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「武蔵野富士見 ザ・レジデンス」完成予想図

 さてQuestion。「二重床・二重天井」「ディスポーザ」「食洗機」「バックカウンター・カップボード」「ミストサウナ」「平置き駐車場」-この6つの設備・機能をすべて満たしている首都圏マンションはいくつあるか? 

 Answer。数年前までさかのぼっても数えるほどしかないと記者は思うが、先日見学した日本土地建物「武蔵野富士見 ザ・レジデンス」がまさにそれだった。

 物件は、西武鉄道拝島線・国分寺線小川駅から徒歩9分、または西武多摩湖線八坂駅から徒歩8分、東京都東村山市富士見町一丁目に位置する15階建て全223戸。専有面積は65.78~86.78㎡、12月14日に抽選分譲した第1期3次(5戸)の価格は3,148万~4,698万円。坪単価は170万円台の半ば。設計・施工はファーストコーポレーション。竣工予定は平成29年2月。販売代理は長谷工アーベスト。管理は東急コミュニティー。

 現地は、富士見通りの街路樹など緑が豊富な近隣商業と第一種中高層地域の一角。建物は南向き中心の西向きとのL字型。

 「二重床・二重天井」「ディスポーザ」「食洗機」「バックカウンター・カップボード」「ミストサウナ」「平置き駐車場」が標準。

 地域住民や企業、団体などと連携して、「子育て」「食」「芸術」「ECO」「スポーツ」「健康」の6つの分野で地域共生を図り、入居後の多世代コミュニティを支援していくのが特徴だ。

 11月上旬から分譲が始まっており、これまて85戸を供給している。

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 このマンションについては、同社がプレス向け発表会を行っており、その記事も参照していただきたい。見学しようとずっと思っていたのだが、なかなか都合がつかず今になってしまった。

 見学して本当によかった。プレス向け発表会では、コンセプトの説明が中心だったので、物件そのものの詳細はよくわからなかった。モデルルームを見て、発表会で見えなかったものがよく見えた。

 冒頭にも書いた6つの設備仕様が標準装備になっているマンションは、この多摩エリアは言うまでもなく、首都圏でもほとんどないはずだ。ここに同社のマンション事業に対する姿勢・意欲が感じられる。大きな訴求ポイントになるはずだ。1カ月少しで85戸供給というのも売れ行き好調とみてよい。

 残念なのは、これほど設備仕様が充実しているのに、それをアピールできていないと思った。設備仕様レベルがすべてではないが、ユーザーにもっとわかりやすく説明しないとその良さは伝わらない。

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 同社は、これまでビルなどの都市開発や、「横浜白山」「横浜あずま野」「横浜戸塚台」「川崎百合ケ丘」など分譲戸建ての実績は豊富で、とくに戸建てはレベルの高いものをずっと継続して供給してきた。

 マンション事業は、大手デベロッパーとの共同事業が中心で、同社がメインというのは少ない。

 マンション市場は大手の寡占化が一段と進んでいる。その一角に後発が食い込むためには相当インパクトのある商品企画でないと難しい。その点で今回の物件は十分対抗できると思う。商品企画を前面に打ち出し、厳しい市場に挑戦してほしい。

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収納(機能的で、白が基調のデザインもいい)

日土地 マンション事業本格参入 年間500戸から1,000戸体制へ(2015/10/6)

 

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目黒区総合庁舎

 わが国の建築家村野藤吾(1891~1984)の代表作の一つ目黒区総合庁舎を見学する機会に恵まれた。1966年に竣工し、千代田生命保険の本社ビルとして使用開始され、総合庁舎としては改修が施されたのち2003年1月から「開かれた庁舎」として再生・利用されているものだ。

 詳細は同区のホームページでも公開されているが、建物の内外に村野や職人、美術家のこだわりが垣間見られる。とにかく写真を見ていただきたい。

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エントランスホール(ホールは中央を中心に非対称になっている。左側側は建物の外に柱があり、右側は水を張った床と柱があり、その外側に水盤・庭園がある。天井には明り取りがある。壁にポスターなどは一切張らず、時々コンサートなどが行われるそうだ)

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3階部分から中庭、茶室を望む(縦の格子はアルミ製)

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らせん階段(正確に丸くしているのではなく、フリーハンドで円を描いているのがわかる)

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茶室(もちろん一般の人も利用できる)

