価格が安くても手抜きしない 大和地所レジ「ヴェレーナシティ藤沢」に見た企業姿勢
「ヴェレーナシティ藤沢」モデルルーム(この空間提案をできるデベロッパーは他にあるか)
「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」に続き、「ヴェレーナシティ藤沢」と「ヴェレーナグラン湘南藤沢」を紹介する。販売は順調で、前者はバス便だが、70㎡以上でも価格が4,000万円台という価格の優位性があり、後者は徒歩12分とグレード感があるのが評価されているという。
「ヴェレーナシティ藤沢」は、JR・小田急江ノ島線藤沢駅から徒歩23分(バス約6分、バス停徒歩1分)、藤沢市藤が岡三丁目の第二種住居地域、第一種低層住居専用地域に位置する7階建て全102戸。先着順で分譲中の住戸(7戸)の価格は4,168万〜4,798万円(専有面積72.89〜77.17㎡)。坪単価は200万円。竣工予定は2023年4月中旬。施工は長谷工コーポレーション。昨年10月から販売開始しており、現在、進捗は80%。
現地はヒルトップの大学の寮跡地で、道路を挟んだ南側は第一種低層住居専用地域。敷地の目の前にバス停があり、通勤時間帯は数分置きに藤沢駅行が走っているという。
建物は全戸南向きで、全邸オープンエア付き住戸(オープンエアリビング・バルコニー付きは24戸)。主な基本性能・設備仕様はリビング天井高約2450ミリ(最上階は約2500ミリ)、直床、ディスポーザー、食洗機、2段タオル掛け、メーターモジュール廊下、バルコニースロップシンクなど。共用施設はオーナーズラウンジ・ライブラリー・サロン・ガーデンなど。
「ヴェレーナグラン湘南藤沢」は、JR・小田急江ノ島線藤沢駅から徒歩12分、藤沢市川名字森久の第一種住居地域、準工業地域に位置する7階建て全33戸。先着順で分譲中の住戸(3戸)の価格は4,768万〜5,228万円(専有面積65.27〜70.28㎡)。坪単価は243万円。竣工予定は2022年7月下旬。施工は大洋建設。販売開始は10月からで、残りわずか。
建物はワンフロア5戸構成で、角住戸は13戸。中住戸2列は東向きワイドスパン(7.5・9.0m)。主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2400ミリ、御影石キッチン・洗面カウンター、食洗機、ミストサウナ。2段タオル掛け、バルコニースロップシンク、メーターモジュール廊下(一部除く)など。
同社マンションギャラリー次長・大竹喜章氏は、「双方とも販売は順調。『シティ』は、6月頃までに完売できそう。購入者の2割が都内。70㎡以上の3LDKが4,000万円台前半で買えることが評価されており、バスも頻繁に走っているのでハンディにはなっていません。『グラン』も設備仕様のグレードが高評価をいただいている」と語っている。
「ヴェレーナグラン湘南藤沢」
◇ ◆ ◇
「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」の記事と一緒に読んでいただきたい。湘南エリアの他社のマンションをそれほど取材していないので断定的なことは言えないが、基本性能・設備仕様レベルはどこの物件と比較しても負けないと思う。
例えば「シティ」。住戸プランは最低70㎡を確保し、15列あるスパンのうち6mのショートスパン(今はそう呼ばないかもしれないが)は2列(スパン)しかない。他は6.2mが6列、6.4mが5列、7.3mが2列(角住戸)だ。
坪単価はバス便ということもあり200万円と安いが、ディスポーザー、食洗機、御影石カウンター、2段タオル掛け、ミストサウナ、メーターモジュール廊下幅などを標準装備としている。この単価でこれほどの質を確保しているマンションがあったら教えてほしい。まずないはずだ。
どのような物件でも〝手抜き〟をしない企業姿勢がここにある。スロー アンド ステディ ウィン ザ レース(SLOW & STEADY WIN THE RACE)-追い風だろうと向かい風だろうと、生活者目線の商品企画を忘れないことが結局生き残るということだ。
モデルルーム
希少の海に近い1低層 水準以上の基本性能・設備仕様 大和地所レジ「茅ヶ崎東海岸」(2022/4/12)
充実した共用部 浴室にはタオル掛け 新たな賃貸マンション提案 三井不レジ「錦糸町」
「パークアクシス錦糸町スタイルズ」オープンダイニング
三井不動産レジデンシャルは4月15日、専用部と共用部の機能を見直し、選べる朝食、シェア、サブスクなどのサービスを提案した新しい形の賃貸マンション「パークアクシス錦糸町スタイルズ」(96戸)が竣工したのに伴うプレス内覧会を行った。記者は通常の賃貸では考えられないほど共用部が充実しているのと、20数社のメディアが駆けつけていたのにダブルショックを受けた。
物件は、JR錦糸町駅から徒歩10分、都営新宿線菊川駅から徒歩9分、墨田区江東橋五丁目の準工業地域に位置する敷地面積約788㎡(238坪)の7階建て延べ床面積約2,499㎡の96室(建築基準法の用途は「寄宿舎」)。専用面積は15.35~18.00 ㎡、賃料は11.6万円~/月。建物は3月25日に竣工。入居可能日は4月中旬以降。
テレワークの普及や在宅時間の増加などによりライフスタイルが変化・多様化しているのに対応するもので、入居者が必要な機能を必要なときに選択して利用できるのが特徴で、専用部はユニットバス・洗面・トイレを含めた約15~18㎡に抑えている。
