あの熱気どこに 多摩市 第5回 多摩NT再生プロジェクトシンポ
第5回「多摩ニュータウン再生プロジェクトシンポジウム」(パルテノン多摩で)
多摩市は2月3日、第5回「多摩ニュータウン再生プロジェクトシンポジウム」を開催した。関係者ら約160名が参加した。
3部構成で、第1部では多摩市ニュータウン再生推進会議 職務代理者の西浦定継氏(明星大学教授)が「諏訪・永山まちづくり計画について」及び「PDCAサイクルについて」報告し、第2部ではカルチャースタディーズ研究所の三浦展氏が「2040年の社会をデザインする~郊外を脱して、本当の街へ~」と題する基調講演を行い、第3部では、同会議委員長の上野淳氏(首都大学東京学長)がコーディネーターを務め、西浦氏、三浦氏、市民委員の松原和男氏と井上亮氏、阿部裕之多摩市長がパネリストとなって座談会を行った。
開会の挨拶を行った阿部市長は、小田急線が2018年の複々線化の完成により利便性が高まり、京王線も座席指定の「京王ライナー」を2月22日から運行することを受け、「多摩ニュータウンの再生を後押しするもので大変うれしい。多摩市の健康寿命は男性が83歳、女性が86歳で東京トップ。小学校での英語教育を強化するなど学びの場として、また緑の環境も整っている」とし、座談会では今後は大学やUR都市機構などとの連携を強化し、シェアハウス、海外留学生の受け入れ、女性が安心して住めるネットワークを構築し、「他の街に勝つとか負けるとかではなく、自然に選択され浮上する街の取り組みを強化する」などと述べた。
阿部市長
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再生会議に期待するからこその苦言を以下に呈したい。
まず、気になるのが参加者の少なさだ。記者も第3回まで取材しているが、ほぼ満席の250~300名が集まっていた。第4回は都合で傍聴しなかったが、今回は空席が目立ち、第3回の半数の約160名(主催者発表)しかいなかった。報道陣も記者を含めて2~3人という少なさだ。
西浦氏も話したように、諏訪・永山などの再生プロジェクトは進展がみられないからかもしれないが、当初のあの熱気はどこに行ったのか。
ここで、「公・民・学」が連携して壮大な次世代型都市づくりが進められている「柏の葉スマートシティ」と比較しても詮ないことだが、多摩NTには再生のエンジンとなる民(デベロッパー)がいないのが最大の欠点だ。
次に講演者の人選。シンポジウムの第1部で西浦氏は「わたしも三浦さんの話を聞きに来た」と話した。シンポジウムの終わりには副市長の永尾俊文氏も「目からうろこ」と三浦氏を持ち上げた。これは外交辞令お世辞だと思うが、もし本心なら「会議」のあり方そのものが問われる。記者もそうだが、参加者はみんな「会議」のメンバーが何を話すか聞きたかったはずだ。
三浦氏の招へいは「三浦さんの本はいつも読んでいる」阿部市長直々の口利きのようだ。パネリストも含め参加者は「三浦さんの話が面白かった」と口々に語ったように満足されたのだろう。
しかし、記者は首をかしげざるを得ない。三浦氏は本人もしゃべったように俗耳に入りやすい「(面白い)情報を売るのが仕事」だ。独自の分析はあるが、あれやこれやのデータを寄せ集め、あちこちの「成功事例」をかき集め、どこでもできるかのように論じる、所詮は講釈師といっては失礼か。第1回目のシンポでは「多摩ニュータウンの魅力を発信していく」ことで合意に達したのではなかったか。面白くて人を集めるのが目的であれば落語家か芸能人でもいい。
いま「会議」に求められているのは、できることからすぐに手を付け実践することだ。人選にも事欠かないはずだ。地元にしっかり根を張り活動している団体・個人はたくさんいる。そうした人たちの悩み苦労をじかに聞くほうが参考になる。
会議の市民委員でもある松原和男氏が「働く女性に参加してほしかった」「主要プロジェクトは見えてきたが、果たして市民にとって身近なものか。やや違う気もする。もっと市民の中に入っていくべき」と語り、同じ市民委員の井上亮氏も「見栄えだけでなくシェアしたりかけ合わせたり、無駄を省くなどしたりする四則演算が大事なことを学んだ。魅力的な街は100人いれば100通りのイメージがあるはず。会議の回数が増えるごとに方向性が見え、会場が満員になるようにしたい」と感想を述べた。
その通りではないか。前回もそうだったようだが、あれこれの雑誌が垂れ流す根拠があいまいな「住みたい街」やら「住んでみたい街」「働く女性が魅力の街」「住みよさランキング」などに多摩ニュータウンが入っていなくとも、市民のほとんどは「それがどうした」と答えるはずだ。
左から三浦氏、松原氏、井上氏
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かなり批判的なことを書いたが、うれしくなる、なるほどと得心する発言もあった。
第3部の座談会でコーディネーターを務めた多摩ニュータウンに住む首都大学東京の学長・上野淳氏か「多摩ニュータウンは郊外の街のチャンピオンとして生き残る。人材は豊富だし何よりも美しい緑、自然、オープンスペースがある。もし多摩ニュータウンがダメになるときは、日本全体が普遍的にダメになるということだ」と発した。
