RBA OFFICIAL
 

IMG_0891.jpg
完成した制振装置TMD(中央が錘、緑の部分は変形を抑制するオイルダンパー、縦の鋼鉄は錘を吊るすケーブル)

 三井不動産は9月1日、「コレド室町2」「コレド室町3」などの店舗と連携した誘導訓練、帰宅困難者訓練と、竣工46年を迎える「霞が関ビル」、竣工40周年を迎える「新宿三井ビル」の防災設備補強工事見学会を行った。記者は、一番興味がある「新宿三井ビル」の安心・安全、BCP(事業継続計画)の取り組みを見学した。面さ約1,800t、容積にして20坪のマンション52戸分の制振装置TMDには驚愕した。

 同社は、既存ビル60棟を対象に約200億円を投じるBCP改良工事を5カ年計画で進めており、「新宿三井ビル」では非常時の電源を確保するため72時間稼働の非常用発電機を低層棟に3台設置した。費用は約15億円。

 制振装置はBCP工事とは別枠で、55階建てのビルの屋上に鹿島建設が開発した日本で初の超大型制振装置TMDを設置する工事。費用は約50億円。

 TMDとは、スカイツリーなど超高層ビル・建築物の風揺れ対策として採用されている振子式の錘(おもり)技術を発展させたもので、超高層ビルの地震の揺れ対策として実用化したもの。屋上に設置するため、眺望が阻害されたり有効床面積が減少することもなく、居室内工事がないためテナントへの影響を大幅に低減できるメリットがある。

 新宿三井ビルに設置されるTMDは6基で重さは約1,800t。東日本大震災時に観測された同ビルでの長周期地震動(振幅幅約2m)を半分以下に抑えることができるという。ビル全体の荷重は8万tだから、補強工事も軽微で済んだという。メンテフリーだともいう。完成後は覆い隠される。

IMG_0895.jpg
人と比較しても1基の大きさが分かるTMD

◇       ◆     ◇

 この制振装置は、昨年7月、同社と鹿島建設がリリースを発表したとき、必ず見学しようと決めていた。リリースを読んだだけではよく分からなかったからだ。原理としては理解できても、およそ1,800tなるものの振子の錘がどのようなものか想像すらできなかった。

 実際に見学して驚愕した。完成した1基の面積は11m×13m、高さは12m。その中に重さ300tの鉄の錘がケーブルで吊るされていた。いまは工事途中なので、錘は動かないよう固定されていた。

 巨大な建屋がどれくらいのものか分かりやすく紹介するために20坪(66㎡)のマンションと比較してみた。マンション1戸の高さは3mとして計算した。その結果、6基全体では52戸に相当することが計算上分かった。中規模マンション1棟だ。

IMG_0897.jpg

◇       ◆     ◇

 もう一つ気になるのがこの工事によって賃料はいくらになるか、周辺ビルへの影響だ。新宿エリアでは東新宿や西新宿で最新の大型ビルが竣工し、既存の昭和40年代後半から50年代にかけて建設されたビルの空室率は年々大きくなってきている。耐震補強を行っていないビルもあり、大量の空きを抱えたビルもある。

 これについて同社は多くを語らなかったが、他のビルとの競争力が増したのは間違いなく、他のビルも対応策を取らざるを得なくなるのではないか。賃料を下げることだけで解決する問題でもなさそうだ。

 参考までに聞いたら、非常時に余剰電力を周辺のビルに供給することは法律で禁止されているとのことだった。地域防災の観点から法律の見直しが必要ではないか。

IMG_0886.jpg
非常用発電装置(これも巨大、横幅は8m、縦幅は2m、高さは5mくらいか。燃料はジェット燃料)

 【空撮合成】街区全景(軽).jpg
「シティタワー金町」全景(合成写真)

 住友不動産は8月28日、葛飾区の三菱製紙跡地の再開発大規模マンション「シティタワー金町」のモデルルーム見学会を行った。公園・大学・住宅・商業からなる約33.3haの複合開発エリアのランドマークとなる全840戸の規模で、1期の坪単価は約220万円になる模様だ。施工は竹中工務店。

