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 千葉大学名誉教授で、スケルトン・インフィル方式を編み出し、日本マンション学会会長などを歴任された小林秀樹氏が、6月22日に行われるマンションコミュニティ研究会(代表・廣田信子氏)主催の第25回フォーラム「マンションの長寿命化に向けた取り組み…二つの老いにどう備えるか…」で基調講演をされる。視聴申し込みは6月19日まで、以下のURLへ。https://www.mckhug.com/blog/25

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 小林先生が基調講演をされることは、廣田氏からのメールで知った。テーマの「二つの老いにどう備えるか」はマンション管理業界、管理組合の大きなテーマの一つだが、肩書が「名誉教授」になっていたのに驚き、名誉職に退く年齢でもないと思い、小林秀樹研究室情報サイトで調べた。

 絶句するほかなかった。先生が2020年3月末で定年退職されたのは仕方がないとしても、2022年3月12日付の【ご報告】には、「半年前に肝内胆管癌が発見され治療を進めています。幸い治療の効果で生活にそれほど支障はありません。詳しくは、癌ブログを公開しました」とあるではないか。恐る恐る読んだ。〝闘病記〟の第1回目には次のように綴られている。

 「2021年6月に肝内胆管癌がみつかったとき、すでにステージⅣで肝臓に転移しており、手術はできない状態であった。

 そのとき、最初に調べたのは、癌を克服する方法であった。手術の可能性はないのだろうか。抗がん剤治療はどんなものだろうか、新しい治療法はあるのだろうか、などを本やネットで調べた。

 しかし、手術以外に完治の見込みはない難治性の癌であることを知った。もちろん、希望を捨てたわけではない。抗がん剤が効いて癌が小さくなれば、手術できる可能性は残されている。

 妻は、私以上につらかったはずだ。食事療法の本を買い込み、ニンジンジュース、癌によい食事を調べて毎日つくってくれた。感謝しかない。

 そして、次に知りたいと思ったことは、余命をどう生きるかであった。夫婦の趣味である登山の田部井淳子さんの闘病記を読んで勇気づけられた。また、同じ癌で亡くなった川島なお美さんは、亡くなる3週間前まで舞台に立っていたそうだ。その生き様に心を打たれた。そして、多くの方のブログが心に染みた。

 そうだ…私も癌と過ごした記録を残しておこう。それは、余命を生きた証にもなるはずだ」と。

 その後、本日(6月18日)現在、21回ブログを更新されている。文量は1回あたり400字原稿用紙3枚前後か。

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 このような記事を書くのはつらい。小生の妻も28年前、乳がんで死亡しているからだ。しかし、先生の闘病記を読んで、これは伝えなければならないと思った。先生がわが国の住宅政策、街づくり、団地再生・活性化に大きな役割を果たされていることを知っていただきたいので書くことを決断した。先生にもご了解を頂いた。

 先生との出会いは12年前だ。「感動的な催しを取材することができた」と記事に書いたように、「もう一つの住まい方推進協議会(Alternative Housing & Living Association)」が主催した「第6回もうひとつの住まい方推進フォーラム2010 〝複合〟でつなぐ地域の暮らしと福祉」を取材したときだ。

 その時の記事と先生の講演要旨を添付する。座学ではなく、実践に基づく講演なのでとても参考になる。今回の記事も、この講演を参考にしていただくのが最大の目的だ。

 その後、先生が参加された国土交通省などの会合を何度も取材させていただいた。とにかく先生の話は面白い。しかも、すらりとしてかっこいいのだ。いつも西城英樹さんとだぶらせて話を聞いた。年齢は小生より二回りは低いはずだとずっと思ってきた。

 先生の記事のアクセス数も多く、旭化成ホームズが主催したフォーラムの記事は6,000件をはるかに突破した。主だった記事も添付する。

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 先生が行った2020年10月10日の最終講義をビデオで視聴した。「40年の研究人生を振り返って」というテーマで、1時間半にわたって話された。

 大学の先生の最終講義を受講・聴講するのはこれで2度目だ。最初は十数年前、明治大学・百瀬恵夫名誉教授だった。この時は特別に許可され、学生さんと一緒に長椅子に腰かけて受講した。

 講義を通じて企業のあり方、人間としての生き方を学んだ。その後の取材にも生かされている。先生は「CATが大事」と話された。「C」とは「Compliance(コンプライアンス)」、「A」とは「Accountability(アカウンタビリティ)」、「T」とは「Traceability(トレーサビリティ)」だ。

 これを守らない政治家がいかに多いことか。百瀬先生は「代議士は詐欺師か大馬鹿野郎のどちらか」と話されたこともあった。

 そして今回の小林先生。先生は講義の締めくくりとして、①住民の暮らしの現場を大切にする。〝なぜ〟が研究のヒントになる②一人ひとりの要求を大切にする。顕在的要求から潜在的要求を引き出す企画者たれ③これからの建築・都市を考えるうえで、対立・矛盾の中にチャンスがある-この3つのメッセージを学生さんに贈った。

 百瀬先生と小林先生に共通するのは「武闘派」「実践派」ということだ。百瀬先生は中小企業研究の第一人者として知られるが、経営者はもちろん従業員などと酒を飲み交わしながら大企業に負けない理論を打ち立てた。「百瀬教」を名乗る研究者や経営者がたくさんいる。記者は勝手ながら「武闘派」と呼んだ。

 小林先生は、どちらかというと優男で、柔道5段(と聞いた覚えがある)でいくつもの武勇伝を持つ百瀬先生と対照的だが、座学を枕にするような先生ではないことを、12年前の取材で知った。前段で書いた通りだ。

 最終講義でも「現場」「実践」を何度も話し、セキスイハイムの「オーサンス」や旭化成ホームズの「母力」などの家づくり研究に参画したのもとても勉強になったと語った。「研究室の外に出よう」とも呼び掛けられた。

 6月22日の基調講演ではどのような話をされるのか。

〝羽ばたけないかごの鳥〟国交省 団地再生検討会 エアコンなし 議論白熱30度超に(2008/6/8)

マンションコミュニティ研究会 設立5周年フォーラム「豊かな未来へ」(2015/12/4)