その一方で、約120㎡の共用部(全体のレンタブル比は70%だそうだ)に各種の施設を配置。単身者の課題とされる朝食・テレワークに対応するため朝食は200円から450円まで和洋食4種から選べるようにしたほか、夕食は定食や丼など栄養バランスに配慮したメニューを用意、外食のようなメニューをワンコイン未満で提供する。
このほか、リモート会議用の個室やブースなどのワークスペースを設置。シェアキッチン、ランドリー、ブックセレクト、共用備品・調理器具貸出しサービス、洗濯代行、家具のサブスクサービス、レンタサイクルなども行う。
また、SDGsに貢献するためグリーン電力を使用するほか、食事を提供するLEOCと連携してフードロス削減・脱プラスチックの取り組みも行い、共用部のドリンクにはプラスチックストローやカップを使用せず、マグカップ、紙カップ、紙ストロー、紙蓋を採用し、コーヒーは全てフェアトレードコーヒーにする。
賃料設定に関するメディアの質問について同社賃貸住宅事業部 事業グループ室長・神谷正樹氏は、「共用部の充実のほか定額制の水光熱費、各種の無料サービス、ネット環境を考慮すれば一般的な賃貸マンションの相場と比べ相応ではないか」と語った。
シェアキッチン
ブース席
朝食メニュー(450円、これに飲み物が付く)
450円の〈WAKE(ヌードルプレート)〉(左)と300円の〈FUN(パンケーキプレート)〉
ブックセレクト
◇ ◆ ◇
記者は、共用部で赤の他人と緩やかにつながる生活スタイルはいま一つ理解できないのだが、今回の賃貸マンションは分譲マンションの商品企画にも生かせるというのが率直な感想だ。分譲価格を抑制するため、共用部を充実させ専有面積を圧縮する流れは加速するのではないか。
まず共用部。この種の規模の賃貸としては充実しているのは間違いない。写真の朝食メニューが高いか安いか判断できないが、これにフェアトレードのコーヒーが付くし、ビールなどを飲むのも自由だ。飲酒でいえば、同社は1時間500円の飲み放題も1年間期間限定で企画しているという。
ブックセレクトコーナーは有隣堂とコラボしているもので、常時400冊が備えられており無料で読める(居室に持ち込みは不可)。書籍の入れ替えには居住者の声を反映させるという。
次に専用部。建築基準法での用途は「寄宿舎」なので台所がなく、広さ、天井高最大2350ミリ(最大は2480ミリ)というのはともかく、浴室にはタオル掛けがきちんと付いていたし、タンク付きトイレも郊外分譲マンションに採用されているものと遜色ない。直床のフローリングは二重床のそれと同じくらいしっかりしている。物干しポールとピクチャーレール付きの部屋もあった。もちろん飲酒・喫煙も可能(共用部は禁煙)だし、友だちなどを入室させるのも自由だ。
ランドリー(男性用洗濯機7台、乾燥機7台、女性用5台)
浴室タオル掛け
物干しポール
「パークアクシス錦糸町スタイルズ」
床暖房もタオル掛けもなし 経済設計の極み それでも海好き惹きつける 相鉄不「平塚」
「グレーシア湘南平塚海岸」
中央日本土地建物「バウス平塚」を取材したあと、相鉄不動産がほぼ同時期に分譲開始した「グレーシア湘南平塚海岸」を見学した。中央日土地の物件が駅の傍なら、こちらは目の前がすぐ海。〝贅肉〟をそぎ落としたコンセプトが奏功したか、全100戸のうち海側の29戸を中心に33戸に〝赤いバラ〟が付いていた。
物件は、JR平塚駅から徒歩17分(平塚駅からバス6分、徒歩2分)、平塚市龍城ケ丘4丁目の第一種中高層住居専用地域に位置する5階建て全100戸。専有面積は62.99~88.84㎡、価格は2,900万円台~5,600万円台(最多価格帯3,900万円台。現在分譲中の住戸(40戸)の坪単価は196万円(全体予定は175万円)。竣工予定は2023年1月下旬。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、元公務員宿舎。目の前の防砂林-道路(橋)を渡るとすぐ海(表示は海まで3分)。海岸では、防砂林を伐採する計画に反対する地域住民がいるため着工は中断されているが、市民協働の森、レストラン、スポーツフィールド、カフェなどからなる「湘南海岸公園龍城ヶ丘ゾーン整備計画」がある。
建物は、コの字型で、海側の南向きが50戸、東向きが32戸、西向きが18戸。主な基本性能・設備仕様は直床、リビング天井高2480ミリ(最上階は2450ミリ)、良水工房など。床暖房はなく、浴室タオル掛け、食洗機などはオプション。間口6m以下も40戸ある。共用施設としてカームラウンジ、シェアストレージ、オーシャンビューテラスなど。南向き1階住戸には約12㎡のテラスと約10㎡の専用庭付き。
今年3月から分譲開始し、これまでに南向き29戸(分譲中の21戸の坪単価222万円)、東向き2戸(分譲中の12戸の坪単価154万円)、西向き2戸(分譲中の7戸の坪単価201万円)、合計33戸が成約済み。
販売担当者によると、予想以上の売れ行きで、購入者は海好きの人が多く、他社物件との競合は少ないという。
海に渡る橋の上から現地を写す
眼前の海は遠浅になっていないので遊泳禁止とか(泳げるところまでは10分くらいとか)
◇ ◆ ◇
相鉄不動産といえば、今年1月、坪単価717万円でも圧倒的な人気を呼んでいる「THE YOKOHAMA FRONT」(ザ ヨコハマ フロント)を見たばかりだ。
大激戦の「平塚」はどんな商品企画で勝負するのだろうとわくわくしながらモデルルームを見た。あにはからんや。その〝シンプルさ〟に唖然茫然するほかなかった。
これまでもこの種の経済設計のマンションを見学したことはあるが、今回はその極みだ。地域の需要ニーズを熟知するデベロッパーと、設計・施工のプロでしかなしえない技だ。コンセプトを明確に打ち出し、ターゲットを絞り込めば〝売れる〟ことを示した好例ではないか。
単価設定にもうなってしまった。海に面した側でも、前面の砂防林のマツも高さは5層分あり、最上階でも海が見えるかどうかは微妙とのことで、それほど高値に設定していないが、海の眺望が望めない東向き、西向きは価格を極端に低く設定している。
そこで小生は考えた。海の映像をカメラに、波の音を収音マイクに収め、室内にリアルに画像とともに音を楽しめるようにしたらどうだろう。その費用はどれくらいか分からないが、そうすれば価格をもっと上げられると。
太陽光を採光し、居室内に照らし出すシステムを採用すればマンションの値付けを劇的に変えられるとずっと昔から思っているのだが…。
敷地西側の道路を挟んだ防砂林
9物件1,100戸超の大激戦地に〝参戦〟 中央日土地「バウス平塚」(2022/4/13)
相鉄不・東急 横浜駅直結タワマン 第1期129戸完売 坪717万円「嫌悪施設」影響なし(2022/1/26)
9物件1,100戸超の大激戦地に〝参戦〟 中央日土地「バウス平塚」
「バウス平塚」
中央日本土地建物は4月12日、JR平塚駅から徒歩2分のマンション「バウス平塚」(118戸)のメディア向け見学会を行った。同駅圏では現在、同社物件含めて9物件、トータルで1,170戸の物件が分譲されている大激戦地で、同社は最後発。3月に供給した第1期30戸のうち約20戸を成約。「順調」な滑り出しのようだ。
物件は、JR平塚駅から徒歩2分、平塚市錦町の商業地域に位置する10階建て全118戸。現在先着順で分譲中の住戸(8戸)の専有面積は44.88~77.38㎡、価格は3,150万円~5,780万円。坪単価は230万円。竣工予定は2023年6月下旬。売主は同社(事業比率95%)のほか三信住建(同5%)。施工はファーストコーポレーション・三信住建共同企業体。販売代理は東急リバブル。
現地は、温浴施設跡地。三信住建が用地を取得した。敷地は東側と西側の2方道路に接道。建物外観は日本の御屋敷をコンセプトに木・石・土をイメージした素材を多用、エントランスは石積みとし、低層部は格子デザインを採用している。
住戸プランは東向きと西向きの2列配置で、1LDK~4LDKまで10タイプ。平均収納率を11.25%確保、クックパッド(cookpad)と共同開発したシステムキッチン「BAUS×cookpadコラボキッチン」を初採用しているのが特徴。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2450ミリ、ディスポーザー、食洗機、物干しポール、浴室タオル掛け1か所など。
同社経営企画部総括次長 経営企画部広報室長・鈴木高廣氏は、「2016年にマンションブランド『BAUS(バウス)』を立ち上げ、供給ランキングの末席に名を連ねようと年間500戸を目標に展開してきたが、2019年から本格的に戸数が積みあがってきた。年間1、2回は内覧会などを行っていきたい」と語った。
同社住宅事業部総括次長・青木一浩氏は、「ブランドの由来である基本・基盤を意味するBasisを大切にし、丁寧な家づくり、品質にこだわって差別化を行ってきた。今年度は450戸、来期は540戸の目途が立った。500戸を安定的に供給していく」と話した。
物件の計画を担当する同社住宅事業推進第一部副長・能勢暁人氏は、「1月から集客を開始し、この2カ月半で来場は約200組。デザイナーを起用し、Cookpadとコラボしたシステムキッチンを採用するなどの差別化を図った。平塚駅圏では現在、9物件が分譲されており在庫は600~700戸と予測されるほどの激戦地で、〝第1期は20戸の壁〟があったが、第1期は30戸供給し、20戸を成約するなど何とかこの壁をクリアできた。順調な滑り出し。地元が4割で、75%が県内」と語った。
「パパっとニッチ」付きの「BAUS×cookpadコラボキッチン」
エントランスラウンジ
◇ ◆ ◇
同社はもっとも好きなデベロッパーの一社だ。バブル期でも浮利を追わず、「鴨居分譲地」「横浜白山分譲地」「戸塚台分譲地」「横浜あずま野分譲住宅」など、いかにも銀行系と頷ける良好な戸建て住宅地を開発してきたからだ。バブル崩壊で多くの銀行・証券会社系デベロッパーが市場から退場を余儀なくされた中で、同社が生き延びられたのもそのような企業姿勢を貫いてきたからだ。
だから、後発だからこそ同業と一味も二味も異なる商品を供給してくれるのではないかと、「BAUS(バウス)」にも注目している。
今回の「平塚」の77㎡のモデルルームはよくできていると思う。間口は7700ミリと広く、「BAUS×cookpadコラボキッチン」では、他社も似たようなものを開発しているが、キッチン用具を収められる高さ35センチの「パパっとニッチ」がいい。
ひとつだけ気になったのは水回りだ。浴室のタオル掛けは1か所だけだが、ファミリー層をターゲットにするのであれば2か所は必須で、洗濯機の上部にはハンガーが掛けられる収納を設けるべきだ。細かいことだが、消費者はこのようなきめ細かな、かゆいところに手が届く配慮に感動を覚える。
さらに言えば、今後の展開を考えると、年間500戸体制を支える販売部隊を強化すべきではないか。どことは言わないが、自前の販売部隊を持たない大手(系)は市況に流されやすい。ユーザーの声を直に聴くのと販売会社から間接的に聴くのとでは全然異なる。販売スタッフを通じて全社員が課題・問題を共有できるからこそ次に生きてくる。
タオル掛けは1か所
建設現場
中央日土地グループ2021年4月1日付で7社体制へ 事業別子会社再編(2020/12/18)
一戸当たり土地持ち分67㎡ 日土地ほか「バウス武蔵境」 悩ましい都市計画道路(2019/9/11)
驚嘆のアート・オフィス・デザイン 東京に新名所 日土地他「京橋エドグラン」誕生(2016/11/24)
設備仕様レベルはトップクラス 日土地「武蔵野富士見 ザ・レジデンス」(2015/12/10)
日土地 マンション事業本格参入 年間500戸から1,000戸体制へ(2015/10/6)
音楽好きにはたまらない 日土地がシェアハウス「シェアリーフ西船橋グレイスノート」公開(2014/2/19)
「日土地虎ノ門ビル」竣工 浮利を追わず、環境にかける同社の矜持を見た(2013/12/18)
日土地 次世代制震装置装備の「高井戸」1期即完(2013/6/4)
希少の海に近い1低層 水準以上の基本性能・設備仕様 大和地所レジ「茅ヶ崎東海岸」
「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」
大和地所レジデンスが分譲中の「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」「ヴェレーナシティ藤沢」「ヴェレーナグラン湘南藤沢」を見学した。3物件とも同社の〝十八番〟である「OPEN AIR LIVING」を盛り込んでおり、売れ行きも好調。同社は、毎年1,000戸前後を供給しても完成在庫を出さないことで知られているが、その理由は商品企画にあることを改めて学んだ。
まず、同社の最上位の〝グラン〟を冠した「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」を紹介する。
物件は、JR茅ケ崎駅から徒歩15分、茅ヶ崎市東海岸南四丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する敷地面積約8,236㎡、地上4階・地下1階建て全111戸。専有面積は53.89~100.38㎡。現在先着順で分譲中の住戸(5戸)の専有面積は68.57~75.75㎡、価格は5,098万〜6,158万円。平均坪単価は280万円。竣工予定は2023年2月下旬。設計・監理は恒企画。施工は馬淵建設。
昨年10月から販売を開始しており、これまでに約7割を成約。地元居住者は約2割で、世田谷、中央、目黒、港区など都内が約5割を占めるなど広域から集客できているのが特徴だ。
現地は、第一種低層住居専用地域に指定されているように良好な戸建て住宅街の一角にあり、明治時代から地元の人によく知られていた噴水や池もあった別荘地跡地。同社は相対で用地を取得したが、豊富な湘南エリアでの供給実績がオーナーに評価されたという。
建物はロの字に近い回廊型で、周囲の地盤面より約1700ミリ高く整地したうえ、ユーロデザインを採用。サーフボード置場やシャワーブース、屋上スカイラウンジ、シーズンズガーデン、パーティーラウンジ、キッズルーム、アクアパティオなどの共用施設を整備し、100㎡プラン、奥行き4mバルコニー、ルーフバルコニー、屋上バルコニー、専用庭付きプランなど63タイプを提案。敷地北側には既存樹のマツも一部残している。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高約2440~2580ミリ、メーターモジュール廊下幅、御影石キッチン・洗面カウンタートップ、食洗機、大理石玄関床(プレミアム仕様)、ミストサウナ、タオル掛け2か所など。全開口サッシ・オープンエアリビング付きは21戸、オープンエアバルコニー付きは7戸。最上階住戸は逆梁ハイサッシを採用している。
モデルルーム
オープンエアリビングバルコニー
モデルルーム(趣味室の提案)
◇ ◆ ◇
坪単価は高いような気がしたが、最近の湘南エリアのマンションは価格がどんどん上昇しており、基本性能・設備仕様レベルは間違いなく水準以上だ。物件案内をしていただいた同社担当部長・星山淳吉氏とマンションギャラリー課長・松浦敬冶氏は「このところ販売スピードが上がっている」と話したように、購入検討者も周辺物件と比較して、エリアで希少の1低層のランドスケープデザインを含めてこの物件を選択しているのだろう。
もう一つ、これも人気の要因の一つと思われる「茅ヶ崎東海岸」に近いということだ。両氏には車で建設現場と現場から徒歩8分の茅ヶ崎海岸も見せていただいた。茅ヶ崎海岸に出たのは初めてだったが、防砂林の役割の大きさを知った。海岸沿いに走る国道の騒音はほとんど聞こえなかった。時間がゆったりと流れ、潮の香りと寄せては返す悠久の波を満喫した。次の「藤沢」の取材がなければ、丁重にお礼を言ってお別れを告げ、ビールでも飲みたかった。
この市民のプライベートビーチともいうべき海岸に近いというのも購入検討者を惹きつけたのだろうし、エリア一帯の地盤は固く、工事は直接基礎工法で済み、市の津波ハザードマップでも現地の「浸水深」はそれほどでないことも後押ししたのに違いない。(同マンションは津波避難ビルに指定されている)
タオル掛け2か所
建設現場
◇ ◆ ◇
これまでも何度も書いてきたが、記者は現場を見ないと成長・自立できない。成長・自立できなければ、いつお払い箱にあっても不思議でない不安定な立場に置かれていることを自覚すべきだ。事大主義に凝り固まり、プロパガンダのプレス・リリースのコピペ記事ばかり垂れ流してどうする。
記事の冒頭に、同社は毎年1,000戸前後を供給して完成在庫を出さないとも書いた。ジャーナリストを自称する貴殿または貴女、あなたはその理由を知りたくないのか。同社のモデルルームなどの販売現場を見ないと、その理由をつかむことは絶対できないだろう。
茅ヶ崎海岸沿いに走る国道(中央には富士山が見えたが、カメラは捉えていない)
茅ヶ崎海岸
大和地所レジ 茅ヶ崎の1低層で111戸 モデルルームオープン(2021/9/3)
3月の中古マンション 単価、価格の上昇続く 成約は大幅減少 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は4月10日、首都圏の2022年3月の不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は前年同月比19.5%減となり、3か月連続で前年同月を下回った。成約坪単価は10.8%、成約価格は8.4%それぞれ上昇し 単価は23か月連続、成約価格は22か月連続で前年同月を上回った。専有面積は前年同月比2.2%縮小した。
成約件数3,405件(前年同月比19.5%減少)を都県別にみると、東京都は1,806件(同18.7%減)、神奈川県は802件(同21.9%減)、埼玉県は392件(同19.3%減)、千葉県は405件(同18.0%減)といずれも大幅に減少した。
坪単価216万円(前年同月比10.8%上昇)を都県別にみると、東京都は291万円(同11.3%上昇)、神奈川県は165万円(同8.3%上昇)、埼玉県は134万円(同20.6%上昇)、千葉県は116万円(同12.3%上昇)。
成約価格4,158万円(前年同月比8.4%上昇)を都県別にみると、東京都は5,145万円(同6.4%上昇)、神奈川県は3,403万円(同8.1%上昇)、埼玉県は2,777万円(同21.5%上昇)、千葉県は2,582万円(同11.8%上昇)。
このほか、成約専有面積は63.58㎡(前年同月比2.2%減)となり、10か月連続して減少。在庫坪単価は240万円(前年同月比14.5%上昇)となり、50か月連続で前年同月を上回った。
中古一戸建ての成約件数は1,286件(前年同月比21.1%減)、成約価格は3,741万円(同7.9%上昇)、土地面積は138.91㎡(同3.5%減、建物面積は103.96㎡(同0.5%減)となり、価格は17か月連続で前年同月を上回った。
業界初 障がい者アート マンション購入者・検討者に販売 三井不レジデンシャル
三井不動産レジデンシャルは4月7日、パラアーティスト(=障がいをもったアーティスト)のアート作品を分譲マンションの共用部や棟内モデルルームの商談コーナーなどに展示し、入居者や購入検討者などが購入できるサービスを開始すると発表した。
障がいのある人がアートを仕事にできる環境をつくることを目的に2007年4月に設立された3つのNPOが共同で運営しているエイブルアート・カンパニーの協力を得て実施するもので、この種の取り組みは業界初。
第一弾は2022年3月から入居が始まった「パークホームズ横浜本郷台リバーサイドヴィラTHE EAST」(224戸)で、マンション共用部(ラウンジ・ゲストルーム・コンシェルジュカウンター)と棟内モデルルームの商談ルームにパラアーティストのアート作品6点を展示し、入居者・購入検討者が気に入ったアート作品を購入できるようにした。作品は3か月ごとに入れ替えるという。
今後、同社が分譲するマンションで展開し、作品販売などの売上の一部をパラアーティストに還元することでダイバーシティ&インクルージョン推進にも貢献していくとしている。
サービスを開始する背景として、同社は2021年7月から実施している「PARAART サブスクby studio FLAT」が利用者に好評だったことを上げている。
今回の取り組みについてエイブルアート・カンパニーは、「より身近にアートと触れ合っていただく機会になると感じています。みなさんの生活に彩りを添えることができれば嬉しいです」とコメント。同NPOは現在、登録アーティスト数116名、12,540点の作品を軸に活動を行っている。
◇ ◆ ◇
最高に素晴らしい。障がい者のアートといえば、業界ではもう20年間も継続している三菱地所の「キラキラっとアートコンクール」が知られている。記者は2015年に取材したとき「われわれは『障がい者』という色眼鏡で作品を観がちだが、それが誤りであることに気づかされるはずだ。レッテルを貼ることで伸びる芽を摘み取ることが怖い」と書いた。
今も同じだ。この際「障がい者」とは何かをさておくとして、世に知られる作家も画家も音楽家もあらゆる芸術家はなにがしらの〝障がい〟を抱えていた。ドストエフスキー、ゴッホ、ピカソ、山下清、ベートーベン…。健常者だって問題を抱えていない人はいない。
少し関連することだが、記者はマンションモデルルームなどの緑のフェイクをやめろとしつこく書いてきた。今回の三井レジの取り組みをきっかけとなって、本物のアートや観葉植物が配置されることを期待したい。
三菱地所 障がい者のアート作品展10月30日から全国6会場で開催(2015/10/29)
約300の質問に瞬時に回答 AIアバター(♀)開発 東急リバブル+ウェルヴィル
東急リバブルとウェルヴィルは4月4日、新築マンションの各種物件説明を営業担当に代わって会話を交わしながら説明できるAIアバターを開発したと発表した。
ウェルヴィルが開発した対話エンジン(LIFE TALK ENGINE )と東急リバブルの営業実績で培った知見を組み合わせたもので、物件情報(交通、周辺環境、構造・設備仕様、間取り等)の説明を、対話をしながら進めると同時に、お客様の質問や要望にも回答し、初期段階の接客を行う。約300通りのQ&Aも対話エンジンに組み込まれている。
対話エンジンは、人が発する言葉を文脈解析し、その意味を理解し、人の感情やストレス状態を認識し、必要に応じてインターネットや外部基幹システムから、回答となる情報を瞬時に文書圧縮した上で応答表現を生成し、自然な会話のペースで対応できるという。
東急リバブルは、今年度から自社物件の「ルジェンテ」シリーズの販売に導入するとともに、同社が受託販売する物件への順次拡大と、販売拠点の受付業務での利用も予定している。後述するように、アバターは女性(♀)であることが分かった。
◇ ◆ ◇
面白い取り組みだ。マンションデベロッパーはコロナ禍で、オンライン接客に力を入れているが、初期段階の対応に限れば、大幅な時間と労力(コスト)軽減につながっていると聞く。
今回、両社が開発したAIアバターがどれほどの対応力があるか分からないが、300項目について瞬時に答えられるとはたいした能力の持ち主だ。小生だって40年以上マンションを取材してきた。マンション購入検討者がどこに住んでいるか、職業は何か、勤務先はどこかなどの基本情報のほか、二言三言、数分間会話を交わしただけで、何が欠けているか、どのような物件を探しているか、取得限界はいくらかなどをはじき出すことだってできる。デベロッパーが良心的かそうでないかだって判断できる。
このアバターと小生とどちらのほうが優れているか、機会があったら一度対決してみたい。アバターさん、あなたは男か女か、年齢はいくつか、既婚か未婚か、宅建士の資格は持っているのか、リバブルのベテラン営業担当に負けない自信はあるのか、競合物件もアバターを起用したらあなたは勝つ自信があるのか、リビング天井高2500ミリは高いのか、タオル掛けはなくてもいいのか、住みたい街はどこか。答えによってあなたの能力を判断する。肝心なことだが、あなたが導き出す回答は「最適解」か。嘘をつくことは得意か(小生の嘘はすぐばれる)。
ついでに、早期完売した「ルジェンデ日暮里」の次にお勧めのマンションを教えてほしい。
◇ ◆ ◇
前段の記事について、小生は次のような質問を同社に送った。
①アバターは男性か女性か。未婚か既婚か、ユーザーの好みで選べるのか。300項目に答えるとありますが、答えられない質問はどのようなものか、具体例を挙げてください。
②宅建士の資格は持っていないと思いますが、かつて御社が何かでリリースしたように、営業経験5年のベテランに劣らない知見があるのでしょうか。
③システムの維持・管理コストはベテラン営業マンの年収よりはるかに低いと思いますが、いかがでしょうか。
④「日暮里」は完売されたようですが、お勧めの見学物件をアバターにお聞きしたいと思います。
この質問に、同社広報を通じて次の回答があった。
①アバターは女性です。選択はできません。基本的な物件情報以外は応えられません。
②交通、周辺環境、構造・設備仕様などの物件の基本情報の説明を正確にできる点と、会話のトーンや話し方も自然体にできるレベルで完成していますので、物件説明においては営業担当と同レベルで可能と考えています。お客様が希望された場合は、営業担当が行います。
③ランニングは6機分で月額18万円ほど。数に比例しての増額ではない。(1機10万円をベースに増やすごとに増額幅は縮まる)
④今後導入物件が増えれば可能ですが、現段階では難しいです。
なるほど。アバターに個人的なことを聞いても答えてくれないことが分かった。物件説明は営業担当と同レベルだが、天井高2500ミリが高いか低いかの「私見」は挟まないことも分かった。ランニングコストは6機で18万円ということは、アバターは一定の湿度と温度を保つ必要があり、エネルギー源としての電力も必要だろうが、執務スペースは最小限で済み、多分24時間勤務にも耐えられるほどタフで、過重労働に対して労基法を振りかざすこともしないだろうから、ものすごく雇いやすいということになるのだろう。
ただし、アバターによって職を脅かされる営業担当が反旗を翻し、かつてあったような一揆を起こし、打ち壊しの挙に出たらどうなるのか。だれかが仲介に動くのか、それとも果てしない戦いを繰り広げるのか。小生は東急リバブルにはたくさんRBA選手がいるので、営業担当を無条件に応援する。今のうちから旗幟を鮮明にしておく。どこかの国のように〝勝ち組〟に乗るようなことはしない。
「L'and+」企画ヒット 残り僅か〝そうなの!〟 東急リバブル「ルジェンテ日暮里」(2022/2/1)
坪270万円 第1期1次100戸 即完スタート 新日本建設など5社JV「ザ タワー」
「エクセレント ザ タワー」(右側は新日本建設の14階建て賃貸棟)
新日本建設など5社JVの「エクセレント ザ タワー」(397戸)を見学した。千葉駅の中心市街地の千葉パルコ跡地に建設中の31階建て商・住一体再開発マンションで、第1期1次100戸が即日完売するなど人気を呼んでいる。坪単価は270万円。全国に20ある政令指定都市の中では最安値圏レベルだ。
物件は、JR千葉駅から徒歩9分、千葉都市モノレール1号線葭川公園駅から徒歩2分、千葉市中央区中央二丁目の商業地域(許容建ぺい率80%、許容容積率800%)に位置する敷地面積約3,877㎡の31階建て全397戸(事業協力者住戸6戸含む)。4月中旬に分譲予定の第2期(戸数未定)の専有面積は32.44~100.84㎡、予定価格は2,800万円台~1億500万円台(最多価格帯4,900万円台)。坪単価は270万円。建物竣工予定は2023年12月中旬。売主は同社(事業比率60%)のほか中央日本土地建物(同15%)、あなぶきホームライフ(同10%)、長谷工コーポレーション(同10%)、東方地所(同5%)。設計・施工・監理は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
モデルルームオープンは1月中旬。これまで約600組の来場者があり、うち15~18%は都内居住者。都内居住者は、価格・単価が安い前建がある東向き・西向き下層階住戸を希望する人が多いという。3月上旬に分譲開始した第1期1次100戸は最高15倍で即日完売している。
現地は、銀行や文化センター、美術館などが建ち並ぶ千葉駅の中心市街地の一角。敷地は2016年に閉店した千葉パルコ跡地。道路を挟んだ北側は中央公園と三井ガーデンホテル。
建物は1~2階が店舗など、3階がエントランス、ガーデンテラスのほか各種の共用施設。住戸は4階から。主な基本性能・設備仕様は、制震構造、二重床・二重天井、リビング天井高2450ミリ(1LDK住戸)・2650ミリ(4~29階の標準階)・2800ミリ(30・31階プレミアム住戸)、ディスポーザー、食洗機、オートロック顔認証、浴室タオル掛け2か所など。共用施設としてパーティルーム、キッズルーム、ライブラリー、フィットネスルーム、ゲストルーム(2戸)など。
同社マンション販売部マンション販売第二部理事部長・田中正宣氏は、「『エクセレント』の冠付きでは当社最大規模。売りづらいと考えていた前建・下層階住戸は投資目的で購入される方が多く、坪単価360万円の100㎡も4倍の倍率が付きました。8戸ある億ションはまもなく販売終了します。竣工する2023年12月までに売り切るのが目標。在庫を残さないのは当社の基本姿勢。施工を長谷工さんにお願いしたのは、建設コストを抑制し、かつ設備仕様レベルを当社基準にするため」と話した。
モデルルーム
◇ ◆ ◇
坪単価は270~280万円くらいになりそうなのを事前に聞いており、モデルルームを見学する前までは〝質〟が心配だったが、72㎡のモデルルームはこの単価水準では間違いなく上位だ。標準階のリビング・居室天井高が2650ミリというのが何よりもいい。28戸ある北向きの32㎡の1LDKタイプでも床暖房、食洗機、三ツ口コンロ付き。浴室タオル掛け2か所は同社の標準装備だそうだ。
売れ行きに関連するので、同社の業績について少し触れる。2021年3月期決算は売上高1,017億円(前期比9.6%減)、営業利益139億円(同4.1%減)、経常利益139億円(同4.6%減)、純利益96億円(同8.6%減)。このうちマンションなどの開発事業は売上高452億円、営業利益83億円(セグメント利益率18.4%)となっており、利益率は他のデベロッパーと比較してトップクラスだ。
また、マーキュリーリアルテックイノベーター調査によると、2021年の首都圏マンションランキングで、同社は事業主別で第4位の1,153戸だ。地盤とする千葉県に限れば、事業主別でトップの695戸になっており、2位・三井不動産レジデンシャルの435戸以下を引き離している。
特筆できるのは、これほど多く供給しても同社は「完成在庫は毎期ほとんどゼロ」(田中氏)ということだ。供給量が多いデベロッパーで完成在庫が極端に少ないのは三井不動産レジデンシャルや東京建物のほかモリモト、大和地所レジデンス、ポラス中央住宅くらいしか記者は知らない。
これが高い利益率を確保できている要因の一つで、地域を熟知した仕入れ-企画-設計・施工-分譲-管理までの「自社製販一貫責任体制」が奏功していると見た。今回の「エクセレント ザ タワー」の施工は自社ではなく、長谷工コーポとし、しかも設備仕様などは長谷工コーポの「アイセルコ」ではなく自前で調達していることにもそれは読み取れる。
タオル掛けはちゃんと2か所についていた
建設現地(中央公園から写す。右後方はオリックス不動産が分譲したマンション)
◇ ◆ ◇
千葉駅前では、千葉駅前大通りに面した三越千葉店跡の再開発事業も進んでいるようだ。敷地面積は約3,804㎡で、23階建てマンション491戸と看板にはあった。施工はファーストコーポレーションで、デベロッパーは東京建物、野村不動産、中央住宅。
いつ分譲されるか分からないが、立地条件からしてこちらは坪単価300万円を突破するのではないか。
三越千葉店跡地の再開発マンション建設現地
◇ ◆ ◇
取材を終えたのは昼頃だった。一服しようと現地に隣接する三井ガーデンホテルに立ち寄った。喫煙もアルコールも不可だったので、喫煙室もあるダイワロイネットホテル千葉駅前の1階のレストランに入り、白のグラスワインを注文した。今まで飲んだことのないかなり渋みが強い味がした。
吃驚したのは値段だった。消費税込みで何と286円。マンション相場は都内より2~3割安い千葉と関係があるのかどうかは不明。
坪300万円の壁厚く…駅2分のマリモ「千葉駅前」はいくらか 競合物件は早期完売狙う(2022/1/17)
坪240万円で5000万円台の3LDK(70㎡台) 城東とも競合 コスモスイニシア「和光」
「イニシア和光」
コスモスイニシアが分譲中の「イニシア和光」を見学した。アドレスは「埼玉県和光市」だが、最寄り駅は板橋区の「地下鉄成増駅」で、隣接する公園とのとの生物多様性保全の取り組みを行い、居住棟と渡り廊下でつながっているクラブハウス付き共用ガーデンを整備しているのが特徴だ。
物件は、有楽町線・副都心線地下鉄成増駅から徒歩10分、東武東上線成増駅から徒歩13分、東武東上線和光市駅から徒歩21分、和光市白子2丁目の第1種住居地域、準住居地域に位置する敷地面積約3,839㎡、地下1階・地上8階建て全100戸。先着順で分譲中の住戸(6戸)の専有面積は68.38~90.15㎡、価格は4,948万~6,558万円、坪単価は240万円。建物は2021年11月に竣工済み。施工は大豊建設。
2020年9月から販売を開始しており、現在、残りは28戸。来場者は約700組。購入者の約6割が30代のプレファミリーだが、単身者も約1割。居住地は和光市が10%、板橋区と練馬区が各15%、その他、同じような価格帯の都心から同心円状のエリアに広がっている。
現地は東京都板橋区と埼玉県和光市の都県境に位置しており、「大坂ふれあいの森」公園に隣接。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、リビング天井高2450ミリ、食洗機、ミストサウナ、浴室タオル掛け2か所など。共用施設として多目的に利用できる約90㎡のクラブハウスと共用ガーデン「もりラボ」を整備している。
同社分譲事業部分譲一部プロジェクトマネージャー・宮川香織氏は、「購入者の方に評価されているのは、70㎡以上の広い3LDKと都心への交通利便性、5,000万円台の価格。近接する物件のほか、価格帯がほぼ同じの都心部から同心円状の城東エリアなどとも競合しています。広さを求める単身者の購入も約1割に達しています」と語っている。
エントランスホール(木の香りと光の演出がなかなかいい。壁は左官仕上げ)
クラブハウス
◇ ◆ ◇
この物件について同社は竣工時にプレス・リリースを発表しており、記事にもしているのでそちらも参照していただきたい。これほどの規模で、別棟の約90㎡のクラブハウスを備えているのは価値がある。
嬉しかったのは、浴室にタオル掛けが2か所ついていたことだ。同社はタオル掛け2か所を標準としているようだ。こういうところに企業姿勢が表れる。ミストサウナもついていたのには驚いた。
宮川氏に聞けばよかったのだが、どうして物件名が「和光」なのかは不思議に思った。
不動産公正取引協議会連合会の自主規制「不動産の表示に関する公正競争規約」の物件の名称の使用基準には、「当該物件の最寄りの駅、停留場又は停留所の名称を用いることができる」とあるように、デベロッパーはポテンシャルにもよるが、物件の名称を物件が所在するアドレスより最寄り駅名を使用するケースのほうが圧倒的に多い。
典型的な例としては「ひばりヶ丘」がそうで、物件所在地は埼玉県新座市でも物件名に西武池袋線の「ひばりヶ丘」を使用するのがほとんどだ。ずいぶん昔だが、最寄り駅は東急東横線「二子新地駅」なのに、物件名に「二子玉川」を使ったマンションがあった。
今回のケースでは、記者が企画を担当したら「イニシア成増 和光の丘(あるいは森)」とでもする。公取規約に違反しないはずだ。「成増」と「和光」の訴求力は、「川口」と「赤羽」くらいの差があるのではないか。
本旨ではないので書かないが、マンション敷地と隣接公園の境には金網が張り巡らされていた。よくある光景だが、公園は地域居住者に開かれているはずなのに、どこも管理を優先して垣根を設け、居住者から遠ざけようとしている。
都市公園の利用実態調査報告などもほとんどない。国土交通省の平成26年度都市公園利用実態調査は273か所しかなく、しかもアンケートなどが主体だが、これによると「特に不満はない」は50%台で、街区公園、近隣公園などの公園利用率は10%前後にとどまっている。これを逆読みすると、都市公園を利用する人は利用想定圏内のわずか10%くらいしかいなく、しかも満足している人は半分しかないということになる。これが民間施設ならみんな破綻するのだが、指定管理者制度を導入しているのは46%しかなく、民間活力を活用しているのは18.2%しかない。
記者はコロナ禍でもっとも安心して飲食・喫煙できるのは公園だと思っているが、喫煙・飲食を禁止する公園はむしろ増えているはずだ…〝そして誰もいなくなった〟に限りなく近づいている。その一方で、公園とマンション・施設との垣根を取っ払った事例の記事も添付する。
浴室のタオル掛け
渡り廊下(その後方左の白い建物がクラブハウス、右後方は市民にも公開しているガーデン。そのガーデンと公園の間には金網が張られている)
隣接公園との生物多様性保全の取り組み コスモスイニシア「和光」完成(2021/12/25)
出来すぎだ!焼杉! 見どころ多い小田急バス×ブルースタジオ「hocco(ホッコ)」(2021/10/7)
「街のシンボルになる」来場者 公園との垣根なくしたフージャース「つくば」に感動(2021/4/28)