立地は「プラウド」「ブリリア」に負けない 西鉄「ブラントン日本橋小伝馬町」
「ブラントン日本橋小伝馬町」完成予想図
西日本鉄道が分譲中の「ブラントン日本橋小伝馬町」を見学した。同社が今後積極的に展開するという新ブランド〝ブラントン〟の第一弾だ。全22戸(分譲は18戸)の小規模ながら、駅から徒歩1分、全戸南向き、公園に隣接している立地は中央区内では得難い。首都圏進出の第一弾にふさわしい素晴らしいマンションだ。
物件は、東京メトロ日比谷線小伝馬町駅から徒歩1分、中央区日本橋小伝馬町に位置する12階建て全22戸。1期2次(5戸)の専有面積は66.79・80.78㎡、価格は8,190万~10,390万円。坪単価は420万円。登録受付は5月6日~5月16日。抽選は5月16日。竣工予定は平成29年11月上旬。施工は松井建設。設計・監理はフリークス一級建築事務所。販売代理は東京建物。売主は同社のほかアスコット(事業比率5%)。
現地は駅の改札を出て、隣接する十思公園を抜けて徒歩1分(測ったわけではないが、実際は50メートルくらいだから徒歩40秒くらいか)。敷地は東西に細長い約226㎡(68坪)。1階はエントランス、エレベータホール、トランクルーム、駐輪場などの共用部分で、住戸は2階からで1フロア2戸の構成。
敷地形状と南側のビューを最大限生かしたワイドスパンのプランが特徴。66㎡のタイプの間口は約10m、80㎡のタイプは約13m。南側の梁型を利用してリビングは高さ36㎝、奥行き1mの小上がりスペースとし、浴室はビューバスとしてその南側に室内物干システム付きのコンサバトリー(約2.2畳)を設置。廊下部分をほとんどなくし、北側に設置したバルコニー・避難口はキッチンとカウンター越しから眺められる坪庭のような空間提案を行っている。
設備仕様は、二重天井・二重床、玄関大理石、キッチンはユーティリティシンク、カウンタートップはフィオレストーン、食洗機、カップボード・吊戸棚、ミストサウナなどが標準装備。
販売を担当する東京建物受託販売部課長・綱島敏彦氏は、「用地はアスコットさんが手当てされた。当社が販売代理となったのは、西鉄さんと福岡で共同事業をさせていただいた縁と、この界隈での当社の6棟の実績が評価されたため。商品企画に当たってはアドバイスもさせていただいた。近接する当社と野村不動産さんの物件の〝いいとこどり〟をして、グレードも上げた。区内で南側に公園があるのは45年振りだから、ほとんど初めてに近い」と話している。
モデルルーム リビング
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西鉄は、記者が小学生から西鉄ライオンズ(現西武ライオンズ)ファンであり、20年くらい前に同社の素晴らしい戸建てやマンションを取材したことがあるので、新ブランドマンションがどのようなレベルなのかものすごく興味があった。
現地は綱島氏に案内していただき、モデルルームもしっかり見学した。土地の魅力を最大限に引き出した同社とアスコット、設計を担当したフリークス一級建築事務所、さらには商品企画アドバイスを行った東京建物の3社に拍手喝さいしたい。
マンションの価値はその敷地規模、共用施設なども重要であり、敷地がわずか68坪しかない物件なので総合的な評価は差し控えたいが、立地条件と各住戸の居住性は、昨年、ともに圧倒的な人気になった「プラウド日本橋三越前」と「Brillia日本橋三越前」に引けを取るどころかはるかに勝っている。
〝ブラントン〟というブランド名もなにやらホテルのようでもあるが、これまたいい。以前にも書いたが、大手デベロッパーのマンションブランドはほとんど「ハ行」だ。野村〝プラウド〟、東建「ブリリア」のほか、三井は〝パークシティ〟など、三菱は〝パークハウス〟(今は「ザ・」がつくが)、東急不動産の〝ブランズ〟。そして〝ブラントン〟だ。大手の一角に食い込もうとする意欲が感じられるではないか。用地取得競争は激烈を極めるが、今回のように大手が見向きもしない土地なら取得でき、商品企画でカバーすることは可能だと思う。
それにしても、昨年末から記者は〝パークビュー〟のマンション取材を立て続けに行っている、野村「木場公園」、三井「赤坂檜町」、住友「四谷」、三菱「国分寺」・「新宿御苑」、大和ハウス「白金台」、東建「上野池之端」などだ。今回の「日本橋小伝馬町」も加える。
モデルルーム コンサバトリー(左)とコリドー
