RBA OFFICIAL
 

2.jpg
全体完成イメージ図(左)とD棟完成予想図

 三菱地所は4月17日、東京駅日本橋口前の10年プロジェクト「常盤橋街区再開発プロジェクト」の第一弾の新築工事となるD棟を着工した。

 同プロジェクトは東京駅周辺では最大となる3.1haの敷地に10年超の事業期間をかけて段階的に4棟のビル開発を進める計画で、D棟はその第一弾。地下と低層棟に下水ポンプ所を新設する。都心の重要なインフラとして1964年に日本ビル地下に合築して設けられた東京都下水道局銭瓶町ポンプ場に替わるもの。竣工後は東京都水道局の所有となる。

 D棟の着工を皮切りに今後2018年には高さ200m超のA棟、2023ルンには高さ約390mのB棟を着工する予定で、全体完成は2027年度。

 同社常盤橋開発部長・平井幹人氏は「1964年東京オリンピックのとき竣工した日本ビルは東洋一と言われた。あれから50年。ビルの老朽化が進み、地下の下水ポンプの更新が難しいと言われながら機能を止めることなくかつ将来の更新を見据えて段階的に整備していく。全体が完成する2027年には世界一の街区となるよう開発を進めていく。『常盤橋』の常盤は常に変わらぬ永久不変、不滅を意味する。東京の世界のシンボルとなるよう時代の変化に対応し進化させていく。テクノロジー、AIを駆使して最大限の価値を引き出す」と語った。

◇       ◆     ◇

 私事だが、弊社は本日4月17日、管理部門の一部を東京駅すぐの三菱地所の「丸の内北口ビル」に引越しした。皇居のたもとであり「常盤橋再開発」エリアとは目と鼻の先。日本一どころか世界一の街区になる一角に移ってそれにふさわしい恥じない記事が書けるのかいささか不安になってくるが、事務所はわたしが選んだわけでもない。

 あちらこちらから記事を打擲されて身もだえることになるかもしれないが、とにかく老骨に鞭打って体力が続く限り書こうと決意を新たにした。

 まさにこの日、第一弾の記事が「常盤橋」というのも何という僥倖か。しかも、〝世界一の街を目指す〟と宣言した平井氏は、同社野球部が黄金時代だった時の正捕手だ。話を聞きながらどこかで聞いた名前だし、見たこともあるような気がしていたが、まさかあの平井捕手が常盤橋担当部長だとは…。平井氏はまだまだ成長し続けているようで、一回り大きくなっていた。

 野球はもうとても無理だろう。これだけが残念。「写真を」とお願いしたら「ビジュアルは勘弁を」と断られた。こっそり撮るべきだったか。まあしかし、また撮る機会はあるはずだ。

image002.jpg1.jpg
ビフォー&アフター 縁切り工事を施し一方は解体し、他方はビルの機能を維持するという難工事の末、縦に真っ二つに切断された日本ビル(大成建設の技術)

カテゴリ: 2017年度

IMG_0375.jpg
最後のお別れをする会葬者(北区・清光寺で)

 3月13日早朝に急性心不全で亡くなった株式会社週刊住宅新聞社社長・長尾浩章氏(享年57歳)の同社と長尾家の合同葬が4月11日、北区・清光寺で行われた。喪主は故人の妻で新たに同社取締役社長に就任した長尾睦子氏。

 400名・社を超える芳名板が供えられた中、約650名の会葬者は境内からあふれ長蛇の列をなし、最後尾の人は待つこと約1時間30分。篠付く雨と気温10度の寒さに震えながら故人と最後のお別れを行った。

 長尾睦子氏は25歳で浩章氏と結婚してから家族との時間を大切にしたこと、宅建の資格を取得させられたこと、ゴルフは良きライバルとなるまでに上達したことなどを紹介したあと、「人の子として20年、人の親として20年、自分の人生としての20年を生きろと第三ステージを歩んでいるさなかの突然の別れとなってしまいましたが、主人の教えを守り、精進していく所存です」と謝辞を述べた。

 また、葬儀委員長で同社執行役員事業統括本部長・松本英雄氏は「かけがえのないトップを突然失い、失意のどん底に陥りました。しかし、後戻りはできません。社員一同、長尾社長の遺志を受け継ぎ、会社を一層発展させていく覚悟」と追悼の辞を語った。

 会葬者にはブランケット版の「週刊住宅」号外が配布され、長尾社長の経歴や睦子夫人、長男の思いなどのほか、急逝を悼む業界団体、日本専門新聞協会、不動産三田会から多くの追悼のコメントが紹介された。

IMG_0353.jpg IMG_0355.jpg
長蛇の列をなす会葬者

IMG_0356.jpg IMG_0365.jpg
芳名板

◇      ◆     ◇

「ノーサイドにしよう」  長尾社長との確執の14年間に終止符

 平成15年、事件は起きた。あの国立マンション問題の記事が原因で記者はそれまで20年間お世話になった「週刊住宅」を辞めることになった。

 明和地所のプランに対して国立市側が示した対案プランを「刑務所マンション」と主観的事実に基づいて切り捨てた。業界の利益を最優先し信念を貫いた。ところが、記事の一部が会社の事情と衝突した。しこりが残った。熾きになった。

 あれから14年。業界やデベロッパーの懇親会などで何度もお会いしたが、会釈を交わすのみで声をかけあうことは一度もなかった。お互い意地を張り続けた。お互い不器用だった。

 長尾社長の訃報を聞いたとき言葉を失った。「行くな書くな」「行け書け」この堂々巡りが振り子のように記者を激しく揺さぶった。最後は「行け書け」が勝った。「葬儀に行くことが遺族への礼儀。行って追悼文も書くべし」-あるデベロッパーの社長の一言が記者の背中を押した。