 物件は、千代田・JR常磐線金町駅から徒歩12分、葛飾区新宿六丁目に位置する37階建てタワー棟700戸と13階建てレジデンス棟2棟140戸の合計840戸の規模。専有面積は62.27~84.41㎡、予定価格は3,900万円台~6,000万円台。坪単価は未定だがタワー棟で220万円くらいになる模様だ。竣工予定はタワー棟が平成28年3月下旬、レジデンス棟が平成27年2月下旬。設計・施工は竹中工務店。

 現地は平成13年、三菱製紙からUR都市機構が用地を取得。その後、東京都、葛飾区などとともに街づくり計画が進められてきた。平成19年に都市計画決定された。開発面積は約33.3haにも及ぶもので、昨年開校した東京理科大学葛飾キャンパスを中心に今回の中高層住宅ゾーン、約71,000㎡の公園、都市型工場・研究ゾーン、低中層住宅ソーン、文化・教育ゾーン、生活利便ゾーンからなる大規模複合開発。同社が用地を取得したのは平成19年2月。

 建物は約71,000㎡の「葛飾にいじゅくみらい公園」に隣接し、設計・施工は竹中工務店。タワー棟は地盤液状化対策「TOFT」と免震工法を採用。敷地内に約3.800㎡の緑地も整備するほか、敷地外周部は散策路も整備する。敷地に隣接する商業棟の用地は同社が取得しており、スーパーが予定されている。また、敷地東側の約1.8haの「生活利便複合ゾーン」は同社が開発することになっており、約600戸のマンションを建設する。

 隣接する東京理科大は「地域に開かれたキャンパス」を標榜しており、葛飾区民は水辺のカフェ、学食、図書館が利用できる。

外観(にいじゅくみらい公園から).jpg  葛飾にいじゅくみらい公園.jpg
「葛飾にいじゅくみらい公園」(左)と東京理科大キャンパス

◇       ◆     ◇

 分譲坪単価は予想した通りだった。坪200万以下はないが、かといってそれほど大幅に上回ることはないだろうと思っていた。6年前に分譲された、今回の物件に近接する駅寄りの野村不動産「プラウドシティ金町」(725戸)は約200万円だった。

 高いか安いかはユーザーが判断することだ。広大な公園と東京理科大のキャンパスに隣接しているのが最大の特徴だ。これをどう評価するかだ。

 もう一つ、スーパーゼネコンの竹中工務店の施工に注目したい。同社施工のマンションは首都圏では少なく、住友不動産の調べによると、金町-北千住間の分譲中・今後の予定物件合わせ27物件のうち竹中施工は住友の「お花茶屋」の物件と今回の物件のみだ。

◇       ◆     ◇

 隣接する東京理科大学の図書館やカフェは葛飾区民でも利用ができる。(利用については同大HPを参照) 

 ならば見学しようと同大学広報にお願いして見学させていただいた。

 建物の設計は日建設計で、地下1階地上2階建て。1フロアは約5m。これが素晴らしい。地下を含め5層になっていて、1階のフロアから上にのぼるごとに図書スペースがセットバックされており、まるで劇場のようだ。ソファ、椅子などの家具類は全て輸入品だそうだ。蔵書は約5万冊。ほとんどは専門書だが、一般の人も興味をそそられる哲学書や社会科学、芸術分野の書籍もある。葛飾区に在住していること、18歳以上であることその他の条件はあるが、無料で利用できるというのもいい。

 藤嶋昭学長の推薦本も並べられており、「ロウソクの化学」(角川文庫)「マイケル・ファラデー」(大月書店)が中でもお奨めとのことだった。

 たまたま、来年受験する江戸川区居住の高校生とそのお母さんが見学に来ていたので声を掛けたら、「すばらしい。江戸川区にはこんな図書館はない」と話した。

 図書館に併設されているカフェでは〝葛飾〟にあやかった鹿肉ハンバーガー「葛飾バーガー」が食べられるというので食べてみた。値段は400円。記者はあまりハンバーガーは食べないが、シカの刺身は大好きだ。国産の鹿肉ではなくて、ニュージーランド産だったのは残念だった。わが国の森林・林業の活性化のためにもやはり国産の鹿肉を使ってほしい。

