大京リアルド 1棟リノベの「多摩NT永山」 レベル高い旧社宅
「グランディーノ多摩ニュータウン永山」
大京グループの大京リアルドが2月上旬に分譲する1棟リノベーションマンション「グランディーノ多摩ニュータウン永山」を見学した。1棟リノベーションブランド「グランディーノ」シリーズの第2 弾で、平成5年に完成したJTBの社宅を全面的に改装し、大京のオリジナルキッチン「L’s KICHEN」などを標準装備したレベルの高いマンションだ。
物件は、小田急多摩線小田急永山・京王相模原線京王永山駅から徒歩11 分、多摩市馬引沢2 丁目に位置する6階建て全30戸。専有面積は30.19~78.39㎡、第1期(8戸)の価格は2,580万~3,150万円(専有面積74.87~78.39㎡)、坪単価は120万円。既存建物は1993 年5 月竣工済み。既存建物の設計・監理は交通公社不動産、改修工事の設計・監理は共同エンジニアリング。既存建物の施工は大林組、改修工事の施工は大末建設(共用部)・パナソニックES集合住宅エンジニアリング(専用部)。改修竣工は2013年12月。
物件概要で分かるように、大手企業の社宅として利用されていたもので、賃貸仕様ではなく〝分譲〟に匹敵する仕様である点だ。販売担当者によると、社宅は幹部社員ように建設されたもので、面積も広めのファミリータイプが中心で、オートロックが採用されており、駐車場も屋内。リビングの天井高は最低2550ミリ。施工は大林組だ。2010年に大規模修繕済み。
改修にあたっては、デューデリジェンスを行ったうえで、新築のライオンズマンションと同様の設備仕様に変更している。食洗機は標準装備で、キッチンのカウンタートップは御影石。古い建物である痕跡は和室や浴室の段差くらいだ。
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分譲単価は割安感がある。仮に、旧社宅並みの新築マンションをこれから建設しようとすれば坪単価は最低でも150万円はするはずだ。新築より700万円くらい安い〝バブル仕様〟であることをアピールできるかにかかっている。来場者は1週間で30組を突破しているという。
積水ハウス 「ザ・リッツ・カールトン京都」完成 2月7日開業
「ザ・リッツ・カールトン京都」
積水ハウスは1月24日、京都市中京区二条で建築しているマリオットホテルグループの最高級ブランド「ザ・リッツ・カールトン京都」を2月7日に開業すると発表。同日、開業に先駆けて報道陣に公開した。敷地が約6,000㎡で、高さ規制などの制約が多い中で、鴨川に面した立地を巧に利用した最高レベルのホテルであるのは間違いない。
建物は、京都市営地下鉄京都市役所前駅から徒歩3分、京都市中京区鴨川二条大橋畔に位置するRC造(一部SRC造)の地下3階、地上4階建て全134室の規模。敷地面積は約5,937㎡、延床面積約24,682,89㎡。客室面積約45~212㎡(中心は約50㎡)。ルームチャージは65,000円から。建築主は積⽔ハウス。建築構造設備・外装デザインは日建設計、客室・パブリックデザインはレメディオス・デザインスタジオ、レストランデザインはデザインスタジオ・スピン、内装設計はイリア、庭園デザインは野村勘治。
現地は、敷地東側に鴨川が流れる市内の一等地。旧「ホテルフジタ京都」の敷地を3年前、積水ハウスが取得した。用途地域は建ぺい率80%、容積率400%の商業地域だが、高さ規制として川岸より20mまで軒高12m、それ以外15mとなっており、岸辺型美観地区Ⅰ型(屋根形状を勾配屋根にすること)、旧市街地型美観地区(外壁、屋根色などの規制)の規制がある。
建物は古都の歴史を継承するのがコンセプトの一つで、敷地内にあった灯籠、庭石、滝石などは旧ホテルで使用されていたものを再利用している。外観・内装には、日本の伝統的な格子、七宝などの文様、西陣織を多用。アートのコンセプトは「源氏物語」で、主人公光源氏の邸宅「六条院」や「雅」「もののあわれ」「風流」などをモチーフにした80人のアーティストによる394作品が共用部を中心に展開されている。
レストラン&バーは、長さ11mもの輪島塗を施したカウンターがある日本料理の「水暉」、明治の実業家・藤田傳三郎の別邸「夷川邸」をレストランフロアに移築したイタリアンの「ラ・ロカンダ」、360度からアプローチできる巨大なワインセラーがある「ザ・バー」など。このほか、鴨川の流れの音や風を取り込む室内プール付きのスパ、フィットネスジムなどを備える。
客室は50㎡以上が中心で、鴨川が眺められるタイプは半数以上。62㎡以上のスイートは17室。アメニティは「エスパ」。
記者発表会で総支配人の田中雄司氏は、「ザ・リッツ・カールトンは17年前の『大阪』、7年前の『東京』、2年前の『沖縄』に次ぐわが国では4件目、世界で86件目となる。京都への観光客は年間500万人で、そのうち100万人が外国人。外資系のホテルは少なく、独自の『クレド』を生かしてラグジュエリーホテルとして今までとは違った選択肢を提供したい」と語った。
エントランス
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積水ハウスが「ザ・リッツ・カールトン」建設を発表した段階で必ず見学しようと決めていた。同社は日本一のハウスメーカーだが、同時に世界一でもある。世界一の「おもてなし」を提供している「ザ・リッツ・カールトン」とコラボして、古都・京都の一等地でどのようなデザインの建物を建設するのかが最大の関心事だった。
規模などは「東京」の半分ぐらいしかないが、建築設備・外装デザインには日本一の日建設計を、客室・パブリックデザインには世界的なレメディオス・デザインスタジオをそれぞれ起用し、和と洋の調和を図ったホテルだ。「東京」と比べると、よりわが国の伝統的な文化、建築様式を取り入れたものとして記者は評価したい。
圧巻は地階の温水プールだ。窓を開けることにより鴨川の流れの音と風を取り込めるようにしていた。イタリアンもいい。築100年という邸宅をそのまま個室に移築したのは意表をついた演出だが、これぞ「非日常」。外国人にも日本人にも受けるのではないか。和と洋の不思議な空間「ロビー・ラウンジ」や「闇夜の月」をモチーフにした壁のデザインにははっとさせられる。
唯一理解できなかったのが、会席・鮨・天麩羅・鉄板の4つの料理で構成される日本料理レストランだった。全体で200㎡ぐらいあるそうだが、ほとんどオープンになっており、設えは明らかに中華。「アジアンテイスト」なのだろうが、日本人の富裕層に受け入れられるか疑問に思った。仕切りのない大部屋で会席料理や鮨を食べる習慣は富裕層にあるのだろうか。
共用部廊下(左)と布クロスの壁
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「ザ・リッツ・カールトン京都」が最高の器であることは確認できた。地下水を温熱環境に変換する最新技術も導入されている。あとはリッツの「クレド」の実践あるのみだ。エントランスでは和装の「ゲストエスプリジェンヌ」が迎え入れてくれるのも特徴だ。
日本料理(左)とイタリアン個室
スパ・温水プール(左)と客室
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余談だが、記者は外観写真などを撮った後、昼食を取ろうとホテルから1分もしない「がんこ高瀬川二条苑」という和食料理店に入った。店の案内書には「京の人々に古くから親しまれ愛されてきた高瀬川の流れは、豪商角倉了以の別邸跡『がんこ高瀬川二条苑』を通り…」とあった。
取材時間は迫っており、食事もそこそこに店の了解を得て写真を取りまくった。森鴎外の「高瀬舟」もそうだが、澤田ふじ子さんの連作「高瀬川女船歌」に描かれている京の風情が一挙に蘇った。
以前はこの「がんこ高瀬川二条苑」も「ザ・リッツ・カールトン京都」の敷地も同じ地続きだったということを積水ハウスの広報担当者から後で聞いた。「高瀬川の源流」はリッツに負けない庭だ。
「がんこ高瀬川二条苑」の「高瀬川の源流」庭苑
大和ハウス 自社工場が「省エネ大賞」の「経済産業大臣賞」受賞
同社奈良工場
大和ハウス工業は1月22日、省エネルギーセンター主催の平成25年度「省エネ大賞(省エネ事例部門)」で、同社の「次世代省エネ工場の商品化に向けて」の取り組みが評価され、「経済産業大臣賞(OGO企業等分野)」を受賞したと発表した。
同社は、CGO(環境担当役員)のリーダーシップにより、生産部門と開発・設計部門が連携して省エネ活動を進めており、2012年度は工場全体で売上高あたりCO2排出量を2005年度比48%削減、とくに北九州の同社モデル工場では64%削減した。
また、同社は自然の力を生かす「パッシブコントロール」や創エネ・省エネ・畜エネを行う「アクティブコントロール」、建設設備や生産設備のエネルギーを総合的に管理する「スマートマネジメント」を採用した次世代環境配慮型工場「D’SMART FACTORY」を商品化。奈良工場(2013年12月竣工)と竜ケ崎工場第2工区(2014年2月竣工予定)で同商品への建て替えを進めている。
「不動産は買い時」62%「不動産価格は上がる」49% 野村アーバン調査
野村不動産アーバンネットは1月22日、今年1月7日~1月13日に行った不動産情報サイト「ノムコム」(http://www.nomu.com/)の会員を対象とした「住宅購入に関する意識調査(第6回)」の結果をまとめ公表した。
不動産について「買い時」「どちらかといえば買い時」と回答したのは62.4%で、前回調査(2013年7月)の63.3%より0.9ポイント減少。その一方で、「買い時」単独では1.5ポイント増加して17.4%となった。
買い時だと思う理由については、「住宅ローンの金利が低水準」が最も多く55.9%、「今後、物件価格が上がると思われる」が45.8%、「消費税の引き上げが予定されている」が39.7%。
不動産の価格については、「上がると思う」が48.7%と前回調査から3.9ポイント増加。
また、東京五輪開催は「不動産価格を押し上げる効果がある」と68.1%が回答。東京のインフラ整備や再開発計画の中で注目している計画については、1位東京五輪開催に向けた臨海部の大型開発(競技場整備、選手村整備など)、2位成田空港・羽田空港との「都心直結線」計画、3位リニア中央新幹線の整備、という結果となった。
調査対象は「ノムコム」PC会員約16万人で、有効回答は1, 710人。
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記者は、この種の「今が買い時」調査は好きではない。金融商品や投資向けの物件ならともかく、サラリーマンにとってマイホーム取得は「買い時」「買い控え」などと言っていられない人それぞれの事情があるからだ。「狭い」「耐震性が不安」「駅から遠い」「家賃が高い」「子ども部屋がほしい」などは、そこから「脱出」しない限り解決しない。
商品の特性から言っても、株のように「売り」「買い」を頻繁に繰り返せないし、ライフサイクル、ライフスタイルをよく考えて、中長期的な視点で最良の選択をしてほしいと願う。
金利や価格動向によって購入の時期をずらせるノムコム会員はどれぐらいいるのだろうか。逆に「今すぐ買いたい」という人はどれくらいいるのか。対象者を絞ってきめ細かなアンケートをすればものすごく面白い結果が出るはずだ。
「理想の間取りは普通の間取り」 小林秀樹・千葉大大学院教授
小林教授
旭化成ホームズ 第12回「くらしノベーションフォームラム」
旭化成ホームズは1月21日、第12回「くらしノベーションフォームラム」を開き、千葉大学大学院教授・小林秀樹氏が「ナワバリ学で家族と住まいを読み解く」をテーマに講演を行った。
小林氏は、「ナワバリ学は30年前、私が博士号を取ったテーマで、その後長らく空白期間があったが、もともと私の原点」と前置きし、「ナワバリ」とは「その場所を自分(たち)のものだと思い、そこをコントロール(支配)しようとする一定の空間」と定義づけた。そのナワバリを研究しようと思ったのは、外廊下が居住者の〝たまり場〟になっている団地は防犯性が高いことがきっかけだったという。
そこからさらに「居心地の良い住まいとは何か」に発展させ、昔の封建家族(順位制)=個室のない住宅から居室と個室に分かれた平等家族(ナワバリ制)に移行した結果、家族は平等なナワバリを持つか、夫婦寝室はどうか、子どもは家にナワバリを持つか、親子のナワバリ争いはどう鎮めるかなどを研究。部屋の家具配置やしつらえを誰が決めるか、誰が管理するかがカギであることを突きとめた。
マンションに多くみられるnLDK(n=居室の数)は母主導型であるとし、こどもが居間で意見を言う度合や子ども部屋を親が決定するのか子どもが決定するのかによって、「自立」「分離」「密着」「従属」の4つのカテゴリーに分類。調査研究の結果、都市住宅は「母主導型」であるとしている。また、人間集団を相互依存的(集団主義)か独立的(個人主義)か、権威を重視する垂直的関係か、契約を重視する水平的関係かを見た場合、わが国の家族は封建家族から順位制を残した温情家族へ、さらに子どもの成長とともに母子による友愛家族へと変化していると結論づけた。
小林教授は、個室化の進展にもかかわらず家族温情主義が残るのは、玄関で靴を脱いで床上にあがる生活様式「床上文化」が影響していると指摘。日本の住まいの特徴は、①順位制の性格が根強く残る②夫婦平等のナワバリは少なく、夫婦別寝室も多い③親子の触れ合いを重視する「居間中心型」が急増④「床上文化」が家族温情主義を生み出す-とし、「理想の間取りは普通の間取り」とした。「居間と和室がつながる」形態は住みこなしやすい優れた間取りとも語った。
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記者は社会・経済・家族の環境が人格形成にどのような影響を及ぼすかずっと考えてきた。家族の関係でいえば、昔の囲炉裏は今のLDKよりはるかに優れていると思っている。囲炉裏には家族だけでなく近所の人たちが集まり、農作業の出来不出来や政治の話、色恋沙汰までもあからさまに話し合っていた。子どもは父親が囲炉裏の灰に書く文字で漢字の書き順や足し算引き算も覚えた。読み書きそろばん(そろばんは経済の意味も含む)は囲炉裏で覚えた。
今のマンションはどうか。田の字型の間取りは相変わらずだし、夫婦二人の主寝室と子ども部屋の大きさがほとんど変わらないマンションも多い。個室は孤独・孤立の「孤室」ではないかとも思う。「子育て」がテーマになればみんな右に倣えだ。似たような間取りのオンパレードとなる。
そんな現状に飽き飽きしている記者は、小林教授が「理想の間取りは普通の間取り」と話したときは、肩透かしを食らったような気分になった。小林教授は自著「居場所としての住まい ナワバリ学が解き明かす家族と住まいの深層」(2013年、新曜社)で次のように述べている。
「日本の家族の実態は、言論が示す以上に保守的であり、かつ健全だ。重要なことは、その先鋭的な例が、これからの趨勢になるものの先取りか、それとも、単なる特殊例にすぎないのか見きわめだ」(87ページ)「現実は、言論をあざ笑うようにnLDKの定着へと進んでいる。このような現実を踏まえると、私たちは言論に過剰に反応することなく、個室やLDKを当たり前のこととして受け入れるべきではないだろうか。むしろ、注目すべきはそれとは別の問題だ。具体的には、中廊下形式の見直しと、外部社会に対する住まいの閉鎖性の見直しだ」(88ページ)
間取りも含め住居が人格形成にどのような影響を与えるかについては、建築学はもちろん社会学、教育学、心理学などの様々な分野からの分析・研究もなされている。この先どうなるか見極めたい。
ひとつ、これからの住宅の商品化に参考になりそうな小林教授の考えを紹介する。小林教授は「これからの住まいの条件」のひとつとして「地域の人が気軽に訪問しやすいように玄関は引き戸にするとともに、LDKの窓を近くに配置する。引き戸であれば、全開や半開きにしておき、『暇だから、どうぞ入って』というサインとしても利用できる。逆に、プライバシーを大切にしたいときは、引き戸を閉じるとともに、窓のカーテンを閉めればよい」(101ページ)としていることだ。
本日行われた積水ハウスの新商品発表会でもこの「玄関引き戸」が提案されていた。記者は分譲マンションにも採用できるのではないかと質問したが、同社は「分譲にも十分対応できる」と話した。
積水ハウス 4階建て複合型多目的マンション「BEREO PLUS」発売
「BEREO PLUS(ベレオプラス)」完成予想図
積水ハウスは1月22日自宅や賃貸住宅、店舗などの多様な用途に対応する4階建て複合型多目的マンション「BEREO PLUS(ベレオプラス)」を1月24日から発売すると発表した。
国交省の住宅着工データによると、2011年を100とした場合、2013年の3階建ては108(40,500棟)で、4~5階建ては124(3,290棟)と伸び率が大きく、一般市場では3階建てが92%、4階建てが8%であるのに対し、同社の契約棟数は3階建て比率が98%で4階建ては2%にしか過ぎず、マーケットとして伸びが期待できるとして投入したもの。
新商品は、躯体工事費がRC造より安く、工期も短くて済み、梁勝ちラーメン構法「βシステム構法」を採用することでフロアごとに異なるプランにフレキシブルに対応するとともに最大8mの大スパンを実現した。このほか石張りのエントランス、セキュリティシステム、高遮音床システムなどを採用して高級マンションのクオリティを追求しているのが特徴。
このほか、レンタブル比が外階段方式では80%を下回るケースが多いのに対し、室内階段室を採用することで85%くらいに高めることができ、玄関引き戸、子どもを基準にした独自技術「空気環境配慮仕様・エアキス」などを採用することで差別化を図っている。
構造は重量鉄骨造4階建て、販売地域は全国、価格は3.3㎡当たり70万円から(本体価格のみ。消費税込み)。販売棟数は240棟/年。
室内と室外を心地よくつなぐ広々とした開放的な空間「スローリビング」(左)と大開口、大空間の店舗
大成有楽不動産が変わる 「OBER(オーベル)」リブランディングを具現化
大成有楽不動産はマンションブランド「OBER(オーベル)」の価値向上を目指し、今年1月から新たなコンセプトに基づく商品やサービスを提供するリブランディングをスタートさせたが、そのプロジェクトチームの責任者、同社マンション開発本部企画部管理室室長・土肥(どひ)健作氏に話を聞いた。
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同社は平成24年4月、大成建設グループの大成サービスと有楽土地が合併して誕生したが、旧有楽土地の設立は昭和28年。これまでのマンション分譲戸数は39,000戸を超え、管理戸数は102,000戸を突破している老舗企業だ。
リブランディングは2年半前から検討を始めていたもので、満を持しての今回の発表となった。土肥氏がチームリーダーで、同社社長室経営企画部広報室室長・小林久視氏がサブリーダーを務めている。その狙い、背景などについて土肥氏は次のように語った。
「マンション事業は大手の寡占化が進んでおり、今後も加速する。当社も生き残りをかけてこのプロジェクトをスタートさせました。社内から『うちの売りは何か』など声を聴いたのはもちろん、一般からは4,000件くらいのアンケート調査を行いました。結果は愕然とするものでした。4万戸近い業界でも上位の実績を持ちながら、認知度は極めて低いことを思い知らされました。あぐらをかいていた部分もありました。売り上げが伸びていたときも財産として残せませんでした」
こうした反省を踏まえ、徹底したリブランディングに取り組んできた。
「リブランディングに当たってはインナーブランディングが重要と考え、ワーキングチームも構成を変えたりして社員の意識改革や業務改善に取り組んできました。これからはファサード、エントランス、外構などに当社独自のデザインコンセプトを盛り込んでいきますし、品質管理においては1000項目にものぼる品質のチェックを全ての現場で実施する等、独自の品質管理体制『オーベルクオリティコード』を徹底していきます。コミュニティサポートのための部署を設けましたし、居住者向けのワンストップサービスも行っていきます。これからが勝負です」
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同社の知名度やブランドの認知度の低さにはびっくりもしたが、さもありなんとも思った。記者は約35年間、マンションを取材してきた。もちろん同社のマンションもたくさん見学してきたはずだ。ところが、同社の「売りは何か」と聞かれてもとっさには出てこない。ユニバーサルデザインに早くから取り組んできたこととか、物件ではオードリー・ヘップバーンを起用した「ティアラシティ」、都のマンション環境性能表示で高い評価を得た「桜堤庭園フェイシア」、昨年見学した出色の「オーベル蘆花公園」くらいしかない。
なぜなのか。考えてみてもよく分からない。元々は東証2部にも上場していた数少ない不動産ポストの老舗企業でありながら、会社の顔ともいうべき広報の部署がなかったのも一因かもしれないが、結局は「大成のブランドや歴史があるということに依存してきた」という土肥氏の言葉に行きつく。
そうした体質を一掃するために、インナーブランディングを徹底したというのは納得だ。社員の意識を変えないとこうした試みは成功しない。土肥氏と同じことを言った人がいる。昨年10月からリブランディング「野村の仲介+」を開始した野村不動産アーバンネットの執行役員 流通事業本部営業推進部長・神園徹氏だ。神園氏は「当社の売りはサービス。インナーブランディングを徹底しないと効果を挙げられない」と。
もう一つ、土肥氏が語った「施工会社がどこでも当社の品質管理を徹底する」ことも極めて重要だと思う。土肥氏に話しを聞いた2日前、三井不動産レジデンシャルの「パークホームズ築地」の記者発表会があり、施工が長谷工コーポレーションであったため、ある記者が「どうして長谷工コーポレーションなのか」という質問をした。これに対して同社開発事業本部都市開発二部長・村裕太氏は土肥氏と同じように答えた。「施工がどこでも三井のマンションです」と。
「O-range STORAGE(オレンジ収納)」
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リブランディングを具現化した商品・提案を現在分譲中の「オーベルグランディオ千住大橋エアーズ」で見た。シアターの冒頭には「オーベル メッセージムービー」が流れた。ユーザーの声を商品企画に生かす「O-range LABO(オレンジラボ)」では「O-range KITCHEN(オレンジキッチン)」「O-range STORAGE(オレンジ収納)」がモデルルームで提案されていた。
一つひとつは紹介できないが、「オレンジワゴン」「シンクフロントレール」「サポートカウンター」「マルチシューズシェルフ」「マルチクローゼット」などはスグレモノだ。記者が推奨する「物干しポール」もついていた。
「オレンジワゴン」「シンクフロントレール」「マルチクローゼット」は他社にはないものだ。とくに「マルチクローゼット」には「長押」のような使い方ができるのには驚いた。
「キッチン」「収納」は先行するデベロッパーと肩を並べるどころかそれ以上かもしれない。第三弾も準備中と聞いた。間違いなく同社は変わることを実感した。
「O-range KITCHEN(オレンジキッチン)」
オリックス 大京を連結子会社化 マンション業界 主導権争い激化
オリックスは1月17日、同社が保有する大京の優先株すべてを普通株式に転換することによって、議決権ベースでの所有割合を31.7%から64.1%に増やし、大京を同社の連結子会社にすると発表した。
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同社が2005年、経営再建中だった大京の支援に乗り出した時点でこのような連結子会社化は予想されたことだが、これによっていわゆる独立系だった大京、ダイア建設(大和地所の子会社)、コスモスイニシア(大和ハウスの連結子会社)、藤和不動産(三菱地所レジデンスに吸収合併)全てが他社の子会社になったことになる。これも時代の流れか。
マンション業界は大手の寡占化・再編が進行しており、この流れはまだまだ加速する。オリックスにはオリックス不動産が、大京には穴吹工務店があり、3社のマンション供給量を合わせると4,000戸を突破する。全体的なパイが縮小する中、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産の〝4強〟にオリックスグループがどう肉薄するのか。
このほか東急不動産、東京建物がブランド強化を図っており、新日鉄興和不動産、NTT都市開発なども開発に力を入れている。老舗企業、大成有楽不動産も今年からリブランディングを開始した。面白い展開になってきた。
大和ハウス 建て替え・請負強化の新商品「xevo Σ(ジーヴォシグマ)」発売
「xevo Σ(ジーヴォシグマ)」
大和ハウス工業は1月16日、株式会社(本社:大阪市、社長:大野直竹)は、2014 年1 月24 日より、繰り返しの巨大地震でも初期性能を維持できるエネルギー吸収型耐力壁などの新工法を採用した戸建住宅最上位商品「xevo Σ(ジーヴォシグマ)」を1月24日から発売すると発表した。
新たに開発した新商品は、エネルギー吸収型耐力壁「D-NΣQST(ディーネクスト)」を採用することで阪神・淡路大地震を上回る175kine(カイン=地震の強さを揺れの速度で表す単位。物体が1秒間に何センチ移動するかを示す)の地震波を繰り返し与えた場合でも柱・梁の損傷がなく、高い耐震性を維持できることが実証されている。
構造躯体を強化したことによって、業界最高クラスの天井高2.72センチ、開口幅最大7.10メートルの大空間を実現した。
さらに、従来の外張り断熱通気外壁を進化させ、断熱・耐久・遮音性能を高めた。
外壁材はより深い陰影を生む34ミリ厚の窯業系サイディング「DXウォール」を採用して重厚感をアップさせた。内装材もブラックチェリー、オーク、サべリなど高級樹種を使用し、木のぬくもりと個性的な味わいを演出するフローリング材「ライブナチュラルプレミアム」を用意した。
販売地域は北海道・沖縄県を除く全国で、販売価格は本体工事価格が「ハイグレード仕様」で2,890 万円台(74.0 万円/坪)~「スタンダード仕様」で2,640 万円台(67.7 万円/坪)~(税込)。販売目標は年間1,200棟。構造は軽量鉄骨構造2 階建て。
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記者は別の取材があったため、記者発表会が終わったころに駆け付けた。会場には取締役専務執行役員・沼田茂氏や上席執行役員・中村泉氏などがあいさつ・事業説明したほか、会場には実物大の耐力壁も展示されていた。相当力の入った商品に違いない。
配布された資料には、開発に至った背景として、東日本大震災、阪神・淡路大地震などを経験してより強度の高い商品を開発しなければならないことと、同社が同業他社と比較して建て替え比率が低いこと、単価が低いことが課題としてあげられ、その改善を図るのが狙いであると書かれていた。
大手6社の建て替え比率では、もっとも比率が高いA社が53.0%であるのに対して同社はもっとも低い32.5%で、請負単価はもっとも高いSR社の34.3百万円に対し同社はP社と同じ3番目の31.2百万円となっている。請負単価が最も低いのはA社の30.3百万円となっている。
同社は新商品の投入により、テストマーケティングでは平均単価は43.8百万円まで上げられる手ごたえがあるとしている。
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主なデベロッパーの分譲マンションの1戸当たり販売単価を平成25年3月期の決算数字から調べてみた。
もっとも高いのは住友不動産で4,811万円、以下、野村不動産4,785万円、三井不動産4,765万円、三菱地所4,315万円、東急不動産3,925万円、大京3,856万円、大和ハウス3,436万円、タカラレーベン3,252万円。もちろんこれは供給エリア、企業戦略によるもので高いほうがいいのか安いほうがいいのか一概に言えないが、大和ハウスの役員はどう考えるのだろう。積水ハウスは4,679万円だ。
用地取得から10年 小石川植物園に隣接した住友不動産「インペリアルガーデン」
「インペリアルガーデン」完成予想図
用地取得から10年、「小石川植物園」に隣接する希少の住友不動産「インペリアルガーデン」がいよいよ分譲される。東京火災海上の社宅跡地に建設されるもので、敷地面積約1haの第一種低層住居専用地域に立地する都心では過去にないと思われる低層大規模マンションだ。全167戸のうち半数が億ションとなる見込み。モデルルームは1 月25 日(土)にオープンする。
物件は、都営三田線千石駅から徒歩9 分・東京メトロ丸ノ内線茗荷谷駅から徒歩9分、文京区千石二丁目に位置する4階建て全167戸の規模。専有面積は70.81~102.16㎡、価格は未定だが、西向きの75㎡台が8,000万円台、90~100㎡台の小石川植物園に面した住戸と南向き住戸が1億円以上になる見込みだ。坪単価は400万円。竣工予定は平成27 年1 月。設計・施工は前田建設工業。
主な特徴は、①小石川植物園に隣接した第一種低層住居専用地域②敷地面積1万㎡超③南傾斜の高台立地を活かした4 棟構成④2戸1エレベータ採用(一部除く)⑤間取りとインテリアカラーが無償で選択できる「カスタムオーダーマンション」対応-など。
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同社が用地を取得したあたりから、隣接する小石川植物園の環境・生物多様性を壊すものとして反対運動がずっと展開されてきたマンションだ。
この点については触れないが、富裕層ならだれもが住みたいと思う都心の低層の一等地だ。同社によると、都心6区で1haを超える規模の低層マンションは過去10数年にさかのぼってもないということだが、都内全域に広げても分譲マンションの全歴史のなかでもそうないはずだ。記者が記憶をたどってみたところ、世田谷区で住友商事が「成城ハイム」を分譲したのを思い出した。分譲は昭和56年で、敷地面積は約13,000㎡だ。しかし、これは総合設計制度の適用を受けたため、低層ではなく高層マンションだった。
これ以外は思い出せない。これからの物件では三菱地所レジデンスが「中村橋」で分譲するマンションが規模的には住友不動産のものを上回るようだ。
坪単価も相場だろう。2年前、野村不動産が茗荷谷駅近くで分譲した物件は坪370万円だったが、これはいかにも割安感があった。記者は「『まだ間に合う』借景が見事な野村不動産『プラウド小石川』」という見出しをつけて記事にした。
今回は戸数も多いので即日完売というわけにはいかないが、問い合わせは3,000件を超えているそうだ。広域集客も期待できる。駐車場は50%なのは驚いた。昔の億ションは1戸1台でも足りなかった。時代は変わったものだ。外観フォルムが美しいのも特徴だ。
モデルルーム