 書けば二人の確執に触れざるを得ない。あの時の長尾社長の決断の当否については分からない。長尾氏は慶応ボーイそのもの。とても温和な方だったが、自分が一度決めたことは絶対に譲らない頑固さもあった。だからこそ厳しい環境下で会社を切り盛りされてきたのだろう。

 二人が良好な関係だった時期もあった。感謝してもしきれないことがある。記者が妻を亡くし2人の小さい子どもを育てたときの約10年間、毎日30分から1時間遅刻したが、長尾社長と会社は黙認してくれた。そのお陰で現在の記者がある。

 同じ新聞の編集部員で、年齢が上だったことから何かと相談も受けた。一緒によく酒も飲んだ。一番印象に残っているのは結婚する時だった。「牧田さん、良家のお嬢さんなんですよね…私との釣り合いが…」と酒を飲みながら深刻そうな顔をしたので、「馬鹿だね、そんなこと関係ない。2人で決めること」と励ました。それが分かってくれたのか、結婚を決意された。その奥さんが長尾睦子氏だ。

 新社長に就任された睦子夫人は悲嘆に暮れ、悲しみに打ちひしがれるはず。慰める言葉もない。しかし、記者もそうだったように、仕事が気を紛らせてくれる。時間の経過とともに前向きになれる時が必ず来る。業界紙の環境は厳しいが、困難な道を切り開いてほしい。この日の多くの会葬者の後ろには数十倍の読者がいる。その読者に寄り添っていただきたい。

 祭壇の笑顔の長尾社長に「ノーサイドにしよう」と声を掛けた。長尾社長も頷いたような気がした。そこでもう一言発した。「長尾さん、わたしのロストボールはどこへ行った? 」「何言ってんですか、ほらここにあるじゃないですか」と、ポケットからボールを出すのをわたしは知らんぷりした。

 滂沱の涙を酒と一緒に飲み干した。

カテゴリ: 2017年度

1.jpg
#7 stories Fresh & Natural 

 三菱地所ホームは4月13日、7つのインテリアカラーによるライフスタイル別のブースと新築分譲マンションのモデルルームを一度に見学できる新たなコンセプトの「リフォームショールーム」を横浜・みなとみらいイベントスクエアに4月29日(土)にオープンする。

 みなとみらい地区の分譲マンション第一号「M.M.TOWERS」(3棟862戸)が竣工して14年が経過。このほか共同事業物件を含めエリア内に約4,500戸の三菱地所レジデンス供給物件があり、他社物件を含めると1万戸近くに上る中古マンションの買い替え・リフォーム需要を取り込むのが狙いとみられ、2013年に丸の内に開設した「三菱地所のレジデンス ラウンジ」とほぼ同じのコンセプトだ。開設前の13日、同社・加藤博文社長も出席して報道陣に公開された。

 「リフォームショールーム」は広さ約109㎡。ライフスタイル・ライフサイクルに応じた7つのインテリアカラーによる様々な生活シーン「#7 stories-至福の瞬間-」を連想させる提案を行うことで、来場者がより具体的なイメージを描きやすくしているのが特徴。本人だけでなく、家族みんながVR体験を楽しめる工夫もされている。

 もう一つの大きな特徴は、三菱地所レジデンスが分譲する新規マンションのモデルルームも見学できることになっており、最先端の設備仕様を確認することが可能なことだ。

 モデルルームに装備されている設備「EYE’S PLUS」、インテリアコーディネーターによる提案「カラースキーム」、広さで価格が決まる「定額制の安心システム」(70㎡で498万円)の3点セット「Re  Dia」を導入する。

 また、今回発表された「システム設計住宅」は、ZEH対応の全館空調「エアロテック」、耐震等級3、長期優良住宅対応の基本性能を備え、これまでのノウハウを生かし様々なライフスタイルにも対応する企画住宅。2階建て・平屋の「WIZE-H」、3階建ての「WIZE-U」に対応しており、2階建て27.55坪の標準モデルで価格は1,980万円から。

_78A1704.jpg _78A1727.jpg
Relax & Friendly(左)とCalm & Elegant

_78A1804.jpg M_y_21.jpg
Feminine & Healthy(左)とBright & Cheerful  

◇       ◆     ◇

 加藤社長ら関係者の話を聞きながら、いよいよ三菱地所グループが総力を挙げて他社の草刈り場になっているみなとみらいエリアの仲介・リフォーム需要を一挙に吸収しようという狙いが見て取れた。

 同社関係者によると、共同物件も含め「M.M.TOWERS」を筆頭に三菱地所レジデンスは約4,500戸のマンションを供給しており、「M.M.TOWERS」は竣工後17年を迎える。今後、新規マンションの予定はなくリフォーム需要は間違いなく拡大する。同時に仲介事業も強化する戦略なのだろう。

 70㎡で498万円(坪単価24万円)という3点セット「Re  Dia」も割安感がある。

 聞き忘れたが、マンション用の「エアロテック」の実施用実験はどこまで進んでいるのか。これが採用されるようになると大きな武器になるはずだ。

M_y_32.jpg _78A1798.jpg
Mature &Intelligent(左)と Creative & Artistic

カテゴリ: 2017年度

 IMG_0342.jpg
賞品を背景に落合氏(左)と原氏

 大京とフルタイムシステムは4月10日、社会問題になっている宅配便の再配達を減らし、居住者の利便性を高める新発想の各住戸専用宅配ボックス「ライオンズマイボックス」を共同開発し、メディア向けにお披露目会を行った。業界紙だけでなく一般紙やテレビ局など約40名の報道陣が集まり関心の高さをうかがわせた。