 敷地内にいた近所の子ども連れのお母さんたちは「とても美味しい」といっていた。

図書館.jpg
東京理科大の図書館

 

IMG_0789.JPG
「夕涼みジャズコンサート」

 東京建物不動産販売は8月30日、一般賃貸住宅・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・多世代交流施設などからなる「コーシャハイム千歳烏山」で入居者や地域住民の交流を目指した「ななつのこ夏祭り」を行なった。

 同社は、コーシャハイム千歳烏山のサービス付き高齢者向け住宅の賃貸・管理運営のほか、有限会社エヌアンドエスコミュニティアソシエイツと協働して多世代交流施設の運営も行っており、今回のイベントもその一環。

 この日は多世代交流施設内のコミュニティカフェ「ななつのこ」が会場となり、世田谷野菜のマルシェ、ジャズ演奏会、併設介護事業所による相談コーナー、併設医療機関による暮らしの医療相談セミナー、介護なんでも相談セミナーなどが行われた。

 コーシャハイム千歳烏山は、多世代共生を目指し、同じ敷地内に一般賃貸住宅・サービス付き高齢者向け住宅・高齢者居宅生活支援施設・多世代交流施設などが配置されている。

IMG_0792.JPG IMG_0790.JPG
マルシェ、寄贈本受付コーナー、わたあめコーナー(左)と寄贈された図書(絵本などのほか堀辰雄「風立ちぬ・美しい村」、梅崎春生「桜島・日の果て」、渡辺淳一「エ・アロール」、百田尚樹「永遠のゼロ」、モーム「月と六ペンス」などもあった)

◇     ◆   ◇

 サ高住の入居者と一般賃貸住宅居住者、近隣住民がどのような交流を行なうのか興味があったので取材した。

 千歳烏山の農家が生産した4個100円のシシトウ・ピーマンを買い、カフェに持ち込み、ビール代わりに200円のコーヒーを頼み、シシトウをつまみながらサ高住の入居者に話しかけた。取材は断られたので書けないが、入居者同士で友だちができたのを歓んでいた。近所に住む30歳代の2人の子ども連れの女性は「子どもが小さいので、このような施設があるのは助かる」と話していた。「世田谷は子育てが厳しい」と語った共働き夫婦もいた。

 夏祭りの目玉となっていたプロのギター:斉藤拓人さん、ボーカル:RIO さんによる「夕涼みジャズコンサート」には会場いっぱいの数十人が集まった。サ高住の入居者だけでなく、小さな子ども連れの家族の姿も目立った。最後の演奏「七つの子」は烏山にぴったりだったようで、みんな手拍子を取り合唱となった。

 サ高住15戸、一般賃貸8戸からなるリファイニング賃貸11号棟の入居者同士の交流会も行なわれた。一般賃貸入居者2組3人を含む十数人が集まり自己紹介したあと、斉藤さんとRIOさんの音楽やゲームなどを楽しんだ。

 一般賃貸に住む40歳代の独身女性は「近くに10年くらい住んでいたが、入居者同士のつながりは全くなかった。ここならそれが可能かと申し込んだ」と話し、60歳代のサラリーマン夫婦の夫は「成城の賃貸に20年住んでいたが、駅から遠かった。女房が『駅近』『商店街』を希望したので入居を決意した。サ高住との同居は気にならなかった。むしろわれわれもどういう施設か経験しておいたほうがいいと思った。天井が低いのと収納が少ないのは難点」と語った。

IMG_0800.JPG
RIOさん(左)と斉藤さん

サ高住「コーシャハイム千歳烏山」 「囲い込み施設にしない」JKK狩野氏(2014/3/31)

 

IMG_0771.JPG
オーロラビジョンに映し出された三菱地所の新CM(手前は体操ニッポン6選手)