これを少し補足する。4年前、都庁で行われた首都大学東京の「リーディングプロジェクト最終成果報告会」を取材したとき、「上野氏は多摩ニュータウンの賦活について、『世界的に稀有な事例』である公園・緑地をペディストリアンで結ぶ緑のネットワークや歩車分離の街づくりをどう継承していくかが鍵だと語った。また、高齢化やバリアの解消などの課題はあるが、多様な主体が主役になる街づくりを行なえば未来都市・多摩ニュータウンには大きな可能性があると力説した」と記事にした。
上野氏のような人がいる限り、楽観はできないかもしれないが、多摩ニュータウンの未来は希望が湧いてくる(上野氏は「私は福祉亭に焼酎のボトルをキープしている。どなたでも寺田さん(理事)に言って飲んでもらっても結構」と話したが、福祉亭を利用するためのタクシー代のほうが高くつく。それより、上野氏には〝金づる〟となりそうなデベロッパーをひっぱりこんでいただきたいのだが…)
もう一つ。西浦氏が「持続可能な社会にするため、なにがあっても多摩ニュータウンに住めるセーフティネットを考えたい」と座談会で示唆した。
これについては、多摩市も「健幸都市(スマートウェルネスシティ)」を目指し「多摩市版地域包括ケアシステム」を立ち上げたが、多摩ニュータウンにはどこにも負けない自然・人的資源がある。三日三晩、電気、ガス、水道が止まろうと、乞田川の水を浄化できれば水は確保できるし、煮炊きだって、生物多様性にいささかも影響を与えない薪を「第31回緑の都市賞」総理大臣賞を受賞した多摩グリーンボランティア森木会が調達してくれるだろうし、市内には炭焼き名人も住んでいる。食べ物だってフキノトウ、ユキノシタなども無尽蔵だ。
そこで、西浦氏に注文したい。多摩エリアにある26の大学教授が給与の1%でいいからそれぞれの駅のカフェ・飲食店に寄付し、著作も読め、地域通貨として利用できるようにすれば、多摩に移り住む学生・市民が殺到するはずだ。
教授にもポイントを付与し、利用度の高い店は講義を免除し、提出論文の数にも便宜を図れば、教授の働き方改革も一挙に解決する。
生まれ故郷の新潟の酒蔵とコネがありそうな西浦氏は、本業などそっちのけで酒の伝道師として生きていくことができるのではないか。
阿部市長にもお願いだ。どなたかに「母になるなら、流山市。」を上回るキャッチフレーズを求められた。是非とも作っていただきたい。北区は昨年、漫画家を起用して「住めば、北区東京。」のブランドメッセージを打ち上げた。また、不動産コンサルの長嶋修氏が「マンションは足立区に買いなさい!」なる帯付きの本を出版した。
記者は、多摩市は流山や北区、足立区より圧倒的にポテンシャルが高いと思う。新築分譲はこれからあまり期待できないが、「中古を買うなら多摩市」のキャンペーンを張ろうかしら。
記者は下記に示しように、これまでの10年間で多摩ニュータウンに関して少なくとも10本以上の記事を書いてきた。読者の皆さん、記事を読んでいただき、コピー&ペーストでもいいですからどうか多摩の魅力をRBAをご存じない方に発信していただきたい。
上野氏(左)と西浦氏
「多摩NTに風が吹く」 女性の仕事・子育て・地域活動を考える 多摩NT学会が討論会(2016/6/13)
人・街・未来を語り合う 多摩市 第2回「多摩NT再生シンポジウム」(2015/2/5)
「ザ・パークハウス多摩センター」 駅近の免震、最初で最後(2014/6/6)
「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」 西浦・明星大教授(2014/1/29)
多摩ニュータウンの課題を解決し、魅力をどう発信するか(2014/2/13)
多摩市一本杉公園の「炭焼き窯」炭焼き文化を伝承する「一本杉炭やき倶楽部」(2013/2/25)
課題山積〝玉石混交〟市場に百家争鳴 サ高住に関する国交省・有識者懇談会
「サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会」
国土交通省は1月31日、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)について幅広い意見を聞く有識者からなる「サービス付き高齢者向け住宅に関する懇談会」を設置し、第1回懇談会を同日に開催した。
サービス付き高齢者向け住宅については、平成23年の制度創設から6年経過し、この間、登録戸数は約23万戸まで増加しているが、一方では立地や地域の医療・介護サービスとの連携などの課題も指摘され、制度そのものが分かりづらいという声もあることから、懇談会ではこれまでの取組状況についてフォローアップを行うとともに、今後の取組の進め方について論議していく。
国交省からは、登録要件となっている1戸当たりの床面積は原則25㎡以上となっているにも関わらず、実際は全体の4分の1にしかすぎず、当初想定した自立高齢者の入居が少なく、要介護3以上が3割に達すること、入居費用は大都市圏では平均約11.9万円に上っており、年金額では負担しきれない額であることなどが報告された。
以下、各委員の主なコメントを紹介する。ほぼ発言順で、( )内は記者。
髙橋紘士座長(高齢者住宅財団特別顧問・東京通信大学設置準備室) 国民にとって分かりづらい、老人ホームとどう違うのかという声もある。住まいとして捉える形と施設として考える両方があり課題も多い。早めの住み替えになっていない側面もある。何よりも分かりやすい仕組みにするため課題を整理し、老人ホームも含めて実のある懇談をしていただきたい
園田眞理子氏(明治大学理工学部教授) 基本的な情報提供がされていない。サ高住は地域包括ケアシステムを担う要素の一つ。地域の医療・介護との連携の中で捉えないといけない。高齢者はやり直しがきかない、先がない。一方でわずかだが業者の倒産もある。きちんと検証する必要がある。金科玉条のように考えていると先に進めない