 「ライオンズマイボックス」は2016年のグッドデザイン賞を受賞した再配達ゼロを目指した取り組みで、「必ず受け取りたい、確実に届けたい」という居住者と宅配事業者双方の視点から利便性を飛躍的に向上させたマンション用宅配ボックス。

 宅配利用頻度やネット通販の標準的な荷物のサイズに応じた居住者ごとの宅配ボックスとメールボックスを一体化。異なる宅配事業者の荷物や複数の荷物を同時収納することができ、ゴルフバッグなどの大型荷物などを受け取れる共用ボックスも設置している。

 この日公開した住戸専用ボックスの大きさは幅30㎝×高さ36㎝(メールボックス12㎝含む)×奥行き45㎝。50戸程度のマンションの場合、幅5.85m、高さ1.8m、奥行き0.45mとなりエントランス部分に設置することを想定している。

 発表会に臨んだ大京・落合英治専務は「当社はこれまで約37.6万戸のマンションを供給し、約53万戸を管理する日本一の会社。〝日本のまちに、活力を。〟をスローガンに様々な不動産ソリューションで社会問題の解決とお客さまニーズの具現化に取り組んでいく」と語った。

 今年度竣工5物件、2018年度竣工10物件への導入を決めており、その後も順次導入する計画で、同社グループが管理するマンション他社が管理する管理組合へも提案していく。

 また、フルタイムシステム・原幸一郎社長は「当社分譲マンション宅配ボックスのパイオニアで、シェアは断トツの62.3%。全国宅配ロッカー登録者約150万人などのデータを持っているのが強み。付置義務化や補助金など国へも働きかけていく」と話した。

 近年のネットショッピングの普及やサービス拡大により、宅配個数は2010年度の32.2億個から2015年度には37.4億個に増加。また、単身世帯や共働き世帯の増加による再配達が社会問題となっており、国土交通省の調査によると、再配達による社会的損失はスギの木約1億7,400万本の年間CO2吸収量に相当し、不在配達に費やされる労働時間は年間9万人の労働力に相当するというデータもある。

IMG_0340.jpg
お披露目会場

◇       ◆     ◇

 報道陣の多さにびっくりした。「ライオンズマイボックス」を導入する第1号マンション「ライオンズライオンズ東綾瀬公園グランフォート」の記者見学会のときの倍くらいはあった。いかにわれわれメディアは刺身そのものより脇役のツマに興味を示すかを如実に示した。付和雷同、軽挙妄動、軽薄短小はわたしだけではない。いつもこれくらい記者が集まればマンションはもっと売れると思うがどうだろう。

  とはいえ、この取り組み・商品は間違いなく宅配事業者やマンション居住者の支持を得る。大ヒットする可能性も秘めていると思う。

 カギは付置義務化と補助金だ。落合専務は「駐車場の利用率はどんどん低下している。この付置義務の条件見直しと宅配ロッカーの付置義務化を進めてほしい」と話し、原社長も「補助金が出るよう運動していく」と語った。

IMG_0346.jpg

大京 「東綾瀬」で足立区初の全戸エネファーム搭載 全戸に宅配ボックスも(2017/3/17)

 

 

カテゴリ: 2017年度

営業企画友野.jpg
フージャースコーポレーション営業企画部長・友野珠江氏(41

 フージャースコーポレーション営業企画部長・友野珠江氏(41)に突撃インタビューを敢行した。当欄既報のつくばエクスプレス柏たなか駅圏の「トレジャーランドプロジェクト(デュオヒルズ・ザ・グラン)」(253戸)を取材したとき、その場で取材を申し込み即決してもらった。

 テーマは〝業界を元気づける〟。この沿線に限ったことではないが、いま郊外マンションは価格下げ圧力が強まる一方で、どこも青息吐息。死屍累々の惨状を呈している。

 「柏たなか」は例えていえば荒涼たる砂漠、はたまた北の果ての極寒の地だ。そんな不毛の地に正気の沙汰とは思えぬ大量253戸を同社は敢然と供給した。

 見学する前は絶望感が支配したが、モデルルームを見て、ひょっとしたらあのリーマン・ショックでV字回復を成し遂げた同社のノウハウ・販売力、友野氏の〝元気〟をもってすれば劣勢を一変させるのではないかという予感・希望が記者に芽生えた。

 同業の皆さん、以下の友野氏の〝元気〟を煎じて飲もうではないか。やればできる勇気が湧いてくるはずだ。「女性活躍」などという奥歯にものが挟まった、糖衣でくるんだ万金丹の類の話ではない。( )は記者。

沈滞ムードを吹き飛ばすか フージャースコーポ「柏たなか」(2017/3/17)

営業企画友野 (2).jpg

◇      ◆     ◇

 -まず「柏たなか」の商品企画から

 友野 わたし心配性でして(とてもそんなに見えない)。とにかく不安で、沿線の物件がばたばた倒れちゃう状況を見て聞いて、普通にやったら完売まで5年かかってしまう 、この危機感が商品企画と広告やチームのマインドに火をつけたというのが正直なところです。

 みんなで話し合ったんです。同じことやって、こっちが大成功あっちが大失敗になる確率って低いよねと。だから努めて前向きに対応し、今までにないものを作ろうと考えたんです。それがあの企画と販売事務所とモデルルームになったんです。