 三菱地所は8月29日、「体操ニッポン」のオフィシャルスポンサーとして協賛することを決定したことに伴い、東京ドームで行なわれたプロ野球、北海道日本ハム-千葉ロッテのゲームスポンサーとして「『三菱地所を、見に行こう。』ナイター」と銘打って体操ニッポンを応援する新CMのお披露目を行なった。

 イベントは試合開始の30分前に開始。同社が招待した子どもたちのベースランニングと西武-日ハムの投手として活躍した柴田保光氏と柏原純一・日ハムコーチとの対決に続き、内村航平選手ら世界選手権男子日本代表選手6人が登場。同社の「体操ニッポン篇・丸の内篇・商業施設篇」30秒3本がオーロラビジョンに映し出され、内村キャプテンの挨拶、日ハム・栗山監督と伊東・ロッテ監督への花束贈呈、6人の同時投球による始球式などが行われた。

IMG_0782.JPG IMG_0777.JPG
体操ニッポン6選手から両監督へ花束贈呈

IMG_0766.JPG
「西武? まだいけるんじゃないの」柴田氏

◇     ◆   ◇

 「『三菱地所を、見に行こう。』ナイター」は昨年に続き2回目。今年も広島ファンの杉山博孝・三菱地所社長、竹添昇・日ハム社長からコメントを取るのを楽しみにしていたが両氏は欠席。肩透かしを食らった。

 セレモニー終了後には内村選手の囲み取材もあったが、テレビのわずか3分の代表質問一つで打ち切り。「三菱地所をどう思うか」などの気の聞いた質問をする記者はいなかった。

 西武ファンの記者は西武のBクラスが決定的で、日ハムが勝とうがロッテが勝とうがどっちでもよく、せめて6人に三菱地所の印象などを聞こうと思ったが、こちらも肩透かし。

 ならは観戦者にインタビューしようと移動する際、エレベータ内で4人の選手と一緒になった。すかさず「三菱所って知ってました? 」の質問を発した。みんなうなずいた。そこで「三菱地所ってどういう印象ですか」と二の矢を放った。「……」ややあって、「体操ニッポンと同じ。元気で明るくいい会社」と記者の知る三菱地所のサクラが〝名答〟を代弁した。

IMG_0783.JPG
6選手の同時投球始球式

◇     ◆   ◇

 三菱地所も日ハムもイベントを取り仕切る広告代理店も策がない。観客は1時間も前から詰め掛けている。この日は約3万人。社長や監督、CMキャラクターなどのトークショーなどを交えたらもっと面白いイベントになるはずだ。

IMG_0779.JPG
白井健三選手(左)と内村航平選手

三菱地所の新CM発表会「三菱地所を、見に行こう。ナイター」(2013/9/3)

p_01.jpg
「ライオンズ久米川駅前」完成予想図

 大京が分譲中の「ライオンズ久米川駅前」を見学した。郊外の駅前マンションの売れ行きを知りたかったからだ。単価の高さに驚いたが、設備仕様はとても郊外マンションのそれとは思えないほどグレードか高かった。

 物件は、西武新宿線久米川駅から徒歩2分、東村山市栄町2丁目に位置する15階建て全58戸の規模。専有面積は56.08~75.79㎡、現在分譲中の住戸(5戸)の価格は3,490万~4,240万円(56~68㎡)、坪単価は207万円。竣工予定は平成27年7月27日。施工は西松建設。今年4月から分譲開始されており、現在までに28戸が契約済みだ。

 立地・建物の特徴は、商業地域立地ではあるが建物を北側道路に寄せることで敷地南側に約18.7mの空地を確保したこと、エントランスは御影石張り、敷地内には約1,800本の樹木が植えられることなど。

 商品企画では、太陽光全量売電サービスを採用しているほか、同社の「新・パッシブデザイン」「ライオンズリビングラボ」がフル装備されている。換気機能付き玄関ドア、通気ルーバー付き扉、自然換気ストッパー付きサッシ、エコガラスなどを採用。キッチンカウンタートップは御影石、食洗機も標準。停電時でも10時間以上エレベータが稼働できる自家発電装置付き。

