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「B/N戸田公園」

 ポラスグループのポラスマイホームプラザは1月26日、AI型空調とスマートホームシステムを搭載した分譲住宅「B/N戸田公園」(全10棟)を1月26日(金)から販売開始したと発表した。同日、メディア向け見学会を行った。国土交通省の先導的なIoT 住宅の実用化に向けたリーディングプロジェクト「次世代住宅プロジェクト2023」に採択されたもので、今後1年間かけて実証実験を行い、結果を公表する。

 物件は、JR埼京線戸田公園駅から徒歩16分、戸田市新曽南4丁目の準工業地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する全10棟。土地面積は100.49~132.77㎡、建物面積は95.81~104.54㎡、価格は7,480万~8.980万円。完成予定は2024年1月末。

 「B/N」の「B」は「BASIC(ベーシック)」、「N」は「NATURAL(ナチュラル)」と「NEUTRAL(ニュートラル)」の頭文字からとった同社の7つあるブランドの一つ。白を基調としたシンプルなデザイン、2380ミリのハイドア、15ミリのスマート窓枠・巾木などが特徴。

 昨年9月からホームページを開設し、これまで160件の問い合わせがあり、モデルハウス事前案内会には50~60組の来場があるという。この日(26日)に1件の申し込みがあった。

 プロジェクトは、ポラスグループのIoT・スマートホーム技術と、LIXILの「建材・住設」(スマートホームシステム用ホームゲートウェイ「ライフアシスト2」)を組み合わせたもの。起床・帰宅前に自動でエアコン、床暖房を起動させ、人がいる時間の室温を快適になるように制御し、室温度が規定値を超えた場合は自動で採風窓を開けたり閉めたりすることが可能。

 太陽光発電システムと蓄電池を装備(標準搭載はモデル2棟のみ)、断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6をクリアし、「長期優良住宅」「ロングサポート60」を取得。一般的な「次世代省エネ住宅」基準より年間約14万円の電気・ガス・水道・光熱費の削減を実現する。このほか、戸田市初の「埼玉県子育て応援分譲住宅認定」(戸建て)を取得している。

 また、ポラス暮し科学研究所が開発したポカリッチ(蓄熱式床暖房システム)の併用により、24時間冷暖房を行う全館空調の年間冷暖房費44,488円(試算)を35,400円(同)に抑えることが可能であることを実証する。

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モデルハウス(10号棟)

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モデルハウス(9号棟)

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 「全館空調」は1995年、三菱地所ホームと三菱電機が共同開発した「エアロロック」が第一号で、現在ではハウスメーカーの数だけあり、定義も「家中を快適な湿温度に保つ」ということしかなく、統一的な基準はない。マンションでは、「エアロテック」が大手デベロッパーの物件に採用されており、野村不動産は独自に開発した「床快full(ゆかいふる)」を自社マンションに採用している。記者は「エアロテック」モデルハウスに一泊しているのでその素晴らしさはよく分かっている。

 問題は価格だ。〝快適性〟を価格に換算したら安いとは思うが、イニシャルコストは100万円~300万円超で、ランニングコストも一般的な住宅の冷暖房費より年間にして3~4割高になる。

 全館空調を装備した分譲戸建ては首都圏でどれほど供給されているか分からないが、今回のプロジェクトは、「全館空調よりも導入費用、冷暖房費を抑えながら温熱環境の満足度を得られる」(同社資料)というのがポイントで、この種の商品企画の物件は今回が初だと思われる。

 ポラス暮し科学研究所の蓄熱式床暖房システム「ポカリッチ」を体験するのは2度目だったが、これまで体感したどこの床暖房より暖かかった。同研究所住環境G係長・福代昇一氏は「どこの全館空調にも負けない」と自信を見せた。

 分譲価格だが、同社によると同駅圏の分譲戸建ての相場は土地が20坪で5,000万円台が中心というから、今回の物件はかなり高い。「AI型全館空調」のよさをアピールできるかどうかがポイントになる。仮に駅近のマンションを分譲したら坪単価は300万円を突破する。20坪で6,000万円だ。これもヒントにはなる。

 現地は、容積率200%の準工地域で、中層も建つエリアだが、周囲には嫌悪施設(嫌な言葉だが)は目視した限りではなかった。

 今回の物件に搭載されているスマートスピーカーは「Amazon Alexa(アレクサ)」だった。5歳くらいの女の子に設定している「OK Google」音声より年長には聞こえたが、「おはよう」と呼び掛けても「分かりました」としか答えない。これは改善の余地あり。

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巾木(左)やドアノブにもこだわりがあるのが特徴

従来のHEMSと一線画す 世界に通用する「HOMETACT」体験施設開設 三菱地所(2023/12/8)

草加市初 景観協定&全棟ZEH 敷地分断・送電線…難点克服 ポラス「草加松原」(2023/11/23)

「念願の過乾燥を解決」 加湿システム搭載「エアロテック」発売 三菱地所ホーム(2022/4/27) 

効果てきめん 三菱地所ホーム 全館空調「エアロテック」記者も宿泊体験(2017/10/30)

カテゴリ: 2023年度

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「フレーベスト秋津 奥庭」完成予想図

ポラスグループ住宅資材センターは122日、インテリア産業協会主催の「令和5年度住まいのインテリアコーディネーションコンテスト」事例分野で「インテリア産業協会会長賞」を受賞したモデルハウスのメディア向け見学会を行った。

 受賞対象となったのは同社の分譲戸建て「フレーベスト秋津 奥庭」で、物件はJR武蔵野線新秋津駅から徒歩8分、東京都東村山市秋津町五丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する全11戸。土地面積は125.26128.36㎡、建物面積は92.9599.36㎡、価格は5,790万~6,590万円(価格には家具、照明、その他造作材など含む)。構造は木造2階建(2×4工法)。全体引き渡し予定は2024513日。昨年の9月から販売を開始しており、これまでに6戸が成約済み。長期優良住宅認定を取得している。

物件の特徴は、一般的な分譲戸建て開発では、戸別の敷地境界線にフェンスなどによって区切られ細分化されるのに対し、それぞれの敷地の一部に地役権を設定し、隣戸間のフェンスをなくし、2戸あるいは3戸を1セットとした〝奥庭〟と称する「広場」「木立」「テラス」や路地状空間を創出したこと。また、室内は段差や続き間による広さを活かした+αの空間づくりに国産素材を組み合わせ、居心地の良い空間を実現していることなど。

設計・商品企画を担当した中央住宅営業企画設計課係長・酒井かおり氏は「建ぺい率40%、容積率80%の建築規制と、斜線制限も厳しかったので、軒高が軸組み工法より約50cm抑えられる2×4工法を採用した。このような提案が他の物件でも採用できる可能性もある」と語った。

受賞したモデルハウスは、「『表と裏』のように、一体のリビングダイニングを、ダークカラーを基調として落ち着いて過ごせる場所と明るい場所に分けてプランニング。ナチュラルカラーとブラックでそれぞれまとめることで、シンプルでも温かみを感じられるよう全体の調和を意識してコーディネートしました。木綿糸や陶器のペンダントライトなどの自然素材を使用し、アクセントカラーにグリーンを配置することで癒しを感じられる空間に仕上げた」(リリース)のが特徴。床はオーク材の突板仕上げ、天井はシナ合板、壁は火山灰由来の「シラス」や国産材ヒノキなど自然素材を多用している。

受賞した同社インテリア部所属・須藤歩氏は「初挑戦でこのような賞をいただき大変嬉しい。関係していただいた方々のお陰。次は上(経済産業大臣賞)を目指したい」と喜びを語った。

同賞は1983年設立。200社超の会員を擁し、インテリアに関する情報発信や啓蒙活動を通して業界内で圧倒的な評価を受けている賞。施工事例、スタイリング事例を対象とする「事例分野」と、自由な発想の広がりを期待する「課題分野」の2分野で表彰する。事例分野の最高賞は経済産業大臣賞。インテリア産業協会会長賞はそれに次ぐもの。

同社グループの受賞は2年連続で、会長賞受賞は初。住宅資材センターには約40人のインテリアコーディネーターが在籍し、工事部門を持つことからワンストップで顧客対応ができるのが特徴。

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モデルハウス

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「表と裏」モデルハウス 白、黒、グレーの対比も随所にみられる

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記者がもっとも嫌う表と裏を使い分けるのが常識の醜い人間社会を是認するかのような「表と裏」には正直驚いた。

しかし、物件のコンセプト、モデルハウスにはそのような悪意は込められておらず、逆に表と裏を一体的にとらえ、全体敷地約1,300㎡の敷地のうち60%の約830㎡(敷地面積と建ぺい率から計算)の〝公開空地〟を生み出したことを評価すべきだと思った。いわば〝表裏一体〟のプランだ。

このうちコンクリ敷の駐車スぺ-スがどれくらいを占めるか分からないが、少なくとも3戸分の378㎡(1126㎡として換算)は〝表も裏もないみんなの広場〟になるのではないか。透水性の高い網代・レンガ調舗装材、植生ブロックなどを多用し、モミジ、シマトネリコ、ヤマボウシ、ブルーベリー、オリーブ、ハーブ類などで緑化を図っているのがいい。同社の〝十八番〟である地役権設定が今回も生かされた。

全体敷地「表」側と敷延部分の「裏」の住戸間に500600万円の価格差があることについて質問が飛んだが、成約済みの6戸の内訳は表と裏が3戸ずつであることを同社は明かした。価格差は妥当だと思う。敷延部分の住戸と表の住宅の価格差が1,000万円もあるのに、敷延部分住戸がいつまでたっても売れなかった事例をたくさん見てきた。

酒井氏と須藤氏に提案だ。「表と裏」で経産大臣賞(そんなに価値が高いのか)を逸したのなら、次回は「天と地」、「赤と黒」、「白と黒」、「右と左」、「善と悪」、「罪と罰」、「月とすっぽん」でもいいし、「円環」「四季」あるいは御社の「本川越」のマンションのテーマである「守・破・離」か「序・破・急」で挑戦したらどうか。それとも世相を反映する「支離滅裂」「諸行無常」「牽強付会」はどうか。「融通無碍」もいい。

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敷延部分(一部は共用路地)

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植栽帯

カテゴリ: 2023年度

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「SUNKA(サンカ)」

 ブルースタジオは12月25日、横浜市栄区の長屋建て賃貸住宅「SUNKA(サンカ)」のメディア・関係者向け竣工内覧会を行った。敷地の一部は市の土砂災害特別警戒地区に指定されているため、その部分を広場・バスケットコート・菜園とすることで課題を解消し、隣接する「特別保全利緑地地域」借景を活かし、建物は断熱等級6をクリアするなど付加価値の高いプロジェクトだ。

 物件は、JR大船駅からバス7分徒歩3分、横浜市栄区飯島町に位置する敷地面積約449㎡(他に広場・菜園面積約561㎡)の木造長屋2階建て全7戸。専用面積は44.71〜61.28㎡、月額賃料は127,000円~133,000円。竣工は2023年12月。建築設計監理はブルースタジオ、施工はジェクト。

 現地は、広重の東海道五十三次に描かれた旧鎌倉道「戸塚宿」に近接。町名に「飯島町」とあるように、何代も続く地主・飯島家の敷地。敷地北側には飯島家の裏山や約4.7haの「特別保全利緑地地域」、三島神社など自然に恵まれたエリアの一角。従前は賃貸住宅6棟。

 従前建物の老朽化に伴い建て替えるものだが、敷地北側の一部は土砂災害特別警戒地区に指定されているため、広場・バスケットコート・菜園として整備。新たに建設する建物は雁行させ、裏山の借景を取り込むデザインとし、Ua値0.37とするなど断熱等級6をクリアしているのが特徴。床はナラ材の無垢フローリング、サッシはアルミ樹脂複合+Low-Eペアガラス。「SUNKA」には、「山家」「山下」「賛歌「SUN」の意が込められている。

 内覧会で同社専務取締役クリエイティブディレクター・大島芳彦氏は「栄区は本郷台、桂台などの地域で人口が減少しているが、飯島町は人口ピラミッドを子細に調べた結果、ミニ開発などで社会増も見られるエリア。子育て世代を呼び込み、古い地域のよさを生かしながら街全体で迎え入れようというのがコンセプト。環境性能にも配慮した」と語った。