 つくば沿線は供給ラッシュで、駅ごとに大きな物件が2棟くらいあり、注目されていますが、「柏たなか」は誰も降りたことない(記者もそう)。最後のサンクチュアリみたいな取り残された駅。(利根)川を渡り一駅先はもう茨城。国境の街みたいなところ。でもポジティブに考えれば、最後の砦は〝ここは千葉県の入り口、つくばの最前線〟というポジショニングになる。これをしっか打ち出そうと。

 幸い、大京さんが何もなかった10年くらい前、駅前で素敵な「ライオンズ柏たなかステーションプラザ」(83戸、2009年竣工)を分譲されていて、とても参考になりました。ライフステージにあった方を呼べたんだろうと。

 この駅の最前席に立つということは、駅格とかエリア格になる先頭バッターになること。だから妥協せず、使命感を持って色付けしないといけないとずっと考えていました。

 この不安感と使命感とが交錯していたときです。チームの広告担当者に相澤という32歳の女性がいるんですが、その相澤に「柏たなかでやるから担当よろしくお願いします」と話したら「ありがとうございます!」と快諾してくれたんです。ああそうか、こっちは不安でいっぱいなのに、何も知らない彼女にとっては大きな仕事の役割をもらってデビューすることはそんなにうれしいことなんだと。その声を聞いて吹っ切れましたね。チーム全体が元気出ちゃった。

 -わたしが担当者だったら引けますね

 友野 そうですよね。なんで1万㎡も買っちゃったんだろうと。普通はひるみますよね。繰り返しになりますが、だから誰も見たことのないものを作ろうと。どこに対しても圧勝できるものにしようと。プレハブ(販売事務所)もそう、シアターもそう、模型もそう、モデルルームもそう。みんな初めて見るもので固めようと。これが一貫したテーマです。

 -真っ暗闇の演出、アニメのシアター、プロジェクトマッピングがよくできていました

 友野 暗闇の演出も相澤の提案です。いまのマンションギャラリーは何から何までみんな一緒。買ってください買ってください、うちが一番というものばかり。それってもうおなか一杯。今回のギャラリーは滞在型で長い時間いらっしゃっていただくのだから、最後は家族みんなで笑ってください、奥さん笑ってください、お父さんも笑ってくださいと。アニメにしたのも、「君の名は」もそうですが、アニメはもはやオタクだけのものではなく広く一般に理解度が深まっており、共感を呼びやすいですよね。

 -販売事務所やモデルルームに造花でなく生花を飾っていたのもよかった

 友野 みんな生花です。うちの〝神〟と呼ばれる営業マンは「販売センターは生きものだから必ず生きものを入れなさい。花を愛で、育てる気配りができる人間になりなさいと」と仰いました(記者は若いとき〝花を愛せる人になって〟と女性に捨てられた。立ち直るのに3年かかった)。ですから当社は基本的に生花を飾るようにしています。根を詰めて話しているとき、花や緑が目に入ることでお客さんはほっと一息つける。男性社員もきちんと水遣りするように教育も行き届いています。

IMG_0250.jpg

 -御社は社員の女性比率(40%)が高い会社として知られ、商品企画にも生かされているが

 友野 専有部分でものづくりをしっかりやっているところが減っています。最近はどこも女性チームを作っていますが、姉が妹へというように継続させるのが難しい。どうしてだろうと考えたんですが、事業部制にすると担当ごとに変わってしまう。商品企画のDNAが伝承されない。それと彼女たちには決裁権がないんですね。ここが問題ですね。

 弊社はフラットだから、わたしのようなうるさ型が「ここが削られるとうちらしさがなくなります」というと通ります。やったからにはきちんと営業マンがお客さんに伝えなきゃなりませんから、営業マンがセールスできるように教育しないといといけない。そのツールも大事です。

 -友野さんの入社以来のキャリアについて

 友野 営業企画が最初で広告宣伝をずっとやっていまして、その幅ががばっと広がった感じですね。ただのチラシ屋、看板屋では全くダメと気が付いて、商品企画とか販売戦略へと、川下から川上に上ってきました。パースを描くにしてもものを知っていないと美しいパースを描けないし、売り方についてもお客さんを知っていなければ販売戦略を立てられないのと一緒です。

 -2008年のリーマン・ショックの時はもうおしまいかと思いました。ところが2010年にV字回復。不死鳥のようによみがえった。この年の株価上昇率は342倍でした

 小池 わたしは2008年入社です。

 友野 彼女たちは不幸でしたね。その時の社員は3分の1に減っちゃった。

 リーマン・ショックのとき生き残れたのは、お客さんのことを語れて、お客さんに近い会社で販売力があり、正面から販売代理の事業主様にきちんと説明できたことが大きかったと思いますよ。あのとき助けていただいた事業主体には感謝しきれません。

 -わたしも大丈夫かと思いながら見学しました

 友野 「ザ・クイーンズガーデン稲毛」(稲毛バス16分、278戸)、「デュオヒルズつくば学園都市」(つくばバス10分、234戸)、「プレミアムフォレスト」(柏バス10分 、182戸)など4物件を中心に3カ月で2,000件の来場者集めろというミッションがあったんですが、あのときは本当に火事場の馬鹿力で集めて売りましたね。

 -女性活躍も大事だけど、男も含めて働き方を変えないと。本来、そんな言葉はなくさないといけない。御社には昇進、昇給などの男女差別は全くないですか

 友野 わたしは人事評価会議にも出ていますが、昇進、昇格での男女差別は全くないですね。

 子育てだろうが介護だろうが、男性でもそうするのが当たり前という風土があり、常態化しています。(保育園の送りなどで)9時半に出社してもだれも何も言わない。フラット、風通しがいいと情報が抜けるんですよね。廣岡社長も子育てに積極参加されているので社員も見習いやすい。