平成の田園調布になるか1区画200坪の街づくり つくば市の「春風台」(2015/5/26)

厚くて高い法の壁 合意形成の難問も立ちはだかる 国交省「団地再生あり方検討会」(2015/3/18)

「理想の間取りは普通の間取り」 小林秀樹・千葉大大学院教授(2014/1/22)

〝複合〟でつなぐ地域の暮らしと福祉 「もう一つの住まい方推進協議会(AHLA)」フォーラム(2010/10/29)

「複合」の魅力とその可能性(2010/11/16)

「おーお明治」大学の誇り 百瀬恵夫名誉教授の「瑞宝中綬章」受章を祝う会に300名(2017/8/8)

 

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「クレヴィア新御徒町」

 伊藤忠都市開発が近く分譲する「クレヴィア新御徒町」(52戸)と「クレヴィア西馬込」(44戸)のモデルルームを「ギャラリークレヴィア有楽町イトシア」で見学した。現地は見ていないが、商品企画は間違いなくいい。いかにも同社らしい物件だ。「新御徒町」から紹介する。

 物件は、都営大江戸線新御徒町駅から徒歩5分、都営浅草線蔵前駅から徒歩9分、台東区鳥越一丁目の商業地域(建ぺい率56.71%、容積率499.56%)に位置する14階建て全52戸。専有面積は32.11~67.69㎡、価格は未定だが、坪単価は460万円の予定。竣工予定は2023年12月上旬。設計・監理は陣設計。施工は第一建設工業。分譲開始は7月上旬の予定。

 最大の特徴は、全住戸の天井高が約2.7m以上で、約2.2mのハイサッシ、1LDKでも5000ミリ以上のワイドスパンという商品企画だ。効率的な設計により、限られた面積を最大限に活用するもので、「TEN-DAKA」「YOKO-HIRO」「TATE-BAKO」「AKA-RI」の4つの特徴を「Hi-SUMA」と総称している。

 また、省エネ法の省エネ基準に比べ一次エネルギー消費量を10%以上削減し、その他低炭素化に資する措置が講じられている場合、「住宅ローン減税」などの優遇を受けることができる「低炭素建築物」認定を、同社としては初めて受けた物件でもある。

 さらに、ドレッシングルームは「スタンダードミラー」「ストレージミラー」「イルミネーションミラー」の3つのミラーと「ユーティリティ・キャビネット」「デザイン・キャビネット」の2つの収納を組み合わせることでできる6通りのプランを、自分の好みで自由に選べる無償の「DRESSIMO」を採用する。

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32㎡のプラン

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 現地を見ていないので何とも言えないが、立地はおおよその見当がつく。隅田川花火を見るためにマンションを買うお金持ちがいるエリアの一角ではないか。坪単価は高いような気もするが、23区のコンパクトマンションは軒並み坪400万円を突破してきているので、こんなものかとも思う。

 さて、約2.7mの天井高。このところ激しいマンションの価格上昇に反比例するように、天井高はどんどん低くなっている。2500ミリあれば高いほうとかで、2400~2450ミリが当たり前になっている。天井高を下げればその分だけ鉄やコンクリも少なくて済むのでコストは下がるし、天井高を下げることで階数(戸数)を増やすことも理論的には可能だ(実際は容積率の規制があるので難しいが)。

 今回の物件で天井高を2.7mとしているのは、建ぺい率、容積率などの法的規制によるものだろうが、供給が増え競争も激化しているコンパクト市場に与えるインパクトは大きい。

 間違いなく居住性は向上する。しかし、その居住性を定量的に計る物差しはない。デベロッパーは天井高を下げたのでその分価格を下げたとか、逆に高くしたので価格にオンしたなどとは絶対言わない。建基法では居室の天井高は2.1m以上と定めているのみだ。

 その価値判断材料になると思うので、三井不動産レジデンシャル「パークコート六本木ヒルトップ」とモリモト「ディアナコート本郷弓町」、そして先日見学した三菱地所レジデンス「The Parkhabio(ザ・パークハビオ)SOHO 大手町」の記事を添付する。

 「六本木」のリビング天井高は標準階でも3,400~3,450ミリ、最上階は4,150ミリだった。「本郷弓町」は、建基法ではあと2層積み上げられたのにそうしないで、天井高を2.7m確保した。これが圧倒的な人気を呼んだ要因だった。三菱地所レジの「MIデッキ」には感動した。

 今回の物件もまた、どんどん退行する居住性能に一石投じるものだ。反響が注目される。

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ハーフモデル(天井高2400ミリならエアコンの下部あたり)

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「DRESSIMO」(デザイン性なら左、収納重視なら右とか)

感動的な天井高2730ミリの「MIデッキ」 職住一体型SOHO 三菱地所レジ「大手町」(2022/6/15)

あっぱれ!モリモト 階数を2層分減らし天井高2.7m確保「本郷弓町」(2014/5/23)

現段階で最高品質のマンション三井不レジ「パークコート六本木ヒルトップ」(2011/11/16)

 

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「レーベン小田原 THE TOWER

タカラレーベンが分譲中の「レーベン小田原 THE TOWER」を見学した。小田原駅前の商住複合再開発マンションで、昨年秋からの優先分譲、今春の第1期分譲を終え、分譲対象住戸のうち8割強が成約済みだ。購入者の約3割が都内居住者ということからも分かるように、利便性、資産性が圧倒的人気の要因だ。

物件は、JR・小田急小田原線小田原駅西口から徒歩1分、小田原市城山一丁目の地下1階地上17階建て全190戸(うち非分譲住戸38戸、優先分譲住戸72)7月上旬分譲予定の第2期(戸数未定)の専有面積は35.9080.21㎡、価格は未定。竣工予定は20245月下旬。設計・監理は三輪設計。施工は西武建設。売主は同社のほか万葉倶楽部。事業主は小田原駅前分譲共同ビルマンション建替組合。

昨年10月に優先分譲として72戸を成約。第1期一般分譲として今年521日に62戸を抽選分譲し、150組の申し込みがあり、平均2.4倍で即日完売。これまでの来場者は約370組。地元が約3割、県内が約4割、都内が約3割。

現地は、小田原駅西口を出て徒歩数十秒。屋根付きのバス、タクシー乗り場があるので雨でも傘はほとんど必要ない立地。通路を挟んで東側には鉄道高架線があり、線路を挟んだ対面には商業ビルなどが建っているが、高層階からは小田原城や相模湾が望める。敷地の西側は緑が豊富な小高い丘の住宅地。

建物は、13階が医療・商業施設などの店舗が予定されており、住戸は4階以上。プランはコンパクトから100㎡以上の住戸8戸まで多彩な23タイプ。

主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2500ミリ、二重サッシ(線路側)で住戸側は樹脂サッシ、内廊下方式、たからの水など。

販売を担当する同社マンション事業本部営業推進事業部第1営業統括部第2営業部部長・平岡篤氏は「社内の再開発チームが取り組んでいるプロジェクトで、4月まではモデルルームをオープンしていなかったが、残りは18戸。購入者の方は今回の唯一無二の価値を理解されています。3年前、駅東口で坪単価220万円の物件が供給されていますが、それとは比較になりません」と語っている。

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完成予想図

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ライブラリーラウンジ

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 添付した同社の「福岡天神」「東川口」の記事も合わせて読んでいただきたい。凄いというほかない。「福岡天神」「東川口」もそうだったのだが、〝坪単価については書かない〟という約束で、「R.E.port」の記者の方と一緒に見学が実現した。なので坪単価は想像してもらうほかないのだが、小生と「R.E.port」の記者の方も予想はどんぴしゃりだった。自慢するようだが、現地取材をたくさんこなすと単価は見えてくる。(「福岡天神」「東川口」は外れたが)

90㎡のモデルルームもよくできている。オプション仕様ではあるが、「このままの仕様にしてほしい」という購入者もいるそうだから、同社の提案力がうかがえる。

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 皆さんは二宮金次郎をご存じか。小生は学校の校庭に薪を背負いながら本を読んでいるコンクリ製の全身像を知ってはいたが、どこの生まれで、成人してどのような功績を残したのか、教わっているはずだが全く記憶にない。(戦争前はブロンズだったが、武器製造のため供出されたと聞いていた)

 今回の取材で、その二宮金次郎が小田原市出身であることを知った。駅には、小生の小さいころとよく似たかわいい少年の銅像が建っており、今回のマンションの売主でもある万葉倶楽部が開発した「ミナカ小田原」の広場にもブロンズ製の夫婦像が建っている。金次郎の身長は160cm台で、奥さんは150cmくらいだ。驚いたのは、金次郎は帯刀していたことだ。どうして農民が帯刀を許されたのか。伝記などを読んでいただきたい。

 帰りの電車の時間まで30分以上あったので、マンションの建設現場に立って通行する20人以上に「二宮金次郎を知っていますか」と声を掛けた。高校生が圧倒的に多かったのだが、ほとんどの人が知っていた。像は校庭に建っており、学校でも習うそうだ。

 そういえば、小生は授業中いたずらばかりしていたので、廊下にいつも立たされた。嫌いな音楽の授業などは裏山でひとり遊んでいた。それでも末は博士か大臣かと言われた。今は昔だ。

 「R.E.port」の記事について。小生の記事より半日早く(昨日18時)アップされている。単価に触れていないのは同じだが、うまくまとめている点では「R.E.port」に軍配を上げざるを得ない。しかし、二宮金次郎に触れている点では小生の記事が勝る。どちらが勝つか、皆さんに決めていただきたい。

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駅東口の金次郎のブロンズ像(小生の小さいころにそっくり)

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駅前の「ミナカ小田原」設置されている二宮金次郎夫婦像(金次郎は刀を差している)

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「ミナカ小田原」

威力絶大 PPP×企画提案力 タカラレーベン「レーベン東川口GRANDEST」(2022/3/17

福岡の最高峰 第1100戸 圧倒的な人気 タカラレーベン50周年「福岡天神」(2022/3/15

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「ルピアコート津田沼」

 ポラスグループ中央住宅は6月15日、コロナ禍の真っ最中に分譲開始した〝さわらない・もちこまない〟ノンタッチをテーマにしたマンション「ルピアコート津田沼」が竣工完売したのに伴うメディア見学会を行った。モデルルーム見学会では分からなかった、同社の生活者視点にたった商品企画に目からうろこが出た。

 物件は、JR津田沼駅から徒歩12分、船橋市前原西4丁目の第一種中高層住居専用地域に位置する7階建て全53戸。専有面積は68.02~71.75㎡、価格は3,998万~5,288万円(最多価格帯4,500万円台)、坪単価は215万円。竣工は2022年5月26日。施工はイチケン。販売代理は東京中央建物。

 契約開始は昨年6月6日で、竣工した今年5月26日までに全戸完売。購入者の半数は船橋市、習志野市居住者で、約2割の都内など地元以外は何らかの地縁のある人が目立ったという。中心年齢はプレファミリー中心の30代の前半。総来場者数は319件。

 竣工見学会で、同社マンションディビジョン部長・中島教介氏は、「アプローチはルートがいくつもありネックだったが、コンセプトをはじめ中身(商品企画)が評価された。当社のヒットメーカー西牟田が考案した『変身ラウンジ』などを見ていただきたい。ここまでやっている物件は他にないはず」と語った。

 販売代理の東京中央建物プロジェクトマネージャー・髙橋雅史氏は、「ピアキッチンやノンタッチの設備仕様に高い評価を頂いた。競合にも競り勝った」と話した。

 〝ヒットメーカー〟として紹介された同部の西牟田奈津子氏は、各所に採用されているノンタッチキーや実用新案取得済みの「車の出し入れ まもるんスペース」と「変身ラウンジ」など共用部の施設について説明した。

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「変身ラウンジ」

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変身前のラウンジ壁面 

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変身前の窓(左)と変身後の窓

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「まもるんスペース」の床

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 この物件については昨年5月、モデルルーム見学会を取材し記事にしている。その時見落とした、そして今回初めて紹介されたことを追加する。

 前段の「変身ラウンジ」は唖然とするほかなかった。大規模物件ではキッズルームは当たり前になっているが、この程度の規模の物件ではまずない。西牟田氏が考案したのは、壁面や窓の扉をあけ放つと、写真のような子ども向けのイラストや遊具が飛び出すものだ。そんなにコストがかかるわけではないが、発想が面白いではないか。ラウンジには不燃処理を施した本物の木が一部に採用されていた。

