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 「エネマネハウス2014」の最優秀賞に東大チーム-「エネルギー」「ライフ」「アジア」の3つのコンセプトに基づき2030年の先進的な技術や新たな住まい方を競う「エネマネハウス2014」の最優秀賞は東京大学のモデルハウスが受賞した。来場者による得票数では芝浦工大チームがトップとなった。

 モデルハウスは東大、芝浦工大のほか慶大、千葉大、早稲田大の各チームによる5棟。最優秀賞は審査員による評点200点と省エネの測定結果による評点100点の合計300点で争われた。評点は公表されない。来場者アンケートは「住みたい家」を選ぶもので、総合評価300点の点数には含まれない。

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 別掲のように記者も総合評価点を予想したので、東大チームが優勝したのにはほっとした。建築コストは評価要件に入っていないようだが、5棟の中でもっとも安かったのは東大チームではないかと思う。他は坪200万円くらいかけていた。コストを意識しないのはいかにも学生さんらしい。これもまたいい。

 芝浦工大が〝ファン投票〟でトップとなったのはやや意外だが、豊洲にキャンパスがあり、学生さんの組織票があったのではないか。西武ファンの記者にとっては伊原監督が芝浦工大卒なので、なにやら優勝を予感させるようでとてもうれしい。

 ピンクの外観を酷評した早大だが、あのとてつもない大発見をした早大卒の小保方晴子さんも研究所の壁をピンク一色に染めたそうだ。これは単なる偶然か。しかし、「つらいときも泣いた夜も、今日一日、明日一日だけ頑張」っても、ピンクの外観は少なくともわが国では受け入れられないし、成功しないことを早大チームの学生諸君は覚悟すべきだ。記者の今を見れば一目瞭然だ。数十年前、記者の女房はトイレットペーパーまでピンクに染めた。

「エネマネハウス2014」 記者の評価№1は東大 早大は?(2014/1/30)

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「クレヴィア原宿」完成予想図

 伊藤忠都市開発が分譲中の「クレヴィア原宿」を見学した。原宿駅では供給が少ない面積が広めのDINKS・ファミリー向けが中心で、1期24戸が即日完売した。

 物件は、JR山手線原宿駅から徒歩9分、東京メトロ副都心線北参道駅から徒歩3分、渋谷区千駄ヶ谷三丁目に位置する14階建て全57戸。専有面積は33.68~94.03㎡。1期2次(15戸)の価格は3,960万~10,580万円(最多価格帯6,900万円台・7,600万円台)。坪単価385万円。竣工予定は平成27年2月下旬。施工は佐藤工業。

 現地は明治通りに面しており、敷地南側にはこのマンションと同程度の高さのビルが建っており、住戸は西向きと北向きが中心。コンパクトタイプの1LDK(33~34㎡)が10戸のほかは40㎡台から70㎡台の住戸が中心。1期24戸では広めのDINKS向けが人気になった。

 同じエリアでは三井不動産レジデンシャルが昨年分譲した北参道駅前の「パークリュクス渋谷北参道」(67戸、坪単価371万円)が即日完売している。

 
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「(仮称)カワサキミライク-川崎未来区-」完成予想図

 住友不動産は2月8日から川崎市の大規模マンション「(仮称)カワサキミライク-川崎未来区-」(地上7 階建て・総戸数257 戸)の事前案内会を開始する。

 物件は、京急大師線鈴木町駅から徒歩5 分、川崎市川崎区大師駅前2丁目に位置する7階建て257戸。専有面積は65.78~81.36㎡。竣工予定は平成27 年1 月。施工は長谷工コーポレーション。

 物件が位置する多摩川沿いエリアは川崎市の「豊かな自然環境を備えた、人・モノ・情報などが集積する産業の創造と賑わいの拠点形成」を目指した「多摩川リバーサイド地区整備構想」が計画されている。隣の港町駅前では京浜急行電鉄と大和ハウス工業による大規模マンション「Riverie(リヴァリエ)」(3棟総戸数1,408 戸)の建設が進められている。

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「エネマネハウス2014」モデルハウス 「慶応型共進化住宅」

