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 先週の大京・近鉄不動産「ライオンズ港北ニュータウンローレルコート」の記者発表会で、同業の記者が次のような質問をした。

 「地下を含め7階建てのマンションにしては工期が非常に長い。何か理由があるのか」と。

 この質問に記者も驚いた。マンションの完成時期はユーザーにとってもっとも重要な要素だが、われわれ記者は全くと言っていいほど気にかけない。一般的なマンションは、階数に基礎工事などの3カ月分を足したのが工期だという認識があるぐらいだ。最初は質問した記者の意図が全然わからなかった。

 すぐ配布された資料で確認した。竣工予定は2015年8月24日とあった。記者発表会当日の時点で工期は20カ月ぐらいあるではないか(正確には着工は今年10月だから22カ月)。

 この質問に同社商品企画部担当副部長・中山雄生氏は、概ね次のように答えた。「通常はこの程度のマンションなら15カ月ぐらいかもっと早く竣工できるが、工期を長くとることで施工会社も余裕をもって職人を手配できる。工期を長くしてコストがアップしたわけではない。事前の検査もそれだけ十分できる」と。

 つまり、22÷15=1.5。通常より1.5倍の工期をかけてもコストアップにならないということは、それだけ職人不足は深刻な状態にあるということだ。このようなケースは今後激増するのではないか。

 飯田グループホールディングス代表取締役会長・飯田一男氏が平成25 年11 月29 日(金)死去した。享年75歳。故人の遺志により葬儀は近親者のみで執り行う。後日「お別れの会(仮称)」を執り行うが、日時・場所などは未定。

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 グループ全体で売上高が住宅・不動産業界で5番目の9,075億円、主力の建売住宅の販売戸数は29,459戸というガリバー企業にまで成長させた方だ。最近は体調を崩されていたのは関係者を通じて聞いていた。

 平成21年に一建設がジャスダックに上場したとき、コメントを取ろうとご自宅までうかがったが、家族の方から「もう一線から退いておりますので」とお会いすることも出来なかったのが心残りだ。ご冥福をお祈りしたします。

建売住宅のガリバー企業誕生 飯田グループホールディングス(2013/11/2)

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「子育てママの理想の家」

 ポラスグループの中央グリーン開発は11月29日、地域の子育てママさんの提案をそのまま建設・販売する「子育てママの理想の家」4棟が完成したのに伴い報道陣向けに公開した。

 「理想の家」は、今年1月、地域の子育てママを支援する活動を行なっているNPO法人子育てパレットと同社グループが協働で立ち上げた「子育てママの理想の家をつくろう」プロジェクトによるもの。4月のコンペティションによって4作品を選定。当初の予定では6名の審査員によって選ばれた最優秀プラン「Give&Take」のみをモデルハウスとして建設されることになっていたが、他の3チームも「建築に値する」と判断されて全棟を建設することになったもの。11月16日から販売されている。

 挨拶した中央グリーン開発事業部長・戒能隆洋氏は「全206棟のうち169棟を供給し151棟を販売することができた。2年間で完売する当初計画通りに進捗している。今回の『理想の家』を始め補助事業の太陽光・HEMSなどを採用した住宅を供給して販売スピードを加速させていきたい」と話した。

 今回公開されたモデルハウス4棟のうち最優秀の「Give&Take」(土地面積約96㎡、建物面積約96㎡、価格4,080万円)が販売済み。戒能氏は「このプランはもっとも条件が悪かったにも関わらず、プランの良さが評価された」と提案者を称えた。

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 記者は、最初のコンペティションを取材したとき、小さな子どもの声を含めてにぎやかな模様をストレートに伝えて顰蹙を買った。改めて関係者にお詫びしたい。

 実際の建物が完成したのを見て、「子育てママ」の問題は、単にママの置かれている問題だけでなくパパの立場、就労条件、地域とのコミュニティの問題など様々な問題が建物に反映されていると感じた。以下、ママさんやパパ、デベロッパーの商品企画担当者、営業マンにも参考になるはずなので、思ったままを紹介する。不愉快な表現があるとすれば、すべて記者の責任であることをお断りする。

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「Give&Take」の提案者(左から加藤さん、宮下さん)

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 Bチームの「Give&Take」モデルハウスが「花丸」だ。ハウスメーカーやデベロッパーの発想の域を飛びぬけていた。記者がもっとも評価したのは主寝室から梯子ではなく階段でつながっているロフト「パパのくつろぎ空間」。ロフトにこもって仕事ができるし、布団を持ち込めば一人寝もできる。もちろん酒もタバコも吸える。企画した宮下さんは「みんなに聞いたら、男の人ってこもりたがるのよね」と話した。当たり! 世の男性は押入れや段ボール箱にこもった経験は必ずあるものだ。子宮願望といってよい。これを巧に取り込んだ。(関係ないが安部公房の「箱男」もお勧め)

 対面キッチン&リビングとつながった1階の段差リビングもいい。小上がりのステップを3段、高さ約60センチにしたのがミソだ。

 この種の段差リビングはポラスも他社もよく提案するが、高さはせいぜい40~50センチだ。60センチにしたのは「結婚当時の写真とか子どもの記録、捨てたくない思い出がつまったガラクタ、季節の入れ替えものなど何でも収納したい」(宮下さん)というのがその理由。高さが低いと作業がしづらく、まるまる収納スペースにできないのは容易に想像がつく。これは、ポラスの住宅は1階の天井高を2.7メートルにしているから実現したプランでもある。2.6mだと60センチの高さを確保したら、段差リビングは居室にならない(建基法では居室の天井高は2.1メートル)。

 このほか、玄関と連結している土間収納はプロがよくやる提案だ。巨大パントリーもいい。

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左から段差リビング、階段つきパパの空間、土間収納

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 Cチームの「私たちの理想の家ストーリー」が「三重丸」。出隅入隅などを多用してコストをまったく考慮していないのがいい。圧巻は2階の提案だ。主寝室は8.9畳大、その隣には小さな子どもを想定した5.2畳大の洋室がオープンになっており、さらに親子はもちろん夫婦のコミュニケーションの場ともなるサンルーム&多目的空間が提案されている。一体として利用すれば20畳大の空間が実現する。これはすごい! 

 多目的空間については「折りたためるカウンターの反対側は、狭いながらもパパ専用のスペース。家族が寝たあとでも眠りを妨げることなく読書をしたり持ち帰った仕事を片付けたりができます。ママが反対側に座って洗濯をたたんだり…すれば夫婦の会話も自然に生まれます…」とあった。

 「子育て」は「働くママ」の問題だし「夫婦関係」の問題だ。さらにいえば近隣住民とのコミュニケーションの問題かもしれない。このCチームは30坪の住宅に夫婦の空間として2階のほとんど全てを提案しているのが素晴らしい。1階キッチン隣の勝手口、玄関サイドの納戸の提案もいい。

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「私たちの理想の家ストーリー」を提案した坂本さん(写真は左からサンルームと不思議な空間、主寝室と子ども部屋)

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 Aチームの「~家族が楽々HAPPYスマートライフ♪~」、Dチームの「つながる家族繋がる時間」は、ポラスの住宅とそん色ないが、強烈にアピールしたBやCと比較するとコンペ作品として物足りなさを感じた。

 Aチームのプランの玄関・框・ホールの提案は消化不良。アピールしたいことをもっと明確にしたらよかったのではないか?

 中2階のPAPAスペースももう一工夫が欲しい。広さは1メートル四方。机とパソコンがセットされていた。ここに夫なり妻なり子どもが「こもって」何かやるだろうか。疎外感を味わうだけではないか。Bチームのプランのように自らの意思で入るのと、追いやられて入るのとではまったく意味が異なってくる。

1階の約3畳大のリビングに面した階段下畳コーナーも狙いはいいが、空間の高さは約130センチ。子どもが成長したらどういうペースになるのか、居室としても使えない。

 Dチームのプランは、「子育てママ」の主張が強すぎる感がある。1階の洗面室に隣接した日当たりのもっともよいところに「ママコーナー」を設置し、その一方で、北側の1畳大もないところに「パパの秘密基地コーナー」を設置していた。これには正直驚いた。パパがかわいそうだ。

 ところがどうだ。この理不尽なプランの感想をわが社の働く女性に聞いたら、「このプランはよく理解できる。パパのものなんか捨てたくてしようがない。置いてもらえるだけでありがたいと思うべき」と痛烈な答えが返ってきた。

 プロジェクトのWeb人気投票ではAチームが21.8%、Bチームが28.4%、Cチームが19.6%、Dチームが30.2%の支持を集めたそうだ。つまり、もっともママの主張を盛り込んでいたこのDチームのプランが一番ママに人気があったということだ。これは、子育てママに非協力的なパパ社会に対するママの趣意返し、倍返しではないかと考えてしまった。

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 家事労働をどう考えるかを聞くため、「食洗機」についてコンペ参加者に聞いた。

 「私は食洗機が欲しい」

 「食洗機はいらない。食器洗いは苦にならない」

 「旦那に食洗機欲しいと話したら『お前、専業主婦だろ、それぐらいやれよ』と言われた。来春から私も働くようになるから、買ってもらえそう」

 「えっ、食洗機付いていないの? 私は三人家族で食器洗いにかける時間は10~15分」

 「食洗機は最初から付かないと聞いていた」

 別の子育てママ3人に聞いた。

 「食洗機は必需品。ルンバもそう」(2人。そのうち階段を上り降りするルンバが開発されるのではないか)

 「うちは旦那が夜遅いから食事は娘と二人。食器洗いは10分で済む。ディスポーザーはあるととても便利」

 記者は子育てママ、働くママにとって食洗機は必需品だと思う。最近は価格の上昇で食洗機をオプションにするところが増えているが、一次取得層の住宅こそ標準化すべきだ。家事労働の価値を理解できない商品企画担当や営業マンは失格。売れるものも売れなくなってしまう。

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 この企画が発表されたとき、どうせママさんたちは販促のための〝客寄せパンダ〟になるのだろうと思った。プレゼンもほとんど聞いていなかった。

 ところが、ママさんたちのプランを盛り込んだ上棟式を取材して、考えを改めた。ポラスは真剣に入居者とともに地域とのコミュニティ形成に取り組んでいた。スタッフも入居者も汗だくになりながらイベントを楽しんでいた。

 そして今回。4つのプランをすべて見た。B、Cとも素人の域を超えていた。AとDはB、Cと比較するとややインパクトに欠けていたが、思いはひしひしと伝わってきた。各チームともキッチン、収納、浴室などには力を注いでいた。それだけ現状の住宅は子育てママや働くママの希望する住宅とかけ離れているということだ。

 現段階で4プランのうち売れているのはBプランというのも納得だ。供給サイドは〝売れない〟リスクを恐れて万人受けするプランにするが、Bプランはそうではないことを実証した。

 今回の経験でポラスは供給サイドと消費者の間には少なからずずれがあることを学んだはずだ。潜在的なニーズも把握したはずだ。今後、どのように商品企画に生かしていくか楽しみだ。 

ポラス 優秀賞モデルハウス上棟式に150組・450人が参加(2013/9/2)

ポラス 「子育てママの理想の家」コンペ大会(2013/4/26)

 法廷では「どのような答えが返ってくるか分からない質問はしてはならない」というのは弁護士の鉄則だそうだが、われわれ記者も同様だ。懇親会や記者発表会ではいつもそれを心がけている。

 その意味で、記者は昨年も今年も掟破りの質問を敢えて行なった。住宅金融支援機構が11月29日行った恒例のプレスセミナー・懇親会の場で、リスク管理債権について質問したことだ。当然のことながら昨年は明快な答えが返ってこなかった。そのような質問が飛ぶことなど機構は予測していなかったはずだ。それでも質問したのは、機構もそうだが同業の記者にもこの問題について考えて欲しかったからだ。機構に対する質問というより、同業の記者に向けて発した質問だった。

 今回も同じ質問をした。質問は概ね次の通り。「私は、住宅ローン債権は優良債権だと思うし、それを前提としてお聞きしたい。リスク管理債権のうち、既往債券は償還が増え、不良債権が沈殿し濃縮されていくのでのリスク債権比率が高まっていくのは理解できるが、額としては2兆円もあるのは由々しき問題。買取債権のリスク債権比率は金額的には1,000億円しかないが、今後どんどん積みあがっていく。機構は健全なリスク債権比率をどの程度に設定しているのか」

 質問の背景にあるのは、ローン審査の選別融資(厳格化)の問題だ。審査を厳しくすれば不良債権は減るだろうが、その一方で中・低所得者のマイホームの夢がしぼむ。いわば両刃の剣だ。記者は旧公庫から機構に移行してから、審査の厳格化が進み、時計の針でいえば右から左へと振り切った状態にあると考えており、振り戻し、つまり中・低所得者のマイホームの夢をしぼませてはならないという考えがあるからだ。

 今年も機構側からたいした答えは返ってこないだろうと思いつつ、あるいはしっかりした答えが返ってくるのではという期待もあった。融資のプロが同じ轍を踏むとは思えなかったからだ。

 答えは期待以上だった。同機構経営企画部長・池谷(いけのや)文雄氏は、質疑応答の大半の時間を割いて次のように説明した。平成24年度末のリスク管理債権比率は7.47%で、金額は約2兆円。このうち半分は(債務者の再建、支援を目的とした金利の減免、利息の支払猶予など)支払い条件の緩和を行なったもので、この方たちの約7割は7年後には正常に戻っている。既往債権の回収は順調に進んでおり、買取債権のリスク管理債権は、まだ始まったばかりで、7年後当たりに増えだし10年後から安定した数値で推移するというものだ。

 民間のリスク管理債権比率については、都銀が1.9%、地銀が2.94%、第2地銀が3.81%、信金などが4.87%で、機構の7.47%は決して低くないことを明らかにした。池谷氏は「システマティックな融資を行なってきた旧公庫の反省を踏まえ、『貸さない親切』をわれわれは学んだ。以前と比べ確かに厳格化は進んでいる」と話した。

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 記者は、支払い条件緩和者の7割が正常に戻ると聞いたのがうれしかった。機構は以前のように(貸した金を返せというような)督促状を何度も送りつけるようなことはしないで、今年度からは(デフォルト化しない事前相談の)「ご案内」の送付、カウンセリングなどキメ細かな対応を行なっているそうだ。

 池谷氏は、民事再生法の住宅ローン特約を利用することも勧めた。住宅ローン特約とは一定の要件を満たせば、競売にかけられずに返済期間を延長してもらえるものだ。

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 機構のリスク管理債権が約2兆円もあることは重大な問題だ。人数にしたら数万人に上るはずだ。何とか救済する方法はないものかと頭をひねるが、妙案はない。バブルが崩壊してほぼ一貫して資産デフレが続いているのがこうした悲惨な事態を招いている最大の要因だ。

 しかし、記者は「買う勇気」をとくに一次取得者には持って欲しいと思う。賃貸住宅は基本性能、居住性能も分譲より比べようもないほど劣っているし、ばかばかしい「賃貸か分譲か」などのマスコミの記事など読まないでいただきたい。「賃貸か分譲か」の選択肢があるのは富裕層だけだ。しっかり生活設計、資金計画を練ってチャレンジして欲しい。

 マンション管理組合には、大規模修繕や建物の耐震化の工事を無担保で融資する「マンション共用部分リフォーム融資」を積極的に利用して欲しい。建て替えは一部の条件のいいものを除き絶望的だと思う。

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 平成24年度決算では2,000億円余の当期総利益を計上し、2期連続で黒字となったことなどから、宍戸信哉理事長の機嫌がすこぶるよかった。東南アジアからわが国の住宅金融システムについての問い合わせが殺到していることも明かした。そのうちにシステム丸ごと輸出できるのではないか。

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「ライオンズ港北ニュータウンローレルコート」

 大京(事業比率70%)と近鉄不動産(同30%)は11月27日、横浜市都筑区のマンション「ライオンズ港北ニュータウンローレルコート」の記者発表会を行い、12月中旬に分譲開始すると発表した。「スマートマンション導入加速化推進事業」4つ星を獲得した物件で、徹底した環境共生の取り組みがされている物件だ。

 物件は、横浜市営地下鉄グリーンライン北山田駅から徒歩12 分、または同ブルーライン・グリーンラインセンター北駅から徒歩17 分、横浜市都筑区北山田5 丁目に位置する7階建て全221戸の規模。専有面積は67.02~108.54㎡、予定価格は70㎡台で3,900万円台~、坪単価は201万円。1期分譲は72戸を予定。竣工予定は2015 年8 月24 日。基本設計はIAO竹田設計。設計・監理・施工は三井住友建設。販売は大京。

 開発開始から約40年が経過した港北ニュータウン内で、残りは2区画しかない住宅用地の一つという希少性の高い大規模物件で、約8,600㎡の敷地にパッシブデザインとスマートシステムを融合した環境共生住宅であるのが最大の特徴。

 創エネ・畜エネ・省エネを組み合わせてマンションの維持・管理費の削減を実現したほか、自然の力で快適な室内環境を生み出した。経済産業省の「スマートマンション導入加速化推進事業」で4つ星を獲得した。持続可能な生態系を保つため入居3年間はランドスケープ設計会社が樹木剪定やビオトープの管理を提案し、入居者の「体感し、学び、育む」をサポートしていく。

 住戸プランでは、妻側住戸の窓を淡い色つきガラスにしているのが特徴で、外観にアクセントを与えている。

 発表会に臨んだ同社首都圏第二支店長・立石恭司氏は、「住宅用地としてニュータウン内に残り2区画しかないという希少立地にふさわしいグリーン・マトリックス・システム、せせらぎ計画など新しい取り組みを盛り込んだ」と話した。

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 環境共生住宅はこれまでも大京が積極的に取り組んできたテーマだが、今回の物件は最高レベルの取り組みだと思う。まず、せせらぎとビオトープ。深さ約90mの井戸を掘り、井戸水を散水に使用するほか全長約60mのせせらぎ・ビオトープに利用する。井戸水は飲めるほどの水質のいいもので、非常時には防災井戸として近隣にも利用できるようにする。

 せせらぎ・ビオトープの取り組みとしては、もう20年も前に埼玉県住宅供給公社が分譲した「大宮」のマンションがもっともすぐれていると思う。全長は数十メートルあり、カモがたくさん飛来していた。ここは水田や畑もあり、入居者がみんなで収穫もしていた。(企画意図が購入者に全然伝えられなかったため、大量の売れ残りを出すなど事業しては大失敗だったが)

 今回の両社の取り組みは「大宮」には劣るかもしれないが、ビオトープの面積は約100㎡というから相当なものだ。

 このせせらぎ計画の「水」ほか、ソーラーパネルと蓄電池の「光」の利用、敷地全体を緑でつなぐ「緑」の活用、パッシブデザインを取り込む「風」によって、維持管理コスト「ゼロ」を目指す。年間約180万円の維持・管理費を削減する。

