大和ハウス「SMA×ECO CITY(スマ・エコシティ)つくば研究学園」まちびらき
まちびらきのテープカットをする左から北村氏、市原氏、沼田氏、中村氏
大和ハウス工業は12月14日、つくば市研究学園でNTT都市開発とともに開発を進めている「SMA×ECO CITY(スマ・エコシティ)つくば研究学園」のまちびらきを行なった。つくば市長・市原健一氏、同社取締役専務執行役員・沼田茂氏、同社上席執行役員・中村泉氏、NTT都市開発取締役住宅事業部長・北村明義氏の4氏がテープカットを行い祝った。
「SMA×ECO CITY(スマ・エコシティ)つくば研究学園」は、茨城県つくば市の「実験低炭素タウン構想」に基づく先進モデル街区として整備が進められているもので、全175区画に家庭用リチウムム蓄電池(6.2kWh)や太陽光発電システム、家庭用燃料電池(エネファーム)の3電池を設置するほか、同社オリジナルのエネルギーマネジメントシステム(D-HEMS Ⅱ)によるエネルギーの見える化や街全体の見える化も「SMA×ECOクラウド」で実施する。街並みを保全するため地区計画・景観協定を定め、電柱・電線の地中化も実施する。
また、「D-HEMS Ⅱ」で計測したエネルギー情報を利用して、光の色の変化や音で知らせるコミュニケーションロボット「HEMS版ココナッチ」を一部住宅に導入する。
沼田氏は、「2011年に立ち上げたスマートシティプロジェクトは大阪府堺市、埼玉県・吉川南、神奈川県相模原市とともに進めている4カ所の一つ。先進の技術を採用して、つくば市の実験低炭素モデル構想にも貢献し、ネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)を目指す」と話した。また、同社つくば支店長・宮武孝之氏は、「来年末に全棟が完成する。再来年の3月までに全戸完売したい」と意欲を語った。
物件は、つくばエクスプレス研究学園駅から徒歩11分、つくば市研究学園C43街区に位置する開発面積約5.1ha。敷地面積は平均200㎡、延べ床面積は117.10~126.40㎡、価格は4,580万~4,920万円(最多価格帯4,600万円台)。会員優先販売ですでに10件が契約・申し込み済みで、3件が商談中。
モデルハウス
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つくば沿線の区画整理事業に記者は〝果たして大丈夫か〟と懐疑的だが、関係者が揃って販売に自信を見せていた。15カ月で完売するためには月間12戸を販売しなければならない。同社は3年前、隣接地で積水ハウスと50区画ずつ合計100区画の戸建てを3年がかりで完売したという。近接する創建「ルナつくば研究学園」(141区画)も同じぐらいかかっている。
販売スピードは、既分譲の戸建ての倍になる計算だが、「電柱の地中化、太陽光・リチウム蓄電池・エネファーム、4,000万円台の半ばという価格帯が評価されている」と宮武氏は胸を張った。
左からエネファーム、・リチウム蓄電池、スマ・エコプラウド
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街区の整備はUR都市機構が行なっているので大和ハウスやNTT都市開発に責任はないのだが、街路樹がないのはどういうわけか。
駅から現地までの途中の街路にはハナミズキと思われる街路樹が植えられていた。ところがしばらく歩くと、街路樹は途絶えた。LEDの街路灯のみが寒々と突っ立っていいた。どこまでも広い道路の両側には緑があふれているつくば市の中心市街地とは対照的だ。
つくば市も含めてURは街路樹の価値をどう見ているのだろう。電柱のように街路樹が切られているのは見るに忍びないが、新しい街づくりで街路樹が1本もないというのは信じられない。造成費や道路の維持・管理費を抑えるためだろうが、これでは将来の街のポテンシャルはあがってこない。大事なものを忘れているのではないか。
街路樹が1本もない近隣の街路(右の写真はC43街区に隣接する街区の既存樹の立派な松。この非対称をどう理解すればいいか)
NTT都市開発「ウェリスつくば研究学園テラス」 1期50戸ほぼ完売へ
「ウェリスつくば研究学園テラス」完成予想図