◇       ◆     ◇

 単価の高さには正直驚いた。いかに駅近とはいえ、久米川で坪200万円を突破するとは予想できなかった。記者なら設備仕様レベルを落とし単価を下げるが、そうしないのが大京らしい。販売担当者も「やはりみなさん、高いという印象を持たれている」と話した。

 しかし、5か月で28戸の契約は大健闘だろう。ファミリーのほか単身女性の購入も目立つという。販売担当者は「出来上がってくれば建物の良さが分かってもらえるはず」と話していた。

 一昨日(8月26日)、都心部のアッパーミドル・富裕層向けマンションが驚異的な売れ行きを見せているという記事を紹介した。このことと関連する興味深いデータを発見した。東京都が発行している「平成25年度市町村税課税状況等の調(特別区関係)」によると、課税標準額が1,000万円を超える納税者の数は23区全体としては289人前年より増えているのだが、都心部の外周部に位置する各区では大きく減少しているデータだ。

 課税標準額とは、所得税や住民税を課す際の対象となる額のことで、給与所得、退職所得、山林所得などの総所得から社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除などを差し引いた額を指す。課税標準額が1,000万円以上ということは、単純計算で都民税と区民税合わせ100万円の納税額となる。

 都のデータによると、平成25年の23区の納税義務者数は約450万人で、このうち課税標準額が1,000万円以上の人は全体の3.9%に当たる約17.8万人だ。前年より289人増加している。

 ちなみに、23区平均では200万円以下がもっとも多く55.3%を占め、200万円超700万円以下が37.4%、700万円超1,000万円以下が3.4%となっている。

 1,000万円超の占める割合が高い区は港区(13.5%)、千代田区(12.4%)、渋谷区(9.1%)、文京区(7.8%)の順で、逆に200万円以下の占める割合が高い区は足立区(64.0%)、葛飾区(62.7%)、板橋区、江戸川区(60.4%)などだ。

 さて、冒頭の課税標準額が1,000万円以上の納税者の増減に関することだ。区別に増減を見ると、増加しているのは千代田区(71人)、中央区(78人)、港区(56人)、新宿区(57人)、渋谷区(126人)、文京区(30人)、台東区(71人)、品川区(37人)、目黒区(178人)、豊島区(120人)、足立区(58人)、北区(13人)など16区。16区全体では994人増加した。

 減少しているのは大田区(115人)、世田谷区(49人)、杉並区(200人)、板橋区(40人)、練馬区(179人)、江戸川区(113人)、中野区(9人)の7区。7区で705人減少した。

 この数字が何を物語っているか。詳しい分析は転入転出、相続・贈与、その他の要因を詳細に調べないと分からないが、記者は都心の外周部・準都心部に住むアッパーミドル・富裕層が大量に都心へ流れているのではないかという仮説を立てた。ほかに考えられる理由が見つからない。相続・贈与も影響していそうだが、なぜこれほどまでに区によって偏りが出るのか解せない。

 例えば豊島区と練馬区の関係。隣り合う区だが、豊島区が120人増えて、練馬区は179人もどうして減るのか。目黒区と世田谷区の関係も同様だ。世田谷区で49人減少し、隣接する目黒区で178人も増えている。

 同じように大田区や江戸川区なども大きく減らしているのも、アッパーミドル・富裕層が利便性や資産性の高い地域に転出しているという仮説は成立しないか。

 唯一この仮説が当てはまらないのは足立区だ。足立区は課税標準額の平均が23区でもっとも低い区だが、この区で課税標準額が1,000万円以上の納税者が前年より58人増加している。この理由は見当がつかないのだが、北千住や西新井の駅前再開発が進み、東京藝大、東京未来大、帝京科学大、東京電機大などのキャンパスも誘致され、イメージがよくなっているのは確かだ。

 同区のホームページトップには「7月末現在、足立区の刑法犯認知件数は、4,363件で統計上初めて23区中6位となりました。41年ぶりに9千件を下回った昨年の月平均は687件、今年7月までの月平均は623件ですのでさらに治安は改善されており『安全・安心なまち足立』が実証されています」とあった。