 乙部 小池 友野 女性の活躍についてメディアの方によく聞かれるですが、もともと活躍しているのにそういうこと言われると逆に違和感を覚えますね。

 男女平等というと、女性が男性に合わせるイメージが強い。メディアもそう取り上げる。しかし、それって違うんじゃないかと。バリバリでなく普通に働いているのに、それが新しいと言われるとそれも違和感ですよね。

 友野 マスコミに登場するいわゆるバリキャリ女性は〝わたしは当たり前にやってきた〟とおっしゃいますが、すごく歯を食いしばって言っているなと感じますね。絶対この方、以前の勝間和代さんみたいに死ぬほど働いているに違いないと。そういう部分って出ちゃいますよね。ある会社に勤めている知人の女性が上司の女性に怒られたとき〝わたしは出産をあきらめてここまで来たのよ〟と言われたそうです。えっ、女性同士そんなことまで言うのと驚いちゃいました。これは断ち切らないといけない。

 -わたしはインタビュー記事では年齢を入れるようにしています。二文字で済む。読者は自分より上なのか下なのか、その人の生きてきた時代背景も分かる。友野さん、どうです?

 友野 いいですよ。41歳です。〝性別も年齢も突破できれば生き残れる〟-これが私のテーマ。人徳を積めば性別も年齢も関係ないと思いますね。

IMG_0247.jpg

◇      ◆     ◇

 インタビューは、フージャースホールディングス広報・IR担当の乙部真理氏と小池彩子氏も参加して行った。女性が3人集まると姦しいとはよく言ったもので、記者が質問しなくても実によくしゃべる。言葉一つひとつが新鮮、吟醸酒を飲んでいるように気分がよかった。その場の雰囲気が伝わるように、記事は手を加えずなるべく話した通りに書いた。

 「女性活躍」なる言葉は、女性が活躍できていない性差を受けている社会だからこそ大きなテーマになっているのであって、本来的にはそのようなフレーズはあってはならないし、死滅させないといけない。

 今回、同社の友野氏にインタビューをお願いした目的は、比較的差別が少ない会社で、しかもマンションの心臓部ともいうべき商品企画部の部長をされているからであって、その企画はどうして生まれるのかを聞くためだ。〝男女の差別をなくせ〟などと大上段に構えて書くつもりは最初からなかった。

 結果は大成功。友野氏や乙部、小池氏から発せられる言葉は、経営者や役員、商品企画担当者、さらには女性の方にも五臓六腑にしみわたるはずだ。一語一句をかみしめていただきたい。

 メディアで取り上げられる女性活躍の〝見本〟のような人が「痛々しい」と彼女たちに映るのはなぜか、これは男も考えたほうがいい。記者も含めひょっとしたら男に都合のいい視点でしか女性を見ていないのではないか。〝出産をあきらめて頑張る〟-これは〝保育園落ちた。日本死ね〟と同じ。女性の置かれている立場を如実に現わしている。

 友野氏は「パースを描くにしろそのものを知っていないと描けない」と話した。これも真理だ。レオナルド・ダ・ヴィンチが絵画を描くために解剖学を学び、筋肉や腱、臓器まで克明にドローイングしたことはよく知られているが、ものを知るとはそのようなものだ。記者の経験でいえば、リッツ・カールトンの「クレド」は宿泊することで深く理解できたし、マンション管理員の仕事が「科学」であることも1日講習を取材したからわかったことだ。

 これは今回の取材と関係ないが、実に腹が立つ許せない事実について触れておく。ある東証一部上場会社の女性役員が忽然と消えたことだ。その前に男性役員が退任したときはきちんと有価証券報告書に記載していたのに、その女性役員が退任したときは全く記載されなかった。監査人は「知らなかった」と話した。記事にしようと思い原稿を書いたが直前でやめた。ご本人に迷惑を掛けたくなかったからだ。

 これはおまけ。記者の信条は〝人生は愛〟、モットーは〝記事はラブレター〟。好きな女性は〝みんな好き〟。友野さんのような業界の女性は男性よりはるかに仕事ができると確信している。他では、一番にしないと怒られるからかみさんだが、昔の人では平塚らいてうと市川房江。作家では野上弥生子、宮尾登美子、小池真理子、それと家父長制度の生け贄になった金子みすゞ。女優では吉永小百合さん。最近ではNHKキャスターの鈴木奈穂子さん。〝しっかり考えなさいと〟目で語るのが素敵だ。

IMG_0245.jpg
左から乙部、小池、友野の各氏

◇      ◆     ◇

 ここまで辛抱強く読んでくださったわが業界の良識人には良薬は口に苦しの記事にはなったはずだ。万金丹はわが故郷・伊勢の万能薬です。

 

 

カテゴリ: 2017年度

 野村不動産アーバンネットは4月6日、2017年4月1日時点の「住宅地価格動向」「中古マンション価格動向」調査結果をまとめ発表した。

 首都圏の住宅地価格・中古マンション価格ともに、1~3月期(四半期ベースでの比較)では全エリア平均の変動率は2013年7月調査以降、連続してプラスを維持した。

 住宅地の価格変動率は、首都圏エリア平均で0.2%(前回:0.3%)となった。全エリアで上昇率が低下したもののプラスを維持。「値上がり」地点と「値下がり」時点が減少し、「横ばい」地点が増加した。

 中古マンションの価格変動率は、首都圏エリア平均で0.1%(前回:0.3%)となり、エリア別の平均変動率は東京都下、神奈川県以外のエリアでプラスとなった。「値上がり」地点と「値下がり」地点が減少し、「横ばい」地点が増加した。

