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わが家の庭のアジサイとマーガレット

今日618日は、小生が現役作家の中でもっとも好きな丸山健二さんの代表的作品「千日の瑠璃《究極版》」(求龍堂、上下巻分冊)の主人公・少年世一の命日だ。

「《世一》という少年の一粒の命が照らす、「この世」という凡庸であっても網の目のように込み入った世界の中で、生と死が、光と闇が生まれては消えてゆく……『私は風だ』という出だしから始まり、『私は棺だ』『私は口実だ』『私は生ビールだ』『私は退廃だ』……1000通りの語り部で綴られる『千日の瑠璃』が、22年ぶりに大改造が加えられ、鮮やかな色彩と感情の交錯する圧倒的な存在感をもって復活。改造作業を終えた丸山健二が筆を置き難かったという、《世一》の短くも輝き通した人生の物語。2014年に古希を迎えた丸山健二の記念碑的作品」(ブックレビュー)に嘘はない。上下巻それぞれ1000ページもあり、値段も少し高い(各3,080円)が、間違いなく価格以上の価値がある。以下に少年世一が空高く舞い上がるクライマックスシーンを紹介する。

私は揚力だ。

うたかた湖に面した崖っぷちにある揺らぎ岩、そのてっぺんによじ登った少年世一が確認するところの、揚力だ。

岩の揺れは世一の体の震えのせいで一段と増し、いつ落下しても不思議はないほどになっている。

しかし、飛ぶのは世一であって、岩などではない。

飛行に際して世一は、籠をいっぱいに開けてオオルリを空へと放つ。

それは初夏の光のなかでまさしく瑠璃色の塊と化す。

そして、一度も振り返らず、一度も旋回しないで、世一が目指そうとする方角へ一直線に飛び去り、現し世の青に吸い込まれて消える。

もはや世一の目が地上に向けられることはない。

百数十メートル下には、先日の雨が新たに崩した尖った岩がごろごろしている。

その向こうには湖岸に沿った硬い道路があり、うたかた湖はそのもっと先に横たわっている。

転がり落ちた岩はどれも、湖どころか道路までも届いたためしがないのだ。だが、今、世一の頭は湖の水でいっぱいに満たされている。

やがて、揺らぎ岩がかつてなかった角度で傾く。

世一はその動きに逆らわない。

むしろ体を前に倒してゆき、限界に達したところで、やおら光のなかへ飛び出して行く。

痙攣が両腕に集中する。

そこまで信じられたからには何もしないわけにはゆかず、私は少しでも滞空時間を延ばそうとする。

せめて頭髪が変色した分だけは羽ばたきを支えようと頑張る。

上昇気流が異常なまでに強まったせいもあって、世一は今、漠々として計りがたい空間の一角を、紛うことなく飛翔しているのだ。

文壇とは一線を画し「孤高の作家」と呼ばれる丸山さんは今年77歳。最新刊「ブラック・ハイビスカス」全4巻がいぬわし書房から近く発刊されると聞いている。メルヴィルの「白鯨」を超訳した「白鯨物語」(眞人堂)もお勧めだ。

わが国の作家でノーベル文学賞を受賞するなら丸山さんしかいないと思うが、〝言霊の魔術師〟の文学を海外に翻訳できる人はいないのが残念。

 

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 国土交通省は6月16日、「国土交通省組織令の一部を改正する政令」が閣議決定されたことを受け、組織変更を行うと発表した。施行日は令和2年7月1日。

 現在の「土地・建設産業局」を再編・強化するため「不動産・建設経済局」を新設。「不動産業政策」「建設産業政策」「土地政策」の3つの政策分野で、市場原理では十分に調整されない社会問題の解決に取り組むとともに国土インフラストックが適切に利用・管理される環境を構築する。

 このほか、人口減少、高齢化に伴う様々な問題に対応するため大臣官房土地政策審議官を新設し、省内外のハイレベルな調整・連携を実施するため、大臣官房に置かれる審議官を一人追加する。

◇       ◆     ◇

 ずっと不動産業を取材してきたので、呼称変更は大賛成。ただ、略称をどうするかでまた困ってしまいそうだ。

 現在、業界メディアは「土地・建設産業局」を〝土建局〟と呼ぶ。しかし、小生などは〝土建〟という言葉に抵抗感があり、口にすることもはばかられるので、そう呼んだことはほとんどない。

 困ったのは「国交省土地・建設産業局」の後に続く担当者名だ。一般的には「・(ナカグロ)」を用いるのだが、「国交省土地・建設産業局」ですでに「・」を使っているので、仕方なく「半角(1文字の半分)スペース」を空けて処理してきた。

 新たな組織にも「・」が付く。略称もまた難しい。〝不建局(フケンキョク)〟〝不建経局(フケンケイキョク)〟でも具合が悪い。業界紙の記者の方はどう呼ぶのだろう。

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 東京都の新型コロナウイルスの感染者数は6月15日現在、年代別では20代が最多となっており、これまで最多だった30代を上回ったことが分かった。

 別表は、東京都の新型コロナウイルス感染者属性のオープンデータを年代別・性別に分けたもので、年代では20代が1,089人となり、30代の1,012人を上回っている。

 年代別・性別では593人の30代男性が最多。以下、575人の30代男性、553人の20代男性の順。女性の年代別では20代が536人で最多。

 これまで年代別感染者は感染当初からずっと30代が最多だったが、この10日間の感染者は20代が120人なのに対し30代は55人にとどまっているのが逆転現象を生んだ。 

※東京都の公表感染者数は6月15日現在5,592人だが、少なくとも1人が重複しており、データでは5,593人となっている。

新型コロナ感染者 宣言解除後は20代男性が最多〝夜の街〟自粛呼びかけ 効果あるか(2020/6/7)

カテゴリ: 2020年度

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新型コロナの緊急事態宣言が525日に解除されて15日(613日現在)が経過した。メディアは連日のように〝夜の街〟を報じている。果たして感染者は減るのか増えるのか、〝第2派〟は来るのか来ないのか、考えるうえで参考となりそうなテータを示す。

別表は、緊急事態宣言解除前(before)と解除後(after)の東京都の年代別・性別感染者数をまとめたものだ。感染者数はbefore201人からafter346人に約72%増加しているが、年代・性別で見ると、大きな変化がある。

年代別で見ると10歳未満、10代、6080代はほとんど数値は変わっていない。大きく変わっているのは2050代の生産年齢層で、20代は55人から125人へ約2.3倍、30代は31人から86人へ約2.8倍に増加している。この20代と30代の層だけでafterの総数の61%を占めている。

さらに性別で見ると、顕著な傾向が表れている。20代男性はbefore16人からafter81人へと5倍に激増。30代男性もbefore14人からafter66人へと4.7倍に増えている。この20代と30代の男性が解除後の感染者増加の〝悪玉〟に仕立て上げられていると言えそうだ。

もう一つ、不気味なのが20代の女性だ。before39人からafter44人へ数字としては微増だが、そもそもbeforeの数字は他の性別と比較して断トツの数字だった。

これが何を意味するか、これ以上深入りしない。安倍首相や小池都知事のメッセージは若者にどう届いているのか。安倍首相と小池都知事の記者会見の発言を添付する。

■安倍首相

「3つの密が濃厚な形で重なる夜の繁華街における接待を伴う飲食店、ライブハウスなど、これまで集団感染が確認された場所へ出かけることは、引き続き自粛をお願いすることとなると考えます」(54日)

「3つの密が濃厚な形で重なり、これまでも集団感染が確認された夜の繁華街の接待を伴う飲食店、バーやナイトクラブ、ライブハウスなどについては、御協力を頂いていることに感謝申し上げます。こうした施設も、専門家の皆さんに御協力いただきながら、来月中旬をめどにガイドラインを策定し、上限200万円の補助金により、有効な感染防止対策が講じられるよう支援する考えです。それまでの間、どうか身を守る行動を続けていただきますようにお願いいたします」(525日)

■小池都知事

「繁華街におけます夜の街、クラスターとの関連が判明している方が結構おられます」「このところの感染者に、結構若い方々が多いのも事実でございまして、よって、繁華街、特に夜の繁華街への外出については、十分にご注意いただきたい」(529日)

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 大京穴吹不動産は6月9日、2017年3月から始めたリースバック事業「買い取り賃貸居住サービス」の名称を「大京穴吹不動産のリースバック“売っても住まいる”」に変更するとともに、サービス専用サイトを開設したと発表した。

 査定額は、年間1,500件以上の叱責がある通常買い取り査定額と同等で、賃貸借契約は1年、2年、5年から選択 可能(延長、更新、再契約不可)。賃借料は同社独自の基準で算出する。敷金は3カ月、礼金、原状回復なし。2020年6月からは定期的に「リースバック」関連のセミナーを開催する予定。

 同社はサービス開始から約3年で340件以上のリースバックの実績がある。

 リースバック事業へは、4月に一建設、5月にケイアイスター不動産、6月にポラスグループの中央住宅がそれぞれ参入を発表。〝全員参加型〟の様相を呈してきた。

◇       ◆     ◇

 各社のサービス内容がよく分からないので何とも言えないのだが、記者は韓国の賃貸借契約を参考にしたらどうかと考えている。韓国には、わが国と同じような賃料の月払い方式(ウォルセ)のほかに、住宅価格の30~60%を賃貸借契約時に保証金として預け、退去時に全額払い戻される保証金方式(チョンセ)があるという。

 この保証金方式(チョンセ)に倣えば、リースバック契約時に買い取り価格を約定し、賃貸借期間中の賃料を無料にしたらどうかという提案だ。買い取り価格は業者の目利き力(顧客も同じだが)が試されるが、契約の透明性を高めることは双方にメリットがあるのではないか。

全員参加型へ ポラス中央住宅 自社契約者対象にリースバック事業開始(2020/6/1)

新型コロナ収束後 リースバックが激増の予感 利用者は足元見られないか(2020/4/23)

 

 


 

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 「東京アラート」が発令されてもなかなか新型コロナ感染者が減らない。それどころか、小池百合子都知事の発言をきっかけに俄然〝夜の街〟がクローズアップされ、夜の黒(闇)と強烈な赤のせめぎあいが不気味さを増している。

記者の記憶に間違いがなければ、それまでの「接客を伴う飲食業」というオブラートに包まれた言葉から〝夜の街〟へと一歩踏み込み、さらに「新宿」(歌舞伎町)を結び付けたのは東京アラートを発令した62日の発言ではなかったか。

小池都知事は、この日開かれた新型コロナウイルス感染症対策本部会議で「新規感染者34人のうち、一定の割合の方がいわゆる夜の街関連と見られており、うち約半数が新宿エリアの飲食・接客関係者という報告を受けている」と言及。初めて〝夜の街〟と新宿を結び付けた。同日夜の会見でも「かねてより申し上げている夜の街の関連。新宿エリアの飲食・接客業関係者が多い」と述べた。

そして64日、自らのface bookで「このところ若い世代の新規感染が増加傾向で、特にホストクラブなど夜の街での感染が一定数確認されています」と綴った。

翌日の65日には「都民の皆さんに対して街頭での注意喚起、それから周辺区域での呼び掛けをいたします」とし、同日19時から歌舞伎町周辺で多羅尾 光睦副知事を先頭に都民に自粛を呼びかけた。

メディアの〝夜の街〟についての質問には「なかなかこの辺の表現が難しゅうございます。夜の街といっても、もう本当にしっかり対応していただいているところも、老舗のお店などがあったりもしますし、片や、あまり頓着していないようなところもあることも聞いております。いわゆる夜の街ですけれども、過去にクラスターが発生されたとされます接待を伴う飲食店、分かりやすく表現したものであります」とし、「それを利用する側に気を付けていただくのが一番効果的ではないかというふうに思っており」と説明した。

都の発表によれば、531日~66日の1週間の感染者138人のうち〝夜の街〟関連の感染者は56人で4割を占めるという。

       ◆     ◇

記者は、「新宿二丁目」のバーには何度か入ったことがあるが、さすがにホストクラブは一度も利用したことがない。「利用者」とはどのような人か小池都知事がご存じかどうか分からないが、圧倒的に多いのは〝稼ぎ〟がいい若い女性の風俗関係者だと言われている。

そこで調べてみた。別表は緊急事態宣言が解除された525日から66日までと、宣言解除前のそれぞれ13日間の感染者属性を見たものだ。

驚くべき結果が出た。宣言解除後の若者、とくに20代の男性が激増しているのだ。解除前は11人だったのが、解除後は48人へ約4.4倍に増加し、年代別・性別で最多となり、全体に占める割合も7.5%から22.0%へと増えている。30代の男性もほぼ同様に11人から40人に激増している。

解除前の13日間で27人と他の年代・性別で最多だった20代女性はどうかというと、24人へと若干減少はしたが、20代男性、30代男性に次ぐ多さだ。

この数値は小池都知事が危惧する〝夜の街〟関連と符合するかどうか断定はできないが、無関係でないことは明らかだ。名指しされたホストクラブ従事者(多分若い男性)がやはり利用者の若い女性に感染しないかどうか心配だ。

なぜ若い男女の感染者が多いかはこれ以上書かない。一つだけ言えるのは、〝夜の街〟関係者も働かなければ生きていけないということであり、生活に余裕がない人が多いからではないか。〝夜の街〟自粛の呼びかけだけで減るかどうか疑問だ。

若い男女に小池都知事の声は届いているのか、みんなで考えるべきだ。

新型コロナ「東京アラート」発動 都知事〝夜の街〟強調/大阪府は20代の女性が最多(2020/6/3

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〝不平等社会〟あぶりだす新型コロナ 5月の感染者 年代・性別で最多は20代女性(2020/5/18

新型コロナ 感染経路不明者が減らない理由 〝闇社会〟〝二重就業〟も一因(2020/5/11

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 旭化成ホームズのくらしノベーション研究所は65日、在宅ワークにおけるくらしの現状についての調査結果をまとめ発表した。調査の結果は次の通り。

・在宅ワークで増えたのは「子供や家族とのコミュニケーション時間」「自分の自由な時間」「睡眠」

・在宅ワークによる生活時間の変化は、夕食時間が1時間近く早まる。一方で就寝時間に大きな差はなし

・在宅ワークを行う場所は、戸建では個室派5割強、賃貸および戸建で子がいる女性はLD派7割強

・在宅ワークで行う行為は「PC」「電話」「手書き」が上位3位。次いで「資料を広げる」「WEB会議」

→在宅ワークでも仕事内容により「個人作業」「(人と関わる)会議・電話」に分かれる

・在宅ワークに求めるのは「集中できる環境」「静かな環境」「机周りの広さ」。個室派よりもLD派で多い項目は「家族の気配が分かる」「見守りながら仕事ができる環境」

・在宅ワークの困りごとは「日常生活との切り替えがしにくい」。特に女性では7割にのぼる

調査時期は410日~413(左記に加え422日~27日一部設問追加)で、対象は週7時間以上働いている2069歳の男女約3,800名。持家と賃貸居住者の割合はほぼ同数。

       ◆     ◇

 調査結果は、他社・他団体のテレワーク・リモートワーク調査結果と同じような傾向がみられるが、興味深いのはテレワークを行う場所で、持家派の54%は個室なのに対し、持家と賃貸及び子育てファミリーの72%はLDであることだ。

 フリーアンサーでは、個室派では生活空間と切り分けた静かな環境やこもり感など就業環境の充実を満足点とする一方、仕事空間としての整備が不十分な点を不満点とし、LD派は家族とのコミュニケーションや家事育児との両立、開放的な空間に対して満足を感じている一方、家族に対する影響への心配やWeb会議が制限されることを不満点として挙げているという。

 記者はもう30年以上テレワーク(以前は1週間に1日)を行っており、記事が書ければどんな環境でも構わない。集中しているときは周囲の雑音など全然気にならない。1時間くらい記事を書き、息継ぎのタバコを吸うのがいつものパターンだ。今年はまだだが、プロ野球中継が始まると仕事にならない。

 各社のテレワークスペースの提案では、コスモスイニシアがリノベーションマンション「エド・コモン西早稲田」に採用した「ドマワーク」が素晴らしいと思った。

コスモスイニシアとリコー共創 住空間×働き方テーマに新提案 リノベに採用(2020/4/3

 

 

 

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国土交通省は65日、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける飲食店などを支援するための緊急措置として路上利用の占用許可基準を緩和すると発表した。

地方公共団体と地域住民・団体などが一体となって取り組む場合、①新型コロナウイルス感染症対策のための暫定的な営業であること②「3密」の回避や「新しい生活様式」の定着に対応すること③テイクアウト、テラス営業などのための仮設施設の設置であること④施設付近の清掃などに協力いただけること条件に、歩道空間の確保など一定の条件を満たせば占用料を無料にする。占用期限は令和2年1130日まで。

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奥村氏(奥村建築再生設計事務所ホームページから)

本日(65日)、奥村建築再生設計事務所代表・奥村誠一氏から次のようなメールを頂いた。ご本人の了解を頂いたので紹介する。

奥村氏は今年331日付で、20年間所属していた前職である青木茂建築工房を退職し、41日に奥村誠一建築再生設計事務所を創業した。

       ◆     ◇

私が何かことを始めようとすると、いつも壁が立ちはだかります。

私が建築家になることを夢見て大学に入学した1994年の直前にバブルが弾け、2000年に社会人になった時から日本は失われた20年が始まり、東京に来た2011年に東日本大震災が起こったために引越しが遅れ、2020年に起業するとコロナ禍により未曽有の状況で非常事態宣言が発出されました。

これまでも、これらの壁にぶつかりながら、もがきながらも一つ一つクリアしてきたと思っています。難しい局面はチャンスでもあるとも思っています。

今回の非常事態宣言の解除に基づき東京都はステップ2を発表し、当社もいよいよ本格始動となります。

私の人生の大きなターニングポイントは建築家である青木茂先生の門戸を叩いたところにあり、建築の再生を設計する魅力に気づかされました。

建築の再生を設計することで少しでも社会の役に立つことが魅力であり、楽しさであり、その社会的意義は大きいと考えます。

このような思いを込めて、建築の再生を設計する事務所として、社名を奥村誠一建築再生設計事務所と命名いたしました。

これまでたくさんの人に出会い、多くの人の助けを受け、今の私があります。

みなさまとの出会いがなければ、今の私はないと考えています。

今後も、微力ながら、環境循環型社会に向けて、社会貢献ができればと考えています。

また、今年度は,東京大学で教鞭をとる機会を与えていただいており、建築の再生を設計することについての魅力について、学生さんにも伝えることができればと考えております。

これらの学術的な活動や社会活動を通じて、建築再生の一般化を目指していく所存です。

       ◆     ◇

奥村氏が退職し、事務所を設立することは青木茂先生ご自身からメールで知らされていた。

青木先生は「2000年に我が社に入社しました奥村誠一君が、331日をもって退職し独立することになりました。

20年間心身ともに私を助けてくれ、事務所の運営や作品造と献身的な仕事をしていただきました。

私の初期、つまりリファイニング建築の初期から今日まで、技術確立の柱として支えていただきました。

リファイニング建築の作品では八女多世代交流館の設計アシスタントから、彼が最後に担当した、協働会館まで一貫してリファイニング建築の顔となる仕事を担当してくれました。

その間に一級建築士を取得、そしてアトリエ事務所としてはなかなか取得が難しいと思いましたが、首都大学東京に社会人で博士課程に進学して、角田誠教授の指導をいただきながら博士の学位も取得いたしました。

彼の努力への敬意をするとともに、独立後は、もちろん私の事務所の手伝いもしてもらいますが、リファニング建築の技術は今後社会に必要とされていると思いますので、ウィングを広げなければなりません。

そのような意味でも彼の独立は大変良い機会ではないかと思います。

ただ新型コロナの真っ最中ですし、建築界も油断のできない時期に入っております。皆様方のご協力が必要と考えています。

是非応援とご支援の方よろしくお願いいたします」と綴っている。

       ◆     ◇

 奥村氏に初めてお会いしたのはいつだったか思い出せないのだが、おそらく記者が驚愕した7年前の「千駄ヶ谷のリファイニング建築」現場見学会あたりからではないかと思う。「リファイニング建築」の魅力に取りつかれた記者はその後現在まで約20回記事にしている。(RBAタイムズ」にアクセスし、「青木茂」で検索していただくと全ての記事が読めるはずなので、興味のある方はそちらも参照していただきたい)

 この間、ずっと考えていたのは青木先生の後継者のことだった。

 青木先生は2014年に都庁で行われた「首都大学東京 リーディングプロジェクト最終成果報告会」で、リファイニング技術の伝承、雇用の促進、耐震診断のデータベース化、現行法との矛盾の解消、教育の重視性などを強調された。そして20183月に首都大学東京特任教授を退官されたときも「リファイニング建築はマニュアルや指針はまだ日本にはない。調査・企画・再生設計・工事監理の一連の流れと、金融機関との資金調達の枠組みは構築できた。優秀なスタッフも育っており次の世代へつなげたい」と語った。

 今年72歳の青木先生はまだまだお元気そうで、いまネットで調べたら椙山女学園大学客員教授、大連理工大学客員教授、日本文理大学客員教授、韓国モグォン大学特任教授などを務められているので、リファイニング建築は若い建築家に引き継がれるのだろうが、奥村氏の独立はその第一歩になるのだろう。

厳しい船出だが、青木先生の持論は、「意匠も外観は30年で見直し、内観も510年ごとに手を入れるべき」という「30×4120年ターム」説だ。今年は戦後の復興期からほぼ60年、バブル崩壊からちょうど30年目だ。新型コロナはこれまでの社会経済のあり方を根底的に覆し、新しい体制に移行することを促している。いわば第三段階の入り口だ。「建築の再生を設計する事務所」としてまたとない機会ではないか。新しい風を吹かせていただきたい。

 奥村建築再生設計事務所のホームページは次の通り。www.kenchikusaisei.com

リファイニング建築の考案者 首都大学東京特任教授・青木茂氏が退官へ 記念講演会(2018/2/13

全てが腑に落ちる 首都大学東京「リーディングプロジェクト最終成果報告会」(2014/3/19

千駄ヶ谷のリファイニング建築に見学者300人(2013/11/12

 

 

 

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  野村不動産は64日、企業や有識者とともにこれからの新しいオフィスの在り方や価値を探る「HUMAN FIRST 研究所」を設立したと発表。同時にWithコロナ時代の働く場所と生産性 に関する 意識調査結果を公開した。

HUMAN FIRST」とは、価値創造社会を生き抜くために、働く人の気持ちに寄り添い、個の能力を最大限発揮できる(=人の潜在能力を解放する)オフィスとサービスを提供するという事業思想。

人の潜在能力を解放する方法として①デザインやテクノロジーの力で、人間が保有する能力を120%、150%へと高める「人間進化」という考え方②個々の能力を100%発揮できる状態に取り戻す「人間回帰」という2つのアプローチを通じて、社員一人当たりの生産性 UP(付加価値/投下時間)を目指す。

研究所の設立にあたり、東京と大阪で働くオフィスワーカー 624名を対象に、「働く場所と生産性に関する意識調査」を実施した結果、①緊急事態宣言下の在宅勤務のパフォーマンスについて57.5%が「よくできている」と回答。メリットの上位は「自分のペースで仕事ができる(83.2%)」「家族や余暇に使える時間が増える(81.5%)」など。デメリットの上位は「運動不足(79.9%)」「勤務時間とプライベートの切り替えが難しい(62.0%)」など②「オフィスに毎日出社すべき」と考える人の割合は、 緊急事態宣言前(40.4%)から緊急事態宣言解除後(6.9%)にかけて大幅に低下。「オフィス、在宅、サテライトを組み合わせた活用がよい」と考える人(72.4%)が大多数③緊急事態宣言以前と比べ、 オフィスに求める価値として上昇したのは、「リラックスして仕事ができる場所(+13.1pt)」「ワークライフバランスが実現できる場所(+12.2pt)」としての役割など。

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