 この問題について、杉並区と足立区に聞いたが、いずれも理由は分からないということだった。他の区も同様の答えが返ってくるはずだ。

 億円単位で税収が増減するのにその原因を当局は把握していない。これはどういうことか。民間企業なら経営責任を問われかねない。

 所得分布については総務省が5年おきに実施している「住宅・土地統計調査」などで分からないではないが、機動的に対応するために行政当局は転入者・転出者の属性を調べ、区の経営に生かすべきだ。

 こんなことでは益々激化する都市間競争に勝てないだろうし、市場原理に翻弄されるだけだろう。近く各区の今年度の課税状況が公表されるはずだ。アッパーミドル・富裕層の転入転出に注視したい。アベノミクス効果で増加するのは間違いないが、富はまんべんなく行き渡るのではなく偏在傾向に拍車をかけることになるのではないか。

社長 顔写真.jpg
久光社長

 「今日ほどマンションの利便性、資産性が重視される時代はない。富裕層・アッパーミドル向けは絶好調だが、年収が400~600万円台の第一次取得層向けは激減している。この傾向は益々強まり、〝新々価格〟が前倒しで一部供給されているように、価格もこれから10%は上昇する。郊外を除き3,000万円台の物件がなくなる。消費税率も10%に引き上げられるのは間違いない」-マンションのコンサルティング事業を展開しているトータルブレイン・久光龍彦社長がこう語った。

 一般サラリーマンにとってはショッキングな話だ。しかし、久光氏が語るとなると信じざるを得ない。並みの評論家などとは比べようがないくらい裏付け・根拠がしっかりしているからだ。

 久光氏は言う。「本業をフォローする意味はありますが、いま月に40~45社くらい回っています。20社くらいは定期的に回っているところですが、残りは大手・中小、さらには流通業界までフォローしています。業界のご意見番として役立てればとやっています。

 マスコミじゃありませんからトップや秘書に直接電話してアポをとり出かけています。時候のあいさつもなし。すぐ仕入れやら単価の話に入る。相手のトップの方も外に漏れる心配がないから本音で話してくれる。皆さんからは『いつも少し先を読んでいらっしゃる』と仰っていただいています」

 月に40~45社というのはすごい。久光氏は74歳だ。1日2~3社もよく回れるものだ。

 マンション事業は水もの。一つのプロジェクトで用地の仕入れ-販売-引き渡しまで最低で1~2年だが、この間、一瞬にして市況が変わることもある。かじ取りを誤ればたちまち苦境に陥るのがこの業界だ。業界各社の動向を熟知している久光氏から各社のトップが情報を得ようとするのは当然だろう。お互い損得もないから忌憚のない言葉を交わせるのもうなずける。

 マスコミ関係者はこういう芸当はできない。昔は広報を通さず直接企業のトップに取材することもできたが、最近は広報のチェック体制が強化されており、そのような取材をやろうものなら取材チャンネルは遮断されるし、取材を受けたトップの責任も問われかねないからだ。

 記者はアポを取るのに時間はかかるしトップに易々と会えないから、現場に飛ぶようにしたのがマンション取材をするようになったきっかけだ。現場は正直だ。現場に行くと見えないものが見えてくるし話では分からない部分も分かるようになる。それでもいまは年間100件も見学していない。

 久光氏にはもう一つ、誰もが真似のできない経験・経歴がある。同社は今から15年前に久光氏が立ち上げた会社だが、久光氏はそれ以前に長谷工コーポレーション専務-長谷工不動産社長-長谷工アーベスト社長-長谷工コミュニティ社長を歴任している。施工から開発、販売・仲介、管理までマンションの川上から川下まですべて知り尽くしている業界人は久光氏をおいてまずいない。

 そういう人だから話は説得力がある。以下に久光氏の見解を紹介する。

 「年収が400~600万円台のサラリーマンが無理なく買える3,000万円台の物件は間違いなく少なくなります。建築費はこのところ20%くらい上昇していますが、このうち10~15%は売り値に反映させないようコストを削減すれば吸収できます。ところが20%を超えてくるとなると、体力のある大手はともかく中堅デベロッパーは価格にオンするか損切りせざるを得なくなると見ています。大手もこれ以上価格を上げると売れなくなるのは分かっているから、利益率を圧縮して〝新価格〟程度に抑えるはずです」