 前回の見学会で見落とした「まもるんスペース」には、いい年をした記者もはしゃいでしまうほど意表を突くものだった。機械式駐車場の車の出し入れの際の子どもの事件を防ぐための1.5畳大のスペースを設けたものだが、何とスプレーで床に水をかけるとイヌ、ワニ、ブタ、ライオン、ウマ、ペンギン、リス、ウサギ、オットセイ、ゾウなどのイラストが浮かび上がるではないか。

 「まもるんスペース」は2019年に取材しており、キッズデザイン賞協議会会長賞を受賞したが、動物のイラストが浮かび上がる仕掛けは2020年から採用したという。(これは他の用途にも使える)

 この他、ノンタッチをごみ置き場のドアに採用したのは多分同社が業界初だと思うし、ノンタッチで取り出せる宅配ロッカー、エントランスにTOTOの大人用と子ども用の「アクアオート(自動水栓 きれい除菌水タイプ)」を採用しているのも初めて見た。エントランス部分のQRコード付きのニラ、スミレ、アジサイ、アヤメ、キキョウは購入者が植えたそうだ。これもキッズデザイン賞を受賞した〝ルピア花クラブ〟の取り組みによるものだという。

 同社のマンションや戸建てがよく売れる要因の一つに、これらきめ細かな商品企画がある-そのアイデアを世に送り出してきたのは、今年6月10日付で定年退社した前取締役・金児正治氏(62)の功績が大きい。代わって成瀬進氏が取締役に就任した。どこかで聞いたような名前だと思い検索したら、調整区域の開発物件「ハナミズキ春日部・藤塚」の見学会で話を聞いている。マンションも担当することになってどのような次の手を打つのか。楽しみだ。

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購入者が植える草花を決めた植栽帯の一部

熱男! ポラス中央住宅取締役・金児正治氏(62)が退任(2022/6/10)

〝さわらない・もちこまない〟コロナ対策随所に ポラス「津田沼」好調スタート(2021/5/29)

ポラス 第14回キッズデザイン賞に「AKUNDANA」と「育実の丘 東大宮」2作品が受賞(2020/8/21)

調整区域の市民農園付き200㎡邸宅 ポラス「ハナミズキ春日部・藤塚」企画秀逸(2020/7/3)

ポラスのマンション好調 商品企画支えるのは2児のワーキングママ・西牟田奈津子氏(2019/9/15)

 

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「The Parkhabio(ザ・パークハビオ)SOHO 大手町」

 三菱地所レジデンスは6月14日、新たなライフスタイルを提案するコワーキングスペースを併設した職住一体型賃貸マンション「The Parkhabio(ザ・パークハビオ)SOHO 大手町」が完成したのに伴う記者見学会を行った。千代田区の駐車場地縁義務の緩和を受けて1階部分に約60㎡のコワーキングスペースを確保し、新建材の「MIデッキ」を天井部に採用することでリビング天井高を2730ミリとし、共用部の壁面に突板を採用しているなど見どころの多い賃貸マンションだ。

 物件は、東京メトロ・都営三田線大手町駅から徒歩7分、JR神田駅から徒歩6分、千代田区内神田一丁目の商業地域に位置する敷地面積約260㎡、13階建て延べ床面積約2,287㎡の全49戸。専用面積は25.31~50.63㎡。現在募集中の賃料は137,000~286,000円(礼金なし、敷金1か月)。契約期間は2年。管理費は20,000~3,000円。竣工は2022年6月15日。設計・施工は大豊建設。敷地建物所有者は三菱地所レジデンス。貸主は三菱地所ハウスネット。

 リーシングは順調で、第1期として12件に申し込みがあり、契約のめども立ったという。スタートアップ企業は約2割で、当初想定した通りという。

 物件の特徴は、①1階にコワーキングスペースを設置し、通勤時間ゼロという蓋らしいライフスタイルを提案②内神田の立地を生かし、まちの賑わい創出に寄与③居室やコワーキングスペースの天井部に新建材の「MIデッキ」を採用し、木材の質感を実現したこと。

 ①のコワーキングスペースは、スギ材を天井と壁仕上げに多用した「Style Lounge」と名付けた天井高6m、約60㎡。作業効率を追求し、オフィスチェアやモニターを完備。壁面アートからは時間帯で変化するオリジナルのBGMが流れ、空調音や生活音の低減を図っている。仮眠が取れるコクヨ製のソロワーク用ブースdop(2基)や個室(2室)、一部外部にも開放する会議室を整備。法人登記も可能にし、スタートアップ企業の支援を行う。

 ②では、2020年4月に施行された「内神田一丁目周辺地区都市再生駐車施設配置計画」を活用し、付置義務駐車場(5m×3m×2台)の緩和を受け、コワーキングスペースの設置を可能にした。内神田エリアの街の賑わい創出に寄与する。

 ③のMIデッキは、三菱地所とケンテックが共同開発し、MEC Industryが製造するハイブリッド建材で、鉄筋と木(もく)が一体化された型枠にコンクリートを打設することで、天然木の現し空間を創出することができる。同社としては初めて採用するもので、天井高2,730ミリを実現した。

 同社は、今回の「大手町」のほか「代々木公園」「祐天寺」を建設中で、今後、都内を中心に3年間で5棟の「The Parkhabio SOHO」シリーズの継続的な供給を目指す。

 見学会で同社常務執行役員賃貸住宅計画部長・森山健一氏は、「賃貸事業は2004年に事業開始し、三菱地所レジデンスの分譲のノウハウを生かしながら展開してきており、今秋にはトータルで100棟が完成する。SOHOは2019年から企画を開始。コロナ禍で働き方改革が一気に進むなか、職住一体型の新しいライフスタイルを提案した。今後も多様なニーズに応えていく」と語った。

 また、同社賃貸住宅計画部第四グループ主任・福井一哉氏は、今回のSOHOを社内ベンチャー新事業として応募・採用された経緯について説明。460件のアンケートや28件の直接アンケートなどで賃貸住宅の1階は使われていないこと、通勤時間が長いことなどに着目し、オフィスと住宅の中間領域としてのSOHOを提案したという。ハード面で差別化を図ったことで、二重賃料負担の課題がある既存のシェアハウスやシェアオフィスとの競合もないと話した。

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1階コワーキングスペース

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1階コワーキングスペース

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1階賃貸エントランス

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 見学受付の賃貸エントランスに着いたとたん、本物とすぐ見分けられる木が眼前に広がった(写真参照)。もうこれだけで見学した甲斐があったと思った。このところの三菱地所グループの木質化の取り組みは半端でないからだ。

 コワーキングスペースは前段で書いた通り。2層吹き抜けの空間は60㎡よりはるかに広く感じられ、マスク越しではあったが木の香りが鼻腔に広がった。勧められるままにdopに座ってみた。瞑想(小生のパソコンは真っ先に「迷走」に変換した。馬鹿野郎)するのに最適だし、そのまま眠るのもいい。値段も聞いたが、コクヨに問い合わせていただきたい。

 賃貸住宅がまたいい。広さはともかく、実装されたMIデッキを初めて見たが、実に美しい。感動的だ。型枠が現しになるのだからコンクリまみれかと思ったが、まったくそんなことはなかった。天井高2730ミリの分譲マンションなどこの数年間見たことがない。これだけでも大きな価値がある。森山氏らに「分譲にも採用できないか」と聞いたら、「購入者の了解が得られるかどうかの課題がある」とのことで、現段階での採用は考えていないようだ。(二重天井と比較して断熱性能はどうか分からないが、最近の分譲は2400ミリが当たり前になりつつあり、ケミカル製品だらけの内装を考えたら、節や多少の汚れがあっても購入者は納得するはずで、記者は可能だと思う)

 設備仕様も、タオル掛けが1か所、スライドバーのフックは1つ(三菱地所レジデンスはそれぞれ2か所が標準)の浴室を除き、同社の分譲仕様とそれほど遜色ない。キッチン・洗面の天板はフィオレストーンで、トイレはタンクレス。ドア、クロスなども(どこと比較するかだが)郊外マンションに負けない。

 細かいことだが、専用面積34㎡のプランでは、玄関を入ってすぐに奥行き約10cmのDreesing Wallがあり、その隙間に小物入れや衣服を掛けられるようにしており、天井部分には靴・ブーツなどが収納できるCorridor Closetがあった。これも分譲に採用できる。

 2階に設けた全49戸分の駐輪場は平置き型で賃料は300円というから良心的だ。1階のゴミ置き場はエアコンが付いていた。そんな分譲マンションはあるのか。

 家賃は相場より高いが、木をふんだんに用いた居住性能、コワーキングスペースなどを考慮すればむしろ安いか。容積対象に対するレンタブル比率(コワーキングスペース+住宅専用)は95.4%でしっかり事業性も確保している。

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Cタイプ(34㎡)のDreesing Wall(左)とCorridor Closet

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Eタイプ(50㎡)内観

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Eタイプバルコニー(軒天は職人仕上げ)

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 野村不動産は6月9日、全国の分譲マンション・戸建て「プラウド」シリーズに、スタイルポートが開発した3Dコミュニケーションプラットフォーム「ROOV(ルーブ)」を導入し、DX化を強化していくと発表した。

 同社は2020年春から物件ごとのオンライン接客をスタートし、2021年9月には首都圏の「プラウド」全物件の情報をまとめて紹介する「プラウドオンラインサロン」を開始。これまで月間約1,000件の利用があるという。

 「ROOV」は2019年4月、スタイルポートが開発・サービスを開始したもので、スマートフォンやパソコンのインターネットブラウザで「いつでも」「どこでも」「かんたんに」3DCGの空間を自由に動き回り、様々なシミュレーションで住み方のイメージを確認できるクラウドサービス。これまで約3年で80社、350プロジェクトを超える販売現場で利用されている。

 スタイルポートによると、同種のサービスを提供している企業の採用件数は年間数件で、ウォークスルーの3DCG VR内覧を擁する住宅販売のオンライン型接客/商談システムを提供している企業は現状では同社のみという。

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 「ROOV」の採用実績が3年間で80社、350プロジェクトというのに驚いた。80社というのは、主だった分譲マンション・戸建てデベロッパーをほぼカバーしているということだ。

 記者はモデルルーム見学を基本としているので「ROOV」なるものをよく知らないのだが、自らの記事で検索したら2件ヒットした。検討する住戸からの眺望が確認できるのは素晴らしいと思うが、リアルにはかなわない。これが最大の課題だと思うし、各デベロッパーは基本性能・設備仕様レベルが高いのか低いのかも分かるような物件ホームページにするべきだ。(みんなが「ROOV」を採用したら、差別化はできないではないか)

 DX化の取り組みには大賛成だ。2021年6月、JR西日本プロパティーズ(Jプロ)「プレディアあざみ野」を取材したとき、販売代理の野村不動産​ソリューションズ プロジェクト営業本部住宅販売一部専任課長・石川広勝氏は「モデルルームでの顧客対応は一般的に3~4時間かかるが、コロナ禍でオンライン商談を導入した結果、1回目のプロジェクト説明会と、それ以降の個別相談会を実施し、価格情報も当初の段階で伝えていることなどから商談時間を大幅に短縮できている。それが歩留まり率(約3割)のアップにつながっている」と語っている。顧客もそうだが、販売スタッフの労働時間短縮、その他販売経費の削減にもつながる。

◇      ◆     ◇

 野村不動産は、営業担当者の業務効率化に関して、記者の質問に次のように答えている。

 ①営業ツールの修正・削除・入替作業が軽減される⇒従前の紙資料やデスクトップ保存ツールの場合は接客卓1卓1卓での紙差替え、データ差替えが必要だったが、ROOVでは管理IDで一括修正・削除・入替が可能となり、これにより業務効率化のみではなく、古い情報をお届けするリスクも軽減される。

 ②営業時のツール取り出しが容易となる⇒同一プラットフォーム上での管理の為、ツールの取り出しが容易となる。

 ③新たな現場を担当する際の営業習熟を早期に図ることができる⇒こちらも同一の仕様とすることで現場ごとで異なる格納形式ではなくなり、どこにどのようなツールがあるのかが判別しやすく、操作性も同一の為早期キャッチアップが可能となる。 

 ④完売後、キャンセル住戸発生時の再販売時の再稼働が効率化される⇒完売後、新たにツールを揃える必要がありましたが、プラットフォームを再立上げするのみとなり業務効率となる。

 ⑤お客様への資料送付(共有)が効率化される⇒シェア機能で共有したいファイルに☑をいれてURLを発行するのみとなるので、重いデータを分けて送ることなどの手間が省け、お客様もみやすい形での共有が可能となる。

 

AIアバターの能力は高いが宅建士との差は歴然 「東急リバブル・銀座サロン」見学(2022/6/2)

木漏れ日、渓流の音…イニシアの世界観を表現 総合ギャラリー「三田」(2021/7/30)

JR西日本プロパティーズ プレディア「都筑ふれあいの丘」「あざみ野」好調(2021/6/26)

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「ヴェレーナシティ西新井」(対面の公園から)

 大和地所レジデンスは6月7日、東武スカイツリーライン西新井駅から徒歩14分の「ヴェレーナシティ西新井」(118戸)が完成したのに伴うメディア見学会を行った。2020年12月から販売開始し2022年2月に完売した極めて好調な物件で、歩留まり率は23.6%に達した。販売好調の秘密を見た。

 物件は、東武スカイツリーライン西新井駅から徒歩14分、足立区六月二丁目の第一種住居・第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率249.60%)に位置する10階建て全118戸。専有面積は65.78~85.68㎡、価格は3,688万〜6,198万円、坪単価は213万円。竣工は2022年5月。設計は建築計画。施工・監理は長谷工コーポレーション。

 2020年12月から販売開始し2022年2月に完売。総来場者は約500組。購入者の約半数は足立区居住者で、都内が全体の8割。

 見学会で物件を案内した同社建築企画第2部長兼建築管理部長・木村美則氏(57)は、「今回は、当社独自の企画を形にしてくれる施工会社に工事をお願いした」と話した。

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中庭(地面の緑はもちろん天然芝)

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オープンエアリビング・プライベートガーデン

◇        ◆     ◇

 この物件については昨年5月10日付で記事化している。変更部分はほとんどないので参照していただきたい。以下は追加分。

 まず単価。前回の記事では坪単価210万円と書いたが、正確には213万円だった。これは当初から213万円だったのか途中で値上げしたのか、同社は明言しなかった。想像に任せるほかないが、平均70㎡として1坪当たり3万円というのは利益率に大きな影響を与える。

 来場者が約500組だから、歩留り率は23.6%だ。極めて高い。販売期間15か月というのは、1か月当たり7.9戸の進捗だ。立地、価格などからして極めて好調と見ることができる。これも利益率に大きな影響を与える。

 同社のマンションを紹介する都度書いているので詳細は省くが、好調の要因は全て商品企画にあると断言できる。同社のような独立系で非上場の供給大手はモリモト、ポラスがあるが、いずれも商品企画が優れているのが共通する。

 同社の2021年3月期の売上高は392億円、営業利益は57億円で、営業利益率は14.6%だ。利益率は他のマンションデベロッパーと比較してトップクラスであるのは間違いない。2022年3月期の決算は現段階で公表されていないが、年度末にあった完成在庫4戸も4月までに完売したというから、引き続き好調を維持しているようだ。

 前回の取材で紹介しなかった最上階の東南角の85㎡の特殊住戸は、間口12,600ミリで二重床だった。また、容積率を余していたことから6階から10階までの南側バルコニーは2,500ミリ確保しているのも特徴の一つ。

 今回の見学で初めて知ったのは、災害時の閉じ込めなどに対応する「エレベーターチェア(防災備蓄ボックス)」が備えられていたことだ。5年程前から装備しているもので、ボックスの中には飲料水、トイレキッド、照明器具、保温シートが入っているという。

 これまで、この種の備蓄ボックスに注目などしたことは一度もないので分からないが、標準装備としているデベロッパーなどほかにないのではないか。

 他では、浴室のタオル掛けは2か所、約70㎡のエントランスホールにはWi-Fiを装備、集会室には約1畳大の個室となったコワーキングラウンジを3カ所、オープンスペースにコワーキングブースを3カ所設けている。

 どうでもいいことだが、業界紙にも一言。同社はこれまでモデルルームや竣工見学会はほとんど行ってこなかったが、方向転換して実施するようになったものだ。

 今回も同社は業界紙に声を掛けたそうだが、応じたのは小生を含め3名だった。これはいかがなものか。〝か・ち・も・な・い〟ブレス・リリースをコピペするのは単なるリライターだ。そんな記者に明日はない。

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「エレベーターチェア(防災備蓄ボックス)」

価格と駅距離の壁跳ね返す 大和地所レジ「西新井」5カ月で半数成約(2021/5/10)

 

 

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「東急リバブル・銀座サロン」

 東急リバブルは6月1日、先にオープンした新築マンション・戸建ての販売拠点「東急リバブル・銀座サロン」をメディアに公開した。デジタル技術を活用した原寸大の室内空間の再現や3D建物模型、間取りプランのVR化などにより、一つの拠点で継続的に複数物件のリアルな体感を提供でき、販売事務所・モデルルームの設置に伴う経費を大幅に削減できるのが特徴。

 「銀座サロン」は、東京メトロ銀座一丁目駅から徒歩2分、京橋駅から徒歩5分、銀座駅から徒歩5分、JR有楽町駅から徒歩7分、中央区銀座1丁目8-19に位置するキラリトギンザ8Fの135坪。営業時間は10:00~18:00(予約制)。定休日は水・木・第3火曜日(祝祭日除く)。

 今後、同社の分譲マンション「L’GENTE」シリーズ「ルジェンテ駒込六義園リビオレゾン」(51戸)をはじめ、販売受託物件の紹介やイベント、WEBセミナーなどを行っていく。

 特徴の一つである「バーチャルシアター」は、3方向の壁面と床に投影されたVR内覧システム「ROOV」による3DCGの室内空間で、各階・各住戸からの眺望を投影でき、入居後のイメージがリアルに体感できる。

 AIアバターはウェルヴィルと共同開発したもので、顧客の受け付け、物件説明を行う。物件説明は同社の新規物件「ルジェンテ池袋立教通り」から採用する。

 このほか、VR&物件検索スペースでは、顧客が操作して室内空間を体感でき、同社が販売する物件情報をタッチ式モニターで閲覧できる。

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受け付け

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VR&物件検索スペース

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「バーチャルシアター」 

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 AIアバターの能力について。4月4日付で書いた記者の記事を参照していただきたい。AIは利発そうな若い女性で、目つきはやや険しく口元もぎこちなく、さげすまされているのではないかという印象を受けたので、記者は好きになれなかったのだが、質問などの言葉は完全に理解し、瞬時に文書に変換できる。物件説明もよどみがない。かなり能力は高い。割り算や掛け算、円周率の小数点以下や素数など数学や科学に関することはすらすらと答えられるのではないか。日本語だけでなくあらゆる国の言葉も理解できるかもしれない。

 しかし、宅建士にははるかに及ばないと断言できる。記者は坪単価について質問したが〝お答えできません〟と返ってきた。天井高が高いのか低いのか、浴室のタオル掛けが1本なのか2本なのかなども答えられないと見た。同社の宅建士がAIアバターに職を奪われるようなことは少なくとも現状ではない。学習能力もないのは致命傷だ。

 全フロア・全住戸からの眺望が体感できる「バーチャルシアター」はいい。ここまでやれるのは同社だけかもしれない。技術的には問題なくできるはずだが、コストはかかる。

 課題もある。AIやVR、ARをいくら駆使してもリアルにはかなわない。どれだけリアルに近づけられるか。例えば、シート張りの建具・家具と木や石などの本物のそれとの違いを具体的に説明でき、納得させることができるかだ。

 もう一つ。同社に販売を委託するデベロッパーにとっては販売事務所・モデルルーム設営の経費・運営費が大幅に削減できるメリットは大きいのは確かだが、記者は同社の「L’GENTE」は結構見学してきた。完成在庫などはほとんどないはずだ。いっそのこと全て竣工販売に切り替えたらどうか。AIもVRも必要ないのではないか。近く分譲開始する坪単価500万円前後の「ルジェンテ駒込六義園リビオレゾン」はすでに予約が50件入っているそうだ。

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「東急リバブル・銀座サロン」

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AIアバター

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「14階からはこのような眺望が得られます」(女性はAIアバターではなくリアルの美しくとても機知に富む同社広報担当者)

約300の質問に瞬時に回答AIアバター(♀)開発 東急リバブル+ウェルヴィル(2022/4/4)

「L'and+」企画ヒット 残り僅か〝そうなの!〟 東急リバブル「ルジェンテ日暮里」(2022/2/1)

 

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「ヴェレーナ練馬ぬくいの森」

 大和地所レジデンスが6月中旬に分譲する「ヴェレーナ練馬ぬくいの森」のモデルルームを見学した。西武池袋線富士見台駅から徒歩13分の全61戸で、敷地南側は「ぬくいの森緑地」に隣接。同社初の国土交通省「こどもみらい住宅支援事業」にも認定されている。

 物件は、西武池袋線富士見台駅から徒歩13分・同線中村橋駅から徒歩16分、都営大江戸線練馬春日町駅から徒歩18分、練馬区貫井四丁目の準工業地域に位置する5階建て61戸。第1期1次(9戸)の予定価格は4,600万円台〜7,500万円台、専有面積は61.80~86.82㎡。竣工予定は2023年7月中旬。設計・監理はプラスデコ 一級建築士事務所。施工は大洋建設。デザイン監修は小寺源太郎氏。

 現地は、環八と目白通りの交差点から一歩入った準工エリア。南側、東側、北側にそれぞれ接道。敷地南側は歩道3mを挟んで3層分くらいある傾斜地の「ぬくいの森緑地」に隣接。敷地東側は5m道路を挟んで一戸建て、西側は低層倉庫など。

 主な基本性能・設備仕様は、逆梁ハイサッシ(東向き)、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、食洗機、浴室タオル掛け2か所、ミストサウナ、天然御影石・フィオレストーンキッチン天板、メーターモジュール廊下(一部)など。オープンエアリビング&プライベートガーデン付きは12戸。

 「こどもみらい住宅支援事業」認定(省エネ性能)を受けていることから、60万円/戸の補助が受けられる。

 同社営業マネージャーは、「沿線の大規模物件とは一部競合していますが、当社の物件は設備仕様が高く評価されています」と語った。

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◇        ◆     ◇

 予定価格について。この前書いたパラダイスリゾート「調布ワンダーランドプロジェクト」と比較していただきたい。調布市と練馬区・富士見台の街のポテンシャルはどちらが高いか。記者は調布市だと思うが、選ぶのはお客さんだ。これ以上書かない。

 モデルルームを見た印象(この日は大雨が予想されており、現地は確認していない)では、小寺源太郎氏のデザインもそうだが、何といっても「ぬくいの森緑地」に隣接しているのがいい。この緑地を享受できるのは25戸だが、計り知れない価値がある。

 少し長くなるが、練馬区の緑被率と「ぬくいの森緑地」について。同区の緑被地は約1,160ha、緑被率は24.1%で23区内トップ。一方、23区のみどり率は平均19.8%(練馬区は不明)だ。みどり率とは、緑被率に「河川等の水面が占める割合」と「公園内で樹木 等の緑で覆われていない面積の割合」を加えたもので、緑被率より高い数値を示す。都は今後、みどり率を緑化指標にする予定だ(このほか、緑視率という指標もある)。

 米国などでは緑の価値を貨幣価値に置き換える手法が普及しているというのに、情けないかな、わが国は緑の価値を分かりやすく伝える指標がない。

 同区は平成23年5月、練馬区景観条例を施行した。目的は「区の自然、歴史、文化等の地域特性を反映した景観の形成を図り、もって区民が誇りと愛着を持って住み続けられる、魅力あるまちの実現に寄与すること」となっており、基本理念に「ア 良好な景観は、区の個性であるみどり豊かな自然、歴史、文化および地域の特性に応じたまちなみの調和により形成されなければならない。イ 良好な景観は、現に存する良好な景観を保全することのみならず、まちづくりを通じて良好な景観を新たに創出し、区民共通の資産として次世代に引き継いでいくことを旨として形成されなければならない」と掲げている。

 素晴らしい。ところが、「ぬくいの森緑地」についての情報はほとんどない。面積は1,404 ㎡と分かったのだが、どのような地形・形状で、どのような樹木、草花が鑑賞できるかの資料・データは公表されていない。区民に豊かな緑の実相を伝えないで、どうして次世代に引き継ぐことができるのか。

 わが多摩市は市内の全公園リストを公表しており、公園にどのような樹木があるか分かるサイト「木を知ろう」にたどりつけるようにしている。ここが違う。

 その「木を知ろう」には「ぬくいの森緑地」の樹木の情報がきちんと提供されている。コブシ、サクラ、コナラ、エゴノキ、クヌギ、マユミ、ゴンズイ、ツバキ類、アブラチャン、ムラサキシキブ、クルメツツジ/キリシマツツジ、ハナミズキ、ナンテン、カエデ類、ヤツデ、アジサイ、イヌガヤ、キョウチクトウ、オオムラサキツツジ、ヤツデ、ネズミモチ、チョウセンアサガオ他があると記されている。

 小さい公園だが樹種は豊富だ。記者は「マユミ」を初めて知った。昔はこの木から弓を作ったそうで、将棋の駒の材料になるとある。なるほど。

 そこでマンションデベロッパーに提案。デベロッパーはマンションを通じて〝幸せを売る〟のが商売だ。制度はつくっても魂を入れない自治体任せではよくならない。

 敷地内に植樹する草木はパンフレットなどに記載しているが、周辺の公園や街路樹にはどのような樹木があるか詳しく書かないし、販売担当者も木の名前など知らないから詳しい説明をしない。これではだめで、しっかり調べて環境価値を可視化することだ。そうすれば、来場者に〝ここに住めば、心が豊かになりますよ〟といえる。歩留まり率は間違いなくアップ(ダウンする街もあるが)するはずだ。

 書き忘れた。同社は完成在庫を残さないデベロッパーだが、前期末で4戸が残ったそうだ。それでも4月までに全戸完売したという。同社には大手に負けない、互角以上に戦える商品企画の武器がある。

大激戦地で販売好調 デベロッパーの良心を見た パラダイスリゾート「調布」(2022/5/25)

 

 

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「リステージ三浦海岸」

 リストグループのリストプロパティーズが分譲中のコンバージョンマンション「リステージ三浦海岸」を見学した。1992年(平成4年)に竣工したリゾートホテル「マホロバマインズ」別館全106戸を取得し、大規模修繕・内装工事を施し、セミオーダー方式も導入し今年4月27日から分譲開始しているもので、これまでに20戸を成約するなど、順調なスタートを切った。海好きにはたまらないマンションだ。

 物件は、京急久里浜線三浦海岸駅から徒歩7分、三浦市南下浦町上宮田の第二種住居地域の高台に位置する10階建て全106戸。現在分譲中の住戸(30戸)の専有面積は57.86~100.86㎡、価格は1,898万~5,098万円(最多価格帯2,600万円台)。リフォーム済みの平均坪単価は約150万円。既存建物施工は日成工事。既存建物竣工は平成4年6月。大規模修繕工事完了は令和4年2月下旬。売主はリストプロパティーズ。販売(仲介)は成和建物。

 「マホロバマインズ三浦」は、四季の自然舎(綱川髙司社長)が経営するリゾートホテルで、バブル期に当時のダイカンホームが分譲マンションとして企画したが、バブル崩壊によって分譲からホテルに用途変更したため、マンションのような客室が多いのが特徴。本館の客室数は200室で、今回、同社が取得した「別館は」全106戸。1階の食堂などの共用部分や客室のエントランス部分なども一部専有化している。

 建物はL字型で、ライトウェル(ボイド)付きで、玄関窓付き。全体の8割を占める東南向きと南西向き角住戸からは三浦海岸が一望できる。海岸までは徒歩7分。二重床・二重天井、天井高は2400ミリ。トイレ・浴室は段差があるが、サッシ高は2000ミリくらいあり、ワイドスパンの親子リビングドア付き住戸もある。

 大規模修繕、内装工事を施したうえ、要望に合わせ3パターンのセミオーダープランを選択できるようにし、最上階の約260㎡はフルオーダーで分譲することを想定している。モデルルームのリフォーム代は約800万円。これまで20戸を成約しており、うち3分の2は居住用、残りはセカンドユースという。

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上層階からの眺望(右側の建物が「マホロバマインズ三浦」ホテル)

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ボイド

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スケルトン状態(260㎡)

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モデルルーム

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専有面積 88.73m²(約26.84坪)

◇        ◆     ◇

 確かにバブル期、ダイカンホームが三浦海岸で分譲マンションを企画していたのは知っている。価格は思い出せないが、当時の相場からして坪単価は最低250万円はしていたはずだ。

 見学した印象では、もともとファミリーマンションとして企画されたため豪華なリゾートホテルの雰囲気はないが、坪単価は納得だ。従前のホテル仕様のままなら坪100万円くらいだろうが、リフォーム代に20坪で1,000万円とすれば坪150万円だ。

 同じようにリゾートマンションがバブル崩壊でホテルに転用されたのは、現在「ウェルネスの森 伊東」ホテルとなっている三武が伊東市で分譲した事例がある。記憶に間違いがなければ全300戸とも専有面積は120㎡で、価格は全て1億2,000万円、坪単価300万円だった。

 バブル期のレベルの高い社宅をコンバージョンし、圧倒的な人気を呼んだ代表的なマンションは、タカラレーベンが2009年に分譲した「ル・アール蘇我」がある。

 新築で海に近いマンションは、経済設計の相鉄不動産「グレーシア湘南平塚海岸」を見学したが、坪単価は175万円だった。

床暖房もタオル掛けもなし 経済設計の極み それでも海好き惹きつける 相鉄不「平塚」(2022/4/13)

タカラレーベン 好調リニューアルマンション 「ル・アール蘇我」は4日間で120組超(2005/5/25)

 

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