予約が取れないリファイニング見学会 〝お互い様〟「ドミトリー朝日台」30分で満席
青木茂建築工房は4月18日、 「(仮称)ドミトリー朝日台」リファイニング工事解体見学会を開催した。築39年の新耐震基準による共同住宅で、耐震診断により躯体に問題がないことからそのまま生かし、不適合箇所の是正、メンテナンス性の向上を図ることで、第三者機関による耐用年数評価で100年超の〝お墨付き〟を取得しているのが特徴。見学会には定員75人を超える78人が参加した。
物件は、都営大江戸線豊島園駅から徒歩5分、練馬区練馬2丁目に位置する敷地面積約901㎡、4階建て共同住宅27戸。建築年は昭和60年(1985年)。リファイニング工事の設計は青木茂建築工房(建築)・DN-Archi (構造)・シード設計社(設備)、施工は内藤建設。竣工予定は2024年9月。
既存建物は、新耐震基準の建物であるが検査済証の交付はされておらず、そのため、ガイドライン調査によって法適合調査を行い、不適合箇所の是正を行うとともに無届け増築となっていた屋根付き駐輪場を更新して増築することで検査済証の取得を目指す。
また、給排水管を一新し、PSスペースや床スラブ配管などのメンテナンスを共用部に移す計画にしたことなどにより、第三者機関による建物の耐用年数評価では100年超の評価を取得した。
見学会に臨んだ同社・青木茂会長は、「既存建物の耐震性に問題がないのは、施工を担当する(海がない)岐阜県の内藤建設のビルも同様、海砂を使っていないことも要因の一つと考えられる。この種の調査をする会社が少ないのが課題」などと語った。
同社・川村航大氏は、「耐震診断の結果、問題がないことが分かったので、躯体はそのまま生かしてプランニングした。第三者機関による耐用年数評価では、あと100年もつとのお墨付きももらっている」と話した。
物件オーナーは、「親父から相続したもので、建て替えも考えたが、ニュースで青木先生を知り、きれいで長持ちするものにしていただいた。賃料は10.5万円(28.05㎡)を予定している。入居者のほとんどは音楽関係の学生さん。防音性を担保する特別な工事は行っていないが、〝お互い様〟を周知徹底している」と話した。
左から内藤建設担当者、川村氏、青木氏
オーナー
解体工事現場
印のついている鉄筋がむき出しの部分を補修するのだそうだ
現地
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見学会の案内が届いたのは4月8日の午前9時38分。見学時間は午前11時~、午後1時~、午後2時20分~の三部構成で定員は各25人。記者が参加申し込みをしたのは8日の10時過ぎ。すると12時41分に「満員御礼につき、『(仮称)ドミトリー朝日台』リファイニング工事解体見学会の参加申し込み受付を終了いたしました」のメールが届いた。
つまり、わずか30分の間に定員75人枠を突破したということだ。困った記者は、「見学会では青木新会長と秋山新社長の話が聞きたい。何とかならないか」と返事したところ、青木会長から直々に「午後の部にはわたしが参加するから」と許可を頂き、取材が実現した。
建築・設計業界のことはよくわからないが、ハウスメーカーやデベロッパーの現場見学会ではまずありえない。商業施設など関係者・一般の方も参加される見学会はともかく、メディア向けの見学会では多くて40~50人、少ないのは数人だ。
過去にもこのようなことはしばしばあった。どれほど同社の現場見学会が人気か、端的な例を紹介する。
コロナ禍の2020年9月15日に同社は「ヴァロータ氷川台」の見学会を三井不動産レジデンシャルと共同で行った。5部構成で満席の200人超が集まった。一方、同じ日には安藤忠雄氏が設計・デザインした日本財団「THE TOKYO TOILET」の一つ「神宮通公園トイレ」(あまやどり)のお披露目見学会が行われた。メディアは50人だった。記者の記事に対するアクセス数は前者が約2,500件、後者が約1,200件だった。
