駅から1分、内廊下&角住戸比率80% 明和地所「クリオ市谷柳町」
「クリオ市谷柳町」
明和地所が分譲している「クリオ市谷柳町」を見学した。牛込柳町駅から徒歩1分の全61戸。内廊下方式で、角住戸比率80%が特徴。
物件は、都営大江戸線牛込柳町駅から徒歩1分、新宿区市谷柳町に位置する13階建て全61戸。第2期1次(4戸)の価格は4,399.4万~7,594.3万円、専有面積は30.89~55.16㎡。竣工予定は2021年8月下旬。設計は現代綜合設計。施工は多田建設。デザイン監修はウイ・アンド・エフヴィジョン石倉雅俊氏。
現地は、外苑東通りに面した商業地域。建物は内廊下方式、1フロア5戸構成。角住戸比率は80%。戸数は西向きの30㎡が24戸、42㎡が12戸。東向きの55㎡が12戸、45㎡が12戸。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400~2450mm、食洗機、トイレはLIXILの100年クリーンのアクアセラミック。
コンパクトタイプはともかく、42、55㎡のプランがなかなかいい。それぞれ7.9、8.0mスパンで、廊下面積を圧縮することで他のスペースを確保している。
悩ましい選択 東建「西早稲田」454戸と三菱地所レジ「市谷加賀町」228戸の定借
東京建物「ブリリアシティ西早稲田」マンションの建設現場
もちろんサクラ見物が目的ではなく他に理由があったのだが、コロナショックで塞いだ気持ちをいくらか和らげてくれるのではと淡い期待を抱いて神田川沿いを昨日(3月11日)歩いた。
残念ながらまだ早いのか一輪の開花も見られなかったが、目的のほかに思わぬ収穫もあった。
高田馬場駅から歩くこと十数分。このあたりの神田川は水もきれいで、さらさらと流れる水音も聞こえてくる。「面影橋」についたときだ。だしぬけに東京建物「ブリリアシティ西早稲田」マンションの建設現場が眼前に広がった。現場のすぐ前は見事なサクラ並木だ。
パブロフの犬と化した記者はとっさにマンションの分譲単価をはじき出した。高田馬場駅から歩くのは大変なので、いくらサクラ並木が美しいとはいえ坪400万円は厳しいのではないかと考えたが、現場に備え付けられていたパンフレットで調べてみると、現場はJR高田馬場駅と東西線早稲田駅のほぼ中央にあり、それぞれ徒歩14分、総戸数は454戸、施工は長谷工コーポレーションとあった。この立地なら坪420万円でも売れるのではないかと上方修正した。
ところが、パンフレットには所有権ではなく期間70年の定期借地権付きと書かれており、専有面積は約71~97㎡、予定価格は5,700万円台~1億2,000万円台(最多価格帯6,400万円台)、販売開始は8月とあった。
素敵な「面影橋」の由来は、在原業平、あるいは将軍家光が名付けた説など諸説あるそうだ。
神田川
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定借と言えば、つい先日、都営大江戸線牛込柳町駅圏の期間70年の定期借地権付き三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス市谷加賀町」228戸の現場を見たばかりだ。
立地条件からして三菱地所レジデンスのほうが高くなるのは間違いないが、所有権、定借にこだわらないユーザーにとっては悩ましい選択になりそうだ。住環境は互角だ。双方とも取材してレポートしたい。
〝感動を売る〟商品企画光る コスモスイニシア「イニシア中央湊」36戸が完売
「イニシア中央湊」建物内観
コスモスイニシアは3月10日、「イニシア中央湊」(36戸)が2019年12月に竣工し2020年2月に全戸完売したと発表した。