カテゴリ: 2017年度

1-2_WORKSTYLING八重洲.jpg
「WORKSTYLING八重洲」

 三井不動産は4月6日、新しい働き方の実現に貢献する「WORKSTYLINGプロジェクト」を立ち上げ、ワークスペースの様々な課題に対応する法人向け多拠点型シェアオフィス「WORKSTYLING」の提供を開始したと発表した。

 生産性の向上や多様な人材の活用(ダイバーシティ&インクルージョン)が求められる企業と、一方で企業ワーカーは長時間労働の是正が課題となる中、効率的でクリエイティブな仕事がこれまで以上に求められている企業ワーカーのニーズに応えるもので、同社が掲げる「その先の、オフィスへ」というステートメントを具現化した。開設に当たっては2,000人を超える企業ワーカーによる利用実績と500件を超えるヒアリングを実施した。

 「WORKSTYLING」契約法人は、すべての拠点を10分単位のタイムシェアで利用することが可能で、法人毎の総利用時間を月次で集計し請求する従量課金システムを採用する。専用のWEBアプリで利用者の入退館履歴、個室や会議室の利用状況を一元管理し、契約法人は社外で働く社員の勤怠管理を簡単に行うことができる。法人の承認をうけた個人のみが利用することでセキュリティを向上させ、受付にはコンシェルジュが常駐し高いセキュリティを確保する。

 ユーザーは、個室・会議室・オープンスペースなど多彩なスペースのほか、テレビ会議システムも利用可能。専用のWEBアプリにより全拠点の個室・会議室の検索・予約ができる。ディスプレイやキーボード・充電器などの貸出なども受けられる。

 施設は、記者発表会場となった汐留と八重洲、霞が関、新宿、大崎、品川、渋谷、池袋、横浜、船橋の10拠点を開設し、2017年度中に主要なエリアに約30カ所の拠点展開を目指す。施設の大きさは50坪~150坪、収容人数は40~150名。利用時間は平日の8:00~21:00。料金は10分間300円。

 主な契約法人は味の素、コクヨ、資生堂ジャパン、日建設計、日商エレクトロニクス、日本ユニシス、富士ゼロックスなど。同社も働き方変革の取り組みの一環として4 月から利用する。

5-3_TV会議システム付きの会議室.jpg
テレビ会議システム

6-1_1人用の個室(扉無し・セミクローズ).jpg
1人用個室

6-3_感覚を刺激するグッズが並ぶエリア.jpg
感覚を刺激するグッズ

6-6_ドリンク&リフレッシュメント.jpg
ドリンクリフレッシュコーナー

◇       ◆     ◇

 至れり尽くせりの施設だ。コーヒーは飲み放題。女性専用の個室もあり、大きな姿見があり、髪をセットする道具も置いてあった。

 何よりうれしいのは、2~4人くらいは入れる喫煙コーナーが設けられていたことだ。クリーンエア スカンジナビアが開発した製品で、三井不動産グループが販売代理店になっている。ドアを閉めなくても煙や臭いが外に出ないスグレモノだ。

 参考までに。同社は同じ喫煙コーナーを本社内にも設置しているそうだ。えらいのは、全てではないが大規模マンションの共用部分にきちんと喫煙室を設けていることだ。吸う人も吸わない人も気持ちいい空間を設置するのがデベロッパーの役割だ。取材後、同社の3名の名前をもとに名づけられた中河内いずみ著「場の力」(丸善プラネット、本体1,200円+税)をもらったが、これはいろいろ考えるヒントになる好著だ。

 10分間で300円という利用料金が高いか安いか。プロジェクト説明会に参加したメディア関係者の「ちょっと高い」という声もあれば、尊敬する先輩記者は「会社が払うのだから安い」とこともなげに言った(会社が払う料金も結局は労働によって賄われると記者は思うが)。まあ、みんながコスト意識を持って働けばいいということだ。

 記者もすぐ時給に換算した。時は金なり。1時間もあればかなり原稿は書ける。〝それくらい仕事しているぞ〟と答える自分と〝その分、給与から差し引くぞ〟という別の自分がいた。酒が飲めないのは残念。軽くたしなむ程度の酒は飲まない人より認知症にかかりにくいという研究もあるし、食欲をそそる効果も間違いなくある。適度の酒は脳を活性化させるとわたしは信じている。

 希望をいえばシャワールームだ。オフィスビルでシャワーが使えるようにならないかとずっと思っている。三菱地所は「大手町パークビルディング」でシャワー室を設置した。財務省には省内に職員用の浴室がある。シャワーブースは10人くらいだそうだ。

IMG_0324.jpg
「WORKSTYLING汐留」

IMG_0319.jpg IMG_0328.jpg
喫煙コーナー(左)とボルダリングコーナー

IMG_0329.jpg IMG_0330.jpg
ガチャガチャコーナー

 


 

 

 

カテゴリ: 2017年度

【デザインアーク】Transightモジュラーシステムのカーディーラー展開イメージ.jpg
「Transightモジュラーシステム(Transight MS)」

 大和ハウスグループのデザインアークは4月5日、新規事業プロジェクト「Transight(トランサイト)」第一弾商品「Transightモジュラーシステム(Transight MS)」を店舗やオフィス、教育施設、展示会などに向け販売開始したと発表した。

 「Transight」とは、様々な業種・業態との協業により、これまでにない空間ワクワクする体験・夢のあるビジネスを追及し、あらたな価値を生み出すことを目的に2013年に立ち上げた概念・共創プロジェクト。