 東京ビッグサイト東雲臨時駐車場で1月31日まで公開されている「エネマネハウス2014」モデルハウス〝2030年の家〟を見学した。経済産業省資源エネルギー庁の事業のひとつとして行われているもので、「エネルギー」「ライフ」「アジア」の3つのコンセプトに基づき先進的な技術や新たな住まい方を提案するモデルハウス5棟が展示されている。

 大きなテーマとなっているのは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」。ZEHとは、省エネに加え、太陽光発電などにより住宅の年間のエネルギー消費量が正味(ネット)でゼロとなる住宅のこと。

 ZEHが広く国内だけでなくアジアなどの海外に普及させていくためには省エネの観点だけでなく、快適性や気候、風土にあった住まい方が重要なポイントであることから、ZEHが備えるべき要件や評価方法を標準化するために今回の開催となった。

 展示されているのは、「慶応型共進化住宅」(慶応大学/OMソーラー・銘建工業・長谷萬など27社)、「母の家2030 -呼吸する屋根・環境シェルターによるシェア型住宅スタイル-」(芝浦工大/パナソニック、銘建工業など14社)、「自然エネルギーを活用した持続可能なブラスエネルギー住宅『ルネ・ハウス』」(千葉大/JKホールディングスなど35社)、「CITY ECOX 2030年における都市型住宅のZEHプロトタイプ」(東大/積水ハウスなど17社)、「Nobi-Nobi HOUSE」(早稲田大/旭化成ホームズなど9社)。

 31日に審査員により提案内容の有望性・実現性・完成度などが評価され、結果が公表される。審査委員長は村上周三氏(建築環境・省エネルギー機構理事長)で、審査委員は赤池学氏(ユニバーサルデザイン総合研究所所長)、柏木孝夫氏(東京工大教授)、木場弘子氏(キャスター・千葉大客員教授)、隈研吾氏(建築家・東大教授)、武田史子氏(ベネッセコーポレーション「サンキュ!」編集長)、中上英俊氏(住環境計画研究所会長)。

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記者の評点  東大95点 慶大90点 芝浦工大90点 千葉大85点 早大?

 採点は省エネなど客観的な測定結果による評価(100点)と審査員による評価(200点)の総合評価(300点)で行われる。来場者アンケートによる評価(住みたい家)は総合評価には加えず、参考情報として得票数1位の事業者が表彰される。以下、各チームの特徴と、デザイン性、居住性、テーマ性に重点を置いた記者の評点(100点)を紹介する。

 「慶応型共進化住宅」は、今話題となっている杉集成材(CLT)を用いた純国産材の木造住宅。屋上・壁面緑化により緑化も図っている。CLTはわが国では認定されておらず、まず準防火などの規制がある大都市では建築不可だが、テーマ性、コンセプトがいい。銘建工業の中島浩一郎社長は林業関係者で知らない人はないのだろうが、「里山資本主義」で全国区人気になったのではないか。ルーバーパネルヒーターもいい。断熱材には古新聞を採用しているそうだが、性能、施工性はどうなのか。記者の評価は90点。

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慶大「慶応型共進化住宅」

 「母の家2030」は、約60名の学生(うち女性約20名)が企画から施工まで行った木造住宅で、そのものずばり「母の家2030」を〝核シェルター〟のように提案しているのが特徴。床・壁・天井をCLTで覆ったもので、クギは1本も採用されていない。広さは2.4×3.6m。キッチンシェルター、水回りシェルターもある。「父」の部屋がないのが難点。金銭的な支援を受ける父の同意をどうして得るかの工夫がない。記者の評点は85点。

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芝浦工大「母の家2030」

 「ルネ・ハウス」は、〝恒久的に利用できる仮設住宅〟がテーマの一つになっているようで、キッチン、収納などのユニットを自由にレイアウトでき、4層住宅も可能というもの。壁はベニヤ材が用いられていた。説明を聞いたが、4層にしても耐力的に問題ないというのは信じられなかった。〝恒久的〟に仮設を使うコンセプトもよく分からない。スギのチップを断熱材として使用しているのも注目される。素人でも施工できるというから、ホームセンターで売り出せはヒットするかも。評点は80点。千葉大は2012年、スペインで行われた「ソーラー・デカスロン大会でわが国で初めて参加し、参加18チーム中15位に終わった。今年6月にフランスで行われる大会に参加するという。きちんと学習しているのだろうか。

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「ルネ・ハウス」

 「CITY ECOX」は、鉄骨造の都市型集合住宅を提案しているもの。低層3階建てを想定しており、提案は1スパンを中央のセンターフレックスゾーン(幅5m)と左右のサイドコートゾーンにそれぞれ水回りと居室(幅各2.5m)に分け、フレックスゾーンの北側には多目的に利用できる2×5mの空間を提案しているのが特徴。各住戸に太陽光を追尾する可動式太陽光パネルを設置。透光蓄熱建具を採用することで室内温度を調整できる工夫も施されている。住まい方提案が明確、実現性もある。記者の評点は95点。マイナスはシニア向けに赤と黄のデザインはないと思ったのと、水回り(風呂-トイレ-洗面-キッチンが横並びでオープン)に工夫が足りない点。

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「CITY ECOX」

 「Nobi-Nobi HOUSE」は、外観がパープルに近いピンク。地区計画や建築協定がなくても物議を醸す住宅だ。地域との親和性が全く考慮されていない〝喧嘩を売る〟住宅だ。その意図が全然わからなかったが、「対象はアジア」と聞いて納得した。アジアの富裕層には受けるかもしれない。内装はシンプルだが豪華。猫脚浴槽付きの浴室はホテル仕様。評価が難しい。〝海外高級リゾート向け〟限定として85点か。

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 「Nobi-Nobi HOUSE」 写真左は「自宅で使っている」という自然の風を取り込む窓の前に立つ田辺新一教授(メーカーは三協立山アルミ。これはスグレモノ) 

 

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「日本橋室町東地区」

 三井不動産は1月29日、中央区日本橋室町で複数の地権者とともに進めている5 街区にわたる大規模複合開発「日本橋室町東地区開発計画」の第2弾となる「室町古河三井ビルディング」と「室町ちばぎん三井ビルディング」を2014 年2 月1 日に竣工すると発表した。同日、菰田正信社長が記者会見し、約15分にわたって「日本橋再生」のコンセプトである「残しながら、甦らせながら、創っていく。」意気込みを語った。

 会見後、報道陣に公開された賃貸住宅「パークアクシスプレミア日本橋室町」、「室町ちばぎん三井ビルディング」とも設備仕様は〝億ション〟クラスだ。

 「室町古河三井ビルディング」は地下4階、地上22階建て延床面積約62,000㎡。地下1 ~6 階がシネコン含む商業施設「COREDO 室町2」、7~17階が事務所、18~21階が賃貸住宅。統括設計は日本設計。デザインアーキテクトは團紀彦建築設計事務所。施工は清水建設。共同建替え事業者は同社のほか古河機械金属、にんべん、日物、細井化学工業。事務所はアステラス製薬の入居が決まっている。

 「室町ちばぎん三井ビルディング」は地下4階、地上17階建て延床面積約29,000㎡。地下1~4 階が「COREDO 室町3」、8~16階が事務所。統括設計、デザインアーキテクトは「室町古河」と同じで、施工は清水建設・錢高組。共同建替え事業者は同社のほか千葉銀行、わかもと製薬、総武、三越伊勢丹、木屋ビルディング。ほぼ満室稼動が決まっている。

 会見に臨んだ菰田社長は、「グローバルな都市間競争を勝ち抜くには、街固有の歴史、文化、伝統を活かし、環境と共生した持続可能な街づくりが必要で、『残しながら、甦らせながら、創っていく。』というコンセプトを盛り込んだ。第2ステージを構成する4つのキーワードは『産業創造』『界隈創生』『地域共生』『水都再生』だ」などと語った。首都高速についても触れ、「高速を見直す機運は高まっている。日本橋川の清流を取り戻す取り組みは不可欠。2020年のオリンピックまでには(地下化などの)方向性を示してほしい」と述べた。 

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「室町古河三井ビルディング」(左)と「室町ちばぎん三井ビルディング」

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記者団の質問に答える菰田社長

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 会見場に集まった記者は百数十名で関係者を含めると二百数十名。会場はほぼ満席となった。

 規模的には海外メディアも多数駆けつけた「ミッドタウン」などには及ばないが、菰田社長自らプレゼンテーションを行い、「技」「心意気」「粋」「歴史」「文化」「江戸」「日本橋」「水」「風」「清流」などの単語が次から次へ飛び出したように、三菱地所が推進する「大・丸・有」や「六本木」とはまた違った街づくりが進められているのがよく分かった。

 二つのビルを一言で表するなら「和のエスプリを心憎いまで盛り込んだ、分譲マンションに例えれば億ション仕様」ということだ。

 双方のビルには100尺(31m)ラインが施されている。これは「大・丸・有」や同社のこれまでの「日本橋再生」ビルと同じだが、西洋建築に見られる回廊「ロッジア」、細かい細工が施された「淡路瓦」、「金色ルーバー装飾」などは見事というほかない。道行く人々は「上を向いて歩こう」になるはずだ。

 共用部分の「和」の演出もケタ違いだ。「室町ちばぎん」のエントランス・地下のホールには億ションにはよく見られる布クロスの「布団張り」が施されていた。桜の花びらをモチーフにした江戸千代紙のグラフィックで演出した光壁や突板のデザイン壁もあった。エレベータには「小津和紙」を張りこんだガラス壁が採用されていた。男子用のトイレも和風で、江戸小紋の型染めに使用されていた伊勢型紙のデザインがサインに採用されていた。

 非常時には3,000人が収容できるという「江戸桜地下歩道」は地権者が費用負担した公道となる(管理は中央区と国交省)。

 全54室の賃貸「パークアクシスプレミア日本橋室町」がまたいい。見学する前、仕様は賃貸仕様とそれほど変わらなくて、分譲にすれば坪単価は500万円かせいぜい600万円ぐらいと読んでいたが、見学するごとに評価が高まり、最後は坪750万円につりあがった。間違いなく億ション仕様だ。

 天井高は最大3m、家具付きモデルもある。ナラ材の突板を用いたナグリ仕上げの空間提案もあった。賃料は「ミッドタウン」と同じくらいの単価の40万~160万円(54~140㎡)。

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「金色ルーバー装飾」(左)とオフィスエントランスホール

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100尺ライン部分の外観

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 菰田社長も強調したが、記者は「日本橋の再生」には日本橋川の再生が欠かせないし、それなくして総仕上げにはならないと思う。わが国だけでなく世界の都市は河口・湾口に立地し、発展してきた。ハドソン川(ニューヨーク)、テムズ川(ロンドン)、セーヌ川(パリ)の水質がどうなのか分からないが、菰田氏も「高速に蓋をされた川が死んでいる」と話した日本橋川を見るにつけ悲しくなる。

 ビルはみんな川に背を向けている。先日見学した、鴨川のほとりの「ザ・リッツ・カールトン京都」の客室の半分以上が川に向いていたのと対照的だ。鴨川の川岸から20mは軒高が12m、それ以外は15mの高さ規制があった。

 関係者の努力で日本橋川の再生は進んでおり、鯉や鮒が生息できるように改善されたとはいうが、川べりまで下りていきたくなるようにしないといけない。生きている間に、川で遊ぶ子どもや魚を釣る人の姿を見たいものだ。

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「パークアクシスプレミア日本橋室町」中庭

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モデルルーム(ナグリ仕上げの空間も提案されている)

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「室町ちばぎん三井ビルディング」エレベータホール(左)と共用部分

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「江戸桜地下歩道」

これでいいのか 川に背を向ける日本橋の街(2008/5/19)
 

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「第3回多摩ニュータウン再生検討会議」で挨拶する阿部市長

第3回多摩ニュータウン再生検討会議

 「何もしなければ50年後の多摩ニュータウンの人口は半減する」-1月28日行われた「第3回多摩ニュータウン再生検討会議」で職務代理者の西浦定継委員(明星大学教授)がこんなショッキングな報告を行った。

 「多摩ニュータウンはどこに向かうのか? 」と題するレポートの中で報告したもので、現在の多摩ニュータウン地区に住む人口約10万人(2010年)は、都心志向による夜間人口の減少と、リニアで発展する相模原などへの従業・夜間人口の流失という「ダブルストロー効果」により50年後(2060年)の人口は5万人に減少すると話した。

 西浦教授は、「私が勝手に推測したものではなく、様々なデータをもとに客観的にはじき出した数字。そうならないためにもこれまで築いてきた多摩ニュータウンの歴史50年とこれからの50年をセットして100年の街づくりを進めなければならない」と述べた。

 具体的に人口減少に歯止めをかけるには、団地建て替えなどの活性策とリニア整備効果・鉄道整備効果・道路ネットワーク整備効果などの広域インフラ整備により現在の10万人を維持できると話した。団地建て替えでは減少を最大2万人食い止めることができるとし、広域インフラ整備効果で最大3万人確保できるとした。

 また、検討会議が実施した分譲マンション居住者を対象にした「住環境アンケート」(回答1,206票)について、生活環境、建て替えや修繕、住み替えなどのクロス集計手法を用い、台所・トイレ・浴室など水回りが住宅全体への満足度を左右することを報告した。

 冒頭に挨拶した阿部裕行市長は、「この取り組みは全国が注目している。多摩ニュータウンが成功しなければどこも成功しない。適切な再生策を打ち出していただきたい」と語った。

 多摩市は2月12日14時~17時、多摩ニュータウンの再生シナリオを共有し、取り組みをアピールするシンポジウムを「パルテノン多摩小ホール」で行う。

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 多摩ニュータウンの人口が50年後に半減するというのは多摩ニュータウン居住者だけでなく、都市郊外の大規模ニュータウンに住む居住者や行政にとっても衝撃的な話だろう。西浦教授の話には同感だ。むしろ団地の建て替えは絶望的と思っているので、建て替えによって2万人の居住人口を確保できるかどうかは疑問に思っている。

 保留床を確保して、入居者の負担できる範囲内で建て替えができるのは極めて限られたものに限られると思っているからだ。仮に建築費を坪100万円(実際は85万円ぐらいでできるかもしれない)とすると、既存の20坪のマンションを建てるには2,000万円かかる。既存と同じものをもう1戸建てて余った住戸を4,000万円(坪単価200万円)で売ることができれば入居者の負担はゼロになる。地価の高いと都心部などはこれが可能だ。しかし、坪単価200万円で売れるところは多摩ニュータウンでは駅近しかない。

 多摩市の建築規制も大きな壁だ。市は団地を建て替えた場合、容積率は150%に抑制する方針を打ち出した。これは保留床の確保を難しくする。既存建物の倍の戸数が建てられるところはそうないはずだ。

 「Brillia多摩ニュータウン」が売れたのは、管理組合が粘り強く交渉し「一団地」指定を取っ払い、容積率を確保し、なおかつリーズナブルな価格設定ができたからだ。

 広域インフラ整備も同様だ。都市間競争に打ち勝つ戦略は多摩市だけが取り組んでいることではない。多摩市を取り巻く町田市、相模原市、稲城市、日野市、立川市、八王子市などは強豪ぞろいだ。多摩市が勝てる保証などない。「私は市民じゃありません」という西浦教授は他市のいろいろな委員になっており、「みなさん、多摩市はニュータウン再生に懸命に取り組んでいる。うかうかすると負けますよ」くらいは話しているはずだ。つまり、競争を促す、激化させる役割を担っている。(この点でいえば、検討会議の委員長を務める上野淳・首都大学東京副学長は多摩市民で、「私はここに骨を埋める覚悟」とおっしゃっているので多摩市の味方だろうが、どこで寝返るかわかったもんじゃない)

 都市間競争は団地間競争にもなる。記者は都市間競争にも団地間競争にも勝たなければならないと考えているが、それでは疲弊するばかりだ。競争を回避するというよりはそれを乗り越える、競争に巻き込まれない、いわば止揚する戦略が必要だと思う。ヒントは、言い古された言葉かもしれないが、「コミュニティ」「絆」だ。この「価値」をどう評価し、さらに進化させるかだ。

 西浦教授が採用したクロス集計は大賛成だ。アンケート調査すべてに言えるが、回答者の年代、収入、居住環境によって回答は異なるはずで。「誰が何を考えているか」を具体的に集計しないと意味がない。さらに言えば、アンケートに答えない人(今回の調査の回収率は約30%)はどのように考えているのかを探る方法も編み出してほしい。

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 上野委員長は会合の中で、「検討会議は来年度以降も継続する。円卓会議のメンバーには市民やNPOを加えたい」と、市民を巻き込んだ再生の取り組みをする意向を示した。

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「第3回多摩ニュータウン再生検討会議」検討委員

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「プラウドシティ仙川」

 野村不動産が2月下旬から3月上旬に分譲する「プラウドシティ仙川」を見学した。バルコニー前面に低層住宅街が広がる高台立地で、アッパーミドル層に人気を呼びそうだ。

 物件は、京王線仙川駅から徒歩7分、またはつつじヶ丘駅から徒歩10分、調布市仙川町2丁目に位置する敷地面積約10,000㎡の9階建て(建築基準法上は地上8階建・地下1階建)275戸の規模。専有面積は70.12~88.31㎡、価格は未定だが坪単価は260~270万円になる模様。竣工予定は平成27年4月中旬。施工は長谷工コーポレーション。

 現地は榮太樓飴の工場があったため用途地域は準工地域だが、準工に指定されているのはこの敷地のみで、全住戸の約7割を占める南西向き住戸の前面は第一種低層住居専用地域。敷地南側はキユーピーの本社・研究所・見学施設からなる「仙川キューポート」。

 設備仕様は、キッチンカウンターが御影石、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナなどが標準装備。玄関収納は高級感がある「ラクモア・シューズボックス」。ドアは四方が額縁のようになっている四方框ドアが採用されている。

 昨年末から予約制でモデルルームが公開されており、これまで400件以上の来場があり、予約はほとんど満席。第1期分譲は150戸くらいになりそうだ。

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 仙川をご存じない方には分かってもらえないかもしれないが、長く京王線に住む記者は調布や府中に劣らないいい街だと思う。この20年で街は一変した。安藤忠雄マンションが坪300万円になるのも納得できる。おしゃれな店もたくさんできた。

 坪単価260万円~270万円というのは決して安くないが、アッパーミドルの子育てファミリーにはいいマンションだ。「桜上水」には同社も売主になっている「桜上水ガーデンズ」があるが、どちらを選ぶか悩ましい。桜上水は急行停車駅で、仙川は各駅なので単価差にして50万円以上の差はある。

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 これまでもことあるごとに書いてきたことだが、行政に一言。建築物の高さ規制についてだ。ここも高さ規制は25mに抑えられている。百歩譲って高さ規制を可としよう。しかし、どうして合理的な理由のない5m刻みなのか。一般的にマンションの階高は3mだ。規制をかけるなら3の倍数、18m-21m-24m-27mとすべきだし、居住性の高いものを誘導するなら3.1mとか3.2m刻みにするべきだ。

 規制を緩めれば地価をあげる要因にはなるが、その分、戸数を増やすことで分譲価格を下げることもできるし居住性の高いマンションも建てられる。ぜひとも絶対高さ規制は根本的に見直してほしい。今回のマンションが建基法では地上8階建て、地下1階建てとなっているのもこの規制のためだ。リビングの天井高は2450ミリとなっているのももちろん規制のせいだ。

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エントランス

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「グランディーノ多摩ニュータウン永山」 

 大京グループの大京リアルドが2月上旬に分譲する1棟リノベーションマンション「グランディーノ多摩ニュータウン永山」を見学した。1棟リノベーションブランド「グランディーノ」シリーズの第2 弾で、平成5年に完成したJTBの社宅を全面的に改装し、大京のオリジナルキッチン「L’s KICHEN」などを標準装備したレベルの高いマンションだ。

 物件は、小田急多摩線小田急永山・京王相模原線京王永山駅から徒歩11 分、多摩市馬引沢2 丁目に位置する6階建て全30戸。専有面積は30.19~78.39㎡、第1期(8戸)の価格は2,580万~3,150万円(専有面積74.87~78.39㎡)、坪単価は120万円。既存建物は1993 年5 月竣工済み。既存建物の設計・監理は交通公社不動産、改修工事の設計・監理は共同エンジニアリング。既存建物の施工は大林組、改修工事の施工は大末建設(共用部)・パナソニックES集合住宅エンジニアリング(専用部)。改修竣工は2013年12月。

 物件概要で分かるように、大手企業の社宅として利用されていたもので、賃貸仕様ではなく〝分譲〟に匹敵する仕様である点だ。販売担当者によると、社宅は幹部社員ように建設されたもので、面積も広めのファミリータイプが中心で、オートロックが採用されており、駐車場も屋内。リビングの天井高は最低2550ミリ。施工は大林組だ。2010年に大規模修繕済み。

 改修にあたっては、デューデリジェンスを行ったうえで、新築のライオンズマンションと同様の設備仕様に変更している。食洗機は標準装備で、キッチンのカウンタートップは御影石。古い建物である痕跡は和室や浴室の段差くらいだ。

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 分譲単価は割安感がある。仮に、旧社宅並みの新築マンションをこれから建設しようとすれば坪単価は最低でも150万円はするはずだ。新築より700万円くらい安い〝バブル仕様〟であることをアピールできるかにかかっている。来場者は1週間で30組を突破しているという。

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「ザ・リッツ・カールトン京都」

 積水ハウスは1月24日、京都市中京区二条で建築しているマリオットホテルグループの最高級ブランド「ザ・リッツ・カールトン京都」を2月7日に開業すると発表。同日、開業に先駆けて報道陣に公開した。敷地が約6,000㎡で、高さ規制などの制約が多い中で、鴨川に面した立地を巧に利用した最高レベルのホテルであるのは間違いない。

 建物は、京都市営地下鉄京都市役所前駅から徒歩3分、京都市中京区鴨川二条大橋畔に位置するRC造(一部SRC造)の地下3階、地上4階建て全134室の規模。敷地面積は約5,937㎡、延床面積約24,682,89㎡。客室面積約45~212㎡(中心は約50㎡)。ルームチャージは65,000円から。建築主は積⽔ハウス。建築構造設備・外装デザインは日建設計、客室・パブリックデザインはレメディオス・デザインスタジオ、レストランデザインはデザインスタジオ・スピン、内装設計はイリア、庭園デザインは野村勘治。

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 現地は、敷地東側に鴨川が流れる市内の一等地。旧「ホテルフジタ京都」の敷地を3年前、積水ハウスが取得した。用途地域は建ぺい率80%、容積率400%の商業地域だが、高さ規制として川岸より20mまで軒高12m、それ以外15mとなっており、岸辺型美観地区Ⅰ型(屋根形状を勾配屋根にすること)、旧市街地型美観地区(外壁、屋根色などの規制)の規制がある。

 建物は古都の歴史を継承するのがコンセプトの一つで、敷地内にあった灯籠、庭石、滝石などは旧ホテルで使用されていたものを再利用している。外観・内装には、日本の伝統的な格子、七宝などの文様、西陣織を多用。アートのコンセプトは「源氏物語」で、主人公光源氏の邸宅「六条院」や「雅」「もののあわれ」「風流」などをモチーフにした80人のアーティストによる394作品が共用部を中心に展開されている。

 レストラン&バーは、長さ11mもの輪島塗を施したカウンターがある日本料理の「水暉」、明治の実業家・藤田傳三郎の別邸「夷川邸」をレストランフロアに移築したイタリアンの「ラ・ロカンダ」、360度からアプローチできる巨大なワインセラーがある「ザ・バー」など。このほか、鴨川の流れの音や風を取り込む室内プール付きのスパ、フィットネスジムなどを備える。

 客室は50㎡以上が中心で、鴨川が眺められるタイプは半数以上。62㎡以上のスイートは17室。アメニティは「エスパ」。

 記者発表会で総支配人の田中雄司氏は、「ザ・リッツ・カールトンは17年前の『大阪』、7年前の『東京』、2年前の『沖縄』に次ぐわが国では4件目、世界で86件目となる。京都への観光客は年間500万人で、そのうち100万人が外国人。外資系のホテルは少なく、独自の『クレド』を生かしてラグジュエリーホテルとして今までとは違った選択肢を提供したい」と語った。

