「晴海」より面白い 坪500万円の攻防 目が離せない旭化成不レジ「アトラス築地」
「アトラス築地」完成予想図
旭化成不動産レジデンスが2月に分譲する「アトラス築地」を見学した。大成有楽不動産「オーベル」が戦線離脱したとはいえ、5物件408戸がそれぞれ徒歩数分圏に乱立する大激戦区で、もっとも駅に近い同社の値付け次第では、お互いが手を握り合う大凡戦になるのか、それとも大乱戦の展開になるのか。当事者でなくても目が離せない様相を呈している。
物件は、東京メトロ日比谷線築地駅から徒歩3分、中央区築地6丁目の商業地域に位置する敷地面積約1,914㎡、11階建て全161戸(事業協力者住戸37戸含む)。専有面積は52.19~88.61㎡、価格は未定。竣工予定は2021年10月下旬。設計・監理は永山建築設計事務所。施工は松井建設。販売代理は野村不動産アーバンネット。
現地は、築地本願寺の南側に位置。従前は狭小住宅が密集し、私道は緊急車両も通れない状況にあったのを、同社が2018年に事業参画し、100名以上の権利関係者から同意を得て、地権者38名と等価交換方式で建設するもの。
敷地は4方接道。住戸は1フロア16戸。うち南向きが8戸、北東・北西向きが5戸、南西向きが3戸。北西向きの中層階以上の住戸からは築地本願寺越しに銀座方面が眺望できる。
主な基本性能・設備仕様は、SI、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、食洗機、シーザーストーン天板、ハンズグローエ水栓、室内物干し、ピクチャーレール、コロンボ製ドアノブ、御影石玄関、Low-Eガラスなど。
販売を担当する「レジデンシャルサロン」チーフの野村不動産アーバンネット・松谷和則氏は「事前案内会の来場者は約200組。想定以上の数字で、1月11~13日も営業8名×3回転全て満席。『アトラスを見てから』というお客さまも多く、エリアナンバーワン物件として評価をいただいている」と語っている。
ラウンジアート(ベンチは値段が付けられないほど高価な古材「神代木」)
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大成有楽「オーベルアーバンツ銀座築地」55戸の戦線離脱があったとはいえ、5物件408戸がほぼ同時期に分譲される「築地」は大激戦地であることに変わりはなく、「アトラス築地」がエリア全体の販売を左右するキャスティングボートを握っているのは間違いない。
築地駅から徒歩3分ともっとも駅に近いばかりではなく、4方接道の大規模、しかも、一部の北西向き住戸は近接する築地本願寺越しに銀座方面が眺望できる優位性を持っているからだ。
さらにまた、ファサードデザインは上質な設計で定評のあるアーキサイトメビウスの今井敦氏の重厚で印象的なデザイン、ザ・リッツ・カールトンなどのホテルも手掛けた野口真理氏によるグラスアートが彩るエントランス、ジャパンメイドの白磁によって築地の海を表現したアートがほどこされるラウンジなどもユーザーの心に響くはずだ。
こうした物件の特徴をシアタールームでもよく表現している。ソファーは上段と下段含めて12脚で、1脚数十万円はしそうな豪華なものだった。偶然出土したものを建築材に使用した古材「神代木」を利用したベンチを採用するようだが、これなどは数百万円の価値があるのではないか。
ただ、専有部の設備仕様レベルは他の物件と比べ突出しているとはいいがたい。ほとんど横並びではないか。記者が特に注目したのはトイレで、便器は5物件ともLIXILのサティスSタイプ(DV-S716-R2)だったことだ。まさか各社が〝談合〟したわけではないだろうが、設備機器の流通はどうなっているのか。
さて、肝心の価格。競合物件担当者は一様に「アトラスさんは坪500万円を切る」と見ているようだが、記者は坪500万円を割ることはないとみた。
指標となるのが、2017年分譲の駅直結「アネシア築地」だ。記者は坪500万円を突破かと書いたが、最終的には495万円くらいに落ち着いた模様だ。
その「アネシア」より、今回の物件のほうが価値は高いと記者は読んだ。いま人気の日本橋・人形町エリアの条件のいいマンションは坪500万円を突破している。約23haもある築地市場跡地の再開発を考えれば「築地」が「日本橋・人形町」より上位と見るのが妥当だ。同社が高値に挑戦すればするほど競合他社は〝割安感〟をアピールできるので歓迎するはずだ。
だが、しかし、やはり坪500万円を切るかもしれないという予想も捨てきれない。同社が高値追求したマンションは数えるほどだからだ。販売事務所は大和ハウス工業と呉越同舟の同じビルの上と下。大和ハウスより価格を抑えて、顧客を総取りする戦略に出る可能性も否定できない。
こうしてみると、大和ハウスと、旭化成不動産レジデンスの対決とも見えるし、ここに販売力では他社を圧倒する野村不動産アーバンネットも絡み、三つ巴の戦いと考えることもできる。大和ハウスと旭化成不動産レジデンスが激突すれば漁夫の利を得るのは駅からもっとも遠いコスモスイニシアだろう。
どちらかといえば護送船団方式の「HARUMI」より「築地」のほうがはるかに面白い。
ガラスアート
大成有楽不動産「銀座築地」 同業他社に一括売却か(2019/11/27)
余裕しゃくしゃくか 〝孫の手〟のように細かい点に工夫 大成有楽不「銀座築地」(2019/11/14)
築地のポテンシャル下げる足の引っ張り合いはしない」 ワールドレジ・松本部長(2019/11/19)
あの「青山」の美しい流線形 今度は「銀座築地」 大和ハウスがエリア最高峰(2019/11/8)
販売好調 小田急不他「海老名」第一弾完成 2棟約2,400㎡の駐車場屋上緑化
「リーフィアタワー海老名アクロスコート」
小田急不動産と小田急電鉄は1月16日、小田急線海老名駅とJR相模線海老名駅間の約3.5haの大規模複合開発エリア「VINA GARDENS」で建設を進めていた免震タワーマンション「リーフィアタワー海老名アクロスコート」(304戸)が完成したのに伴うメディア向け竣工見学会を行った。全体で3棟約900戸の第一弾で、坪単価258万円ながら、2018年1月から販売開始2年目で279戸を成約。近接する第2弾の「リーフィアタワー海老名ブリスコート」(302戸)も昨年6月からの販売ですでに104戸を契約するなど極めて好調に推移している。
物件は、小田急線海老名駅から徒歩3分、海老名市めぐみ町に位置する敷地面積約5,035㎡、31階建て全304戸。専有面積は45.25~120.65㎡、価格は3,200万~1億6,488万円(最多価格帯5,700万円台)、坪単価は258万円。事業主は小田急不動産、三菱地所レジデンス、小田急電鉄。基本設計・デザイン監修はアール・アイ・エー。設計・施工は三井住友建設。建物は2019年10月に竣工。
分譲開始は一昨年の1月から。今年1月末現在、最上階の1億円以上のプレミアム住戸7戸を含む279戸が成約済み。
購入者の居住地は海老名市が約37%で、他は県央の6割(横浜市は2割前後)。約5割が持家からの住み替え・買い増し、60歳以上も2割超。家族数はDINKSが約4割、勤務地は厚木市が多いのが特徴。
昨年6月から分譲開始した、駅から徒歩5分の坪単価252万円の「リーフィアタワー海老名ブリスコート」(302戸)もすでに104戸を成約済み。
2025年度の全体計画完了までには、もう1棟のタワーマンション約300戸のほかオフィスやサービス施設などが整備される予定。
高層住居からの眺望(右側が小田急線)
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凄い売れ行きだ。海老名駅圏で大量のマンションが販売されるのに注目したのは2017年だった。小田急は3棟で約900戸を分譲すると発表し、その他のタワーマンションを含めると全体で約2,000戸に達した。わが多摩センター駅圏ではかつて5年間で約2,000戸が分譲されたが、それに匹敵する戸数だった。正気の沙汰でないと思った。坪単価の高さにも驚愕した。多摩センターの最高値坪単価250万円を超えたからだ。
他物件の売れ行きは分からないが、〝苦戦〟の声は聞こえない。本厚木駅前の三菱地所レジデンスの物件も残りは10戸足らずだそうだ。
2017年に開業した駅前の商業棟
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記者がもっとも注目したのは、5階建て自走式駐車場(居住者用169台・来客用2台)の壁面緑化と屋上緑化だった。屋上緑化は約1,200㎡で、芝生広場、ハーブなどの植栽、遊具の設置を行っている。購入者の評価も高いそうだ。
近接する「ブリスコート」の駐車場もほぼ同規模の駐車場が整備されるので、双方を合わせると約2,400㎡(727坪)。
これほど広い面積を屋上緑化したマンションはかつてあったかどうか。国土交通省の平成29年度の調査によれば、「バスタ新宿・JR新宿ミライナタワー」の屋上緑化面積は約3,893㎡だ。これまでの最大では「六本木ヒルズ」の約18,000㎡(屋上緑化というより緑化面積)がある。これよりは小さいが、分譲マンションに限れば過去を含めて10棟あるかどうかではないか。
駐車場の屋上緑化
億が建設中の「リーフィアタワー海老名ブリスコート」
第1期167戸成約 小田急不ほか「海老名」のタワーマンション好調(2018/4/13)
伊藤忠都市開発 新宿に常設の「ギャラリークレヴィア新宿」2月10日開設
「ギャラリークレヴィア新宿」
伊藤忠都市開発は2月10日(土)、常設の「ギャラリークレヴィア新宿」を都営新宿線・大江戸線・京王新線駅直結(JR新宿駅徒歩5分)の「新宿マインズタワー」20階にオープンする。開業に先立つ1月10日、メディア向けに公開された。
〝MORE CREATIVE〟をコンセプトにモデルルーム2タイプのほか、トークイベントやマンション生活に役立つセミナーなどを行う「CAFE SPACE」、インテリアなどの書籍・雑誌が読めるLIBRARY、個性的な独立型商談ブース(9部屋)、授乳室、キッズスペースを備える。
新築マンション市場購入者に占める共働き世帯の割合が高まり、仕事帰りでも気軽に立ち寄ることができ、効率的に物件見学や比較検討ができるようにしたもので、同社も今後都心エリアでの開発に注力しており、交通利便性の高い「新宿」を総合ギャラリーとして開設したもの。広さは約150坪。年間来場者目標は1,000組。
モデルルームの第一弾は、3月に分譲する「クレヴィア赤羽ステーションテラス」(88戸)の46㎡タイプ。物件は赤羽駅から徒歩8分で、坪単価は330~340万円の予定。
常設ギャラリーについて説明する丹羽氏(左)と同本部兼リノベーション事業チーム・谷豊氏
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デベロッパー各社は、個別のマンションモデルルームから常設モデルルームを設置する方向にある。都心部だけでも20カ所はある。
〝さすがクレヴィア〟と思ったのは、「CAFE SPACE」ではオリジナルのコーヒー、紅茶だけでなく山梨県富士吉田市で採掘・製造したナチュラルミネラルウォーター300ccを振舞われることだ。水までオリジナルというのは聞いたことがない。
この日(10日)、ギャラリーについて説明した同社都市住宅本部都市住宅事業第一部の丹羽誠氏(25)がまた素晴らしかった。身長が186cmもあったのでもしやと思い、野球をやっていたのではと聞いたらどんぴしゃり。名門国学院久我山の外野手で、在学中にベスト8まで進んだとか。
松典男社長!マンション販売力ではトップクラスの伊藤忠ハウジングは今年、RBA野球大会で優勝を狙える戦力が整いつつあります。丹羽さんを季節限定で伊藤忠ハウジングにトレードしてやっていただきたい。チームが優勝してもしなくても、丹羽さんは身長が高い分の成長を遂げるはずです。お願いします。
商談ブース
左から同社オリジナルコーヒー、ミネラルウォーター、マグカップ
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同社は同日夕、メディア向け内覧会とは別に広告代理店、設計会社など関係者向けのイベントを行った。メディア向けは10人くらいしか集まらなかったが、夕方のイベントは酒や食事も提供され、著名人のトークショーなどもあったためか数十人の参加者でごった返した。
記者は事前取材申し込みをしておらず、詳細を紹介できない。前段の数倍面白い記事が書けたのに…〝蛇の生殺し〟だ。残念。
夕方に行われた関係者向けイベント
〝北千住に負けるな〟割り負け京王線の希少免震 日鉄興和不「つつじケ丘」
「リビオつつじヶ丘 タワーレジデンス」
日鉄興和不動産が3月に分譲する「リビオつつじヶ丘 タワーレジデンス」を見学した。京王線つつじが丘駅から徒歩2分の免震17階建て全105戸(非分譲住戸36戸含む)。坪単価380万円でほぼ完売した三菱地所レジデンス「千住ザ・タワー」184戸を超えるかどうかが記者の最大の関心事だ。
物件は、京王線つつじヶ丘駅から徒歩2分、調布市東つつじヶ丘一丁目に位置する17階建て全105戸(非分譲住戸36戸含む)。専有面積は33.36~78.28㎡、価格は未定。竣工予定は2021年11月下旬。設計・施工は淺沼組。販売代理は伊藤忠ハウジング。
現地は、スーパーマーケットの跡地で、道路を挟んですぐ京王線の線路が走る商業地域の一角。
建物は17階建て、2階建て商業棟との複合。住居は2階以上。コンパクトからファミリータイプまで1フロア6~7戸。ほとんどは眺望が開ける東向きと南向き。4戸ある78㎡の住戸からは富士山が眺望できそう。モデルルームは白の「つつじ」をイメージした木目調を強調した明るいデザイン。
担当者は、記者の「京王線は他の沿線と比べ割り負けしている。三菱地所レジデンスさんの坪単価380万円の『北千住』には負けてほしくない」という挑発に乗り、「わたしも『北千住』には負けたくないと思いますが…沿線の他物件はみんな価格が低いので…これから価格を決める」と語っている。
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以下は、京王線に40年以上住む記者の我田引水の手前勝手、牽強付会の記事であることを了承していただきたい。しかし、極力客観的データに基づき、一般のお客さんをミスリードしないように心掛けたつもりだ。
前段で「京王線は割り負けしている」と書いた。これは記者だけでなく、他のデベロッパー担当者もそう思っているはずだ。
マンションの利便性は、これまでは新宿、渋谷、池袋、東京、あるいは中核都市の立川、横浜、浦和、大宮などが起点となっていたのに、ここ10年くらい前から東京・大手町一色になった。ために単価的に低水準だったエリアが注目され、冒頭に書いたように「千住ザ・タワー」は、大手町へ16分の利便性が評価されたのか残り1戸と信じられない売れ行きを見せている。
記者は、住宅地としては「北千住」より上位で、利便性でも新宿へ18~21分の「つつじケ丘」は「北千住」と同程度の評価が妥当と考えている。
記者の主張を裏付けるデータもある。国土交通省のデータだ。
JR・私鉄各線の主な路線別の1カ月当たり(平日20日)遅延証明書発行日数でもっとも少ないのは東武東上線の3.0日で、第2位が東武伊勢崎線の4.2日、第3位が京王井の頭線の3.3日、以下、相鉄線4.2日、大江戸線4.9日、京王線5.0日の順。
沿線人気が高い中央快速は18.8日、山手線は17.0日、東急東横線は15.1日、小田急線は14.8日だ。これまで遅延が少ないと言われていた京急線でも5.7日だ。最悪なのは中央・総武線各駅停車の19.2日。
混雑度だって多沿線は軒並み180~190%台なのに対して京王線は120~160%台にとどまっている。スマホや新聞がかろうじて読める(読めないか)混雑度だ。
このことからも、いかに京王線が決められた時間にきちんと目的地に着く、住みよい街であることがわかる。
まだある。京王電鉄は、令和4年完成を目指し京王線(笹塚駅~仙川駅間)連続立体交差事業を行っているが、新しく整備される7駅(代田橋駅・明大前駅・下高井戸駅・桜上水駅・上北沢駅・芦花公園駅・千歳烏山駅)の駅舎の外観デザインを昨年決定した。駅は一変する。
記者の街のポテンシャルを図る「ホテルの有無」「百貨店の有無」「歴史・文化」という3つの物差しで測ると京王線はどうなるか。
「ホテル」とは結婚式・宴会ができるホテルの意味で、起点の新宿を除き京王線には調布、多摩センター、八王子と3カ所ある。中央線も小田急線も東横線、田園都市線だって1つか2つだし、東武東上線・伊勢崎線には1カ所もない。
百貨店はどうか。これは時代の流れか、3つも4つもあった京王線はゼロになり、まだ2つもある中央線・立川に圧倒的に負ける。しかし、百貨店は他沿線も少ないはずだ。
3つ目の歴史・文化・飲食の充実度だが、これも京王線は他に負けない。コンサートホールは5つも6つもある。酒は多摩市限定の「原峰のいずみ」がある。
どうだ、みなさん。マンションのパンフレットは広告代理店に丸投げしているのだろうが、別のモノサシに改めたほうがいい。〝駅近〟と〝大きさ〟のみの希少性や、データがあいまいな〝住みたい街ランキング〟などは辟易だ。
ここまで書いてきたのだが、実際の市場はどうか。沿線の最高値マンションは、2017年竣工の三井不動産レジデンシャル「パークリュクス渋谷西原」の坪単価400万円で、2017年竣工の野村不動産「プラウド府中ステーションアリーナ」の坪360万円が続く。いま分譲中の同じ「つつじケ丘」の物件は坪300万円を大きく割り、坪300万円を超える「調布」の物件も〝苦戦〟が伝えられている。坪単価300万円の厚い壁がある。
日鉄興和「つつじケ丘」は、京王線で2棟目か3棟目となる免震は強調材料だが、設備仕様レベルはLIXILのトイレ「サティス」以外はやや物足りない。よって「北千住」を超えるのは微妙と読んだ。野村「府中」は超えてほしいが…。
記者が選んだ 2019年「話題のマンション」28物件(21~28)
野村不動産「プラウドタワー武蔵小金井クロス」716戸
「musako」(小杉)を越えた「musako」(小金井)
「プラウドタワー武蔵小金井クロス」
「武蔵小金井」も「武蔵小杉」も「musako」と呼ぶのを全然知らなかったが、「プラウドタワー武蔵小金井クロス」のメディア向け見学会で坪単価が約370万円と聞き、ここ数年ずっと負けていた「武蔵小杉」に追いつき、追い越したかと納得もした。「武蔵小杉」は坪360万円が相場だ。
「武蔵小杉」を超えたと言えば「豊洲」もそうだ。東急不動産他「豊洲」が坪400万円を突破して追い抜いた。
モリモト「ピアース神楽坂レジデンス」55戸
完成在庫ほとんどなし 〝中堅の星〟
「ピアース神楽坂レジデンス」
年間800戸以上供給して完成在庫ほぼゼロ 快進撃続くモリモトのマンション(2019/9/7)
取材して当たりはずれがないのがモリモトだ。同社のマンションは年間5物件くらい見学しているが、〝これはいかがなものか〟と思ったのはここ数年間で繁華街立地の「蒲田」の1物件しかない。その「蒲田」が瞬く間に売れたのには驚いた。プランがよかったのだ。
この「神楽坂」の坪単価は505万円。神楽坂駅圏最高値だ。55戸のうち30~40㎡台のコンパクトが7割を占め、残りは億ション。その億ションが全て売れ、残りは数戸。
〝中堅の星〟などと書くと森本社長にまた怒られるかもしれないが、記者は大手数社以外を全て「中堅」と呼ぶ。悪しからず。
モリモト「アールブラン高津レジデンス」88戸
他社なら7階建てを敢えて6階建て
「アールブラン高津レジデンス」
〝72㎡より64㎡のほうが有効面積は広い〟ワイドスパンで差別化 モリモト「高津」(2019/1/28)
今年の「ベスト3マンション」と「話題のマンション」を合わせると全部で31物件。偏りのないようにまんべんなく選んだつもりだ。企業別でもっとも多いのは東京建物の5物件(JV含む)で、野村不動産4物件、住友不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、モリモトが各3物件。
結果的にそうなっただけで、意識して選んだわけではない。いかにモリモトが優れた物件を供給しているかが分かってもらえるはずだ。
この「アールブラン高津レジデンス」も残り数戸。相対的に単価相場の高いエリアだが、徒歩10分で坪単価270万円の88戸を竣工までに売る自信のあるデベロッパーはどれだけあるだろうか。
旭化成不レジデンス「アトラス荻窪大田黒公園」41戸
あまりにも安い 自社社宅跡地の公園隣接低層
「アトラス荻窪大田黒公園」
自社社宅跡地 公園借景取り込むプラン秀逸 旭化成不レジ「荻窪大田黒公園」(2019/1/19)
見学したのは今年1月だった。現地は旭化成グループの社宅跡地で、地元の人なら知らない人はいない「大田黒公園」に隣接する第一種低層住居専用地域立地。記者は坪500万円でも売れると予想したが、記事でも書いたように坪460万円くらいで分譲されたようだ。当然のように早期完売した。
高値を追求しないのは同社の伝統か。15年前に竣工した駅直結の同社の「アトラスタワー北千住」は確か坪220万円だった。瞬く間に売れた。その後も2008年竣工の「アトラスタワー向ヶ丘遊園」(251戸)は坪210万円、2009年竣工の「ステーションプラザタワー」(285戸)は坪260万円、2011年竣工の「アトラスタワー茗荷谷」(244戸)は坪381万円…。
「宮益坂」と「築地」はいくらになるか。川畑社長は「適正な価格で」と語っている。
東京建物など6社JV「SHINTO CITY」1400戸
先は長いが…すでに500戸超成約
「SHINTO CITY」
東建など6社JV「SHINTO CITY」第1期350戸 昨年の一挙販売戸数を上回る(2019/1/11)
取材したのは昨年の11月。坪単価は250万円に収まると予想したが、さすがに未着工を含めトータルで1,400戸もあるためか、第一期の350戸は坪240万円を下回った模様だ。記者が惚れたのはアプローチのケヤキの街路樹だ。
1年間で500戸超の成約というのは順調に推移していると言えそうだ。
三菱地所レジデンス他「ザ・パークハウス本厚木タワー」163戸
〝快進撃〟三菱地所はここから始まった
「ザ・パークハウス本厚木タワー」
地元富裕層を中心に人気 坪単価260万円の三菱地所レジ「本厚木タワー」(2019/1/16)
「北千住」は「ベスト3マンション」で紹介したが、「本厚木」も全住戸を供給、残りはわずか12戸。これまた凄い。
何を尺度とするかだろうが、この1年間を振り返って、メディアにもっとも露出度が高かったデベロッパーは三菱地所ではないか。
同社は、年初のこの「本厚木」を始め「北千住」と常設モデルルームの「高輪」の記者発表3連発と、容姿端麗・眉目秀麗 三菱地所×隈研吾の 「CLT PARK HARUMI」、CLT使用量では国内最大 「みやこ下地島空港」、わが国初のCLT高層「高森」などで圧倒的な存在感を示した。
また、「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」の公式スポンサーとして〝三菱地所を、見に行こう。〟を内外にアピールした。他社に影すら踏ませなかったのではないか。吉田社長は高笑いしているはずだ。おっと、「上尾」では地団太を踏んだか。
日本エスコン「レ・ジェイド豊田 マスターヒルズ」63戸
約2.5~3.9畳大のFテラス付きヒット
「レ・ジェイド豊田 マスターヒルズ」
3帖大の「Fテラス」ヒット 日本エスコン「豊田」 坪236万円も割安(2019/11/8)
日本エスコンが中部電力グループ入りをしたのを全然知らなかった。中電が名鉄不動産でも三交不動産でもなく、大阪が創業の同社と組むのは、名鉄も三交も瞬く間に追い抜いた同社の成長性を評価したのだろう。
「レ・ジェイド豊田 マスターヒルズ」も差別化が図れている。専有でなくて共有部分の約2.5~3.9畳大のFテラス付きがヒットした。残りはわずかだ。
三交不動産「プレイス和光市本町」22戸
坪285万円でも瞬く間に売れた
「プレイス和光市本町」
売れ行き好調 完成販売 駅に近く環境もよい三交不「プレイズ和光市本町」(2019/1/10)
わが故郷・三重県の三交不動産の「プレイス和光市本町」だけは、多少、我田引水、牽強付会的なところがないわけではないが、駅から徒歩2分の閑静な低層住宅地に加え、水準以上の設備仕様が評価された。2カ月くらいで完売したのではないか。
三菱地所レジデンス「北千住」にぶつけた「プレイス北千住」78戸もあとわずか。来年2月の竣工まで完売するのは間違いない。
東海の日本エスコンと三交不動産の物件で今年の「話題のマンション」28物件を締める。終わりよければすべてよし。伊勢は津で持つ津は伊勢で持つ、尾張名古屋は城で持つ-ここまで辛抱強く付きあっていただき感謝いたします。来年も全力でマンション現場を追い続けますのでよろしくお願いいたします。
記者が選んだ 2019年「話題のマンション」28物件(11~20)
東京建物他「白金ザ・スカイ」1247戸
会心の単価予想700万円超 的中!
「白金ザ・スカイ」
坪単価700万円を超えるかどうか 東京建物ほか 山手線内最大級「白金ザ・スカイ」(2019/7/29)
事業比率は非公開だが、事業主は東京建物を筆頭に長谷工コーポレーション、住友不動産、野村不動産、三井不動産レジデンシャル5社連合。
詳細は添付した記事を読んで頂きたい。11月に分譲開始した第1期1次と2次で合計300戸。戸数が多いので現段階では何とも言えないが、億ションを中心に高額住戸が中心だったことを考慮すると絶好のスタートを切った。
何が嬉しいかといえば、同業の記者との坪単価の賭けに小生が勝利したことだ。小生は「坪700万円以下はあり得ない」と予想し、同業記者は「坪650万円以下」と言い張った。そこで、予想を外したほうが焼き鳥を奢る賭けが成立した。
同社に正確な坪単価を問い合わせ中で、現段階で回答はないのだが、坪700万円を突破したのは間違いない。今後は中低層住戸も大量に供給されるので単価は下がることもありうるが、平均では700万円を維持するのではないか。
この前一緒に飲んだが、お金を払わせるのはかわいそうなので割り勘にした。いちばん飲んだのは小生だが、もっと飲みたかった。
東急不動産他「ブランズタワー豊洲」1152戸
第1期400戸! 坪単価は400万円突破!
「ブランズタワー豊洲」
「愛」をテーマに坪400万円に挑戦 7月下旬にモデルオープン 東急不ほか「豊洲」(2019/6/14)
東急不ほか 全1,152戸の「豊洲」事業説明会に40名超の報道陣 〝愛〟に反応(2019/2/18)
売主は東急不動産・NIPPO・大成有楽不動産・JR西日本プロパティーズの4社。11月上旬に分譲開始された第1期分譲は450戸で、坪単価は410万円くらいになった模様だ。
マンション取材で何が面白いかといえば単価予想だ。記者はすべて取材する前に予想する。正確な単価の前後5%以内を的中とみなせば、的中率は7割くらいに達するはずだ。これがギャンブルだったら蔵は2つも3つも建つ。
なぜ予想するか。市場をしっかり把握できているかどうかを確認するためだ。自慢じゃないが、あの「東京ミッドタウン六本木」の入札価格を1,800億円と予想し、ズバリ的中させた(落札価格は1,850億円でその誤差はほんの3%弱)。前述の「白金」だって、この「豊洲」も「月島」もほとんど的中させた。
「豊洲」については、業界内では坪400万円はありえないとするのが支配的だったが、記者は2月のプロジェクト発表会で次のように書いた。
「『豊洲』は中央区でなく江東区だが、ポテンシャルは負けていないと思う。『月島』が434万円なら400万円超はありうるような気がするがどうだろう。『月島』は制振で『豊洲』は免震。規模もはるかに大きい。チャレンジしてほしいが、戸数が1,230戸(本日発表は1,152戸)もあるのでそんな勇気があるかどうか」
東急不動産が売主にもなっている「晴海」との競合はあるようでないと見た。
忘れていた。このマンションのテーマは「愛」だ。これまたいい。記者のモットーは〝記事はラブレター〟〝人生は愛〟だ。
コスモスイニシア「イニシア中央湊」36戸
パーカーズとのコラボ 緑の量と質に感動
「イニシア中央湊」モデルルーム
パーカーズとコラボの第三弾 コスモスイニシア「中央湊」の緑の質と量に感動(2019/6/3)
〝モデルルームのフェイクの観葉植物をやめよ〟ともう数十回くらいは記事にしてきたが、最近は本物の植物を配置するところが増えてきた。とても嬉しい。
コスモスイニシア「イニシア中央湊」がその筆頭だ。売り出してすぐ半数に申し込みが入り、モデルルームはこれから分譲する「銀座築地」に変更したので営業活動はしていないようだが、残りはわずかのはずだ。
もう、これ以上書かないが、デベロッパーはコスモスイニシアと積水ハウスを見習うべきだ。
タカラレーベン「レーベン上尾GRAN MAJESTA」183戸
地所レジから販売直前で専有卸受け完売
「レーベン上尾GRAN MAJESTA」
地所レジから専有卸受け分譲 タカラレーベン「上尾」1年で全183戸完売の勢い(2019/7/30)
このマンションには驚愕した。今年の「話題のマンション」ナンバーワンはこの物件か。「上尾」で183戸をほとんど何もしないで(失礼。しかしフェイクの観葉植物を含めモデルルームもほとんど地所が設えた)売ったのは前代未聞、空前絶後の快挙だ。添付した記事を読んで頂きたい。
同社の島田社長は呵々大笑し、一方の地所の西田社長は「北千住」「本厚木」「和光」などが好調なので痛くもかゆくもないかもしれないが、ひょっとしたら頭から湯気が出るほど怒り心頭状態ではないか。
味を占めたタカラレーベンは虎視眈々と他の物件も狙っているのではないか。檄を飛ばす島田社長の顔が浮かぶ。
野村不動産「恵比寿ヒルサイドガーデン」88戸
恵比寿駅圏最高峰 坪900万円弱で完売
「恵比寿ヒルサイドガーデン」
恵比寿駅圏の最高峰 坪900万に迫る 野村不「恵比寿ヒルサイドガーデン」が人気(2019/4/19)
「恵比寿ヒルサイドガーデン」は、確かに恵比寿駅から徒歩5分と近く、飲食街を抜けた住宅街の入り口で、しかも傾斜地。敷地内と隣接地には既存の立派な巨木が植わっている。
しかし、坪900万円弱というのは、これまでの恵比寿駅圏の単価相場を大幅どころか突き抜けている。それをものともしない。いつの間にか完売になっていた。これが「プラウド」か。凄いの一言だが、宮嶋社長は〝これがうちの実力だ〟とうそぶくか。
大和ハウス・コスモスイニシア「プレミスト東京王子」222戸
坪200万円 23区ではありえない価格
「プレミスト東京王子」
販売順調に納得 坪単価200万円は希少 大和ハウス「東京王子」(2019/4/14)
JR・東京メトロ南北線王子駅からバス約8分、徒歩3分。最近の〝駅近〟志向からすれば苦戦必至と見たが、坪200万円はストライクゾーンだと思った。
戸数が多いので竣工の2020年2月中旬までに完売するのは難しいだろうが、逆に竣工すればこの物件の特徴が理解されるはずだ。前方が幅約100mの隅田川・スーパー堤防というのは得難い。
ポラス中央住宅「ルピアコート新越谷」85戸
新越谷駅圏最高値の坪210万円
「ルピアコート新越谷」
主婦目線の商品企画が抜群 ポラス 全85戸の「新越谷」販売好調(2019/4/12)
「話題のマンション」記事の冒頭に書いた「ルピアコート稲毛」と一緒に読んで頂きたい。この「新越谷」は知らない人は皆無の同社のおひざ元。2月の第1期52戸が即日完売し、6月までに完売したのは当然か。
至れり尽くせりの設備仕様に仕上げた商品企画は言うことなし。新越谷駅圏最高値の坪210万円でも記者はものすごく安いと思った。
新日本建設「エクセレントシティ本八幡駅前」90戸
千葉県最高値 坪300万円強 完売
「エクセレントシティ本八幡駅前」
顔認証、食洗機、ミストサウナ標準 販売好調 新日本建設「本八幡」「幕張本郷」(2019/4/4)
坪単価300万円といってもみんな当たり前と受け取るかもしれないが、こと千葉県に限って言えばバブル崩壊後は供給されたことがないのではないか。
それを更新したのが同社の「エクセレントシティ本八幡駅前」だ。しかし、〝20坪で6,000万円〟の壁が厚いことを熟知している同社はコンパクト中心に抑えた。71㎡は1スパンしかない。全90戸を完売したのはさすがというべきか。
モリモト「アールブラン武蔵新田」79戸
〝オールジャパン〟に負けない
「アールブラン武蔵新田」
モリモト・武蔵新田vsオールジャパン(三菱・三井・野村)・矢口渡 多摩川決戦(2019/3/29)
売れ行きがいいからか、経費を節減するためか、大型案件が少ないためか、最近のモリモトはモデルルームを設けない物件が増えてきた。記者はこれが不満なのだが、「アールブラン武蔵新田」はしっかりモデルルームを作り、販売している。
どこがいいかは記事を読んで頂きたい。4月から販売を開始し、残りは1ケタ。2020年3月の竣工までに完売となる可能性が高い。
これだけなら「話題のマンション」に入れない。〝たかだか79戸のマンションを竣工までに売ったからと言って話題とは何事か。うちを見くびるな〟と森本社長に一喝されそうだ。
どうして入れたか。隣駅の矢口渡では三菱地所レジデンス・三井不動産レジデンシャル・野村不動産のいわば〝オールジャパン〟の「ザ・ガーデンズ 大田多摩川」378戸が分譲中で、モデルルームは双方が隣り合わせ。
そもそも戸数が全然違うので、例えは適当でないかもしれないが、野球で言えば西武・ソフトバンク・広島vs巨人(どこでもいいが)だ。結果は火を見るより明らかだ。
記者が驚いたのは、モリモトは自社のワイドスパンと、どことは表示はしなかったが「一般的な間取り」を並列して、堂々と販売事務所に張り出していたことだ。
双方ともまだ販売中なのでどっちが勝ってどっちが負けたなどとは書かないが、オールジャパンを敵に回して残り1桁というのは凄いではないか。
京阪電鉄不動産「ファインシティ新越谷」179戸
設備機器の〝見える化〟徹底も奏功
「ファインシティ新越谷」
「ESSE」とコラボ 設備機器・収納の〝見える化〟徹底 京阪電鉄不「新越谷」(2019/12/7)
記事にも書いたが、この会社は取材のし甲斐がある。担当者は奥歯にものが挟まったようなものいいをしない。本音で語ってくれる。
この物件の敷地は、長谷工コーポレーションの研究所だったところで、同社が分譲するということは、それほど関係が深いということだ。
東武伊勢崎線は、京王線もそうだが、利便性が高いのに正当な評価をされていない。千代田線「北千住」が坪380万円で売れるのだから、その北千住から15分の半蔵門線とも日比谷線とも呼べる「新越谷」がどうして半値以下なのか。東武さん、ブランディングを見直していただきたい。
記者が選んだ 2019年「話題のマンション」 28物件(1~10)
記者が選んだ今年(2019年)の「話題のマンション」28物件を紹介する。例年は30物件以上紹介しているが、「ベスト3マンション」の記事でも書いたように、今年見学した物件は72物件で、前年の86物件より10物件以上も減少したことも考慮し、この数字にした。選定は記者の独断と偏見によるものだが、誰かさんのように相手によって記事内容を変えるような器用なことはできないし、極力公平に務め、大手中小の別なく選んだつもりだ。記事は直近のものから紹介し、随時更新します。
ポラス中央住宅「ルピアコート稲毛」74戸
来場者「ここのモデルが一番いい」
「ルピアコート稲毛」ホームページから
トータルで約3,000戸 大激戦の総武・京葉線 ポラス「稲毛」 第一期が即日完売(2019/12/13)
〝全74戸のうちの第1期9戸が即日完売したくらいで話題のマンションとは馬鹿にするのも程がある〟-などと叱声、罵声を浴びせられそうだが、記者は大まじめにこのマンションの健闘を褒めたい。ポラス中央住宅が12月上旬に分譲開始した「ルピアコート稲毛」74戸だ。
詳細は別掲の記事を読んで頂きたい。ご存じのように総武・京葉線沿線の「稲毛」エリアではトータルで約3,000戸ものマンションが分譲中か今後分譲されることが確定している。〝駅近〟マンションでは竣工してなおかつ2割くらい売れ残っている物件がある。
そんな大激戦地で、戸建てならいざ知らず、マンションではほとんど無名に近いポラス中央住宅が、価格は安いとはいえ稲毛駅から徒歩15分もある、しかも土砂災害特別警戒区域に指定されている致命傷になりかねない海食崖の崖下という三重苦マンションを分譲した。
それでも、来場者は一様に「ここのマンションのモデルルームが一番いい」と評価したという。素顔が見えなくなるほどの厚化粧(オプション)を施したからではない。模型などは他社と比べてもっとも貧相かもしれない。
何が評価されたか。少なくとも百万円はするキッチン収納とダイニングテーブル付きの「ピアキッチン」タイプを約7割に採用し、他社が70㎡の3LDKなのに対して7割以上を73・75・83㎡にしたのが支持されたのだ。
この物件だけでは掉尾を飾るには物足りないかもしれないが、2018年6月から分譲開始され、2018年「ベスト3マンション」にも選んだ同社「ルピアグランデ浦和美園」340戸は残り20戸という。2020年1月の竣工までに売る気のようだ。これは奇跡だ。
――とまあ勢いに任せて「話題のマンション28」について書き始めたのだが、ここまで約1,000字。このペースで進めれば400字原稿用紙にして約70枚。これでは誰も読んでくれない。なので、以下は最小限にとどめたい。
小田急不動産他「リーフィアレジデンス橋本」425戸
坪単価150万円 これ以上安いマンションはない
「エガオガオカ プロジェクト(リーフィアレジデンス橋本)」
小田急不他「橋本」 坪単価は150万円か 敷地の3分の1が里山 自然派の心捉えるか(2019/10/7)
小田急不動産(事業比率50%)・積水ハウス(同40%)・神鋼不動産(同10%)の3社JV「エガオガオカ プロジェクト(リーフィアレジデンス橋本)」の第1期55戸が即日完売した。
全体で425戸もあり、京王相模原線橋本駅から徒歩19分(バス3分、徒歩3分)の立地なので前途は容易ではないが、引き続き第1期2次45戸を追加供給し、第2期15戸を2020年初に分譲するというからまずまずの船出だ。
特筆できるのは価格の安さだ。記者は取材した10月の段階で坪単価は150万円かと書いたが、それほど狂いはないはずだ。
いま首都圏で分譲中、あるいは直近に分譲されるマンションの中でこれほど安い物件は皆無のはずだ。敷地はもともと小田急電鉄が所有していたからできたことだ。〝安かろう悪かろう〟では決してないと断言できる。
敷地の3分の1は里山。これをどう活用するか。大化けがあるかもしれない。
記者は京王ファンだが、エリアの活性に小田急が貢献してくれるのに拍手喝采。同じ開発地にある戸建てもいい。
三井不動産レジデンシャル「パークホームズ駒沢二丁目」53戸
アール状の外観 流行る予感
「パークホームズ駒沢二丁目」
星野裕明氏がデザイン 柔らかな曲線が美しい外観 三井レジ「駒沢二丁目」(2019/12/5)
今秋行われた三井不動産グループの記者懇親会で三井不動産レジデンシャル・藤林清隆社長から「皆さん、話題のマンションだけでなくしっかり造りこみをした『パークホームズ』を見ていただきたい」と言われた。
このマンションを取材したのは、その商品企画の確かさを確認するのと、外観デザインに惚れたからだ。
記者は、同社が3年前に分譲したアール状の外観が特徴の「パークコート青山ザ タワー」を始め、2018年には「東京ミッドタウン日比谷」と、オーバル状の野村不動産「プラウドシティ東雲キャナルマークス」に感動し、今年は大和ハウス工業「プレミスト東銀座築地」を取材した。これは流行するかもしれない。
「パークホームズ」の商品企画はもう10数年前に一変したのを確認している。「駒沢二丁目」も変わっていない。第1期の売れ行きは把握していないが、アール状のバルコニー付きの価格が1億円を超える北向き住戸は間違いなく売れたはずだ。
日鉄興和不動産「リビオレゾン月島・勝どき」79・96戸
〝世界一〟目指す〝鉄〟の会社 熱くて堅い決意みなぎる
「リビオレゾン勝どき」モデルルームambientum(アンビエンタム)
〝バラバラでアンバランス〟 ミレニアル世代に受けるか 日鉄興和不「勝どき」(2019/11/28)
高くて狭いコンパクトに飽き足りない需要 取り込む戦略か 日鉄興和「月島」(2019/11/27)
テーマは「モロッコブルー」「西日暮里」に旅好き女子のインテリア 日鉄興和不(2019/10/22)
いま各社が血眼になっているコンパクトマンションの最多供給会社は、データがないので確認のしようがないのだが、ひょっとしたら日鉄興和不動産かもしれない。同社はもう十数年前からコンスタントに供給している。
へそ曲がりの記者は、ただただ利回り優先のこの種の〝全員参加型〟のコンパクトに飽き飽きしているのだが、「リビオレゾン西日暮里」を取材して、同社の見方を変えた。とても〝総合力世界No.1の鉄鋼メーカーへ〟をスローガンに掲げる〝鉄(記者は「鐵」のほうが好きだが)〟の会社の子会社とは思えない、いや、だからかもしれない大胆なモデルルームに圧倒されたからだ。
「勝どき」と「月島」のモデルルームを同じ事務所に設置し、それぞれ異なる需要層を独り占めしようという強かな販売戦略に、鉄のように熱くて堅い本気に気圧された。既存のデベロッパーを凌ぐのは同社のような異業種だと思う。ちょっと差があるが…。
東京建物「Brillia上野Garden」98戸
〝獅子奮迅〟勢い止まらぬ業績象徴
「Brillia上野Garden」
大激戦の「築地」尻目に空白区で圧勝か 東京建物「Brillia上野Garden」(2019/11/11)
記者はかつて東京建物を〝眠れる獅子〟と揶揄したことがある。わが国最古の歴史を誇るのに他の大手デベロッパーに大きく水をあけられていた頃だ。
ところが、どうだ。ここ数年の同社のマンション事業は絶好調。まさに獅子奮迅の大活躍だ。記者が選んだ「ベスト3マンション」も、2012年の「多摩ニュータウン」から「池袋」(2013年)「目黒」(2015年)「「大山」(2017年)「一番町」(2018年)までこの8年間で5物件を数え、今年の「晴海」を含めれば6物件となり、三井不動産レジデンシャルとほぼ肩を並べている。
2019年12月期第3四半期決算段階で計上戸数は1,053戸となり、期初予想の1,000戸を上回り、完成在庫はわずか83戸(うち17戸は契約済み)しかない。計上予定戸数は三井不動産の約3分の1だが、利益率は上回っているかもしれない。
そんな好業績を象徴するのがこの「Brillia上野Garden」だ。第1期1次の販売戸数は全77戸のうち5割強の40戸だった。坪単価も上野駅圏最高値となる430万円を突破したようだ。
RBA野球大会でも惜しくも東京ドームを逃したが、〝頑張れベアーズ〟は雲散霧消した。
ナイス「ノブレス新横浜エスアリーナ」83戸
愚直に貫く〝免震〟に高い評価
「ノブレス新横浜エスアリーナ」
ナイス 免震「新横浜」 好調スタート 第一期35戸完売へ(2019/10/31)
10月末に分譲開始した第1期35戸と追加販売した10戸に申し込みが入った。2カ月足らずで半分以上が売れたので、極めて好調なスタートを切った。
取材したときは、有価証券報告書虚偽記載で前会長、前副会長ら3名が逮捕(うち一人は不起訴)されたあとだったので、お客さんへの影響を心配したが、そのようなことはなく、〝免震〟と立地条件が高く評価された。
現地は、以前はラブホテルなどが林立していたエリアだが、マンション化が進んでおり、周辺にはそのような施設は1カ所くらいしかなかった。
大成有楽不動産「グランツオーベル中野」62戸
第1期34戸完売 モデルの出来出色
「グランツオーベル中野」
希少立地で人気呼ぶか 大成有楽不動産「中野」駅圏最高値での販売なるか(2019/10/5)
全住戸の半数以上の第1期34戸が完売するなど、予想通りの好発進。
見学する前は、駅北口から徒歩5分と近いので、飲食店など雑居ビルばかりではないかと思ったら、そうではなかった。まずまずの住宅・中層ビル街だ。
敷地形状を巧みに利用したランドスケープもよかったし、コスモスモアが担当したモデルルームのインテリアデザインは出色の出来だった。予定坪単価は465万円だったが、実際は456万円となった。
それにしても同社の商品企画はどんどんよくなっている印象を受ける。暮れに分譲することになっていた「築地」を他社に売却した。どこが買ったか分からないが、価格を上げる可能性が出てきた。全体的なレベルは競合物件に全然引けを取らない。カギを握る旭化成不動産レジデンスも坪500万円台に乗せる可能性が高いと見た。
大京「ライオンズ川口並木グランゲート」120戸
信じられない安さ 坪単価214万円!
「ライオンズ川口並木グランゲート」
坪単価214万円 信じられない安さ 大京 西川口駅から徒歩5分「川口並木」好調(2019/8/27)
7月に同社の好調マンション「ライオンズ朝霞ベルポートレジデンス」88戸を取材したとき、担当者から「西川口がよく売れている」と聞き、この「ライオンズ川口並木グランゲート」を取材した。
「西川口」は、ソープランドなど風俗系の店舗が〝排除〟され、そのあとに中国系の店がたくさん建っていると聞いていたので、果たして売れるのかと疑心暗鬼だったが、単価が214万円と知り、あまりにもの安さにびっくりした。少し前に取材したタカラレーベン「上尾」は坪190万円だった。
現地の「川口並木」エリアにいかがわしい店は全くなかった。住めば都。
伊藤忠都市開発・東建「クレヴィア上野池之端」62戸
「凄くいい」来場者が感嘆
「クレヴィア上野池之端」
「凄くいい」来場者が感嘆 モデルルームの出来出色 好調の伊藤忠都市「上野池之端」(2019/8/11)
文京区の駅近 「小石川後楽園」&「本郷春日」 好調スタート 伊藤忠都市開発(2019/5/7)
高単価エリアだからこそ生きる「HITO-TUBO(ヒトツボ)」 伊藤忠都市開発「池袋」(2018/12/5)
伊藤忠都市開発はいい会社だ。分譲するほとんどの物件のニュース・リリースを発信し、しかも各物件に新しい取り組みを盛り込む。だから、記者もほとんどの物件を見学することにしている。広報担当者もすぐ対応してくれる。
今年は6物件くらい見学したか。販売担当は伊藤忠ハウジングのRBA野球大会に出場している選手も多いので楽しい。
商品企画でよかったのは「クレヴィア池袋West」「クレヴィア池袋East」池袋」に採用した「HITO-TUBO(ヒトツボ)」だ。物件としては「クレヴィア小石川後楽園」もよかったが、「クレヴィア上野池之端」のモデルルーム提案が素晴らしかったのでこちらを選んだ。双方とも売れ行きは好調。
住友不動産「シティタワー銀座東」492戸(うちSOHO88室)
〝業界のイチロー〟目指す
「シティタワー銀座東」
〝業界のイチロー〟目指すのか 絶好調の住友不 マンション「銀座東」竣工(2019/5/23)
唯我独尊、独立独歩。わが道を行くのが住友不動産だ。今年5月、同社は「シティタワー銀座東」492戸(うちSOHOは88室)の竣工見学会を行った。この段階で契約住戸は約6割で、SOHOは約3割。他社なら真っ青になるのに同社は全然動じない。
そこで西武ファンの記者は、同社が中期計画で分譲事業は「量を追わず利益重視で販売ペースをコントロールしていく」「競争激化の用地取得環境が続く中、『好球必打』で着実に確保する方針は継続する」と打ち出したので、「好球必打」とはどう意味か、それぞれロッテ、阪神ファンの同社広報担当者に次のように質問した。
「西武の山川は本塁打をよく打つが、三振も多い。秋山も打率はせいぜい3割5分。いったい誰に例えればいいか」
返ってきた答えが面白い。「イチローさんは自分が好きなコースはボールでもヒットにする。それと同じ。うちが『好球』と判断した土地を『必打』するということ。三振? ありだと思います」
どうだ、皆さん。同社は業界のイチロー氏を目指すというのだ。
2019年ベスト3マンション 三井他「晴海」地所「北千住」大和レジ「上大岡」
記者が選んだ2019年首都圏ベスト3マンションは、三井不動産レジデンシャルなど10社の「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」、三菱地所レジデンス「千住ザ・タワー」、大和地所レジデンス「ヴェレーナシティ上大岡」と決定した。
「晴海」は衆目の一致するところだろう。「千住」は、東急不動産他「豊洲」と東京建物他「白金」も選択肢にあったが、北千住で坪単価380万円という単価設定と、それでも売れ行き好調なのを評価して選んだ。もう一つの「上大岡」は、大手デベロッパーの物件ばかりでは面白くないし、大激戦地で早期完売した商品企画に惚れこんで選んだ。
物件選定に当たっては、記者が2019年に見学した72物件を対象にし、話題性、商品企画、売れ行きなどを総合的に判断した。
見学物件は、前年の86物件、前々年の105物件から大幅に減少した。その理由は供給そのものが減ったことや記者のフットワークの衰えもあるが、高額を中心に取材に応じてもらえなかった物件が少なからずあったのも影響しており、モデルルームを見学できるのは月曜日と金曜日、それと火曜日又は木曜日しかないのも理由といえる。ただ、見るべきものはほとんど見たのではないかと、この1年間を振り返って思う。
2018年 記者が選んだ「ベスト3マンション」(2018/12/20)
2018年 記者が選んだ「首都圏 話題のマンション」(2018/12/26)
文句なしにいい「HARUMI FLAG」だが…
釈然としない著しい利益増の〝儲け折半〟
「晴海フラッグ(HARUMI FLAG)」
「晴海」については、記者がとやかく書くまでもない。多くの評論家先生や業界紙、さらに「掲示板」も加わって大にぎわいのようだ。他でどのように評価されているのか記者はあまり関心はないが、全体のランドスケープデザインを含めた商品企画は間違いなくトップレベルにあると思う。文句なしの選定だ。
ただ、一つ言いたいのはやはり価格についてだ。坪単価の是非について言及した論評記事はなく、市場価格との比較記事くらいしかないのではないか。
まあそれもいいが、土地の取得経緯を抜きにして「晴海」を論じることはできないと思う。記者は、デベロッパー10社が用地を取得した3年前の段階で、1種当たり8万円とはじき、分譲坪単価は250万円と予想した。
オリンピック・パラリンピックの特殊要因があるとはいえ、ただ同然の土地代を考えれば〝市場価格〟での供給ははあり得ないと考えたし、東京都がそれだけ安く売却するのなら、デベロッパーもまたその分だけ購入者に還元すべきというのが記者の結論だった。
実際はどうか。今年分譲された第1期600戸と第1期2次340戸の平均坪単価は300万円を超えているようだ。購入者から聞いたのだが、消費税額からしてやはり非課税の土地代は坪8万円のようだ。1種8万円とはじいた記者の計算は間違っていなかったことが証明された。
ここで気になるのが、当初、都とデベロッパーの間で交わされた「著しく利益が上がった場合は、譲渡金額について協議する」特約条項だ。
「著しく」とはどの程度かについて、小池百合子都知事は7月26日の記者会見で「全ての住戸の引渡しが完了しまして、収益が確定した時点で分譲予定収入、1%を超える増収があった場合には、敷地譲渡金額の変更について協議することといたしておりまして、その増収分については、経費などを除いて折半する」と語っている。
予定収入の1%を「著しく」と判断するのもどうかと思うが、予定収入とは坪単価約250万円ではないかと記者は見ている。現段階ではなんとも言えないが、協議に入る可能性が高まったと考えるのが妥当だ。「儲けを折半」というのは、あぶく銭のやり取りのようで、購入者が蚊帳の外に追いやられるのは釈然としないものがある。
記者が一番心配しているのは新交通システム「BRT(バス高速輸送システム)」が機能するのかどうかという点だ。これが狂えば売れ行きを大きく左右する。
「HARUMI FLAG」「著しく利益増」の「著しく」とは当初売上計画の1%(2019/7/30)
東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の〝怪〟(2016/8/4)
驚嘆の坪380万円 地所レジ「千住ザ・タワー」
全179戸 わずか10カ月で残り1戸
「千住ザ・タワー」
三菱地所レジデンス「千住ザ・タワー」をベスト3のうちの一つに選んだのは大正解だった。選ぶことを決めてから同社に進捗状況を聞いたら、何と残りは1戸というではないか。分譲住戸は179戸だ。普通の物件だったら10カ月で完売というのはあり得ることだろうが、あの北千住で(失礼)、坪単価380万円で早期完売はまずありえないと思う。億ションも30戸くらいあったのではないか。
これには、京王線の次くらいに東武東上線の市場を熟知していると自負する記者はさして高くはないが鼻をへし折られたような気分だ。東建の「目黒」と同じくらいの衝撃だ。アンビリーバブル!
記者の当初の予想は坪340~350万円だった。これは、三井不動産レジデンシャルが2年前に分譲して人気になった「パークホームズ北千住」の坪単価330万円(同社もこの値段で売れるか疑心暗鬼だった)を参考にはじき出したものだ。どう考えても坪350万円は取得限界を超えていると思った。
なぜ売れたか。これは〝東武伊勢崎線の北千住〟のイメージしかない記者が完全に読み間違えた。地所レジと「北千住」を甘く見ていた。完敗だ。
千代田線だと三菱地所の本社がある大手町駅まで何と16分、199円で着くではないか。大手町を起点とすると16分圏は渋谷だ。
くやしさ紛れに一発。「北千住」の坪380万円の7,600万円(20坪)を買うのなら、わが多摩センターなら30坪が買える。そういう選択肢はないのか。時は金なりだが、郊外のゆったりした居住空間と住環境は金じゃ買えませんよ。
「千住ザ・タワー」のRBAタイムズ記事 dsk18801639-399-2.pdf
地所レジ「千住ザ・タワー」 坪300万円台後半 〝住むなら北千住〟あわび千円!(2019/1/23)
4方良し〟足立区最高値 三井不レジ「パークホームズ北千住」1期78戸が即日完売(2017/11/24)
大和地所レジデンス「ヴェレーナシティ上大岡」
圧巻の商品企画 激戦地で際立つ 132戸完売
「ヴェレーナシティ上大岡」
大和地所レジデンス「ヴェレーナシティ上大岡」は、見学した時からベスト3に入れようと考えていた。駅から徒歩13分とやや距離があるが、建ぺい率40%(容積率150%)、高さ規制15mの厳しい風致地区規制を巧みに生かした平均100㎡、1戸当たり約53本の植栽など商品企画・ランドスケープデザインが秀逸だったからだ。
同社によると、販売開始は2019年1月。12月で契約完売。計画より3カ月短縮できたという。購入者層は30代~40代前半のDINKS、ファミリーの一次取得者がメイン。住み替えの二次取得者も約20%。(この20%は大きな数字だ。遠くなっても広いほうを選んだということか)
ここで改めて書くことはほとんどない。取材したときの感動が伝わると思うので、その記事を読んで頂きたい。
上大岡駅圏ではいま600戸超のマンションが分譲中だ。単価差はあるが、プランは似たり寄ったり。グロスを抑えるため専有面積圧縮型が多い。同社の物件は、それらとは真逆の物件だ。単価はほぼ半値、100㎡でも20坪マンションより安く買える。他社物件は同社の物件を際立たせる〝刺身の妻〟と言ったら怒られるか。
そんな芸当ができるのはやはり同社の実績だ。これまでも広い居住空間、良好な住環境に重点を重く第一次取得にターゲットを絞り込んだマンションをたくさん供給してきた。
100㎡マンションの供給戸数の多さなら、アッパーミドル・富裕層向けが圧倒的に多いはずの三井不動産レジデンシャルがトップかもしれないが、第一次取得層向けがほとんどの同社もそんなに引けを取らないのではないか。豊かな居住空間を選好の第一理由とする層の心を同社は捉えた。価値ある早期完売だ。
風致地区巧みに生かした住戸プラン・ランドスケープ秀逸 大和地所レジ「上大岡」(2019/4/24)
時代遅れの建基法用途規制とマンション「専ら住宅」を見直すべき
昨日(12月18日)、令和のマンションは昭和の時代に逆戻りしたと書いた。今日はその続き。日進月歩、時代は変わったのに、マンションの法律・規制は旧態依然のまま、もう野垂れ死にを待つしかない状況に追い込まれている。そうならないための私見を開陳する。
◇ ◆ ◇
建築基準法の用途規制を見直すべきだ。記者は、訳が分からない何でもありの準工業地域は、規制を強化するか緩和するか、それとも住工混在を促進するか明確化すべきというのが持論だが、もう一つ、第一種低層住居専用地域(1低層)の用途規制を見直すべきだと思っている。
ご承知のように、1低層では、50㎡以下で延べ床面積の2分の1未満の一部の非住宅は許可されるが、低層住宅以外の建築は不可だ。この厳しい用途規制は、今後爆発的に増えると思われる「空き家」などを多様な用途に変更する際の大きな壁になるのは必至だ。第二種低層住居専用地域(2低層)では日用品を販売する店舗は許可されるが、指定エリアは圧倒的に少ない。1低層の1%もない。
このように、低層住宅と非住宅を遮断することが良好な住宅街を形成することなのか。ほとんどの人は「NO」というはずだ。
その意味で、東京都が今年10月改正した「用途地域等に関する指定方針及び指定基準」で、地区計画により低層住居専用地域の用途規制を緩和し、生活利便施設やサテライトオフィスなどの立地を推進すると示したのに注目したい。
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前段の用途規制とも関連することだが、国土交通省が例示している「分譲マンション標準管理規約」の専有部分の「専ら住宅」も見直すべきだ。
同規約では、第12条第1項で専有部の用途として「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」とし、第2項では「区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる」と、手続きを踏めばいわゆる民泊利用も認めている。
この条項ほど理解に苦しむものはない。「専ら」に例外はない。「住宅」としての使用以外を認めないとする一方で、およそ「住宅」とは思えない、不特定多数の人の出入りを例外的に認めることは合理的説得力を欠く。
だがしかし、この条項は区分所有法で定める「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」(第6条)、つまり「共同の利益に反する行為」以外はすべて許容されることに道を開いたとも理解できる。
「共同の利益」とは、明らかにそこに共同して住む居住者の利益のことで、「利益に反する行為」もまた居住者が決めることだ。これに国やデベロッパーが関与すべきでないと記者は考えている。
「専ら住宅」がいかに時代遅れであるかをもう一つ示そう。かつて三井不動産は、第一種低層住居専用地域(以前の住専)でのマンション分譲を強化し、準工業地域では街づくりが可能な大規模以外はほとんど供給しなかった。この戦略が奏功し、消費者から圧倒的な支持を得た。
しかし、時代は変わった。同社もそうだし、ほとんどのデベロッパーは〝駅近〟〝資産性〟を金科玉条のように謳い、いかがわしい施設も含めて許可される商業(系)立地にシフトし、大規模が可能な準工業立地の〝大きさ〟をもてはやす。バブル崩壊までの億ションと言えば、十中八九は住居系エリア立地だった。今はその是非すら問うものはいない。
商業(系)と準工立地に共通するのは、「良好な住環境」とは逆に容積率や日影条項が緩く、用途に縛られないことだ。
にもかかわらず、これらのエリアに建てられたマンションの区分所有者のみが「専ら住宅」にどうして縛られるのか。考えたらおかしなことだ。
記者は、野放図にしろと言っているのではない。何を認め何を排除するかは区分所有者が決めることだと言いたいのだ。
「専ら住宅」の規制を緩和したらSOHO、カフェ、学習塾、ママさん保育、家事代行、タクシー代行、貸本屋、子ども食堂…地域内の居住者の日常生活に欠かせない小規模店舗が可能となる。分譲単価も引き上げることができる。これこそ三方よしではないか。
先に行われたマンション管理業協会の「マンション・バリューアップ・アワード2019」で、岡本潮理事長は「区分所有法は制度疲労を起こしている」と語ったし、マンション管理会社の若手社員(U29)による「未来のマンション管理像」のプレゼンテーションでも「専ら住宅」の壁は取り払うべきと主張した女性がいた。勇気ある発言だ。
首都圏初 浴槽の自動洗浄・お湯はり「おそうじ浴槽」 東急不「北千住」に採用
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東急不動産は12月12日、スマートフォンを通じて外出先からでも浴槽の自動洗浄・お湯はりができる機能付き「おそうじ浴槽」を「ブランズ北千住」に首都圏で初めて導入し、2020年1月から第2期の販売を開始すると発表した。
あらかじめ決まった料理の材料が届く「ヨシケイ」の宅配サービス、書留郵便も預かれる「メールボックス一体型宅配ロッカー」も採用する。
物件は、東京メトロ千代田線、日比谷線、JR常磐線、東武スカイツリーライン、 つくばエクスプレス北千住駅から徒歩7分、足立区日ノ出町に位置する11階建て全91戸。専有面積は59.26~75.53㎡。竣工予定は2020年12月。設計・施工・監理は木内建設。
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このマンションは以前から気になっていた。三菱地所レジデンスの〝駅近〟「千住ザ・タワー」が驚嘆の坪単価380万円でも売れたので、後発の「ブランズ北千住」も〝柳の下〟を当て込むのは必至だと思ったからだ。
単価は予想した通り320万円くらいか。(昨日、小生の数少ないつきあいがある同業と飲んだ。そのうちの一人がものすごい安値を言ったが、やっぱりそんなに安くない=高いか安いか決めるのは消費者だが)
価格はともかく、家事労働の「時短」を図る種々の機能搭載には大賛成。どこの製品かは分からないが、同じような機能付きのものは20年くらい前からあった。採用してこなかったデベロッパーの怠慢だ。
昨日も書いた。浴室の家事労働は大変だ。記者などは手抜きをし、夏場はシャワーだけだったが、普通の家庭の浴室の掃除・お湯張りは1回5~10分、年間300回とすると合計25~50時間にはなる。人にもよるが最低10万円の労働価値はある。
欲を言えば、やはり浴室全体を掃除してほしいし、トイレも自動洗浄・掃除機能を付けるべきだ。年明けにはTOTOに取材することが決まっているので、最新商品動向などをレポートする。
男性諸君!必読!ポラス 家事代行サービス付き分譲戸建て「育実の丘」好調(2019/12/17)
地所レジ「千住ザ・タワー」 坪300万円台後半 〝住むなら北千住〟あわび千円!(2019/1/23)
※その後の取材で、坪単価は380万円になった