 「Transight MS」は、このプロジェクトの基幹となるもので、業界初のPSE(電気用品安全法)に適合した組立式通電型モジュラーシステム。縦38㎝、横71㎝、奥行き45㎝を一つのモジュール単位で規格化・工業製品化されたアルミア材のフレームを差し込んでひねるだけで組立・分解・組換が可能。女性でも簡単に店舗や施設のレイアウトができる。フレームに内蔵された通電機能により電気電子製品、IoT機器、デジタルサイネージの搭載も可能。カラーバリエーションは白を基調に9色。価格は枠のみが57万円から、大型モニタ、ミラーガラス・引き出し付きが149万円から。初年度売り上げ1億円、2020年には30億円に伸ばすのが目標。

 同社常務取締役営業本部長・嶋田二郎氏は「時間とともに価値を高める、可変・拡張、オープンプラットホームの3つがキーワード。業界の枠を超えて様々なパートナーと組んで、空間デザインだけでなく働く環境、働き方などすべての景色を変える変幻自在のプロジェクト」と胸を張った。

 また、同社執行役員経営企画部長・山﨑洋一氏は「経営企画は拍車を掛けたりブレーキを掛けたりするのが仕事だが、わたしは推進役としてプロジェクトに携わってきた。個性とノウハウ、コストとの戦いもあったが、ワクワクする取り組みで、きらりと光るアイデアが実現した」と語った。

IMG_0306.jpg
鮮やかな「赤」(752-010)がいい

◇       ◆     ◇

 山崎氏も話したのだが、〝ワクワク〟してプレゼンを聞いていた。値段がやや高く一般家庭が利用するまでは時間がかかるが、無限の可能性を秘めているというのが直感だ。

 いま話題のセルロースナノファイバーなどと組み合わせれば、積み木やレゴのように住宅が組み立てられるのではないかと。外観もモンドリアンの絵画のようにできるはずだ。建設現場の足場や型枠にも応用できるかもしれない。

 この話を山崎氏にしたら、山崎氏は「おっしゃる通り。実はベトナムから住宅は作れないかという話を受けた」と明かした。職人がいなくても3D技術と組み合わせた家がつくれる時代がやってくるかもしれない。その時、大和ハウスは何を作るのか、考えるとワクワクするではないか。

IMG_0311.jpg
山崎氏

◇       ◆     ◇

 売上高が3兆4,600億円(平成29年3月期予想)もある会社が初年度売り上げ目標1億円の新商品の発表会を開くというのがいい。同社は広報活動にも力を入れており、グループ全体で2016年度は184件のニュースの類を発表している。おそらく住宅・不動産業界では断トツのはずだ。売り上げが大きいから当然という声もあるかもしれないが、売上げが1兆円もあるのに法律で決められた決算数字くらいしか発表しない会社もわが業界にはある。

 嶋田氏と山崎氏のプレゼンがまたよかった。山崎氏はシステムを構築した経緯について「40歳代の5人が集まって、建築でも家具でもない自分で使いたいと思う概念として考えだし、具体的な形にした」と話し、商品化までこぎつけた大きな利用として「時間とお金を確保したこと、うまくいっていないことを相談すること」と語った。

 なるほどと思った。そこでもう少し具体的に話してほしいと質問した。山崎氏は「商品化には4年間かかったが、基本的には3年間で商品化すること、5年間で黒字にすることが条件だった。社長(島正登氏)が大和ハウスの商品開発出身で理解があった。社長との距離も近く口頭で相談することでコミュニケーションが図れた。書類にするとさし障りが出てくるものや説明しきれないことも伝えられた。相談とは応援・支援をしてもらうもの」と説明した。

 いわゆる「報連相(報告・連絡・相談)」は、耳が痛くなるほど会社員は聞かされているが、なかなかこれが機能しない。売上げが5.6兆円、グループ従業員が18.7万人のあの東芝グループのスローガンは「人と、地球の、明日のために。」だ。〝光る東芝〟はどこからおかしくなったのか、高邁な哲学をないがしろにしたのは誰か、報連相はどこにいったのか。

IMG_0310.jpg
嶋田氏

大和ハウス 軽量で組み立て自在 「Transight(トランサイト)」発表(2016/2/22)

 

 

 

 

カテゴリ: 2017年度

IMG_0296.jpg

IMG_0283.jpg
清水寺の「音羽の滝」をコンセプトにした〝ツリーシャワー〟のサクラ(小野寺衆氏の作品)

 大和ハウスグループのデザインアークの新商品「Transight(トランサイト)モジュラーシステム」を取材するために出かけたのだが、取材会場の六本木のビルは鍵がかかっていた。案内状を見たら日にちは4月5日だ。あっ1日間違えた。

 しかし、ただでは起きないのが記者だ。東京ミッドタウンの春爛漫をお届けする。

IMG_0287.jpg
建築中の「パークコート赤坂檜町ザ タワー」

IMG_0301.jpg

IMG_0298.jpg
話題のマンションももうすぐ完成

IMG_0290.jpg

IMG_0304.jpg
「GALLERIA」

カテゴリ: 2017年度

IMG_0198.jpg
「変わる暮らしと住まいのかたち」シンポジウム(すまい・るホール)

 アキュラホーム、ジャーブネット、住宅金融支援機構、都市住宅学会が後援する「住みごこち・住みごたえ・住みこなし推進研究会(3住研究会)」(委員長:高田光雄・京都大学大学院教授、4月1日からは京都大学名誉教授・京都美術工芸大学教授)が3月29日、第3回シンポジウム「変わる暮らしと住まいのかたち」を開いた。