小山健氏(高齢者住宅推進機構政策委員長、積和グランドマスト社長) データの平均値で取ると危険な論議になる。内付けサービスを拡大するとコスト上昇につながる。一方で労働力不足もある。IoTも進歩しており、セットで活用していく必要がある
吉村直子氏(長谷工総合研究所主席研究員) 情報提供システムは使いづらい。ユーザーは知らない人も多い。専門職も使えるものにしないといけない。各種のアンケートは数値を合計してその数で割るものが多いが、これでは実態は把握できない面もある(吉村氏とは30年来のお付き合い。ずっと高齢者住宅について研究されてきた。マクロデータについて鋭い指摘をされた)
三浦研氏(京都大学大学院工学研究科教授) 見守りは必要ないとか、安否は機械でできるとか、地域に出ていかない、支援しづらい問題がある。生活の質、クオリティをどう上げていくか。サービスとは何かを考える必要がある。器を広げて、地域ソリューション拠点として障がい者なども入居できるようにしてもいいのではないか
寺嶋清氏(品川区福祉部高齢者福祉課長) 無届老人ホームが半分くらいあった時代と比べ、問題はそれほど改善されていない印象を受ける。サ高住も老人ホームも分かりづらい。一般方はまず特養を考える。現場はデータベースなど眼中にないのでは
田村明孝氏(タムラプランニングアンドオペレーティング代表取締役) 高齢者住宅は16種類に分けられるが、ジャンル分けする意味があるのかどうか、介護を想定するのかしないのか、看取り、在宅介護も含めて整理しないといけない。表示制度は登録しっぱなしで更新せず、所在がないものもある。このままでは良心的な業者がシュリンクする懸念がある
福山宣幸氏(全国有料老人ホーム協会副理事長) 利用者が特定施設をチョイスできる仕組み、情報提供できるようにしないといけない。見守りサービスは、自立はしているけれども見守ってほしいというニーズもある。機械に置き換えることができないサービスの見える化を進めることがポイント
大月敏雄氏(東京大学大学院工学系研究科教授) セーフティネット制度を活用して家賃補助を行っていくことも可能ではないか
小林宏彰氏(サービス付き高齢者向け住宅協会事務局) 行き過ぎ指導もある。いかがなものか。表示制度は業者負担が過重ならないようしていただきたい
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サ高住は玉石混交だと思っていたが、懇談会でも百家争鳴、議論百出、その通りであることを裏付けた。個人的には「見守り」とは何かが明らかにされるのに期待していたが、今回は踏み込んだ発言はなかった。
法律では、有資格者が居住部分への訪問、電話、入居者の動体を把握できる装置による確認、食事サービスなどの提供時における確認などを能動的にチェックすることが義務付けられている。
【お断り】 各委員の発言は、記者の責任において紹介した。耳が遠くなり、聞き取り力は小学生並みになり、聞き間違え・見逃しなどで正確に伝えきれていないことを了解していただきたい。また、国交省は後ほど、発言者名を伏せてホームページに公表するが、この種の公的な会合では誰が何を話したかはとても重要だと思うので実名で紹介した。国交省からは実名を伏せるよう報道陣に対する要請はなかった。懇談会の模様は不動産流通研究所のWeb「R.E.port」が正確に伝えている。
三菱地所レジデンス 有料老人ホームとシェアハウス事業に参入 第一弾着工
「杉並区永福4丁目有料老人ホーム計画」
三菱地所レジデンスは2月1日、有料老人ホーム、シェアハウス事業に参入し、有料老人ホームの第一弾「杉並区永福4丁目有料老人ホーム計画」を同日付で着工したと発表した。
有料老人ホーム開発は新たに組織したネクストスタイル企画グループにより行い、シェアハウス開発は築古ビル等を再生するReビル事業部で行う。
同社は2013年、中古住宅ストックの「リノベーション事業」を立ち上げたのをはじめ、2014年には築年数の経過した中小ビルなどを再生して賃貸する「Reビル事業」を、2016年にはワンルームを中心として分譲する「資産形成コンパクトマ ンション事業(ワンルーム事業)」に参入している。
「有料老人ホーム」は、同社が建物を開発し、オペレーター会社に賃貸するスキームにより展開する予定。「シェアハウス」は、「古い社宅を手放さず有効活用したい」という企業の解決策として同社が一括賃借したうえで、シェアハウスにリノベーションし、オペレーター会社に運営を委託する。
「杉並区永福4丁目有料老人ホーム計画」は、京王井の頭線西永福駅から徒歩8分、杉並区永福4丁目に位置する敷地面積1,162.07㎡、5階建て延床面積2,578.55㎡の全48室。居室面積は19.93~40.19㎡。設計は日建ハウジングシステム。施工は谷津建設。竣工予定は2019年2月。
今後、ネクストスタイル事業は年間売上目標を50億円と設定し、Reビル事業は2020年度末までに貸床面積25,000坪を目指す。
〝骨太ニッチ〟アパートメントホテルで独走 コスモスイニシア第一弾「上野」開業
「MIMARU 東京 上野NORTH」
コスモスイニシアは2月1日、〝暮らすように滞在する〟をテーマとした新ホテルブランド「APARTMENT HOTEL MIMARU(アパートメントホテル ミマル)」の第一弾「MIMARU 東京 上野NORTH」のメディア向け内覧会を行った。
新ブランドは、増加する外国人旅行者の約6割は家族・親族・友人などのグループで訪日している一方、グルー プでの宿泊に対応した40~50㎡のアパートメントホテルは少ないことに着目。敷地面積が100坪、客室数が40室程度確保できれば、同社のこれまでのレジデンシャル事業やソリューション事業のノウハウを生かし、飲食設備を設けないことでオペレーションコストを抑制し差別化が可能になったことから参入した。
同社が土地を取得・建設・所有するほか、オーナーの土地有効活用として提案していく。昨年設立した子会社・コスモスホテルマネジメントが運営・管理するほか、「ソーシャルアパートメント」を展開するグローバルエージェンツなどと提携する。一定期間運用したのちファンドなどへ売却する意向だ。
ブランドロゴは世界の「世」の異字体「卅」をモチーフにしており、「MIMARU」は〝みんなで泊まる〟意を込めたもの。
東京・京都・大阪を対象エリアに積極的に開発を進めており、現在、17棟878室が開発中で、「赤坂」(40室)「水天宮」(32室)「京都堀川六角」(42室)「京都新町三条」(69室)など今後続々開業する。2020年までに1,500室の稼働を目指す。
内覧会で同社・高木嘉幸社長は「2018年度を最終年度とする中期経営計画は順調に進捗しており、4期連続増収増益を達成できる見込み。ホテル事業は、新たな投資枠を設定せずともこれまでの分譲と同じノウハウが生かせ、圧倒的な競争力があるのが強み。参入障壁が低くて追随するところがあるかもしれないが、先行者利益で優位に立てる」などと話した。
コスモスホテルマネジメント・藤岡英樹社長は「コンバージョンは工期が短くて済みコストも抑えられるが、窓が確保できないなど適合する案件は少ない」とも語った。
「MIMARU 東京 上野NORTH」は、上野駅から徒歩8分、台東区上野7丁目に位置するオフィスビルをコンバージョンしたもので、2月8日にオープンする。敷地面積407.66㎡、8階建て全40室。客室面積は約34~60㎡、4~8名の定員制で、人数に関わらず同額のルームチャージとする。4名定員で宿泊料は2~3万円の後半(平均3万円前後)。ミニキッチン、調理器具、レンジなどを備え、スマートフォンの貸し出しを行う。共用部にはランドリーを設置している。2月の予約状況は約6割、うち9割が外国人。
高木社長(右)とコスモスホテルマネジメント・藤岡社長(藤岡社長の法被がとてもよく似合っていた)
フロント(左)と本物の子ども神輿
組子デザインが美しいエントランスラウンジ
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いくつになっても初めて経験するものはワクワクドキドキ緊張するものだ…小学校の入学式、ひげが生えたとき、タバコを吸い、酒を飲んだとき、革靴を履きネクタイを絞めたとき、ファーストキス・初体験、求婚のとき、子どもが生まれたとき…。
この日、高木社長は「アパートメントホテルは欧米ではどこにでもある施設」と話したが、中国とモンゴルしか行ったことがない記者は初体験であることに変わりはない。小学校の遠足のように見学を心待ちしていた。
もちろん、記者の取材フィールドはマンションだから、〝究極のマンション〟であるホテルはリッツを筆頭に名だたるラグジュアリーから旅館、民宿、バンガローに禅寺、宿泊特化型にビジネスホテル、ラブホテル、カプセルホテルまであらゆる形態のホテル・旅館に泊まっているし、賃貸アパート、寮・社宅、外断熱モデルルームに全館空調モデルハウス、さらには特養に有料老人ホームなども体験している。零下30度のモンゴルではパオで厚いもてなしを受けた。宿泊経験はないがシェアハウス、サービスアパートメント、サ高住の取材もそれなりに行ってきた。
泊まったことがないのは刑務所とアパホテルくらいだと思っていたら、記者のはるか上をいく剛の者がいた。わが高校同窓の後輩女性記者だ。
「ダッカのホテルはものすごく高かったけど、バングラディッシュの田舎で150円(ドルではない)の監獄のようなホテルに泊まったことがあるわよ。ベッドとトイレ、桶(おまるか)があった。シャワーはなかったような気がする。冷暖房? あるわけないでしょ。怖い? 全然平気。ゲストハウス、ドミトリーも知ってる。それらと今回のホテルを比べるのはどうかと思うけど、これはもう最高、天国のよう」とのたまうではないか。
記者はというと、やはりラグジュアリーが念頭にあるものだから、浴室・トイレの段差(約20㎝)、家具・什器、アメニティ、シート張りの浮造りアート、擬石の大谷石カウンターなどを見るにつけ〝ビジネスホテルを広くしたようなもの〟に映った。ベッドが4床もあるのに違和感を覚えた。
それもこれも、〝ホテルは一人か2人で泊まるもの〟という固定観念があり、家族・友人などグループで泊まる外国人の生活スタイルや利用目的が全然見えていないからだという意識はあった。
そうしたもやもや感に断を下した同業の記者がいた。「訪日客はオリンピック後も間違いなく増加する。このような施設は一定の層には理解されるはず。太いニッチ」と語った。
なるほど言いえて妙だ。この言葉をそのまま頂いて「骨太ニッチ」と形容したがどうだろう。
客室
NTT都市開発 サービスレジデンス事業参入 シンガポール・アスコット社と連携
NTT都市開発は1月30日、シンガポールの不動産会社・The Ascott Limited(以下、アスコット)とわが国でのサービスレジデンスの共同開発を行うことで合意に達したと発表した。
同社は2015年10月、ホテル・リゾート事業部を設置し、「ザ・ひらまつホテルズ&リゾーツ」などホテル・ リゾート事業の拡大に取り組んでいる。
アスコットは、シンガポールの不動産会社CapitaLand Limitedの子会社であり、世界的なサービスレジデンスの運営会社。現在、日本を含む世界30カ国以上、43,000室以上のサービスレジデンスを運営している。2017年3月には東京大手町に「アスコット丸の内東京」を開業している。
共同開発第一弾として、同社が開発を検討している福岡市と横浜市の案件についてアスコットを運営委託の候補先として協議を開始した。
サービスレジデンスは、ホテルとマンションの両方の機能を持った長期滞在にも適した宿泊施設。客室には備え付けの家具やキッチンを設置し、フロントサービスやハウスキーピングサービスも提供される。
既存建築物の有効活用、木造の規制緩和が進む 国交省・建築基準制度改正へ
第16回建築基準制度部会
国土交通省は1月30日、「今後の建築基準制度のあり方」について第16回建築基準制度部会と第41回建築分科会をそれぞれ開催し、第三次報告案を論議し最終報告書として取りまとめた。
今回の第三次報告では、新たな技術開発の促進と更なる性能規定化に向けた建築規制のあり方や、既存建築ストックを有効に活用する観点から、今後の建築基準制度のあり方を示したもの。
既存建築ストックの有効活用については、安全性を確保しつつ防耐火性能などの建築規制の合理化を求めている。
木造建築については、現行制度では一律に耐火性能などの性能を要求され、木材らしい外観を実現することが難しいが、安全性が確保されれば対象となる建築物の対象を合理化し、設計の自由度の拡大を図るべきとするなど、規制の適切な見直しを行うべきとしている。
◇ ◆ ◇
木造ファンの記者としては、規制が緩和されそうで画期的な報告だと受け止めた。
ただ、厳密にいえばこれは正確ではない。全15ページにわたる報告書の中には「建蔽率を緩和」とい文言は1カ所あるが、「建築規制を緩和」するとは一言も触れられていない。「規制が緩和されそう」というのはあくまでも記者の解釈だ。
それでは、全くの憶測にすぎないかといえばそうでもない。「緩和」の文言はないけれども「合理化」の言葉は16カ所あり、このほか「支障」「課題」「問題」「簡素化」「見直し」「過度な負担」「ニーズに対応」「整備」「除外」などの言葉が頻繁に使用されていることと合わせ解釈すれば「合理化」=「緩和」と受け取れなくもないというのが記者の結論だ。
会合の後、双方の部会長を務める深尾精一氏(首都大学東京名誉教授)に「これは画期的な報告ではないか」と訊ねた。深尾氏は「具体のことについてコメントは差し控える。全体として世界に追いついてきたということ」と話した。
また、部会の最終報告について国土交通省住宅局長・伊藤明子氏は「安全性を確保しつつ、性能規定化を進め総合評価する、より一歩進んだ報告」と高く評価し、各委員をねぎらった。
「世界に追いついてきた」「より一歩進んだ」をどう解釈するかだが、木造の「現し」(ゼネコンなどの研究開発が進んでおり、防火性能を備えた外壁材もある)が準防火でも実現する日も近いのではないかと、分科会を傍聴して強く感じた。
◇ ◆ ◇
弁護士の齋藤拓生委員(日弁連消費者問題委員会土地住宅部会幹事、元日弁連副会長)が、第三次報告案の「今後の建築基準制度のあり方について」のサブタイトルについて疑義を唱えた。
前回の会合までは「建築物の安全性確保と既存建築ストックの有効活用及び木造建築関連基準の合理化の両立に向けて」となっていたものが、最終案では「既存建築ストックの有効活用、木造建築を巡る多様なニーズへの対応並びに建築物・市街地の安全性及び良好な市街地環境の確保の総合的推進に向けて」へと「建築物の安全性確保」が削除されたことについてだった。
この意見に対して、深尾部会長は「建築物の安全性確保は自明のこと。わざわざ書くと却ってわかりづらくなる」と話し、齋藤氏も「言わずもがなというのはわかる」と了承した。
このやり取りを聞いていて、記者は別のことを考えた。国土交通省に限らず、どうしてこのような報告書はタイトルが長いのかということだ。今回のサブタイトルは68文字で、メインタイトルを含めると81文字にもなる。新聞1行の文字数を13字とすると実に7行にも及ぶ。
誤解を招かないよう中身を正確に伝えようと、さらには各委員の意向を忖度して結果として長くなるのか理由はわからないが、深尾部会長の言葉のように却って分かりづらくなりはしないか。
なぜこのようなことをいうかというと、かつて櫻井敬子・学習院大教授が「建基法関係の法律は窮屈。もっとおおらかでいい」と発言されたのが頭にこびりついているからだ。
櫻井氏が言うようにもっと鷹揚に構え、サブタイトルはAKBやSKDにあやかって「より安全(A)で、より快適(K)に、より賢い(K)建築(K)制度に向けて」にでもすれば「AKKK」にするか、Kが3つ並ぶのがまずいのであれば「賢い」をスマート(S)にすれば「AKSK」となり、だれからも文句はつけられないはずだ。
日比谷の新しい顔 曲線美に震えた 三井不動産「東京ミッドタウン日比谷」竣工
「東京ミッドタウン日比谷」(日比谷公園から)
三井不動産は1月30日、事務所、店舗、文化交流施設、産業支援施設などからなる複合開発「東京ミッドタウン日比谷」(事業者:同社)が竣工するのに伴う記者会見・見学会を行った。
施設は、旧三信ビルと旧日比谷三井ビルの跡地で、東京メトロ日比谷線・千代田線に直結。都市再生特別地区制度などを活用して、双方のビルの間にあった道路を廃道にし一体開発した。敷地面積約10,700㎡、地下4階地上35階建て延べ床面積約189,000㎡の複合ビル。マスターデザインアーキテクトはホプキンスアーキテクツ、都市計画・基本設計・デザイン監修は日建設計、実施設計・監理はKAJIMA DESING。施工は鹿島建設。地下から7階が商業施設、11階から34階がオフィス、6階がビジネス連携拠点。3月29日にオープンする。
会見に臨んだ同社・菰田正信社長は、「グローバルな都市間競争が激化し、成熟した社会への対応が求められ、ライフスタイルの急激な変化が起きている中で、様々な問題を解決し、街固有の歴史、文化、伝統を活かし、魅力ある街づくりが求められる。当社が掲げる〝経年優化〟の街づくりをここでも実現した。『日比谷』はは霞が関、大手町・丸の内、銀座、虎ノ門・新橋の各エリアの結節点であり、JAPAN VALUEを世界に発信し続ける街、質の高いミクストユースの街づくりがコンセプトである『東京ミッドタウン』にふさわしい立地。エンターテイメントの聖地、都心のオアシス、近代化をけん引した歴史を継承し、サスティナブルな街づくりを進めていく」などと述べた。
また、「『東京ミッドタウン』を冠せる案件は数件ある」と今後の同様な街づくりに意欲を見せた。テナントの入居については「極めて良好。(当社の)トップクラス」と語った。
菰田社長
日比谷通り側
夜景
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完成した建物を初めて見た。感動で胸が震えた。寒さでは断じてない。写真を見ていただきたい。なにより美しい。伝統的な100尺ラインを踏襲しながら、緩やかなアール・曲線を描いたガラスファサードが、隣のやはり曲線が美しい日比谷シャンテと見事に調和し、双方の空間・空気さえもデザインに取り込んでいるではないか。これを見て、すぐあの曲線美が特徴の「パークコート青山ザ・タワー」を思い出した。
曲線は、オフィス空間も同じで、図面を見ただけではその曲線部分がデッドスペースになるのではと考えたが、実際はそのようなことはない。むしろ、同社 日比谷街づくり推進部部長・山下和則氏が話したように「サード・プレイス、コミュニティ空間として多様な使い方ができる」はずだ。
全体の外観デザインは、見る角度によって2つに分かれても見え、微妙に表情を変える〝ダンシングタワー〟というのがコンセプト。配布資料には「柔らかな印象のファサードはいかなるビルとも一線を画し、どこから見ても目立つランドマークとして唯一無二の存在感を発揮します」(ホプキンスアーキテクツ サイモン・フレーザー氏)とある。
このほか、高さ20mもある1階のアトリウム、6階の緑のパノラマ空間「パークビューガーデン」、9階の2層スカイロビーもなかなかいいが、8階のパークウェルネスが素敵だ。
同じような施設は昨年、三菱地所の「大手町パークビルディング」でも見学したが、比較すれば今回の「日比谷」に軍配を上げる。なにがすごいかといえば、女性専用パウダーコーナー・シャワーブースだ。男性用のシャワーブース(4室)もあるのだが、これは普通のシャワー室だ。一方の女性用パウダーコーナーは、10人以上が同時に化粧できそうな大きさだった。これには絶句した。例えていえば電線に並んだスズメかツバメのような壮観が展開されるのは間違いない(東急不動産の日比谷のビルは、夜の顔に変身できる鏡付きのパウダールームもあったが)。化粧室に入ったまま職場に戻らない女性が激増しないか心配。
さらにそれより驚いたのがシャワー室だ。4室のうちの1室は何と日比谷公園が眼下に見降ろせ、その向こうのビル群も眺めながらシャワーを浴びられるようになっている。これは日比谷公園だからできる芸当で、皇居だったら記者は許さないし、宮内庁から撤去を申し立てられるはずだ。
たまたま通りかかったいささか薹が立った女性に声を掛けたら、「いいんじゃないですか、魅せたい人には」とそっけない返事が返ってきた(「あなたはどうですか」とはさすがに聞き返せなかった)。
右が「東京ミッドタウン日比谷」、左が「日比谷シャンテ」
なにはともあれ、「東京ミッドタウン日比谷」が日比谷の新しい顔になるのは間違いない。以下、街で拾った声も紹介する。
「よく母と一緒に宝塚を観に来ます。わたしは地震の時、ガラスが(落ちないか)心配。母はどう? 」(大丈夫、鹿島の最新の制震技術が採用されている=記者注)「(工事用の)幕が外れる前は圧迫感を感じましたが、幕が外れたらとても素敵」(60歳代と30歳代の母子)
「(外観の)カーブが美しい」(30歳代の男性)
「仕事場が近いので楽しみにしていた。曲線がきれい」(30歳代と40歳代の女性)
「日比谷は食事や買い物でよく来ます。近くに住んでいますので(どこですか)築地です。確かに『六本木』(ミッドタウンのことか)に似てますよね。曲線がいい。必ず一度利用します。広場にカフェがあるといいわね」(40歳代の女性)「(70歳代ですよね)いいえ、68ですのよ。ホホホ。これができて線路の向こう(有楽町)から人の流れが変わるんじゃないかしら」(これはまずかった。記者はいつも見た目より10歳若くおべっかを使いインタビューすることにしている。「人の流れが変わる」ことについては、前出の山下氏は「街を訪れる人の行動範囲が広がることを願っている。目指すのは共存共栄」と話した)
「仕事が近いのでよく通ります。素敵、すごい。変ったわね。公園に合う」(70歳代と60歳代の女性)
「うーん、なんとなくインパクトに欠ける。丸の内みたいじゃない」(40歳代女性⇒「丸の内」とはコンセプトが違います)
アトリウム
フィットネスコーナー(左)と女性用パウダールーム
女性専用シャワーブース(ここは脱衣所か、この奥にシャワーブースがある)
壁から床、エレベータホールに本や物の無垢材が使われていた(6階部分)
パークビューガーデン
三井不動産&TX 柏の葉キャンパス高架下に「屋台」6月開業
イメージ
三井不動産とつくばエクスプレス(TX)を運営する首都圏新都市鉄道(TX)は1月29日、つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス」駅北側高架下に商業施設を開発し、6月に開業すると発表した。
「屋台」をモチーフとした19区画の小型飲食店舗を整備することで、店主と周辺の居住者や就労者、大学関係者、来街者など多様なお相互のコミュニケーションを活性化し、地域の新しいコミュニティを醸成することを目指す。出店店舗については未定で、公募による誘致も予定している。
店舗面積は約421㎡。施工は大和ハウス工業。開業予定は今年6月。
◇ ◆ ◇
結構なことだ。「柏の葉」の駅周辺には現在、そのような店はないはずだ。
新興住宅地に何が欠けているかといえば「屋台」だ。多摩センターも当初、パチンコ屋といかがわしい店(記者は入ったことがない。念のため)がなぜかあったが、仕事の帰りや仲間で飲むような「屋台」らしきものがなく困ったものだ。いまはありすぎて、利用するのがためらわれるひどい店もたくさんある。
「素適革命」で「素適開花」ナイス・平田社長 業界各氏は着工・株価予測
平成30年「新春経済講演会」(グランドプリンスホテル新高輪で)
平田代表
ナイスパートナー会連合会とナイスは1月26日、恒例の平成30年「新春経済講演会」を行った。関係者ら約1,600名が参加した。
冒頭、ナイスグループ・平田恒一郎代表がグループの概況と取り組みについて講演し、日本経済・業界動向について「職人・材料不足、資材高騰などの懸念材料があり、世界の様々な政治リスクがあり、何が起きるかわからない不安材料もあるが、イノベーションが成長を促す。今年はデフレからインフレに向かうのではないか」と述べ、「〝清く正しくまじめなナイス〟を掲げ、環境・耐震・健康の3つのキーワードで『素適革命』を加速させ、『素適開花』させるべく未来にワークする。当社には現場力と理念の武器がある。ナイス真・次元の年にしたい」などと語った。
以下、パネルディスカッションに参加したパネリスト各氏の今年の住宅着工戸数、株価予想、景気動向などコメントを紹介する。(50音順)
SMB建材・角柄明彦社長 経済は緩やかに回復。人手不足、物流コストアップなど懸念材料はあるが、オリンピック・パラリンピックに向け消費マインドはプラスに働く。住宅着工は後半に消費税アップに伴う駆け込みもあり97万戸くらいとみている。株価は25,000~26,000円、為替は115~120円。〝自国主義〟が跋扈するのが怖い
セイホク・井上篤博社長 エコロジーを推進するナイスさんはエコ贔屓する。株価はわが国への投資が増えそうで27,000円。住宅着工は92万戸と低めに見ている。輸入を減らし、国産材を採用した合板をフル生産し、森林・林業再生に貢献したい
大建工業・億田正則社長 住宅着工は後半に伸び96~99万戸。日経平均は米国の株価の伸びなどから換算して27,840円もありうる。この業界に人が入ってこないので、働き方改革も進める
TOTO・喜田村円社長 当社は昨年、創業100周年を迎えた。住宅着工は分譲が高くなりすぎなので95~96万戸ていど。株価は26,000~27,000円で落ち着く。中国経済は底堅いものがある。省エネは消費者に分かりやすいアプローチを考えている
ニチハ・山中龍夫社長 経済は別だが政治状況がひどい。注意する必要がある。原油高、資材高、金利高も懸念材料で、目先の株価は27,000円もあるかもしれないが後半まで持つか。規制緩和の副作用も怖い。そうなると22,000円に戻る。住宅着工は94~95万戸が着地点。職人不足がこたえてきた。サイディングのプレカット? 実現すれば爆発的に広がる
パナソニック エコソリューションズ・北野亮社長 悲観材料見えにくい。株価が下がるとは考えていない。3万円もあるかと考えたが、25,000円と予想しておく。住宅着工は前年並みの95万戸。スマートスピーカー? 当社は予定ない。今更(参入しても)勝ち目はない。景気はオリンピック後の2025年には崖があるのではないか
吉野石膏・須藤永作社長 住宅着工は96.5~95万戸。マンションは価格が上昇し買い控えが進む。賃貸は過剰だが、後半に向け全体として回復する。株価は27,000~28,000円(別掲の石こうボードの値上げを示唆した記事参照)
LIXIL・大坪一彦副社長 グループ再編を進める。新生LIXILの年。価格制度を変更する。キッチン、バスルームなど水回りが好調。水晶7割、石3割のハイブリッド新商品も投入する。スマートエクステリアにも力を入れる。着工は強気も考えたが96万戸くらいにしておく。株価は経済成長率などから判断して25,000円くらい
パネルディスカッション後の懇親会
本末転倒 傲慢なのは賃貸会社社長のコラム氏ではないか 「住宅新報」の記事
先日、同じ団塊世代の先輩社員が「牧田さん、このコラムどうですか」と1月23日付「住宅新報」を読むよう促した。
それは、「不動産屋の独り言 賃貸現場の喜怒哀楽」というタイトルがついた、〝元官僚の傲慢さにあきれる 更新通知の度に訪問命令〟という見出しのコラムだった。以下、概略を紹介する。
このコラム氏が社長を務める会社の管理するマンションに元官僚が住んでいた。更新時になると「そちらから来なさいよ」と元官僚が言うのだという。
そして、コラム氏は想像をたくましくし、「このような横柄な態度は役人時代の習慣によるのだろう」と解釈し、「勤めていた頃はいつもふんぞり返り」「接待攻勢も受けていたことだろう」と言い切る。「特権階級意識を退職後まで持ち続ける役人は大嫌いである」と私憤をぶちまける。
さらにまた、保険会社の代理店社長の女性から「更新通知が届いたけれど、こちらは家賃を払っているのだからそちらから手続きをしに来なさいよ」と高圧的に言われたことがあり、その仕返しであるのか、敷金精算時に家主負担か入居者に請求すべきか迷うものはすべてその女性に請求したのだと恐ろしいことを平気で書く。
その一方で、「上から目線でものを言わず、せめて対等に接してくれれば言われなくても様々な便宜を図る」と、言外にこのコラム氏は優しいとほのめかす。
◇ ◆ ◇
賃貸には興味がない記者はこれを読んで特段の感想はなかった。「こういう人もいるんですかね」と返した。すると、先輩社員は「これは本末転倒ではないか。お客さんのところに出向くのが当たり前」と鋭い一発を放った。
「…ン」-この一言にやや大げさだが、まるで稲妻に打たれたような衝撃を受けた。鈍麻した記者の頭を揺さぶった。いっぺんに目が覚めた。「そう、仰る通り。訳が分からぬ礼金、更新料は徴収すべきではないというのが30年も昔からの私の主張」と口走っていた。
◇ ◆ ◇
コラム氏は自ら〝不動産屋〟とわざわざタイトルに付けるように、〝不動産屋〟には八百屋、床屋とはまた違った意味が込められていることを承知の上で書いているはずだ。ならばこれはもう威風堂々の増上慢、夜郎自大、うめぼれ屋だ。
「礼金」「更新料」などの時代遅れの商習慣にすがりつき、死守しようとするコラム氏のような賃貸管理会社が幅を利かせる限り、賃貸を脱出して分譲住宅を購入する人が後を絶たないという流れは不変だ。
空き家820万戸の半分以上、関東都市圏に限れば65%は賃貸という現実を業界関係者はどう考えるのか。
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私事だが、10数年前、埼玉の賃貸アパートに住む友人から相談を受けた。それまでの個人の管理業者からは「このご時世ですからね」と1カ月分の更新料は据え置きだったのが、その方が亡くなり別の管理会社に交代した後の更新時期に50%近い更新料の値上げを要求されたのだという。
直情径行が過ぎるのが欠点ではあるのだが、記者はその管理会社に赴き、「更新料の徴収は時代遅れの商習慣。やめるべきだし、値上げするしないは貸し主、借主双方が話し合って決めるべき。一方的な値上げ通告は納得できない」とねじ込んだ。
業者は「あなたのような方は初めて」と最初は拒否の姿勢を示したが、結局、据え置きにした。そのあと、礼金や更新料は徴収しないことと定めた東京ルールが施行された。(埼玉県はどうなっているのか知らない)
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賃貸借契約において「礼金(key money)」「更新料(renewal fee)」なる訳の分からない商習慣をやめよという記事はこれまでも書いてきた。中国や韓国には「礼金」「更新料」なる概念がそもそもない。「key money」やら「renewal fee」などと英語に訳したところで、通じるのか。そこで、賃貸管理に詳しい業界の方に聞いてみた。次のような返事が返ってきた。ほぼ全文を紹介する。
「礼金は日本でも首都圏だけだと思います。大阪は敷引きでいまでも数カ月分取っていると思われます。東京(都心部)はマーケットの状況に左右されるのが実情です。ここ数年は7割以上で礼金1カ月は取れている貸し手市場です。礼金2カ月で募集しているところもあります。一方、外国人エキスパッツ向けなど超高額帯は募集時に礼金はないのが一般的です。逆に、借り手市場の時は礼金なしにするキャンペーンが盛んに行われます。
よって、訳の分からない商習慣というのは言い過ぎだと思います。もともと住宅供給が少ない時代のお礼というのが由来です。今の『供給<需要』のマーケットは言ってみれば同じ状況です。そして結果的には市場で受け入れられているのが現実です。
礼金がない世の中になれば、借り手は借りやすくなります。借りやすくなれば、転居が増え、経済活動が活発になりますね(仲介、引っ越し、家具等の業者も潤います)。なので、立場的には礼金なしは賛成です。貸主業での考え方は真逆です。取れるものは取りたいということです。
次に更新料はなんとも言えないです。借り続けてもらえるのはどちらにもメリットありです。なのに借主側はなぜ更新料を払わなければならないのか…と思います。更新料を取るならその分で何かしらのリニューアルをするのが本来の筋だと思います。外国人はこの辺はしっかりしています。権利主張ですね。更新時の賃料増減やマーケット相場にも連動することがあるので、そもそも絶対ではないと思います。例えば更新料ナシになるなら更新しますと言う具合です」