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シンメトリックな外観デザイン

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北川エントランス

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大島氏

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 同社のこの種の内覧会を楽しみにしている。毎回、新しい発見があるからだ。今回は裏山の自然林とゆったりした配棟計画に目を奪われた。敷地面積を単純に戸数で割ると1戸当たり約64㎡だが、広場などを含めると約144㎡で、手つかずの小鳥が飛び交う森が毎日眺められる価値は計り知れないものがある。

 シンメトリックな建物外観と得も言われぬ〝鶯色〟の外壁にも魅了された。記者は油絵を描くがなかなか出る色ではない。大島氏は「かなりこだわった」と話したように、このような細かな配慮が支持を得るのだろうと思う。シースルー玄関ドアもいい。

 家賃は近隣相場の3割高で、大船駅周辺と変わらないそうだが、記者はこの設定に納得した。この日は見学会のために玄関などは開け放たれており、暖房も付けられていなかったが、内覧会に参加する検討者はUa値0.37の威力を体感できるはずだ。

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裏山

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左から広場、バスケットコート、菜園

爛漫の春満喫 「hocco(ホッコ)」イベントに1000名超 小田急バス×ブルースタジオ(2022/4/2)

素晴らしい!親子&木製シースルー玄関ドア 三菱地所ホーム「江北小路」完成(2023/10/28)
 

 

カテゴリ: 2023年度

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「アバナイズ市川菅野」

  ポラスグループのポラスガーデンヒルズは12月15日、市川市菅野の分譲戸建て「アバナイズ市川菅野」のメディア向けモデルハウス見学会を行った。建ぺい率40%、容積率80%の第一種低層住居専用地域・風致地区に位置する全5棟で、厳しい規制を逆手に取った商品企画がいい。

 物件は、都営新宿線本八幡駅から徒歩20分(京成本線菅野駅から徒歩17分)、市川市菅野5丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)・風致地区に位置する全5棟。土地面積は125.05~130.79㎡、建物面積は89.83~100.49㎡、価格は6,790万円~7,690万円。引渡予定は2024年1月下旬。構造は木造2階建(在来工法)。施工はポラテック。

 現地は、風致地区規制により建物は道路境界から2m以上、隣地境界から1m以上セットバックさせることが条件づけられていることから、風致ラインにはインターロッキング舗道-アーチフレーム-シンボルツリー-フラットテラス-ウッドテラスなどで外と内を緩やかにつなぎ、水平ラインを強調した横基調のランダムフェンスを設置し、足元は緑量を増やしているのが特徴。

 主な基本性能・設備仕様は、長期優良住宅、天井高2700ミリ、サッシ高2400ミリ、突板フローリング、食洗機、突板フローリング、樹脂サッシ、防犯合わせガラス、家電リモート操作など。

 同社設計部企画設計課課長・工藤政希氏は「2019年にYKKapさんとグリーンクリエーター・小西範揚さんとコラボして街づくりを開始してから今回が7件目。これまでの『ノエン柏 逆井』などで得たノウハウを生かし、家と庭をどうつなげるかをコンセプトに、風致地区の厳しい条件をクリアした。価格相場は著しく上昇しているが、ニーズに応えられる商品企画」と語った。

 また、同社ガーデンヒルズ事業部設計部街並デザイン室デザイナー・阿佐美直也氏は「心地よい空間を創造するため目隠しの役割も持つ横ルーバーフェンス、テラス、グリーンベールなど外構など細部にも工夫を凝らした」と、2・5号棟のプランを担当した同部プロモーションデザイン係主任・西村馨氏は、「2号棟は、水濡れに強く床暖房付きのフロア材。観葉植物を置いたり、ペットの居場所として活用したり、子供のプレイスペースとしても利用できるコンサバトリースペースやshu-shuBOX、5号棟は隣地の集合住宅の視線を回避するゾーニング、光を取り入れる吹き抜けにより縦にも空間が広がるように企画した」とそれぞれ話した。

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モデルハウス

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テラス

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外構

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玄関引き戸(メーターモジュールにしてほしかった)

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 外構はモデルハウスの1棟しか完成していなかったが、工藤氏が紹介した「ノエン柏 逆井」は鮮明に覚えているし、同じ「市川菅野」エリアの人気物件も取材している。ともに植栽・外構が最高に素晴らしかった。しかし、物件のことはよく覚えているのに、「逆井」の見学からまだ半年しか経っていない工藤氏の名前と顔は記憶から抜け落ちていた。おそらく加齢により小生の脳内記憶容量の限界を超えているのだろう。 

 今回の物件でとてもいいと思ったのは、敷地延長住戸の4号棟の玄関は引き戸だったことだ。玄関に限らず住宅は引き戸がいいのに決まっている。カチッと締まるドアも開発されるはずで、マンションもそうなる時代がやってくるのではないか。

 価格について。本八幡駅からはややあるが、マンションなら坪単価は300万円をはるかに超え、30坪もあれば1億円を突破するエリアだ。市場と物件特性をきちんと説明すれば、これまでの来場者73組からして早期完売できるのではないか。

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左から工藤氏、西村氏、阿佐美氏

初めて見た30%・50%×200㎡の分譲戸建て まるで別荘 ポラス「柏 逆井」(2023/5/2)

納得の即日完売 デザイン・設備仕様レベル高い ポラス「市川菅野」16棟(2021/5/2)
 

 

カテゴリ: 2023年度

 どこに割って入るのか分からないのだが、大和ハウス工業取締役常務執行役員住宅事業本部長・永瀬俊哉氏は先日、2027年度までに木造を中心に分譲戸建て事業を7,000戸に拡大するとぶち上げた。市場規模を約14万戸とするとその5%だ。成長産業ならいざ知らず、加速度的に進む人口減少、爆発的に増える空き家などの社会的背景を考えると至難の業で、しかも、この業界は〝建売御三家〟が市場の4割近くを占めているが、見方によっては大手中小が入り乱れ、群雄割拠の市場と見えなくもない。同社が投じた一石は大きな波紋を巻き起こす可能性がある。同業他社は戦々恐々なのか、あるいは高みの見物を決め込むのか興味津々。分譲戸建て市場を概観した。

 まずは、コロナ禍の〝追い風〟が止み、アゲインストに変わっても2022年3月期は41,534戸を計上したガリバー企業の飯田グループホールディングス。先に発表した2024年3月期第二四半期決算によると、販売棟数は18,700戸(同3.3%減)、1棟単価は3,017万円(同1.1%増)だ(参考までに紹介すると、積水ハウスの2022年12月期の分譲住宅の建物のみの1棟単価は3,247万円、坪92.6万円)だ。

 同社は1棟単価の土地原価・建物原価・粗利益の構成比をグラフで公表しており、そのグラブ幅から推測して土地原価は約50%の1,509万円、建物原価は約36%の1,086万円、残りの14%が粗利益だ。また、敷地面積は平均100㎡、建物面積は平均95㎡くらいのはずで、建物原価は約38万円だ。

 この建物原価38万円はどのような意味を持つか。2023年4月の住宅着工統計によると、木造分譲住宅の着工戸数は11,877戸(前年同月比4.5%減)で、1坪当たり工事予定額は52.8万円(前年同月比ゼロ)だ。

 飯田グループの建物は全国平均より14.8万円/坪も安い。しかも、同社発表の全国市場占有率27.5%からすると、同社を除いた坪単価は58.1万円となる。つまり坪単価にして20万円、1棟につき約585万円も安い。同社の最大の強みだ。

 なぜそこまで安くできるか。地域業者との連携によって用地取得費を抑え、徹底したシステマティックな商品企画にあるはずだ。外構・植栽コストを極端に抑えているのが特徴だ。(それをよしとする消費者がいるということ)

 飯田グループの凄いのは、そこまで原価を抑えながら、かつ2025年の「ZEH水準比率100%」(飯田グループホールディングスTCFDレポート2023)を実現する目途を付けたことだ。同社は今後、この「ZEH水準100%」を最大の〝売り〟にして攻勢をかけるはずだ。

 記者は専門的なことはよく分からないので深入りしないが、極論すれば、建物面積を小さくし、出隅・入隅をなくし、窓面も少なくした総2階の経済設計の戸建てが究極の「ZEH水準100%」ということだ。

 飯田グループには戸数こそ圧倒的な差を付けられている業界第2位のオープンハウスグループはどうか。2023年9月期決算は売上高11,484億円(前期比120.6%)、営業利益1,423億円(同119.2%)、純利益920億円(同118.2%)と、中期経営計画で掲げていた「行こうぜ1兆!2023」を大幅に上回って達成した。昨年11月には三栄建築設計を完全子会社化し、今期も大幅増収を見込む。

 戸建事業については、売上高5,903億円(同114.3%)、営業利益631億円(同100.3%)、営業利益率10.7%(同1.5ポイント減)と厳しい市場環境を反映したが、建売住宅の販売棟数はオープンハウス・ディベロップメントが4,929棟(1棟単価:4,320万円)、ホーク・ワンが2,403棟(同:4,710万円)で、合計7,332棟を計上した。

 飯田グループより単価はかなり高いが、これは全国展開している飯田グループに対して、同社は地価水準の高い首都圏、名古屋圏、関西圏、福岡県に事業エリアを絞り込んでいる結果だ。建物原価は飯田とそれほど変わらないはずだ。

 〝建売御三家〟のもう一社のケイアイスター不動産はどうか。2024年3月期第二四半期決算は、売上高1, 254億円(前年同期比21.3%増)、営業利益464億円(同55.2%減)と大幅増収、大幅減収となった。減収要因は市場変化、競争激化による在庫整理によるものだ。

 分譲住宅事業の売上高1,214億円(同22.9%増)を販売棟数3,410棟(同18.9%増)で割った1棟単価は3,562万円。飯田グループより約500万円高く、オープンハウスより約800万円低いが、これは事業エリアの違いを反映したものだ。創業の地である埼玉県の着工戸数に占める割合は8.0%だが、隣接の群馬、栃木、茨城は10%を超え、九州の福岡、佐賀、熊本も10%を超えている。M&Aにより営業拠点を増やし、地域有力工務店とパートナー契約を結んでいるのが続伸の要因だ。パートナー企業は4,952事業者に上っている。

 この先の展開で注視したいのは、同社をここまで成長させた最大の功労者である、ポラス出身の取締役常務執行役員・瀧口裕一氏が2023年9月30日付で退任したことだ。その影響はあるのかないのか。

 このほか、分譲戸建ての計上戸数を公表しているところはポラスグループ2,792戸、積水化学工業(セキスイハイム)3,150戸、積水ハウス2,219戸、大和ハウス工業1,571戸、タマホーム1,247戸、フジ住宅623戸、三井不動産420戸、住友林業380戸、野村不動産353戸、アグレ都市デザイン319戸、ナイス246戸(注文含む)などのほか、数値は公表していないがパナソニック ホームズ、トヨタホーム、ミサワホームなどを傘下に持つプライム ライフ テクノロジーズ、一条工務店、各電鉄(系)会社、兼六ホーム、細田工務店、新昭和、創建…など年間数百戸の規模でコンスタントに販売している会社はたくさんあるはずだ。

 考えてみれば、数百社あったマンションデベロッパーはリーマン・ショック後には数十社に激減した。一方で、建売住宅事業者のデータはないが、総務省のデータなどから類推すると数十社どころか百単位ではないか。大和ハウスが底引き網漁で捕捉するのは可能のようにも思えてくる。

住宅性能評価の分譲戸建てシェア74% 飯田GHは「ZEH化50%」に舵切り(2023/8/28)

ポラスグループ2023年3月期決算 増収減益/営業力の低下=取材力の退行を考える(2023/7/3)
 

 

カテゴリ: 2023年度

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「セキュレア西大宮V」のモデルハウス

 大和ハウス工業が11月21日に行った「戸建住宅事業 計画説明会の第二部の現地見学会となったのは、今年5月に発売した木造戸建住宅新商品「xevo BeWood(ジーヴォ ビーウッド)」初の実棟「セキュレア西大宮V」のモデルハウスだった。基本性能・設備仕様レベルは間違いなくトップレベルだが、様々な課題も見つかった。

 物件は、JR川越線西大宮駅から徒歩16分~17分、さいたま市西区西大宮二丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全23戸。現在分譲中の住戸(7戸)の敷地面積は142.19~146.10㎡、建物面積は98.71~104.98㎡、価格は5,980万~6,580万円。建物は令和5年7月完成済。構造は軽量鉄骨2階建て。

 モデルハウスはZEH仕様、最大天井高2.9m、床はオーク材の突板仕上げ、天井はオウシュウカラマツの現し、幅4間(7280mm)の大開口、サッシ高2400mm、坪庭付き、外壁は塗り壁仕上げなどが特徴。

 現地は、土地区画整理事業により整備された面積約115.5ha、計画戸数4,010戸の住宅地の一角。2017年からデベロッパー、ハウスメーカーなどにより戸建て分譲が開始された。地区計画により土地の最低面積は135㎡以上と定められている。

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リビング

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分譲中の住棟

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 この住宅地は過去2度、ポラスグループの分譲戸建ての取材で訪れている。駅前には何もなく閉口したが、居住者の多くは西大宮バイパスを利用するようで、生活利便施設には不自由しないようだ。

 第一部で永瀬氏が語った、現在は同社の分譲戸建て比率は7%しかない木造を「分譲は全て(7,000戸)木造にしたい」を記者は半信半疑で聞いていた。分譲戸建て市場はマンションと異なり、全国規模にわたって大手中小が入り乱れて激しい競争が展開されており、それに伍するには2倍、3倍のエネルギーを注ぎ込む必要があると考えたからだ。

 毎年の分譲戸建ての全国着工戸数は14万戸くらいか。そのうち、記者が〝御三家〟と呼ぶ飯田グループ、オープンハウス、ケイアイスター不動産の市場占有率は4割近い。圧倒的な価格の安さが〝売り〟で、価格は3,000~4,000万円台が中心だ。

 一方で、三井不動産レジデンシャル、野村不動産などの大手デベロッパーはこれら御三家とは一線を画し、大都市圏にエリアを絞り込でいる。数年前にはそれぞれ年間800~900戸に達したが、その後は400~500戸に減らしている。用地取得が難しいからだろう。

 面白いのがポラスグループだ。自社プレカット工場を持ち、埼玉県の越谷を本拠にその周辺エリアに特化し、年間3,000戸近くをコンスタントに販売している。エリアの市場占有率は突出している。いわゆるパワービルダーより価格は500~1,000万円くらい高いが、各グループ会社が商品企画で競い合うことでユーザーの支持を得ている。

 ハウスメーカーのことはよく分からないのだが、同業の積水ハウスは数年前までは木造「シャーウッド」の伸び率は鉄骨系をはるかに上回っており、記者はその伸び率からして鉄骨系を超える時代が来るのではないかと予想したが、最近は平行線のままだ。その理由は分からない。最近、同社は地域パートナー企業と連携する「SI(エス・アイ)事業」を開始した。

 大和ハウスはどうか。全国の分譲戸建てをランキングで示せばベスト10に入るかどうかだろう。そんな同社が4年後に7,000戸に増やし、しかも「木造」比率を飛躍的に伸ばすという。

 ブランド力は他を圧する同社だから、本気を出せば年間7,000棟は難しくないかもしれない。「セキュレア西大宮Ⅴ」のモデルハウスの基本性能・設備仕様は間違いなく御三家などを蹴散らす。そもそも比較すること自体が失礼だ。

 しかし、課題もいくつか見つかった。同社に頑張ってほしいから敢えて指摘する。

 まず、外構・緑被率。外構は寂しい。緑被率を現場担当者に聞いたら20%もないということだった。これは同社に限ったことではないが、もっと真剣に緑被率をあげることに関心を払うべきだ。国も一定程度の緑被率を確保した住宅にインセンティブを与えるべきだ。積水ハウスの「5本の樹」計画は全国区になりつつある。

 緑と関連することだが、同社は11月21日から俳優・松坂桃李さんを起用した分譲住宅「Ready Made Housing.」の新TVCM「いいとこどり」篇を公開した。説明会でも紹介された。いきなり樹海が展開された。記者は松坂さんの名前を初めて聞いたが、とてもいいと思った。あの同社のCM「物流×AI」を思い出した。

 次に、細かいことだが、浴室には壁にタオル掛けがついていたが、ドアには一つもなかった。ZEH仕様だから冬場は寒くはないだろうが、ドアにも付けるべきだ。ユーザーはこのような些細なことに感動を覚える。ポラスは天井高2.7mだけでなく、細やかな配慮がユーザーの心をとらえている。

 尺モジュールの階段も気になった。積水ハウスはずっと前からメーターモジュールを標準にしている。マンションではトイレの把手を壁面まで後退させるユニバーサルデザインを採用している。

 話を元に戻す。「西大宮V」の分譲住宅は全23区画のうち13棟で、今年6月から販売を開始しており、6棟が成約済みだ。残っている7棟のうち5棟は敷地南側に「保存林」が広がる6,000万円以上の住棟だった。

 その理由を瞬時に理解した。庭先の保存林までは数メートル。柵で遮られていた。樹高は住棟より高い。つまり、真昼はともかく、日照がほしい冬場の昼は日が当たらないのがネックだし、価格も市場価格より数百万円は高い。

 しかし、また考えた。敷地真南に新CMと同じような樹海が広がる-これほど恵まれた分譲戸建てなど首都圏はおろか、全国のどこを探してもないのではないか。保存林の所有者と交渉して入会権とか地役権を設定して、自由に往来できるようにしたらどうか。たくさんの動植物が生息しているはずだ。夏場の気温は間違いなく2、3度は低い。毎日森林浴ができる価値は数百万円どころでない。1,000万円の価値がある。竣工して4か月も残っているのは、この「緑環境」のよさを訴え切れていないからではないか。

 これは余談。各住戸の敷地内には赤い実をたくさんつけていた樹木が植えられていた。毒がある樹木を植えるわけがないと思い、一つ食べてみた。ぶつぶつがあり美味しくはないが、懐かしいグミかヤヤモモの味がした。担当者に何の木か聞いたが、誰一人答えてくれなかった。図鑑で調べた。初夏に可憐な花が咲くヤマボウシのはずだ。お客さんにはきちんと説明できているのだろうか。

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敷地南側の保存林

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北側道路から写す

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ヤマボウシ

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浴室

大和ハウス分譲戸建強化 4年後に4.5倍増の7000戸「木造」へも舵切り(2023/11/23)

「物流」に「AI」 ドライバーに「愛」 大和ハウス&日立物流 コンテスト説明会(2022/12/1)

大和ハウスの新TVCM 「物流×AI」が最高に面白い(2018/1/5)

敷延の難点解消&4棟で100㎡(30坪)のシェアスペース ポラス「ONE LINK」(2018/8/8)

ポラス 全40現場332区画の大規模戸建て「西大宮」第1弾15戸を即日完売(2017/11/17)

カテゴリ: 2023年度

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「ときの環 草加松原」

 ポラスグループ中央住宅は11月20日、草加市で初となる景観協定を締結した、全棟ZEH認定の分譲住宅「ときの環 草加松原」(全25棟)のメディア向け見学会を行った。8月から分譲を開始しており、ほとんどが未完成であるにもかかわらず残りは6棟。地元だけでなく都内からの反響を3割弱集めるなど企画がヒットした。

 物件は、東武スカイツリーライン獨協大学前駅から徒歩19分、草加市花栗3丁目の第1種中高層住居専用地域・準住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する全25棟。土地面積は120.20~207.73㎡、建物面積は91.50~103.50㎡、価格は3,980万~5,580万円。構造は木造軸組工法で平屋が7棟、2階建てが18棟。全体竣工予定は2024年6月。

 現地の従前は南北に細長い三角形に近い不整形の駐車場。開発道路を確保するのが難しいうえ、市有地の幅員2mの遊歩道(暗渠)が敷地を分断し、敷地西側には送電線も走っているなど低層住宅地としては多くの課題を抱えていた。

 そこで、同社は草加市では初となる「景観協定のある街づくり」協定を締結。1低層並みの住宅地とすることで合意した。同協定は12年前から取り組んでいるもので、今回で8物件目となる。

 具体的な取り組みとして、遊歩道に面する住戸は建物をそれぞれ50cmセットバックさせてグリーンベルトを設け、敷地北側に接道する開発道路は南側道路に繋げない事情があるため、車の回転を容易にするスペースを設けた幅員6m道路を整備。平屋は送電線の下に設け、舗装は透水性のインターロッキング。

 このほか、開発道路に面した部分の緑化、みんなで育てる協定樹木、協定緑地などを設け、ワークショップやイベントなどを開催し、良好なコミュニティづくりをサポートする。

 住戸プランでは、同社の分譲戸建てでは初となる全棟「ZEH」認定を取得、同社グループのポラス暮し科学研究所オリジナル蓄熱床暖システム「ぽかリッチ」を導入して冬場のリビングの快適性を確保する。

 見学会で同社戸建分譲第一事業部事業部長・深山弘一氏は「用地の情報がもたらされたのは2021年6月。用地担当が〝いい住宅地になる〟と確信したので、取得を決断した。最終的に市と協定を締結するまで3年以上かかったが、苦難をクリアした」と語った。

 続いて登壇した同社戸建設計本部設計二課部長・鈴木征道氏は「松原団地再生の最終区画となるコンペに当社は落選した。その悔しさをぶつける意味でもチャレンジしたプロジェクト」と開発の経緯・意図を明らかにした。

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モデルハウス(左が2階建て、右が平屋)

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提供公園(左)と協定緑地

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遊歩道(樹木など1本もない)この左右にそれぞれ50cmのグリーンベルトが整備される

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外構植栽

◇        ◆     ◇

 現地を見て、各氏の説明を聞いて、よくぞ売ったものだと脱帽した。価格は市場性にマッチしたものだと思う。獨協大学前駅西側エリアは、旧住宅公団の松原団地の再開発が進んでおり、街並みは一変した。分譲マンションの坪単価は200万円(20坪で4,000万円)を突破しているはずで、今回の分譲戸建ては駅からはややあるが4,000万円台半ばから5,000万円なら売れると予想した。5,000万円を超える住戸は敷地が広い平屋(残り6棟のうち4棟が平屋)だったので納得した。平屋好きはどこにでもいる。

 しかし、①駅から遠い②不整形の用地③第1種中高層・準住居の用途地域③送電線④幅員2mしかない遊歩道⑤通り抜けができない開発道路⑥隣地の雑草が生い茂った駐車場-普通の戸建てデベロッパーは用地取得に二の足を踏むはずだ。用地担当の目利き力が深山氏を決断させたのだろうし、1低層並みの住宅地にするという地区計画に準ずる提案に、市も首を縦に振ったのではないか。

 設備仕様では、「ぽかリッチ」は無限の可能性を秘めていると思った。床暖房を5~6時間起動させ、オフにしても1日は持つという。値段も安い。通常の床暖房施設に20万円(約4.5万円/坪)プラスするだけで済むという。ポラス暮し科学研究所 住環境G係長・福代昇一氏は「素材は保冷剤なので、原理的にはあらゆる用途に対応できる。当面は『全館空調』に勝つのが目標」と面白い話をした。

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左から福代氏、戸建分譲第一事業部営業課課長・竹入正治氏、深山氏、戸建分譲事業本部設計二部営業企画設計課係長・蕪木孝典氏、鈴木氏

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「ぽかリッチ」

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HIRAMEKI提供

 記者が見学し、素晴しい商品企画だと思ったタカラレーベン「レーベンプラッツ大泉学園」と総合地所「ルネテラス船橋」の分譲戸建ての植栽計画を担当した株式会社HIRAMEKI・重松剛氏から以下のようなメールが届いた。

◇        ◆     ◇

 当社(HIRAMEKI)の業務は、外構や植栽計画の「設計業務」を行っています。

 一般的に戸建分譲住宅の外構は、設計と施工を同時に行うような大手造園会社もしくはエクステリア会社に依頼することが多く、そのメリットとしては設計と施工をスムーズに行い、予算管理をしやすくするということです。

 しかし、設計と施工(工事費)をインクルーズしているがゆえにデメリットもあります。建築計画にそぐわない資材を使用したり、植栽も環境に合わないものを採用したりするなど、一見すると予算内に収まり、非常に良い業務効率と言えますが分譲住宅の連続する風景や集合体の良さが感じられないようなものとなりがちです。

 ローコスト住宅においても、使い勝手や駐車場の出入り、タイヤ痕の残りにくさ、最小限かつ最大限の魅力を作る植栽計画によって、分譲住宅の商品価値を高めることもできると思います。

 設計業務と施工業務を分離することで、コスト管理は多少面倒な部分が生まれますが、事業主の商品価値・魅力を最大限に発揮することが出来ると思っています。<株式会社HIRAMEKI><簡易外構植栽図作成サービスについて>

◇      ◆     ◇

 「設計・施工分離」か「設計・施工一体(デザインビルド)」かは、古くて新しい問題だ。従来は「設計・施工分離」が基本だった公共事業でも「デザインビルド」を採用する事例が増えている。

 現状はどうか、少し考えてみた。記者は取材するとき、設計、施工、デザイン監修は必ずチェックする。物件特性に顕著に表れるからだ。分譲マンションの場合は、「設計・施工分離」方式が採用される物件は大規模など特殊なものに限定されており、デザインビルド方式のほうが圧倒的に多い。比率にしたら8割くらいを占めるのではないか。

 このほか、最近増えているのはデザイン監修の形で全体を統括するものだ。例えば、「HARUMI FLAG」では光井純氏がマスターアーキテクトとして街全体のデザインを統括している。今後はこの種のデザイン監修が増えるのは間違いない。

 分譲戸建ての場合はどうか。まれに外構や植栽計画を著名な造園会社が担当することを明示している物件はあるが、物件概要を読んでも、「設計・施工分離」か「デザインビルド」なのか分からないものがほとんどだ。

 地球温暖化防止、街のポテンシャルアップに緑環境が大きな役割を果たしていることは言うまでもないことだが、残念ながら、現状は退行しているといわざるを得ない。

 大手ハウスメーカが参加しているプレハブ建築協会の建売住宅も例外ではない。同協会は環境行動計画「エコアクション」で、敷地の緑化面積率を40%以上確保した建売住宅の供給比率を50%以上とする目標を掲げていたが、2019年実績は14.5%にしか過ぎなかったことからか、この数値データの公表をやめてしまった。

 これはやむを得ない部分もある。住宅着工統計によると、首都圏の分譲戸建ての敷地面積は東京都は100㎡を割っており、神奈川県は111㎡、埼玉県は118㎡、千葉県でも133㎡に過ぎない。仮に建ぺい率60%の地域だとして、30坪(約100㎡)の敷地に制限いっぱいの18坪の住宅を建て、残りの12坪すべてを緑化するのは不可能だ。駐車スペースは最低4.5坪必要とされている。残り7.5坪を緑化しても緑化面積比率は25%にしかならない。

 プレ協の会員会社ですらそうなのだから、全国で供給されている分譲戸建ては推して知るべし。緑化面積比率を40%以上確保するには建ぺい率が40%のエリアか、屋上・壁面緑化を採用するほかない。1低層の比率が50%を超える世田谷区ですら緑被率は23.6%(23区平均は17.6%)だ。

 なぜ、都市の緑化は進まないのか。現行の都市緑化法、都市計画法にも問題があるといわざるを得ない。

 都市緑地法第34条は「良好な都市環境の形成に必要な緑地が不足し、建築物の敷地内において緑化を推進する必要がある区域については、都市計画に、緑化地域を定めることができる」と規定しているが、同法第4条により「緑の基本計画」を定めているのは、対象となる都市計画区域を有す全国1,374市町村のうち695市町村(50.6%)にしかすぎない。首都圏では東京都が89.5%、神奈川県が93.8%、埼玉県が73.8%、千葉県が64.6%だ。相対的に埼玉や千葉の緑環境が劣っているのはこのためだ。「緑化地域を定めることができる」とあるように、強行規定ではなく任意規定であることに一因がある。

 また、都市計画法施行令第25条第6号では、開発区域の面積が0.3ha以上5ha未満の開発行為では開発区域の3%以上の公園、緑地又は広場を設けることを義務付けているのみだ(条例で対象面積を300㎡に引き下げることが可)。自治体は、用途地域別に1区画当たり最低面積を条例で定めるところが増えているが、緑化地域制度を導入している自治体は名古屋市、横浜市、世田谷区、豊田市しかない。

 重松氏から送付された資料を添付する。分譲戸建ての植栽計画に一石を投じるものだと思う。重松氏が外構・植栽計画を担当した冒頭の「大泉学園」「船橋」と、その真逆の事例として「越谷」と「南栗橋」の記事を添付する。

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HIRAMEKIホームページから

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HIRAMEKIホームページから

敷地100坪 建物30坪の平屋 ミラースHDの戸建て「南栗橋」企画ヒット(2023/11/13

敷地延長の難点を解消したプラン光る 総合地所「ルネテラス船橋」(2016/10/1)

越谷レイクタウンで見た雑草すら生えない建売住宅の一群(2014/4/29)

タカラレーベン フェンス排除した驚嘆の戸建て「大泉学園」(2013/6/7)
 

 

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yoridokoro(拠りどころ)上尾」

ポラスグループ中央住宅は1027日、地域共生型分譲戸建て「yoridokoro(拠りどころ)上尾」のメディア向け見学会を行い、モデルハウス内覧会を1028日(土)に開始し、第1期を1110日に開始すると発表した。35区画の分譲地が2つ繋がる全70戸の、同社グループが上尾市内で分譲する最大規模の住宅地。地域と関わる専門家8名とコラボしたプロジェクトだ。

物件は、JR高崎線桶川駅から徒歩17分、埼玉県上尾市大字上字熊野の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80)に位置する全70戸。土地面積は120.10185.39㎡、建物面積は90.0495.25㎡、第1期(1213戸の予定)の予定価格は3,000万台前半~5,000万円前半。全体竣工は2024年8月の予定。

コンセプトは「地域共生」。上尾市やその周辺地域で活躍する農業経営、盆栽家、ネコの保護団体、キャンドル製造、タタミ製造、キッズ食育トレーナー、知育・脳育アドバイザー、女性の起業サポーターの8名の専門家とコラボし、入居後もワークショップを開き、個別相談にも対応していくのが特徴。

見学会の冒頭、同社戸建分譲さいたま事業部大宮営業所事業所長・関一匡氏は、「当事業所は浦和・大宮以北を中心に2007年から事業展開している。70戸という規模は当社として過去最大級。地域密着をコンセプトに、様々な専門家の方とコラボした。社内からも期待されているプロジェクト」と語った。

続いて登壇した同社戸建分譲設計本部設計一部営業企画設計課課長・古垣雄一氏は「2年前、伊奈町でマルシェを行っていた農家さんに声を掛けたことがきっかけとなり、今回の提案にたどり着いた」と話し、同課主任・菅原雄太氏は「地域密着に深く踏み込んでプランに落とし込んだ。専門家の好意で成り立ったプロジェクト。入居者の方には新たな豊かな暮らしを発見していただきたい」と話した。

大宮事業所主任・佐々木真央氏は、「この3か月間で問い合わせは58組。モデルハウス来場予約は26件。地元居住者が中心だが、東京・神奈川、千葉も2割に達するなど、子育てファミリーの注目度が高い」と説明した。

伊奈町でマルシェを行っていたのは、ベジタブルボーイズカンパニー代表・大橋一幸氏(38)で、大橋氏は「豊かな暮らしと『食』『農』はつながるものがある。住宅購入者の方と関わると、明日も頑張れというエネルギーをもらえる。様々な提案を行い、小さなつながりを造っていきたい」と話した。

屋号「鉢乃木屋」の盆栽家・齊藤真之氏は「大学の専攻は建築で、ゼネコンに8年務め、30歳になる直前に目覚め、一念発起して盆栽に没入し、今年5月に独立。妻と一緒に店を立ち上げた。アーティストなど様々な分野の方とコラボしていきたい」と語った。

モデルハウスは2棟で、1棟の2階建てには齊藤氏の作品がたくさん展示されており、もう1棟の平屋はキャットウォークが提案されているのが特徴。主な基本性能・設備仕様は、同社の標準である天井高2700ミリ、樹脂サッシ、ソフトクローズの引き戸・開き戸、挽板の床、現しの柱・梁、桐のデザイン壁などのほか、ビルトインコンロ「デリシア」、ハイブリッド給湯器「エコワン」など。

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モデルハウス(2階建て)

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モデルハウス(平屋)

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左から関氏、古垣氏、大橋氏、齊藤氏、菅原氏、佐々木氏

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齊藤氏(左)と大橋氏(大橋さん、貴殿が醜男と言っているのではない。念のため)

        ◆     ◇

 専門家とコラボするマンション・分譲戸建ては珍しくないが、地域に特化したこれほど大掛かりな戸建てプロジェクトは少ないはずだ。

 大橋氏と二言三言話しただけで旧知の仲のような気がした。記者も田舎の農家育ちだからだ。経営する農地は17町歩(1町は約1ha、多くは借地)で、従業員14名、パートを含めて35名の規模というから凄い。その苦労はよく分かる。農業で生計が立てられる世の中になってほしい。

 齊藤氏は、盆栽家として独立したばかりというのに、粋な和服姿がすっかり板につき、その道を究めた大家に見えた。憎たらしいほどいい男ではないか。

 記者はこれまで、マンションや分譲戸建て、その他の施設のフェイクグリーンをやめよと100本くらいの記事を書いてきた。齊藤氏はそれを実現してくれる傑物と見た。記者の目に狂いはない。

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齊藤氏の作品(左からセイヨウガマツカ、セッカヒノキ、ヤツブサイチョウ)

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齊藤氏

        ◆     ◇

 「地域共生」について。同社グループが今年6月に分譲開始した「防災」「環境」「自助」「共助」「コミュニティ」「環境」をテーマにした「ディスカバリープロジェクト東武動物公園 コネクト・コミュニティ」でも感じたが、難しいテーマによくぞ挑戦したと思う。佐々木氏は「どこでもできる」と語ったが、これまでどこも行わなかった。

 上尾市の令和3年度の分譲住宅着工戸数は482戸だ。今回の物件はその約15%だ。常識的に考えれば、完売まで2年、3年くらいかかっても不思議でないが、同社は早期完売を目指しているのだろう。

 価格は、見学する前に4,000万円台の前半だろうと読んだが、ほぼ予想通りだ。同業の記者の方は平屋が5,000万円を突破することに驚いていたが、驚くに値しない。建ぺい率、容積率からして土地を広くしないと平屋は建たないからだ。5,000万円を超えるのはその1戸のみだろう。平屋好きはどこにでもいる。

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yoridokoro(拠りどころ)上尾」モデルハウス(右が平屋)

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現場近くのたわわに実った柿の木(何本もあった)

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桶川駅西口のケヤキの街路樹(予算の関係か右のみ強剪定。街路樹はシンメトリーだから美しいのに、行政はこのようなことを平然と行う。業者はそれに従う。市民は異議を唱えない。つまり、いつまでたっても美しくないということ)

可視化難しい「防災」「コミュニティ」「環境」に挑戦 ポラス「東武動物公園」(2023/6/16

ポタジェ(家庭菜園)活用したワークショップ ポラス「北浦和みのりプロジェクト」(2023/4/23

まるで植物園 五感で体験できる 野村不動産 マンション総合ギャラリー「新宿」(2023/2/21

ボタニカルが最高 4つの商品・開発を発表 三菱地所ホーム(2018/5/30

いい加減にしてほしい モデルルームのケミカル製品・造花の氾濫(2017/5/23

カテゴリ: 2023年度

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は1010日、20239月度の主不動産流通市場動向をまとめ発表した。

中古マンションの成約件数は前年同月比6.7%増の3,191件で、4か月連続して前年同月を上回った。㎡(坪)単価は同4.8%増の72.44万円(239万円)で、205月から41か月連続上昇、価格は同4.5%増の4,618万円で、206月から40か月連続上昇した。専有面積は同0.3%減の63.75㎡となった。

地域別では、成約件数は千葉県以外の地域が前年比で増加し、東京都区部は2 ケタ増となり4か月連続で前年同月を上回った。成約㎡単価は埼玉県と神奈川県他以外の地域が前年比で上昇が続き、東京都区部は41か月連続、千葉県は38 か月連続で前年同月を上回った。埼玉県は205月以来40か月ぶり、神奈川県他は2011月以来34か月ぶりに前年同月を下回った。

中古戸建は、成約件数は同2.2%減の1,099件で、221月から21か月連続で前年同月を下回った。価格は同2.2%増の3,924万円、土地面積は同3.2%減の139.52㎡、建物面積は同0.9%減の104.39㎡となった。

地域別では、成約件数は東京都区部と多摩以外の地域が前年比で減少し、千葉県は2ケタ減となり3か月連続、神奈川県他も3か月連続で前年同月を下回った。成約価格は横浜・川崎市と多摩、千葉県が前年比で上昇し、多摩は6か月連続で前年同月を上回った。

カテゴリ: 2023年度
 

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