 同研究会は平成26年6月に発足し、27年に「変わる家族と住まい」、28年は「変わる女性と住まい」をテーマにそれぞれシンポジウムを行っており、今回が最終回。

 高田氏は基調講演の中で、戦後の3つの失敗として「伝統木造」を捨てたこと、寸法からメートル法に変えたこと、京間モジュールを江戸間に変えたことを上げた。また、これからの街づくり・家づくりは入れ子思想を取り込み、多様なシナリオを描き、漸次的な意思決定を行い、選択肢を多くするシナリオ・アプローチが重要と述べた。

 その後、研究会メンバーの大久保恭子・風代表取締役、園田眞理子・明治大学教授、野間光輪子・日本ぐらし代表取締役、檜谷美恵子・京都府立大学大学院教授、山本理奈・東京大学大学院助教がそれぞれの研究成果をもとに変容する暮らしとこれからの住まいについて議論した。

IMG_0209.jpg

IMG_0205.jpg
高田氏

IMG_0206.jpg IMG_0224.jpg IMG_0225.jpg IMG_0221.jpg
左から大久保、野間、檜谷、山本の各氏

◇       ◆     ◇

 高田氏の「入れ子」「シナリオ・アプローチ」も興味深かったが、面白かったのは園田氏の話だった。いきなり「シンギュラリティ」(人工知能が人類の知能を超える転換点)などという難しい話を持ち出し、「わたしはペシミスト、悲観論者。いつも明るい伊藤さん(圭子氏、アキュラホーム住生活研究所所長)のように楽観的な未来を描けない。3.11がトラウマになっている」と本音とも冗談とも取れる言葉を発し、持論を展開した。

 耳目を集めたのは、人口・世帯減少、産業構造の変化、エネルギー転換の3つの深層問題を串刺しできる解答として提示した「ご当地資本・主義」だ。その具体的事例として「Shre金沢」「高森のいえ」を紹介した。

 「ご当地資本・主義」は園田氏の造語で、2013年に発売され大ヒットした「里山資本主義 日本経済は『安心の原理』で動く」(角川書店、藻谷浩介/NHK広島取材班)を連想させる瑞々しさがある。

 これを「サブシステム」として機能させるというのは「里山資本主義」と同じだが、ご当地の様々な資本を駆使してという意味の「・」(ナカグロ)がミソだ。

 「家守り×まち守り=〝むら〟の時代」という概念も説得力がある。高田氏から「コミュニティではだめなのか、まち(街)ではいけないのか」という問いに園田氏は「コミュニティという言葉は使いたくなかった。やはり〝むらむら〟という言葉もあるように『むら』にこだわった」と話した。

 「コミュニティ」でなく「むら」にこだわるのは記者もよく理解できる。10年前だが、「『コミュニティ』なる文言には記者は違和感を覚える。どうして外来語を使わなければならないのか。わが国では古くから町内会、隣組(戦前には大政翼賛団体になったのでこれは不可)があり、寄り合いなどがあり、『講』もあった。緩やかだが解けないという意味を込めて『もやい講』などもいいのではないか」(危機に瀕するコミュニティ デベロッパーにも責任の一端)と書いた。

 「むら」は行政単位「村」のイメージとの兼ね合いもあり、「コミュニティ」に変わる概念として使用されるには時間もかかりそうだが、普及してほしいと思う。

 平成23年の紀伊半島大水害で大きな被害を受けた奈良県・十津川村の復興再生プロジェクト「高森のいえ」がまたいい。映し出された画像がとても美しかった。

 「高森のいえ」は園田氏がプロジェクト推進委員長を務め、村の中心部にある特別養護老人ホーム「高森の郷」に隣接して建設されたもので、「高齢者向け住宅棟(単身及び二人世帯用)」、「一般向け住宅棟(子育て世帯用)」、「ふれあい交流センター棟」で構成されている。イベントなどが行われるセンター広場も整備されている。建築物は構造材、板材及び造作材(全て10齢級程度の杉・桧の間伐材)を使用し、約95%が「十津川産材」となっている。

 プロジェクトには日本建築士会連合会会長を務める三井所清典氏(アルセッド建築研究所)も参画しており、三井所氏は「山古志村の復興住宅の経験が生きた。造成費がとても安く済んだ」と話した。これまでにない「むら」のモデルになる可能性を秘めている。

IMG_0202.jpg
園田氏

image002.jpg
「高森のいえ」(資料提供:園田眞理子氏)

以下は十津川村提供

02.全景(南面)_PANO_20170318_144204.jpg
全景

04.全景(南面)_IMG_20170318_143938.jpg
全景

04.全景(北面)_PANO_20170318_140407.jpg
全景

06.全景(西面)_IMG_20170318_124610.jpg
全景

11.高齢者向け住宅(1号棟:北面)_IMG_20170318_130133.jpg
高齢者向け住宅

42.高齢者向け住宅4号棟(南面)_IMG_20170318_125024.jpg
高齢者向け住宅

51.一般向け住宅(北面)_IMG_20170318_124923.jpg
一般向け住宅

63.ふれあい交流センター(西面)_IMG_20170318_125617.jpg
ふれあい交流センター

82.住宅棟中庭_IMG_20170318_125603.jpg
住宅棟中庭

72.センター広場_IMG_20170318_143013.jpg
センター広場

なぜ京都の高齢者は美しいか 3住研究会で野間光輪子氏が語る(2015/4/1)

アキュラホーム 高田・京大教授以外の5人全て女性の研究所設立(2014/7/3)

日本一の高齢化変化率迎える「埼玉」に立ち向かえ(2012/11/5)

限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地 人口4割減(2012/7/27)

カテゴリ: 2017年度
 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン