野村不など3社 共同開発の「サイホン排水システム」が日経「建材設備大賞」を受賞
野村不動産は3月3日、ブリヂストン、長谷工コーポレーションと共同で開発した、建物の水廻り設備設置の自由度向上に貢献する排水システム「サイホン排水システム」が日経アーキテクチュア、日経ホームビルダーが主催する「建材設備大賞」でもっとも評価の高い「大賞」を受賞したと発表した。
「サイホン排水システム」は、従来より小口径の排水管を使用し、1つ下の階で排水立て管(建物の各階を縦に貫通して下水に通じる排水管)に合流させることでサイホン力(水が落ちることで 発生する引く力)を利用して排水する新しいシステム。建築物全体に与えるイノベーション性の高さが評価され、「大賞」受賞となった。
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これは文句なしにいい。画期的な開発だと思う。採用する第一号が早く見たい。
住友不動産 「シティタワー武蔵小杉」竣工見学会
「シティタワー武蔵小杉」(右隣が「グランツリー武蔵小杉」)
住友不動産は3月2日、先に竣工した「シティタワー武蔵小杉」の竣工記者発表会を行った。分譲開始した2年半前は完成していなかった駅前の「武蔵小杉東急スクエア」「ららテラス武蔵小杉」「グランツリー武蔵小杉」が完成し、街は一変。全800戸のうち約6割が分譲済みで、同社は「順調な売れ行き。今後1年半くらいの間に完売したい」と話している。
物件は、JR横須賀線・湘南新宿ライン、東急東横線・目黒線武蔵小杉駅から徒歩4分の川崎市中原区中丸子に位置する免震の53階建て全800戸。専有面積は55.23~72.35㎡、坪単価は350~400万円。施工は前田建設工業。竣工は平成28年1月。
天井高約8メートルのエントランスラウンジ(列柱のような石張りの柱がとてもきれい)
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見学の目玉は「アウトフレーム工法を採用することで、70㎡の広さでもワイドスパンの『ダイナミックパノラマウインドウ』の機能がある」(同社)というそのプランだ。
写真を見ていただければわかるが、床から50㎝くらいの高さから天井近くまで2.2mくらいのハイサッシになっており、幅は約5m。圧倒的な開放感がある。隣のバルコニー付きの洋室と比較するとそれがよくわかる。
「70㎡でも73~74㎡の機能がある」ことについて、同社担当者は「お客さんの評価が非常に高い」と話した。70㎡の3LDKは、先に記事にした「シティテラス荻窪」でも採用されており、こちらは収納に工夫を凝らしている。
ダイナミックパノラマウインドウ(左)とバルコニー付きの洋室
RBA 川口市の幼稚園・小学校に「ヤレ紙」贈呈 金畑氏、平元氏が出席
「みなさん、このロール紙はどこまで伸びるでしょ」南平幼稚園・福嶋園長
「宇宙まで! 」園児
RBAインターナショナル顧問
金畑氏(前野村アーバン社長)、平元氏(元東急リバブル専務)が贈呈式出席
世界の子どもたちを対象に社会教育の推進、文化・芸術・スポーツの振興、国際協力推進に関する事業を行っているNPO法人のRBAインターナショナル(会長:久米信廣・第三企画社長)が、川口市内の市立幼稚園2園と小学校4校から感謝状を授与された。これは、第三企画の川口印刷工場(第三インプレッション)で発生した商品にならない「ヤレ紙」を有効に活用してもらおうと、「学用品」として贈呈したことに対してのもの。埼玉県と県教育委員会、市教育委員会が仲介役となり実現したもので、昨年、川口市と越谷市の県立特別支援学校3校に対しても寄贈しており、今回はその第2弾。贈られた園長・校長先生は「紙はいくらあってもありがたい」と異口同音に語り、RBA関係者は「普段捨てている紙。有効活用していただいてとても嬉しい」「今後も継続して行っていきたい」と応じた。
左から久米氏、金畑氏、新郷南小校長・小濱治人氏、川口市教育局学校教育部指導課主幹・大竹伸明氏
平山郁夫の絵画を背景に左から曽根原氏、平元氏、新郷小校長・浦谷信一氏、大竹氏
「宇宙まで!」紙の長さに子ども歓声
RBAインターナショナルが「ヤレ紙」を寄付したのは、川口市立の新郷南小学校、新郷東小学校、新郷小学校、東本郷小学校の4校と南平幼稚園と舟戸幼稚園の2園。印刷段階で詰まったものや折れ曲がった紙をきちんと整えて結束したA4判の白紙12,000枚と、ロール紙の端紙10本(長さにして数百メートルに相当)をそれぞれの小学校・幼稚園に贈呈したことに対し、校長・園長から感謝状がRBAに贈られた。
川口印刷工場から歩いて数分の新郷東小学校の小沼和美校長は、「紙はいくらあってもあっという間になくなってしまう。財政難の折からとてもありがたい。わたしどもの学校は入り口が狭いため、校外学習のときなどに利用する大型バスが入らず、第三企画さんの敷地をお借りして駐車させていただいている」と述べた。
また、工場から徒歩で20分くらいの東本郷小・吉田忠司校長は「子どもたちにも印刷物がどのようにして出来上がるのか学ばせたい。工場見学はできませんか」と、贈呈式に同席していた第三企画専務取締役・久米正一氏にたずね、久米氏は「もちろん、いつでも結構です。喜んでご案内します」と応えた。
ヤレ紙は印刷業界用語で、印刷の工程で印刷機械にかけることが適さなくなった紙のことで、ロール紙の場合は芯に近い部分がこれに当たり、ヤレ紙として処分・廃棄されている。低炭素社会の実現のため、最近はリサイクル・再利用の取り組みを強化し、環境負荷の軽減に努めているところが多い。
第三企画も川口印刷工場(第三インプレッション)で発生する大量のヤレ紙を再利用業者へ有価で処分しているが、社員がもっと有効な使い道はないかと考え、RBAが子どもたちに自由に使ってもらえるように埼玉県、県教育委員会に相談した結果、寄付が実現した。
昨年は、埼玉県立草加かがやき特別支援学校、同越谷西特別支援学校、同川口特別支援学校の3校に対して寄贈されており、今回はその第2弾。贈呈式は2月9日(火)と10日(水)の2日間に分けて行われた。
9日の感謝状贈呈式に臨んだRBAインターナショナル理事・金畑長喜氏(野村不動産アーバンネット前社長)は、「子どもたちの健全な発達・育成を図るRBAの目的によくかなったもの。余った紙を贈るのだから、受け取る側も気兼ねなく受け取れ、負担に思われないのではないか。南平幼稚園ではその紙の一部を使った作品を見せていただいた。こんなうれしいことはない」と話した。
10日の贈呈式に出席した同・平元詢二氏(東急リバブル元専務)は、「ヤレ紙を学校などに寄付することこそもっともRBAの活動にふさわしい。贈る側も受け取る側も幸福な気持ちになれる。チラシを発注する不動産流通会社にも共感していただけるのではないか。市内のすべての保育園・幼稚園に寄付したいくらいだ」などと語った。
第三企画の代表として贈呈式に出席した同社専務取締役・久米正一氏も、「みなさんに喜んでいただいてとてもうれしい。今後も継続して行っていきたい」と話し、工場の代表として出席した管理責任者の曽根原良弘氏も「普段捨てている紙をこのように使っていただくことに感謝します」と喜んだ。
左から久米氏、金畑氏、東本郷小・吉田忠司校長、大竹氏
金子みすゞ、岩谷時子、平山郁夫…驚きの連続
今回の取材の目的は、もちろん感謝状贈呈式を取材することだったが、もう一つ自らにテーマを課した。教育現場に少しでも近づき、何か新しい発見をすることだった。以下、各小学校・幼稚園で見聞したことを紹介する。
【新郷南小学校】小濱治人校長 児童数478名
校長室に招じ入れられたとき、真っ先に目に飛び込んできたのは額装された金子みすゞの詩「露」(吉安優子氏寄贈)だった。
「露」
誰にも言わずにおきませう
朝のお庭のすみつこで
花がほろりと泣いたこと
もしも噂が広がつて
蜂のお耳ヘはいつたら
悪いことでもしたやうに
蜜を返しにゆくでせう
新仮名遣いでなく旧仮名遣いなのがいい。慣れれば子どもでも旧仮名遣いは読める。26歳の若さで自死した金子みすゞのやさしさがストレートに伝わってくる。児童はこの詩がずっと記憶に残るのではないか。
金子みすゞの詩「露」(吉安優子氏寄贈)
【東本郷小学校】吉田忠司校長 児童数228名
児童数228名というのは市内でも少ないほうだそうだが、少ないからこその良さもある。吉田校長が率先して挨拶運動を行っており、ノーチャイムでも時間をみんな守るそうだ。ビオトープもあった。カブトムシを約200匹飼育しており、田植えを行い収穫もするそうだ。こんな小学校が首都近郊にあるのに驚いた。
訪ねていったときはちょうど浦和レッズの関係者が児童にサッカーを教えていた。
田んぼ(稲刈りのあとが残っていた)
【南平幼稚園】福嶋繁夫園長 定員140名
埼玉県南部では公立の幼稚園は数えるくらいしかないそうだが、そのうちの2園が川口にある。南平幼稚園と舟戸幼稚園だ。定員はともに140名でほぼ満員。入園希望が多い場合は抽選になることもあるという。
南平幼稚園・福嶋園長は、遊戯室に集まった全園児に向かって「みなさん12,000枚ですよ。積み上げたらどれくらいになるかわかりますか?みなさんの肩ぐらいですよ。この継ぎ目のない紙(ロール紙)は全部伸ばすと、どれくらいあるでしょう」と呼び掛けた。園児たちは「地球一周」「宇宙まで!」と歓声を上げた。
寄贈された紙はすでに園児のお絵描きに一部使用されており、遊戯室に掲示されていた。
南平幼稚園
【舟戸幼稚園】井上千春園長 定員140名
荒川のスーパー堤防上に立地する素晴らしい環境にこの幼稚園はあった。 東西南北、遮るものがない。しかも舟戸小学校と南中学校と一体として建設されており、そのデザインがまた素晴らしい。井上園長は「小学校と中学校との交流もあり、何かあると生徒たちが手伝ってくれる。ロール紙は子どもたちがダイナミックな絵を描くのに最適。有効に活用させていただく」と話した。
舟戸幼稚園
【新郷東小学校】小沼和美校長 児童数510名
学校を辞去するとき平元理事が玄関の壁を見て歓声を上げた。校歌が掲げられていたのだが、何と作詞が岩谷時子で作曲が中村八大というのに平元氏は驚き、感動したのだ。小沼校長によれば、初代校長(昭和48年開校)がPTA役員と中村邸を訪問して依頼したのだそうで、中村氏と岩谷氏はわざわざ学校を訪れ、作詞・作曲したという。小沼校長は「校歌は学校の誇りの一つです」と話した。
中村八大は「上を向いて歩こう」「こんにちは赤ちゃん」「遠くへ行きたい」などの国民的なヒット作を世に送り出した。岩谷時子も越路吹雪の一連の作詞と、「恋のバカンス」「夜明けのうた」「君といつまでも」「恋の季節」などのヒット作を生み出した。
岩谷時子作詞・中村大八作曲の校歌
【新郷小学校】浦谷信一校長 児童数836名
最後に訪れた新郷小の校長室に入ったとたんドキリとさせられた。平山郁夫そっくりの絵画が掲げられていた。記念撮影の段階で浦谷校長から寄贈品で本物であることを知らされびっくりした(失礼だが、小学校に本物があるとは露ほども思わなかった)。
新郷小の開校は明治6年、142年の歴史を持つ。これほど古い歴史を持つ学校は市内でも数えるほどということだった。当時はもちろん「新郷小学校」ではなく、寺子屋が発展した形で「峯学校・榛松学校・蓮沼学校」のように呼んだそうだ。
参考までに。RBAインターナショナルの芸術顧問でもある中国人画家常嘉煌氏は東京藝大の平山研究室で日本古代美術と日本画の模写の方法について研究したことがあり、東日本大震災では陸前高田市と名取市にそれぞれ「希望の一本松」、「祈願の櫻」を寄贈している。常氏の父で敦煌の石窟の保護と研究に尽力し、中国では「敦煌の守護神」として知られる故・常書鴻氏は平山氏と親交があった。
平山郁夫の絵画
RBAインターナショナル 川口特別支援学校で学用紙贈呈式 「紙価を高めたい」小池校長(2015/9/3)
RBAインターナショナル 学用紙を埼玉県立草加かがやき特別支援学校に寄付(2015/8/3)
RBAインターナショナル 草加に続き越谷西特別支援学校へも学用紙寄贈(2015/8/18)
隣接するUR賃貸と一体となった3ha超の低層 住友不「シティテラス荻窪」
「シティテラス荻窪」完成予想図
住友不動産が4月に分譲する「シティテラス荻窪」を見学した。隣接するURの賃貸と合わせると3haを超える広大な低層住宅地に立地する緑環境が素晴らしいマンションだ。
物件は、JR中央線荻窪駅から徒歩13分、杉並区荻窪三丁目の建蔽率40%、容積率100%の第一種低層住居専用地域に位置する4階建て全8棟構成の225戸。専有面積は66.67~75.14㎡、価格は未定だが坪単価は370~380万円になる模様。竣工予定は平成29年2月中旬~10月中旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。
現地は昭和33年に竣工した旧住宅公団「荻窪団地」の敷地の一角。荻窪団地はUR都市機構によって建て替えられ、その敷地の一部を同社が譲り受けて分譲するもの。
建物は南向きと西向きの8棟構成で、ガラス手すりを多用。住戸プランの多くは6.2mスパンの70㎡の3LDK。二重床・二重天井、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナが標準装備で、キッチン天板は御影石。開口部を広く取り、収納を充実させているのが特徴。
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第一種低層住居専用地域に位置する低層マンション群としては、他に例を見ない規模だ。
平成19年に都市計画決定された「荻窪三丁目地区地区計画」は全体面積が約6.7haにも及ぶ広大な規模で、荻窪団地の建て替え事業に合わせて地区内の道路の整備や避難場所としての機能の確保を図るとともに、良好な住環境を継承し、周辺地域と調和したみどり豊かで良好な低中層市街地の形成を図る」のが目標になっている。
荻窪団地は昭和33年に竣工した住宅公団の団地で、建て替えによって全411戸のUR賃貸「シャレール荻窪」に生まれ変わった。
同社の物件は荻窪団地の東側約半分をURから譲り受けたもので敷地面積は約1.6ha。23区内の第一種低層の敷地規模は、三菱地所レジデンスが数年前に分譲した約1.8haの「ザ・パークハウス上鷺宮」には及ばないが、それに次ぐもの。隣接するURの賃貸と合わせると3ha以上あり、樹齢100年近いと思われる高木も残されているので見事な景観を形成している。
グロス価格を抑えるため住戸面積を70㎡に圧縮しているが、約3.1畳大のキッチンには大きめの食品庫を設け、さらに約0.9畳大の納戸と一体として利用できるようにしているなど、工夫を凝らしている。
現地(右側がUR賃貸)
インテリックス 「リシャール横濱元町」(全23戸)が完売
インテリックスは3月1日、今年1月に分譲開始した自社マンションブランド〝リシャール〟第4弾「リシャール横濱元町」(全23戸)が2月末までに完売したと発表した。
モデルルーム来場者は150組で、購入者の年齢は20代から70代以上、現住所は同物件と同じ横浜市中区が約5割、中区以外の市内が約3割。購入動機は自己居住、家族居住、セカンドハウスなど。
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早期完売するだろうとは思っていた。これからも立地を絞り込み、確実に早期完売する物件を年に1物件くらいのペースで供給してほしい。
元町仲通りの中心地 販売好調 インテリックス「リシャール横濱元町」(2016/2/8)
三井不動産レジなど 横浜市内一等地で58階建て約1,200戸のタワー複合開発
「北仲通北再開発等促進地区 地区計画 A-4地区」イメージ図
三井不動産レジデンシャル、丸紅、森ビルの3社は3月1日、神奈川県庁、合同庁舎などが集積する横浜市の中心街にタワー棟では市内最大規模の地上58階建て約1,200戸のマンションとホテル、店舗などを併設した複合大規模開発「北仲通北再開発等促進地区 地区計画 A-4地区」に着手すると発表した。
敷地内に現存する横浜市指定有形文化財にも指定されている旧横浜生糸検査所付属生糸絹物専用B号倉庫およびC号倉庫(倉庫棟)の保全活用計画変更手続きを経て、倉庫棟の解体に着手し、複合大規模開発を進めていく。
計画地はみなとみらい線馬車道駅に隣接。西側正面には横浜ランドマークタワーが展望できる。敷地面積約13,000㎡、延床面積約168,000㎡、新築着工は2016年10月、竣工は2020年1月の予定。
伊藤忠都市×神奈川中央交通×横浜公社 官民協業の「戸塚」人気必至
「クレヴィア戸塚」完成予想図
伊藤忠都市開発(事業比率80%)と神奈川中央交通(同20%)が共同で分譲する「クレヴィア戸塚」を見学した。戸塚駅前の再開発地内に横浜市住宅供給公社が建設する複合施設建物を両社が譲り受けて分譲するもので、官民協業の良さが十分発揮されているマンションだ。
物件は、JR東海道本線・横須賀線・湘南新宿ライン・横浜市営地下鉄ブルーライン戸塚駅から徒歩2分、横浜市戸塚区吉田町に位置する10階建て全90戸(分譲戸数は86戸)。専有面積は25.01~73.48㎡、価格は未定だが坪単価は300万円を突破する模様。竣工予定は2017年2月下旬。事業主は横浜市住宅供給公社。販売代理は伊藤忠ハウジング。設計・監理は工藤建設・奥野設計共同企業体。施工は工藤建設。
現地は、駅前の商業施設などが集積する商業地域立地。徒歩1分の駅前ビル「戸塚モディ」から地下通路でJRとつながっている。
建物は逆梁ハイサッシ、二重床・二重天井、食洗機、ミストサウナ、グローエ水栓などを装備。24時間ゴミ出しも可能。マンションでは珍しい排気と吸気の熱エネルギーを交換することで室内の熱を逃すことなく換気し、省エネ性を高めた「ロスナイ換気システム」も採用。
販売を担当する伊藤忠ハウジング営業第1部課長・細谷肇氏は、「反響は1,000件以上、来場は260~270組。戸建てからの住み替えを考えている高齢者の方や単身・DINKS層まで幅広く集客できている。公社のユニバーサルデザインがふんだんに盛り込まれており、フローリングや建具などは伊藤忠の提案も取り入れられている」と、物件に自らほれ込んでいた。
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横浜市住宅供給公社のマンションは先月「横浜MIDベース タワー」を見学しているが、こちらは規模こそ小さいが、〝さすが公社〟と唸るような設備機器が採用されていた。「ロスナイ換気システム」だ。
通常、マンションには外壁と通じる壁に換気口が設けられているが、このマンションにはそれがない。そのために夏は暑い、冬は冷たい外気が室内に入るこむことがなく、音もシャットダウンできる。どうしてマンションにこれまで採用されてこなかったのか、それとも記者が採用されているものを見逃してきたのか。
「ロスナイ換気システム」は三菱電機製で、同社にこれまでのマンション採用実績などについて問い合わせたが、教えてもらえなかった。
住戸プランは70㎡台が中心だが、北向きでそれぞれ7戸ある25㎡(7戸)、31㎡(7戸)、40㎡(7戸)のタイプも人気を集めるのではないか。設備仕様レベルは民間の普通のマンションをはるかに超える。細かいことだが、三面鏡には曇り止め機能がついていた。
横浜公社と伊藤忠都市開発の組み合わせは、2009年に分譲された「アイ マークス横浜桜木町」もある。他の公社は分譲事業からほとんど撤退してしまったが、横浜公社は異彩を放っている。
キッチンは伊藤忠都市開発の「モット・キッチン」
今度は横浜のど真ん中 人気必至の横浜公社「横浜MIDベース タワー」(2015/1/28)
横浜市住宅供給公社&伊藤忠都市開発 「アイ マークス横浜桜木町」が販売好調(2009/2/19)
三菱地所レジ 生物多様性保全の取り組み加速 累計50物件に
「ザ・パークハウス 東戸塚レジデンス」完成予想図
三菱地所レジデンスは2月29日、同社が2015年2月に始動した生物多様性保全の取り組み「BIO NET INITIATIVE(ビオ ネット イニシアチブ)」が50物件に達したと発表した。
物件規模・敷地面積の大小に関らず全ての「ザ・パークハウス」に生物多様性保全に配慮した植栽計画を行うことで、マンション単体と周辺の緑地や街の緑をつなぎ、エリア一帯のエコロジカルネットワークが形成されることを目指す。
また、一般社団法人いきもの共生事業推進協議会による「いきもの共生事業所認証(ABINC認証)[集合住宅版]」認証は昨年度に取得した3物件に続き、今年度は「ザ・パークハウス 東戸塚レジデンス」「ザ・パークハウス 国分寺緑邸」「ザ・パークハウス宝塚」など5物件と、同社の社宅「世田谷ハウス」で取得した。
「世田谷ハウス」では生物多様性保全拠点とするため「実験庭園」を設置し、様々な取り組みを行っていく。
脚光浴びるインスペクション 宅建業法を改正へ 重説に盛り込む
国土交通省は2月26日、既存住宅の流通の促進を図るための「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案」が閣議決定されたと発表した。
不動産業者に専門家による建物状況調査(インスペクション)の活用を促すことで、売主・買主が安心して取引ができる市場環境を整備するのが主な目的。
不動産業者が媒介して契約するとき、インスペクションを行う業者のあっせんに関する事項を記載した書面を依頼者に交付し、インスペクションを行った結果を重要事項説明書に記載することを求める。法律が成立してから2年後に施行する予定だ。
国は、平成25年時点で4兆円の既存住宅市場を平成37年までに8兆円へと倍増させる目標を掲げており、このインスペクションの普及に大きな期待を寄せている。日本不動産鑑定士協会連合会(JAREA)も中古住宅の適正価格を査定するワンストップサービス「住宅ファイル制度」を武器に市場参入機会をうかがっている。
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結構な法律改正だと思う。インスペクションが脚光を浴びることになってきた。
問題は、法律案で「国土交通省令で定める者」となっているインスペクション業者をどう規定するかだ。現段階では建物診断のプロである建築士が想定されているが、建築士に限定することに対しては業界内からの反発も予想される。
例えば、大手ハウスメーカー10社からなる「優良ストック住宅推進協議会」がそうだ。同協議会は2008年に立ち上げられたもので、①住宅履歴②長期点検メンテナンスプログラム③耐震性能-この3つを武器に確実に売買実績を積み上げてきており、独自の査定方式「スムストック査定」にも絶対的な自信を見せている。同協会が認定したスムストック住宅販売士は3,000名を超える。
このスムストック住宅販売士をインスペクション業者から除外したら大混乱が起きる。同協議会こそがインスペクションの重要性を一貫して主張してきたからだし、戸建て流通のビジネスモデルを構築したのも同協議会だ。国会議員の先生たちも大手ハウスメーカーを敵に回すことはできないはずだ。
だとすると、「国土交通省令で定める者」とは「建築士、又は国が同等の資格を有する者と認めた者」というような文言に落ち着くはずだ。
もう一つ、見逃してはならないのが、重要事項の説明に関する宅建業法第35条六の二のロだ。宅建士は「設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況」について書面を交付して説明しなければならないことになっている。
これは具体的に何を指すのか不明で、国交省も「これからの検討課題」としている。
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中古住宅の流通促進を阻む大きな壁は、新築こだわり派の「新築のほうが気持ちがよい」という「気」だ。これがなかなか厄介だ。ベルリンの壁のようなものだったら壊そうと思えば壊せるが、なにしろ「気」は空気のように姿が見えない。この妄信・迷信・信仰・崇拝に似た「見えない壁」をぶち破らないと、中古市場の倍増はうたかたの夢に終る。インスペクションを武器に流通量を倍増させることなど絵空事だ。
では、この「見えない壁」をどう打破するのか。残念ながらその手だてが見つからない。同じ土俵で戦えるようにするためには、関係者がコツコツと実績を積み上げていく以外にない。〝雨垂れ石を穿つ〟という諺もあるではないか。この変化の機会を捉えたい。不動産流通会社の出番だ。
希望の光がないわけではない。消費者の意識は変わりつつある。国交省の住宅市場動向調査でもその変化はみてとれる。平成26年度と24年度の数値の変化に注目していただきたい。
注文住宅、分譲戸建住宅、分譲マンション取得世帯が中古住宅を選ばなかった理由は、平成26年度では「新築のほうが気持ち良いから」が61.3%でもっとも多いのだが、これは平成24年度の73.2%(分譲派)から11.9ポイントも減少している。
また、中古を選ばなかった理由として2番目に多い「リフォーム費用などで割高になる」は24年度の38.2%から26年度は27.6%へと10.6ポイント減少している。このほか「隠れた不具合が心配だった」は26.3%から24.5%へ、「給排水管などの設備の老朽化が懸念」は20.7%から17.4%へそれぞれ減少するなど、消費者の意識の変化がうかがわれる。
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個人的な意見を言わせてもらえれば、インスペクションは、「瑕疵の有無を判定するものではなく、瑕疵がないことを保証するものではない」(国土交通省・既存住宅インスペクション・ガイドライン)というのはよくわかるのだが、「検査結果がどの検査事業者が行ったかによらず同様の結果が得られるよう、現時点で得られている知見や一般的に用いられている検査技術等に基づいたものとすること」(同)というのがよく分からない。
誰が行っても同じ結果しか出ないことを求めるということは、誰もが見て触っても発見できないような問題点を指摘する水準以上の専門家は必要ないということなのか。だとすれば、消費者には選択肢はない。インスペクションは単なる〝安心料〟というのも寂しい。(そんなに報酬はもらっていないという反論がありそうだが)
さらに言えば、いったいぜんたい「宅建士」「建築士」「鑑定士」(ハウスメーカーが組織するスムストック住宅販売士もある)の「士」が3人も4人も揃わないと中古住宅の質が担保されない、安心・安全な取引ができないというのは考えてみれば情けない。みんなその費用を消費者に負担させようというは理解されないと思う。
ブルースタジオ 築32年の軽量鉄骨アパートを環境共生型へリノベ
「縁木舎」
ブルースタジオが企画・設計監理を担当した築32年の軽量鉄骨造2階建てアパートの1棟リノベーションプロジェクト「縁木舎」を見学し、植栽計画を担当したエーピーデザイン社長・正木覚氏から武蔵野の生態系を学ぶ「まち歩きトーク」に参加した。
物件は、JR 中央総武線・京王井の頭線吉祥寺駅から徒歩18分(小田急バス明星学園前停留所から徒歩3分)、三鷹市井の頭5丁目に位置する敷地面積520.37㎡、延べ床面積282.76 ㎡の軽量鉄骨造2階建て全9戸。専用面積は21 ㎡、33㎡、42㎡、53㎡。既存建物竣工年は1982年4月。リノベーション竣工年は2016年1月。企画・設計監理はブルースタジオ。施工は有限会社キューブワンハウジング。植栽計画はエービーデザイン。
現地は、井の頭公園を抜けた中高級住宅が建ち並ぶ第一種低層住居専用地域の一角。従前の建物は1982年に大手ハスウメーカーによって建てられた1戸約21㎡のアパート。築年数が経過するとともに競争力を失い、約6万円だった賃料は約5万円まで下げざるを得ない状況になっていた。
昨年、この状況をどうするかの検討が始まり、敷地内に自生したムクなどの樹木を残す環境に優しく人にも優しい同社の提案が受け入れられ、1棟リノベーションすることが決まった。
リノベーションにあたっては、環境共生を重視するため敷地内のムクなどの既存樹を極力残し、新たにコナラ、シラカシの高木や草花を植栽。プランはニーズの変化に対応して2戸を1戸にした41㎡のタイプを増やし、床材・面材にクルミ、オーク、カエデ材を多用しているのが特徴。
賃料は建築当初を上回る7万円くらいに設定したにもかかわらず、これまでに約8割の入居が決まっている。
「まち歩きトーク」では、冷たい雨が降る中、正木氏の案内で入居者や若い人たちが春の芽吹きを体感した。正木氏は初代JAG ( ジャパンガーデンデザイナーズ協会) 会長で、「青豆ハウス」などブルースタジオの物件の植栽計画を数多く担当している。
2部屋を1部屋にリノベーション
庭(手前はウッドデッキの縁)
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内覧会が始まったのは午前11時。「まち歩きトーク」は午後1時30分から。この間、喫茶店などないから冷たい小雨が降る中、街をさまようしかなかった。「帰ろうかな」とも思ったが、春の芽吹きを堪能し、香りを胸いっぱいに吸い込みたいという欲望が勝った。約1時間の「まち歩きトーク」で拾った話を紹介する。
正木氏
●「歩くことは半分仕事」
「縁木舎」で正木氏から「春をさがしに」のテーマについて説明を受けたあと、井の頭公園に向かった。正木氏が背負っている大きなリュックからホタルのように明滅する光が漏れていた。何だろうと思い聞いた。「迷子にならないように…というのは嘘で、いつも外を歩くのでぶつかられないように」ということだった。
「先生、そんなに出歩くんですか」「歩くことは半分仕事のようなもの。自分が植えた樹木などは一本一本、育ち方を確認している」「先生、記者の仕事も同じです。どれだけ歩くかです」
●「ミツバチグリを見て僕の世界観は変わった」
井の頭公園に入ってまもなく、若い女性参加者が「春の芽吹きを感じますね、先生」と語りかけ、「そうですね」と正木氏は応じた。嗅覚まで老化した記者は「ただの落ち葉の匂いじゃないですかね」と余計なことをしゃべってしまった。
もう一つ。すぐ側に玉川上水が流れる緑道で正木氏はドキリとする言葉を発した。
「大学2年生のとき(正木氏は現在63歳)、黄色い可憐な花をつけた〝ミツバフグリ〟に出逢って僕の世界観が変わった。植物が話しかけてくるようで、人間とつながっていることを悟った」
若い女性がたくさんいる中で、よくぞ堂々と恥ずかしげもなくそんな言葉を口にできるものだと驚いた記者は、先生より2倍も3倍も大きな声で「先生、ミツバフグリって何ですか」と聞いた。正木氏は「フグリじゃない。ミツバチグリ」「……」(家に帰ってミツバチグリを調べた。よく見る野草だった。見学者が二人の会話を聞いていなかったのを祈るのみだ)
それにしても、20歳にもなって野の草花に心を奪われる正木氏はなんて繊細な心の持主なのだろうとうらやましくなった。記者などは10歳の頃に春の芽吹きを感じた。正木氏は単に晩生だったのか。
ミツバチグリ
●「竹炭を土中に埋めるときは気持ちが浄化された」
芝生と枕木を敷いた駐車場の土中には大量の竹炭が埋められている。炭は土中で腐ることもなく保水性が高いために樹木の根が寄ってきて地盤をスプリング状態にするので、駐車場をコンクリで固めなくてもいいことを証明するためにそうしたという。オーナーの意向とも一致したそうだ。
「竹炭を改良材として土中に埋めるとき、職人さんの顔がどんどん晴れやかになっていった。わたしも気持ちが浄化されていくような体験をした」と正木氏は振り返った。
●「自然林⇒落葉樹⇒常緑樹へ変る自然の摂理」
「もともと自然林は人間の手が加えられないと鎮守の森のようになるが、その過程で成長の早い二次林、落葉樹が主体となる現象が起こる。里山では木を伐採し薪炭にしたり落ち葉を肥料として集めたりするので地力が衰え、やせた土地でも育つアカマツ林となる。江戸時代の浮世絵などは松ばかりが描かれているのはそのせい」
なるほど。石油が薪炭に取って代わってから50年。これから植生はどうなるのか。大量に発生している松枯れとは関係あるのか。
●ドングリは子育てをしない?
季節になるとドングリはたくさんの実を落とす。しかし、そのドングリの実は親のドングリの樹が元気なうちはほとんど発芽しないのだそうだ。親が伐採されたり倒れたりしたときにのみ発芽するという。親は子を育てない、子は親の死を待つ…これも自然界の摂理か、親子間の無駄な争いを避け共倒れにならないということかもしれない。
玉川上水の緑道