ていたが、施工が同社グループの穴吹工務店ということもあるのだろう。230万円は割安だ。女性の販売担当者は船橋だそうだが、船橋の駅近より安いのではないか。
こんな話をわいわいがやがや話していたのだが、もう一つ、最後になって、このマンションは日本一の稀有なマンションではないかと思うようになった。樹齢600年以上の枝ぶりが見事なことから国の天然記念物に指定されている善養寺の〝日本一の名松〟影向の松が徒歩10分圏にあるそうだ。〝日本初〟と〝日本一〟が両方揃ったマンションなどあっただろうか。
善養寺の〝日本一の名松〟影向の松
善養寺
消費増税問題より、株価の下落に懸念示す 2×4協会 市川俊英会長ら
左から細田氏、市川氏、加藤氏(都市センターホテルで)
日本ツーバイフォー建築協会の市川俊英会長(三井ホーム社長)が6月16日行われた総会後の記者会見で、このところの株価の下落に懸念を示した。
消費増税の延期に対する記者団の質問に答えたもので、「消費税は年明けから上がらないのではという声もあり、駆け込みとその反動についての対策も打ってきたが、マーケットにはそれほど影響は出ていない。それより消費者は低金利に関心が高く、ゴールデンウィークはかなり動いた。この傾向は当分続くと思うが、この1週間の株価の下落がどう影響するか注視したい」と述べた。
また、加藤博文副会長(三菱地所ホーム社長)も、「年明けからの住宅展示場への来場者数は前年比で2~3割増の月もあるが、消費増税というより低金利の影響。増税が先送りになったことで、受注が平準化されるのでよかった」と語り、細田正典副会長(東急ホームズ社長)は、「住宅展示場への来場は好調だが、受注増にはそれほどつながっていない。消費者は急いでいない。それより株価の下落など経済の不透明感が広がっていることがマイナスに働かないか懸念している」と話した。
同協会の今年度の重点施策について、市川会長は①ツーバイフォー工法の耐震性、耐火性・省エネ性の一層の向上・普及を図る②拡大する中高層・大規模建築について短い工期、低コストなどツーバイフォーの利点を生かし積極的に対応していく③国策になっている地域材の活用など地球温暖化防止に貢献していく-など3つのテーマを掲げた。「協会設立40周年を迎え、住宅着工に占める位置は着実に定着しつつあり、今後も飛躍を期す」と語った。
環境難をランドスケープデザインで克服するか 「デュオアベニュー東府中」
「デュオアベニュー東府中」
フージャースアベニューが分譲中の一戸建て「デュオアベニュー東府中」を見学した。東府中駅からだと急な坂があり、周辺環境にやや難はあるが、ランドスケープデザインが優れており、一戸当たり敷地面積が120㎡以上のゆったりしたプランも優れている。
物件は、京王線東府中駅から徒歩11分、または多磨霊園駅から徒歩9分、府中市是政一丁目に位置する全22区画。現在分譲中の住戸(6戸)の敷地面積は120.09~124.43㎡、建物面積は95.48~98.53㎡、価格は4,998万~5,998万円。構造は木造・2階建て(2×4工法)。施工はエステーホーム。竣工は平成28年2月・3月竣工済、8月下旬予定。
現地は、東府中駅からだと住宅地を抜けて瀧神社を過ぎるあたりからかなり急な坂を下った戸建て・アパートが建ち並ぶ住宅街の一角。自転車だと車道と同じくらい広い舗道が整備されている道を抜けて10分くらいか。府中競馬場も徒歩圏。
全22棟がゆったりと配置されており、駐車スペースを2台対応型にしたり、3戸分を1カ所に設けたりするなど街並みを整備しているのが特徴。
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ランドスケープデザインと建物デザインが優れており、これまで同社が分譲してきた物件と比べても引けを取らない出来栄えだ。
難点は、アクセスと周辺環境だ。アクセスは瀧神社から新小金井街道へ降りる坂はかなりきつい。多磨霊園からだと坂はなだらかで、東郷寺や隣接する是政第2公園の緑もあり、通勤・通学はこちらのほうが便利かもしれない。