NTT都市開発の「ウェリスつくば研究学園テラス」が人気を集めている。12月14日(土)に登録申し込みが締め切られるが、当日昼の段階で47戸に申し込みが入っている。〝エコタウン〟がテーマで、単価の安いのも特徴だ。
物件は、つくばエクスプレス研究学園駅から徒歩12分、茨城県つくば市東平塚字西原の区画聖地内に位置する8階建て全86戸の規模。1期(50戸)の価格は2,498万〜4,298万円(最多価格帯2,900万円台)、専有面積は76.20〜104.51㎡。坪単価は122万円。竣工予定は平成26年7月下旬。販売代理はフージャースコーポレーション。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。
現地は、開発面積約484.7haというつくばEX沿線最大規模の「研究学園葛城地区」の一角C43街区にあり、敷地南側は台一種低層住居専用地域。C43街区は総面積約9.3haで、計画戸数約500戸の戸建て・マンションエリア。国交省の平成24年度「まち・住まい・交通の創エネルギー化モデル構築支援事業」にも選定されている。「つくば環境スタイルSMILe」(コミュニティエコライフ、モビリティ・交通、最先端技術、環境教育・実践)の具現化を目指し、同社と大和ハウス工業、つくば市が協定を結び、地域住民とともにエコタウンづくりに取り組むことになっている。電気の一括受電システム、MEMSのほか家庭菜園も設置する。
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分譲単価を聞いて驚いた。122万円という水準は3年前に、三交不動産が「羽村」で分譲し人気になったのを見学して以来だ。施工は同じ長谷工コーポレーションだった。
設備仕様も単価からすると水準以上だ。この単価の安さで一定の水準を確保できるのは長谷工コーポレーションだからできることだ。リーマン・ショック後に同社施工ではない坪単価100万円ぐらいの新築物件を千葉県や茨城県で見学したことがあるが、設備仕様は最低だった。あまりひどいので記事にしなかった。
NTT都市開発もゼネコンに丸投げするようなことはしていない。同社は独自の「WELLITH CODE(ウェリスコード)」を策定し、「安全安心」「環境創造」「快適な生活空間」など、6つの分野で50項目を超えるこだわりや細かな工夫を施している。
積水ハウス 住宅メーカーにこだわり医療・介護事業を強化
「シノン青葉台」
積水ハウスは12月12日、医療・介護事業報告会&「シノン青葉台」見学会を報道陣向けに行った。当日は同社専務取締役執行役員東京支店長兼コーポレート・コミュニケーション部長・平林文明氏ほか執行役員東京シャーメゾン事業本部長・堀内容介氏をはじめ医療・介護事業を担当する関係会社の幹部全員が揃い、同事業にかける意気込みを示した。報道陣も約40人が参加した。
冒頭に挨拶した平林氏は、「医療・介護事業は、皆さん(報道陣)にはあまり認識されていないが、当社は大きな事業として位置づけ全国的にサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を展開している。施設としてではなくあくまでもメーカーとしての住宅を深耕する方針、思いを見ていただきたい」と語った。
同社は2011年11月にサ高住の登録が始まって以降、これまで東京、大阪圏を中心に全国で6,605戸(うち1,669戸が東京)の登録を行っている。主に自立型のアッパーを対象とした「グランドマスト」と、自立から要介護まで幅広い層を対象とした「Cアミーユ」で展開。住戸面積は全国の約7割が25㎡以下であるのに対し同社は25㎡以上を基本とし、施設ではなく住宅の延長として捉え、今後もグループ会社の積和不動産などと連携し、専用部材の開発、ユニバーサルデザインの深化などを進め他社との差別化を図っていく。年間売上高は250~300億円で、地方展開も視野に入れ近い将来1,000億円にする目標。
ラウンジ
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同社のサ高住を見学するのは昨年竣工した「マストライフ古河庭園」以来だが、今回の「シノン青葉台」(74戸)も募集開始2カ月で広い住居を中心に約5割の契約率というからかなり人気になっているようだ。
注目したのは手すりだ。手すりは途切れないから機能が果たせるのだが、実際はほとんどの施設・住宅もそうはなっていない。今回の物件もすべてがつながっているわけではないが、機械室や防火扉、メーターボックスにも手すりがついていた。浴室には6カ所ぐらいについていた。どこよりも早くメーターモジュールを採用し、ユニバーサルデザインに取り組んできた同社だからできることだ。
サ高住は今後も伸長が期待できる。全国に約215万戸もの住宅を建設してきた同社の実績がものをいうのだろう。
物件は、東急田園都市線青葉台駅からバス7分徒歩6分の横浜市青葉区桂台2丁目に位置する3階建て。居室面積は27.28~62.20㎡。健常棟と介護棟に分かれているのが特徴で、将来的には介護棟は有料老人ホームとして利用できるようにしている。
手すり(他社の物件ではこの消火設備の部分の手すりが途切れているものが多い)
ナイス ワンストップ店舗の「ナイス住まいの情報館 住まいるCafe鶴見東」見学
、「住まいるCafe鶴見東」店舗内
ナイスが東京都・神奈川県の17カ所で展開する「ナイス住まいの情報館~住まいるCafe~」の一つ、「住まいるCafe鶴見東」を見学した。
「住まいるCafé」は、土地や中古マンション・戸建ての売買仲介にとどまらず、マンション・一戸建て、新築・中古、購入・売却・賃貸、住宅建築・リフォームなどあらゆる住まいに関してワンストップで対応するソリューション型店舗で、2010年から展開しているもの。店舗の外観には「レイヤードブラウン様式」を採用し、木質内装材を取り入れたサロン風の内装に仕上げ、無料でコーヒーを提供するなど気軽に入れるよう工夫を凝らしている。
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記者はアポなしで訪ねたが、スタッフに「どうぞ、どうぞ」と気軽に応じてもらい店舗のつくりなどを見学した。貰ったチラシには中古マンション・戸建ての情報だけでなく、同社グループ以外の物件を含めた新築物件、賃貸物件も紹介されており、エリアの飲食店紹介、イベント情報も盛り込まれていた。
約6畳大のサロンは無料で市民に提供されており、クリスマスツリーづくり教室、陶器キャンドル入れづくり、地震体験車体験会、出張サンタなどのイベントが予定されていた。無料の工具貸し出しサービスも開始していた。
スタッフは「毎日、コーヒーだけを飲みにいらっしゃるのも大歓迎です」と笑った。
イベントコーナー
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一度は何らかの形で同社と取引した顧客でないとコーヒーだけを飲みに立ち寄るのは難しいと思ったが、CSR活動の一環と考えればこの取り組みは評価できる。さらに進めて生活相談・子育て・税金相談なども可能ではないか。「不動産仲介」のイメージを一変させるはずだ。
かつて同社・平田恒一郎社長が「闇雲に首都圏全域で事業展開するつもりはない。地域のお客さんに評価される地域ナンバーワン企業を目指す」と語ったのを記憶している。本拠のある鶴見を中心に川崎エリアのマンション市場占有率は3割を越えないはずだ。地域の実情、顧客の志向を熟知しているからこそ、70㎡台で4LDKのプランが生まれる。当面は供給を増やしている戸建て事業に注目だ。
コーヒーコーナー
住友不動産「シティテラス加賀」 山田氏が独演会 商品企画を熱く語る
「シティテラス加賀」
住友不動産は12月10日、桜並木の景観が美しい石神井川のほとりの板橋区加賀一丁目に位置する大規模マンション「シティテラス加賀」(全385 戸)が竣工したのに伴い報道陣向けに内覧会を行なった。
物件は、都営三田線板橋区役所前駅から徒歩9 分、板橋区加賀一丁目に位置する15階建て全385戸の規模。専有面積は54.00~84.00㎡。竣工は平成25 年12 月。設計・施工は西松建設。これまで197戸を供給し、174戸が販売済み。販売済みの価格は3,790 万~6,590 万円。坪単価230万円弱。
物件名にも冠されている「加賀」は、江戸時代に約21 万坪の広大な加賀前田家の下屋敷があったことに由来する地名で、区内では住宅地として人気の高いエリアとして知られる。敷地の北側には桜並木が美しい石神井川が流れる。「加賀一丁目」では過去最大規模のマンション。
建物の外壁の一部にガラスカーテンウォールを採用し、5階までは奥行き2.7~3mのバルコニー、スカイラインを形成する最上階はティアラを模した全面ガラスバルコニーにするなど階層によって外観に変化を持たせ、マリオンによる分節手法を用いて深みのある意匠を施し手居るのが特徴。また、外廊下に空調室外機などを収納する木目調ルーバーデザインの「格納スペース」を設置し、パイプシャフトをルーバーで隠すなどディテールにもこだわっている。
左から外廊下の収納スペース、内から見たパイプシャフト、外から見たルーバーつき化粧柱
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同社が昨年行なった港北ニュータウンのマンション見学会では意匠にこだわった同社の商品企画に驚いたが、今回はそれ以上だった。同社製品企画室シニアエンジニア・山田武仁氏が見学予定の1時間を40分も上回る熱のこもった〝独演会〟を演じ、寒さを吹き飛ばしたからだ。
まず、こう切り出した。「なぜわれわれは製品企画室と呼ぶか。それはデベロッパーはメーカーと同じ。いかに差別化を図り、素材(土地)に付加価値をつけるかを考えている」と。
さらに続けて「われわれはお客さんにお見合い写真のような完成予想図を提示するが、それより完成した実物のほうがいいと分かってもらい、さらに住んでみたらもっといいと思ってもらえるような建物をつくりたい」「品よく際立つシンボルが目標」「3階から見る桜並木はピンクの絨毯を敷いたような景色となる」「桜並木を背景に仲のいい夫婦が記念写真を撮るのもいい」「友人から羨望が混じったお祝いの言葉をかけられるデザインにした」「正面もいいが裏から見ても美しいマンション」光が入らないエレベータホールにはベンジャミンの高木を配し、マンションの内側にも自然を取り込んだ」「夜と昼の顔が反転するライティングも施した」「設計図書がぼろぼろになるぐらい、100回以上のディテールの見直しを行なった」などと約1時間にわたり〝山田節〟を展開した。
左が奥行き2.7~3mのバルコニー、右がエレベータホール前のベンジャミンのシンボルツリー
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いまマンション業界では、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、野村不動産がかつてないほどブランディングに力を入れている。一方の住友不動産が行なう見学会はせいぜい年間に2~3程度で〝わが道を行く〟の独自路線を歩んできた。
この図式が一変した。同社はこの数カ月の間に「高田馬場」「武蔵小杉」「晴海2丁目」と3回も立て続けに見学会を行い、戸建ての「青山モデルハウス」を含めると今回で5回目だ。報道陣の数も「武蔵小杉」「晴海2丁目」では40~50人ぐらい集まったように、他を圧している。
そして山田氏の登場だ。山田氏は青山モデルハウスの見学会でも話したが、とにかく熱い。つくり手の企画意図がストレートに伝わってくる。商品企画の〝宣伝マン〟として最適だ。この日も、最初の商品説明が15分で打ち切られたとき、「まだ1時間ぐらい話したい」とつぶやいたほどだ。同社のマンション・戸建てのイメージを一変させるのではないか。かつては山田氏のような会社の顔になる〝名物男〟がたくさんいた。
〝住友の顔〟になりそうな山田氏
日本綜合地所「ヴェレーナ稲毛」 圧倒的な価格の安さ 設備も水準以上
「ヴェレーナ稲毛」完成予想図
日本綜合地所のマンション「ヴェレーナ稲毛」を見学した。価格は未定だが、第1期1次予定販売住戸の坪単価は地上権付きであるため120万円台となる模様で、圧倒的な安さがある。
物件は、JR総武線稲毛駅から徒歩12分、または京成千葉線京成稲毛駅から徒歩3分、千葉市稲毛区稲毛3丁目に位置する7階建て77戸の規模。専有面積は68.97㎡~78.75㎡。第1期1次販売予定住戸の予定価格帯は70㎡超で2,500万円台~2,900万円台になる模様。竣工予定は2015年2月下旬予定。施工は大木建設。月額地代は5,780円~6,600円の予定。
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最大の特徴は、地上権マンションであるため一般的な所有権マンションと比較して価格が圧倒的に安いことだ。土地の固定資産税・都市計画税の負担がない代わりに地代を支払うが、坪単価はかなり安い。建築費の上昇が続いている今では、それこそ〝土地代がタダ〟のマンションだ。
一般の方は、これから分譲されるマンションはどんな遠隔地のマンションであれ坪単価は130万円以下ではまず分譲されないことを覚悟すべきだろう。仮に分譲されたら、基本性能・設備仕様などは最低クラスと考えたほうがいい。
ところが、設備仕様も水準以上だ。食洗機、ミストサウナ、床暖房、活水器などが標準装備で、MEMS(マンションエネルギーマネジメントシステム)の導入により経済産業省の「スマートマンション導入加速化推進事業」に認定される予定だ。キッチンの天板は御影石。ルーフバルコニーにはスロップシンクも付いている。
現地は第一種住居地域で、周囲は戸建ての街並みが広がり、小学校は徒歩2分。車の通りも少なく、子育て環境に適している。
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1階住戸には同社オリジナルの「オープンエアリビング」や「プライベートガーデン」、「プライベートパーキング」などがついている。
記者は、「オープンエアリビング」の全開口サッシを見て、同社関係者らに「皆さんは、この全開口サッシを御社が採用して、マンションの値付けに革命を起こしたのをご存知か。南武線の物件だった」と話したら、何とマンション販売の責任者の三浦氏が「入社したのが1999年で、最初に担当したマンションが全開口サッシを採用した『グランシティ中野島』でした」と答えたのだ。
それまで、低層マンションはともかく、中高層マンションでは1階住戸がもっとも安く価格設定されていた。言うまでもなく売りづらいからだ。しかし、同社が全開口サッシを採用し、1階の専用庭などと一体利用できるようにして1階住戸の価値を高めた結果、中層階と同じ価格帯に設定しても売れることを実証した。
この全開口サッシの採用が、その後の「オープンエアリビング」「オープンエアスペース」「オープンエアリビングバルコニー」の開発につながっていった。
14年前に目にした「オープンエアリビング」が、時を経て今回の物件にも採用されており、同じ営業マンが販売を担当する。何かの縁だろうか。
オープンエアリビングと専用庭(完成予想図)
再生建築学の設置を 青木茂氏が三井不動産のセミナーで語る
リファイニングについて講演する青木氏(ミッドタウン東京で)
三井不動産と三井不動産レジデンシャルが12月8日に行なった「マンション再生セミナー」を取材した。セミナーでは、老朽化マンションの課題である①耐震性②設備の老朽化③設備・間取りの陳腐化に対して生命の危機、資産の危機をどう克服するかについてリファイニングによる長寿命化と建て替えによる再生の2通りの将来設計のプランを示した。リファイニングについては、青木茂建築工房・青木茂主宰(首都大学東京特任教授)が、建て替えの留意点についてはアークブレイン・田村誠邦社長(明治大学特任教授)がそれぞれ講演した。
まず、青木氏の講演を紹介する。田村氏の講演は改めて紹介する。
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青木氏は、リファイニング建築とは躯体構造を基本的にはいじらないリノベーションやリフォームとは異なり、徹底して耐震性、施工精度、コンクリートの中性化などを精査し、一度スケルトンに戻してから、用途に応じデザインや機能を一新することで新築並みの価値のある建築物に蘇らせるものと説明した。
青木氏は建築確認書類や検査済証など一切ない建物の再生や、入居率の悪い賃貸住宅を居ながらにして再生して利回りの高いものに再生した事例、屋外廊下や階段室を室内化した事例、賃貸を分譲にした事例などを紹介。
リファイニングに当たっては①建築確認を取得すること②検査済証を取得すること③家歴書を作成すること④コンクリートの中性化を確認すること-の4点が重要であることを説明した。また、既存-現在-将来の120年ぐらいの時間をどうデザインするかが重要で、それぞれ構造、意匠、用途について30~40年に1回ぐらい見直すべきと強調した。
また、今後の課題として、①建築技術の伝承②雇用の促進③耐震診断のデータベース化④法の整備-の4点について話した。耐震診断をデータベース化すれば、診断スピードが飛躍的に高まり、再生しやすいよう条例の整備も必要と語った。また、建築物の再生に関する教育も必要とし、国交省や文科省には「再生建築学」の専門のコースを設置すべきと提案している。
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青木氏は、「プランについてはいつも所員とけんかしている。ピンクや赤の壁などを提案する所員にグリーンを主張した私はことごとく敗れている」と会場を笑わし、「これまで500件以上の案件を手がけてきたが、実ったのは50件くらい。リファイニングがなかなか進まないのは、私の社会的評価が低いのだと判断して、思い切って築40年の古いビルを買ってリファイニングした。港区のYSビルがそれで、1、2階は賃貸とし、3~4階は自宅にした。『Y』は女房の『S』は私の名前」などと、自らが人体実験したことを紹介した。
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黒川記章氏や磯崎新氏などが設計した建築物を青木氏が再生したのはリリースなどで知っていたが、これまでどのような仕事をされてきたのかよく分からなかった。そして驚いたのが、別掲の「千駄ヶ谷」の賃貸マンションを分譲に再生するプロジェクトの見学会だった。何と300人も見学者が集まった。「只者」ではないと思い、青木氏に失礼だとは思ったが、「失礼ですが、その道では知られた方なのでしょうか」とお聞きしたところ、「自分では判断に困ります」と返された。
そこで青木氏の事務所のホームページをみた。「日経アーキテクチュア」(2013/10/10)の「発注したい設計者・施工者ランキング」の設計者好感度ランキングで何と17位にランクされているではないか。トップは日建設計、2位は日本設計、3位は三菱地所設計、4位は隈研吾氏、5位は伊藤豊雄氏、6位は山本理顕氏…11位に安藤忠雄氏と磯崎新氏、13位がNTTファシリティーズ、14位が久米設計…そして17位が青木氏だ。そのあとにはプランテック、松田平田、山下設計、石本建築設計、梓設計、アール・アイ・エー、東急設計など錚々たる建築家・設計会社が続く。
ものを知らないことがこれほど恥ずかしいことだと改めて思い知らされた。取材をお願いしたのは、青木氏についてもっと知るためだった。「YSビル」の取材はさせていただけないだろうか。
「マンション再生セミナー」
建物の高さ規制は居住性、景観美の視点から見直しを
「オーベルグランディオ横浜鶴見」のモデルルームを見学して
「オーベルグランディオ横浜鶴見」全体外観
大成有楽不動産、京浜急行電鉄、菱重エステート、長谷工コーポレーション、ナイスの5社が12月7日から分譲を開始する横浜市鶴見区の大規模マンション「オーベルグランディオ横浜鶴見」(全553戸)もモデルルームを見学した。
千代田化工建設の本社・研究所跡地を再開発するもので、周辺にある企業や大学と協力して工場見学、スポーツ観戦、さらには子どもからシニアまで幅広い世代交流ができるプログラムが計画されているマンションだ。
今回のマンションに限ったことではないが、高さが7階建てに制限されていることについて触れたい。
横浜市では現在、地区計画や市街地環境設計制度などで緩和許可を受けたものを除きほぼ全域に用途地域や容積率によって建物の絶対高さが第1種高度地区から第7種高度地区まで7段階わたって規制されている。第1種が10m、第2種が12m、第3種が15m、第4種から第6種が20m(斜線制限もあり)、第7種が31mだ。
今回のマンションが建つエリアは順工業地域で、高さ制限は20mなので7階建てになっている。
この数値でも分かるように、10-15-20と5ないし10m刻みで規制がかけられている。31mというのは100尺(1尺は約30.3cm)で、尺貫法を用いていた時代の名残だ。つまり旧来の尺貫法をmに置き換えただけで、10mも20mも根拠はあいまいだ。
記者は以前からこの建物の絶対高さ規制には反対してきた。建物は機能とともに美しさも大事だと思う。機能面で言えば、居住性能を考えれば階高は3mぐらい必要だし、最近では3.4mぐらい確保したマンションもある。つまり、高さ規制は3~3.3m刻みで行なうべきだし、居住性能の高いものについては、日影規制もあるだろうが、さらに高さ規制を緩和すべきだと思う。
したがってこの20m規制は住宅のレベルを押し下げるものとして機能する。さらに言えば、戸数を抑制することから地価を押し下げるとともに、その逆に規制内で最大の利益を追求するならば分譲価格を絶えず押し上げる要因としても働く。
美しさはどうか。建物のスカイラインが一定なのは美しいともいえるし、そうでもないといえる。難しい問題だ。街並みから突出したスカイツリーは本当に美しいのか、山頂に突き出た大仏像は美しいか。近くで見るのと遠くから眺めるのとではまた違ってくる。建物の高さと景観美は重要な要素ではあるが、絶対的な相関関係はないと思う。
今回のマンションで言えば、高さ規制を守り、容積率をこなすため単調な板状の外壁が建ち並ぶことになる。それよりも、高さ規制を緩和して、公開空地、緑地を十分確保したほうが街並みとしては美しくなると確信する。
建築物の高さ規制は居住性能と街並み景観の視点からもう一度見直すべきだと思う。
大成有楽不動産他「オーベルグランディオ横浜鶴見」販売開始へ(2013/12/5)
絶対高さ制限の背景にある100尺規制とは(2008/6/10)
住友林業 36名の女性プロジェクトチーム発足
LEE 読者との座談会の様子
住友林業は12月6日、女性の視点を商品開発やサービスなどに生かすため、組織を横断した女性プロジェクトチームを立ち上げたと発表した。
プロジェクトチームは、2013 年3 月に住宅事業本部で住宅の商品、インテリア、販売、部材、施工、人財などの開発に関わる各部の担当と、住宅設備機器の製造などを行う住友林業クレストの収納部材の担当をメンバーとして発足。6 月にリビング空間の収納力と快適性を両立する収納提案「こまま(comama)」を提供。10月には、全国の支店から選ばれた営業・設計・生産・総務・インテリア担当社員もメンバーとして加え、総勢36 名で本格始動した。
本格始動の第一弾として、12月7日発売の女性誌「LEE」(集英社発行)で、木の家の良さを子育て世代の女性に知ってもらうコラボレーション企画「きれいを未来につなぐ木の家」の連載(全4回)を始める。
同社はこれまでも女性社員が中心となり、家事や子育ての負担を軽減する生活提案型商品「mamato(ママト)」などを提案してきたが、今後継続的に女性の視点を生かした商品や部材の開発を推進し、サービスなどのソフト面の提案力を強化するのが目的。
「ピンク」一色 住林の新商品「mamato (ママト) 」発表会(2011/6/2)
三井不動産 「(仮称)新日比谷プロジェクト」が都市計画決定
「(仮称)新日比谷プロジェクト」完成予想図
三井不動産は12月6日、千代田区有楽町一丁目の「三信ビルディング」(昭和5年竣工)および「日比谷三井ビルディング」(昭和35年竣工)の跡地を一体開発する「(仮称)新日比谷プロジェクト」が同日、都市計画決定されたと発表した。
計画地は、日比谷公園、日生劇場や宝塚劇場、スカラ座・みゆき座などの劇場・映画館、帝国ホテル東京などに隣接するとともに、国際的なビジネス拠点である大手町・丸の内・有楽町地区、官公庁が集積する霞が関地区などにも近接。
同社は、この立地条件を最大限に活かし日比谷地区を日本橋地区に続く都心におけるスマートシティ第2 弾として進化させ、東京の都市再生に貢献できる街づくりを推進する。
計画では最新のBCP 性能を備えたオフィス、都心の賑わいを醸成する商業施設などを主要用途とした大規模複合ビルを建設するとともに、計画地内のオープンスペースと隣接する千代田区の広場を一体的に整備することにより、まちの中心に約4,000 ㎡の広場空間「(仮称)日比谷ゲートプラザ」を創出する。
敷地面積は約10,700 ㎡、建物は地上35階建て、地下4階。2014年度に着工し、2017年度に竣工予定。