「ポプラ文庫」がすごい 「マンションいい話コンテスト 2017」マンション管理協
マンション管理業協会は12月1日、第3回「マンションいい話コンテ スト 2017(一般編)」の受賞作品を発表した。全国から応募があった426通の中からグランプリ(賞金30万円)は横山千尋さんの「マンション文庫『ポプラ文庫』ただいま8年目」が受賞した。
このほか準グランプリ1点(同5万円)、特別賞3点(同3万円)、佳作9点(クオカード3千円分)が選ばれた。
グランプリ作品は、「ごく限られたコミュニティでの活動であったものが、『読書』や『本』を媒介に、口コミを通じてマンション居住者ばかりではなく、近隣住民の方々も交えた地域コミュニティ形成の場へと発展し、マンション内外に広く認知された好事例」というのが審査員の講評。
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グランプリ賞に輝いた作品のストーリーがすごい。前回は10人くらいしか集まらなかった子ども向けの童話読み聞かせ「ポプラ文庫」に、東日本大震災の6日後に100人超が集まるというシーンがある。フィクションでもあり得ない話だが、事実は小説より奇なり。いかにわれわれは危うい社会に生きているかを思い知らされる。
会社員は仕事があり気がまぎれるが、家庭の主婦は話し相手がいないマンションという箱の中に閉じ込められ、現実とは思えない悲惨な被災地の状況をテレビでのべつ幕なし垂れ流されればパニック状態に陥るのだろうか。
学校もまた社会と隔絶された世界だ。しかも教師の女性比率は6~7割に達する。恐慌状態を来すことがありうるのかもしれない。
作家の金原ひとみさんは2015年に発表した「持たざる者」(すばる)で、3.11によって人生が狂った4人の主人公の孤独と喪失を描いた。ご本人も放射能汚染を恐れ東京から父親の実家である岡山に移住して次女を出産した。
「ポプラ文庫」は恐ろしい世界を活写したのかもしれない。
震災後〝絆〟が流行語になったが、今の世の中は社会も企業も家庭も絆を断ち切る方向に突き進んでいないか。そうした動きに抵抗する「ポプラ文庫」の活躍に期待したい。
過去2回の「マンションいい話コンテスト」は報道陣を集めて盛大に授賞式が行われたが、今回はないのだろうか(管理会社編の受賞はイベントが行われると聞いているが)。
気になったことが一つ。第1回の応募作品は1,015通、第2回目は806通だった。今回は426通だからほぼ半減した。賞金が過去2回は50万円だったのが今回は30万円に減額されたのが響いたのか。
耐力壁ジャパンカップ 最後の第20回大会で最強壁をつくったポラス・大浦和香子氏
大浦氏
阪神大震災後の平成10年、木造住宅の構造耐力向上、伝統工法の継承を目的としてスタートした「木造耐力壁ジャパンカップ」が今年の第20回大会をもって終了した。この最後の大会でもっとも強度の高い耐力壁としてトーナメント優勝した壁「SHINMEI」を作ったのはポラス暮し科学研究所の生産プロデュースグループ主任・大浦和香子氏だ。
「昔からやってみたい壁の構想はあったのですが、ルールが変更になり、450ミリ×450ミリ以上の開口部を設置しなければならなくなり、大慌てで設計し、修正を加え3カ月で完成させました」
壁は、伊勢神宮に代表される神明造の破風が伸びて千木となる形をイメージして作ったそうだ。材料は、土台がベイマツ集成材、柱・桁・貫がヒノキ、楔がカシ。
「強いか弱いか、予測はしましたが、戦ってみないとわからない部分も多くて…勝因は斜材を土台・梁の部分まで通したのが効果的だったと思っています。またチームの皆が図面通りに精度よく加工・施工してくれて、耐震性で高得点したのがとてもうれしい」と振り返った。
決勝戦で戦ったのは、矢はず張りのデザインが美しい、昨年度決勝戦で敗れた〝宿敵〟の「メケメケ」だった。参加者の多くは昨年度覇者の「メケメケ」の勝利を予想していたようで、それを覆しての勝利だったのがポラス関係者を喜ばせた。
それでも大浦氏は「デザインで点数が伸びなかった。総合優勝できなかったのはそのせいかもしれない」と悔しさをにじませた。
上司で同研究所生産プロデュースG主席研究員・上廣太氏は「この壁は、“固い”? それとも“堅い”? そうではなく〝手堅い〟」と大浦氏の作品を評した。
大浦氏は2003年、木質構造研究室院を経て同社入社。以来、同研究所勤務。耐力壁ジャパンカップにはずっとスタッフの一員として参加してきた。昨年、トーナメントで優勝を逸し、今回、設計を担当することになった。
大会はトーナメント戦を勝ち抜いたもっとも強度の高い耐力壁に贈られるトーナメント優勝と、強さ(耐震評点)に加えて環境負荷費、デザイン評点、材料費、加工費、施工費など総合的に優れた耐力壁に贈られる総合優勝(ジャパンカップ)の2つのタイトルがある。毎年、大学、専門学校、住宅関連企業、設計事務所などが参加している。今年は静岡県富士宮市の日本建築専門学校で開催され、13体の耐力壁が出場した。同社チームは今回を含め8度トーナメント優勝している。
上廣氏(左)と大浦氏
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インタビューは、大浦氏のほか、上廣氏、同社広報担当者を交え約1時間、侃々諤々の論議を行った。
冒頭のインタビュー記事はそのごく一部だ。同社チームは職業訓練校も含めて第4回大会から出場しており、今回で8度目のトーナメント優勝であり、〝女性〟の大浦氏が設計を主導した初めての耐力壁であることに〝価値〟があるのは確かだ。
戦った相手は東京都市大学、東京大学、東京工業大学、東京理科大学、滋賀職業能力開発短大など上司も苦汁を飲まされてきた男性のその道のプロばかり。若い女性の大浦氏がそれらを打ち負かしたのだから、マスコミ受けするトピックスでもある。
しかし、どうして20年も継続して行ってきた大会が終了となるのか、この間の成果、課題は何だったのか、今後はどうなるのか最大の取材テーマだった。男性vs女性などの視点から取材する意図は全くなかった。
取材の成果は十分あった。例えばデザインとは何か。これは永遠のテーマだ。小生は、「美しいものこそが機能的だ。機能的なもののみが美しい」と語った丹下健三を支持するのだが、その伝でいえば、今回優勝した「SHINMEI」がもっともデザイン的に優れているということになるのだが、そうならなかった。もっともデザイン的に優れていると評価された壁は「紬~final~」の81点で、「SHINMEI」は68点だった。
記者個人は、見た目が一番美しいと思う「rhombus」は0点(予選敗退したため)だし、黒い鋼板を採用したポラスハウジング「わでぃん」は他を圧していると思ったが60点(これも決勝トーナメント初戦で敗退したから低得点は納得)だった。
この点について上廣氏は「どうしても主観が入る」と語り、大浦氏も「デザインは狙っていませんでしたが、大差をつけられた。これが敗因かも」と振り返った。
機能的=美しいと評価されなかった。耐力壁ジャパンカップもこの永遠のテーマに正解を出すことができなかったということだ。(記者は〝馬子にも衣裳〟を信じない。大事なのは美醜を分ける眼力だ)
このほか、レギュレーションが毎年のように変わる問題、ケヤキ、クス、クリ、サクラ、カシ、コクタンなどの高級材が利用できない理由、CLTは輸送に問題があること(現場施工ができない)、金物は悪か(記者はハイブリッドがいちばんいいと思うが)、安全性は担保されているか、解体を採点項目に加える是非、大会会場の利便性などについてもたくさん聞いたが、今回はこのあたりにとどめる。
大会事務局は20年間を振り返って記念誌を発行する予定のようで、しっかり検証していただきたい。来年から装いを新たにスタートする大会は、「安全性が確保され、だれでも参加できるシンプルな規定にして、便利なところでやっていただきたい」と上廣氏の言葉と同じだ。
アキュラホーム 第20回木造耐力壁ジャパンカップで総合優勝 大会はいったん幕(2017/9/25)
オーナーの思い×ポラスのこだわり 駅近と同額でもほぼ満室稼働 戸田の賃貸住宅
「CHOCOLAT(ショコラ)」
オーナー・峯岸氏
ポラスグループの賃貸住宅を手掛けるポラスグランテックは11月30日、埼玉県戸田市に完成させた南欧風デザインで街並みを形成した賃貸住宅「CHOCOLAT(ショコラ)」の報道陣向け見学会を行った。北戸田駅から徒歩16分の立地で、個性的な〝魂を込めた〟企画がヒットし、家賃は駅徒歩5分圏とほぼ同じ額ながら全4棟21室のうち入居を前に19室が契約済みだ。
物件は、JR埼京線北戸田駅から徒歩16分、埼玉県戸田市笹目1丁目に位置する敷地面積1,629㎡(511坪)の全4棟。A棟は1LDK8世帯、延べ床457.89㎡、B棟は2LDKメゾネット2世帯・1R4世帯、 延べ床323.62㎡、C棟は2LDK2世帯、2LDKメゾネット1世帯、延べ床253.60㎡。D棟は2LDK4世帯、延べ床258.36㎡。投資額は約3億円。
中庭を囲むように建物を配置。それぞれ城門(A棟)、ステンドグラス(B棟)、赤、木製ドア(C棟)、個性的な窓枠(D棟)などを設けているのが特徴。
一般的な設計なら25~30世帯が建てられるが、差別化を図るためあえて21世帯に抑制。短期的な利回りよりも入居者が「長く住みたい」「家族が増えたら敷地内の広い間取りの部屋に移りたい」と考えてもらえるよう長期安定経営に主眼を置いている。
中庭には石畳調のスタンプコンクリートを採用、街路灯も設置、夜はライティングで表情を変える演出を行う。駐車場は敷地外に確保して景観を守っている。
同社部長・篠田則夫氏は「戸田市は人気が高いが、ライバルも多いので差別化を図る意味で他社と一線を画し、サブリース・利回り優先ではない、街並み形成、コミュニティ醸成などに力を注ぐなど魂を込めた。〝一生賃貸〟という最近の若者のニーズも吸収した。地主向け内覧会には2日間で50名が参加したように評価を得た」と話した。
オーナーの峯岸昭幸氏(55)は、「映画の舞台にもなった『世界一美しい村』ともいわれる仏フラヴィニー村に感銘を受け、その世界観に最も近かったポラスの分譲住宅の街並みを取り込めないかと同社を選定した。9割以上思っていたことが実現できた」とコメントした。峯岸氏は2年前にIT企業を退職してストレージ・ソリューション社を設立。現在、賃貸住宅27棟(計画中含む)118室(同)を所有・管理している。
関係者などによると、入居者募集は7月末から開始し、これまでに19室が契約済み。坪単価は駅5分圏内の相場とほぼ同じくらいの約6.1~7.5千円。実質利回りは8%確保できているという。
夜景
中庭
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賃貸住宅のことはよくわからないのだが、なぜ駅から16分もあるのに、駅近の相場と同じ賃料でほぼ満室稼働できるのか信じられない。オーナーの熱い思いと、ポラスグループの地主にこびない企業姿勢がぴったり合致したのが成功した要因のすべてだろう。以下、感じたままを記す。記者の心の動きが分かっていただけるはずだ。
ゲート
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戸田駅に着いたとき、昼過ぎなのに空は暗く冷たい雨が降っていた。嫌な予感がした。同社が手配したタクシーに乗ったのはいいが、現地まで10分近くかかるではないか。いくら経済設計の利回り優先の賃貸でも、これでは歩けない(あとで聞いたが、北戸田駅から徒歩16分)。最初は入居者が決まるかもしれないが、空いたが最後。ずっと空き家になるのは必至だ。誰が入居するのか。安かろう悪かろうの賃貸など見たくない。気安く見学の誘いを受けなければよかったと悔いた。
現地の建物を見たときは、嫌な予感はいくらか薄れた。間口が23m以上あるシンメトリーの建物はなかなか見栄えのするものだった(これがA棟)。中央にゲート(城門)が設えてあった。外観の素材はともかく邸宅ともいえるデザインが美しかった。
そのゲートを潜ったとたん、景色が変わった。広いパティオ(中庭)が広がっていた。一世を風靡したセボン(大伸フード)を思い出した。南欧風のRC造の分譲タウンハウスに購入希望者が列をなしたあの光景がよみがえった。
それでも期待が膨らむことはなかった。〝利回り優先とは一線を画した〟〝街並みを造った〟〝コミュニティを育む〟〝魂を込めた〟〝これしかないと即決した入居者もいた〟〝通る人がみんな眺める〟〝ポラスの街並みが気に入った〟-など関係者、オーナーが熱っぽく語っても半信半疑で聞いていた。地主の道楽で建てたのではないかと。
配布された資料の図面を見て、疑念がまた湧いてきた。プランはよくできているとは思ったが、図面ではB~D棟は接道しているようには見えなかった。つまり〝違法建築〟ではないかと。
しかし、その疑念は設計監理を担当した同社係長・岸野真奈美氏の説明で氷解した。敷地は3方に接道しており、幅2mの避難通路も確保されていた。これには驚いた。普通ならレンタブル比率を高めるため分棟などしないで戸数を増やすはずだ。
それ以降は驚きの連続だった。一番びっくりしたのは本物の木製玄関ドアが採用されていたことだ(他は普通のスチールドア)。法令にも対応しているとのことだった。
手すりなどにはオーダーの鋳物が使用され、立派なステンドグラスも2カ所に設置されていた。壁の張替のコストを考え、クロスは上部と下部を分けるボーダーを設けている-なるほど、これがメリハリか。愚鈍な記者にも知恵の輪が解けた。〝魂を込める〟ことがどれほど大事かまた学んだ。
居室
〝丸の内愛してる〟 過去最多870名が参加 第9回「東京エキマチ キラピカ作戦」
第9回「東京エキマチ キラピカ作戦」
東京ステーション運営協議会、NPO大丸有エリアマネジメント協会、八重洲・日本橋・京橋地域の3者は11月30日、東京駅周辺を掃除する第9回「東京エキマチ キラピカ作戦」を実施した。約70万㎡のエリアの就業者や在住者など71の企業・団体が集まり、ゴミや落ち葉などの清掃を行った。参加者は過去最多の約870名に上った。
「キラピカ作戦」は、きれいで快適な駅でお客さまを迎えようという趣旨で2002年に始められた自主的な清掃活動。毎年、夏休み前と年末の年2回、行われている。
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午前8時15分、東京駅丸の内側の駅前広場に全員が集合。関係者からの挨拶、注意事項などを確認し、東京駅、大丸有、八重洲・日本橋・京橋地域の3つのエリア・班に分かれて8時30分から作業開始。9時30分まで約1時間、清掃活動を行った。
参加者の一人、日本郵便に勤務する30歳代の女性は「参加は今回で2度目。強制ではありません。作業は苦になりません。丸の内を愛していますから」と、数人の仲間と舗道のイチョウの葉っぱを拾っていた。
また、東京駅八重洲口でゴミを拾っていた大丸に勤める30~40歳代の男性は「東京駅を誇りに思っている」「吸い殻は2本のみ。めっちゃきれいな街」と、感嘆の声を上げた。
清掃のプロ、JR東日本テクノハートの社員は「通勤時間と重なったので、安全面に配慮して作業しました。まったく問題なかった」と話した。
左から〝丸の内愛してる〟日本郵便の社員と〝東京駅が誇り〟の大丸の社員
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〝丸の内を愛している〟-このコメントだけで取材した意味があった。大丸有エリアは掃除の必要など全くないほどきれいだった。日常的に清掃・管理が行き届いているからだろうし、在勤者のマナーもいいからだろう。100尺ラインの建物も美しい。マンションが建ったら坪3,000万円どころか5,000万円の評価も当然だ。
時間の都合で八重洲エリアは見て回れなかった。雑居ビルも多く、汚い看板が目立つので大丸有というわけにはいかないだろうが、これから再開発が本格化する。大丸有とままた違った美しい街並みが形成されるのに期待したい。
〝目標は1,000人です。皆さん頑張りましょう〟
三菱地所、アーバネット、ポラス 各社社長が出席 メセナアワード2017贈呈式
各受賞代表者(左から大谷、中内、清野、吉田、上原、服部、吉江の各氏)青山・スパイラルホールで
公益社団法人企業メセナ協議会は11月28日、芸術・文化の振興に貢献した企業・企業財団・団体などを顕彰する「メセナアワード2017」の贈呈式を行った。
メセナ大賞を受賞した三菱地所「三菱地所のShall We コンサート(出張コンサート)」は同社・吉田淳一社長が、「アートの玄関賞」を受賞したアーバネットコーポレーション「アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション」は同社・服部信治社長が、「街が踊る賞」を受賞したポラス「南越谷阿波踊り」は同社・中内晃次郎代表がそれぞれ出席。受賞の喜びを語った。
このほか、「しまんちゅ心と技賞」の沖縄タイムス社「沖縄タイムス伝統芸能選考会・選抜芸能祭」は同社・上原徹専務が、「地域光らせ賞」のジェイティービー「JTB 交流文化賞」は同社・大谷恭久常務が、「プラッと音楽賞」の東日本鉄道文化財団「駅コンサートの開催」は同財団・清野智理事長が、文化庁長官賞の富士ゼロックス「文化伝承活動」は同社・吉江則子CSR部部長がそれぞれ出席した。
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受賞については、添付した記事を読んでいただきたい。デベロッパー、ハウスメーカー3社が一度に受賞するのは初めてのことで、こんな嬉しいことはない。
CSR担当役員を務めていた三菱地所の吉田社長は、「街づくりを通じて社会に貢献するのが当社グループの使命。文化・芸術は国力を増す源泉。これからもグループ一丸となって文化・芸術を取り込み深めダイナミックに展開していく」と決意を語った。
服部社長は、彫刻家を目指し大学を入学する学生のうち卒業して正業につけるのは100人に1人いるかどうかの厳しい現実に心を痛め、何とかしようと企画を考えたことを紹介。リーマンショックのときは賞金を半額にし、審査員にも手弁当で応援してもらったことに感謝の言葉を述べた。
「南越谷阿波踊り」は今年で33回目。中内代表は「今後もより一層地域社会に貢献する」と宣言した。創業社長で阿波踊りの提唱者・故中内俊三氏から「会社が潰れても阿波踊りだけは残せ」と言われたことを語る場面では言葉を詰まらせた。
三菱地所 吉田氏
アーバネット 服部氏
ポラス 中内氏
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ホールの端っこで取材していたとき、逆の端っこの通路を歩く和服姿の女性に目を奪われた。近眼・老眼・乱視の記者はよく見えないのだが、その得も言われぬ美しい帯が〝わたしを見逃さないで〟と呼び掛けてきた。
大変失礼だとは思ったが、贈呈式が終わってから、その女性に声を掛けた。もらった名刺には「大日本印刷ICC本部ミュージアムラボ推進室室長 飯田直子」とあるではないか。〝まさか印刷ではないでしょうね〟と出掛かった言葉を飲み込み、「西陣織ですよね」と訊ねたらその通りだった。叔母さんからもらった帯で、値段は本人もわからないそうだ。
写真を撮り記事にさせていただくよう拝み倒し、了解を得たので紹介する。飯田氏はメセナ協議会の顕彰部会部会長を務めている。大変失礼しました。住宅・不動産業界のメセナ活動をよろしくお願いいたします。
飯田氏
「街が踊る賞」を受賞した南越谷阿波踊りを披露する同社の連(レセプションで)
セルビア固有品種のブドウから作られたワイン 日本に輸入決定 「ジヴェリ(乾杯)」
ネナド・グリシッチ大使(右)と逢沢一郎氏(セルビア大使館で)
バルカン半島の中心、ヨーロッパとアジアを結ぶ交通の要衝地に位置するセルビアの固有品種のブドウ「Prokupac(プロクパッツ)」から作られたワインの試飲会が11月20日(月)、品川区のセルビア大使館で行われた。ワインは日本に輸入されることが決まっており、試飲会に出席したネナド・グリシッチ大使は「ワイン輸入のために多くの歳月がかかったが、ようやく実現に至り、とてもうれしい。日本の皆さんにぜひ飲んでいただきたい」と挨拶した。
試飲会には日本・セルビア友好議員連盟会長を務める国会議員の逢沢一郎氏も応援に駆け付け、参加者は供されたセルビアの家庭料理やケーキなどとともにおいしいワインに舌鼓を打った。
「Prokupac(プロクパッツ)」から作られたワイン
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記者は、弊社・久米信廣から「酒が飲めるあなたが行きなさい」と声がかかり参加した。
セルビア語はもちろん英語も話せない記者は、ネットで調べた「こんにちは」という意味の「ズドラーヴォ(Zdravo! キリル文字でЗдраво!)」を連発した。日本人の誰もが怪訝な顔をし、セルビアの人たちは笑いながら訳のわからないことを話したので通じたのか通じなかったのかさっぱりわからない。
ワインは絶品だった。赤ワインは(安物だからか)甘ったるいイメージしかなく飲まないのだが、このワインは渋みもあり、どれだけでも飲めた。ボトル1本近く飲んだのではないか。「美味しい」はセルビア語で「ウクスノ」だそうで、これは使える。
お開きのころにはすっかり酩酊し、大使に「ズドラーヴォ」「ジヴェリ(乾杯)」と挨拶したら「お気をつけてお帰りください」と日本語で返された!?
久米は、1990年代から続いた民族対立と経済の疲弊により、多くの子どもたちが厳しい状況に置かれていることに心を痛め、CSR活動の一環として子どもたちに学用品を贈呈したり、アーティストに対する支援活動を行ったりして来ている。ネナド・グリシッチ大使とは〝お友だち〟のような良好な関係を築いている。
会場(セルビア大使館)
※セルビアの国民的作家・ダニロ・キシュ(1935~1985)の「若き日の悲しみ」(東京創元社)の読後感想文を添付します。これも素晴らしい小説です。
悲しい歴史を巧みなレトリックで描く キシュ「若き日の哀しみ」(2015/4/11)
アキュラホーム 金物を一切使用しない日本初の木造中大規模2階建て つくば支店竣工
アキュラホームつくば支店オフィス棟「住まいと暮らしサロン」
アキュラホームは11月21日、特別な金物を使用せず一般大工が施工した建築物ではわが国初の同社つくば支店オフィス棟「住まいと暮らしサロン」を竣工したと発表した。同社の中大規模木造建築物は2棟目。
建物は、サスペンション梁と呼ばれる屋根が特徴。東西方向に吊屋根状の曲線をなし、60mm×120mmのヒノキ4m材を交互にずらしながらビス止めすることにより、張力と曲げ剛性をバランスよく発揮。1階の多目的ホールは7m×10m、2階事務所スペースは9m×14mの無柱空間を実現。目的に応じてさまざまなレイアウトが可能。特別な金具を一切使用せずに、一般大工による施工で実現した建築物は日本初となる。
所在地は茨城県つくば市研究学園4丁目2-5、敷地面積は246.53坪(815.00㎡)、延床面積は86.65坪(286.47㎡)。構造は木造2階建て。設計・監理は飯田貴之氏(飯田貴之建築設計事務所代表、意匠担当)、藤田克則氏(Live Haus建築設計所代表、意匠構造担当)、蓮池健氏(KMC代表、構造設計担当)。総合監修は稲山正弘氏(東京大学大学院木質材料学研究室教授)。
東建グループ 都内初の介護付き有料老人ホーム「四谷」にオープン
「グレイプスウィズ四谷」
東京建物の子会社、誠愛苑は11月21日、東建グループ初の都内の介護付有料老人ホーム「グレイプスウィズ四谷」を11月23日開業すると発表した。
物件は、東京メトロ丸ノ内線四谷三丁目駅から徒歩5分、新宿区大京町に位置する5階建て全48室(定員52名)。専用面積は18.17~30.73㎡。利用権方式。前払方式を利用した場合、入居一時金は900万~2,100万円、月額費用(家賃・管理費・食費)は209,520円~384,520円。月払いを選択した場合の月額費用は約54万~57万円。共用部は食堂、ファミリーリビング、バーカウンター、ラウンジ、相談室兼応接室、健康管理室、喫煙室、2階ダイニング、機能訓練室、ビューティサロン、個人浴室など。建物所有者は東京建物、運営事業者は誠愛苑。施工は大末建設。
各フロアにラウンジ浴室を完備。廊下幅は1800ミリ。各居室に車椅子対応のトイレ、洗面、収納、介護用電動ベッドなどを備えているのが特徴。
東京建物グループは、東京建物シニアライフサポートがサービス付き高齢者向け住宅「グレイプス」を首都圏に15か所1,271戸、2014年に東建グループ入りした誠愛苑が有料老人ホームをさいたま市内に3か所167室をそれぞれ運営している。
バーカウンター
ピアノ演奏
二人入居を想定したモデルルーム(30㎡)
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有料老人ホームは結構取材したが、介護付き有料老人ホームの取材は初めてだった。わからないことは書かないほうがいいのだが、前払いプランを選択したときの一時金の額に驚いた。坪単価は300万円をはるかに突破する。入居後3カ月で30%が、5年で全額が償却される契約だから、月額費用を加えると年間最大で実質的に1,000万円くらいかかる計算になる。
しかし、ホスピスの場合、月額100万円くらい掛かる施設もあると聞くから、妥当な額なのかもしれない。
ある同業記者が「都心だろうが郊外だろうが要介護度の高い人には関係ないのでは」と質問した。なるほどと思ったが、関係者によると本人以外にも親族の意向でこのような都心部の高級介護施設を利用するニーズもあるのだそうだ。
感心したのがバーラウンジだ。昔懐かしい〝だるま〟〝ジョニ赤〟などが棚に並んでいた。ショット売りではなく、近くにある酒屋から入居者(親族)が購入してボトルをキープして飲めるようにするのだという。その代わり、介助費用として1時間1,500円を負担するシステムになっている(ある同年代の記者はホステス料金と呼んだ)。胸やお尻に触ったらどうなるのだろう。介助費用に含まれるのか。
凄いと思ったのが、介護の資格も持つプロがグランドピアノの生演奏をすることだ。週に1回、音楽療法として入居者の誕生祝いなどに好きな音楽を演奏するのだそうだ。効果があるという。
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いま、この記事を書いていて、さらに驚いたことがある。何とある業界紙が「優良老人ホーム」という見出しを付けているではないか。記者は「有料老人ホーム」「特別養護老人ホーム」の呼称はやめろと以前から主張してきた。「無料」の老人ホームなどあるわけがないし、「特別養護」もまた何が「特別」なのか意味不明。歳を取ればみんな身体、精神に異常を来す。「特別視」するのは差別だ。
しかし、さすがに「優良老人…」は書きすぎだ。暗に「不良」が多いことを意図的に匂わしているのかもしれないが、ブラックジョークがきつすぎる。(その記事を書いたはずの記者は同年代。ついに小生と同じボケが始まったか)。今年の流言飛語大賞にノミネートされるのは間違いない。
二人とも取材記者(「撮っていいよ」と了解済み)
共用部は大幅改修 三井不動産「ホテル ザ セレスティン東京芝」開業
「ホテル ザ セレスティン東京芝」
三井不動産と三井不動産ホテルマネジメントは11月21日、「ホテル ザ セレスティン東京芝」を11月28日にリブランドオープンすると発表した。
「ザ セレスティンホテルズ」は、滞在そのものが旅の目的となる「デスティネーション型ホテル」を目指す新ホテルブランドで、「東京芝」は今秋に新規開業した「ホテル ザ セレスティン京都祇園」と「ホテル ザ セレスティン銀座」に続く3軒目となる。
「東京芝」は、2002年に開業した「セレスティンホテル」をハード、ソフト両面で刷新したもの。薩摩藩江戸上屋敷跡地という歴史的ゆかりのある地に所在することから、「CROSS OVER TOKYO」をコンセ プトに「伝統と革新」「欧米文化と日本文化」などを融合・昇華させ、インテリアデザインなどに取り入れたのが特徴。「ザ セレスティンホテルズ」初となる直営のフレンチ・ダイニング「ラ プルーズ東京」に改装するとともに、リラクゼーション・スパとフィットネスルームを設けた。
施設は、都営地下鉄三田線芝公園駅から徒歩約1分、港区芝3丁目に位置。客室は約21㎡のスーペリアダブル(96室)、約19㎡のモデレードダブル(54室)、約28㎡のスーペリアツイン(40室)など243室。インテリアランドスケープデザインは日建スペースデザイン。
21日行われたプレス説明会・見学会で、三井不動産ホテル・リゾート運営部長・奥田茂雄氏は「ザ セレスティンホテルズのネーミングは決まっていたわけではなく、結果として冠するようになった。関係者にとって感無量、非常にうれしい。『京都祇園』『銀座』はスタートが不安だったが、大変好評をいただいている」と話した。
また、三井不動産ホテルマネジメント社長・足立充氏も、「京都祇園」「銀座」とも「確かな手ごたえを感じている」と語った。
壁面アート
「KOMON SCREEN」
ロビー
ルーバー(奥行きが異なるのがわかる)
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従前の「セレスティンホテル」がどのような施設だったのか全然知らないので何とも言えないが、関係者や宿泊経験がある同業の記者などによると、共用部はかなり大幅な改修を行ったようだ。
その代表が説明会場ともなったロビーだ。天井高は約7mで、江戸の桜とかつて薩摩藩の江戸上屋敷があったところから江戸の桜と薩摩藩主島津家の家紋をモチーフにした江戸小紋柄の間仕切り「KOMON SCREEN」(アルミ製)や薩摩切子細工を表現した壁面アート「KIRIKO WALL」が印象的で、天井部分のルーバーも大きさを変えることで見る方向で表情が異なるように工夫している。見事というほかない。
また、黒薩摩焼をイメージしたタイルを採用しているほか、亀甲つなぎをモチーフにしたオブジェや実際の大島紬などを展示している。廊下には行燈や薩摩切子をイメージした照明が多用されている。
しかし、客室は、ルームサービスを初めて取り入れたほか天然素材をふんだんに用い、切子細工、寝具、アメニティなどに工夫を凝らしているのはよく理解できるのだが、洗面化粧室はいわゆる三点セットなど従前のものがそのまま使用されている。物は言いようだ。関係者は〝メリハリ〟と説明したが、記者は〝落差〟を感じた。
「京都祇園」。8月に取材したとき、開業記念のため〝日本一の朝食付きで〟1室26,000円くらいで宿泊できると聞いたので、紅葉がきれいな11月に泊まろうと決めていた。ところが、10月末にネットで調べたら1室50,000くらいになっていた。なので諦めた。シーズンに貧乏人は京都には行くなということだろうが、かといって夏や冬の京都も行くものではない。お金持ちと外国人に任せよう。それにしてもホテルの料金体系はどうなっているのか。奥田氏は「ADRは2万円を目指す」と語った。
ラウンジ
クッション・ヘッドボード
〝RBAの星〟三井不動産・志村亮氏(51)が12年ぶり登板 抜群の制球力健在
三井不動産・志村投手(三郷・サンケイグラウンドで)
昨日、RBA野球大会で三井不動産・志村投手(51)が完投勝ちした記事を書いたが、野球関係者以外の方にも読んでいただきたいので「こだわり記事」欄にも紹介する。
この日(11月19日)、志村投手は外から内へ、内から外へ、面白いように変化球を操り、菱重プロパティーズ打線を手玉に取った。早大野球部主将-三菱重工入りした菱重の主砲・義積(38)は「志村さんの球を打てるなんて」と試合前から舞い上がり3打席凡退。やはり三菱重工出身の相手佐藤投手は何を勘違いしたのか1、2打席とも四球(志村氏はRBA打者としては並=失礼)を与えた。味方の南光院捕手は「志村さんの球を受けることができるなんて」と声を詰まらせた。
さて、名前だけでRBA関係者を感激させる志村氏はいったい何者か。
プロ野球読売巨人軍は昭和63年、ドラフトで慶大の左腕・志村亮投手を1位指名することを決めていた。当時、闇とされていた契約金は2億円とも言われた。
志村氏は桐蔭学園時代から注目されていたが、花開いたのは慶大に入ってから。絶妙の制球力が持ち味で、大学4年のとき、5試合連続完封を達成し、58年ぶりにリーグ記録を更新。通算勝利数31勝(17敗)は、同じ慶大卒の藤田元司氏(2006年没)、早大から日本ハム入りした斎藤佑樹投手らと同じ歴代13位タイだ。
ところが、志村氏はドラフト直前「野球は趣味で」の名言を残し、三井不動産に入社した。プロ球界内外が騒然となった。〝巨人 大鵬 卵焼き〟はさすがに色あせていたが、まだ〝球界の盟主〟に君臨していたときだ。巨人に入団したくて他球団の指名を拒否した選手はたくさんいたが、その逆はほとんどいなかったからだ。〝アンチ巨人〟の西武ファン(もちろん不動産業界ファン)の記者は快哉を叫んだが。
同期入団のプロには谷繁元信氏(大洋)、川崎憲次郎氏(ヤクルト)、渡辺智男氏(西武)、野村謙二郎氏(広島)らがいる。
そしてバブルが崩壊した平成3年。毎週のように〝マンション大暴落〟〝〇〇が破綻〟〝不動産氷河期に突入〟などの記事を書き、業界から顰蹙をかっていたときだ。公私とも落ち込んでいた記者は、志村氏がRBA野球大会で投げていることを知った。
〝志村さんが投げているなら〟と業界と自分を励まし、慰めるため見学に行った。三井不動産は絶対王者ではなかった。守備力に問題があり、志村投手が好投しても負ける試合もあった。強豪チームは草野球の域を超えていた。〝野球も仕事も〟を実践していた。病みつきになった。〝がんばれRBA〟のタイトルで記事を書き続けた。あれから30年近くになる。継続は力なり。まさか不惑どころか知命を超えた志村氏が登板するなど夢にも思わなかった。
三井不は次の準決勝戦で東京ドーム進出をかけて最強のケン・コーポレーションと対決する。志村氏は果たして投げるのかどうか。三井不が勝てば15年ぶりのドーム進出だ。同期のプロはみんな現役を引退した。アマに引退はない。