周辺の住環境は、新旧の戸建てやアパートが混在しており良好とは言えない。同社の街並みが際立っているのだが、却って周辺環境がプアなのを浮きだたせているのでこれは評価が難しい。
価格はかなり割安感があると思う。野村不動産の駅前の再開発マンションなら10数坪の値段だ。アクセス・周辺環境の難点を克服できるかどうか。記者も悩んでしまう。
東急リバブル 「建物保証」「リフォーム」で新たなサービス開始
東急リバブルは6月10日、全国の売買仲介店舗で展開している「リバブルあんしん仲介保証(建物保証)」のサービス内容を改定し、保証期間中に建物の不具合が発見された場合の保証額を最大250万円から最大500万円に引き上げると発表した。
一戸建・マンションを対象とする「建物保証」は、2012年10月にサービスを開始して以来、累計申込件数は20,000件を突破している。
同社はまた、水まわり4点(システムキッチン、システムバスルーム、洗面化粧台、トイレ)を中心とする定額制のフルリフォームパッケージプランをLIXILと共同で開発し、「リバブル フルリフォームパッケージプラン(仮称)」として中古マンションの購入者向けにサービスを提供すると発表した。
旭化成ホームズ 6月30日まで「重鉄3階建て30周年フェア」実施
旭化成ホームズは6月30日(木)まで、主力商品である3階建て住宅「ヘーベルハウスFREX(フレックス)」の発売30周年記念として、全国の住宅展示場でキャンペーン「重鉄3階建て30周年フェア」を実施する。
フェアでは、3階建て住宅を検討するお客様に設計ノウハウ集、現在の標準仕様であるオイルダンパー制震装置による耐震技術、多彩なアイデアで魅力ある3階建てを実現した実例集などを収めた「3階建てマスターBOX」をプレゼントする。希望者には建築地の「360°パノラマ写真による眺望調査」と、日照・日射・通風・採光の科学的な検証ができる独自システム「ARIOS(アリオス)」による住環境シミュレーションを実施する。
同社は1986年に3階建て商品「ヘーベルハウスFREX3」を発売。これまでの累積販売戸数は約15万戸に達している。
三井不動産 書籍「場の力~変化を起こすためのヒント~」(丸善出版)販売
三井不動産は、「新しいオフィスとは」をテーマに社員向けに配信していたメルマガ全60回を一冊にまとめた書籍「場の力~変化を起こすためのヒント~」(発行元:丸善プラネット、発売元:丸善出版、本体価格1,200円+消費税)を出版し、6月下旬から全国の書店で販売する。
本書では、世界の先進的なオフィスの事例の検証、多様性を活かした新しい働き方の考察などを通じて、リアルな「場」の意味について考えており、同社は、オフィスを企業戦略上の投資の観点から考える企業経営者、価値創造の「場」として捉えるビジネスパーソン、街づくりにたずさわる人に考えるヒントになり、企業内研修や就活準備にもおすすめだとしている。
野村不動産 6月26日まで「ホタルがすむ街づくり展」開催(横浜ビジネスパーク)
昨年実施したオープニングセレモニーの様子
野村不動産は6月12日(日)~6月26日(日)、横浜ビジネスパーク(YBP) で開催している恒例イベント「ホタルがすむ街づくり展」を開催する。
イベントは横浜国立大学と共催し、「ホタル」を通じて多くの方に自然の尊さや環境活動の大切さを知ってもらうため2008年より開催しているもの。また、11月までの期間、地元の小学生向けに、お米作りを体験してもらう「稲作り」や、YBPテナント企業の協力のもと「おもしろ科学体験会」を開催する。
同社のこれまでのYBKでの活動が評価され、平成25年度には「かながわ地球環境賞」を受賞し、生物多様性保全に配慮したオフィスビルとしての取り組みは一般社団法人いきもの共生事業推進協議会(ABINC)の「いきもの共生事業所[都市・SC版]」として認証を受けた。
イベントは、会場:横浜ビジネスパーク(相鉄線天王町駅徒歩5分)、主催:野村不動産、共催: 横浜国立大学、後援: 横浜市保土ヶ谷区役所ほか。開催期間(ホタル観賞)は6月12日(日)~6月26日(日)16:00~21:00。
「多摩NTに風が吹く」 女性の仕事・子育て・地域活動を考える 多摩NT学会が討論会
「多摩ニュータウンと女性―仕事、子育て、地域活動」(首都大学東京で)
多摩ニュータウン学会が6月4日、「多摩ニュータウンと女性―仕事、子育て、地域活動」と題する討論会を行った。「都心回帰」が進む一方で、職場から遠い郊外は仕事と子育ての両立が難しく、離職につながったり既婚女性は非正規雇用を選択せざるを得なくなったりする研究データをもとに、多摩ニュータウンで活動するNPOや保育園長、都市環境研究者などが問題提起を行い、参加者とともに考えるのが趣旨。
同学会の理事で東洋大学社会学部准教授・荒又美陽氏が司会進行役を務め、「たまこ部」永山氏と秋好氏、せいがの森保育園園長・倉掛秀人氏、NPO法人シーズネットワーク理事長・岡本光子氏、首都大学東京都市環境学部教授・松本真澄氏がそれぞれの立場から問題提起を行った。
荒又氏
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討論会後の懇親会で参加者の方が「風が吹いている」と話した。記者もその通りだと思う。後述するように、一般的な子育てファミリーの居住環境は悪化の一途をたどっているが、地域に住む子育て女性はお互い手を取り合い、緩やかではあるがさわやかな「風」を多摩ニュータウンにもたらしていると感じた。
永山氏と秋好氏は、「たまこ部は我が家のマンションの資産価値が下がらないように」という動機から発足した若いママさんたちの団体で、多摩センター周辺のグルメ、子育て、街づくりなどの情報を発信し、たまり場ともいうべき「親子カフェ」を設け活動していることなどを紹介。「保育園拡充で多摩市生きよ!」と結んだ。「積極的、ポジティブに考えるようにしている」という若者らしい言葉が印象的だった。
秋好氏(左)と永山氏
倉掛氏は「本当は3時間くらい話したい」と前置きしながら、「赤ちゃんが生まれる前後からサポートする環境が大事」「すべての子どもが育てられる共生の街づくりが欠かせない」「人類は親だけで育ったことはない」「保育園はコミュニティの一翼を担うべき」「子育てなど集中的にお金を使うデザインが必要」などの問題を提起。「保育所は朝の7時から夜の7時までオープンしているが、7時番の保育士のことも考えて」と訴えた。
倉掛氏
岡本氏は、原稿を用意し、一字一句わかりやすく語りかけた。これまで10年間のNPOによる一時保育、人材育成、アンテナショップの受託など様々な子育てやコミュニティ支援の活動を紹介。「子育てしながら社会とつながっていたい」という主婦の声を代弁した。
岡本氏
松本氏は、この50年間の間に個人の生活がドラスティックに変化し、核家族が固定化した社会・経済環境の下では「価値観の変化に対応する時間と空間をシェアする生き方が求められる」とし、一方で、「今の社会は〝下りエスカレータ〟であることを覚悟しなければならない」と学生にいつも言っているそうだが、「危うさを感じる」と話した。
松本氏
多摩ニュータウンの開発に携わった参加者からは「子ども・子育ての視点から街づくりを行わなかった反省はある」との声が聞かれた。
首都大学東京キャンパスは野草の宝庫
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埼玉大学准教授・谷謙二氏が「大都市圏郊外における居住と就業」と題する興味深い論文を最新刊の「多摩ニュータウン研究 №18」へ寄稿されている。
谷氏は戦後の東京圏の人口動態や移動、就業・雇用データを駆使して大都市圏の郊外居住が抱える問題点を指摘、1990年代の後半あたりから都心部への通勤が減少し、非正規雇用の比率が増大していることを明らかにした。以下、その一部を引用する。