対象が関係者を含むのとメディア限定の差はあるにせよ、〝青木茂〟(秋山徹氏は継承するはず)の動員力のすごさがわかる。記者は〝予約が取れないリファイニング(refining)見学会〟と名付けることにした。
オーナーの〝お互い様〟もまたいいではないか。分譲も賃貸も居住者のクレームはつきものだ。〝風鈴がうるさい〟〝ハイヒールの音がする〟〝新聞配達のバイクの音が気になる〟〝排気口からニンニクのにおいがする〟…などだ。これは居住者どうしの人間関係が希薄で、供給サイドもまたそれを解消する取り組みを行わないからだ。多様性を認め合うようにすればこれらの問題は解決するはずだ。
秋山氏(同社ホームページから)
青木茂建築工房代表取締役に秋山徹氏青木茂氏は会長&調査会社代表取締役に(2024/4/1)
安藤忠雄氏を超えた? 青木茂氏×三井不 「氷川台」リファイニング見学会に200人超(2020/9/16)
「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団PJ(2020/9/16)
京成立石駅南側の再開発組合設立認可 マンション440戸 野村不・阪神阪急不
野村不動産と阪急阪神不動産は4月16日、参加組合員として事業参画している「立石駅南口東地区第一種市街地再開発事業」の再開発組合設立が2024年4月15 日付で東京都から認可されたと発表した。
事業地は、京成立石駅の南側に位置する葛飾区立石一丁目及び立石四丁目の施行面積約1.0ha。葛飾区有数の商業集積を誇る賑わいのある街並みである一方、老朽化した建物が密集し、狭隘道路が多数存在しており、防災面に課題があった。事業を通じ地区内の基盤整備を進め、防災性の向上、商業機能の更なる強化、質の高い住環境の整備などに寄与する。
住宅の予定戸数は約440戸で、高さは約120m。事業協力者は長谷工コーポレーション。事業コンサルタントは総合不動産鑑定コンサルタント。着工は2027年度、竣工予定は2030年度。
同駅北口の2.2haでは「立石駅北口地区市街地再開発組合」による再開発事業が行われており、東京建物、旭化成不動産レジデンス、首都圏不燃建築公社が参加組合員として事業参画している。マンションは36階建て710戸の予定で、全体竣工予定は2030年。
建築家・藤本壮介氏「大屋根リング」意義を語る 三井不動産「木と生きる」イベント
「木と生きる」イントロダクション
三井不動産とディスカバー・ジャパンは4月16日、東京ミッドタウン日比谷で開催するイベント「木と生きる」のプレス内覧会を行った。イベントは、木や森との持続的な共存と未来を考えるのが目的で、トヨタ自動車、三井物産、パナソニックグループ、ソニー、竹中工務店、サントリーホールディングス、乃村工藝社、東京都など18団体が共同参加。初日の「オープントーク」では建築家・藤本壮介氏が「大阪・関西万博 大屋根リング」の意義、今後の展開などについて語った。様々なシンポジウムのほか、音など五感で体感できるイントロダクションや18団体のパネルエキシビション・ワークショップも行われる。イベントは4月21日までの6日間。
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建築家・藤本壮介氏とDiscover Japan統括編集長・髙橋俊宏氏による「木と生きる」をテーマにしたトークセッションに集まったのは、参加予定の300人をやや下回ったようだが、その数の多さに驚いた。
どのような人が集まったのか知りたかったのだが、高橋氏が冒頭、ヒントを与えてくれた。高橋氏は「木の文化に興味のある方」「環境に興味のある方」「藤本さんの話に興味のある方」「ディスカバー・ジャパンをご存じの方」と4つの質問を発し、手を挙げてくださいと問いかけたところ、それぞれ数十人が応じた。半数くらいの人は18団体関係者か、森林・林業や環境問題、木造建築物に興味のある方だろうと判断した。