 「マンションの歴史を50年以上見ていますが、今日ほど好立地、利便性が重視される時代はありません。その背景には少子高齢化、空き家問題があります。最寄駅から遠い物件は中古になって売れない、貸せないとみんな思っています。だから狭くても高くてもいいから駅から近い物件を買う人が増えているのです。デベロッパーも(郊外の駅から遠い)価格の安さで勝負できなくなってきました」

 「価格はこれからあと10%は上昇するとみています。デベロッパーにはとにかく立地、好立地の仕入れに経営資源、人材を投入すべきと言っています。幸い、ブランド立地のものはファミリーもDINKS・単身者向けも投資需要も旺盛です。投資需要では湾岸マンションは台湾人など外国人が30%くらい買っています。一次取得層にとっては中古マンションが国の政策的な後押しがありますから大きな選択肢の一つになる時代がやってくるでしょう」

◇      ◆     ◇

 久光氏の見解をよく吟味して物件選考の参考にしていただきたい。記者がコメントを挟む余地などまったくない。ただ一つだけ言わせていただければ、記者は子育て層には駅から遠くても住環境がいい緑が豊富な郊外物件も選択肢に入れるべきだと思う。マンションは金融商品ではない。ライフスタイルをよく考えてほしい。

03_立川駅周辺鳥瞰空撮.jpg

「プラウドタワー立川」完成予想図

 都心部のアッパーミドルや富裕層向けマンションが極めて良好な売れ行きを見せている。希少性はもちろんだが、アベノミクス効果による景気回復やオリンピック誘致決定を受けた先高観を背景に〝上がるから買う、買うから上がる〟株の世界と同様のバブリーな動きになってきた。さらに、来年の相続税・贈与税の税制改正を睨んだ節税対策としても格好のターゲットにもなっている。

希少性、先高観に節税対策も要因

 アッパーミドル・富裕層向けマンションが爆発的な売れ行きを見せるようになったのは昨年あたりからだ。昨春、隈研吾氏がデザイン監修した豊島区庁舎との一体開発で話題になった東京建物他「Brillia Tower池袋」(全432戸、分譲322戸)が坪単価340万円という池袋駅圏では最近にない高値だったにもかかわらずわずか7週間で完売した。

 その後、坪単価800万円というリーマン・ショック後の最高値になった〝唯一無二〟の三菱地所レジデンス「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」(73戸、分譲22戸)が即日完売。野村不動産他「Tomihisa Cross」(1093戸、分譲992戸)も坪単価330万円ながら実質半年で完売。大手デベロッパー6社JV「SKYZ TOWER&GARDEN(東京ワンダフルプロジェクト)」(1110戸)も瞬く間に売れた。

 好調市場は今年に入って加速している。7月末に分譲開始された三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田綱町ザフォレスト」(97戸)の第1期80戸がほぼ完売した。坪単価は725万円で、最低価格でも1億2000万円台、最高が7億円台という文字通りすべてが億ション。登録数は80戸を大幅に上回る110件に達した。

 敷地北側はオーストラリア大使館、東側は綱町三井倶楽部、その先がイタリア大使館、慶大三田キャンパスがある都心の一等地というのが人気の要因だ。同社のこれまでの「パークマンション」シリーズと比較して来場ペースは倍近いという。

 JR中央線立川駅前の野村不動産「プラウドタワー立川」(319戸、分譲292戸)の第1期230戸の即日完売も業界関係者を驚かせた。坪単価340万円というこれまでの立川駅圏のマンションをはるかに上回る価格だが、ランドマークとしての資産性が評価された。

 同社はこのほか、「プラウド白金台三丁目」(83戸)の第1期53戸と「プラウド自由が丘」(28戸)の高額2物件を相次いで即日完売した。前者は70年の定期借地権付きで坪単価は460万円台。後者は坪単価430万円台で、ほとんどが億住戸だった。