「(多摩市から)都区部への通勤者数は1990年の2万6千人をピークとしてその後は減少し、2010年では1万8千人となっている。その就業者数に占める比率も低下し、1980年には46%もあったものが、2010年には26%まで低下している」
「1990年代前半までは、ファミリー向けの住宅供給が郊外に偏っており、結婚後は郊外に転出せざるを得なかった。しかしバブル崩壊後、都心周辺部の…手頃な価格のファミリー向け分譲マンションが供給されるようになった…郊外に転出する必要がなくなった」
「90年代後半以降、それまで正規雇用が一般的だった若年者においても、派遣やアルバイトなど非正規雇用が拡大した」
「都区部の常用雇用者に占める正社員の比率は69.6%なのに対し、郊外は56.1%と低い。この傾向は特に女性従業者で顕著で、女性の場合は都区部の正社員比率53.8%に対し、郊外は36.8%と、17ポイントもの開きがある。郊外で女性の正規雇用の割合が低いのは、結婚・出産でいったん退職した後に再就職する際、時間を調整しやすい非正規雇用につくという傾向が強いという労働力の供給側の理由もある」
「90年代後半以降の人口移動動向の変化により、郊外への人口移動は減少し、また郊外から都区部への通勤者は減少し、非正規雇用が増大する中で職住近接が進みつつある。少子化・高齢化の進展により、単身世帯、DINKS世帯も増加して、人々のライフスタイルは多様化している」
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「ライフスタイルの多様化」とはよく言われる。確かに「地域」より「家族」、「家族」より「個」が重視される社会にあって、個々が多様な生き方ができるように見える。
しかし、記者はアッパーミドルや富裕層はともかく、普通の中堅所得層は自らの意志で様々な暮らし方を選択する自由はほとんどないと思っている。
生活の基盤である住宅にそれは象徴的に表れている。新築か中古か、マンションか一戸建てか、分譲か賃貸か選択肢はたくさんあるように映るが、それぞれに一長一短があり選択は容易でない。
東京のマンション事情について概観すればそれはよくわかる。谷氏が言うように「バブル崩壊後、都心周辺部の…手頃な価格のファミリー向け分譲マンションが供給されるようになった…郊外に転出する必要がなくなった」のも事実だ。しかし、これは長くは続かなかった。平成7、8年ころからの数年間とリーマン・ショック後の数年間くらいしかない。この間、子育てファミリーは市場の波に翻弄された。
そして現在、都心部のマンション価格は暴騰し、もはやサラリーマンの手が届く範囲をはるかに超えてしまった。都心3区のマンション坪単価は最低でも500万円を超え、20坪で億ションとなる。
そればかりか、都内23区でも交通利便性の高いエリアは坪300万円を突破し、ほとんどの地域で坪250万円以上となっている。ファミリー向けの20数坪で6,000万円というのが相場だ。ローン金利が低いとはいえ、多額の借金を抱えるリスクが付いて回る。
都心部が絶望的で、23区内でも取得が難しくなったいま、「都心回帰」の選択肢があるのは一部の恵まれた層だけだ。一般的な子育てファミリーは「都心回避」する道しか残されていない。
耳障りのいい「職住近接」も、職業選択と居住の「自由」を享受できる層は限られている。お金のない人が職を確保することを重視すれば、「より広い」郊外型を断念し、「より狭い」住宅へ移り住むしか選択肢はない。
「都心回帰」の自由も「職住近接」の選択肢も奪われた子育てファミリーは、谷氏が指摘するように「時間を調整しやすい非正規雇用」という「労働力の供給側の理由」によって郊外居住を選ばざるを得なくなる。
生きるために子どもを育てるために居住性も職を犠牲にせざるを得ない現状は悲劇だ。「保育園落ちた日本死ね」という悲痛な叫びはわれわれの胸にぐさりと突き刺さる。
これは、ネオリベラリズムの社会の隅々への浸透の結果というべきか。
会員の都市計画工房代表・成瀬恵宏氏(懇親会で。成瀬氏とは10年くらい前か、ひょんなことからご一緒に多摩ニュータウンのすし屋で歓談したことがある。最近はイラクだかアフガンだか、インド、パプアニューギニアなどの街づくりに参画している。赤に近い派手なオレンジのシャツなどは岡本太郎でも着なかったのではないか。このデザイン感覚が信じられない。会場には奥さんもいらっしゃった)
「多摩NTにおける人的不良在庫」 吉川徹・首都大教授が軽妙発言
「既存住宅市場活性化元年の年に」 FRK・田中理事長
田中理事長
不動産流通経営協会(FRK)・田中俊和理事長(住友不動産販売社長)は6月9日、同協会定時総会後の懇親会で、「当協会は平成10年に『バリューアッププラン』と称し、独自にインスペクションを実施したことがあるが、残念ながら、ほとんど利用されなかった。今回は国をあげて位置づけて頂いたので、施行まで2年あるが、今年を『既存住宅市場活性化元年』と位置づけ、インスペクションの本格スタートの年にしたい」と語った。
また、今年4月にスタートした新・住生活基本計画に掲げてある「市場規模倍増に向け、私共も官民一体となって目標達成したい」と述べた。
不動産流通市場については、「この1年間の不動産流通市場は成約件数、平均価格とも前年を上回り、『好調」と言える1年だった。既存住宅の需要は底堅く、新年度に入ってもレインズの数字は好調を維持している」と話した。さらに、また、「囲い込み問題の懸念に終止符を打てるものと確信している」と問題解決に意欲を示した。
さらに、「業界の課題は営業手法、法律、ITと多岐にわたるとともにスピードが求められ、既存の委員会などでは追いつかない状況と判断し、私の諮問機関として、協会内部に『これからの不動産流通を検討する会』(通称これ検)を立ち上げた」と発表した。
総会後の懇親会(ホテルオークラ別館で)
RBA不動産流通カップ(野球大会)で優勝した住友不動産販売の岩井重人会長(FRK顧問=右)と準優勝した野村不動産アーバンネットの宮島青史会長(同理事)
「曖昧な現場の無償業務はサービス劣化につながる」 管理協・山根理事長
山根理事長
マンション管理業協会・山根弘美理事長が6月7日、通常総会後の懇親会の席上で、管理会社の現場担当者が日常的に行っている無償業務について「わかりやすい品質基準があっていい」と一歩踏み込んだ発言を行った。
冒頭、挨拶に立った山根弘美理事長(大和ライフネクスト会長)は、先の熊本地震について触れ、「私も現地に何度か入りましたが、熊本の皆さんは、そろって『まさか、熊本で…』と思われていた」「マンション防災力強化は、マンション住民、また我々業界の新しい重要な使命の一つになる」と語った。
また、今年3月に改正された標準管理規約については、「標準管理規約の上位概念である適正化指針には『マンションにおけるコミュニティ形成は重要であり、管理組合においても区分所有法に則り良好なコミュニティ形成に積極的に取り組むことが望ましい』という文言が明記された。協会としましては、今後、講習会、研修会を通し、この改正主旨を正しく伝え、お客様や現場に誤解混乱が生じないようにしっかりと啓発活動を展開していく」と話した。
平成28年度事業計画については、管理委託契約では明記されていない無償業務の提供について踏み込み、「9割を超える会員社が、委託契約範囲外の業務を無償で提供している。それが社員の、引いては経営上のかなりの負担となってきている」とし、「曖昧な無償サービスで、プロが育つでしょうか? 懸念されるのは、単純な価格競争とサービスの品質劣化です。このツケは、最終的にはお客様に回ってきます。もっとわかり易い品質基準が生まれてこそ、この業界の未来はある。難題ですが、これに取り組みます」と述べた。
山根理事長と石井国交相らが記念写真(第一ホテル東京で)