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エントランス

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 積水ハウスが「ザ・リッツ・カールトン」建設を発表した段階で必ず見学しようと決めていた。同社は日本一のハウスメーカーだが、同時に世界一でもある。世界一の「おもてなし」を提供している「ザ・リッツ・カールトン」とコラボして、古都・京都の一等地でどのようなデザインの建物を建設するのかが最大の関心事だった。

 規模などは「東京」の半分ぐらいしかないが、建築設備・外装デザインには日本一の日建設計を、客室・パブリックデザインには世界的なレメディオス・デザインスタジオをそれぞれ起用し、和と洋の調和を図ったホテルだ。「東京」と比べると、よりわが国の伝統的な文化、建築様式を取り入れたものとして記者は評価したい。

 圧巻は地階の温水プールだ。窓を開けることにより鴨川の流れの音と風を取り込めるようにしていた。イタリアンもいい。築100年という邸宅をそのまま個室に移築したのは意表をついた演出だが、これぞ「非日常」。外国人にも日本人にも受けるのではないか。和と洋の不思議な空間「ロビー・ラウンジ」や「闇夜の月」をモチーフにした壁のデザインにははっとさせられる。

 唯一理解できなかったのが、会席・鮨・天麩羅・鉄板の4つの料理で構成される日本料理レストランだった。全体で200㎡ぐらいあるそうだが、ほとんどオープンになっており、設えは明らかに中華。「アジアンテイスト」なのだろうが、日本人の富裕層に受け入れられるか疑問に思った。仕切りのない大部屋で会席料理や鮨を食べる習慣は富裕層にあるのだろうか。

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共用部廊下(左)と布クロスの壁

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 「ザ・リッツ・カールトン京都」が最高の器であることは確認できた。地下水を温熱環境に変換する最新技術も導入されている。あとはリッツの「クレド」の実践あるのみだ。エントランスでは和装の「ゲストエスプリジェンヌ」が迎え入れてくれるのも特徴だ。

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日本料理(左)とイタリアン個室

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スパ・温水プール(左)と客室

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 余談だが、記者は外観写真などを撮った後、昼食を取ろうとホテルから1分もしない「がんこ高瀬川二条苑」という和食料理店に入った。店の案内書には「京の人々に古くから親しまれ愛されてきた高瀬川の流れは、豪商角倉了以の別邸跡『がんこ高瀬川二条苑』を通り…」とあった。

 取材時間は迫っており、食事もそこそこに店の了解を得て写真を取りまくった。森鴎外の「高瀬舟」もそうだが、澤田ふじ子さんの連作「高瀬川女船歌」に描かれている京の風情が一挙に蘇った。

 以前はこの「がんこ高瀬川二条苑」も「ザ・リッツ・カールトン京都」の敷地も同じ地続きだったということを積水ハウスの広報担当者から後で聞いた。「高瀬川の源流」はリッツに負けない庭だ。

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「がんこ高瀬川二条苑」の「高瀬川の源流」庭苑

リッツ・カールトンの「クレド」に学ぶ(2007/4/7)

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同社奈良工場

 大和ハウス工業は1月22日、省エネルギーセンター主催の平成25年度「省エネ大賞(省エネ事例部門)」で、同社の「次世代省エネ工場の商品化に向けて」の取り組みが評価され、「経済産業大臣賞(OGO企業等分野)」を受賞したと発表した。

 同社は、CGO(環境担当役員)のリーダーシップにより、生産部門と開発・設計部門が連携して省エネ活動を進めており、2012年度は工場全体で売上高あたりCO2排出量を2005年度比48%削減、とくに北九州の同社モデル工場では64%削減した。

 また、同社は自然の力を生かす「パッシブコントロール」や創エネ・省エネ・畜エネを行う「アクティブコントロール」、建設設備や生産設備のエネルギーを総合的に管理する「スマートマネジメント」を採用した次世代環境配慮型工場「D’SMART FACTORY」を商品化。奈良工場(2013年12月竣工)と竜ケ崎工場第2工区(2014年2月竣工予定)で同商品への建て替えを進めている。

 

 

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