 オリンピック選手村にも近い湾岸マンションも総じて好調だ。鹿島建設他「勝どきザ・タワー」(1420戸)は1期500戸の坪単価を307万円に抑えたのが奏功したのか、600件を超える申し込みが入った。逆に、住友不動産「ドゥ・トゥール」(1450戸、他にSOHO216区画)は坪単価350万円の高値挑戦だが、売れ行きは好調に推移している。

 港区芝浦の三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER」(883戸)は坪単価330万円だが、1期380戸の最高価格1億8200万円の住戸にも5組の申し込みが入った。

 住友不動産「シティタワー武蔵小杉」(800戸)は他社物件より1割高い都心並みの坪単価320万超だが、これまで230戸を契約した。同社は坪単価400万円の「インペリアルガーデン」(167戸)も54戸を供給して45戸を契約するなど、順調な売れ行きを見せている。

◇        ◆     ◇

 これからも単価上昇は続く。高値追求する物件が続々供給される見込みだ。

 今秋にモデルルームが公開される東横線代官山駅近のアパ「THE CONOE代官山」(209戸)の坪単価は650万円くらいになると予想される。同社はこのほか「三田綱町」(45戸)「西麻布」(16戸)などを予定しているが、関係者は坪800万円を超えると明言した。

 このほか、東京ミッドタウンに隣接する三井不動産レジデンシャルの物件は隈研吾氏がデザイン監修しており、坪単価が1000万円を超えるかどうかが注目される。湾岸エリアは下値が300万円超となる。  

 千代田区一番町のイギリス大使館も一部国に返還されることが決まった。皇居に隣接していることから、マンションになれば「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」の坪単価800万円の比ではく、1000万円をはるかに超えるのは間違いないとみられる。

IMG_9648.jpg
建設中の「パークマンション三田綱町ザフォレスト」

 建設技能労働者の不足傾向が拡大-国土交通省は8月25日、建設労働需給調査結果をまとめ発表したが、全国の7月の建設関係8職種の過不足率は6月の1.3%から1.7%へ拡大。職種別では鉄筋工が前月の2.8%から3.8%へ拡大した。地域別では、東北が前月の2.0%から3.3%へ拡大した。

 調査は、型枠工、左官、とび工、鉄筋工など8職種について毎月行っているもので、7月の8職種の不足率は全体で1.7%となり、前月の1.3%から4ポイント拡大。職種別では鉄筋工が3.8%(前月は2.8%)、型枠工(建築)が2.3%(前月は2.5%)となっている。

 地域別では、全地域で技能労働者が不足傾向にあり、東北の不足率は6月の1.2%から7月は2.8%に拡大している。

◇       ◆     ◇

 熟練工の不足について、宮城県多賀城市のある会社に聞いた。担当者は次のように語った。

 「手元(3年未満の補助的な作業をする人)はたくさんいるが、うちのような専門の技能者を抱えているところは人を確保するのが難しくなってきた。震災前は日給が15,000円くらいだったのが、震災後は18,000円から20,000円くらいに上昇している。

 うちは社会保険や失業保険に入っており、従業員の家族を大事にしているが、熟練工の人たちはそのような待遇よりも賃金の高いところを選ぶ傾向が以前からある。下請け・孫請け会社でも直接仕事が取れるのも職人の移動を激しくしている」

 

 

積水ハウス「ハイブリッドS-MJ」.jpg
「ハイブリッドS-MJ」

 積水ハウスは8月25日、木造住宅「シャーウッド」に在来工法の4倍の業界最高強度を持つ耐力壁などを採用し、耐震性能を維持しながら設計の自由度も高めた新構法「ハイブリッドS-MJ」を開発、「シャーウッド」全商品に同日から導入すると発表した。

 新構法は、合板の二重張りや高耐力接合金物などにより強度を高めた耐力壁や、ラーメン柱と耐力壁の併用によりモノコック構造の堅さとラーメン構造の高い自由度を併せ持つ構造などを導入しており、設計条件が厳しい敷地や、3階建て、多雪地域でも大空間の提案が可能という。

 価格は3.3㎡当たり61万円から(本体価格のみ)。販売目標は150棟/月。

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン