女子大近接する高台一等地 大成有楽不 学生賃貸「文京護国寺」満室稼働へ
「テラスカレッジ文京護国寺」
大成有楽不動産は2月26日、同社3物件目となる学生向け賃貸マンション「テラスカレッジ文京護国寺」が竣工したのに伴う関係者向け内覧会を開催した。駅から徒歩6分の低中層の住宅街の一角に位置し、周辺には日本女子大、お茶の水女子大などの大学が集まっている好立地が評価されたのか、全137室の99%に申し込みが入っている。
物件は、東京メトロ有楽町線護国寺駅から徒歩6分、文京区目白台2丁目に位置する敷地面積約1,644㎡、5階建て延床面積約3,288㎡の全137室。賃貸面積は16.86~24.73㎡、賃料は7.55万~9.25万円、食費は29,700円/月、管理費22.2万円(月払い可、1.9万/月)。稼働率は申し込みベースで約99%。女性専用が1フロア。
「テラスカレッジ文京護国寺」現地
ラウンジ
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護国寺駅周辺にはカフェや飲食店が少ないのは課題だが、現地は閑静な低中層の住宅街の一角で、分譲マンションなら坪800万円、戸建てなら2~3億円はするはずだ。日本女子大は徒歩圏のはずで、稼働率が99%というのも納得できる(親の負担を考えると複雑だが)。
ただ、居室内にはバスユニットが全て揃っているのは立派だと思ったが、調理器具はなかったのはどうかと思う。記者は北向き3畳間に間借りしたことがあるが、今の学生さんのニーズは何なのか。居室で米を炊き、料理することはないのか(記者は玄米にはまり、圧力鍋で米を炊き、骨まで食べられる魚料理をたくさんつくった。女性を泊めても大家は〝この前の女性と違いましたね〟などと嫌味を言うだけで黙認した。もちろん酒もたばこも可だった)。
それともう一つ。洗濯機置き場、ユニットバスは必要か。洗濯はコインランドリーで十分だ。風呂嫌いの記者は今はシャワーしか使わない(風呂掃除をかみさんに任すのは気の毒)。シャワー室だけにすれば賃貸面積を削れるし、その分、洗面スペースや本棚などの収納に使えるではないか。光熱費、水道代の節約にもなる。
食費は安いと思う。1日2食として1日1,000円。酒は飲めるのか、聞き忘れた。
一人暮らし環境を劇的に変える野村不「コリビング賃貸」第一弾「品川中延」(2025/2/19)
RCと木造の住み心地比較を東急不&三井ホーム混構造学生マンション「生田」(2024/3/24)
関西初の木造マンション「MOCXION(モクシオン)」完成三井ホーム(2023/2/16)
レンタブル比67%わが国初の社会人・学生・賃貸の複合長谷工「コムレジ赤羽」(2022/3/2)
東急不学生マンション第二弾「赤羽志茂」完成利回り8%超か年間1000戸へ(2019/2/28)
伊藤忠都市学生マンション第1弾「武蔵小杉」好調スタート〝至れり尽くせり〟(2017/3/21)
徒歩10圏内で9駅13路線が利用可能 パークビュー売り 積水ハウス「御徒町公園」
「グランドメゾン御徒町公園」
積水ハウスが分譲中のマンション「グランドメゾン御徒町公園」を見学した。徒歩2分の日比谷線仲御徒町駅を含め徒歩10分圏に9駅があるアクセスの良さに加え、販売対象34戸のうち22戸が公園に面している〝パークビュー〟が売り。周辺相場と比べ高額にもかかわらず、第1期で供給した23戸は申し込み完売。残りは未供給の6戸。極めて好調なスタートを切った。
物件は、東京メトロ日比谷線仲御徒町駅から徒歩2分(他に徒歩10分圏内に8駅)、台東区台東4丁目の商業地域(建ぺい率80%、容積率643%)に位置する14階建て49戸(事業協力者15戸含む)。4月12日から販売する第2期(4戸)の価格は9,990万~15,590万円、専有面積は45.03~62.17㎡。竣工予定は2026年7月下旬。設計・監理はIAO プランニング&デザイン。施工は松尾工務店。
敷地は東・南・西の三方に接道。販売対象34戸のうち22戸が、東側に位置する御徒町公園に面している。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M Oriented、長期優良住宅認定、二重床・二重天井、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、食洗機、フィオレストーンキッチン・洗面天板、アラウーノ、ミストサウナ、メーターモジュール廊下、オリジナルドア建具、外開き扉のセットバックなど。
物件責任者の奥村氏は、「今回はパークビューが特徴で、公園に面した住戸はガラス窓面を大きくしたのが高い評価を得ています」と語った。
イメージ
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モデルルームがある「グランドメゾンギャラリー新宿」は3年前に新宿マインズタワー21階に開設したもの。
ギャラリーラウンジに入った途端、自然と同化したような、心の汚れが全て洗い流されたような不思議な感覚にとらわれた。広さは30坪くらいか。正面の床に白い小石と自然石を配し、その上部の縦格子がアトランダムに配されたスクリーンには刻々と変化する自然の情景が映し出された。映像は2度と同じものが流れないよう工夫されているとのことだった(日本財団の「THE TOKYO TOILET 広尾東公園トイレ」と同じ)。その奥の受付カウンターは全面ナグリ仕上げ。壁際には見事な松の枯れ盆栽。
ネットで調べたら、設計は三井デザインテックだった。三井デザインテックの本社にも見見事なナグリ仕上げの両開きドアがある。
これほど素晴らしいギャラリーを見たことがあるか考えた。すぐ思い出したのは、有楽町にある伊藤忠都市開発の「ギャラリークレヴィア有楽町イトシア」だが、例えていえば「有楽町」は外資系のラグジュアリーホテルラウンジで、今回の「新宿」は和風ホテル。(積水ハウスのギャラリーの1階下は伊藤忠都市開発の「ギャラリークレヴィア新宿」というのもまた面白い)
「グランドメゾンギャラリー新宿」
スクリーン
ナグリ仕上げのカウンター
松の枯れ盆栽