記者は、藤本氏の話を集中して聞いた。藤本氏は自ら手掛けた4つのプロジェクト「大宰府天満宮の仮殿」「博多・明治公園のPark-PFI事業」「岐阜・飛騨市の共創拠点施設」「大阪・関西万博の大屋根リング」について語った。「仮殿」は屋根の上に緑を配し、周囲の緑との調和を図ったもの。「明治公園」は5層からなる立体公園の提案で、都立明治公園と同様、東京建物がPark-PFIの代表提案者になっている。「共創拠点」は飛騨市が盆地であることに着想を得てすり鉢状の自然と一体となる施設を整備するものだ。
「大屋根リング」については「炎上、世間をお騒がせしている」と笑わせたあと、なぜリングなのか、どうして木造としたのか、解体する理由は何かなどわかりやすく説明した。わが国の大規模木造建築の取り組みは海外と比べ遅れているとも指摘し、持続可能な社会の実現に向け、新たな可能性を提案したものだと強調した。
藤本氏(左)と高橋氏
トークセッション
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1階アトリウムのイントロダクションエリアの演出が素晴らしい。空間プロデュースを担当しているのは乃村工藝社で、同社クリエイティブ本部第一デザインセンター デザイン4部・井上裕史氏は、一般には流通しない木端(こっぱ)と呼ばれる木くずを敷き詰め、歩くことで音、香り、感触など五感で自然を体感しながら、東京芸大院生や卒業生の木彫作品を鑑賞できると説明した。井上氏は、わが故郷・三重県の皇学館大学で神学を学んだことも明かした(小生はその隣の高校出身)。
木端(こっぱ)
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地階の「パネルエキシビション・ワークショップ」はゆっくり見学する時間がなかったが、トヨタ自動車のブースは他団体よりひときわ大きく、わが故郷・三重県の宮川村の社有林(1,689ha)も紹介されていた。皆さんはご存じないだろうが、この山林はかつて〝日本一の山林王〟と称された諸戸家から譲り受けたもので、管理しているのは地元の速水林業だ。
他では、40種の好きな匂いを選択しかぐことができるソニーの「におい提示装置」にほれ込んだ。値段は250~300万円とやや張るが、コストダウンしたら多様な用途に使える。乃村工藝社のブースは井上氏の作品も展示されている。これがまた素晴らしい。MUJI HOUSEの「SE構法」(エヌ・シー・エヌ)もいい。
三井不動産は神宮外苑地区まちづくりはそれぞれ別々に展示されていた。「神宮外苑」の街づくりについては詳細な説明・展示はなかったが、せっかくの機会だから、大きなスペースを割いてしっかり説明してほしかった。新たなコーポレートメッセージ「さあ、街から未来をかえよう」を発表したばかりだ。同社の街づくりランドスケープデザインは他のデベロッパーに負けない。「HARUMI FLAG」はその集大成だ。反対者の中には同社に対するかなりの誤解もある。誤解は解かなければならない。
トヨタ自動車
ソニー
ワークショップ
「コンラッド」ホテルと賃貸「ラ・トゥール」 住友不&大和地所「北仲通北地区」
「(仮称)北仲通北地区A1・2地区プロジェクト」
住友不動産と大和地所は4月10日、横浜市中区で開発を進めている「(仮称)北仲通北地区A1・2地区プロジェクト」内のホテルと住宅の概要が決定したと発表した。ホテルは、ヒルトンのラグジュアリーブランド「コンラッド・ホテルズ&リゾーツ」、住宅は、住友不動産の最上級賃貸レジデンス「La Tour/ラ・トゥール」となる。
物件は、横浜市中区北仲通6丁目の商業地域(建ぺい率80%、容積率750%)に位置する敷地面積約9,302㎡、40階建て延べ床面積約97,081㎡。1~16階がホテル(272室)、18~40階が賃貸住宅(224戸)。竣工は2026年11月。設計は久米設計。施工は鹿島建設。
計画地は、都市再生特別措置法に基づく特定都市再生緊急整備地域の「横浜都心・臨海地域」に位置し、本計画を含む北仲通北地区は、多機能な国際交流拠点・みなとみらい地区と関内地区の結節点として位置づけられている。2階に横浜市役所から続くペデストリアンデッキを整備することで桜木町駅と馬車道駅への回遊性を向上する。
賃貸住宅は、住友不動産の最上級賃貸ブランド「La Tour/ラ・トゥール」で、平均専有面積100㎡超、最大280㎡、全部屋バルコニーレス。パーティールームやフィットネスなどの共用施設を備え、24時間バイリンガル対応のコンシェルジュサービス、ヴァレーサービスなどラグジュアリーホテル並みのサービスを提供する。
ホテルは、ヒルトンのラグジュアリーブランド「コンラッド・ホテルズ&リゾーツ」が運営する「コンラッド横浜」で、現在運営中の「コンラッド東京」「コンラッド大阪」、2026年開業予定の「コンラッド名古屋」に次ぐ4軒目の開業となる。約48㎡のスタンダードルームを中心とした全272室の客室のほか、料飲施設4店舗、ジム、スパ、屋内プール、エグゼクティブラウンジやウェディングチャペルに加え、宴会や会議の需要にも対応できる約360㎡のボールルームやミーティングスペースを備える予定。
閑話 群馬県の県庁所在地は前橋市 65年間も高崎市だと思い込んでいた不覚
わが家の玄関(左から散歩の帰りに摘んだハナニラ、1か月前の大和ハウスの記者懇の帰りにもらった鉢植え、廃棄する予定の葉っぱを観葉植物レンタル会社からもらって10年くらい経過するポトス…みんなただ)
閑話。皆さんは群馬県の県庁所在地が前橋市であることをご存じか。本日、RBAスタッフから指摘されて初めて知った。そんな筈はないと、県庁に電話した。文化財保護課の担当者は「確かに明治時代の一時期、高崎城跡に県庁を置いていましたが、その後はずっと前橋市です」とのことだった。65年間も高崎市だと思い込んでいた。
小生は地理が得意で、中学生のときは、47都道府県の地形や県庁所在地はもちろん主な都市名や山、川、産業、特産品などを覚えるのが好きだった。福島県は郡山市でなく福島市で、山口県は下関市でなく山口市であることも間違えなかった。祖母がファンだった三波春夫の「大利根無情」(舞台は千葉県だが)を覚えたのは中学1年のころで、いまでも数少ない十八番の持ち歌だ。24歳のときに結婚しようと思った彼女の出身地も群馬県だった(見事に捨てられたが)。
なぜ間違って覚えたか…いまだにわからない。
18団体が共同参加 「木と生きる」イベント4/16~4/21 三井不 ミッドタウン日比谷
三井不動産とディスカバー・ジャパンは4月16日(火)~4月21日(日)、企業や個人が環境や社会・文化と向き合い、木や森との持続的な共存と未来を考えるイベント「木と生きる」を東京ミッドタウン日比谷で開催する。イトーキ、エステー、大林組、カリモク家具、サントリーホールディングス、神宮外苑地区まちづくり、ソニー、ダイキン工業、竹中工務店、東京都、トヨタ自動車、日建設計、乃村工藝社、パナソニックグループ、三井物産、三井ホーム、MUJIHOUSE、良品計画の18団体・企業が共同参加する。
イベント初日には、建築家・藤本壮介氏と、日本の再発見を通して、”ニッポンの魅力、再発見”をコンセプトに持つDiscover Japanの統括編集長・髙橋俊宏氏による「木と生きる」をテーマにしたトークセッションのほか、様々なシンポジウム、イントロダクション、パネルエキシビジョン、ワークショップが行われる。
木や自然を題材に様々な角度で読み解いていくシンポジウムや、木とのかかわりあい方をインスタレーションで表現するイントロダクションエリア、共同参加団体の取り組みを展示するパネルエキシビジョン、木に直接触れられる作品を作るワークショップなど様々な“木を知る”体験を通じ、「木と生きる」未来を考えるきっかけを創出するのが狙い。
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東京都が共同参加しているのに林野庁が入っていないのは不思議だが、素晴らしい企画だ。神宮外苑問題が耳目を集めている時だけになおさらだ。16日にはプレス内覧会も行われるのでしっかり取材したい。トヨタ自動車、サントリー、パナソニックグループなどの取り組みも興味がある。上海に本社があるトヨタサントリーミドリエ園芸有限公司の動きに注目している。トヨタが新しい事業を始めるならキーワードは「みどり」ではないか。
令和6年地価公示 バブル期の〝半値戻し〟上昇20市のみ 福岡県4市がベスト10入り
東京株式市場の日経平均株価が2月22日、3万9,098円の終値を付け、1989年12月29日の史上最高値3万8,915円を34年2か月ぶりに更新した。その後も4万円台をマークするなど上昇基調にある。一方、令和6年の地価公示は全用途で前年比2.3%上昇し、圏域別・用途別でも変動率はいずれも前年度を上回り、上昇率は拡大傾向にある。
ただ、バブル期の平成元年と比較すると、住宅地は札幌・仙台・広島・福岡の地方四市が25.6%上昇しているのみで、全国平均では48.2%マイナス、大阪圏は51.4%と半値以下となっている。地価公示は〝半値戻し〟と言えなくもないのが現状だ。
別表1は、バブルの絶頂期にあった平成元年と令和6年の全国住宅地の圏域別平均価格を比較したものだ。これによると、平成元年は250,800円/㎡、令和6年は130,000円/㎡となっており、48.2%マイナスとなっている。東京圏は47.3%下落している。
唯一上昇しているのは札幌・仙台・広島・福岡の地方四市のみで、平均25.6%の上昇。札幌は34.5%、仙台は41.0%、福岡は58.7%それぞれ上昇し、広島市は17.5%下落している。
人口10万人以上の244市のうち、平成元年比で住宅地価格が上昇しているのは別表2に示した20市のみ。上昇率トップは福岡県春日市の87.9%、2位は同県大野城市の72.0%、3位は同県福岡市の58.7%で、ベスト3を福岡県が独占。同県筑紫野市も41.1%上昇し6番目に入るなど福岡県の4市が上昇率上位10市に入っている。
このほか、愛知県、沖縄県の上昇が目立つ。愛知県は刈谷市、安城市、豊田市、岡崎市、春日井市、東海市の6市が、沖縄県は宜野湾市、沖縄市、那覇市、浦添市の4市がそれぞれ上昇20市に入っている。
一方、平成元年比で下落しているのは224市で、75市が下落率50%以上となっている。下落幅がもっとも大きいのは鹿児島県鹿屋市の73.2%で、2番目は千葉県木更津市の68.5%、3番目は栃木市の68.4%。
県庁所在地では、58.4%下落の千葉市をはじめ下落幅が大きい順に甲府市、鳥取市、奈良市、福井市、和歌山市、大阪市、高松市、水戸市、岐阜市、青森市、神戸市、前橋市、京都市、富山市、秋田市が40%以上の下落となっている。横浜市は39.7%、名古屋市は6.8%の下落。(別表3)
別表4には過去10年比で上昇率が大きい50市、別表5には過去10年間で下落幅が大きい50市をそれぞれ紹介した。
10年比で上昇しているのは168市で、上昇率が大きいベスト3は福岡市、大野城市、札幌市の順。いずれも上昇率は80%を超えている。沖縄県の3市がベスト10入り。
10年比で下落しているのは90市で、下落幅ワースト3は群馬県桐生市、三重県伊勢市、同県松阪市の順。
※表は国交省のデータをもとにRBAタイムズが作成したもの
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地価公示は遅行指標で、実勢地価と大きく乖離することもあるので廃止すべきというのが記者の持論だが、それなりに参考にもなる。地方四市がバブル期と比較して上昇しているのは、バブルの〝恩恵〟を受けていなかったからで、現在のマンション価格は札幌、仙台、福岡は坪400万円を突破し、福岡市の一等地は500万円以上となっている(広島市は不明)。沖縄県も首都圏富裕層に人気で、坪400万円を超えてきている。 県庁所在地で最大の下落率となっている千葉市は坪400万円に届くがどうかが現状だ。
情けないのは、わが多摩市と故郷の伊勢市と隣接の松阪市。多摩市が平成元年比下落率でワースト6番目に入っているのには驚いた。多摩そごう⇒三越が撤退し、京王プラザホテル多摩が閉店、恵泉女学園大学も閉校が決まった。ニュータウン再生の取り組みの遅れが致命傷だと思う。マンション坪単価は東武野田線と同じ250万円とはどういうことだ。
伊勢市については昨年も書いた。ワーストワンから脱出したのはうれしいが、1つランクを上げたに過ぎない。三重県最大の売り場面積を誇っていた「ジャスコ伊勢店」が入居していた駅前ビルは平成8年に閉館。平成13年には三交百貨店も閉店。隣接地では現在、長谷工コーポレーションが再開発マンションを建設中だが、記者は売れる値段として坪150万円とみているのだが…。全国区の伊勢神宮、赤福、伊勢うどんがあるのに、観光客は〝素通り〟。みんな鳥羽・志摩に向かう。先日、帰省しようとホテルを探したら禁煙でシングルの〝素泊まり〟でも2万円だ。帰るのを断念した。宿泊料金だけは2倍、3倍に上昇している。
松阪市も同様。やはり三交百貨店が平成14年に閉店になってからは下り坂の一途のようだ。わが国を代表する国学者・本居宣長、三井グループの家祖・三井高利の生誕地として知られるが、今は昔。駅前には松阪牛の元祖「和田金」があるが、記者も含めて地元の人はほとんど利用しないはずだ。
起死回生の打開策は見いだせないのか。
またショック全国10万人以上259市の地価公示下落率最大はわが故郷・伊勢市(2023/3/25)
双葉町に受賞作を建ててこそリアルに対する回答 第11回「大東建託 賃貸住宅コンペ」
KABUTO ONE(カブトワン)での2次審査会および表彰式
大東建託は4月1日、「震災復興のラストランナー 福島県双葉町」をテーマとする第11回「大東建託 賃貸住宅コンペ」の「アイデア提案部門」で最優秀賞(1作品)、優秀賞(1作品)、入選(3作品)の計5作品、「新たな賃貸スタイル部門」で審査委員特別賞(2作品)を決定したと発表した。
「アイデア提案部門」では、応募総数101作品の中から5作品が1次審査を通過し、メンター建築家によるアドバイスを受けることでブラッシュアップされ、2次審査でのプレゼンテーション、質疑応答を経て、各賞が決定された。
最優秀賞(賞金200万円)は、横浜国立大学大学院の葛谷寧鵬、姶良壮志、朝妻貴徳3氏による「マチはカワに自生する」が選ばれた。
受賞作品の模型やパネルは、4月15日から5月13日の期間、「東日本大震災・原子力災害伝承館(福島県双葉町)」に展示され、予約不要で誰でも見学できる。
最優秀賞
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同社のリリースを読んで驚愕した。同社が12年前から「大東建託 賃貸住宅コンペ」を行っていることなど知らなかったことはともかく、11回目以降の5年間は、さらなるリアルを追求するため、テーマを「賃貸住宅コンペ まちへ出る」へリニューアルし、日本各地の街へ赴き開催していくとのことで、その初弾に東日本大震災によって甚大な被害を受けた福島県双葉町を選んだとあるではないか。
双葉町は昨年10~11月、世帯の代表者(3,244世帯)を対象に住民アンケートを実施している。回答者数は1,244世帯(回収率38.3%)。
これによると、60歳以上の人は69.5%(うち70歳以上が48.0%)、無職は54.0%、居住自治体は町内が1.8%、県外が35.5%、居住形態は持ち家が70.7%、民間賃貸が7.6%、帰還意向は「戻っている」が1.4%、「戻りたいが」が14.9%、「判断がつかないが」24.8%、「戻らないが」が55.2%となっている。
帰還を希望する人の町への希望は「医療・介護福祉施設の再開や新設」「商業施設の再開や新設」「住宅の再建に関する支援」などとなっている。
町民のほとんどが町外に住むことを余儀なくされ、帰還意向者は5割に満たない-〝住みたくても住めない〟〝戻りたくても戻れない-これがリアルだ。
最優秀賞を受賞した3氏は「双葉町の環境に身を置いて『賃貸』を考えた時に思われたのは、都市そのものが自然に対して人間の場所を借り入れた存在ではないかということ。津波を経験して中間貯蔵庫に汚染土がまだ残っている状況で『賃貸』は数百年規模の都市の概念として捉えなければならないと感じた。賃貸住宅とそれらが建っていく環境と状況を設計した。どんなタイプの賃貸住宅が建ってもマチが生態系豊かで関係性が分厚く構築されていく為に、地形に沿って流れるカワからマチは始まる。カワを関係性の軸に据えて重ねられる復興は人と自然の為の都市像を示し、環境に自生する生きられたマチが実現できると信じている。(応募作品原文のママ)」と語っている。
「地形に沿って流れるカワからマチは始まる」-その通りだと思う。古今東西、街・都市は河川上に生まれた。敢えて「カワ」「マチ」とカタカナにしているのは別の概念を盛り込んでいるからだろう。リリースの図表からは字が小さすぎてそれが読み取れないのは残念。
もう、ここまで来たら最優秀賞をそのまま建てるしかない。企業ふるさと納税として町に寄付するか、全国に寄付を求めたらいくつも建設できるはずだ。これが厳しいリアルに対する回答になるのではないか。
この種のコンペ優秀作品をポラスは建売住宅に、三井不動産はマンションにそれぞれ採用して人気を呼んだことがある。
ポラス 学生コンペ 実物件化モデルハウスを公開 ミニ開発の難点を解消(2017/8/12)
ポラス中央住宅 「坪庭」と「玄関」を一体化 学生コンペ作品を実物件化(2015/12/3)
次代へ道を開くか「広がる通りみち」 第8回 「三井住空間デザイン賞」(2014/10/23)
本社内に空き家などの相談窓口 杉並区の公募により協定 細田工務店
細田工務店は4月1日、本社内(杉並区阿佐谷南3-35-21)に「杉並区空家等利活用相談窓口」を開設したと発表した。「杉並区空家等利活用相談窓口業務公募型プロポーザル」で同社が選定されたもの。協定期間は2024年4月1日から2029年3月31日までの5年間。
「相談窓口」では、専門家(建築士、弁護士、司法書士、税理士等)と連携・協力して、区内の空き家の相続、賃貸、改修、売却などの相談に対し、ワンストップで利活用に関する助言・提案を行う。
問合せは下記の通り。
・電話:03-5397-7717
▪メール:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
▪ WEB:https://www.hosoda.co.jp/contact/vacant-suginami/
・受付時間:午前9時~午後6時(定休日:水・日曜日※夏期休業、年末年始除く)
2月の住宅着工 9か月減 持家27か月、分譲戸建て16か月連続減 貸家は微増
国土交通省は3月29日、令和6年2月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は59,162戸となり、前年同月比8.2%減、9か月連続の減少となった。内訳は持家16,307戸(前年同月比11.2%減、27か月連続の減少)、貸家24,934戸(同1.0%増、2か月連続の増加)、分譲住宅17,327戸(同17.7%減、2か月連続の減少)となった。分譲の内訳は、マンション7,483戸(同23.3%減、2か月連続の減少)、一戸建住宅9,710戸(同13.3%減、16か月連続の減少)。
首都圏は貸家(同1.3%増)が増加したものの、持家(同8.5%減)、分譲住宅(同16.7%減)が減少したため総戸数は同8.1%減少した。
首都圏マンションは4,169戸(前年同月比23.8%減)で、内訳は東京都2,224戸(同21.0%減)、神奈川県885戸(同27.3%減)、埼玉県868戸(同161.4%)、千葉県192戸(同82.6%減)。