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立地についてもう少し説明しよう。建設地は、隣接する十思公園も含めて江戸時代の伝馬町牢屋敷だったところだ。全体敷地は2,618坪あり、渡辺崋山、高野長英、吉田松陰、橋本佐内らの終焉の地となる。
綱島氏は「歴史好きにはたまらないマンション」とも言ったが、その通りだろう。それこそ毎日、渡辺崋山、高野長英、吉田松陰に思いをはせることができる。
その跡地に大正12(1923)年に起きた関東大震災後の復興事業の一環として、昭和3(1928)年に建てられた鉄筋コンクリート製の十思小学校の校舎を現在では再生活用しケアサポートセンターや保育園・銭湯・公園として中央区民の憩いの場として利用されている。
エントランスホール
驚!問い合わせ4500件突破 野村不動産「プラウド日本橋三越前」(2015/2/27)
“プラウド”に挑戦状 ほぼ同じ単価で「Brillia日本橋三越前」(2015/4/25)
旭化成 新中期経営計画 「一本足でなく三本足」小堀社長
旭化成は4月25日、今年度から2018年度を最終年度とする3カ年の新中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」をスタートさせた。
事業ポートフォリオを「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域に再編するとともに事業持株会社制に移行し、より戦略的かつ効率的な経営を行っていく。「成長・収益性の追求」「新事業の創出」「グローバル展開の加速」を基本戦略に掲げ、7,000億円規模の投資を行い、2018年度には売上高2兆2,000億円、営業利益1,800億円の達成を目指す。また、10年後の2025年度は売上高3兆円の展望も示した。
前中期経営計画「For Tomorrow 2015」の総括では、米国の救命救急医療機器メーカーのZOLL社や米国のバッテリーセパレータメーカーのPolypore社を買収し、新事業への参入、事業基盤の強化を図り、合計約1兆円の成長戦略投資を実施し企業価値の増大を図ったとしている。
また、杭工事におけるデータ流用問題を受けて、改めてコンプライアンスを徹底し、信頼回復に向けて①現場に赴く②現物を確認する③現実を知る-この〝三現主義〟を実践するとしている。
新中期経営計画では、10年後の目標実現に向け「成長・収益性の追求」「新事業の創出」「グローバル展開の加速」の基本戦略を掲げ、多角的な事業と多様な人財の結束で飛躍の基盤を固めていく。
杭工事データ流用問題で落ち込んだ「住宅」について、小堀秀毅社長は「やや落ち込んだとはいえ、高い水準で推移している。完全復活は近い」と自信をのぞかせた。
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旭化成ホームズについては、マンションを中心にずっと見てきたので少しは分かるのだが、他の分野「マテリアル」「ヘルスケア」については、バブル崩壊後は選択と集中によって新規事業に乗り出す一方で、競争力のないものは撤退・縮小してきたという一般的な知識しか持ち合わせていない。世界ナンバー1のシェアを誇る「電子コンパス」や世界初の「ウイルス除去フィルター」などを開発したことなど全く知らなかった。
新社長に就任した小堀秀毅氏が質疑応答を含め約1時間30分、「えー」「あー」などの機能語をほとんど使わず話し続けたのに唖然として見つめていた。
とくに注目したのは、「現場」「現物」「現実」の三現主義とトップダウン、ボトムアップを結び付けコンプライアンスを徹底するということだった。また、これまでの純粋持株会社から3事業領域制・事業持ち株会社制へ再編したのにも注目した。社内の風通しをよくし人的交流を図り、新しいことにチャレンジする体制を構築する強い意志が小堀氏の言葉に込められていた。
「一本足でなく三本足で目標達成する」という言葉にもひかれた。「住宅」は競争も激しく完全に成熟した産業だ。環境対応や再生可能エネルギーの取り組みが喫緊の課題だし、在宅医療・看護、シニア事業も欠かせない。そのためにはマテリアルやヘルスケア領域との連携なくして実現しない。自前でできるというのが同社の強みだろう。「サランラップ」「へーベルハウス」級の新しい商品開発に期待したい。
三菱地所レジデンス マンション居住者向け「番町エリア探索ツアー」
「地元を知る番町エリア探索ツアー」(30分コース)
三菱地所レジデンスは4月23日、同社のマンション居住者などで構成されている「三菱地所のレジデンスクラブ」会員向けのイベント「地元を知る番町エリア探索ツアー」を行い、番町エリアに所在する8物件約40名が参加。参加者は30分、1時間のコースに分かれて番町エリアの歴史・文化人居住跡地を探索した。
探索ツアーに参加した「ザ・パークハウスグラン三番町」の男性も「ルクセンブルグハウス」の女性も「とても面白かった」と話していた。(双方のマンションともとてもレベルが高いマンション)
同社はこれまで千代田区で24物件2,436戸のマンションを供給している。三井不動産レジデンシャルも大規模再開発マンションを手掛けているので何とも言えないが、戸数は1、2位を争うのではないか。
後藤氏
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イベントは前半が千代田区立日比谷図書文化館の学芸員による「千代田区番町エリアの歴史・文化について」と、千代田区の危機管理課職員による「千代田区の防災対策について」のセミナー。後半が探索ツアーだった。
記者は30分コースに同行したのだが、日比谷図書文化館の文化財学芸員・後藤宏樹氏の話がとても面白かった。少ない時間ながら、江戸時代の「番町」がどのような場所で、どのような位置・意味を持っていたかを後藤氏は描き出した。
「番町」は幕府を警護する役割を担っており、一番から六番の組に分かれて警護していたことから今も地名に一番町から六番町まで残っているという。
一番から六番は単に便宜的に付けたわけではなく、もっとも重要な拠点から番号を付したものだそうで、つまり、現在の半蔵濠に面したイギリス大使館などかあるところが「一番町」で、「二番町」はその西隣で、それからまた北東方向に向かった千鳥ケ淵に面したあたりが「三番町」となり、また東側に向かい「四番町」「五番町」「六番町」となる。「六番町」の東側が「二番町」とつながっている。
各番町でも「表」と「裏」があり、表があるほうが高台、「裏」が谷に当たるそうだ。この方式に従えば「一番町」がもっとも〝格〟が高いということになる。
現在の住居表示はどのような方式で丁目・番・号がつけられているのか、何かルールがあるのだろうか。記者は多くの場合、左巻きに「丁目」が付けられているような気がしてならないのだが…。「号」は右回りのようだ。
と、ここまで書いて気がついた。千代田区に限ってだが、住居表示の丁目は右回りとか左回りとかではなく、皇居を基準にして表示されていることが分かる。皇居から西側のエリアは東から西に向かって1、2、3…と表示され、皇居から東のエリアでは東に向かって1、2、3…と表示されている。北と南も同様だ。皇居に近いほうが丁目の数字は少ない。
他の区は分からない。法則があるようでない。
第一部のセミナー
激増する千代田区人口 16年間で61%増 当分続くマンション供給ラッシュ(2016/4/20)
駅1分、外観デザインがいい 住友不動産「シティテラス杉並方南町」
「シティテラス杉並方南町」完成予想図(左がノース棟、右がサウス棟)
住友不動産が5月中旬に分譲する「シティテラス杉並方南町」のモデルルームを見学した。敷地面積約9,000㎡の公務員宿舎跡地に建設される駅1分の全298戸で、交通利便性が高いことから人気を集めそうだ。
物件は、東京メトロ丸ノ内線方南町駅から徒歩1分、杉並区方南二丁目に位置する6階建てノース棟と地下1階・地上10階建てサウス棟2棟の全298戸。専有面積は54.68~85.07㎡、価格は未定だが坪単価は300万円台の後半になる模様。竣工予定は平成29年10月下旬。設計・施工は三井住友建設。
現地は用途地域が第1種中高層住居専用地域(一部近商)で、公務員宿舎跡地。周辺は戸建て住宅が多いエリアの一角。
建物外観に特徴があり、全体は白と黒が基調でコンクリート打ち放し風の外壁や木調ルーバー、S-マルチコア、ガラス手すりのコントラストが美しい。コの字型の10階建てのサウス棟にあるエントランスホールは3層吹き抜け。南向きはシンメトリー。ノース棟には保育所、診療所が設置される予定。
主な設備仕様は、二重床・二重天井、キッチン天板は御影石、ディスポーザ、食洗機、ミストサウナなどが標準装備。間取りが変更できるフレキシブルプランも用意している。モデルルームは「シティテラス荻窪」「シティハウス笹塚レジデンス」と共通。
販売を担当する同社・白浜健志氏は、「『総合マンションギャラリー新宿館』でいま公開している5~6物件の中で人気は一番高い。交通利便性が評価されている。方南町駅はホームが短く、3両編成しか停まらなかったが、6両直通運行を可能にするため改良工事が行われている。2017年度には完成する。外観に力をいれているのが特徴。『荻窪』のお客さんとはあまり重ならない。わたしのお勧めは『笹塚』。こちらは新宿方面の眺望が抜群」と話している。
サウス棟
エントランス
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白浜氏が話しているように外観デザインが美しい。コンクリート打ち放し風の外壁は一部有孔コンクリが採用されており、風情がある。
坪単価は未定だが、ほぼ予想したとおりだ。坪400万円はないとみた。380万円くらいかと思うが、白浜氏はもっと高くてもうれそうな顔をしていた。
「シティハウス笹塚レジデンス」は広告キャッチフレーズに〝都心、圧観。〟と謳っているように西側に新宿新都心がひらける眺望のすばらしさは記者も保証する。
モデルルーム
隣接するUR賃貸と一体となった3ha超の低層 住友不「シティテラス荻窪」(2016/3/2)
あのような倒れ方をしたのはなぜ 熊本県南阿蘇町の倒壊学生アパート
昨日(4月20日)、同業の記者から「熊本県南阿蘇町で倒壊した学生アパートの築年数は42年だった」とするある会社のブログ記事が添付されてメールで送られてきた。
記者もこの倒壊アパートについては相当のショックを受けた。テレビ画像では木造か非木造かは判別できなかったが、かなり古い建物かあるいは構造に問題があるのではと思っていた。建物の構造や築年数などについて言及するマスコミはなかったはずだ。
どうしてあのような無残な倒れ方をしたのかずっと頭から離れなかった。「なぜ」を繰り返した。理由を知りたく記事にもしたくて、木造の構造に詳しい人にも相談したが、「情報が少ない段階で書くべきではない」と言われそのままにしていた。
そして昨日だ。同じように不思議に思っていた人が多いようだ。そのブログ記事には、件のアパートは登記簿では木造の昭和49年築で、"改築◯年"となっていたようだ。
ここで問題となりそうなのは、築42年という築年数ではなく「改築」だ。建基法では「改築」とは、「建築物の全部又は一部を除却した場合、又は災害等により失った場合に、これらの建築物又は建築物の部分を、従前と同様の用途・構造・規模のものに建て替えること」とあり、従前のものと同じ、つまり現行の建基法の規定に従わなくてもいいようにも受け取れるが、それは軽微な改築であり、一定規模以上のものは建物全体が建基法の規定に適合するよう是正しなければならない。
だとするならば、今回の倒壊アパートはどうなっていたのか。記者は現行の建基法に適合していればあのような倒れ方はしないと思う。
このアパートに住んでいた学生が死亡した東海大学の災害対策本部・広報は、「学生が死亡したアパートは当大学が管理・運営している学生寮ではない。現段階では事実関係が明確ではないが、比較的(築年数が)新しいと聞いている」と話している。
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国土交通省の「賃貸住宅標準契約書(改訂版)」には、構造が木造か非木造か、工事完了年がいつであるか、大規模修繕を行っている場合はいつであるかを記載するよう求めているだけだ。
賃貸だろうと分譲だろうと、一番肝心なのは耐震性・遮音性・断熱性・居住性などの基本性能だ。分譲マンションでは、デベロッパーは杭打ち状況、壁・床厚、遮音等級、断熱性能、天井高、セキュリティなどをほとんど例外なしにパンフレットに盛り込んでいる。重要事項説明書にも法令上の制限や建物の維持・管理などを記載することが義務付けられている。
それに対して、どうして賃貸はもっとも肝心な耐震性についてはほとんど何も求めていないのか。これが信じられない。
ユーザーは真っ先に建物が旧耐震なのか新耐震なのかを確認することが必要だ。大きな地震(震度6~7)が起きたとき、「建物が倒壊して死ぬかもしれない」旧耐震の物件を購入し、あるいは賃借すべきでないと記者は個人的には思っている。
賃貸物件の貸主もまた旧耐震の物件については耐震診断を行い、必要なものは耐震補修を行うべきだ。これは最低限の義務だろう。
仲介会社も同様だ。賃借人の安心・安全を提供するのが宅建業者の使命であるはずだ。
宅建業法の目的は「購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ること」(同法第1条)であり、宅地建物取引士の任務は「宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行う」(同法第15条)だ。
この文言からすれば、少なくとも旧耐震の木造アパートが〝危険〟であることを告知する義務があると思うがどうだろう。そのような危険な共同住宅が市場に流通しなくなるような社会にしなければならない。
三井不動産リアルティ 新たに新宿、渋谷にコンサルティングオフィス開設
三井不動産リアルティは4月21日、個人資産家向けの投資、相続コンサルティング窓口を現在の千代田区霞が関、横浜に加え、新たに新宿、渋谷に設置したと発表した。
同社の昨年度の不動産投資に関わる取引数は、一昨年度と比べ約1.3倍に増加しており、2015年1月の相続税改正に伴い、相続不動産の売却や相続対策、空き家に関する相談が増加していることに対応するもの。
明和地所 新ブランド〝ラベルヴィ〟 第2弾「王子」も好調スタート
「クリオラベルヴィ王子」完成予想図
明和地所が3月中旬に分譲開始した「クリオラベルヴィ王子」を見学した。同社の新ブランド〝ラベルヴィ〟の第2弾で、全36戸のうち21戸が分譲済みで、好調なスタートを切った。
物件は、JR京浜東北線王子駅から徒歩3分、北区栄町に位置する5階建て全36戸。専有面積は32.68~48.69㎡、坪単価は320万円。現在分譲中の住戸(6戸)の価格は3,398.7万 ~4,496.4万円(35.13 ~48.38㎡)。竣工予定は平成29年3月中旬。設計はいしばし設計。施工は坂田建設。
現地は準工地域で、建物は内廊下方式で住戸は南向きと北向きがほぼ半々。2重床・二重天井で、天井高は2400~2600ミリ。2LDKは食洗機付き。
3月19日から分譲が始まっており、これまでに1LDKを中心に21戸が分譲済み。9割が実需。
◇ ◆ ◇
年明けの真っ先に同社の新ブランド〝ラベルヴィ〟第1弾「ラベルヴィ市ヶ谷」を見学した。記者の好きな「ボレロ」の作曲家であるラヴェルと、これまた大好きな「四季」の作曲家ヴィヴァルディを足して割ったような名前にほれ込んだからだ。
明和地所といえば創業社長の故・原田利勝氏とその右腕だった高杉仁氏を思い出し、原田氏にそっくりの息子さんの現社長・原田英明氏も含め、その風貌からはとても繊細な名曲を連想できないのだが、その落差がまた面白く、喝さいを送りたくもなった。
もう時効だから書くが、原田氏を取材するのは本当に怖かった。何せ柔道家だ。石もて追われるように大京を去り同社を立ち上げたのだが、怒り出すと止まらないところがあった。一度、当時の大京社長だった横山修二氏との和解を勧めたことがある。そのとき、原田氏は烈火のごとく怒り「なんで俺が頭を下げなくちゃいかんのだ」と一喝された。
高杉氏は、マンションのイロハを教えていただいた恩人なので怖くはなかったが、容貌は原田氏をはるかに上回っていた。本人もそれを自覚していた。どこかの組長の肩書のほうが似合っていた。その鬼の形相が明和地所を立ち上げたとき、横浜駅前の喫茶店でホロホロと涙したのを今でも忘れない。しばらく会っていないが、すっかり好々爺になっているはずだ。
とにかくこの会社が好きなのだ。「国立」の問題が起きるまでは商品企画でも業界をリードした。今でこそディスポーザは当たり前だが、最初に100㎡マンションの「三鷹」で標準装備したのは同社だ。
話を元に戻す。おっとり刀で駆けつけた「市ヶ谷」の単価(坪単価400万円)を聞き、モデルルームを見て、記事にも「もう少し設備仕様〝ラヴェル〟を上げてもよかったかもしれない」と書いたように、〝果たして大丈夫か〟と思った。
ところが、何と「市ヶ谷」は3月末までに完売となった。今回の「王子」の販売を担当しているプロジェクトリーダー・車谷尚亮氏も「最初はやや高いとも思ったが、価格は全然問題なかった。もう少し高くても売れた。ほとんどが実需」と正直に語った。
今回の「王子」も「1LDKはよく売れた。グロスがやや張る2LDKが勝負」(車谷氏)のようだ。
モデルルームは「市ヶ谷」と同じで、記者は坪単価320万円の「王子」なら設備仕様は納得できる。京浜東北線で坪単価300万円以下はバス便か、隣の足立区や荒川超えの川口以遠でないと無理だと思う。
野村不動産グループ 記者懇親会 「結束して目標達成を」沓掛社長
挨拶する沓掛社長(写真提供:不動産流通研究所)
野村不動産グループは4月19日、恒例の記者懇親会を行った。冒頭、挨拶に立った野村不動産ホールディングス・沓掛英二社長は、「今年は株式上場10年目、来年は野村不動産創業60年。大きな区切りの年に当たり今期より2025年まで10年先を見通した中長期経営計画を発表したが、経営環境が激変しており楽観視できない。グループ全社が結束して目標に向かって進んでいく。ガバナンスをしっかりすることが大事」などと話した。
◇ ◆ ◇
同社は今年4月1日付で、これまでのCSR推進部及び広報IR部を統合し、新たにコーポレートコミュニケーション部を新設し、部長には宇佐美直子氏(前広報IR部長)が就任したが、早速その真価を発揮する場面があった。
同社グループの記者懇親会はこれまで新宿野村ビルの48階にある「野村カンファレンスプラザ」で行われていたが、今年は「ヒルトン東京」に変わった。
沓掛社長は一通り話し終えた後、会場を変更したことに触れ、「今年は奮発してヒルトンホテルにしたが、儲かっているからではない」と参加者を笑わせた。そのとたん、司会を行っていた宇佐美氏が「手狭になったからです」と合いの手を入れた。
間髪を入れずとはこのことを言うのだろう。そのタイミングが絶妙だった。沓掛社長とコーポレートコミュニケーション部が一体であることを満場に知らしめた。
それにしても、代表者の話に割って入る勇気のあるスポークスマンなど政府機関にも民間にもいないのではないか。宇佐美氏の〝快挙〟に記者は普段の2倍の酒で応えた。
会場変更については、会場に着いてすぐ宇佐美氏から「これまでの会場が手狭だったので」という理由を聞いていた。
挨拶する沓掛社長(写真提供:野村不動産ホールディングス)
野村不動産HD CSR推進部、広報IR部を統合、コーポレートコミュニケーション部新設(2016/3/8)
「女性活躍」待ったなし 不動産業界の取り組み/野村不HD・宇佐美広報部長に聞く(2015/8/17)
激増する千代田区人口 16年間で61%増 当分続くマンション供給ラッシュ
先日は千代田区や港区などで〝お金持ち〟が増えていることを書き、昨日は千代田区のマンションがよく売れていることを紹介した。なぜ、そんなに同区のマンションが人気になるのか、その理由・背景をデータから探ってみた。
まず、人口。昨年3月、国立社会保障・人口問題研究所から平成22年(2010年)に約1億2806万人だった総人口は平成52年(2040年)には1億728万人へと2000万人以上も減り、65歳以上人口が40%以上を占める自治体が半数近くになるというショッキングな予測が発表されたが、千代田区には全く無縁な話だ。
同区の人口は昭和30年の約12万人を境に減少を続け、平成7年には約3.5万人までに落ち込んだ。その後は減少傾向に歯止めがかかり、平成12年の国勢調査では実に45年ぶりに増加に転じた。
国勢調査によると、平成12年の人口は約3.6万人だったのが22年には約4.7万人に30%も増加し、住民基本台帳による直近のデータでは約5.8万人へ、この16年間で61%も増えている。区の予測によると増加傾向は今後も続き、ピークの平成67年(2055年)には約8.1万人になるという。
ただ一つ気ななる材料もある。人口とは夜間人口のことで、昼間人口は漸減傾向にあることだ。平成12年の昼間人口は約86万人だったのが、22年には約82万人へと4万人も減少している。平成27年度の国勢調査の結果がどうなるか気になるところだ。区でも昼間人口減の要因をつかみかねている。
昼間人口減はともかく、人口増の最大の要因はいうまでもなくマンションの建設増だ。この7年間でも「プラウドタワー千代田富士見」(414戸)、「ワテラス」(333戸)、「パークコート千代田富士見」(505戸)の大規模再開発マンションが竣工している。
マンション建設増を裏付けるデータとして住宅着工増がある。平成5年はゼロだったのが、平成16年には約1,800戸に増加。その後は減少していたが、ここ数年は再び増加に転じ、平成27年(暦年)では1,696戸と平成16年水準に近づいている。〝億ション〟のメッカでもある麹町エリアでのマンション供給ラッシュもこれから本格化する。業界関係者によると20棟近くあるそうだ。
特徴的なのは、区内に建設されているマンションは小規模なものが比較的少ないということだ。区のデータによると、マンションは25年までに432棟、約2.1万戸供給されており、1棟平均は50戸だ。20戸未満が半数を占める都平均と比べるとその差は歴然とする。
マンションの規模は資産性とも密接な関係がある。区内の旧耐震の建築物は確実に減少しており、平成15年から25年までに約3,000戸以上減少し、26年の耐震化率は89.7%に達している。
空き家率の改善も進んでいる。平成20年には25.8%だったのが、25年には13.3%へと都の平均値(11.1%)に近づきつつある。
高額マンションの供給増はアッパーミドル・富裕層の増加につながっている。所得割の課税標準額が1,000万円以上の「高所得者」は、平成24年度は約3.6千人で、全納税者に占める比率は12.6%だったのが、平成27年度は約4.4千人と3年間で約800人増加し、比率も13.4%へ0.8ポイント増加している。比率は港区の14.5%には及ばないが、23区平均の4.1%を大きく上回っている。
他のデータもなかなか興味深い。保育園・学童クラブの待機児童はゼロだし、生活保護率も特別区の平均より5~10ポイント低い。
喫煙者と非喫煙者の共生を図る取り組みにも力を入れている。区は平成26年度から民間ビルの空き店舗などを活用した屋内喫煙所の設置に対する助成事業を開始し、28年度も引き続き「喫煙所の設置を積極的に推進していく」としている。
このような人口増、マンション建設増を受けて区では、平成27年度から平成36年度までの10年間を期間とした「新たなちよだみらいプロジェクト」を作成。既存施設の更新や住環境の整備、子育て、高齢者支援施設の充実、コミュニティ支援などへ施策の重点を移していくとしている。「付置住宅」や「区営住宅」「区民住宅」の見直しも行われる。
モリモト「ピアース千代田淡路町」 坪単価420万円でもほぼ1カ月で完売へ
「ピアース千代田淡路町」完成予想図
モリモトが分譲中のコンパクトマンション「ピアース千代田淡路町」を見学した。淡路町・新御茶ノ水・小川町駅から徒歩1分の全71戸で、3月末から第1期(45戸)・第1期2次(16戸)が供給されており、残り2期(10戸)を残すのみ。極めて好調な売れ行きを見せている。
物件は、東京メトロ丸ノ内線淡路町駅・同千代田線新御茶ノ水駅・都営新宿線小川町駅から徒歩1分、千代田区神田美土代町に位置する13階建て全71戸。専有面積は25.03~54.78㎡、2期(10戸)の予定価格は3,300万円台~7,200万円台。坪単価は約420万円。竣工予定は平成29年3月上旬。設計・監理は日本エーコン一級建築士事務所。デザイン監修はフレグライン建築設計(福田馨氏)。インテリアデザインはリエゾン(鬼倉めぐみ氏)。施工は森本組。第2期は4月29日から分譲される。
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この物件については、昨年末、他のマンションを取材したときから坪単価が400万円を突破することを聞いていたが、現地周辺は大中小のビルなどが建ち並んでおり、分譲マンションはほとんど皆無。1カ月くらいで完売する勢いにあるのに驚かされる。東急リバブル「ルジェンテ神田神保町」や明和地所「ラベルヴィ市ヶ谷」同様、区内のコンパクトマンションは実需のほかに投資需要が人気の要因の一つであるのは間違いない。そうでないと説明がつかない。
大手デベロッパーのマンションでは、野村不動産が昨年に分譲した坪単価400万円くらいの「プラウド千代田淡路町」(109 戸)が瞬く間に売れたし、三井不動産レジデンシャルも相当の規模のマンショ ンを分譲するそうだ。
この勢いは止まらない。このところ人口が激増している千代田区だが、今後も「麹町」を中心に大量のマンションが分譲される。そして、坪単価は最低で400万円というのが定着しそうだ。人気エリアでは700万円以上になるかもしれない。
バブル期は都心部の人口流失が相次ぎ、コミュニティの崩壊に危惧した行政はビルに「付置住宅」を義務付けるなど対応に追われたが、いまは逆だ。中小ビルがどんどんマンション化している。
モデルルーム