特徴は、①八丁堀駅徒歩5分、隅田川のほとりの自然豊かな住環境②全戸角住戸×70㎡超のプラン③リビングの2面に窓が広がるコーナーサッシ、隅田川を望むリバービュープラン④空間デザインブランド「parkERs」とコラボした水と緑を感じる共用エントランスホール-など。
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このマンションは昨年6月に取材し、記事にしたのでそちらも参照していただきたい。住宅は〝感動〟を売る商売でもある。記者はこのマンションに感動を覚えた。売れるのは当然だと思う。
今年2月に完売というのは戸数からして時間がかかったように思われるかもしれないが、竣工完売に自信があったからか、同社は昨秋から販売促進を中断していた。いま分譲中の「築地」に注力するためだ。
エントランスホール(観葉植物は本物)
〝敵に塩〟も必要 旭化成不レジ「築地」の坪単価は505.5万円 記者予想が的中
「アトラス築地」
やったっ! この日(3月10日)、せっかく声をかけてくれたのに場所を間違えたために大和ハウスの「吉野山の桜」植樹祭を取材できず、コロナウイルスの拡大で米国の株価が湾岸戦争以来29年ぶりの暴落となったのにがっくりし、取材に行くところもないので水ばっかり飲んでいるところに、旭化成ホームズの女性広報担当者から嬉しいメールが届いた。
既報の「アトラス築地」の第1期分譲50戸の平均坪単価が500万円超えの505.5万円であることを知らされたからだ。
なぜ嬉しいか。記者は今年1月、このマンションを取材した際、「競合物件担当者は一様に『アトラスさんは坪500万円を切る』と見ているようだが、記者(小生)は坪500万円を割ることはないとみた」「同社が高値に挑戦すればするほど競合他社は〝割安感〟をアピールできるので歓迎するはずだ」と記事に書いた。時には〝敵に塩〟も必要という思いを込めた。
嬉しいのはその予想が的中したからだ。坪単価が500万円を割ったら「アトラス」が一人勝ちする可能性もあると見ていた。読者のみなさんは高が5.5万円というかもしれないが、この差は大きい。20坪で110万円だ。同業の物件はこの分だけ〝安い〟ことをアピールできる。
逆に言えば、この分だけ「アトラス」は不利な立場に立たされるが、販売を担当するのは野村不動産アーバンネットだ。取材したときも責任者の顔には〝500万円を超えても売る自信がある〟と書いてあったのを記者は見逃さなかった。
第1期の販売戸数50戸はやや少ないという印象も受けたが、これは作戦だろう。分譲戸数125戸のうち50戸は約40%だ。一般的な物件の数字としては決して少なくないが、多分、「アトラス」は〝好評につき〟追加販売すると見た。何戸になるかは分からないが、仮に20戸としたら分譲戸数の半分だ。最初にこれだけ売れればあとは順調に売れるはずだ。結果、旭化成レジだけでなく、野村アーバンの〝株〟もあがる。
同社のニュース・リリースによると、これまでの来場者数は578組。
ルーフテラス
エントランス
ラウンジオブジェ
全館空調「床快full」装備 野村不動産「文京千駄木」全49戸一挙販売
「プラウド文京千駄木ヒルトップ」
野村不動産は3月13日~3月20日、「プラウド文京千駄木ヒルトップ」の登録申し込みを受け付ける。
物件は、東京メトロ千代田線千駄木駅から徒歩4分、文京区千駄木一丁目に位置する地上4階、地下1階建て全50戸(非分譲1戸含む)。販売戸数は49戸。専有面積は71.43~121.08㎡、価格は8,780万~2億3,480万円(最多価格帯1億1,900万円台)。竣工予定は2021年1月上旬。施工は東洋建設。
駅から団子坂を上った森鴎外記念館に隣接。100㎡以上が12戸、全戸全館空調「床快full」を装備している。
全ての中堅デベに贈る メジャー7に勝つマンションプロジェクトはこれだ!
京阪電鉄不動産「ファインシティ新越谷」ホームページから
テレワークに突入したとたんに現場取材が途絶え、俎板の鯉というよりは水を抜かれ、息すらできなくなりつつある青息吐息の池の鯉の心境にある記者が放つ、伸るか反るか乾坤一擲のマンションプロジェクトだ。
ただのプロジェクトではない。コロナウイルスのパニックに陥り、死語と化したと思っていた〝欲しがりません勝つまでは〟が亡霊のようによみがえり、暗黒時代に突入した観を呈す世の中にあって、ちょっとやそっとの危機にはびくともしない大手デベロッパーに互角の戦いを挑める中堅デベロッパー向けの究極のバーチャルプロジェクトだ。
手ごわい仮想敵の大手デベロッパーとは、マンション市場を制圧しつつある三井不動産、三菱地所、住友不動産、野村不動産、東急不動産、東京建物、大京(オリックス)のいわゆるメジャー7で、立ち向かうプロジェクトメンバーは以下のメジャーではないかもしれないが、企画力は勝るとも劣らないプロ中のプロの7社だ(順不同)。
・モリモト
・ポラス
・コスモスイニシア
・大和地所レジデンス
・ナイス
・京阪電鉄不動産
・山田建設
失礼ながら、これらメンバー単独では絶対大手に勝てない。資金力、ブランド力で圧倒的に劣るからだ。例えて言えばかつてのわが日本軍。徒手空拳で大国に挑むようなもので、赤子の手をひねるように却って弾き飛ばされるのがおちだ。
しかし、この7社の頭脳、商品企画力、技術力を結集させれば、敵はたじたじとなり白旗を上げる確率はかなり高いと記者は思う。
どんなプロジェクトか。想定するのは、お金持ちではない普通の単身・DINKS・ファミリー向けの準都心・郊外マンションだ。
まず、基本設計・外観デザイン・インテリアはモリモトだ。年間1,000戸近く供給し、プライスリーダーとなる物件も少なくないというのに在庫をほとんど出さない同社は中堅の星だ(森本社長は「うちは中堅じゃないぞ」と怒るか)。
同社は三菱地所、丸紅、東急不動産などともJVし、大手と互角以上に戦ってきた実績もある。グッドデザイン賞を受賞した内廊下・ワイドスパンが特徴の「モリモトデザインコード」を採用する。
建築家は、三井不動産や大和ハウス工業、旭化成ホームズなどの大手物件も手掛けているが、数の上ではモリモトが勝るアーキサイトメビウスの今井敦氏を起用する。インテリアデザイナーは鈴木みずゑ氏、横堀健一氏&コマタ トモコ氏だ。
最近のモリモトのインテリアはケミカル製品が増えているが、以前はそんなことをしなかった。床は本物の石かデザイン性の高いタイル、壁は突板を使用していた。多少価格が高くなっても今井氏や鈴木氏などの好きなように仕上げてもらう。
各住戸には、実用新案取得済みのピアキッチンをはじめ痒いところに手が届くポラスのアイテムを採用する。先に書いた「ルピアグランデ浦和美園」の記事を読んで頂ければ、その威力が分かるはずだ。ユーザーの心を捉えるのは間違いない。大手を脅かす大きな武器になる。
今は大小を問わず、マンションのダイニングテーブル、バックカウンター・吊戸棚はオプションだ。ピアキッチン並みに揃えるとすれば百万円をはるかに超える。現金で買う余裕がなくともローンにすればいくらもかからない。
コスモスイニシアには〝頭脳〟を期待する。添付した「イニシア武蔵新城ハウス」の記事を読んで頂きたい。これほどコストパフォーマンスに優れたマンションを記者は知らない。
同社はここ数年、実用新案を取得済みの〝魅せる玄関〟(ウェルカムホール)を売りの一つにしている。これを全住戸に採用するほか、「parkERs(パーカーズ)」とコラボしたフェイクではない本物の緑をふんだんに用いた販売事務所とモデルルームを演出してもらう。「イニシア中央湊」がその代表作だ。
大和地所レジデンスにもプロジェクトに関わってもらう。売りづらい1階住戸を中層住戸より価格を上げても売れるようにしたのは同社だし、ほとんどが100㎡以上という全1805戸の「レイディアントシティ横浜」を早期完売した実績は燦然と輝く。ここ数年業績も伸ばしており、在庫を出さない数少ない企業だ。同社には実用新案を取得済みの奥行き4mのオープンエアリビングパルコ―を提供してもらう。
ナイスを起用するのは免震工法だ。創業家の元会長と副会長が有価証券虚偽記載で逮捕される事態となったが、全供給物件を免震にすると宣言しているのはこの会社だけだ。コストアップは避けられないが「安心・安全」の価値はお金には変えられない。
マンションのパンフレット、WEBデザインは京阪電鉄不動産だ。同社自身が制作しているわけではないだろうが、緑など共用部分の見せ方が突出している。とにかく美しい。設備仕様の〝見せる化〟も巧みだ。
施工は山田建設だ。最近は取材していないが、アイデアマンの山田健治会長は元気なようだ。同社がイタリアから輸入したドアを採用したのを見てびっくりしたのを思い出す。表面は突板のように映え、カチッと閉まるドアは億ションくらいしかお目にかかったことがない。同社は中国にも現地法人を持っており、自然石なども安く仕入れられるのではないか。
どうだ、これで完成だ。この記事を大手デベロッパーの社長が読んだら腰を抜かすのではないか。ひょっとすると、三顧の礼をもって〝ぜひうちと一緒に〟などと抱き込みにかかるのではないか。
そんな甘言に易々と乗るわが中堅7社ではないと思うが、普通のファミリーの取得限界は坪単価にして180万円、70㎡で約3,800万円だ。この値段で供給できるのは遠隔地しかなく、そこにこれだけ優れた商品企画を盛り込んだところでミスマッチが浮き彫りになるだけで、販売力が心もとない7社には無理だ。
となると、もっと都心寄りの坪単価250万円くらいのエリアまで拡大せざるをえない。70㎡で5,500万円だ。これなら勝負できるか。場所は〝母になるなら〟〝父になるなら〟の流山もいいかもしれないが、わが街多摩センターはどうか。そんな土地は残っていないか…。
坪250万円でも難しいとなると、あとはもう坪500万円以上の都心で勝負するしかない。縷々書いてきたようにバーチャルプロジェクトは大手デベロッパーを蹴散らすことも不可能ではないと思うが、問題は土地が手に入るかどうか、銀行が融資するかどうかだ。これが難問だ。7社が束になってかかっても大手には敵わない。コスモスイニシアの親会社、大和ハウスが資金面で援助するかだが、金を出すなら口も出し、主導権を握ろうとするはずだ。
…こうなると、もうお手上げだ。そもそも記者のこの提案に乗る社長はこの7社の中にいるか…〝バカヤロー〟の声が返ってきそうだ。せっかくの労作も雲散霧消するのか。残念至極。
一つ書き忘れた。ZEHだ。これからは必須アイテムになる。野村不動産が「亀戸」で全館空調&樹脂サッシを採用するように、サッシ窓枠はアルミではなく樹脂にすべきだ。各社にそんな勇気はあるか…。
住宅情報サイトのアクセストップ モデルルームの出来もいい モリモト「三軒茶屋」(2020/2/29)
ポラス「浦和美園」 全340戸を1年9カ月で竣工完売 マンション売上40億円積み増し(2020/3/7)
コスモスイニシア 創業40周年の「武蔵新城」30年前の「シカク」蘇る(2014/10/9)
パーカーズとコラボの第三弾 コスモスイニシア「中央湊」の緑の質と量に感動(2019/6/3)
風致地区巧みに生かした住戸プラン・ランドスケープ秀逸 大和地所レジ「上大岡」(2019/4/24)
気になるマンションの基本性能・設備仕様レベルダウン 住宅着工動向で見えること
コロナウイルスなんぞに負けてなるかと、攻撃的テレワークを実行してから10日が経過した。実行前と実行後の記事配信比率は17:21本だ。実行後は取材キャンセルが激増し、そのために単なるコピペ記事にせざるを得なくなった部分もあるが、覚悟を決めれば難局を乗り切れることを少しは証明できたのではないか。
今日は日曜日。取材も入っていないし、することもないので暇に飽かせて住宅着工戸数について徒然なるままに書き記すことに決めた。
令和2年1月の首都圏マンション着工戸数は前年同月比22.3%減の3,065戸となり、4カ月連続して前年同月を下回った。平成31年4月~令和2年1月では前年同期比5.5%減の45,505戸となっている。都県別に見ると、東京都28,903戸(前年同期比2.2%減)、神奈川県9,137戸(同16.2%)、埼玉県3,630戸(同25.4%)、千葉県3,835戸(同36.5%増)だ。
この数字だけでは何も読み取れないが、マーケットとしては東京都が年間約35,000戸、神奈川県は約10,000戸、埼玉と千葉県は各5,000戸、合わせて約55,000戸程度が常態となり、中長期的には年間50,000戸を維持できるかどうかではないかと思っている。
記者が気になるのは、着工戸数減より基本性能・設備仕様の退行だ。
別表は、平成26年度と30年度の全国と首都圏の分譲住宅の着工戸数、床面積、1戸当たり工事費、坪単価を比較したものだ。
注目すべきことの一つは、物件の小型化・床面積の減少だ。全国の着工戸数は4年前より3.6%増加しているのに床面積は逆に6.1%減少し、首都圏も減少率は着工戸数より床面積のほうが大きくなっている。全体として面積が縮小していることを示している。
1戸当たり工事予定額もなかなか興味深い。着工戸数が増えた神奈川県は工事費が減少していることだ。これは明らかに価格を抑制するためだと思われる。一方で、千葉県が大幅に増加しているのは、工事費上昇を吸収できなくなった結果だとも受けとれる。また、東京都や神奈川県の工事費は埼玉や千葉県より低いのは、これもまた分譲価格を抑えるための苦肉の策と読める。
このように面積が縮小し工事費も抑制気味なのに、坪単価はこの4年間で東京都は19.2%も上昇し、他県も大幅にアップしている。
これ以上に基本性能・設備仕様レベルダウンを端的に物語っているのは階高・天井高だ。
三井不動産レジデンシャルが9年前に分譲した坪単価500万円の「パークコート六本木ヒルトップ」の標準階の階高は3,400~3,450mm、最上階は4,150mmもあった。廊下、キッチンの天井高も最低でも2.350mmあり、ペントハウスの天井高は3,000mmだった。
これは例外としても、数年前までは少なくとも2500mmは確保され、レベルの高い物件のリビング天井高は2600mmくらいあった。
ところが最近のリビング天井高は2500mmあれば高いほうで、2400~2450mmが標準になりつつある。今話題の「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」のリビング天井高は確か2500mmだった。近接する三井不動産レジデンシャル「パークタワー晴海」も三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス晴海タワーズ」もリビング天井高は最低で2600mmだった。
天井高が低くなっているのは自治体の高さ規制の影響でもあるが、高さを低くすればその分だけコンクリート、鉄筋などの使用量を抑えられるからコストも圧縮できる計算になる。値段を据え置きにして、中身の量を減らしている日用品・お菓子類と一緒だ。
これだけでも今のマンションのレベルダウンがよく分かる。それ以上なのが設備仕様だ。例えば、数年前までのキッチンカウンターなどは御影石かシーザーストーン、フィオレストーンが標準だったのに、最近は人工大理石が主流で、バックカウンター、吊戸棚などはほとんどがオプションで、床材・壁の仕上げに突板・挽き板、御影石を採用する物件が姿を消し、ディスポーザー、食洗機、スロップシンクなとも同様、オプションにしているケースも目立つ。最近はトイレもチェックしているが、メーカーこそ異なるが仕様レベルはみんな似たり寄ったりだ。
価格が上昇する分だけ質が落ちているのがいまの市場だが、これは大手の市場占有率が高まっており、各社が都心、駅近、コンパクトなどにシフトしていることと無関係ではない。市場を独占すれば、意のままになるのは経済の大原則だ。
そして、大手デベロッパーの〝右に倣え〟というのはわが国の国民性の反映で、流れに身を任せるのも選択肢としては悪くないのかもしれないが、敢然と反旗をひるがえすデベロッパーの出現に記者は期待しているのだが…。
現段階で最高品質のマンション三井不動産レジデンシャル「パークコート六本木ヒルトップ」
ポラス「浦和美園」 全340戸を1年9カ月で竣工完売 マンション売上40億円積み増し
「ルピアグランデ浦和美園」
ポラス中央住宅の「ルピアグランデ浦和美園」全340戸が分譲開始1年9カ月で竣工完売した。隣接する全2棟697戸のNTT都市開発「ウエリス浦和美園」は竣工後それぞれ2~3年経過するのに100戸近く残っている。〝苦戦エリア〟での早期販売だけに価値がある。同社のマンション事業の今期マンション計上予定額は130億円だが、この物件の〝想定外〟の売れ行きで170億円に達する見込みだ。
同社マンションディビジョン部長・中島教介氏は3月6日、「キャンセルが2戸出たが、今週末に契約する予定。来場者は約1,200組。歩止まり率は約30%と高いが、NTTさんの宣伝もありがたかった。購入者は地元と川口居住者で約半分。分譲当初は月10戸のペースだったが、2019年に入ってからは他のエリア物件の価格の上昇が追い風ととなり月20戸に上昇した。計画では今期計上は260戸くらいと見ていたが、予想外の売れ行き。マンション事業全体の今期計上予定130億円を上回る170億円に達する見込み」と語った。
メインエントランス
◇ ◆ ◇
この物件については、添付した記事を参照していただきたい。一言で言えば、この単価(156万円)で、この設備仕様レベルのマンションはまず分譲できない-これが勝因だ。痒いところに手が届く商品企画は舌を巻くほどだ。
完売したから書くのだが、5年前だったか、同社がこの土地をUR都市機構から取得したと聞いて、正気の沙汰ではないと思った。2016年に同社は同じ沿線の「ルピアコート川口戸塚」200戸と「ルピア「ルピアコート鳩ケ谷本町」146戸の販売を開始した。3物件で686戸だ。
その後、「川口戸塚」と「鳩谷本町」も順調に売れたのには驚いたが、〝柳の下〟はないと思った。「浦和美園」はよく売れて年間100戸、完売まで3年半かかると読んだ。下手をすれば、マンション事業担当の同社取締役事業部長・金児正治氏の〝クビ〟が危うくなると心配もした。
今でも記者の読みは間違っていないと思う。かつて川口元郷、鳩ケ谷、東川口などの埼玉高速鉄道沿線のマンションはまずまずの売れ行きを見せていたが、ここ数年間は用地・建築費の高騰と購入層の所得の伸び悩みによる板挟みが顕在化し、竣工までに完売する物件は姿を消したからだ。〝3,500万円の壁〟が立ちはだかる沿線だ。
加えて、「浦和美園」は始発駅にも関わらず、遅々として進まない駅前開発(記者は都市開発の失敗とみているが)が足かせとなっている。4年遅れて開業したつくばエクスプレスの流山おおたかの森、柏の葉キャンパスと比べていただきたい。街づくりのスピードは雲泥の差で、マンション単価は広がる一方だ。
ポラスの〝引き立て役〟となったNTT都市開発「ウエリス浦和美園」はいい物件だと思う。目の前が大きな公園(緑はまだ成熟していないが)なので住環境もいい。坪単価170万円は適正だと思う。販売が長期化しているのは、ひとえに駅前がなかなか整備されないことが主因だと思う。
記者はこの10年間で10回くらい浦和美園駅を訪れている。駅前にはゆっくりコーヒーを飲みタバコを吸い、食事ができるところが一つもない。駅前のホテル(インだが)は宿泊者しか利用できない。レストランなどない。喫煙所は駅前に最近設置されたが吹きさらしだ。記者はサッカーファンではないが、サッカースタジアムまで15分も歩くファンがかわいそうだ。
ポラスは、エリアでの戸建て分譲の実績も多く需要層の特性を熟知しているはずで、NTTの動向を見ながら販売できた有利さはあったが、何しろ双方合わせて1,000戸を超える多さだ。どう考えても〝売れるはずはない〟という結論に達した。
ところが、2018年6月に分譲開始してから年内までに約130戸を成約したと聞いて、わが耳を疑った。フェイク・ニュースではないかとも疑ったが、まさか同社はうそを言うはずがないと考え、この年の「ベスト3マンション」の一つに選んだ。
記事では「坪単価が156万円(当初は150万円と書いた)と安く、同社オリジナルの『ピアキッチン』付きを約4割に高め、食洗機、ディスポーザー、バックカウンター・吊戸棚、98センチの廊下幅、複層ガラスなどを標準装備にしているのが人気なのだろうが、信じられない」と書いた。
一般にも公開される広場
サブエントランス付近
◇ ◆ ◇
読者の皆さんはこの販売スピードをどう評価するか。記者は、埼玉高速鉄道沿線の3物件686戸を4年間で売り切ったのは奇跡だと思う。
都心部の大手デベロッパーによるアッパーミドル・富裕層向け、コンパクトはよく売れているが、郊外部は完売まで時間がかかっている。この物件に近い売れ行きを見せた最近の郊外物件では、野村不動産が2016年に分譲開始した全516戸の「オハナ淵野辺ガーデニア」(坪単価148万円)と、2018年分譲の新日鉄興和不動産・総合地所「リビオシティ・ルネ葛西(TOKYO ALOHA PROJECT)」全439戸(坪単価214万円)くらいしか思い浮かばない。
中島氏は、「今後は当社の主な顧客層である年収400~600万円向けの郊外・大規模・駅近のコンセプトが通用するか、潮目が変わらないか、建築費も上昇しているだけに注視する必要があるが、今度分譲する『大宮』をぜひ見ていただきたい。凄いですよ。『柏』? 『柏』も坪単価150万円台で勝負する」と話した。
ポラスは浦和レッズの公式スポンサーなので、記者は「早期完売はNTTさんがアシストしたのでは」と聞いたが、「……」中島氏は答えなかった。
それにしても、同社マンションディビジョンのスタッフは14名だというから、一人当たり売上高は約12億円だ。金児氏は呵々大笑しているのではないか。
広場に植わっているヤシの木は1本60万円とか。何本もあった
2018年 記者が選んだ「ベスト3マンション」(2018/12/20)
〝待つわ〟ピアキッチン4割に設置 レベル高いが一層の差別化を ポラス「浦和美園」(2018/6/2)
ポラスグループ 埼玉高速沿線でマンション強化200戸の「川口戸塚」分譲開始(2016/7/30)
業界とマンション適齢期に勇気 野村不「オハナ淵野辺ガーデニア」驚異的売れ行き(2018/1/13)
裏千家の屋敷に隣接 目の前は柳田國男旧居跡 NTT都市開発「ウエリス市谷加賀町」
「ウエリス市谷加賀町」
NTT都市開発が分譲中の億ション「ウエリス市谷加賀町」を見学した。物件名にもあるように、現地は旧加賀藩の屋敷跡地で、大日本印刷の本社のほかは官舎、社宅・寮、高級マンションが建ち並ぶ希少エリアで、同社の物件は裏千家の屋敷に隣接、柳田國男旧居跡が目の前の平均100㎡超というのが最大の特徴だ。
物件は、都営大江戸線牛込柳町駅から徒歩6分、新宿区市谷加賀町二丁目に位置する敷地面積約1,425㎡の第一種中高層専用住居地域に位置する5階建て全20戸(事業協力者住戸4戸含む)。現在分譲中の住戸(6戸)の専有面積は98.70~116.13㎡、価格は16,480万~26,980万円。坪単価600万円。竣工予定は2021年1月下旬。設計・監理はアーキフォルム。施工は鉄建建設。デザイン監修は林国美 アンド アトリエアール。販売代理は東急リバブル。
現地は、敷地西側と北側が裏千家今日庵の屋敷に隣接。道路を挟んだ対面は柳田國男旧居跡でもある大妻女子大の寮。
建物は、旗竿敷地を逆手にとってアプローチ部分に石畳を敷き、表通りから奥まった邸宅を演出。共用部に職人の技による伊達冠石のオブジェ、コールテン鋼の壁面、ガラスアートを配している。
住戸プランは内廊下方式で1フロア4戸構成。114㎡のモデルルームは、キッチン、洗面、浴室ともカウンタートップはシーザーストーン、突板壁、食洗機、デイスポーザー、ハンズグローエ水栓、ナグリ仕上げリビングドアなど。
販売を担当する東急リバブルの菅谷智・マンションギャラリー所長は、「近隣には比較的コンパクトタイプや70㎡程度の分譲マンションが多い中で、全住戸の平均専有面積が平均102㎡というのが特徴。お客さんは他の物件も見学されているが、一様に『素敵』と言われる。設備仕様レベルの高さもご好評いただいている」と語っている。
裏千家今日庵(マンションはこの裏に建つ)
◇ ◆ ◇
同社の億ションを見学するのは2013年の「代官山」と「有栖川」、2015年の「銀座二丁目」に続き4件目だった。
周辺の住環境は申し分ない。眼下に裏千家今日庵の屋敷を眺められる価値は大きい。今日庵の内部の見学は断られたが、外観を写真に撮ることは許可された。道路を挟んだ対面の柳田國男旧居跡に建っている大妻女子大寮もなかなか立派だ。億ションと見まがうほどだ。
アプローチの石畳をどう表現するか、隣接の裏千家の借景がどのようなものか、完成してみないと分からない部分も多いが、ギャラリーには伊達冠石のオブジェ、コールテン鋼の壁面、ガラスアートの実物も置かれていた。お客さんが〝素晴らしい〟の声を上げたのもよく分かる。完成が待ち遠しい。
NTTの社宅跡地で分譲される三菱地所レジデンスの定期借地権付き「ザ・パークハウス 市谷加賀町レジデンス」228戸を見学することも決まっているので、レポートしたい。こちらのマンションも立地は最高にいい。
モデルルーム
本物の億ションを見たNTT都市開発「ウェリス代官山猿楽町」(2013/9/20)
注目の築地エリア 旭化成不レジデンス「アトラス築地」の第1期分譲は50戸
これまで13週にわたってモデルルーム来場は満席になっていた注目物件、旭化成不動産レジデンスの「アトラス築地」161戸(事業協力者住戸37戸含む)の第1期50戸の登録申し込みが2020年3月7日(土)〜3月14日(土)まで受けつけられる。価格は6,990万〜14,770万円、専有面積は54.59~88.61㎡。
同物件より先に分譲開始された近接する大和ハウス工業「プレミスト東銀座築地Arc Court」117戸、「プレミスト東銀座築地Edge Court」63戸、コスモスイニシア・大和ハウス工業「イニシア築地レジデンス」82戸(うち事業協力者住戸18戸含む)はトータルで約90戸が分譲され、現在約30戸が分譲中。
「アトラス築地」の第1期分譲戸数50戸は果たして多いのか少ないのか。
「晴海」より面白い 坪500万円の攻防 目が離せない旭化成不レジ「アトラス築地」(2020/1/17)