今年のマンション №1は「THE YOKOHAMA FRONT TOWER」1年を振り返る

「THE YOKOHAMA FRONT TOWER」
今年も残りわずか。例年なら30年以上続けている記者が選ぶ「首都圏マンションベスト3」「話題のマンション」を発表するころだが、今年1年間に見学・取材したマンションは地方を含めて58物件しかない。例年の半分だ。新型コロナは取材機会を奪った。「ベスト3」「話題のマンション」に代えて印象に残った物件を紹介する。
もっとも印象に残ったのは、相鉄不動産・東急「THE YOKOHAMA FRONT TOWER」(459戸)だ。マンションのほか商業施設、ホテル、サービスアパートメントなどで構成される横浜駅直結の再開発複合物件だ。坪単価は717万円(記者発表会時点)で、都内以外では昨年分譲の東京建物「堂島」の650万円を上回ったが、第1期129戸がほとんど売れたのにも納得した。設備仕様レベルも極めて高い。
この両社の物件では、相鉄不動産「グレーシア湘南平塚海岸」(100戸)と、東急の期間70年の定期借地権付き免震タワーマンション「ドレッセタワー南町田グランベリーパーク」(375戸)が印象に残っている。
前者は海まで徒歩3分で、坪単価は175万円。施工は長谷工コーポレーション。床暖房も浴室タオル掛けもなし。徹底した経済設計に驚いたが、これもありかと思った。海好きにはたまらないマンションだ。
後者は2019年にリニューアルオープンした「町田グランベリーパーク」に隣接。第1期の坪単価は300万円。太陽光追尾採光システムを採用していた。
電鉄(系)会社の不動産事業は、これまで他のデベロッパーの事業にぶら下がったりゼネコンに〝丸投げ〟したりしていたが、主力の鉄道事業の成長は期待できないことから最近は多角化を進めている。本気を出したら怖い存在だ。沿線の顧客とは〝ゆりかごから墓場まで〟関わりあっているからだ。
全国区のJRをはじめ首都圏の小田急、京王、京急、東武、西武、京成、地方の近鉄、阪急阪神、京阪電鉄、名鉄、西鉄…デベロッパーの命運を左右するのは電鉄(系)会社ではないか。
相鉄不・東急 横浜駅直結タワマン 第1期129戸完売 坪717万円(2022/1/26)
床暖房もタオル掛けもなし 経済設計の極み それでも海好き惹きつける 相鉄不「平塚」(2022/4/13)
第1期1次121戸 登録即完に納得 期間70年の定借免震タワー 東急「南町田」(2022/7/22)
いつもなら「ベスト3」はすぐ頭に浮かぶのだが、今年は「THE YOKOHAMA FRONT TOWER」に続く物件がない。(記者の取材不足のせい)
それより、地方に目が移る。レベルの高さではタカラレーベンの会社設立50周年記念の免震フラッグシップ「レーベン福岡天神 ONE TOWER」(153戸)だ。「天神」アドレスは38年ぶりの供給とかで、坪単価(書かないという約束)もエリア最高峰だった。オプションだったが、2,000~3,000万円を掛けたというモデルルームに記者は驚愕した。壁面に大理石を張るマンションなど首都圏にもないはずだ。
この九州圏最高峰の「福岡天神」を瞬く間に抜き去ったのが、坪単価520万円の大和ハウス工業「プレミスト大濠二丁目」(35戸)だ。残りは6戸だ。
しかし、これより凄い地方物件が分譲された。隈研吾氏が設計を担当した坪単価700万円超のプロポライフグループの「プロスタイル札幌 宮の森」だ。市内の高級住宅街・宮の森の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率60%)に位置する地下2階地上3階建て全20戸。
これらの物件に象徴されるように、今年は大和ハウス、タカラレーベン、日本エスコン、フージャースコーポレーション、野村不動産、住友不動産、大京穴吹工務店などの地方物件の供給増が目立った。着工増も続いており、戸数は関西圏や中部圏より多い。地方の動向から目が離せない。
福岡の最高峰 第1期100戸 圧倒的な人気 タカラレーベン50周年「福岡天神」(2022/3/15)
坪単価520万円でも人気 最終分譲へ 大和ハウス「プレミスト大濠2丁目」(2022/11/1)
隈研吾氏が設計 坪700万円超でも好調スタート プロポライフ「札幌 宮の森」(2022/9/23)
首都圏に目を戻すと、高額物件では三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス グラン 三番町26」(102戸)が販売開始された。坪単価は1,000万円前後。第1期として販売対象の78戸のうち半数以上の40戸が供給された模様だ。
この物件の隣接地では、三井不動産レジデンシャル「パークコート ザ・三番町ハウス」(193戸)が来春に分譲される。「パークコート」に「ザ」が付くのは初めてではないか。〝三菱地所には負けないぞ〟という意思がこの「ザ」に込められていると思う。単価は1,000万円をはるかに超えるか。
8物件目〝グラン〟「三番町26」 高値更新の坪1000万円前後 三菱地所レジ(2022/9/14)
坪1300万円でどうか 旧逓信省庁舎跡地の三井&三菱「三田ガーデンヒルズ」(2022/4/30)
三菱地所レジデンスの物件では、大栄不動産とのJV「ザ・パークハウス 川越タワー」(173戸)が印象深い。駅前免震タワーマンションで、坪単価320万円の高額ながら第1期1次~3次98戸が登録完売して話題になった。設備仕様レベルも水準以上。
三菱地所 駅徒歩1分、免震の「川越タワー」第1期1次~3次98戸に登録申し込み(2022/3/28)
三井不動産レジデンシャルでは、「パークホームズ文京本駒込」(88戸)を見学した。立地特性を踏まえ、入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」のほか、ワークスペース、ピアノ・楽器の練習ができる防音室を設けたのが評価され、第1期44戸が完売した。坪単価は560万円。
立地にふさわしい防音室、循環ライブラリ 三井不レジ「文京本駒込」人気(2022/12/6)
三井と三菱でいえば、来春には三井不動産レジデンシャル・三菱地所レジデンス「三田ガーデンヒルズ」(1002戸)の分譲も始まる。記者は坪単価1,300万円と予想しているのだが、果たして当たるかどうか。両社はあるときは手を組み、またあるときは角突き合わせて激烈な競争をし、結果として他社の追随を許さないという戦略なのだろう。
この両社に割って入るのはどこか。その筆頭格の野村不動産や住友不動産は意外と都心の一等地での供給は少ない。坪単価2,000万円でも驚かない「西麻布三丁目北東地区」の再開発マンションの供給はもっと先だろう。住友不動産は好立地物件は分譲しないで賃貸として保有する戦略だ。
それでも、野村不動産「KAMEIDO CLOCK(カメイドクロック)」「プラウドタワー亀戸クロス」(934戸)と、複合免震タワーマンション「プラウドタワー目黒MARC」(301戸)は〝プラウド〟の存在感を示した。
「亀戸」は、全館空調「床快Full」(ワンルームタイプ162戸除く)とLow-E樹脂サッシを採用した。「目黒」では、同社とJVを組んだJR東日本都市開発、施工・竹中工務店の矜持を見た。リビング天井高2700ミリを確保し、デザイン、ワイドスパンのプラン、設備仕様レベルも高い。
同社の常設モデルルーム「プラウドギャラリー武蔵小杉」はなかなかいい。
街のポテンシャル 劇的に変えた 野村不の商業施設「KAMEIDO CLOCK」4月28日開業(2022/4/26)
天井高2700ミリ 全戸ワイドスパンに高い評価 野村不・JR東日本都市開発「目黒」(2022/7/24)
5社ブランドとの連携がいい 野村不の常設「プラウドギャラリー武蔵小杉」(2022/6/25)
メジャー7の物件では、東急不動産(日鉄興和不動産とのJV)「ザ・タワー十条」(578戸)と、東京建物「ブリリア自由が丘」(61戸)を見学できなかったのは残念だ。「十条」の坪単価は470万円と聞いている。これが売れれば、準都心部のマンション市場を劇的に変えるはずだ。
「自由が丘」は、いつも〝住みたい街〟ランキングのトップ争いをしている自由が丘駅から徒歩2分。住みたい人にとっては垂涎ものだ。お金があったらという条件はつくが、小生がもっとも住みたいのは東京駅で、自由が丘クラスなら青山、麻布、六本木、表参道、神楽坂、神田神保町、二子玉川、下北沢なども引けを取らないと思うが…。
垂涎ものといえば、リストグループのリストデベロップメント「リストレジデンス武蔵野御殿山」(45戸)もそうだ。「御殿山」アドレスでは9年ぶりの第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)という希少物件だ。残り1戸とのことだが当然か。敷地南側は道路を挟んで玉川上水。ひよっとしたら太宰治も歩いていたかもしれない。歴史と文化を感じさせる物件だ。坪単価は491万円。敷地形状からして設計にも苦労し、強気な値付けをできなかったのが惜しまれる。何といっても同社は〝サザビーズ〟だ。富裕層を狂喜させるマンションを分譲してほしい。
敷地南側は玉川上水 第1期は約30戸成約見込み1低層のリスト「武蔵野御殿山」(2022/10/2)
このほか、伊藤忠都市開発、大和地所レジデンス、タカラレーベンなどの商品企画が光った。
伊藤忠都市開発は以前からもそうだが、物件ごとにその土地の魅力を最大限に引き出している稀有なデベロッパーだ。今年は「三軒茶屋」「新御徒町」「西馬込」を見学したが、なかでも「三軒茶屋」が出色の出来だった。
退行する商品企画に一石 天井高2700ミリ&ワイドスパン 伊藤忠都市「新御徒町」(2022/6/18)
ディスポーザー、玄関手洗い収納標準、選べる洗面、伊藤忠都市開発「西馬込」(2022/6/19)
料理・風呂好きにはたまらない 設備仕様レベル突出 伊藤忠都市開発「三軒茶屋」(2022/11/23)
大和地所レジデンスは、容積率に算入されない奥行き4m×幅4mの「オープンエアリビング」を開発してヒットしたデベロッパーだが、今年見学した「横濱山手」(JR西日本プロパティーズとのJV)「茅ヶ崎東海岸」「門前仲町」などが早期完売したのも当然だ。
風致地区の高台立地 設備仕様レベルも高い JR西日本プロ・大和地所レジ「横濱山手」(2022/8/11)
希少の海に近い1低層 水準以上の基本性能・設備仕様 大和地所レジ「茅ヶ崎東海岸」(2022/4/12)
最高7倍、平均1.5倍 75戸のうち64戸に申し込み 大和地所レジ「門前仲町」(2022/7/11)
天井高3m超、20畳大の床下収納など 大和地所レジ「赤羽北フロント」竣工見学会
タカラレーベンは、先に紹介した「福岡天神」もそうだが、「東川口」「小田原」は〝駅近〟の特性を最大限に生かした好物件だ。
タカラレーベン 小田原駅徒歩1分「レーベン小田原THE TOWER」完売(2022/8/18)
県初のPPP事業 4か月で全143戸完売 タカラレーベン・埼玉建興「東川口」(2022/7/14)
このところリビング天井高はどんどん低くなっているが、その低さを感じさせない工夫を凝らしていたのが日本エスコン「レ・ジェイド クロス 千代田神保町」(50戸)と、明和地所「クリオ川越大手町」(49戸)だった。
「千代田神保町」は2400ミリだが、リビングに隣接する居室を主寝室とし、調光機能付きダウンライトをLD、キッチン、全居室に30か所以上設置することで難点の解消していた。
「川越大手町」は、地区計画により建築物の絶対高さが16m以下に定められていることからリビング天井高は2350~2400ミリしか確保できていないが、モデルルームは和モダンをテーマに、リビングは床に座って寛げる座卓タイプとし、目線を下げることで空間の広がりを演出していたのが見事だった。
歴史・文化を次代に繋ぐ 企画意図伝わる 日本エスコンの定借「千代田神保町」(2022/10/8)
和モダン見事に表現 出色の出来アクタス・モデルルーム 明和地所「川越大手町」(2022/10/15)
大和ハウス工業・京浜急行電鉄・長谷工不動産「プレミスト王子神谷」(227戸)は、日本製紙の工場跡地で、用途地域は工業地域だが、周辺はマンション化が進んでおり、嫌悪施設はない。物件はマンション群の南側最前線に位置しており、北側は公園。設備仕様レベルも高い。
大和ハウス 販売好調の「プレミスト王子神谷」 2期分譲開始(2022/2/19)
他の都県の主要都市の坪単価は300万円を突破しているのに、千葉県下では東京寄りの船橋や本八幡などほんの一部でしかなく、県都の千葉駅圏も価格下げ圧力が強い。中心市街地の千葉パルコ跡地の新日本建設など5社JV「エクセレント ザ タワー」(397戸)の第1期1次100戸が即日完売したが、坪単価は270万円だった。全国に20ある政令指定都市の中では最安値圏レベルのはずだ。
同駅圏では、三越千葉店跡地で東京建物、野村不動産、中央住宅、ファーストコーポレーションの4社JVのタワーマンション(491戸)が計画されている。坪300万円を突破するのは間違いない。
坪270万円 第1期1次100戸 即完スタート 新日本建設など5社JV「ザ タワー」(2022/4/1)
京王線はこのところの3~4年間、供給ラッシュが続いており、現在でも調布駅~聖蹟桜ヶ丘駅では十数物件2,000戸超が分譲されている激戦区だ。
そんな中で販売が好調に推移しているのが、飯田グループのパラダイスリゾート「調布ワンダーランドプロジェクト」(220戸)だ。調布駅から1駅先の西調布駅圏であることから、坪単価は260万円と抑えられているが、設備仕様レベルは高い。
大激戦地で販売好調 デベロッパーの良心を見た パラダイスリゾート「調布」(2022/5/25)
分譲開始は昨年の6月だが、今年5月の竣工までに完売したポラスグループ中央住宅「ルピアコート津田沼」(53戸)は、コロナ禍の真っ最中であったことから〝さわらない・もちこまない〟ノンタッチをテーマにしたマンション。坪単価215万円。「変身ラウンジ」「まもるんスペース」に記者は目を丸くした。
目からうろこ キッズスペースに一変「変身ラウンジ」 ポラス「津田沼」竣工完売(2022/6/16)
2019年に開業した相鉄・JR直通線羽沢横浜国大駅前の日鉄興和不動産「リビオタワー羽沢横浜国大」が好調なスタートを切った。記者は初めて降り立つ駅で、隣駅の武蔵小杉から1駅なのでものの数分で着くと思っていたら、何と15分もかかった。一駅でこれほど時間がかかる区間は首都圏では他にまずないはずだ。
駅周辺は倉庫だった跡地で、駅前はドラッグストアなどがあるのみで、駅名にもある「横浜国大」は徒歩十数分というのに驚いた。さらに、坪単価360万円にも第1期に100戸以上の申し込みが入ったのにも、申込者の半分以上が県外というのにもまた驚いた。設備仕様は高い。
立地にふさわしい防音室、循環ライブラリ 三井不レジ「文京本駒込」人気

「パークホームズ文京本駒込」
三井不動産レジデンシャルが分譲中の「パークホームズ文京本駒込」を見学した。駒込駅から徒歩5分の全88戸で、入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」のほか、ワークスペース、ピアノ・楽器の練習ができる防音室を備えているのが特徴で、第1期44戸が完売。好調なスタートを切った。
物件は、山手線駒込駅から徒歩6分、東京メトロ南北線駒込駅から徒歩5分、文京区本駒込5丁目の商業地域・第一種住居地域(建ぺい率96.55%、容積率566.57%)に位置する14階建て全88戸。第1期2次(4戸)の登録受付は2022年12月9日(金)~12月9日(金)、抽選日は12月9日(金)。価格は1億458万円~1億4,758万円、専有面積は65.43㎡(1戸)・74.67㎡(2戸)・77.80㎡(1戸)。入居予定は2024年4月上旬。施工は村本建設。
物件ホームページを7月に立ち上げ、案内は10月にスタート。11月25日に分譲した第1期44戸(専有面積57.83~90.52㎡、価格9,058万~20,858万円)が完売。第1期の坪単価は560万円。購入者は子育てファミリーが中心。これまでの反響は2,000件超。
現地は、イチョウ並木が美しい敷地南側の不忍通りに接道しているほか、西側、北側、東側(一部)に接道。建物は内廊下方式で、標準階の住戸は6~7戸、最上階は5戸。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2500ミリ、ディスポーザー、食洗機、キッチン・洗面フィオレストーン天板、食器棚、床タイルなど。
同社都市開発二部事業室・中村信介氏は、「小学校の通学校が文京区内でも人気が高い『3S1K』(昭和小・誠之小・千駄木小・窪町小)の昭和小学校という立地に対する子育てファミリーの評価が高く、電子ピアノを備えた防音室や『循環ライブラリ』などの共用部施設も支持されています。競合物件は多くありません」と語った。

基壇部の外観デザイン
◇ ◆ ◇
ワークスペースや防音室、「循環ライブラリ」の共用施設がアッパーミドルの子育てファミリーに受けているのだろう。坪単価からして大半は1億円超の価格だが、凄い売れ行きだ。
インター・プロデュースの澤村正人氏による三層構成のデザインがいい。とくに書架に蔵書が並ぶシーンをモチーフにした基壇部がとても印象的だ。また、1戸1戸のプランもよく練られているのも人気の要因の一つだと思う。ワイドスパンが中心で、北向きだが57㎡のプランでも間口は7770ミリ。よくある田の字型はひとつもない。

循環ライブラリ

現地(クレーンの立っている部分)
◇ ◆ ◇
三井日本橋タワー5階に設けられている同社の日本橋サロンを訪ねるのは初めてだったが、同業他社の常設モデルルームと比較して勝るとも劣らないのは間違いない。
全体の広さは数百坪ありそうで、受付カウンターは江戸切子のデザインがあしらわれており、ラウンジ正面には「三井」の象徴でもある越後屋の店章(家紋)が染められた幅5mはありそうな暖簾が目を射た。日本橋を中心に忠実に再現したジオラマも目を引く。床も突板仕上げ。接遇スペースのテーブルは本物の原木で、椅子も本革張り。
これだけで来場者を圧倒するはずだが、74㎡のコンセプトルームの基本スペックも価格に見合うレベルだし、華美でないカラーリング・デザインも優れている。

「三井の住まい 日本橋サロン」

接遇スペース
入居者の読み終えた本を貸し出す「循環ライブラリ」 三井不レジ「文京本駒込」(2022/8/6)
会話ができ、音も香りも風も吹く 日本橋「未来ののれん展」11/11まで開催(2019/11/2)
全て疑ってかかれ メディア・リテラシーの基本原則を忘れていないか

全て疑ってかかれ-メディア(記者)の基本だ。マス・メディアであろうと個人がSNSを通じて発信する情報であろうと、その情報は発信者によって編集され、そこには何らかの意図・企みが隠されており、受け手は発信者が企図するものを読み取り、批判的に読み取らなければならない-メディア・リテラシーの原則だ。
なぜ、こんなことに触れるか。デベロッパーもメディアも評論家も、マンション市場を語るとき、その論拠に必ずと言っていいほど不動産経済研究所(不動研)のマクロデータを利用し、受け手もまたそのマクロデータを無批判に受け取っているのではないかという疑問を小生はずっと抱いているからだ。
断っておくが、不動研のデータを鵜呑みにするなと言っているのではない。同社のデータは、マンション市場を把握するにはとても貴重な資料だ。ただ、同社のデータは全体像の一部を捉えたもので、全てではないことをわれわれは忘れてはいけない。
それがいいか悪いかはさておき、同社の調査対象は専有面積が30㎡以上で、30㎡未満のワンルーム・投資向けマンションや1棟売り、最近増加している再開発物件の地権者住戸などは調査対象外になっている。(同じような調査は、不動研のほかに東京カンテイ、工業市場研究所なども行っており、東京カンテイは30㎡未満も調査対象に加えており、工業市場研究所は最近はほとんど供給されなくなった公的機関のマンションなども対象にしている)
別表・グラフを見ていただきたい。国土交通省の首都圏マンション着工戸数と不動研の首都圏マンション供給戸数の推移を比較したものだ。国交省の調査は着工時点での数字で、その後、賃貸用に用途変更されたり、確認申請が取り消されたりしたものまで追跡調査していない。一方で、不動研は上述したような条件を付しており、着工と分譲開始には1~3年くらいのタイムラグが生じるので着工=供給という意味ではない。
それにしても、戸数の乖離率(着工を100とした場合の不動研のカバー率)が著しいと皆さんは感じないだろうか。例えば、2013年。着工戸数は約6.8万戸であるのに対し、不動研は約5.6万戸(カバー率83.0%)だ。
それ以降のカバー率はほとんど50~60%台で推移しており、2020年は着工約5.4万戸に対して不動研は約2.7万戸で、カバー率は50.5%となっている。当時、メディアは不動研のデータをそのまま報じ、マンション低調・退潮イメージを拡散した。2010~2021年で見ると、着工戸数約73万戸に対して、不動研は約48万戸で、約25万戸の差(カバー率65.3%)がある。
しかし、マンションの着工戸数は減少しているが、分譲戸建てが増加したため分譲住宅はそれほど減少していない。中古マンションの成約件数も最近は新築を上回っている。
ここに注目する必要がある。情報発信者も受け手も分譲戸建てや賃貸市場を含めたもっと広い視野で眺めないといけない。消費者の視点からすれば、本来は新築であろうと中古であろうと、マンションであろうと戸建てであろうと、あるいは賃貸であろうと、自らのライフスタイル・ステージにふさわしい住宅を自由に選択できるのが理想的な姿だ。それを阻んでいるのは何かも考えたほうがいい。
着工戸数と不動研の供給戸数の乖離については、2022年9月の記事で次ぎのように書いた。
「記者は、当初分譲予定だったのをリートなどに1棟で売却する戸数は年間3,000~5,000戸、地権者向け・事業協力者向け住戸は年間7,000~10,000戸、30㎡未満のコンパクト・投資用は7,000~9,000戸、合計年間17,000~24,000戸くらいあるとみており、この数字を加えるとほぼ住宅着工戸数と一致する」
メディア・リテラシーの基本に立ち返る必要性を最近強く感じているので書いた。
マンションの質の退行・劣化、着工戸数の捕捉率、新築・中古の価格などを考える(2022/9/5)
富裕層向け、地方展開、JRとの連携に注目 野村不HD 住宅事業ミーティング

「住宅事業スモールミーティング」(新宿野村ビルで)
野村不動産ホールディングスは11月30日、メディア向け「住宅事業スモールミーティング」を実施し、野村不動産取締役兼専務執行役員 住宅事業本部長・中村治彦氏と同社常務執行役員 住宅事業副本部長・吉村哲己氏が最近の住宅市場や同社の事業などについて約1時間半にわたり説明した。
全般的なマンション市場については、民間調査機関のデータを示しながら好調に推移していると話した。野村不動産HDの2023年3月期第2四半期決算でも、分譲住宅の契約戸数は2,446戸(前年同期比+400戸)となり、計上予定売上高2,800億円程度(前期は2,840億円)に対する契約進捗率は93.8%と好調に推移していることを裏付けた。
同社の顧客動向では、首都圏マンション購入者の平均年齢が38.8歳に対し、同社は41.7歳で、世帯年収1,200万円超の世帯が増加傾向にあるとし、とくに「1億円超などの高予算顧客」が増えているとした。1~1.5億円の購入者は、会社員で5割、30・40代で6割、共働きは4割となっており、高額住戸が多い同社2物件でみると7割が駐車場を希望しない「堅実層」が目立つという。
顧客ニーズの傾向では、テレワークの二極化により、「エリア」「駅距離」「広さ」などの趣向性が多様化しているという。
住宅購入マインドは、首都圏の7割が取得に前向きであるとしながら、エリアによっては支払い余力に差が出始めており、注視が必要とした。環境配慮型住宅への意識は8割が持っているが、予算オーバーでも購入する層は約6%にとどまっていると説明した。
今後の展開については、全国で年間4,000~5,000戸供給を継続し、住まいの総合サイトの開設、販売センターの拠点化を進める。来年1月には新宿に販売センターを開設する。
今後の住宅市場動向では、価格動向、建築費動向、金利動向、住宅ローン控除の改正、コロナによるニーズの変化、ライフスタイルの多様化に注目しており、富裕層が増加していることから高額物件専門の部署を設けたことを明らかにした。
脱炭素の取り組みでは、ZEH仕様の「プラウド向ヶ丘遊園」、低炭素住宅認定の「浦安市日の出四丁目Ⅱ計画」などを来年に分譲する。
◇ ◆ ◇
歳をとったせいか、コロナの影響か、どうも最近の小生の記事はキレがなく、冗長・冗漫に流れると自覚しているのだが、その舌の根も乾かぬうちにその愚痴から。
同社のマンションや分譲戸建ては「コープ野村」の時代を含めて40年以上、年間少なくとも10物件は見学してきたのだが、今年は5物件くらいしか見ていない。旧聞のマクロデータを示されたって〝そうなの〟と頷くほかなかった。
やはり〝プラウド〟は他社とどこがどう違うのかをもっと話してほしかった。全館空調「床快Full」と樹脂サッシを採用した「亀戸」は市場を激変させたように、同社のマンションは絶えず市場をリードしてきた。同社もまたメディア向け見学会を頻繁に行ってきたではないか。
まあ、愚痴はこれくらいにして、記者は高額物件専門の部署を新設したことに注目している。野村総研のデータによると、2019年の純金融資産保有額1億円以上5億円未満の世帯は124万世帯で、全体の2.30%を占め、純金融資産保有額5億円の世帯は8.7万世帯で、全体の0.16%となっている。数字は年々上昇している。
2020年以降のデータは示されなかったが、記者は毎年、東京都港区の課税標準額が1億円以上の納税者の推移を調べており、今年度は前年度比241人、23.9%増の1,250人となり、この層の所得割額総額も前年度比65.8%増の約280億円となり、高額納税者数、所得割額とも過去最多だった2020年水準を大幅に更新した。アッパーミドル層も漸増している。
同社は具体的にどの程度の層をターゲットにしているか明らかにしなかったが、記者は坪単価にして1,000万円以上、30坪として3億円以上を視野に入れているのではないかと想像する。高額マンション市場では、同社は三井不動産レジデンシャルや三菱地所レジデンスの後塵を拝している。沓掛英二社長は地団太を踏んでいるのではないか。
もう一つ注目しているのは地方展開だ。同社はこれまで東京圏、関西圏、中部圏を中心に展開してきたが、最近は首都圏に近い政令指定都市や中核都市での供給を増やしており、今期計上予定戸数4,300戸のうち地方は800戸を予定している。同業他社も地方での攻勢を強めているが、同社としては〝プラウド〟のプライドが許さないはずだ。地方でもトップブランドを目指すとみた。
ミーティングで質問することを一つ忘れた。マンションだけでなくオフィス事業などでJR各社とのJVを増やしていることだ。JR各社も鉄道事業が伸び悩むのは間違いなく、今後は社有地の活用や駅ビル再開発など加速させるためにはデベロッパーとの連携は欠かせないはずだ。同社とJR各社の動向に注目したい。
億万長者の人数&所得割額が激増 過去最多 アッパーミドルも漸増 東京都港区(2022/11/26)
天井高2700ミリ 全戸ワイドスパンに高い評価 野村不・JR東日本都市開発「目黒」(2022/7/24)
単価の安さに驚愕 立地よく設備仕様レベル高い 駅圏最大級の野村不他「金沢」287戸(2022/7/30)
街のポテンシャル 劇的に変えた 野村不の商業施設「KAMEIDO CLOCK」4月28日開業(2022/4/26)
木造賃貸&ZEH-M 三井ホーム「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」構造見学会

「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」
三井ホームは12月2日、木造賃貸マンション「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」のメディア向け構造現場見学会を実施した。昨年11月に竣工した「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」に続く、同社設計・施工の東京23区内で上棟した初の物件。
物件は、東京メトロ丸の内線四谷三丁目駅から徒歩7分、新宿区須賀町7に位置する第一種中高層専用地域(建ぺい率60%、容積率300%=道路・斜線・日影規制で実質183%)に位置する敷地面積約262㎡(80坪)、4階建て延べ床面積約593㎡(180坪)の全16戸。専用面積は21.66~31.52㎡。構造は木造枠組壁工法。設計・施工は三井ホーム。工期は2022年6月着工~2023年5月竣工(予定)。
現地は、幅員約4mの南道路と西道路に接道。道路、斜線、日影規制などから実質容積率は183%しか確保できなかったが、様々な工夫を凝らしレンタブル比率を高め、また、大型クレーンの設置が厳しい施工条件に対しては小型のクレーン車を利用することで、工期も予定より約1か月短縮できたという。
基本性能ではZEH-M(Oriented)を取得する予定で、一次エネルギー消費量を20%以上低減する。また、住宅性能表示制度の「劣化対策等級」で最高等級の3を取得することで、建物の75~90年の耐久性を実現するほか、同社独自の「高性能床遮音システムMuteミュート」を採用することで鉄筋コンクリート造と同等クラスの遮音性能を確保する。
見学会で同社施設事業本部コンサルティング第一営業部・井上氏と依田氏は、建築主の個人オーナー企業は、同社の既存顧客で、収益物件として賃貸マンションを建設する目的で土地を取得。「稲城」も見学し、木造マンションのコンセプトに共感したことから事業化が決まったと話した。
また、RC造と同等の減価償却期間(47年)の選択も可能になったことから、減価償却期間が22年の木造より家賃設定を高くし、償却後の利回り想定も高くなることなどから節税/収益、保有/売却の柔軟な運用提案ができるのも決め手になったと強調した。

〝あなたはまだ現しでないといけないという呪縛、木造コンプレックスから抜け出せないのか〟と言われそうだが、美しいものは美しい

現場
木造賃貸&ZEH-M 満足度は98% 三井ホーム「稲城」入居者アンケート(2022/12/3)
木造賃貸&ZEH-M 満足度は98% 三井ホーム「稲城」入居者アンケート

「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」
三井ホームは12月2日、わが国最大級の5階建て(1階:RC造、2~5階:木造)耐火ハイブリッド構造の木造賃貸マンションで、ZEH-M(Oriented)を取得した「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」の入居者アンケート結果をメディア向けに公表した。同日行った賃貸マンション「(仮称)MOCXIONモクシオン四谷信濃町」 の構造見学会の参考資料として添付したもので、総合的満足度で98%に達するなど極めて高い数値を示している。
首都圏のZEH-Mは30棟くらいが竣工しているはずだが、この種の入居者アンケートを公表するのは同社が初めてと思われる。今後のZEH-Mの展開に示唆する点が多いので紹介する。( )内は記者の感想。
調査は「冬季」(2022年4月11日~5月2日)と「夏季」(2022年9月26日~10月7日)の2度に分けて実施され、回答率は冬季が87.2%(N47世帯、n41世帯)、夏季が85.1%(N47世帯、n40世帯)。回答率も極めて高い。
まず、「総合的満足度」について。入居後4か月経過した時点の冬季の総合的な満足度は、「満足」53%と「やや満足」45%をあわせて実に98%に達している。
主なコメントでは、「あたたかみ、ぬくもりがある」「エントランスなどで木の香りや色合いに癒される」「床に少しクッション性が感じられる」「天井も高く、断熱・遮音とも良いと思う」「結露が少なく、あたたかくて住み心地が良い」「環境負荷の低い暮らしがしたいので、満足です」などとある。
一方で、「特に鉄筋コンクリートのマンションと変わりありません」「住んでいて特別『木造』と感じることはありません」「未だに木造とは思えません」の声もある。
(小生は、何と比較するかだが、天井高は高いとは感じなかったが、断熱性が高く、結露が起きないという回答は期待通りだ。鉄筋と変わらないとか木造とは思えないという声はとても興味深い。これが木造の利点でもあり課題だと思う。「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し」と話した小松弘昭氏や、「現しで(木材を)使うより実を取る」と語った十文字将敏氏はしてやったり、ほくそ笑んでいるかもしれないが、記者は「やはり木のほうがいい」と評価されるべきだと思う。すっぴんでも十分美しい女性がどうして歌舞伎役者のように厚化粧しなければならないのか。
「やや満足」の「やや」にはどのような意味が込められているのか。「十全」のマンションなどありえないが、「大満足」にはなっていないのはなぜか。立地条件にしては家賃が高いという意識が働いているためか…)
「夏季」アンケートからは、入居者の74%がRC造、または鉄骨造からの住み替えで、82%が「住まいの脱炭素・省エネ」を意識していることも分かった。
断熱性能に関する満足度では、「冬季」「夏季」とも「不満」は5%以下となり、南西、北東の方位による満足度でもそれほど差が出なかった。
主なコメントでは、「1~2月でも暖かく過ごすことができた」「冬はエアコンいらす」「木造とは思えないほど快適」「コンクリの壁に囲まれた室内のような冷たさは感じない」(以上、冬季)「今年は酷暑日が続いたが、快適に過ごせた」「ペットを飼っているので常に冷房を使用していたが、3台中1台だけの稼働でも十分だった」「夜エアコンをタイマーにしておくと、冷気が持続して省エネだと感じた」「玄関を開けたとき、空気の淀みがないと感じた」(以上、夏季)など。
(これこそZEH-Mの特長だ。これが浸透すれば、価格差をそれけほど付けなくても済むようになるはずだ)
「冬季」の「界壁遮音」では、「左右からの音は全く聞こえない」など「満足」「やや満足」が73%に達し、「不満」は2%となり、「床遮音」では、「満足」「やや満足」が52%で、「やや不満」「不満」は24%となっている。
(これはマンション全体の課題でもある。音の感じ方は人それぞれ。連れ合いのいびきを心地よく感じる人もいれば、息の根を止めたくなる人もいる。コミュニケーション、愛の問題だ)
2022年3月17日には東京都で震度4の地震が発生したが、そのときの不満足度は7%(3件)とわずかだった。
特に満足度が高かった設備仕様では、共用部は「外観デザイン」が100%、「24時間ゴミ出し」97.6%、「メールBOX」87.8%が、専用部では「セミオートバス」92.7%、「間取り」87.8%、「浴室乾燥機」82.9%がそれぞれベスト3。
(外観デザインが100%の評価を得たのに注目したい。記者もマンションを見学する際もっとも重視するのがデザイン-単なる意匠ではないが-なのでとても嬉しい。同じプラン・スパンが連続する板状マンションではせめて分節デザインを採用するべき)
ショック! 木質空間なし 現し論議に決着RCと木造混構造の特養完成 三井ホーム(2022/8/31)
賃料は「調布並み」でも申し込み殺到 三井ホーム「稲城」の木造5階建て賃貸(2021/12/9)
外貌の呪縛を解き放つか 「現しを求めるのは木造コンプレックス」三井ホーム小松氏(2021/12/9)
美人を美人と褒めてどこが悪いのか/居直り記者が男女差別を考える(2021/11/15)
根拠希薄 スタイルアクト「中古マンション値上がり率ランキング」
11月29日付「住宅新報」WEB版は、「中古マンション値上がり率、日鉄興和不が7年連続関東1位 スタイルアクト調べ」と題する記事をトップで報じた。
調査は、宅建業者のスタイルアクトが運営する分譲マンションサイト「住まいサーフィン」が行ったもので、2008年以降に竣工した首都圏マンションを対象に、各住戸の新築時分譲価格と2021年10月から2022年6月までの間に中古マンションとして売り出された価格の値上がり率を算出し、新築を分譲したデベロッパーごとにランキングとして発表したものだ。
これによると、値上がり率トップは日鉄興和不動産の4.37%で、以下、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、東京建物などと続く。2008年以降で最多供給と思われる住友不動産はベスト10位で、供給量ではベスト10社入りするはずの〝中堅〟は1社もランクインしていない。
◇ ◆ ◇
小生は、このスタイルアクト=住まいサーフィンの調査は知ってはいたが、どこがどのような調査をしようと勝手だし、それを記事にするかしないかを決めるのはメディアの判断に委ねられるので、無視を決め込んできた。
だが、しかし、28万人(同社発表)もいる「住まいサーフィン」の会員(消費者)は不利益を被らないかと心配になったので、以下に書くことを決めた。
まず、中古マンションの値上がり率について。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)のデータによると、今年10月の首都圏中古マンションの成約価格は4,395万円(前年同月比13.1%増)、坪単価は229万円(同14.7%増)、築年数は23.73年となっている。
2008年の首都圏新築マンションはどうかというと、東京カンテイのデータでは平均価格は4,662万円、坪単価は233.7万円だ。
これを、スタイルアクトの値上がり率ランキングの計算式「中古値上がり率=中古売出価格/新築時価格/経過年数」に倣い計算すると、4,395万円/4,662万円/14年=6.7%となった。スタイルアクトが公表した値上がり率上位10社の数値よりかなり高いtが、最近の新築マンションの価格上昇率が高いことから、築浅の物件ほど上昇率は下がるはずなので、各社の物件の上昇率もこのようなものだともいえる。
これはさておき、上位10社についてみてみる。値上がり率トップの日鉄興和不動産を始めベスト10入りしている各社はどこも販売棟数、竣工戸数などを公表していない。このため、民間調査会社のデータに頼らざるを得ないのだが、日鉄興和不の2008年以降の販売戸数は年間800戸として10,000戸くらいのはずだ。1棟当たり戸数を50~60戸とすると、販売棟数は10,000÷50~60=167~200棟になる。ところが、スタイルアクトが対象としているのは41棟にしか過ぎない。販売棟数の20.5~24.5%しかカバーしていないことになる。(他社もほぼ同様)。
なぜそうなるのか。最大の理由は、スタイルアクトの計算式では「少数事例による誤差を抑制するため、総戸数10戸未満のマンションならびに事例数が5件未満のマンションは除外」しているからだと思われる。(販売戸数だけならベスト10入りするはずのデベロッパーは2~3社あるが、この適用除外に該当するためか)
この適用除外に問題はないのか。記者は中古市場のことはよく分からないのだが、年間5戸以上の売買事例がある中古マンションの1棟当たりの規模はどれくらいなのか。50戸で年間5戸以上というのは考えづらいのではないか。10年で所有者が入れ替わる計算だ。100戸でどうか。投資用や単身者・DINKS向けはあるかもしれないが、ファミリーマンションではあり得ないような気がするが…。(日鉄興和不は単身者・DINKS向けの供給比率が他社と比べて高い)
次に、資産性の問題。スタイルアクトは値上がり率の高いマンションは資産性が高いというが、果たしてそうか。短絡的に過ぎるのではないか。新築もそうだが、中古マンション価格はそのときどきの市場に左右される。上りもすれば下がりもする。資産価値が高いマンションは、「広尾ガーデンヒルズ」に代表されるように、市場動向に左右されず、居住環境や居住性能が高いことなどから賃貸市場でも適正に評価される物件だと思う。
これに関連することだが、釈然としない問題もある。ベスト10の住友不動産だ。他社の事例数を棟数で割ると、もっとも少ないのは阪急阪神不動産の9.7件で、あとは12~14件だが、住友不はほぼ倍の23.7件だ。値上がり率は低いが、市場流通性(換金性)が2倍というのをどう評価するか。
もう一つ、スタイルアクトはどのようにして膨大な中古マンションデータを収集したのかという問題だ。東日本レインズによると、2021年の首都圏の中古マンション成約戸数は約4万戸だ。同社が調査した10社合計の事例は11,596戸だ。レインズデータの29.0%だ。これは2008年以降の竣工物件に絞ったからでもあるが、いずれにしろ全物件のデータを収集・分析しないと割り出せないはずだ。
同社は宅建業者なので(調査主体は「住まいサーフィン」だが)、レインズデータは得られるはずだが、レインズは「不動産取引を促進するために物件情報や成約情報を集計・加工・分析し、物件や個人が特定されない範囲で外部に提供する場合、利潤を得ることはできない」とし、「会員は上記以外で、成約情報を広告・宣伝等で利用してはいけない」と規制を設けている。
であるとすれば、スタイルアクトはレインズのデータをもとに算出したと言えないはずで、ならはどのような調査を行っているかを明らかにすべきだ。根拠が希薄な「広告・宣伝」は不動産公正取引協議会連合会の「公正競争規約」で「実証されていない、又は実証することができない事項を挙げて比較する表示」「実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示」などを禁止している。
以上、縷々述べてきたが、新築・中古マンション市場について多少の知識があれば〝これはおかしい〟と感じるのが普通だ。無批判にリリースをコピペして発信する業界紙のメディア・リテラシーも問われている。
料理・風呂好きにはたまらない 設備仕様レベル突出 伊藤忠都市開発「三軒茶屋」

「クレヴィア三軒茶屋」
伊藤忠都市開発が分譲中の「クレヴィア三軒茶屋」のモデルルームを見学した。駅から徒歩11分の全52戸で、70㎡以上の住戸はトーヨーキッチン、浴槽の框にヒノキを採用した浴室を標準装備とし、1階の2住戸は露天風呂付き。既分譲の坪単価は約570万円だが、設備仕様レベルはこの価格水準では突出しているはずだ。価格上昇が著しく、一方で設備仕様レベルが劣化・退行している業界に一石を投じるマンションだ。
物件は、東急田園都市線三軒茶屋駅から徒歩11分、世田谷区若林1丁目の第一種住居地域に位置する5階建て全52戸。専有面積は36.36~133.66㎡。現在分譲中の住戸(9戸)の価格は7,990万〜28,990万円(54.17〜133.66㎡)。既分譲住戸の坪単価は約570万円。竣工予定は2023年9月下旬。デザイン監修はアーキサイト メビウス。設計監理は安宅設計。施工は大末建設。販売代理は伊藤忠ハウジング。
昨年12月に物件ホームページを開設し、これまで反響は約2,000件超、来場者は約260組。6月末から販売を開始しており、未分譲の1LDKなどを除き、約半数が成約済み。購入者の半分は世田谷区に地縁がある人が中心で、賃貸脱出派がメイン。
現地は、環七通りから奥まった2~3階建て住宅や5階建てのマンションなどが建ち並ぶ閑静な住宅街の一角。本件敷地より北側のエリアが下がっており、建物中央の中庭・吹抜け空間を囲むように住戸を配置。プランは36㎡台が6戸、40~60㎡台が27戸。70㎡以上が19戸。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、サッシ高約2400ミリ、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナ、グローエ水栓など。
同社・瀬戸氏は「立地は幹線道路から奥まった閑静な住宅街、かつヒルトップで、上層部は都心方面中心に眺望がたのしめる住戸も多く、この立地条件と設備仕様を掛け合わせた商品企画が評価されています。最近のマンションは価格が上昇しているのに設備仕様は変わっていないと考え、トーヨーキッチンやヒノキ框の浴槽を採用することなどで差別化を図りました。物件ホームページには〝露天風呂あります〟と謳っています」と話した。

中庭

トーヨーキッチンを採用したモデルルーム

パラレロシンク
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モデルルーム
◇ ◆ ◇
今に始まったことではないが、同社ほどチャレンジ精神が旺盛なデベロッパーはない。この5年間の主な物件を直近の供給順に列挙した。
玄関手洗い収納を3LDKタイプに装備した「西馬込」、天井高2700ミリ&ワイドスパンの「新御徒町」、シャワールームのみで浴槽をなくした住戸も提案した「山吹神楽坂」、最上階にリモートワークや読書に利用できる「+HANARE Common」を設けた「両国国技館通り」、6か所の「ボイド」と9室の「離れ」を設けた「小杉御殿町」、5つ星ホテル並みの有楽町の「ギャラリー」、「理想の新婚部屋」を提案した「門前仲町」(賃貸)、角住戸率100%、約7.2m~約9.4mのワイドスパンの「上野池之端」、自分の生活スタイルに合わせてプラン(有償)が選べる「大井町」、住戸内の1坪を8種類の中から選べる「池袋West」、外観デザインが秀逸だった「文京関口」、ベランダから釣りができそうな「金沢八景」…。(RBAホームページで「伊藤忠都市開発」を検索していただければヒットするはず)
今回の「三軒茶屋」もこれらの物件に引けを取らない。驚いたのは〝ゼロ動線〟をテーマにしたトーヨーキッチンを標準装備(70㎡以上の住戸)していることだった。サイズは1990×1050ミリ(住戸により異なる)だから大きくはないが、天板がキラキラと輝き(ステンレス製)、何よりも洗・切・盛を手際よくできる76センチ四方のユーティリティシンクがいい。表裏リバーシブルのまな板付き。トーヨーキッチンの商品を標準装備しているマンションなど最近ほとんど見たことがない。料理好きにはたまらないキッチンだ。
もう一つは、框にヒノキ、浴槽内に御影石を採用した浴槽だ。この種の浴槽は最近ほとんど見かけなくなったが、なるほどと得心したのは浴室と洗面室の壁面を同じタイルとし、ガラスで仕切ることで一体的な空間を演出していることだ(一部の住戸のみ)。ホテル・旅館気分が味わえるはずだ。
1階の2住戸(約57㎡)には、住戸内の浴室のほかにテラス内に露天風呂を設けているのも面白い。記者は風呂が好きではないのでよく分からないのだが、これもまた風呂好きにはたまらないだろう。
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洗面&浴室
CO2排出量 従来の2割削減 長谷工コーポ 新開発のコンクリート「上池台」で採用

「(仮称)大田区上池台5丁目計画」
長谷工コーポレーションは11月22日、長谷工不動産の分譲マンション「(仮称)大田区上池台5丁目計画」(42戸)で住宅性能表示を用いるマンションとして初めて独自開発した環境配慮型コンクリート「H-BAコンクリート」を建物の地上部分に全面採用すると発表した。
同マンションに使用するコンクリート約2,300 m3をH-BAコンクリートにすることで約117t(約8,400本のスギが1年間に吸収する量に相当)の温室効果ガス(CO2)排出量の削減効果を見込んでいる。
H-BAコンクリートは、普通ポルトランドセメントと高炉セメントB種を併用して製造することで、従来の普通コンクリートに置き換えが可能で、コンクリート材料に由来する温室効果ガス(CO2)排出量を約20%削減する環境配慮型コンクリート。
これまで、「ルネ横浜戸塚」(439戸)の回廊床や、学生向け賃貸マンション「学園東町プロジェクト」(120戸)での全面採用など実績を重ねてきた。新材料・新工法のため、住宅性能表示「評価方法基準」としては評価できなかったが、国土交通省の「特別評価方法認定」を取得したことで、住宅性能表示を行う分譲マンションへも採用できることになった。
同社は2021年には約100万m3 のコンクリートを使用しており、これをH-BA コンクリートとした場合には約5万t(約360万本のスギが1年間に吸収する量に相当)の温室効果ガス(CO2)排出量を削減できるとしている。
◇ ◆ ◇
1人の人間が1年間に排出するCO2は約350kgとされているので(小生は小柄なので平均値以下だと思うが、その代わり〝毒〟を含んだ記事を垂れ流しているのでイーブンか)、117tは人間にすると334人分だ。凄い数値だ。スギもまた立派だ。
だが、しかし、高く評価される一方で、木は粗末に扱われている。利活用されないままで放置されたり、なんだかんだの理由をつけてぶった切られたりする。
それにしても従来のコンクリと比べ2割もCO2排出量を減らせるとは…価格も気になるが…。
予定価格を公表したのに好感 「コンセプトサロン」 三井不レジ「西新宿」

「パークタワー西新宿」
三井不動産レジデンシャルは11月18日、新宿区西新宿で開発を進めている「パークタワー西新宿」で同社初の「オンライン上と実空間を連動させたハイブリッド型マンション販売拠点」の「コンセプトサロン」を開設、2023年1月中旬頃に実空間の「レジデンシャルサロン」をオープンすると発表した。
「コンセプトサロン」では、①コンセプトムービー②建物概要③室内空間④VR モデルルーム⑤間取り・予定価格を含めた販売スケジュール⑥Q&Aを紹介するなどして、実際に物件の外観や内装で使用される素材、専有部分の広さや高さなどを実際の空間を体験できるのが特徴。
物件は、都営地下鉄大江戸線西新宿五丁目駅から徒歩6分、東京メトロ丸ノ内線西新宿駅から徒歩10分、新宿区西新宿5丁目に位置する「西新宿五丁目中央南地区市街地再開発」(0.8ha)の40階建て全470戸(一般販売対象戸数287戸)。専有面積は42.48~108.88㎡。第1期販売開始は2023年3月下旬。竣工予定は2024年11月下旬。施工は熊谷組。
今回の隣接地の「西新宿五丁目中央北地区第一種市街地再開発事業」(1.5ha)では、三菱地所レジデンスの60階建て「ザ・パークハウス西新宿タワー60」953戸(分譲777戸)が2017年に竣工している。
また、近接地の「西新宿五丁目北地区防災街区整備事業」(2.5ha)に事業参画している住友不動産が35階建て「シティタワー西新宿」427戸(非分譲住戸254戸・非分譲SOHO11室含む)を近く分譲開始する。同事業ではA・B・C地区で合計1,000戸の住宅が建設される。
さらに、西新宿5丁目駅にもっとも近い「西新宿五丁目南エリア」(0.6ha)でも再開発の計画が進められている。

「パークタワー西新宿」オンライン上のコンセプトサロン画面イメージ
◇ ◆ ◇
上段はほとんどリリースのコピペだが、同社のリリースには、メディア向けに「コンセプトサロン」の一部をURLで公開するとあったので視聴した。
この種のオンラインによる物件販売現場を知らないからだが、視聴しても何がハイブリッドなのかさっぱりわからなかった。「無知は罪なり」なのか「無知は力なり」なのか。
しかし、間取りと予定価格を公開していることはとてもいいことだと思った。同社物件も含めて、ほとんど(例外はあった)の分譲マンションのホームページは、〝駅近〟などの特長のみが強調され、価格は販売直前にならないと告知されないし、設備仕様レベルも後回しになりがちだ。これは消費者不在であり、購入検討者に失礼だとずっと思ってきた。
「パークタワー西新宿」では、担当者が北向きの6.6mスパンの61㎡台が10,000万円台であるとか、西向きの7.3mスパンの61㎡台が12,000万円台、9.4mスパンの74㎡台が14,000万円台、108㎡の南西角住戸は27,000万円台ということを話した。
この価格が高いか安いかはコメントしないが、港区などでは立地環境に恵まれていなくとも坪700万円を超え、目黒や五反田駅圏でも坪600万円を超えても人気になっている。池袋駅圏では坪500万円をはるかに突破している。
なので、再開発により環境が一変した「西新宿5丁目」でこの価格帯というのは納得もした。免震でZEHは首都圏初ではないか。「水の景色」をコンセプトにしたデザインも印象的だ。
日本最高階数 三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス西新宿タワー60」竣工(2017/10/24)