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住戸プランは、公園に面した55~70㎡台はもちろんだが、南西角の45~53㎡台の間口が7.4~8.3mのプランがとてもいい。人気になるのもよく理解できる。廊下幅を確保し、なおかつ面積を狭くし、居住性を高めている。
モデルルームの同社オリジナルドア木製建具について。記者はドアを閉めたときの音をランク付けしている。最悪は「バタン・ガタン」。使い古されたドアがこれだ。次は「ガチャン」、その次は「ガチャ」。これが一般的だ。最上位はイタリア製だ。「カチッ」と閉まる。わが国の室内ドアメーカーの製品にはまずないはずだ。
同社のオリジナルドアはどうか。リビングドアの見付は50ミリ、経年によるそり・歪みを防ぐため内部に金物が入っており、戸当たりはゴムではなくモヘア。重さは30キロ。締めてみた。「カチッ」ではなかった(同社広報担当者がそう表現した。記者ではない)。
同社も含めて国内ドアメーカーには「カチッ」と閉まるドアを開発してほしい(あったら失礼)。わが国の年間住宅着工戸数は約80万戸で、建築物着工件数は477,766棟(令和6年)もある。「カチッ」を開発したらゆるぎないドアトップメーカーの地位を築くのではないか。
御徒町公園
現地
基本性能・設備仕様レベル高い販売好調に納得大成有楽不「秋葉原」(2025/2/4)
日本財団「THE TOKYO TOILET」13か所目後智仁氏のトイレは植栽にも注目(2022/7/23)
眺望抜群坪単価500万円超でも人気か積水ハウス初のコンパクト「浅草花川戸」(2021/10/6)
2か所に花粉対策施したポラス「花小金井」 涙が出るほどうれしくなり、鼻水も止まる
「ルピアコート花小金井」
ポラス中央住宅が3月中旬に分譲するマンション「ルピアコート花小金井」モデルルームを見学した。駅からの徒歩11分のうちほとんどが美しい緑道を利用できる立地と、ピアキッチン付き(44戸のうち41戸)、業界初の花粉対策を2か所に採用しているのが特徴。その良さを訴え切れるかどうかが早期完売のカギを握るとみた。
物件は、西武新宿線花小金井駅から徒歩11分、小平市花小金井六丁目の第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する5階建て全44戸。専有面積は62.81~95.73㎡、価格は未定だが坪単価は340万円になる模様。竣工予定は2026年2月中旬。売主は同社のほか三信住建。設計はアム・ザイン一級建築士事務所。施工はオープンハウス・アーキテクト。販売代理は東京中央建物。
現地は、駅から徒歩11分のうち、ほとんどは通勤・通学に利用されている「小平グリーンロード」を利用できるのがポイント。建物は2棟構成で、標準階11戸のうち南西向きが6戸、南東向きが1戸、東向きが4戸。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M Oriented、「おかえりシャワー」「窓マスク」、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、食洗機、収納・無垢材ダイニングテーブル付きピアキッチン(44戸のうち41戸)、「変身クローク」「FUTON収納」「まもるんドア」「タオル掛け2か所」「バルコニー水栓」など。
商品企画担当の同社マインドスクェア事業部 マンションDv営業企画課営業企画係リーダー・西牟田奈津子氏は「当社のマンションは、ピアキッチン付きで、角・妻住戸だけでなく中住戸も風が通るプランに高い支持を頂いている。今回は、国民の3人に1人の割合で発症するという花粉対策として、エントランスに花粉など80%以上防げる『おかえりシャワー』を設置し、さらに、花粉が気になる季節でも風通しができる『窓マスク』を設けた。いずれも当社オリジナル」と語った。
昨年11月から物件ホームページを立ち上げ、これまでの反響数は350件、2月8日にオープンしたモデルルーム来場者は50件。
「おかえりシャワー」(左)と「窓マスク」
模型
「まもるんドア」
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同社はこの花粉対策を施した物件について2月4日付でリリースしている。記者は、いまさら花粉対策もないと判断してスルーし、逆にモデルルーム見学会を提案した。
この日(2月19日)見学会が実現したわけだが、冒頭の西牟田氏の説明は半信半疑で聞いていた。発症の原因とされるスギ花粉などの飛来を防止するのは難しく、森林・林業をないがしろにしてきた罰が当たったのだと記者は考えているからだ。山林の中で生まれ育ち、花粉まみれの生活をしてきた記者は花粉症の症状は全くない。免疫ができているのだと思う。
「おかえりシャワー」はそれなりに効果があるのだろう。スイッチを押すと風速30m/sの暖かい風が10秒間天井から吹き出し、風の力で花粉やPM2.5なとの有害物質を落とすことができるというものだ。何度も浴びるのも可能だ。禿げ頭の人はともかく、紙のセットは乱れる。
似たような花粉対策マンションを取材しているので、この段階でも高をくくっていた。驚いたのは、西牟田氏が「皆さん、花粉症の人は手を挙げてください」と呼び掛けたところ、記者を除く13人のうち何と7人が手を挙げたことだ。半数以上だ。症状は〝鼻水が出る、鼻が詰まる〟〝目がかゆい、痛い〟〝くしゃみがする〟などだ。
モデルルームの「窓マスク」は心底驚いた。初めて見るものだった。花粉対策だけでなく、好きな時に風を取り込むことが出来るスグレモノだと思った。同業の記者の方々はさながら首相のぶら下がり取材のように西牟田氏に殺到した。
この様子を冷ややかに眺めていた小生は、「記者の方々はポラスのサクラじゃないの」と口走ったら、そばにいた同社広報担当は「サクラじゃありません。スギ(花粉)ですよ」とやり返してきた。一瞬、鼻ではなく息が詰まり、かゆいところに目が届く同社の取り組みに涙が出るほどうれしくなった。したたり落ちていた鼻水(寒さのせい)も止まった。
だが、しかし、記者の皆さん、注目すべきなのはバージョンアップしたピアキッチンだ。ヨーロピアンウォーク材の無垢のカウンターは80万円はするし、バックカウンターはこれまでの1200mmから1800mmに広げられている。そこには炊飯器、トースター、ロースター、ケトル…なんでも置けるというものだ。全部で百数十万円はするはずだ。これを標準祖エビしているマンションデベロッパーは皆無だ。ピアキッチン付きでない3住戸はほかにもたくさん魅力がるプランだ。
