大激戦地で販売好調 デベロッパーの良心を見た パラダイスリゾート「調布」
「調布ワンダーランドプロジェクト」
飯田グループ会社パラダイスリゾートが分譲中の「調布ワンダーランドプロジェクト」を見学した。京王線西調布駅から徒歩10分の全220戸で、今年4月に分譲した第1期50戸が完売するなど好調なスタートを切った。同沿線のつつじヶ丘駅圏から聖蹟桜ヶ丘駅圏にかけてここ3~4年の間に十数物件が分譲されており、今現在15物件2,000戸超が分譲中の大激戦地だ。早期完売したのは大和ハウス工業のコンパクト「調布」くらいで、完成物件では値下げも行われている。同社物件が好調なのは、価格もさることながら設備仕様レベルの高さにある。価格上昇に比例するように面積縮小、設備仕様の退化が著しい市場にあって、最低限の質を維持しようというデベロッパーの良心を見た。
物件は、京王線西調布駅から徒歩10分、調布市多摩川1丁目の準工業地域に位置する8階建て全220戸。6月下旬に分譲する2期(戸数未定)の専有面積は60.17~88.25㎡、予定価格は3,900万円台~7,400万円台(最多価格帯5,400万円台)、平均坪単価は260万円。竣工予定は2023年1月下旬。設計・監理は谷口建築企画一級建築士事務所。施工は多田建設。販売代理は長谷工アーベスト。4月から分譲を開始しており、これまでに50戸を成約。来場者は300件。
現地は、雪印乳業の倉庫跡地。用途地域は準工だが、マンション化が進んでいるエリアの一角。北側と南側2方に接道。北側は道路を挟んで小さな工場などがあり、南側は戸建てと中層のホッピー工場、敷地東側と西側はマンション。東宝調布スポーツパーク(ゴルフ場)や多摩川にも近い。
建物は南東向き、南西向き中心の4棟構成。住戸プランは平均70㎡のファミリータイプが中心。主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400~2450ミリ、フィオレストーン天板、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナ、タオル掛け2か所、ワイドスパン(70㎡以上は6400ミリ確保している住戸が多い)、トイレ「アラウーノ」(パナソニック製)など。共用施設はオーナーズラウンジ・サロン、460㎡の自主管理公園など。
同社銀座不動産部課長・田中大介氏は、「価格もそうですが、設備仕様に高い評価を頂いています。レベルは落としていません。お客さまには他と見比べていただきたいと話しています」と、販売代理の長谷工アーベスト東京支社販売第二部門販売一部エリアマネージャー・上田雄一氏は「モデルルームの出来などはお客さまから『段トツ』と言われています」とそれぞれ語った。
また、最近のマンションは価格が上昇する一方で、基本性能・設備仕様がどんどん退行していることを話したら、パラダイスリゾート取締役・田原伊知郎氏は「大手はブランド力があるから売れるんでしょうが、わたしどもがそれをやったらおしまい」と話した。
83㎡のモデルルーム
◇ ◆ ◇
京王線沿線に40年以上住んでおり、主だったマンションはほとんど見学している記者だが、コロナ禍でここ2年間は数えるほどしか見ていない。ただ、上田氏が話したように、設備仕様レベルは「断トツ」だと思う。坪単価260万円レベルではまずほかにないはずだ。単価設定もどんぴしゃり。第一次取得層の取得限界だと思う。
些細なことだが、「アラウーノ」について。最近はコストを下げるためタンク付きトイレが復活しているが、この「アラウーノ」は最新の機能付きで、マンションに採用されたのは初めだそうだ。尾籠な話で申し訳ないのだが、みなさんは用を足すとき便座に座ることはしないはずだ。勢いよくほとばしる小水の飛沫が便器の外に飛び出し、床やら壁やらを汚し、奥さんに怒られているはずだ。〝座って用を足せ〟と。
「アラウーノ」はその難点を解消するもので、泡立つ洗剤が飛沫を防ぐスグレモノだ(小生のような糖尿病も小水が泡立つが、アラウーノにはかなわない)。同社がこれを採用したのは「私のオフィスの近くにあるカフェはこれが採用されている。とてもいい」と語った田中氏が採用を決めたかどうかは聞かなかった。
タオル掛け2か所について。1本わずか1万から2万円のタオル掛けをコスト削減のためなくすデベロッパーが増えていると書いてきたが、いま分譲されている京王線沿線の物件で、きちんと2本設けている物件はどれだけあるか。半分もないのではないか。「デベロッパーの良心を見た」と書いたのはそのためだ。
田原氏について。名刺交換をするとき「ご無沙汰です」と声を掛けられた。全然覚えていなかったが、7~8年前に他のデベロッパー社長らと飲み会で一緒だったそうだ。記者が酷評している飯田グループの戸建て記事などもよくチェックされているようだが、小生に苦情を申し立てることはなかった。
ありがとうございます。田原さん。わたしは是々非々を旨としており、為にする記事は書いておりません。飯田グループ入りする前の飯田産業の森和彦社長(現飯田グループ会長)や東栄住宅の故・佐々野俊彦社長、一建設の創業社長の故・飯田一男氏は結構取材しています。
今回の物件を見学して、大手、中小などの固定概念でものごとを考えてはいけないことも改めて学んだ。やはり記者は現場を見ないといけないということだ。
アクアパティオ
アラウーノ
全戸南西向き 幅員23mの桜並木・遊歩道・道路に隣接 ポラス「武蔵浦和」
「ルピアシェリール武蔵浦和」
ポラスグループ中央住宅が分譲中のコンパクトマンション「ルピアシェリール武蔵浦和」を見学した。駅から徒歩3分の全55戸で、桜並木の緑道に面しているのが特徴。販売は好調。
物件は、JR埼京線・JR武蔵野線武蔵浦和駅から徒歩3分、さいたま市南区別所6丁目の第一種住居地域に位置する7階建て全55戸。専有面積は32.28~47.46㎡、坪単価は300万円超。現在先着順で分譲中の3期(5戸)の価格は3,090万~3,750万円(32.28~32.79㎡)。竣工予定は2023年1月下旬。売主は同社のほかアートランド。施工はCMC。販売代理はアートランド。昨年11月から販売開始しており、販売は順調。
現地は、埼京線高架線に沿って整備された花と緑の散歩道・道路に隣接。建物は南西向きで、1フロア7~10戸構成。全て散歩道向き。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、複層ガラス(一部Low-Eガラス)、食器棚、ピクチャーレール、物干しポール、マイギャラリーなど。このほか自動ドアゴミ置き場、シェアリングサービスとしてスクリーン、電動工具、ロボット掃除機、ロボット窓拭機、高圧洗浄機、脚立などの貸し出しなど。
同社マインドスクェア事業部マンションDv担当者は、「広域からも集客できているのが特徴で、販売は順調です。食器棚、ピクチャーレール、物干しポールなど設備仕様に高い評価を頂いています」と話している。
モデルルーム(LDK)
キッチン
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埼京線の県南エリアは緑被率が低いとこれまで何度も書いてきたが、今回の物件は緑環境に恵まれている。桜並木と遊歩道が整備された幅員約23mの道路・歩行空間に隣接。2車線(各4m)の交通量はそれほど多くなさそうだ。
間取りもよくできている。コンパクトマンションだが、32㎡の住戸の間口は4.3m確保されている。食器棚、物干しポール、ピクチャーレールなどを標準装備としているのも評価できる。
現地
〝建築の魔術師〟青木茂氏と共同の6棟目リファイニング「信濃町」完成 三井不動産
「シャトレ信濃町」
三井不動産と青木茂建築工房は5月17日、両社が共同で取り組む「リファイニング建築」の6物件目となる賃貸マンション「シャトレ信濃町」の竣工見学会を行った。建て替えと比較して建築コストを約3割、CO2削減量を72%それぞれ削減し、工期を3分の1程度に短縮し、さらに市場価格以上の賃料設定を可能にした物件だ。
物件は、JR中央線信濃町駅から徒歩7分、新宿区信濃町3丁目の第一種中高層住宅専用地域に位置する敷地面積約968㎡のSRC造9階建て延べ床面積約2,610㎡の全35戸(うち3戸は自家用、従前は21戸と店舗1戸)。専用面積は41~82㎡。賃料は45㎡で22~23万円(管理費含む)。三井不動産レジデンシャルリースがサブリースを行う。大規模模様替えとして確認申請を行い、検査済証を取得。設計は青木茂建築工房。施工は大末建設。改修竣工は2022年5月16日(従前は1971年)。工期は13か月。
耐震性に問題があり、建て替えた場合は日影規制などの規制を受けるため5階程度しか建てられず、間取りも3LDKが中心だったため十分な事業採算を確保できない課題を抱えていたのを、リファイニング建築を活用して再生した。
既存躯体の耐震性を向上させるため、コンクリートの既存バルコニー手摺をポリカーボネートに変更することで建物の軽量化を図り、耐震補強したうえで84%を再利用しているのが特徴。建物は東京大学との共同研究により建替えの場合と比較して、CO2を72%削減することも実証されている。
また、従前は1フロア3LDKの3戸構成だったのを、周辺の賃貸マーケットニーズに合わせた各階1LDK~2LDKの5戸構成とすることで事業性能の向上と安定稼働の実現を図っている。
共用部の再生にも力を入れており、従前の植栽をそのまま継承するとともに、エントランスにあった御影石の壁・フェンスを取り払い外に開かれた空間にし、御影石は共用部や専用部に用いることでデザイン性を高めている。既存の水盤は既存庭園が写り込むように一新。1階のロビー・応接室は事業性を高めるため87㎡の住戸に変更し、別にエントランスを新設している。
見学会でオーナーのケーズコート代表取締役社長・木村達央氏(72、昨年10月の段階)は、「耐震診断を行ったら南側の窓、駐車場などに×点がつき、建て替えたら5階程度にしかならず大幅に事業採算が悪化することが分かった。リファイニングは費用が7掛け、8掛けになり、工事期間も3年くらいが約1年に短縮できた。間取りもマーケットにふさわしいものになった」などと語った。
青木茂氏は、「18年前に、スクラップ&ビルドよりCO2が83%削減できると発表したときは『あっそう』という反応しかなかった。今回は構造面で苦労したが、かなりやりたいことができた。これからは脱炭素の有力な手法の一つとして普及させたい」と話した。
左端が木村氏、一人置いて青木氏
Before(左)とAfter
Before(左)とAfter
Before(左)とAfter
Before(左)とAfter
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今回の物件については、昨年10月に行われた解体見学会を取材しており、記事にもしているのでそちらも併せて読んでいただきたい。この日は、解体見学会でお会いした服部夏子さんにお会いできるのではないかと楽しみにしていたのだが、作品をロビーに展示するとそのまま帰られたそうだ。残念。
百聞は一見に如かず。物件内にはリファイニング建築サロン(モデルルーム)も7月下旬まで設けられるので、興味のある方にお勧めだ。目からうろこが落ちるのは間違いない。フランク・ロイド・ライトは“空間の魔術師”と呼ばれるそうだが、記者は青木茂氏を〝建築の魔術師〟と呼ぶ。
服部夏子さんのアート
水盤
ポリカーボネートの手摺(サッシは全てLow-Eガラス)
以上、御影石の再利用
家歴書の一部
「建築は愛。母の家と一緒」青木茂氏 りそな銀行「リファイニング」セミナー(2022/3/30)
世界へ 建築業界に新風 青木茂リファイニング×服部夏子アート 「信濃町」見学会(2021/10/8)
4月の中古マンション・戸建てとも成約減り、価格上昇続く 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は5月13日、首都圏の2022年4月の不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は3,094件(前年同月比9.7%減)で4か月連続して前年同月を下回った。成約坪単価は226.8万円(同16.3%上昇)で20年5月から24か月連続、成約価格は4,363万円(同14.0%上昇)で20年6月から23か月連続してそれぞれ前年同月を上回った。専有面積は63.5㎡(同1.9%縮小)となった。在庫件数は37,360件(同9.3%増)、在庫坪単価は240.1万円(前年同月比13.3%上昇)となった。坪単価は18年2月の190.1万円から51か月連続、26.3%上昇している。
地域別では、成約件数はすべての地域が前年比で減少が続き、埼玉県は前年比2割台、横浜・川崎市と多摩、千葉県は1割台の減少となった。成約単価はすべての地域が前年比で上昇が続き、東京都区部は24か月連続、横浜・川崎市と埼玉県は23か月連続、千葉県は21か月連続で前年同月を上回った。
中古戸建ての成約件数は1,190件(同11.7%減)となり、4か月連続で前年同月を下回った。成約価格は3,664万円(同7.6%上昇)となり、20年11月から18か月連続で前年同月を上回った。土地面積は前年比3.5%縮小し、建物面積は同3.1%縮小した。
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中古市場のことはいま一つよく分からない。毎月の成約件数はこの1年間3,000件前後で推移している一方で、成約単価・価格、在庫坪単価がどんどん上昇し、在庫も積みあがっているのをどうとらえればいいのか。
成約坪単価は24か月前の20年5月は171.7万円から32.1%、成約価格は23か月前の20年6月の3,541万円から23.2%それぞれ上昇したことになる。単価の上昇幅のほうが大きいのは、その分専有面積が縮小しているためで、21年5月の65.08㎡から11か月連続して縮小している。
問題はこの先どうなるかだが、さっぱり分からない。可処分所得はこのところ伸びているようだが、円安による物価高は家計を直撃し、新型コロナも第7波が懸念され、ロシアのウクライナ侵攻も収束する気配がない。
中古市場と連動する新築住宅市場は、マンションの着工戸数が減少していることから供給は減ることになるだろうが、分譲価格を左右する建築資材・労務費が上昇するのは間違いない。価格はすでに一般的な世帯の取得限界を超えている。大幅なローン金利の引き上げはないと読んでいるが、マインド一つで新築も中古も市場は崩れる可能性があるとみている。
この1か月の新築マンション市場は来場者が減り、成約も伸び悩んでいるという声を聞いた。これまで市場のターニングポイントはなぜか正月休み明け、ゴールデンウイーク明け、夏休み明けが多い。踊り場に差し掛かっているのかもしれない。現場取材が激減しているのも不安を増大させている。
業界初 屋上・外壁からの漏水18年保証 CO2排出量38%削減 三井不レジ「志木」
「パークホームズ志木コンフォートテラス」
三井不動産レジデンシャルは5月10日、業界初となる屋上・外壁からの屋内漏水18年保証の高耐久部材をマンションに採用すると発表した。これにより試算上、国土交通省ガイドライン推奨周期と比べて60年間で大規模修繕工事回数を2回減らすことが期待されるとしている。第一弾の「パークホームズ志木コンフォートテラス」を7月から分譲開始し、今後順次展開する。
高耐久部資材は、建物外皮の劣化抑制効果が期待される①タイルはく離・はく落防止性能が優れる外壁タイル張りに「有機系接着剤」②屋上アスファルト防水に「高反射塗料」③耐候性・耐久性にすぐれた外壁シーリング材-の3点セットからなる。
これにより、マンション業界では初めてとなる新築時の屋上および外壁から屋内への漏水保証について、現行の10年間から18年間に延長し、大規模修繕工事を長周期化することで、運用段階のライフサイクルCO2排出量を約38%削減できるとしている。
「パークホームズ志木コンフォートテラス」は、東武鉄道東上線志木駅から徒歩7分、埼玉県新座市東北1丁目に位置する8階建て135戸。専有面積き56.66 ~83.24㎡。竣工予定は2023年11月上旬。施工は長谷工コーポレーション。販売開始予定は2022年7月中旬。
第2回グリーンインフラ優秀賞受賞 フージャース「つくば」のマンション
「デュオヒルズつくばセンチュリー」に隣接する公園
フージャースホールディングスは4月28日、グループ会社のフージャースコーポレーションの「デュオヒルズつくばセンチュリー」が第2回グリーンインフラ大賞「生活空間部門」優秀賞を受賞したと発表した。
グリーンインフラ大賞は、国土交通省が事務局を務める「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」において、グリーンインフラに関する優れた取組事例を表彰し、広く情報発信することを目的に令和2年度に創設された表彰制度。第2回グリーンインフラ大賞では、全国から応募のあった27件の取組事例から、国土交通大臣賞(4件)と優秀賞が発表された。
「デュオヒルズつくばセンチュリー」は、茨城県つくば市の公務員宿舎跡地開発。産官学及び地域との連携の下、敷地境界線をシームレスにつないだ空間設計、開発地隣の公園(つくば市所有)の緑化リニューアルを行い、公園とマンションの敷地境界を取り払い、エリアに地元で人気のベーカリーカフェを誘致。公園の価値を維持する仕組みづくり及び地域コミュニティの場の創出のためのボランティア団体「つくばイクシバ!」を立ち上げ活動を行っている。公園利用人数は、リニューアル前後で283%増加した。
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とてもいい表彰制度だと思う。同社の「デュオヒルズつくばセンチュリー」は見学取材しており、記事にもしているのでぜひ読んでいただきたい。このような取り組みが全国に広がることを期待している。「公園」を住民から切り離すことしか考えていない自治体には刺激となるはずだ。
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「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」が発行した令和4年3月版「グリーンインフラ事例集」には100を超えるプロジェクトが掲載されている。デベロッパーが参画したプロジェクトも10件はある。分譲マンション事例はフージャースコーポしかないはずだ。
気になったのは、プラットフォームの会員構成だ。会員は都道府県と市町村の一号会員、関係府省庁の二号会員、民間企業、学術団体の三号会員、個人の四号会員からなり、2022年1月現在、一号は81、二号は9、三号は404、四号は838の合計1,332会員(設立当初は409会員)と増えてはいるのだが、一号会員は少なすぎる。全都道府県が会員になっているとすれば、市町村会員はわずか34にしか過ぎない。
何かにつけ官主導ではうまくいかないのは分かるが、都市公園などは各自治体が管轄していることを考えれば市町村会員が圧倒的に少なすぎる。各市町村を参画させることが課題ではないか。
「街のシンボルになる」来場者 公園との垣根なくしたフージャース「つくば」に感動(2021/4/28)
坪1300万円でどうか 旧逓信省庁舎跡地の三井&三菱「三田ガーデンヒルズ」
「綱町三井倶楽部」庭園からの完成予想図
三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスが4月25日に発表した旧逓信省簡易保険局庁舎跡地(1929年竣工)の大規模マンション「三田ガーデンヒルズ」に注目している。今年最大どころか、両社が2007年に分譲した定期借地権付き「広尾ガーデンフォレスト」以来の究極の億ションになるとみているからだ。
物件は、東京メトロ南北線・都営大江戸線麻布十番駅から徒歩5分、都営三田線芝公園駅から徒歩10分、港区三田一丁目の第二種住居地域・第一種文教地区に位置する敷地面積約敷地面積 25,246.㎡、14階建て他全1,002戸。専有面積は29㎡台~370㎡台。竣工時期は2025年3月。設計・施工は大成建設。
分譲マンションとしては港区最大となる敷地面積約25,000㎡で、両社が共同で「ガーデンヒルズ」を分譲するのは「広尾ガーデンヒルズ」以来38年振り。敷地南側にジョサイア・コンドルが設計した歴史的建築物「綱町三井倶楽部」を望む立地であるのも特徴の一つ。
国内最大規模となる全戸ZEH-Orientedを取得する予定で、電気・ガスともに CO2排出量実質ゼロとなるサービスを導入、太陽光発電と中圧ガスを利用したオンサイト発電を有事の際にも活用するなどレジリエンス機能も強化する。
この他、帝国ホテルと提携したコンシェルジュをはじめワークスペース、ジム、ゴルフラウンジ、サウナや岩盤浴、シアタールーム、ミュージックルーム、カフェラウンジ、 バー、レストラン(店舗)などの共用施設、サービス提供を予定している。
設計デザインは、東京ミッドタウン日比谷を手掛けたホシノアーキテクツがメインで、新丸ビルを担当したロンドンを拠点に国際的活動を行う建築設計事務所ホプキンスアーキテクツが国内マンションのファサード・デザインに初参画。旧逓信省簡易保険局庁舎を一部保存・再生する。起伏がある敷地を利用して既存樹を含む植栽約130種による約7,700㎡のランドスケープを計画している。
中庭
旧逓信省簡易保険局庁舎階段室
旧逓信省簡易保険局庁舎 入口
◇ ◆ ◇
現地の旧逓信省簡易保険局庁舎は入ったことはないが、何度も眺めてはため息をついた。〝ここにマンションが建ったらどんな素晴らしいものになるか〟と。目の前はジョサイア・コンドルが設計した数少ない現存建築物「綱町三井倶楽部」があり、三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田日向坂」「パークマンション三田綱町」のほか、アパの高級賃貸マンション「THE CONOE三田綱町」、イタリア大使館、オーストラリア大使館、三田共用会議所、元神明宮(元祖神社)、赤羽小学校、都立三田高校などがある。
麻布十番駅近くでは約1,450戸のマンションを含めた「三田小山町西地区第一種市街地再開発事業」も進行中だ。
両社は今秋に販売サロンを開設すると発表した。メディア見学会も行われるはずだが、いつものように単価予想を試みる。ズバリ坪単価は最低1,300万円、1,500万円もあると見た。
根拠は、これまで分譲された大規模億ションのなかでもっとも住環境に恵まれており、最高レベルの基本性能・設備仕様が期待できるからだ。
比較する物件はないが、現地に近接する三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田日向坂」(18戸)が参考になる。2011年竣工物件で、リストグループが開発した高額物件に特化したAI査定システム「mAI List(マイリスト)」が昨年の価格上昇率トップに上げたマンションだ。分譲当初の平均価格約2.4億円(平均面積128.24㎡)から約4.0億円へ坪単価は625万円から1,022万円へ1.6倍に上昇している。
もう一つ、2014年分譲の三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田綱町」(98戸)もある。坪単価725万円で瞬く間に完売した。ネットで調べたら、現在の中古価格は1,000万円を突破している。「THE CONOE三田綱町」も坪単価1,000万円超で分譲されると思われたが、急きょ賃貸に変更された。
これらより低くなることはありえない。ただ、戸数が多く、目先の社会経済動向も読みづらいので坪1,500万円となると自信はない。1,300万円くらいが妥当ではないか。自信はない。外れたからと言って責任は取らない。
帝国ホテルイメージ
究極の億ション 三井&三菱 「広尾ガーデンフォレスト」(2007/2/23)
三井不レジ・日鉄興和・三菱地所レジ・首都圏不燃公社 麻布十番近接の2.5ha再開発(2020/9/19)
「麻布霞町」を超えるか 三井不レジ「パークマンション三田綱町ザ フォレスト」(2014/7/4)
歴史は繰り返す――バブルから何を学んだのか「広尾ガーデンヒルズ」分譲開始は坪251万円(2008/10/27)
コンドルが設計した「綱町三井倶楽部」を観た 三井デザインテックがセミナー(2015/10/22)
価格の安さだけでない 植栽・外構 多彩な設備で差別化 大京「中浦和」
「ライオンズ中浦和フォレストフォート」
大京がゴールデンウイーク明けに分譲する「ライオンズ中浦和フォレストフォート」を見学した。物件コンセプトを"木立の中の別荘"としているように、価格を低く設定し、〝木〟を前面に打ち出した植栽・外構と機能的な設備仕様とすることで、差別化を行っている。
物件は、埼京線中浦和駅から徒歩7分(武蔵浦和駅から徒歩18分)、さいたま市南区関2丁目の第一種住居地域、第二種住居地域に位置する7階建て全111戸。5月13日に分譲予定の第1期(32戸の予定)の専有面積は66.07~84.19㎡、価格は未定だが坪単価は220万円になる模様。竣工予定は2023年8月1日。設計は安宅設計。施工は斎藤工業。売主は同社のほか大栄不動産。
現地は、敷地北側の志木街道のほか東側と西側に接道。敷地はL字型で、志木街道は都市計画道路があるため、建物は敷地から約7.7mセットバックさせ、南向き53戸、東向き26戸、西向き32戸の3棟がウッドデッキ・高木を配した中庭を囲むように配棟。約40mのアプローチにはサワラなどの高木を植える。別所沼公園には徒歩11分。
主な基本性能・設備仕様は、直床、扁平梁、2070ミリサッシ、リビング天井高2400ミリ、食洗機、顔認証、非接触エレベーター、引き戸多用、エコガラス、換気機能付き玄関ドア、ワークスペースとして利用できる窓付き1.5畳大の納戸(全住戸の約2割)など。共用部には宅配ボックスとメールボックスを一体化した宅配ボックス「ライオンズマイボックス」のほか、半個室とWi-Fiを完備したラウンジを設置する。
同社本店事業推進二部部長・小川新氏は、「〝木〟をイメージしたデザインや様々な機能を盛り込んだ商品企画が高い評価を頂いています。第1期では南向き中心の32戸の販売を予定しています。武蔵浦和のタワーマンションと競合はしていません」と話している。
エントランス
中庭
ワークスペースにもなる約1.5畳大の納戸
◇ ◆ ◇
モデルルームを見学する前に現地を確認した。倉庫とマンション、戸建てなどが混在しており、準工エリアではないかと思った。前面の道路幅10mの志木街道は交通量が多く、歩道も整備されておらず、街路樹などもないので坪単価は220~230万円くらいだろうと予想した(住環境がよければ坪単価250万円でも売れると考えた)。
ここで緑環境について。さいたま市は全域だと約48%と高いが、市街化区域では約29%だ。同社のマンションが所在する南区は23%で、最低の中央区の22%に次ぐ低さだ。記者が住む多摩市の緑被率は53.9%で、23区は24%であることと比較していただきたい。埼京線沿線には低層住居専用地域は一つもない。
この緑被率の低さはさいたま市に限ったことではなく、近隣の戸田市、川口市、蕨市などにも言えることだ。武蔵浦和にはタワーマンションが林立し、都内への利便性が高いために価格はどんどん上昇している。10年くらい前は坪200万円台の前半から中盤だったのが、今では350万円くらいになっている。
価格が髙いか安いか、これは検討者が評価することなのでこれ以上書かないが、武蔵浦和駅周辺の緑も貧しい。
話を元に戻す。大京のマンションを検討している人は市内居住者が多数を占めるはずで、緑環境はこれが普通と判断すれば、それほどマイナス評価しないのだろう。同社もよく弁えたもので、"木立の中の別荘"を前面に打ち出し、別所沼公園に近いことをアピールしている。
76㎡のモデルルームはよくできていた。前段で紹介したように、設備仕様レベルは高いと評価して単価予想を上方修正した。坪220万円というのは検討者も納得するのではないか。
リビング天井高が2400ミリなのは、市の建築物の絶対高さ規制が20mと定められているからだ。このことについてはたくさん書いてきた。何をかいわんや。どうして合理的根拠など一つもない20mにするのか。1層を3.1~3.3mとし、その倍数に定め誘導すればデベロッパーはみんな最低2500ミリを確保するはずだ。わが国の都市計画は根本的に見直す必要がある。
現地
武蔵浦和駅西口ロータリー(街路樹はモッコク)
武蔵浦和駅西口ロータリー
樹脂サッシ、ミストサウナ…水準以上 大成有楽不のコンパクト「両国」
「オーベルアーバンツ両国」
大成有楽不動産が6月に分譲する「オーベルアーバンツ両国」を見学した。都営大江戸線両国駅から徒歩3分、京葉道路に面した全49戸のコンパクトマンションで、防音・遮熱対策に樹脂サッシを採用しており、その他設備仕様レベルも水準以上だ。商品企画に手抜きはないとみた。
物件は、都営大江戸線両国駅から徒歩3分、JR総武線両国駅から徒歩8分、墨田区緑一丁目の商業地域に位置する14階建て全49戸(事業協力者住戸8戸含む)。第1期(戸数未定)の専有面積は33.77~40.74㎡、予定価格は3,900万円台~5,500万円台(最多価格帯4,100万円台・4,200万円台)。坪単価は400万円台の前半になる模様。竣工予定は2023年6月下旬。設計・監理は安宅設計。施工はライト工業。
現地は、敷地北側の歩道を挟んで京葉道路に隣接。建物は、幅員約35mの京葉道路の拡幅計画があるため、歩道から約4.2mセットバックして建設。基準階は1フロア3~4戸。全戸北向き。
主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高約2,500ミリ、二重サッシの居室側は樹脂サッシ、床暖房、ミストサウナ、三ツ口コンロ、タンク横のキャビネット付きトイレ、壁付洗面水栓、コスメポケット、浴室タオル掛け、全住戸Wi-Fi(1か月1,980円)、物干しポールなど。
同社マンション事業本部マンション事業部事業室主任・篠大智氏は、「問い合わせは約300件、4月2日からのモデルルーム来場者は70件超。うち約7割の方が単身女性。立地や収納の多さ、設備仕様等が評価されています」と話した。
樹脂サッシ
トイレ(TOTO製だったか、収納付きでタンクなしに見えるのがみそ)
三ツ口コンロ(単身者向けに提案したのが受けている)
洗面
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コロナ禍で、コンパクトマンションの取材も激減しており、他社物件との比較も難しいが、33㎡のモデルルームはよくできていた。間口を約4,000ミリ確保しているため、約9.4畳大のLDKのほか約2.6畳大の居室も設置されている。
特筆したいのは、昨年末に見学した「ライオンズミレス新中野」もそうだったが、二重サッシ・樹脂サッシが採用されていることだ。樹脂サッシの効用をご存じない方が多いが、アルミサッシ枠と比較にならないほど断熱性能が高い。結露など全く心配ない。
このほか、ミストサウナ付きなどもコンパクトでは珍しいのではないか。天井高も約2,500ミリ確保している。同社としては初採用したという洗面のコスメポケットは、女性に評判とのことで必須アイテムなのだろう。三ツ口コンロが好評なのは驚いた。同時に使いこなせる人はまずいないはずだが、鍋などを置くスペースとして必要なようだ(なるほど)。
坪単価は相場並みか。23区内では軒並み400万円を突破してきている。早期完売のカギは、他社物件との差別化をアピールできるかどうかだろう。
建設現場
緑道と玉川上水に一部隣接 1低層の45戸 「リストレジデンス武蔵野御殿山」6月分譲
「リストレジデンス武蔵野御殿山」
リストグループのリストデベロップメントは4月21日、武蔵野市御殿山アドレスで約9年ぶりのマンションとなり、玉川上水に一部面した第一種低層住居専用地域の「リストレジデンス武蔵野御殿山」を4月1日に着工し、6月下旬に販売開始すると発表した。
物件は、JR・東京メトロ東西線三鷹駅南口から徒歩6分、武蔵野市御殿山2丁目の第一種低層住居専用地域に位置する3階建て全45戸。専有面積は58.11~92.10㎡。竣工予定は2023年7月上旬。
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記者は、この種の分譲住宅に関するプレス・リリースは基本的に書かないことにしている。犬が人を噛めばニュースになるが、デベロッパーがマンションを分譲するのは当たり前で、そのままコピペしても書く「か・ち・は・な・い」。
しかし、ホームページでも確認した。敷地の一部は御殿山通り・玉川上水に面し、井の頭公園まで徒歩8分とあるではないか。この通りは何度か通ったことがある。最高に素晴らしい。これは書く価値がある。
設備仕様レベルにもよるが、坪単価は最低で500万円、条件のいい住戸は600万円をはるかに超えるのは間違いない。モデルルームがオープンしたら、取材を申し込んでレポートしたい。