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会議室の床と巾木(カバ桜か、チェリー材か。遮音対策のために床と壁はゴムのようなもので遮断されている)

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喫茶室の壁(デザインは当時のままで、腰壁も無垢材が使われていた)

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本館と別館をつなぐ渡り廊下(以前は電車と同じような蛇腹が使用されていたという)

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庇足元の「石」(これも意味があるそうだ。広場にはヘンリー・ムーアの作品もあるそうだが、見逃したか)

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隣接する中目黒しぜんとなかよし公園から見た庁舎(この公園ももとは敷地の一部だった)

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公園内に設置されている「平和の石」。昭和61年、広島市から寄贈されたもので、被爆した旧広島市庁舎の階段の一部

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橋本和子さんのろうけつ染め「ちやほや」

 スウェーデンハウスと東京藝大は12月14日、同社の豊洲のモデルハウスで「東京藝術大学染織専攻作品-jul(ユール)」レセプションパーティを行った。

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 記者は終了後の18:00過ぎに駆けつけたので、主催者の東京藝大染織研究室教授・菅野健一氏やスウェーデン大使館 広報文化担当官アダム・ベイエ氏、スウェーデンハウス取締役営業本部長・鈴木雅徳氏のあいさつやアーティスト・トークがどのようなものだったかわからないが、大急ぎで作品を見て回った。

 作品は傑作ぞろいだ。展示は12月25日(金)まで行われるので、スウェーデンハウスの住宅を見るのもいいし、作品をもみるのもいい。豊洲のクリスマスの夜もいいかもしれない。

 記者の一押しは、修士1年生の橋本和子さんのろうけつ染めの子ども用の襦袢「ちやほや」と、修士1年生の阿部蕗子さんのシルクスクリーンのカーテン「ユールの夜に」だ。

 「ちやほや」の語源は「蝶よ花よ」だそうで、魔除けを施し、こどもの健やかな成長を願う気持ちを作品に込めたという。カラフルな染の技を見て、同じ東京藝大名誉教授の洋画家・絹谷幸二氏の一連の作品と重ね合わせた。

 阿部さんの作品は木綿ビロード(ベルベット)でできており、冬寒くて暗いスウェーデンハウスの自然と、家の中を温かく過ごす家庭の対比を柄に入れ込んだそうだ。「蕗子」は、記者の好きな作家・水上勉の娘さんの名前と一緒だ。いい名前だ。

 もう一つ挙げると、修士1年生の佐々夏実さんのシルクスクリーンのタペストリー「宵」だ。クリスマス(ユール)のでサンタの役割を担ったのは黒い服にヤギの顔を持つ「ユールボック」で、それをモチーフにしたという。これを見て、イギリス人作家トム・ロブ・スミスのスウェーデンを舞台にした最新作「偽りの楽園」(新潮文庫)を思い出した。家族の再生がテーマのミステリ小説で、保守的で暗い一面もあるスウェーデンハウスのコミュニティが描かれている。怖い妖精「トロール」も頻繁に登場する。

 同社の催しは、住宅もさることながらいつもスウェーデンの自然や歴史、文化を想像させてくれる。だからいい。

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阿部蕗子さんのシルクスクリーン「ユールの夜に」

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佐々夏実さんのシルクスクリーン「宵」

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菅野教授のタペストリー「ユールトムテゴートX.ユールトムテゴートY」

スウェーデンハウス 豊洲モデルハウスで藝大染織専攻学生の作品展(2015/12/1)

 

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「WESTWOOD(ウエストウッド)」予想図

 三井ホームは12月18日(金)から平屋建てのフリー設計商品「WESTWOOD(ウエストウッド)」を沖縄を除く全国で発売する。

 少子高齢化社会の進展により、わが国の約8割が3人以下の世帯で、コンパクトな住宅へのニーズが高まっており、フラットに暮らす平屋へのニーズも多くなっていることに対応するもの。

 住宅着工に占める平屋建ての比率は増加傾向にあり、平成21年度が25,659戸で6.5%だったのが、25年度は37,248戸で7.4%に伸びている。

 「WESTWOOD(ウエストウッド)」は、米国カリフォルニア州ロサンゼルスの街「WESTWOOD(ウエストウッド)」から命名したもの。アーリーアメリカンの外観と開放的で伸びやかなイメージが込められている。

 街のランドマークとなるさわやかでインパクトのあるファサード、平屋でありながらのびやかに広がる大空間、こもり感のある+αの快適な屋根裏空間を実現。高い断熱性能や独自の「ダブルシールドパネル(DSP)」、「健康空調」なども随所に盛り込み、ZEHにも対応しているのが特徴。

 同社常務執行役員 ・一色隆行氏は14日行われた発表会で、「世帯の少人数化、高齢化が進んでおり、平屋はマーケットメジャーになりつつある。当社は30年以上も前に大屋根の商品を発売しているが、今回、さらに付加価値の高い商品として快適で健康な住空間を提供できる。10月からプレセールを行っているが、すでに10棟を超える受注がある」と語った。

 宮城県仙台市若林区に設置したモデルハウスのプロトタイプは建築面積99.81㎡、1階床面積90.12㎡、2階床面積42.31㎡、合計床面積132.43㎡。首都圏参考価格(消費税抜き)は3,447万円(坪単価682千円)。販売目標棟数は年間240棟。

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大きな吹き抜け空間があるリビング

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 注文住宅市場のことはよくわからないが、一戸建ては平屋がもっとも住みやすく、ぜいたくな暮らしができるのは言うまでもないことだ。大都市では土地の制約がありなかなか建てられないが、70~80坪あれば十分建てられる。同社が平屋を重視するのはよく理解できる。

 平屋建ての分譲戸建てもなくはないが、事例は少ない。記者が見た限りでは、いかにも熟年向けの商品企画で、外観が貧相なものが多かった。

 

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「ザ・パークハウス 浦和タワー」完成予想図

 先日は木場駅圏の最高峰マンションである野村不動産「プラウドタワー木場公園」について書いた。今回は、浦和駅圏だけでなく埼玉県の最高峰マンションともいえる三菱地所レジデンス・大栄不動産「ザ・パークハウス 浦和タワー」を紹介する。「最高峰」とは野村不動産の物件同様、建物の高さではなく値段がもっとも高いという意味だ。

 物件は、JR浦和駅西口から徒歩4分(北口から徒歩3分)、さいたま市浦和区仲町1丁目に位置する20階建て全146戸(事業協力者住戸4戸含む)。敷地は大栄不動産のビルの跡地。専有面積は57.55~111.88㎡、坪単価は330万円台の半ば。竣工予定は平成29年3月下旬。設計・施工・監理はフジタ。デザイン監修は建築家の渡辺純氏。

 現地は、駅西口からは徒歩4分だが、利用時間が7:00~24:15で、ICカード専用の北口からだと徒歩3分の立地。商業地域の一角。建物はV字型の免震構造。住戸は東南向き・南向き、南西向き。

 11月に供給した第1期1次106戸と追加供給した第1期2次18戸の合計124戸に対して141件の登録が入った。

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 まず価格から。バブル前はともかく、バブル崩壊後の埼玉県のマンションでもっとも坪価格が高いのは、今年に入って浦和駅から徒歩5分で住友不動産が分譲した「シティハウス浦和高砂」(95戸)で約290万円だ。

 それを三菱地所レジデンスは軽々と超えた。埼玉県で平均坪単価が300万円を突破したのは少なくともバブル崩壊後では初めてだ。浦和駅の南口では再開発計画があるが相当先になるはずで、今回の物件が埼玉県の最高単価マンションとなる。この記録は当分破られないはずだ。

 売れ行きもいい。供給124戸に対して141件の登録があった。V字型の突端に位置する90㎡超の住戸を含む12戸は億ションで、これまた埼玉県の最多億住戸マンションになる。

 売れ行きがいいのは、それだけユーザーに評価されているということだ。商業エリアであるにも関わらず、嫌悪施設とは何かというもんだいもあるが、記者が見た限りではほとんどない。昔ながらの街並みも残っている。設備仕様も総じて高い。これも評価されたはずだ。

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 三菱地所レジデンスは浦和駅圏でもう1物件「ザ・パークハウス浦和東仲町」(51戸)を分譲しており、こちらも第1期30戸に対して38件の登録が入り即日完売した。こちらは駅東口から徒歩6分の14階建て。専有面積は65.28~84.06㎡。坪単価は270万円弱。

 先日、三井不動産の「ららぽーと立川立飛」のプレス内覧会が行なわれた日、「いなげや」の旗艦店「blooming bloomy by Inageya」で「紅化粧」という名の皮が赤い128円の大根を買ったことは書いた。かみさんは、それをいちょう切りにして酢漬けにしてくれた。これがおいしい。カブより歯ごたえがあって、なにより白と赤のコントラストが美しい。

 「紅化粧」はあきる野市の農家の産であることがラベルに記されていた。生鮮食品に産地や生産者の名前が表示されるのは常識になった。産地直送も消費者の間で定着した。

 消費者は生産者の〝顔〟が見えることに「安心・安全」が担保されているから多少値段が高くても買う。

 食の分野にとどまらずあらゆる企業にとって「CAT」、つまり「Compliance」(法令順守)「Accountability」(説明責任)「Traceability」(追跡可能性)がもっとも重要で、これと企業の理念「Vision」あるいは「Philosophy」を加えた「CATV」「CATP」がしっかりしていないと立ち行かなくなる。

 さて、杭打ちデータ流用問題。昨日も書いたように、問題が発覚してから2カ月で収束する見込みだ。記者も大事に至らなくて安堵している。国交省、対策委員会、業界団体、施主の迅速な対応は評価されるべきだろうし、この点では「CAT」はきちんと機能したと思う。

 しかし、消費者の信頼を回復する道のりは平坦ではない。深尾・対策委員長も語ったように、「安心・安全」に「信頼」を加えるのは正解だろう。

 杭打ちデータ流用は業界の多重下請け構造とは直接的に関係ないとはいえ、建築物の「安全・安心」は大きく揺らぎ、危うい橋を渡るような覚悟がいることを消費者に印象付けた。先の「CAT」と照らし合わせても、この業界は極めてずさんであることを露呈した。「雨に濡れた」「噴出した」「ボタンを押し忘れた」-このような理由で大事なデータを集められないという事態がそんな頻発するものなのか。

 農家は128円のダイコンにさえ1本1本自分の名前を書いたシールを貼る。建設業だって、設計図はミリ単位の精度が求められ、それをきちんと監理する制度があるにもかかわらず、形式が整っていればよしとする風潮があるというのはどういうことか。全く理解できない。「監理」がその程度のものならその程度のものであることを世間に公開するか、そうでないのなら厳格に運用すべきだし、監理者になれる要件や罰則を強化すべきだ。

 考えてみれば、マンションの広告・宣伝は、建設に関わる施工・監理・設備機器にかんする情報は実にそっけない。われわれはデベロッパー、施工会社、監理会社、使用されている機器のメーカーの名を聞けばその物件のレベルがある程度分かる。しかし、一般の消費者は物件概要やパンフレットに盛り込まれているこれらの情報を読んでその品質レベルまで理解することはできないだろう。

 物件概要に監理会社を表示しなくても、広告表示に関する業界の自主規制違反にはならないのだが、記者はもっともこの「監理」が重要だと考えている。オーケストラで言えば指揮者、コンダクターだ。指揮者が音楽に命を吹き込むように、マンション監理者もまた消費者の「信頼」を得る生命線だ。

 記者は今回の問題が起きたのは、この「監理機能」が働いていないことが根本原因ではないかと思っている。

杭打ちデータ流用問題 結局は大山鳴動…早々に幕引きへ 国交省・対策委(2015/12/12)

 

 既報の通り国土交通省は12月8日、「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」(第4回)を開催し、会合後、深尾精一・委員長(首都大学東京名誉教授)と小澤一雅・副委員長(東京大学大学院教授)が記者会見を行なった。

 会見は、国交省記者クラブに所属する報道陣向けだったが、そろそろ何らかの方向性が出るだろうと、事前に記者クラブの幹事新聞社の了解を得て会見を取材した。了解していただいた幹事新聞社に感謝したい。

 記者も質問したかったのだが、そこは遠慮することにし、席も最後方に座った。以下、委員長・副委員長と記者団の一問一答の要旨(質問内容は質問が要領を得ないのか、記者の耳が悪いのかよく聞き取れなかった)。

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 -多重下請け構造が問題の背景にあるのでは

 深尾委員長 専門でないわたしが意見をいうのは適切ではないかもしれないが、この問題は大きな根源的な問題。長期的にどうあるべきかしっかり腰をすえて(杭打ち問題と)分けて取り扱うべきではないか。

 専門的な立場から言えば、杭打ちは元請でないところがしっかりと行うのは技術が進歩していくうえで必然、自然なこと。

 小澤委員 杭の品質を管理することについては、(元請と下請けが)どういう役割分担をしているのか、契約がどうなっているのか、最終的に誰が責任を取るのか、その体制が曖昧になりがちになっており、契約がどうなっているかを分析して再発防止、対策を考えていきたい。

 もう一つの問題は、建設業法、派遣法などで、そこに配置されている人がどういう立場で関わっているのかチェックする必要があるという意見があった。これについては法律的判断になるので、専門的な立場の方の判断を待って、どう対応するのかもう少し検討しなければならない。

 -問題を起こした人は出向社員だったが

 深尾委員長 出向だか派遣だか、いろいろな言葉が飛び交っているが、実態がどうだったのか、しっかり検証したい。

 -杭打ちの実態について

 深尾委員長 杭に関してはやはり慣れというか、管理されていない風潮があったと思う。データ確認が形式的になっていた。データはチェックするために出すものなのか、仕組みがあるから出すのか、データ確認を軽視する風潮があった。

 -ヒューマンエラーについて

 深尾委員長 機械も故障することがあるし、人もミスをすることがある。そうした場合、どういう措置をとるのかルール化されていない。これが一番問題。われわれ委員会もそう認識しているし、日建連さんも同様に考えていらっしゃる。データ管理の仕組みが不完全だった。ルール化がされていない。これは改善が簡単にできることかも知れないし、ぜひともやるべき。

 -地盤調査などについて

 深尾委員長 掘ってみないと分からない部分があるし、追加の工事が必要になる。それをきちんと対応すべきなのに、(責任が)不明確なまま元請がかぶらざるを得ないというのであれば適切な工事が進められないだろう。そういうところも見直すべき。

 -横浜のマンションの元請責任は

 深尾委員長 これは委員会が(責任の所在を明らかにする)責任を負っているわけではない。横浜から追加報告が出ていないのは、個人的には残念に思っている。横浜の契約関係がどうなっていたのか再発防止策に重要なので、報告を待って再発防止策を検討したい。

 -横浜のマンション問題について

 深尾委員長 われわれも(報告がでないので)困るところ。どういう状況で、どこに問題があるか。状況証拠的にはかなり複合的になっていると思うが、これを明らかにするのはわれわれの責任ではない。(報告が)出てきたら前に進みたい。(中間とのまとめは)年内にという要望ですので、分かった範囲内で取りまとめる。

 -再発防止について

 深尾委員長 現段階で公表できないが、日建連さんはかなりいろいろ検討されているという感触を得ている。具体的にどうするかは、業界全体でやるべきこと。われわれが言うより、工事を担う業界がやるほうが実効性があるし、十分に応えていただいていると思う。

 小澤委員 事前にマニュアルを作成して人の配置とかチェックするシステムをつくっているところもある。これがヒントになるはず。日建連の指針もあわせいい方向性が出るのではないか。

 -中間取りまとめについて

 深尾委員長 中間取りまとめは、国民の不安を解消するということ、それと信頼を回復することが重要な目的。その部分に関しては、ある程度とりまとめができる。

 繰り返しになるが、かなり業界団体も全体の改善策、再発防止策を検討していただいているので、今までと比べはるかに信頼が置ける工事が行われることにもなる。

 もちろん、横浜の問題をどう解決するか、(事故が)起きないようにどうするかは少し別の次元かもしれないが、類型が起きない再発防止策は十分立てられると考えている。

 今までの検討結果で、データ流用が直接施工不良に結びつくものでないことが判明して、われわれも嬉しいというかほっとしている結果となった。しかし、そういうことが分かったということは、逆にデータ確認を明らかに軽視している実態が明らかになったと委員全員がそう思っている。

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 一問一答を読んでいただければ方向性は明確だ。「データ流用が判明した物件のほとんどが施工不良には結び付いていないので、データ流用と(横浜のマンションの)施工不良との関係性は低い」(深尾委員長)ことから、杭打ち工事の指針(国交省から告示として発表されそうだ)ははっきりした形で示されるはずだ。

 深尾委員長や小澤委員のコメント「ルール化は簡単にできることかも知れない」「日建連の指針もあわせいい方向性が出る」「今までと比べはるかに信頼が置ける工事が行われる」「類型が起きない再発防止策は十分立てられる」から判断すれば、言葉は悪いが「大山鳴動…」だ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け繁忙期を迎える建設業界にとって、早々に幕引きし、問題の長期化を避けようという意向が働いたのだろう。

 問題は、横浜のマンションを施工・監理した三井住友建設が「施工・監理に瑕疵はない」と会見で語ったことが事実そうであるならば、だれが責任を取るかだ。マスコミ報道では、この監理(「さらかん」という法的行為)と管理(「たけかん」と呼ぶ仕事の流れを管理する法的には罰則がない仕事)の区別がほとんどされていないのが極めて残念。

 深尾委員長も話したが、罰則事項がないからデータ改ざんを行なった旭化成建材の技術者(どのような立場の人かは不明だが)に違法性を問うことはできない。被害者(横浜の例では入居者、三井不動産レジデンシャル、あるいは三井住友建設も入るのか)は誰にどのような理由で責任を追及すればいいのか。旭化成建材に損害賠償など責任を問えるならば、他の杭打ち業者もそうなる。

 記者は杭打ち業者に責任を追及することはできないとしても、やはり施工・監理責任は問われるべきだろうと考える。

 データ流用・施工不良に対する責任が施主や施工・監理会社に及ばず、その下請けのみに「責任転嫁」される仕組みを温存するならば、やはり多重下請け構造が不正を生む温床になるのではないか。対策委員会が魑魅魍魎のこの業界の宿痾にどのような処方箋を用意するか注目したい。

杭打ちデータ流用 再発防止にメド 多重下請け構造は継続課題 深尾・対策委員長が会見(2015/12/8)

 

 三菱地所、三菱地所ホーム、三菱地所住宅加工センターは12月11日、藤原造林(代表企業)、林友、林ベニヤ産業と共同で、山梨県が新設した県有林に関する企画提案コンペ「やまなし提案型システム販売(一般製品部門)」に当選したと発表した。

 同制度は、国際的な森林認証であるFSC認証を国内の公有林で初めて取得した山梨県有林木材を認証材需要者に直接、安定的に供給することにより、加工・流通の合理化を促進するとともに、認証材の有利性を生かした販売 網を構築し、需要拡大を図ることを目的に同県が本年度に新設したもの。

 今回、同社グループが当選したことで、FSC 認証材の安定的な調達ルートが確立され、川上から川下までを繋ぐ流通体制の構築により、環境や地域社会に配慮し経済的 にも持続可能な責任ある木材の利用をこれまで以上に推進することができるとしている。

 三菱地所ホームは2011 年8月から木造ツーバイフォー工法による住宅建築においてFSC認証材の採用を進め、主要構造材におけるFSC認証材比率は、住宅メーカーとしてトップレベルの約20%になっている。

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「ららぽーと海老名 キッズプレイエリア『ウッド キューブ』」

  林野庁が後援し、ウッドデザイン賞事務局(活木活木森ネットワーク・国土緑化推進機構・ユニバーサルデザイン総合研究所)が主催する今年度に新設された 「ウッドデザイン賞2015(新・木づかい顕彰)」で、住宅。不動産業から三井不動産他「ららぽーと海老名 キッズプレイエリア『ウッド キューブ』」、ナイス「住まいの耐震博覧会」、LIXIL「連続開口設計サポート」、積水ハウス「積水ハウス シャーウッド~純国産プレミアムモデル~」が林野庁長官賞(優秀賞)を受賞した。また、ポラス「POLUS学生・建築デザイン コンペティション」、住友林業「木の内装と間接照明を組み合わせた寝室環境による睡眠の質改善効果と疲労軽減効果」が審査委員長賞(奨励賞)を受賞した。

 農林水産大臣賞は、西粟倉・森の学校(岡山県西粟倉村)の「『みんなの材木屋』発 森と暮らしを創る六次産業化モデル」が受賞した。

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 「グッドデザイン賞」の向こうを張るわけではないだろうが、「ウッドデザイン賞」とはなかなかいい名称を付けたものだ。

 「ウッドデザイン賞」は、「木」に関するあらゆるモノ・コトを対象に、暮らしを豊かにする、人を健やかにする、社会を豊かにするという3つの視点から、デザイン性が優れた製品・取組等を表彰する今年度初めて創設されたアワード。

 初年度となる今年は、建築家の隈研吾氏、プロダクトデザイナーの益田文和氏、アーティストの日比野克彦氏、慶應義塾大学大学院教授の伊香賀俊治氏ら各分野の第一線で活躍されている方々が審査委員を務めた。

 初年度は応募があった882点から二次審査を通過して「ウッドデザイン賞」を受賞したのは397点。今回、農林水産大臣賞(1点)・林野庁長官賞(9点)・審査委員長賞(30点)として40作品が発表された。

 「グッドデザイン賞」の今年の応募3658件にははるかに及ばないが、質では互角だと胸を張れるアワードになってほしい。

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「第3 回ACEフォーラム・表彰式」(イイノホールで)

 一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム(略称:ACE = Accessibility Consortium of Enterprises、代表理事:橋本孝之・日本アイ・ビー・エム副会長)は12月8日、「第3 回ACEフォーラム・表彰式」を行った。

 清水建設代表取締役社長・宮本洋一氏、日本アイ・ビー・エムフェロー・浅川智恵子氏、慶應義塾大学教授・中島隆信氏がそれぞれインクルーシブな社会づくりに向けた企業の取り組みや経済学的に見た障がい者雇用について講演。会員企業に在籍する障がいのある社員の中からロールモデルとなるべき人材が表彰された。

 会員企業である積水ハウスからは総合住宅研究所・上野政一氏が準グランプリを受賞した。

 ACEは、「障がいというダイバーシティを活かした新たな価値の創造と企業風土の変革、そしてインクルーシブな社会の実現を目指し、企業の成長に資する新たな障がい者雇用モデルの確立と、企業の求める人材の社会に対する発信を目的」とする法人で、設立は2013年8月。会員企業は26社。

 冒頭のあいさつで橋本氏は「われわれの活動はコンプライアンスやCSRといった従来の枠を超えた活動。みんな手弁当で論議し、社会のあり方、雇用のあり方の知見を広め、情報を発信し、日本を変える原動力になろう」と語った。

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準グランプリを受賞した積水ハウス・上野氏(左は橋本氏)

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 積水ハウスからの誘いで、存在すら知らなかったACEの取材をする機会を得た。

 宮本氏は自らの経験として、視覚障がい者の音に対する豊かな感性に触れ「目からうろこ」と話したが、浅川氏や中島氏の講演を聞いて、まさに「目からうろこ」だった。と同時に、障がい者に対して少しは理解があると思っていたが、余りにもの無知に恥じるばかりだった。

 ぐさりと胸を衝かれたのは中島氏が語った「差別とは何か」だった。中島氏は偏見による「ベッカー型」の差別や統計的な差別(問題行動を起こす確率が高い)のほかに、間接的差別があると指摘した。例えばわれわれが当たり前と考えている長時間労働は、子育てファミリーや障がい者を間接的に差別しているというのだ。

 また、改正された障害者雇用促進法は、福祉を「利用」する企業が出てくることや、施設化する恐れがある特例子会社の問題、効率的経営との矛盾などからいずれ大きな壁になり、立ち行かなくなる可能性を指摘。障がい者を配慮するコストが全然考慮されていないと批判した。

 さらに中島氏は、「すべての人が何らかの障がいがある。障がいは社会を映す鏡である。国民一人ひとりが自らが負担すべき配慮の経済的コストを自覚するべき」と話した。

 宮本氏と浅川氏は、双方が連携して点字ブロックのデメリットを解消する音声ナビケーションの開発・実用化に取り組んでいることを報告した。

 たしかに点字ブロックはなくてはならないものだろうが、健常者にとっては転ぶ障がいになりかねないし、点字ブロックそのものもつながって意味があるのにそうなっていない。試しに目をつぶって新宿駅周辺を歩いてみたが、10mも歩けなかった。最新の情報通信技術による音声ブロックの開発は劇的にわれわれの生活を変えるかもしれない。

 それにしても、ACEは障がい者の立場から自らの企業をしばるかもしれない障がい者雇用の問題を考えようとしている。大企業は経済合理性だけを考えるものだと思っていたが、考えを改める必要があると痛感した。

 ACEの会員は、住宅・不動産業界からは積水ハウスのみで、関連では清水建設、LIXILが、その他ではアサヒビール、KDDI、セコム、TOTO、日産自動車、富士ゼロックス、堀場製作所、明治安田生命保険、ヤマトホールディングス、リクルートホールディングスなどが名を連ねている。

 積水ハウスのサステナビリティレポート、ダイバーシティページは次の通り。

https://www.sekisuihouse.co.jp/sustainable/diversity/index.html
https://www.sekisuihouse.co.jp/sustainable/diversity/disabled/1/index.html
 

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