国交省「日本らしく美しい景観づくり懇談会」 卯月委員長も感動

「日本らしく美しい景観づくりに関する懇談会」
「スポーツを使えば景観に貢献できる」トレイルランナー鏑木氏
国土交通省は12月19日、第5回「日本らしく美しい景観づくりに関する懇談会」(委員長:卯月盛夫早大教授・参加のデザイン研究所所長)を開き、東大大学院教授・出口敦氏、静岡県交通基盤部都市局長・石川亨氏、トレイルランナー・鏑木毅氏が「富士山等の広域的景観資源の保全施策をどう展開すべきか」を中心テーマにプレゼンテーションを行い、各委員が話し合った。
今回で大きなテーマに沿って話し合うのは最終で、27年度には第一次の取りまとめを行う予定。
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この「懇談会」にはずっと注目していた。「日本らしくて美しい景観…」というタイトルがいいではないか。「(日本)らしく」という形容詞型の助動詞と「美しい」という形容詞が「景観」に掛かる。いったい「日本らしい景観」「美しい景観」とはなんぞやという悩ましい問いに「懇談会」はどのような答えを示してくれるのだろうかと考えるとわくわくもする。
しかし、その一方で、普遍的で絶対的な美などこの世の中に存在しないし、文化や歴史、個人の審美眼によっても「美」は異なってくる。それこそ十人十色、三者三様、百人百様だ。
わが国の自然を対象にした100選を拾ってみると、「美しい日本のむら景観百選」(農水省)、「日本百名山」(深田久弥の随筆)「日本百名橋」(松村博氏)「日本名水百選」(環境省)「日本の自然100選」(朝日新聞社)「日本街路樹100景」(読売新聞社)「日本の白砂青松100選」(日本の松の緑を守る会)「名木100選」(各都道府県)などほとんど全ての景観がランキングされているが、その基準もいまひとつはっきりしない。記者は生まれ育った田舎の風景・風土が一番美しいと思っている。
だから、懇談会もこれが〝日本らしくて美しい景観〟といったような包括的な答えは出さないだろうし、目的もまた景観法が施行されて10年を振り返り、課題を明らかにし、将来につなげようということのようだ。
とはいえ、今回の懇談会は大収穫だった。卯月委員長はプレゼンターの話とプロジェクターに映し出された画像に「感動した」と話したように会は盛り上がり、予定されていた2時間を30分近くオーバーした。先週傍聴した国交省の会合は予定を大幅に余して終了したのと対照的だった。(最後まで傍聴したのは記者一人だったというのは解せない)
そんなわけで、卯月委員長が感動したトレイルランナー・鏑木毅氏の話を紹介する。
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写真提供・鏑木氏(以下、同じ)
鏑木氏は46歳。わが国のトッププロのトレイルランナーだ。トレイルランニングとは舗装路以外の山野を走る競技。鏑木氏は、ヨーロッパアルプスの最高峰モンブランの周り168㎞、累積標高差9,600mを制限時間46時間以内で走破する大会で2009年には22時間で走破し、わが国最高位の3位に入賞している。つい先日も、香港の大会で100㎞の山道を走ってきたという。
鏑木氏は次のように語った。
「トレイルランニングは欧米がさかんだが、わが国でも3~5年前から盛り上がってきた。ランナー人口は15万人くらい。私は普及させるためにいろいろ活動している。富士山の大会では約2,300人の参加者のうち約450人が外国人。かなり高い比率だ。
〝マウントフジ〟は日本語の固有名詞でもっともよく知られている言葉ではないか。外国人ランナーは一様に日本の山を褒める。わが国は世界で3番目の森林率の高い国。都心から1、2時間くらいでアクセスできる。多様性と繊細性では世界一。〝山を走るなんて〟とネガティブに考える人もいるかもしれないが、苦しい壁を乗り越える感動はスポーツでしか体験できない。3日間走り続けた人を迎えるときは、自分も涙を誘われる。感動の中にエネルギーがある。
その一方で、ごみの量には驚かされる。ボランティアでゴミ拾いも行うが、ひどさに涙が出る。林道などは行政で整備されているのに利用しないから荒廃も進んでいる。
富士山の大会では11市町村を走るので、それぞれの地域の食品・食材などを活用したイベントもできる。スポーツを使えばいろいろな展開ができる。大きな流れの渦を作りたい。文化を育てる社会的意義も大きく、景観づくりにも役立てることができるはず」



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懇談会での各委員の主な意見を紹介する。(順不同)
池邊このみ委員(千葉大大学院教授) 利害関係がからんでくると合意形成が難しい。森林・林業や農業が景観を支えているが、現在の補助金制度は景観の視点が欠落している。この点からもお金が入る制度を考えていい
小浦久子委員(大阪大大学院准教授) 景観計画をどうして作ったかの意味をきちんと伝えないといけない。富士山のように目標がある程度共有されていれば引っ張っていけるが、景観計画の内容や計画に示す基準の意味をつたえる必要がある
西山徳明委員(北海道大教授) 「富士山の姿(景観)をまもる」という目標は明快で共有しやすいが、どこまでが視対象(見る対象)としての「富士山」なのかを明確にすべき。「富士山」の姿のなかに反射するメガソーラーは作るべきではないが、その外側は事情が違う
山畑信博委員(東北芸術工科大教授) 静岡県はメガソーラー規制の面積要件を1,000㎡以上にしているが、その根拠が希薄
卯月盛夫委員長 景観計画は運用段階で「どうして」という説明ができないと利害関係の調整が難しくなる。メガソーラーは何が問題なのかをもっと明確にするべき。エネルギーと公共公益の調整も難しい問題がある。富士と一緒にみんなきれいにしようというのは、景観はお金を生むかもしれないヒントになる。農業と林業の疲弊は景観を保てなくなることにつながる。イベントを活用してもっと利用・活用する必要がある。景観は歴史とつながっているという新しい視点が必要(全体のまとめとして)
オーナー&入居者の双方のニーズ満たす 旭化成ホームズが賃貸住宅見学会

三鷹市牟礼の「母力みたか・むれ」
旭化成ホームズは12月21日、コミュニティ形成型賃貸住宅見学バスツアーを報道陣向けに行った。子育てをテーマにした「母力(BORIKI)」、ペット共生型の「+わん+にゃん」、入居者を女性に限定した「New Safole」で、それぞれコンセプトを明快にし、オーナーと入居者のニーズをマッチングさせているのが特徴。目先の利回りを優先した提案ではなく、中長期的に競争力のある商品企画がいかに大切であるかを再確認させた。

武蔵野市の「母力むさしの」
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最初の2物件は三鷹市牟礼と武蔵野市吉祥寺北町の「母力(BORIKI)」。「母力」については、2年前に竣工した「吉祥寺北町」(22戸)の見学会の記事を参照していただきたいが、母親の声を商品企画に生かしたもので、入居者同士が近所づきあいで子育てを共感し、みんなで子どもを見守りあえるよう仕掛けを施したもの。
居室は居室を細かく区切らず、引き戸を開閉することで使い勝手をよくしており、広い中庭を設けることでコミュニティ形成がスムーズに行えるよう工夫を凝らしている。
企画がヒットしたことは、オーナーや入居状況からよく分かる。「吉祥寺北町」の8代目という賃貸オーナー(58)は、代々受け継がれてきた地域の財産ともいうべき巨木を残し、地域のコミュニティ形成も応援したいという願いを実現できたことを次のように話した。
「平成22年に父をなくし、母親一人が住むには広すぎるので、建て替え・土地活用を考えた。ハウスメーカーなどからいろいろ提案を受けたが、銀行を通じて提案された旭化成ホームズのプランが私の心を動かした。敷地内の樹齢100年はありそうなケヤキ2本と松を残す条件にぴったりだった。良好な環境を作るのは私たちの責任だし、30歳代から40歳代の子育て世代に入居してもらうことで地域貢献にもつながる。兄と弟も快諾してくれた」
入居が始まって2年が経過し、ハロウィン、クリスマス会、雪かき、節分、花見、夏まつりなどが入居者の自発的な発案で行われているという。2年間で3戸の退去があったが、一般募集は行わなくてもウェイティングだけで決まったという。
もう一つの三鷹市牟礼の「母力(BORIKI)」(20戸)も同じコンセプトだ。最寄駅からはかなりあり、建ぺい率40%、容積率80%という厳しい制約の中で、敷地約776坪に大きな中庭を囲むように2階建て2棟が建設されている。11月下旬から入居が始まっており、家賃は相場より数千円高めの設定だそうだが、現在、キャンセル住戸が1戸のみ。
このオーナーはアパートや老人ホームなど多くの賃貸物件を所有しているが、同じものは望んでおらず、社会貢献にも関心があったことから、銀行を介した同社の提案を受け入れたという。

武蔵野市の「母力むさしの」

「母力むさしの」の前でインタビューに答えるオーナー
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ペットマンションも女性専用マンションも、ペットや女性を理解していないと是非を論じられない。65年間も生きてきて女性が理解できない記者が、ましてや物言わぬ犬猫が理解できるはずがない。
同社の説明ビデオで、若い女性が「この子」「本人」と言っているのを見て、どこに子どもがいるのだろうとパワーポイントの画面を凝視した。犬もネコも生まれた環境に慣れれば、外で飛び回らなくてもネズミを食べなくても平気でむしろ外に出るのを怖がるということを聞いて、なるほどとは思ったが、去勢された犬猫は産みの苦しみも育てる喜びも味わえないのは果たして幸せなのか考えてしまった。
よって「+わん+にゃん」(10戸)、女性専用の「New Safole」(11戸)については深入りしない。そのようなニーズは確実にあり、目先の利回りのことしか頭になく、経年劣化による設備の陳腐化、競争力の低下のことなどあまり考えてこなかった貧弱な賃貸市場の反映だ。
双方とも賃料が相場と比較して若干高めであるのに、入居募集がスムーズに進んでいるのは商品企画がオーナーやユーザーに理解されているということだろう。

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今回見学した3つの商品「母力(BORIKI)」、「+わん+にゃん」、「New Safole」に共通するテーマはコミュニティだ。記者はこの1カ月の間にコミュニティに関する記事4回書いている。マンション管理協の報告会が2回、三井不動産レジデンシャルのイベントとニュースリリースに関することだ。そして今回で5回目だ。
それぞれが全部つながっている。ひょっとすると、来年はコミュニティがより重要なテーマになるかもしれない。

ペット共生賃貸住宅「+わん+にゃん」
三井不レジ 良好なマンションコミュニティの価値は250万円!? (2014/12/18)
マンション管理協2年間に全4冊1,630枚の研究調査報告書(2014/12/15)
「へーベルメゾン母力むさしの」 コンセプトがズバリ的中、完成前に満室(2012/9/24)
三井不レジ 良好なマンションコミュニティの価値は250万円!?

良好なマンションコミュニティの価値は250万円!?-三井不動産レジデンシャルと三井不動産レジデンシャルサービスが面白くて、マンション商品企画にとって示唆に富んだアンケート結果をまとめ発表した。
先月26日に行ったマンションの未来について語るシンポジウム「Mirai Mansion Meeting」の参加者を対象に「2020年のマンションコミュニティ未来予測」に関して行ったもので、19歳から63歳まで225名(男性119名、女性35名)から回答を得た。
コンビニなどが近隣にないと仮定し、調理中に醤油を切らしていることが分かったとき「近所に借りられるか」という問いに「YES」と答えた人は62%、近所から醤油を貸してほしいと言われたらという質問には96%の人が「YES」と答えた。
また、2020年ころ、今よりもコミュニティが豊かになっているとしたら、近所の人とどこまでシェアできるか聞いたところ、選択肢の中からもっとも多かったのは「調味料」で58%、次いで「調理器具」47%、「キッチン」30%、「ダイニングテーブル」24%などが多く、「風呂」15%、「寝室」4%、「寝具」4%などもあった。
さらに、良好なコミュニティができることによって実現できそうなことについて聞いたところ、「サークル活動」17名、「共同ペット」3名など趣味や娯楽を住民同士で〝共遊〟いるという回答が多く、「子ども/ペットの預かり」15名、「看取り」1名などもあった。
3,000万円のマンションを購入すると仮定した場合、「良好なコミュニティがあるとしたら追加でいくらまで出してもいいか」という問いには、「~250万円」がもっとも多く26%で、第2位は「~500万円」24%。全体の2人に1人が物件価格の10%程度を良好なコミュニティの「価値」として評価することが分かった。
「理想とする居心地のいいコミュニティイメージを漢字1文字で表すとどうか」という問いには「楽」28名、「和」14名、「快」8名、「優」8名などとなった。
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読者の皆さんはこのアンケート結果をどう受け止めるか。面白半分で聞き、面白半分で答えたと考える人も少なくないはずだ。現在のマンション生活ではまずあり得ないことだからだ。よほど親しい関係なら醤油などの貸し借りは日常茶飯に行うだろうし〝共遊〟を行っている人もいるだろう。
記者が小さいころは、醤油に味噌、砂糖などの貸し借りは当たり前で、風呂も隣同士で貸したり借りたりした。店は徒歩で10数分のところしかなかった。味噌、醤油、酒などは量り売りだった。親につり銭を飴玉に変えてもいいという条件でよくビンを抱えて買いに行った。頭の中は飴玉しかないから、途中で醤油なのかソースなのか分からなくなることもしばしば。間違ってまた買いに行かされた。そうして我々の世代は育った。
世の中は変わった。無縁社会だ。5年先だろうが10年先だろうが、コミュニティは益々希薄になるのではないかとみんな考えている。しかし、近所から醤油を貸してほしいと言われたらという質問に96%の人が「YES」と答えた。みんな意識の底には「群れて生きたい」という願望があると記者は考える。そのほうが「楽」に決まっている。そのきっかけがなかなか見つからないだけだ。
だれがそのきっかけづくりを行うかだ。先日、マンション管理協がコミュニティに関する研究調査結果をまとめ発表した。ここで佐々木誠・日本工業大学淳教授はコミュニティの価値の「見える化」を図り、マンションが目指す方向性を「コミュニティポリシー」として公開すれば、マンション購入者の購入行動に大きな影響を与え、マンションの資産価値を高めることも可能と話した。
佐々木氏の提案は説得力がある。今回のアンケートを行った三井不動産レジデンシャル市場開発部商品企画グループは決して面白半分でやったわけではないはずだ。ひょっとしたらコミュニティポリシーの実践を考えているのではないか。どこよりも早くやったら三井のマンションが圧倒的な人気を呼ぶと思う。ただ、まさか250万円を価格に上乗せはしないだろう。価値は認めてもユーザーはない袖は振れない。
「〝福島原発〟ある技術者の証言」著者・名嘉幸照氏がリスク管理を語る

名嘉氏
〝うその塊〟を明らかにするのが私の責務
「2011年3月11日。
まさかこの日が、この家で生活する最後の日になろうとは、露にも思っていなかった。
その日は朝から晴れ、春の気配がかすかに漂い始めていた。
揺れは突然やってきた。大地がうなり声を上げた。
私は自宅(双葉郡富岡町)で業者と打ち合わせをしていた。まずドンと縦に揺れ、その後、横に揺れだした。それはどんどん大きくなり、立っているのさえ、やっとになった。
…
――ひょっとしたら――。
不吉な思いが胸をよぎった。
大きな津波が来襲すれば、第一原発は危うい。
一番の心配は、海水ポンプが『5円玉』のところにあることだ。『5円玉』とは海抜5メートルをさす、私たちの隠語。5メートル以上の津波がきたら、海水ポンプは間違いなく水没する。そして、確実に機能を失う」

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冒頭の文章は、福島原発の稼働時から現在までの約40年間、現場の最前線で保守・点検の業務を行ってきた技術者・名嘉幸照氏が書いた「〝福島原発〟ある技術者の証言」(光文社、四六判、本体1400円)のプロローグの書き出し部分だ。
名嘉氏は1941年生まれの73歳。沖縄県出身。大学時代、米兵が起こした事件に憤り学生運動を起こしたことから石もて追われるように東京に脱出。その後、日本郵船の乗組員として世界を駆け回り、単身渡米。GEに入社。1973年、福島原発スタート時から今日まで約40年間、原発の最前線で保守・点検の業務に携わり、80年には東電の協力会社「東北エンタープライズ」を設立。現場で指揮を執るとともに、若い技術者育成に取り組んでいる。
本著を読むと、原発を知り尽くしている技術者の危機管理能力が欠如した政府に対するいら立ちがひしひしと伝わってくる。
以下、11月27日に行われたNPO法人OSI(沖縄環境・観光産業研究会=代表:百瀬恵夫・明治大学名誉教授)の第104回勉強会で名嘉氏が講演した一部を紹介する。
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あってはならない事故が発生しました。真実を国民の前に示さないといけない。私は技術屋、書くのは苦手で〝なんで俺が〟という思いもありましたが、〝うその塊〟を明らかにする責任を感じ書きました。何とか出版できたのは編集の仕事をしている娘のお蔭でもあり、娘からは「正直な告発本だね」と褒められました。
日本の原発行政 事故は避けられなかったか
原発にはPWR(加圧水型)とBWR(沸騰水型)の2通りのプラントがあります。PWRは原子炉の中で発生した高温高圧水を蒸気に変えてタービンに送り、発電機を回すもので、BWRは原子炉の中で蒸気を発生させ、それを直接タービンに送る方法です。違いはそれほどありません。産業用として日本が採用したのはBWR型が東京電力、中部電力、北陸電力、中国電力、PWR型が関西電力、四国電力、九州電力、それと北海道電力です。
福島原発の1号機、2号機、6号機は東電からの発注を受けてGEが直接建設しました。私がGEで教育を受けて任務に就いたのは1973年でした。
その後、ずっと事故対応を行ってきました。その原因が設計・施工に起因するのか、あるいはメンテナンスの不備から来るものかなどを判断し、報告するのが私の任務でした。
この間、様々なトラブルを解決してきました。私は「聴診器」を持ち歩いていました。先端が尖った金属の棒で、一方をタービンなどの機器に当て、もう一方は耳に当てて伝わってくる「音」を聞くためです。医者の聴診器と同じです。瞬時に原発の健康状態を診断してきました。(名嘉氏は2年前から激しい難聴に苦しんでいる。激務との関係は不明だが、間違いなく職業病だろう)
今回の事故を経験して肌で感じたのは、政府が「原発は安全」を繰り返し、そのリスクをきちんと公表してこなかったことに根本原因があるということです。大きな政策の誤りで、それが今回の事故につながった。悔やまれてなりません。
事故は避けられました。起こした責任をだれが取るか。国民も政府も電力会社もみんな取るべき。原発に国境はない。全世界に対して謝らないといけない。技術先進国としてわれわれ国民は恥ずかしいと思わないといけない。
事故後の東電と政府の危機管理について
当日の夜、私は社員14名といわき市のビジネスホテルに避難しました。現場から全然情報が入ってこなかった。危機管理がなっていないのに愕然としました。非常にあせった。一方で、GEのOBや国際的なシンクタンクから連絡が次々に入ってきました。アドバイスをもらって12日の夕方、東電と原子力安全・保安院に今後の展開をシミュレーションしてメールとファクスを送りました。
事態はどんどん悪化していきました。3月16日夜、名前は知らなかったのですが、ある大臣から携帯に連絡が入りました。「状況が名嘉さんのシミュレーション通りになっているが、どうして分かるのか」という内容でした。そのあと専門的なことを秘書の方と話しましたが、大臣は細野さん(豪志氏、当時内閣総理大臣補佐官)でした。
その時感じたのですが、非常に重大なことであるにも関わらず、東電は適切に情報を伝えていないことを知った。身震いがしました。今でも東電幹部は机上の技術しか知らないのではないかと思うと、腹も立ちます。
菅総理が13日にヘリで視察したことはマスコミなどで批判されましたが、私は東電から適切な情報がもらえなかったやむに已まれず取った行動であり、現場に飛んだのは正しいと思う。菅さんには私の考えを届けていませんが、選挙に落ちたら慰めてやろうと思っています。
福島原発の現状と今後の課題
今後、メルトダウンした3基の原子炉を廃炉に向けどう冷やすかですが、不幸中の幸、冷やしているシステムはかろうじて維持されています。
格納容器(Dry well)は原子力規制法に基づいた施設じゃないといけないが、現状は全て仮設の設備で運用されています。したがって常にリスクがあると考えないといけない。水漏れなどで放射能が飛散する恐れは十分ある。
廃炉に向けたロードマップが政府、東電から発表されていますが、廃炉までどれくらいかかるのか全く見通しが立っていません。これからも注視しなければなりません。
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名嘉氏はこのほか、沖縄県の電力行政と危機管理、安謝港⇔読谷村までの自然再生と開発についても講演した。電気料金は東電並みに高く、これが沖縄の経済発展を阻んでいる要因の一つで、火力発電設備の老朽化や危機管理、さらには普天間基地が存在することも認識しなければならないと指摘した。
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名嘉氏は著書のエピローグでこう綴っている。「私は、あの日米の地上戦で廃墟になった沖縄戦の生き残りである。平和がなによりも大切だと思っている。原子力も、日本が平和で豊かに暮らすための、産業であると思い、自分の生涯を賭けてきた」原発事故には「わが身が引き裂かれるような痛みを感じる」と。
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OSIは2003年6月設立。沖縄の自然保護、環境保全及び自然と人間との調和が全てに優先することが基本理念で、沖縄県内の諸団体、企業、住民が主体となり、海洋資源、文化資源の開発や新しいシステムを確立することが目的。これまでほぼ毎月1回、東京を中心に勉強会を行っており、今回が104回目。
百瀬氏は中小企業研究の第一人者で、「泡盛」を全国区に広めた貢献者としても知られる。現在、明大校友会副会長、明大体育会柔道部明柔会(OB会)名誉顧問、明大マンドリンOB倶楽部最高顧問などを務めている。

百瀬氏
国交省 住宅団地の再生検討会 「無反応者」を母数に含めない是非
国土交通省は12月17日、「第5回住宅団地の再生のあり方に関する検討会」(座長:浅見泰司・東大大学院工学系研究科教授)を開き、住宅団地再生に係る課題と住宅団地の実態調査計画について話し合った。
団地住宅再生に係る課題については、①合意形成に係る課題②事業資金の確保に係る課題③建築規制上の課題④その他がまとめられ、住宅団地実態調査については、全国的な住宅団地のマクロデータの収集と、東京都内の約500団地程度の旧耐震及び築30年以上の分譲マンションについて詳細な実態調査を行うとしている。
次回に予定されている2月の会合を経て、3~4月には一定の方向性を示すことになっている。
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この「検討会」は初めて傍聴した。個人的には16委員の中で紅一点の櫻井敬子・学習院大教授の話が聞きたかったのだが、欠席されたのが残念だった。論議は、これまでの会合で課題がすべて出尽くしたためかあまり活発に行われなかった。
注目したのは、マンション建て替えや共用部分の変更など特別決議事項で「無反応者」(成年後見人制度とは別で、総会に出席も委任状提出も議決権行使もしない人と思われる)に対しては議決の母数から外すなどの緩和措置をとっていいのではという提案だ。
記者も考え方としては基本的には賛成だ。しかし、これは問題も多い。そもそも現行の区分所有法では「無反応者」という概念はない。仮に母数に「無反応者」を除外し建て替えなどの特別決議を行ったら間違いなく法律違反になる。「無反応者」を母数にカウントしたら賛否が逆転する場合などは決議そのものが無効となる可能性もありそうだ。これを解消するには区分所有法を改正しないといけない。
この問題について、提案された委員にメールで聞いた。早速、その返事をいただいた。この委員の提案は、現行区分所有法の改正が必要な事項として提案したもので、具体的には2/3以上の出席により特別集会が成立し、出席者の3/4で決議するという提案だ。現行3/4を2/3に緩和する法改正でもいいのではないかとしている。「無関心で決議に参加しないことは、権利を放棄することであるという意識を拡げることが好ましく、現在は、無関心者は反対票を投じることと同じになっている」と指摘している。
(国会では「無反応者」=「棄権」をどう判断しているのだろうと思い、事務局に聞いた。憲法では「両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し…」とある。ところが、衆議院本会議では出欠を取らず、採決方法は①起立②記名③異議なしの3種類がある。記名の場合で賛成の白票と反対の青票のいずれも提出しない、あるいは退席した場合は「投票なし」となる。つまり、出席議員をカウントしていないから、結果的に棄権した議員は母数には含まれないことになる。棄権した議員を「出席議員」に含めるか除外するかは憲法学者間で論争があるそうだ。そもそも国会議員は理由なくして本会議を欠席することは基本的にありえず、賛成でも反対でもないという意思表示はありえないということか。記者はこの前の選挙で投票に行き、投票用紙を受け取ったのち「棄権します」と意思表示したら、用紙は没収された。投票率には反映されるのだろうか)
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もう一つ、提案したいのはマクロの視点は必要だが、いくらデータを収集しても問題の解決にはつながらない。ミクロからのアプローチが絶対欠かせない。
調査項目には、デベロッパーの開発姿勢、中古市場での評価、空き家の発生率、高齢者人口比率、世帯年収、行政の街づくり方針なども加え、総合的複合的に考えないと展望は開けないだろう。
委員から出された「郊外の住宅団地の再生を市場原理のみで対応するのは困難であり、政策的な対応がないと困難である」という意見に賛成だ。追加費用が負担できない高齢者などの区分所有者に対しては国や自治体が権利を買い取り、賃貸化すれば合意形成もやりやすくなると思うがどうだろう。
旭化成ホームズ くらしノベーション研 「食」にまつわる意識と行動実態
旭化成ホームズのくらしノベーション研究所が「食」にまつわる意識と行動の実態について、アンケートと写真日記を交えて調査した結果をまとめた。共働きの増加など家事にかけられる時間は減り食の簡便化が進む一方で、30代を中心に手作り志向や食を通じて暮らしを楽しみたいという意識傾向があること、毎日食事を手作りする家族は暮らしの満足度も高いことなどが明らかになった。
調査対象は、一般戸建て居住者719件と旭化成ホームズのへーベルハウス居住者380件の既婚女性で、回答者は週5日以上夕食の調理を行っている人。
食事の支度に対する調査では、「いつでも手料理にはこだわらない」という回答がトップで、「食事はいつも手をかけたい」が続く。
日常の食事の支度では「毎日夕食を手作りする」人は3割強、「購入した冷凍食品や総菜だけで夕食にすることに抵抗を感じない」人は約3割、40代で「出汁をとって味噌汁を作る」「魚をさばく」人は約2割、「一汁二菜以上が必ずある」人は約1割という結果が出た。
日常の生活の中で「食生活を大切にしたい」と考える人は約9割に達し、「わが家の伝統料理・母の味」があるのは4割だった。
また、夕食に手をかけられない日がある人は67%と多数だが、本当は手作りしたいと思っている人とそうでない人、つまり「手作りアンビバレント層」と「中食・外食層」に分かれた。「手作りアンビバレント層」はその手作り志向と、実際にできない時に生まれる感情の間でゆれながら暮らしている実態が浮かび上がった。
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忙しい主婦・主夫が多いから、夕食に手間をかけられず、レトルト食品に頼らざるを得ない実態が浮かび上がるだろうと予測はついた。しかし、夕食に手が掛けられない日がある人が67ェに達し、「購入した冷凍食品や総菜だけで夕食にすることに抵抗を感じない」人が約3割に達しているのはショックを受けた。わが国の食文化は崩壊しているのではないかと感じた。そこで、記者なりに考えた。いったい「手料理」とは何か、についてだ。
常識的に考えれば、作る側が食材に手間をかけて作る料理で、スーパー、コンビニなどで買ったものをそのまま食卓に出したものとか出前料理などは該当しないのだろう。レストランなどで食べる料理は「手料理」と呼ばないから、作る側が手間をかけることが重要な要素なのだろう。
ここで問題になるのは「手間」とは何かだ。例えば刺身。スーパーで買ってきたトレイ付きをそのまま食卓に並べても誰も「手料理」とは呼ばないが、美しい皿に盛りつけてシソやワサビ、季節の草花を添えたらどうなのか。カップラーメンに湯を注いだだけでは手料理とは呼ばないだろうが、袋入りの麺をゆでてチャーシュー、もやし、ワカメ、なると、海苔などを入れたものは手料理にならないのか。固形のふかスープを加えるとふか入りラーメンになる。記者はこれをよく作った。
問題は食べる側にもありそうだ。作る側が手間をかけて作ってくれたという認識が重要ではないか。もちろんそこには肝心の「味」も重要な要素ではある。しかし、作り手の技量、時間、家計などを食べる側が考えたら、「味」は絶対的な要素ではない。もっとも重要なのは作り手の愛情をその料理に感じられることではないかと記者は結論づけた。
つまり、作り手と食べる側が相互に理解しあい、愛情を込めたことが双方で知覚できたものこそが極上の「手料理」ということになるのではないかと。手間には双方の人間関係を築く作業=愛情も含めないとそれこそ骨折り損のくたびれもうけになってしまう危険性をはらむ。
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上神田氏と上神田氏が描かれた額「饌」
料理の専門家は「手料理」をどう考えているのか知りたくて調べた。大学や調理専門の学校などに問い合わせ、ネットでも調べたが答えは得られなかった。本屋でも探した。レシピ本はそれこそ数えきれないほど並んでいた。ところが、料理とは何か、手料理とは何ぞや、食文化はどうあるべきかなどといった本質的な問題について触れている料理本はほとんど皆無だった。
しょうがないと諦めて立ち去ろうとしたとき、「調理師という人生を目指す君に」(ダイヤモンド社、46上製、224ページ)というタイトルの新刊本が記者の目に飛び込んできた。著者は新宿調理師専門学校学校長上神田梅雄氏とあった。これだ!と思った。
当たって砕けろだ。早速、インタビューを申し込んだ。いらっしゃったら受けていただけるという確信があった。そしてすぐ、インタビューは実現した。
上神田氏は次のように語った。
「『手作り料理』という営業上使っている言葉はあります。わが国の伝統的な食文化がユネスコの無形文化遺産にも登録されました。しかし、外国人に日本の食文化とは何かと聞かれて明確に答えられる人は何人いるでしょう。わが国の食文化の原点は『おふくろの味』、家庭料理なのです。おばあちゃん-おかあさん-子どもへと継承されるべきものなのです。お・も・て・な・しです。今はそれが壊れています。ミシュランなどで多くの星が付けられる営業的料理が最高だといわれています。たしかにそれらはいい食べ物ではあるが、心が込められた、見返りを期待しないおふくろの味とは品格がちがいます」
上神田氏は調理人を目指す若者ももちろんだが、我々にも通じる〝人間学〟について次のように話した。
「最初の10年は師に学ぶのです。次の10年は食材に学ぶのです。心の耳で食材に教わるのです。そして次の10年はお客さまに学ぶのです。最終的に人間としてジャッジしてくださるのはお客さまだからです」
もう一つ、上神田氏のドキリとする短い言葉を紹介する。
「料理人は学歴が無くてもなれますが、心が綺麗で、賢くなくてはいけません。なぜなら、作り上げた料理に、その全人格が紛れもなく表れてしまうからです」(同著、196ページ)

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どうして、ここまで長々と「手料理」や上神田氏の話を書いたのか。それはやはり最初の食文化、食育につながるからだ。ハウスメーカーは住宅供給を通じてわが国の住文化を次世代に継承する役割を担っている。そして食文化もまた人格形成に深くかかわっている。「愛」の視点から考えれば、「手作りアンビバレント層」問題は解消されるはずだ。
住文化と食文化を「愛」のキーワードで繋げ、快適な暮らしを提案してほしい。
黒川紀章建築都市設計事務所が民事再生
帝国データバンクは12月15日、黒川紀章建築都市設計事務所が12月15日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、同日保全命令を受けたと報じた。負債額は12億円。
同データバンクによると、2007年10月に黒川氏が死去してからは、長引く不況の影響などによる受注が減少、設計料の回収不能が重なったことなどから財務が悪化し、法的手続きにより再建を図ることとなった模様。
同社は1962年(昭和37年)4月、国際的な建築家として知られる故黒川紀章氏が創業。黒川氏は京大を卒業後、東大大学院工学研究科建築学専攻修士課程へ進学。丹下健三研究室に所属し指導を受ける。東大在学中に同社を設立した。
1986年、フランス建築アカデミーゴールドメダル、1989年、世界建築ビエンナーレ・グランプリ・ゴールドメダル、1992年、日本芸術院賞(奈良市写真美術館)など受賞。国内外の著名な建築物を数多く手がけた。
1983年に女優の若尾文子氏と結婚。2007年の東京都知事選、同年の参院選に出馬したが落選。バラエティ番組へ数多く出演するなど話題を呼んだ。
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住宅の設計では、1972年の中銀カプセルタワーがよく知られており、ダイア建設の新潟のマンションも手がけた。遺作となったマンションは東京建物「Brillia鎌倉御成町」とクレアスライフ(現在は住友不動産)「コンシュリア西新宿」。
スウェーデンハウス またまた「ミカエル」登場 スウェーデン技術者招へい

スウェーデンから来日した左からアンダッシュ氏、パトリック氏、ミカエル氏
スウェーデンハウスは12月15日、本場スウェーデンハウスから技能者3名を招へいし、10月8日から12月21日まで工事現場の指導・確認に当たらせ、交流も行ったと発表した。
木造住宅分野では、外国から高度な技術者を招くのは前例がないため難航したが、法務省の理解を得ることで実現したという。
会見で挨拶した同社取締役執行役員営業本部長・鈴木雅徳氏は、「今年グッドデザイン賞を受賞した当社独自の『木製サッシ3層ガラス網なし防火窓』が断熱性でも快適性でも評価されたが、わが国の省エネ・快適性の基準は世界から立ち遅れている。今回、スウェーデンから技術者を呼んだのは、現場での施工精度を高めることで、もう一度原点に立ち返り、わが国の気候・風土にかなった住宅の開発につなげていく」とその狙いについて話した。

鈴木氏
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3カ月の期間限定で同社社員として来日したのはそれぞれ大工経験があるアンダッシュ・オスミール氏(49)、パトリック・モンフェルト氏(44)、ミカエル・アルム氏(26)。
3人に日本の住宅のデザインなどについて聞いた。通訳を介して返ってきたのは、①四角い住宅が多い(経済設計が多いということか)②屋内が寒い③グレーの色の住宅が多い。色を付けてほしい(これは国民性もある。スウェーデンハウスは派手すぎないか)④家具が置きにくい間取り⑤木造が少ない(鉄やコンクリート住宅が多いということ)-などだった。
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記者は3人の中でもっとも茶目っ気のある独身のミカエル氏の登場に驚いた。全世界で大ヒットしたスウェーデン作家のスティーグ・ラーソンの推理小説「ミレニアム」がまたまた蘇ったのだ。
最初に驚いたのは2012年の1月(別掲の記事参照)。何と「ミレニアム」の主人公・ミカエル・ブルムクヴィストと同姓同名のイケアのPresident &CEOが登場したからだ。
そして今回。小説のミカエルは40歳代だから、年齢はずっと若いが同じ名の「ミカエル」だ。ミカエル氏は「渋谷で食べた神戸牛がおいしかったが、日本の料理は和食だけでなくすべてレベルが高い」と話した。

左からミカエル氏、アンダッシュ氏、パトリック氏
マンション管理協 2年間に全4冊1,630枚の研究調査報告書

「住生活総合サービスの需要の明確化に関する研究」研究報告会(TKP八重洲カンファレンスセンターで)
マンション管理業協会(管理協)は12月14日、「『住生活総合サービスの需要の明確化に関する研究』研究報告会」を行った。同研究はA4判150ページにのぼるもので、筑波大学教授・花里俊廣氏を代表とする研究グループが管理協から受託されて、マンションの管理組合のコミュニティとしてのあり方や管理会社が行う問題解決などについて役割や意義、有用性を明確にしてまとめたもの。昨年発刊された「『マンション管理における顧客需要の明確化』に関する研究」(A4判130ページ)に次ぐもの。会員会社、マンション管理組合、一般等から約60名が参加した。

花里氏
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管理協は別掲のように11月26日にも有識者への研究委託を進めている「マンション管理業の将来展望に関する研究」(代表研究者・大橋弘東京大学大学院教授)のうち、平成25年度に実施した「マンション管理業の実態調査 結果報告書No.2」(A4判、94ページ)が刊行したのに伴う調査結果報告会を行っている。
原稿量はA4で464ページ、400字原稿用紙にして約1,630枚。長編小説数冊分だ。研究に関わった大学の先生は7名。2年間でこれほどの量で、しかも、マンション管理の現場担当者や購入者へのアンケート・聞き取りを行い過不足なくまとめたものはおそらく過去にないはずだ。マンション管理の〝バイブル〟として今後研究者や管理の現場で読まれると確信する。
記者もすべて読んでいるわけではないので、ここで一つ一つ紹介できないが、興味のある方は管理協・電話03-3500-2721へ問い合わせていただきたい。無料というわけにはいかないだろうが、実費で購入できるはずだ。
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今回の報告会でとくに記者が注目したのが、日本工業大学建築学科准教授・佐々木誠氏が担当した「コミュニティサービス:コミュニティの価値とサービスのニーズ」に関する論文だ。33ページにのぼりコミュニティの定義から視点、価値、支援サービスの可能性まで踏み込んでいる。ここまでマンションのコミュニティに踏み込んだ論文はまず過去にないはずだ。
コミュニティの価値と評価については、多様なニーズがあることから例えば数値的に示すのは難しく、「中古の不動産情報へのコミュニティ情報の新設」提案は「断念」せざるを得なかったと佐々木氏は語ったが、新たなコミュニティサービスの提案はマンション管理組合-居住者-居住者複合体-マンション自治会が何らかのきっかけで複合的に結合し、単なる単棟のマンションだけではなく地域を巻き込んだより高次の地縁コミュニティの社会的意識化が可能となるとしている。
花里氏は、様々な分析手法を用い、耐震改修を行った江戸川区のマンションは70㎡平均で139万円/戸(坪6.5万円)高く取引され、耐震改修に200万円/戸かかるとすると、公的補助が3分の1くらい出るので。元が取れると報告した。

佐々木氏
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花里教授をはじめ研究に携わった方々の講義をいちいちごもっともだとうかがった。花里氏の報告については中古市場がいま一つよく分からないのでコメントは保留する。新築市場は、その時々の市場が判断するので、質の高い・単価が高いマンションが売れるわけではない。
一つだけ記者のくりごとを聞いていただきたい。管理会社だけではないマンション業界全体の「問題解決に取り組む姿勢」の問題についてだ。わが業界は「問題解決」に対していつも後ろ向きで、それが販売促進につながるかどうかという視点でしか考えてこなかったのではないかと思うからだ。
そのいい例がマンションマナーだ。現在、「ペット飼育可」は常識になっているが、各社が「ペット飼育不可」から「可能」にしたのはせいぜいこの10数年前のことだ。バブルが崩壊しマンションの売れ行きが悪化していたときに、販促の手段として各社が採用したのがはじまりだ。記者はそれ以前に、「ペット飼育を認めるべき」と大手の管理会社に取材というより直談判したが、ほとんど門前払いだった。
「ペット不可」から「ペット可能」へ180度の転換を図ったのと真逆の転換を図ろうしているのが、人権を無視するような禁煙ルールの規約化だ。
ここ数年、デベロッパーは専用使用権があるバルコニーを含めてマンションの共用部分での禁煙条項を原始規約に盛り込むようになった。
平成14年に施行された健康増進法が法的な根拠になっており、医学的根拠が希薄でもあるにも関わらず、タバコを吸わない人より吸う人のほうがガンの発生率が高いなどとする疫学的な理由でもって、そしてそれだけでは説得力がないとみると「受動喫煙」を持ち出して吸わない人の恐怖心をあおり、さらには「タバコのポイ捨て」などという理由にもならない理由を持ち出して、有無を言わさず禁煙に乗り出した。記者はこれが怖い。タバコも酒も嫌ったヒトラー的発想ではないか。
ペットを飼う人も飼わない人も、タバコを吸う人も吸わない人もそれぞれの権利を認めあい共存するのが民主主義であり、集合住宅でのルールであるはずだ。一方の側の権利のみを振りかざすのでは絶対に快適なマンションライフは保障されない。
マンション管理会社は、親会社のマンションデベロッパーのこの暴挙に何ら反抗しない。そのような業界団体が、本気で「コミュニティサービス」を実践するかどうか注視したい。
もう一つは、マンションの「コミュニティ」についてだ。
今でこそデベロッパーは「コミュニティ」の大切さをアピールし、支援の取り組みを活発化させているが、以前はそうでもなかったし、最近は〝販促の手段〟としての意図が見え隠れする。本気度が試される。コミュニティ支援活動が正当に評価され、フィーとして報われるのが理想だと思う。佐々木氏が研究論文に記載することを断念した「中古の不動産情報へのコミュニティ情報の新設」はどこか実施に踏み切ってほしい。
さらに、マンションの「自治」「管理組合」について。
かつて戦前の自治会・町内会は戦争推進の役割を担わされた歴史がある。今でも地方自治や大学自治をめぐっては国などの干渉、支配が問題になるケースが少なくない。だから「自治」に対して政治的な匂いをかぎ、嫌悪する人もいるのではないか。記者は英語嫌いだが、英語ではself‐government、あるいはマンションなどの集合住宅の自治会などはresidents' associationと訳されるのだろうが、自らが治める-なかなかいい和訳だ。
「管理組合」もまたしっくりこない言葉ではないか。「組合」という語彙はわが国にはなかったのではないか。「結」とか「講」に戻せとは言わないが、すんなり受け入れられる気が利いた言葉はないのか。
野村不動産 スーパーパッシブデザイン住宅 「府中天神町」に採用

”「プラウドシーズン府中天神町」
野村不動産は12月12日、同社の次世代環境ビジョンを見据えたプラウドスマートデザイン「SMART&GROWING」を進化させた“スーパーパッシブ住宅”「プラウドシーズン府中天神町」の記者見学会を行った。「センターボイド」「インナーテラス」の二つの提案を行っているのが特徴。
物件は、京王線府中駅から徒歩18 分、または武蔵小金井駅行きバス約5 分徒歩3 分、府中市天神町1丁目に位置する全6棟。敷地面積は114.26~114.27㎡、建物面積は101.40~116.79㎡、価格は未定だが、6,000万円台の後半が中心の予定。構造規模は木造(2×4)2 階建て。設計・施工は西武建設。入居予定は平成27年3月下旬。
新しい提案は「センターボイド」「インナーテラス」の二つ。センターボイドは、階段室を家の中央に配置し、2方向に天窓を設けることで風と光の通り道となる機能を持たせたもの。
インナーテラスは、住宅の南側に約2.5畳大の空間を設け、蓄熱・蓄冷効果のある床材・壁材を使用することで、冬場は日中の太陽光の熱を蓄え、夏場は遮熱した風を各居室に送る。YKK APの新商品である日射遮蔽引き戸ルーバーを南側窓に設置する。
それぞれの提案をより効果的に発揮させるために採用しているのがLIXILの「通風建具」。すべての居室ドアと引き戸に採用。ルーバーは手動で簡単に開閉する。
基本設計は、パッシブデザインの第一人者である首都大学東京大学院・小泉雅生教授と小泉アトリエ。2014 年5 月から実際の建物の中で通風・採光・温湿度環境の調査、暮らし方によるエネルギー使用量変化の調査を行ない、効果が高いとして今回採用する。引渡し後も居住者とともにパッシブの効果測定や座談会、住み心地アンケートなどを実施し、そのデータや声を今後の商品企画に生かす。
モデルハウス案内会は12 月13 日(土)から開始し、2015 年1 月に販売する予定。

インナーテラスを設置した住宅

日射遮蔽ルーバー(左)と2階から見たインナーテラス
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パッシブデザインの提案は各社が行っており、高窓やインナーテラスの提案もそれほど珍しいものではない。間違いなく室内温度を外気温度より1~3℃くらいは上げたり下げたりすることができるはずだ。
いったい通風建具のルーバーを誰が開けたり閉じたりするのかという問題もあるが、環境問題に関心のあるユーザーは嬉々として実証実験に取り組むはずだ。
ひとつだけ言わせていただければ、外付けの日射遮蔽ルーバーのデザインがいま一つだ。防犯効果も期待できそうだが、いかにも侵入を防ぐ装置だぞと見せつけるような印象を受けた。サッシにはLow-E複層ガラスを採用しているのだから、そこまでやる必要があるのかどうかとも思った。
同社は日射遮蔽ルーバーの代わりに「すだれ」でも実験したそうで、それだと同じくらいの効果はあるのだが、部屋が暗くなり住宅のデザイン・街の景観も変わるのでやめたという。
なかなか難しい問題だ。デザイン・景観を優先させるなら何もないほうがいい。

ルーバーつきドア

高窓