「東京こどもすくすく住宅の設計認定」を受けている「まもるんドア」には絶句した。室内を締めきり、換気扇を使用すると負圧状態になり、突然玄関ドアなどをあけると、開けっ放しのドアなどが締まることがあるのだそうだ。よちよち歩きの子どもがドアの隙間に手が挟まれた事故もあるという。「まもるんドア」はそんな事故を防ぐ効果があるという。実用新案を申請したとか。
このほか、この物件は、浴室・玄関下足入れ窓付き、ソフトクローズ機能付きリビングドア、プッシュプルドア(けが防止にもなる)などたくさん魅力がある。
問題は価格だろう。記者は坪単価300万円なら申し込みが殺到すると考えていたが、やはりそんなに安くはならない。郊外部でも「300万円の壁」は突破された。「取得限界の壁」との綱引きが始まった。
同社マンションディビジョン部長・中島教介氏は、記者がこの前書いた「18坪の3LDK」の記事を意識されたか、「当社は3LDKは70㎡以上が基本。よほどのことがない限り、70㎡以下の3LDKをつくらない」と語った。その言や良し。同社は貴重なデベロッパーだ。
ピアキッチン
2か所タオル掛け(左)と本物の観葉植物(皆さんは軽視するが、記者は一つひとつチェックする。コストカット対策としてタオル掛けをなくすデベロッパーは結構あるし、観葉植物はフェイクだらけ。購入者はフェイクの植物越しに食事をし、会話を交わすことがあるだろうか)
柏駅圏最大389戸 18坪(62㎡)の新型3LDKに注目総合地所「ルネ柏ディアパーク」(2025/(2/16)
駅東側10分、70㎡以上では8年ぶりポラス「大宮」坪単価400万円に挑戦(2024/4/5)
郊外部も坪300万円の時代へ予算額との隔たりどう埋めるか 総合地所「花小金井」(2023/10/25)
「ライオンズ関町北グランヒルズ」で見た第4世代の大京パッシブデザイン(2016/6/29)
一人暮らし環境を劇的に変える 野村不「コリビング賃貸」第一弾「品川中延」
「TOMORE(トモア)品川中延」
野村不動産は2月18日、コミュニティ運営付き大型賃貸レジデンス「コリビング賃貸レジデンス」の第一弾「TOMORE(トモア)品川中延」が竣工したのに伴うメディア向け内覧会を行い、2月22日から現地内覧会を開催し、3月から入居を開始すると発表した。
「コリビング賃貸レジデンス」は、同社の社内起業第一号案件。都内のシングル向け賃貸住宅はこの10年間で家賃は22%上昇しているにもかかわらず、20~30代の賃金上昇率は10%にとどまり、20年超の築古が71%、30人未満の小規模が95%を占めていることに着目。20~30代の社会人単身者の〝ひとり暮らし環境〟のアップデートを目指すもの。
専用面積は、シャワールーム、トイレ・洗面台を備えた12~15㎡に抑える一方で、約90㎡のコワーキングスペース、約100㎡のコリビングスペース、シェアランドリーなどの共用部を充実させているのが特徴。
1階の24時間稼働の約100㎡コワーキングスペースでは、専属運営スタッフ 「コミュニティオーガナイザー」がコミュニティ運営を行い、利用者の「居心地づくり」「交流づくり」「活動づくり」を通じ、緩やかで活発なコミュニティ形成を育む。
7階のルーフバルコニー付き約95㎡の「コリビングスペース」では、キッチンで料理をつくり、ダイニングで隣人と一緒に食卓を囲み、ソファで気ままに過ごしたりするなど様々なシーンに合った心地よい空間をデザインしている。
シェアランドリーでは、パナソニック製のドラム式洗濯乾燥機を全15台(女性専用6台、男女兼用9台)設置し、洗濯機の利用状況がアプリから確認でき、待ち時間のストレスなく利用できるランドリーサービス 「LAUNDROOM」を初導入する。
また、初期費用のうち 「仲介手数料・敷金・礼金0円」(一部条件あり)とするほか、2025年3月末までの入居申込者を対象に「1ヵ月フリーレント」の「新規入居キャンペーン」 を開催する。
2月18日現在の内覧会予約は200件超で、男女割合は女性56%、男性42%、年齢割合は20代36%、30代44%、属性は会社員が78%、居住割合はシェア型住宅が40%で、60%は一般住宅など。
内覧会に臨んだ同社住宅事業本部賃貸・シニア事業部賃貸住宅事業二課長・黒田翔太氏(36)は「現在の一人暮らしの住環境は家賃が高い、築古が多い、設備が古い、規模が小さい、(シェアハウスは)水回りがない、初期費用が高いなどハードルが高い。これらを一挙に解決するのが『コリビング賃貸』。内覧会申込者は想定した通り。これまで検討しなかった層の潜在的なニーズを開拓できている」と語った。
世界のコリビング市場規模は2022年に132億万米ドルに達し、2028年までに638 億百万米ドルに達すると予想されている。
物件は、都営浅草線中延駅から徒歩1分(東急大井町線中延駅から徒歩4分)、品川区豊町6丁目の商業地域に位置する敷地面積約577㎡、建築面積335㎡、11階建て延床面積約2,424㎡全135戸、専用面積12.00~15.01㎡(居室設備 Wi-Fi・シャワールーム・独立洗面台・トイレ、一部家具付き住戸、バスタブ付き住戸あり)。月額賃料は90,000~、共益費は15,000円、水道光熱費は13,750円。入居開始は2025年3月(予定)。設計はフォルム建築計画研究所、施工は野村建設工業。デザイン監修はUDS。
コワーキングスペース
コリビングスペース
居室
シェアランドリーイメージ図
◇ ◆ ◇
同社が昨年11月に行った事業説明会での黒田氏のプレゼンを聞いて〝これはいける〟と直感したのだが、この日の黒田氏の話を聞き、商品企画の狙いがズバリ的中したことを改めて確認した。
それは、200件超の現地内覧会希望者の属性にはっきり表れている。男女比、年齢割合もさることながら、現居住形態はシェアハウスが40%で、他は1R・1K(27%)、1LDK以上(11%)、実家(17%)、その他(5%)と多数を占めたことだ。新規需要を掘り起こしたことを証明している。
これまでにないタイプなので、検討者がどう判断するかだが、1階のコワーキングスペース、7階のコリビンズスペースがとてもいい。1階は明るく温かい雰囲気を、7階はリラックスできる空間をそれぞれ演出している。観葉植物はすべて本物で、付け梁、家具・調度品なども本物の木を多用するなど質も高い。
もう一つ、この事業の成否のカギを握るのは、入居者同士を緩やかにつなげコミュニティを育むソフトサービスだと思う。その意味でコミュニティオーガナイザーの役割は大きいし、「COMMUNITY LUNCH」「HOME PARTY」「TOMORE TALK」などの「交流体験」を育む運営が重要になる。
この日(18日)、コミュニティオーガナイザーのミライ インスティチュート・田中三浪氏(ビジネスネーム)に浅煎りコーヒーのサービスを受けたのだが、小生は「私は深煎りが好き。蒸らしは30秒」と話したら、田中氏は「これも30秒」と返した。こんな一言二言が、お互いを認め合い、仲良くなるきっかけになる。
さらにもう一つ。バイリンガルだ。これからは外国語を話せないと生きていけない。外国語を習得できるサービスがあっていい。
ハード面では、敷地面積や建築面積、延床面積からして、コワーキング・コリビングスペース、シェアランドリーなどの共用施設を充実させながら、階段は容積に算入されない外階段にするなどレンタブル比率を高くしている工夫がなされていたのに注目した。
黒田氏(手前の花は本物)
田中氏
タオル掛け付きシャワールーム(左)とバス付き
本物の花
現地
1階エントランス
社内起業第一号 シェア型賃貸×コワーキング「TOMORE(トモア)」開発 野村不(2024/11/13)
CLTの断熱性能の高さ実感 大東建託 賃貸住宅第三弾「Forterb(フォルターブ)Ⅲ」
「Forterb(フォルターブ)Ⅲ」
大東建託は2月18日、CLT賃貸住宅の第三弾「Forterb(フォルターブ)Ⅲ」の1号棟の完成現場見学会を開催した。京王線つつじケ丘駅圏の調布市に完成した3階建て全12戸。賃料はエリアのRC造と同等価格で満室稼働。外気温は6~7℃だったにも拘わらず、26℃設定のエアコン1台で居室内は温かく、CLTの断熱性能の高さを実感した。
物件は、京王線つつじヶ丘駅から徒歩10分、調布市西つつじヶ丘4丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する敷地面積776㎡、準耐火CLT工法構造木造3階建て。住戸は12戸、専用面積は40.45㎡。賃料は13.9~14.5㎡。省エネ性能はZEH-M Oriented。満室稼働。
壁に60mmの燃えしろ層を設け、1時間準耐火構造を採用し、共用廊下の天井と居室内の一部天井と壁にCLTの現しを設置したのが特徴。木材使用料は207㎥で、うちCLTは122㎥、、国産材が172㎥。。木材全体の炭素貯蔵効果は一般家庭37世帯分の年間CO2排出量に相当する。CLTの木材は岡山県産材。
同社は2019年9月に国内初となるオリジナルCLT工法による賃貸住宅「Forterb」の第一弾を、2021年11月に第二弾の戸建て注文住宅「GrounDK(グランDK)」を、2024年5月から第三弾「ForterbⅢ」をそれぞれ販売開始。今回、第三弾の1号棟が完成した。同社は2028年までにCLT使用量を現在の8倍2,000㎥を目指している。
玄関
内装
内装
◇ ◆ ◇
満室稼働にはやや驚いた。賃料(坪単価1万円超)は高いような気がしたが、見学会場となった住居には、見学の1時間前に26℃に設定したエアコン1台がつけられていたが、全住戸内は設定温度と変わらなかったはずだ。入居者もCLTの断熱性能の高さに満足するのではないか。
率直な感想を言えば、もう少し現しの部分を増やしてほしかった。(木の構造躯体をケミカル製品で覆った場合、木がもたらす様々な効果はどうなるのかものすごく興味がある)
現地
外廊下
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商品説明を行った同社技術開発部次長・岡本修司氏は、賃貸住宅は入居者募集のポータルサイトでは「賃貸マンション」でなく「アパート」に該当すると話した。
この問題に少し触れてみよう。記者は「賃貸マンション」だろうと「アパート」だろうと、これは呼称の問題で、商品の質の優劣を示すものではないと思うが、実際は「アパート」のほうが劣るとみなされ、賃料設定でも安くせざるを得ない現実があるようだ。今回、同社が賃料は〝RC造と同等価格〟と強調したのはこの現実を物語っている。
いくつかのポータルサイトで「アパート」とは何かを検索してみた。
「SUUMO」は、「一般的に、木造や軽量鉄骨造などの賃貸住宅を指す。対して鉄筋コンクリート造などの耐火構造の賃貸住宅は、一般的に『賃貸マンション』と呼ばれている。アパートは、マンションのように大きく張り出した柱などがないので間取りとして使いやすいが、壁や床などが比較的薄く、隣や上の階の物音が響くことも。その分、マンションより家賃は安め」とある。
「LIFULL HOME'S」は。「集合住宅・共同住宅の一種であり、1つの建物を仕切ってそれぞれ独立した住居にしたものを指します。似た建物として“マンション”がありますが、2つの言葉に明確な違いはなく、不動産会社が独自の基準で使い分けているケースがほとんどです。アパートと呼ばれる建物の例としては、木造もしくは軽量鉄骨造である、2階建て以下である、外観の雰囲気や設備が比較的簡素であるなどがあります」とある。
「at home」は、「英語の『アパートメント(apartment)』を略した言葉。わが国では1階建てもしくは2階建ての共同住宅で、建築構造が木造または軽量鉄骨構造のものを一般的に指している。しかし最近では2階建ての共同住宅であっても、重量鉄骨構造のものがあり、また外壁・内壁も軽量気泡コンクリートパネル等としているものもある。このため、マンションとアパートの外観上・構造上の区別がつきにくくなってきている」と定義している。
皆さんいかがか。どこも似たり寄ったりだ。はっきりした定義はないとしている。「賃貸マンション」と「アパート」に分けるからこのような混乱が起きる。統一するか、別の呼称に変更すべきだと思う。
2021年12月に行われた三井ホームの「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」見学会の記事を添付する。
当時の同社施設事業本部事業推進室営業推進グループ長&事業推進グループ長・依田明史氏は、「これまでこの種の賃貸マンションは『アパート』としてしか募集できなかったが、プレハブ協会と大手の募集サイト運営会社がマンションの定義を決め、首都圏不動産公正取引協議会の了解を得た結果、今年12月6日からは『マンション』として募集することが可能になったインパクトは大きく、『木造=安い』というイメージ・課題が払しょくできたと話した」と書いている。参考になるはずだ。(記者はタグを「マンション」として記事をアップした)
賃料は「調布並み」でも申し込み殺到三井ホーム「稲城」の木造5階建て賃貸(2021/12/9)
1フロア1戸の全7戸 30坪で価格2.7億円 シーラ初の「渋谷富ヶ谷」早期完売
「THE SYLA SHIBUYA-TOMIGAYA(ザ・シーラ 渋谷富ヶ谷)」
シーラの同社初の分譲マンション 「THE SYLA SHIBUYA-TOMIGAYA(ザ・シーラ 渋谷富ヶ谷)」を見学した。敷地面積が約57坪の8階建て(管理人室1戸含む)全7戸-つまり、これまで前例がないと思われる1フロア1戸で、〝THE SYLA〟を冠した1戸平均2.7億円(坪単価900万円)の高額であるにもかかわらず、販売開始から3か月半で契約を完了した〝初物尽くし〟のマンションだ。快挙に拍手喝采。
物件は、東京メトロ千代田線代々木公園駅から徒歩5分、渋谷区富ヶ谷一丁目の 近隣商業地域(建ぺい率80%、容積率400%)、第1種低層住居専用地域(同60%、同150%)に位置する敷地面積約188㎡、8階建て全8戸(管理事務室1戸含む)。専有面積は90.99㎡(27.52坪)、バルコニー面積4.23㎡(1.23坪)、サービスバルコニー面積2.87㎡(0.86坪)。価格は平均2.7億円。間取りは1LDK。設計・監理はエム・エスデザイン、デザイン監修はSTUMP。施工はシーラ。建物は2024年12月に竣工済み。
分譲開始は昨年10月。ほぼ即日完売だったが、その後キャンセルが出たため最終契約は2月半ばとなった。
現地は、首都高速中央環状線と井の頭通りの交差点から一歩入った高層マンションなどが建ち並ぶ一角で、建物は1フロア1戸。敷地南西側は1低層の住宅街で、住戸はすべて東-南-西向き。
主な基本性能は、二重床・二重天井、長さ4700ミリのフィオレストーンキッチン天板+テーブル、Bosch深型食洗機、Whirlpool洗濯乾燥機、突板ヘリンボーン床仕上げ、木製玄関ドア・間仕切り壁、ワインセラー付き収納、バイオエタノール暖炉、全開口サッシ、調光機能付き照明など。共用施設は約1畳台の防災倉庫、冷凍・冷蔵機能付き宅配ボックスなど。
同社は、第一弾のマンションが好調裡に完売したことから、今後も用地が仕入れられればこの種のマンションを分譲する意向だ。
モデルルーム
主寝室
◇ ◆ ◇
冒頭、〝初物尽くし〟と書いたが、これまで40数年間、分譲マンションを見学・取材してきた記者にとっても、一戸建てを積み重ねたような1フロア1戸は見た記憶がない。多分、首都圏で初の1フロア1戸のマンションだと思う。
だが、しかし、考えてみればプライバシーを重視する人にとっては、理想のマンションかもしれない。購入者の属性も聞いたが、予想通り普通のファミリー契約者は1戸もない。同社の狙いが的中したということだろう。
シーラとクミカ(旧リベレステ)は2025年2月14日に開催した臨時株主総会で、クミカを完全親会社、シーラを完全子会社化とする株式交換による経営統合を議決。6月1日付で、クミカは社名をシーラホールディングスに変更し、シーラ取締役会長・杉本宏之氏が代表取締役会長に、シーラ代表取締役社長グループ執行役員COO・湯藤善行氏が代表取締役社長に就任する予定。
杉本氏(47)は業界の〝異端児〟として知られているようだが、記者は話を聞いた限りでは、〝異常〟なのはむしろ業界で、杉本氏は人間らしい生き方を貫いている〝正統派〟だと思う。かつてリベレステは温泉付きマンションを分譲して話題を集めた。新会社のシーラHDの今後の展開に注目したい。
エントランス
宅配ボックス(左の3ブースが冷凍・冷蔵機能付き)
エレベータ内(庫内は本物の布製)
内観(左はフィオレストーン天板、床はヘリンボーン、正面に暖炉)
南西側の全開口サッシからは富ヶ谷、松濤方面の邸宅街が見える)
主寝室の収納(下部は19着が収納できるスラックス・ズボンハンガー、上部はジュエリーボックス)
信頼性・透明性・認知度の向上へ不動産クラウドファンディング協会統合記念式典(2024/12/12)
柏駅圏最大389戸 18坪(62㎡)の新型3LDKに注目 総合地所「ルネ柏ディアパーク」
「ルネ柏ディアパーク」
総合地所が京成電鉄、FJネクストとともに共同で分譲している「ルネ柏ディアパーク」を見学した。柏市指定の「景観重点地区」内に位置していることから緑地率を23%確保し、ZEH-M OrientedとABINCの認証を受け、全389戸のうち約9割に可動収納ユニット「UGOCLO(ウゴクロ)」を採用し、新型コンパクト3LDKプランを提案しているのが特徴。
物件は、JR常磐線柏駅から徒歩15分(バス約9分「向原住宅」バス停徒歩1分)、柏市豊四季台1丁目の第一種中高層住居専用地域に位置する敷地面積約13,972㎡、14階建て全389戸。先着順で販売中の住戸(25戸)の専有面積は62.43~84.61㎡、価格は4,188万~7,598万円(最多価格帯5,400万円台)、坪単価250万円前後。竣工予定は2026年8月中旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地の従前はUR都市機構の賃貸住宅で、2023年5月に同機構の入札により用地を取得。建物はコの字型で、東向き、南南西・南西向き、西向きがそれぞれ3分の1ずつ。
物件ホームページ開設は昨年4月で、これまでの反響数は約800件、モデルルーム来場者は約360件(1/19現在)。うち約6割が地元からの反響・来場。販売開始は昨年12月で第1期として100戸を供給し、これまで70戸を成約している。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M Oriented認証、ABINC認証、市条例の14%を上回る23%の緑地率、直床、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、食洗機、可動収納ユニット「UGOCLO(ウゴクロ)」、「U’s スタイル」など。共用施設はパーティールーム、マルチラウンジ、ゲストルーム、サウナルーム、スタディラウンジ、ランドリールームなど10施設。管理会社管理者方式「smooth-e(スムージー)」も採用している。
開発担当の同社分譲事業部マンション開発部開発1課課長・石井大祐氏は「戸数は柏駅圏最大級で、当社の物件としては全439戸の『ルネ横浜戸塚』に次ぐ規模。(記者の「遠い」という質問には)、物件のすぐそばには、通勤時間帯は2~3分置き、1日約200本が運行されている豊四季エリアの玄関口となるバス停『向原住宅』がある。来場者に対する成約率は23%と高い。(この単価帯の競合物件はかなりあるという質問には)共用施設を充実させ差別化はできている。今後、中広域からの集客を目指す」と語った。
模型(バス停「向原住宅」があることが分かる)
説明する石井氏
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記者は、間口5400ミリ(フレーム奥行き1148ミリ)の62.43㎡(18.88坪)の新型コンパクト3LDKプランに注目した。全戸数の13%に当たる50戸で、リビングダイニングが約9.7畳大、キッチンが約3.6畳大で、洋室は約5.9畳大、約3.8畳大、約3.5畳大の3室。価格は4,000万円台の前半だろう。
今から10数年前の3LDKといえば73~74㎡が〝標準〟とされていた。その後、用地・建築費が上昇する一方で、実質賃金が底這いを続けたことから、デベロッパー各社は専有面積圧縮などで価格抑制に努めてきた。しかし、このところの建築費高騰は多少の専有圧縮では対応できなくなっている。
今回の物件で81㎡と62㎡の新型3LDKのモデルルームを設けたのは、建築費高騰対策として、さらにまた潜在的なニーズを掘り起こし、今後の展開に生かそうという狙いがあるはずだ。
モデルルームを見てすぐ、これは支持されると思った。何がいいか。吊り型クロゼットやランドリークロゼットを配することでスペースを有効に活用していることと、キッチンは壁付けとし、リビングとの間に広いカウンターを設け、カウンターにダイニングテーブルを配した提案だ。LDKは13.3畳大だが、もう一つの81㎡のモデルルームの約15畳大のLDKとそん色がなかった。(ポラスの「ピアキッチン」がどうして人気なのか考えていただきたい)
同社によると、第1期で供給した9戸は全て完売したという。購入者の中には5人家族もいたという。(ナイスがかつて70㎡の4LDKを供給したのをご存じか)
62㎡(D2タイプ)モデルルーム
62㎡(D2タイプ)間取り
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同社のマンション見学会には、同業の見学会にはないものが一つある。配布される資料は微に入り細を穿つ-完璧だ。〝価格は未定〟などと消費者や記者を馬鹿にするようなことはしないし、どんな質問にも丁寧に答える。
今回、小生が見学する前にメディア向け見学会が行われている。その際の記者と同社のQ%Aの資料がある。記者の質問は「竣工はいつか」「入居はいつか」「共用部には何があるか」「新型コンセプトは従来の60㎡台の3LDKと何が違うか」など、物件ホームページや概要を読めばすぐわかる、馬鹿馬鹿しい質問(要するに質問する記者は何もわかっていないことを露呈している)にもきちんと答えている。
的を射た質問では「近郊エリアでのマンション市場は? 価格相場、本物件の値付けの理由など」があり、同社は「同駅で住友不動産、三井不動産レジデンシャルが分譲中。沿線手前の松戸駅や流山市内の物件価格が大きく上がっており、本駅でも5,000万円前後の価格帯も相場内」と答えている。
この答えの成否は記者も分からない。質問自体、周辺物件を見ていなければあまり意味がない。小生が師と仰ぐ故・佐藤美紀雄氏はこのような場合、駅の反対側の徒歩15分のマンションが分譲されていれば、アポなしでモデルルームを見学した。担当者がまごつくと「私が何者かわからないのか」とすごんだ。歩くスピードは小生の2倍あった。タクシーを利用することはなかった。
柏駅や流山おおたか駅で駅近マンションが供給されれば坪単価は400万円を超えるかもしれないが、一方で坪250万円前後のマンションはかなり供給されている。戸建てや中古マンションとの競合も避けられない。
販売開始1か月で半数以上成約・申し込み東武鉄道&大和ハウス「新柏」114戸(2024/4/25)
感動の金児氏vs宮崎氏トーク全196戸のポラス「柏」3カ月で100戸成約(2020/10/10)
「二度とできない設備仕様レベル」長島部長総合地所「横浜戸塚」第1期108戸成約(2020/1/29)
坪245万円に納得コロナ禍で半分以上を成約三井不動産レジ「柏タワー」(2018/3/14)
都心3区の成約件数は首都圏全体の7% 成約価格は全体の17% 東日本レインズ
東日本レインズのデータは、首都圏中古マンション坪単価はすさまじい勢いで上昇し続けていることを示している。
ただ、首都圏をエリア別にみると、東京都心3区(千代田区、中央区、港区)の価格高騰が全体の価格を引き上げており、郊外はそれほど上昇していないことも分かる。この1年間のエリア別坪単価の推移を別表・グラフに示した。
これによると、首都圏全体では2025年1月の中古マンションの坪単価は270.2万円で、前年同月比7.8%上昇している。エリア別にみると、都心3区は722.9万円(前年同月比30.8%増)、東京都区部407.8万円(同13.7%増)、東京都多摩185.5万円(同4.5%減)、神奈川県194.4万円(同1.1%増)、埼玉県139.7万円(同2.5%減)、千葉県136.3万円(同4.9%増)となっている。
もう少しデータを詳しく見ると、都心3区の成約件数は218件で首都圏全体の成約件数に占める割合は6.7%、平均成約価格は13,275万円で首都圏全体の成約価格に占める割合は17.3%になる。
この数字をどう見るかだが、記者は都心部の一等地は坪1,000万円どころか2,000万円、3,000万円に上昇すると見ているので、中古マンションはその7掛けとして現在の価格はわからないでもない。一般的な取得層の取得限界ははるかに超えているが、市場とはそのようなものだ。投機的な需要が価格を押し上げるのは十分理解できる。得をするのか損をするのか、それはわからない。
郊外はどうか。新築マンションは土地代がタダでも坪単価は200万円を突破しつつある。記者は、一般的な需要層の購入取得限界は坪250~300万円とみている。現在の住宅ローン金利水準が継続されればという条件はつくが、相対的に賃貸住宅の賃料が高く、面積を中心とする質の向上も期待できない現状を考慮すると、現在の中古マンションの坪単価はまだ上昇の余地があると見ている。
課題は、中古マンションの断熱性能を引き上げることと、管理組合運営を理事会方式から管理業者管理方式に切り替えることで、組合員の負担を軽減することではないかと考えている。
買取再販業者には、水回りのリフォームだけでなく、窓ガラスの断熱性能を高めてほしい。断熱フィルムを張るとか、断熱ガラスに改修すべきだと思う(区分所有法、標準管理規約上も可能になっている)。
管理業者管理方式の採用については、利益相反を懸念する声もあるが、仮に管理業者がそのようなことを行ったら、その会社だけでなく親会社、業界の大問題に発展する。そのような愚は冒さないはずだ。管理会社と組合のWin-Winの関係は構築できるはずだ。報酬(組合員の負担)も相場とされる1,000円/月というのも理事の負担を考えれば妥当な金額ではないか。
2025年1月の中古マンション・戸建ての約件数は2けた増東日本レインズ(2025/2/11)
2025年1月の中古マンション・戸建ての約件数は2けた増 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は2月10日、2025年1月の首都圏不動産流通市場動向をまとめ発表した。
中古マンションの成約件数は3,242件(前年同月比19.6%増)、坪単価は270.2万円(同7.8%増)、価格は5,147万円(同5.9%増)、専有面積は62.86㎡(同1.7%減)。成約件数は2ケタ増で、3か月連続で前年同月を上回った。成約単価は20年5 月から57か月連続で前年同月を上回り、成約価格は3か月連続で前年同月を上回った。
中古戸建の成約件数は2,279件(同33.0%増)、価格は3,785万円(同0.5%減)、土地面積は144.73㎡(同1.8%増)、建物面積は103.29㎡(同0.3%増)。成約件数は前年比大幅増となり、3か月連続で前年同月を上回った。
わが国初の大規模建築物 最高ランク「ZEH-M」東京建物「Brillia 深沢八丁目」竣工
「Brillia 深沢八丁目」(写真提供:東京建物株式会社)
東京建物は2月10日、4ランクに設定されているZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)の最高ランク『ZEH-M』(※1)を取得している、日本で初めて竣工した大規模建築物(※2)「Brillia 深沢八丁目」のメディア向け内覧会を行った。東急田園都市線桜新町駅から徒歩9分の期間70年の定期借地権付き3階建て全38戸で、高い省エネ・再エネ・創エネの取り組みを行うことで、住棟全体で101%、住戸ごとで114%一次エネルギー消費量削減率を達成している。
物件は、東急田園都市線桜新町駅から徒歩9分、世田谷区深沢八丁目の第一種低層住居専用地域に位置する敷地面積約2,938㎡、延床面積約3,412㎡、3階建て期間70年の定期借地権付き全38戸 (一般分譲販売戸数37戸、提携企業優先住戸1戸)。現在先着順で分譲中の住戸(3戸)の専有面積は70.82~74.59㎡、価格は12,298万円~14,898万円、既分譲の坪単価は623万円。2月分譲予定の第2期4次以降(戸数未定)の専有面積は63.88~134.15㎡、予定価格は10,700万円台~29,900万円台。建物は2024年12月に完成済み。設計・施工は大末建設。デザイン監修は牛込昇建築設計事務所。
主な基本性能・設備仕様は、『ZEH-M』認定、CASBEE Sランク、BELS★5、東京都マンション環境性能表示★15(満点)、低炭素住宅認定、リビング天井高2450ミリ、フィオレストーンキッチン天板、食洗機、ディスポーザー、カップボード、ミストサウナ、タオル掛け2か所、全熱交換器、アルミ樹脂複合サッシ、アルゴンガス入りLow-E複層ガラス、エネファームなど。
これまでの来場者数は310件。30代から60代まで幅広く、面積が広く高額住戸を検討している人ほど『ZEH-M』など環境配慮を高く評価しているという。昨年5月から販売を開始しており、成約件数は21戸。
竣工内覧会に臨んだ同社執行役員住宅事業第二部長・佐林繁氏(57)は「当社は2018年の『弦巻』をはじめ『聖蹟桜ヶ丘』『自由が丘』などでZEH-Mの取り組みを行ってきており、新たに14棟のZEH-Mが竣工する(累計26棟)。これまで分譲マンション購入検討者には『ZEH-M』という選択肢はなかったが、今回の『深沢八丁目』は分譲業界全体のベンチマークとなるのではないか。今後も特徴のあるマンションを供給していく」と語った。
国のZEH-Mの定義では、一次エネルギー消費量削減率に応じて『ZEH-M』、Nearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-M Orientedの4ランクに分けられており、年間の一次エネルギー消費量の収支を正味ゼロ以上とする『ZEH-M』はその最高ランクとなっている。
今回の物件は、屋上に366枚の太陽光パネルを設置し、「断熱等性能等級6」を全住戸(一部中住戸は「等級7」)で取得するなど高い省エネ性能と、燃料電池「エネファーム」による創エネを組み合わせることで、住棟全体で101%、全住戸114%の一次エネルギー消費量削減率を達成している。この結果、一般的な省エネ基準の住戸と比較して年間で111,000円(月平均約9,200円)の光熱費削減が見込まれる。
また、従前の土地利用が幼稚園(日体幼稚園)だったことから、砂場の砂から作成したアート作品や世田谷区の保存樹木であったアカマツから作成したアート作品など、4名のアーティストによるアート作品を共用部に設置。「廃食油」を回収しリサイクルする取り組み「すてないくらしプロジェクト」に加え、空間デザインの力でゴミ分別や衛生環境の課題解決を目指した「通いたくなるゴミ置き場『GOMMY』」を採用している。
※1 4ランクの最上位を『ZEH-M』と表記
※2 建築物省エネ法における大規模建築物(延床面積2,000㎡以上)での区分で、同物件は2024年12月竣工、もっとも早く竣工した
太陽光パネル(写真提供:東京建物株式会社)
共用部アート(写真提供:東京建物株式会社)
共用部アート(写真提供:東京建物株式会社)
中庭の植栽
外構(下部の石はフェイクかと思ったら本物の玄武岩だった)
左から同社住宅事業第二部 事業推進グループ課長代理・西池拓人氏、佐林氏、同社住宅エンジニアリング部 建築企画1グループ グループリーダー・幸地浩一郎氏
「Brillia 深沢八丁目」メディア向け内覧会
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最高価格の29,990万円(134㎡、坪単価736万円)のモデルルームを見た瞬間、同社の最高級ブランド「ロワ・ヴェール」を思い出した。同社が億ション市場に参入したのは1989年(平成元年)で、ブランド名は「ロワ・ヴェール」だった。ところが、その翌年にバブルがはじけたため「ロワ・ヴェール」は数物件しか供給されなかった。
なぜ、その「ロワ・ヴェール」を思い出したかといえば、当時の「ロワ・ヴェール」に今回と同じアイランドキッチンが採用されていたからだ。
当時のキッチンカウンターは御影石で、全体的に設備仕様レベルは高かったが、今回の住戸のデザインは白が基調でとてもいい。玄関・ホールは10畳大近くあった。
坪単価は、所有権なら坪単価800万円とはじき、定借だから8掛けとして640万円と予想したが、その通りとなるのではないか。
ファサードデザインもいい。邸宅街にふさわしい重厚で硬質な磁器質タイルを多用し、敷地内にあったサクラ、アカマツ、瓦、石などを内装やアートに取り込んでいる。
肝心の『ZEH-M』の威力は体感することができなかった。資料では外気温が-1.9℃、エアコンの吹き出し22℃の設定で、室内温度は断熱等性能「等級7」(深沢)が20℃以上、「等級5」がほぼ19℃以下、「等級4」がほとんど18℃台であることが示されている。しかし、この日の外気温は10℃を上回っていたはずで、その温度差を体感できず、エアコンを使用していない居室、廊下、トイレなどの気温は20℃あったような気もしたが、何度かは確認できなかった(エアコンは25℃に設定されていた)。
今後分譲される2期4次以降は完成した建物内で案内されるはずなので、その良さが分かるのだろう。
309号室(写真提供:東京建物株式会社)
309号室(写真提供:東京建物株式会社)
309号室(写真提供:東京建物株式会社)
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今回の取材の目的の一つに、佐林氏が何を話すかがあった。約30分間のプレゼンテーション(説明)は完ぺきだった。プレゼンはかくありきの見本だと思った。基本的には用意した資料を読みながら話したのだが、一語一語、ゆっくり話したのでとても分かりやすかった。
この落ち着いた話し方を聞きながら、2つのことを思い出した。一つは、同社のマンションブランド「Brillia(ブリリア)」についてだ。同社がマンションブランドをそれまでの「東建ニューハイツ」「プランヴェール」「Brillia(ブリリア)」、最高級「ロワ・ヴェール」などから「Brillia」に統一したのは2003年だった(野村不動産が「PROUD(プラウド)」を立ち上げたのは2002年)。
当時、東建はもちろん大手デベロッパーだったが、マンションブランドとしては〝並〟でしかなかった。その〝並〟のブランドを劇的に変えたのが「Brillia」だが、佐林氏はその統一・立ち上げの中心的な役割を担っていた。
いまさら「Brillia」の実績紹介もないだろうが、マンションの歴史に名を刻んだ「Brillia Tower 池袋」(2013年竣工)、「Brillia Towers 目黒」(2017年竣工)、「Brillia Tower 堂島」(2024年竣工)の記事を添付する。ぜひ読んでいただきたい。同社のマンション供給は多くはないが、業界全体を変える力を持つ物件を時々供給するから、目が離せない。
この日(10日)、記者はこの間の感想と今後の展開について質問した。佐林氏は「『Brillia』の第一号を供給したのは2001年だから、20年以上が経過した。感慨深いものがある。社員一人ひとりがいいものを届けようと取り組んできた結果が実を結んだ。当社の供給戸数は多くはないが、都市部を中心に特徴のある、いいものを今後も供給していく」と語った。
もう一つは、佐林氏が同社の野球部エースとして活躍したころのことだ。皆さんは、平成元年のドラフト指名で読売巨人から3億円という破格の契約金を提示されながら〝野球は趣味で〟との名言を残して三井不動産に入社した志村亮氏(現在、三井不動産リアルティ常務執行役員)をご存じか。
志村氏は三井不に入社後、RBA野球大会でも獅子奮迅の活躍をしたのだが、佐林氏も負けていなかった(志村氏は慶大卒の左腕で、変化球のキレが桁違いで、佐林氏は早大卒の右腕で速球が持ち味だった)。
そしてまた面白いのは、志村氏と慶大時代にバッテリーを組んでいた髙橋浩氏が東建に入社したことだ(現在、常務執行役員)。佐林氏と高橋氏が黄金バッテリーを組んだのだが、当時の東建の攻撃力・守備力はマンションと同じ〝並〟だった。拙攻・拙守で負ける試合が続いた。それでも佐林氏はナインを責めることはしなかった 。
この日のプレゼンで佐林氏は〝一人ひとり〟を強調した。仕事もまた野球と同じ、チームワークが大事で、一人では勝てないことを学んできたからだろうと思った。皮膚にたるみはやや見られたが、体型はこの前お会いした志村氏と同じ、全く崩れていなかった。
36年のRBA野球大会の歴史の中で、同社の最高記録は佐林-高橋バッテリーが活躍した平成5年の第5回大会に樹立したベスト4だ。この記録は現在も突破されていない。がんばれ東建!
佐林氏
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