 パッシブデザインでは、これまでの換気機能付き玄関ドアのほか、室内扉の換気ルーバーを新たに採用する。換気口も高機能のものにする。

 今回採用するパッシブデザインは、省エネ等級4・エコガラスを採用し、換気機能付き玄関ドア、通気ルーバー付扉、大型給気口、グリーンカーテンを採用していない一般的なマンションと比較して夏場の換気量は約4倍、室温は最大で4.9℃も差が出.るデータも得ている。

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 持続可能な生態系配慮型植栽管理も注目できる。生態系を保存するため、コンペ形式により植栽管理会社を選定。さらにランドスケーププラス社が竣工後3年間、植栽やビオトープの維持・管理をサポートしていく。これらを通じて、居住者のコミュニティ形成をサポートする。

 先の「大宮」のマンションでは、せっかく立派な環境共生マンションにしたにもかかわらず失敗したのは、入居者や管理業者に丸投げしたためだ。3年間管理サポートすれば、入居者が自発的に取り組むようになるのではないか。

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 「CASBEE」についてもひとこと。これまでも何度も書いてきたが、独自のマンション環境性能評価制度を採用している東京都はともかく、神奈川も埼玉も千葉県もどうも制度はつくっていても魂が入っていない。杓子定規に物事を計るから国の「長期優良住宅」認定を得ながら「CASBEE」ではSランクが取得できない事態が続出している。「CASBEE横浜」ではSランクは数えるほどだし「CASBEE神奈川」も1つあるぐらいだ。

 自治体が独自の基準を設けるのはいいことではあるが、レベルの高いマンションも並みの「A」(Aは低いわけではないが、決して高いものばかりでもない。はかりの目が粗すぎるのだ)と一緒ではデベロッパーが泣く。

 大京は「S」ランク取得を目指したそうだが、「バリアーフリーの対策よりも、仕上げ材(タイル、床仕上げ、手すりなど)に『再生材』を用いることというのが大きな壁となった。再生材はお金をかけて設置することは可能だが、耐用年数が短く取り換えスパンが短いため、結果的に長期修繕の費用が増え、お客様の負担になってしまうため今回は断念した」(広報)とのことだ。

 読者の皆さんは、この理由をどう読むか。コストをかけて「S」を取得するか(これもユーザー負担だが)、コストを削減して並みの評価で我慢するか。点数偏重の弊害がここにもある。 

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ビオトープ

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グランプリ作品 「入学の日(hanaさん)」
 

  野村不動産アーバンネットは11月28日、同社の不動産情報サイト「ノムコム」で募集していた「家族の幸せな時間」フォトコンテストの入賞作品を発表した。

 グランプリは「入学の日(hanaさん)」。

 キャンペーンは「ノムコム」の公式Facebookページ 「おうちに帰ろ」(http://www.facebook.com/ouchinikaero)の 「いいね!」数3万人突破を記念して行われたもの。9月26日~10月31日のキャンペーン期間中、全国から765作品が寄せられた。入賞作品は14作品。「家族の幸せな時間」フォトコンテストサイト: http://www.nomu.com/ouchi/enjoy/photo/で公開されている。

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パーティ ルーム銘板

 このほど竣工したNTT都市開発の高額マンション「ウェリス有栖川」を見学した。2カ月前に見学した同社の「ウェリス代官山猿楽町」(44戸)も素晴らしかったが、「有栖川」も甲乙つけがたい本物の億ションだ。

 物件は、東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩4 分、港区南麻布五丁目の第1 種中高層住居専用地域に位置する5階建て全57戸。専有面積は56.18~247.41㎡、価格は7,180万~59,900万円、坪単価は585万円。建物は2013 年11 月に竣工済み。販売代理は三菱地所レジデンス。設計・施工は清水建設。現在までに52戸が販売済みだ。

 特徴は、①中層でありながら免震構造を採用②敷地外周に赤外線センサーや防犯カメラを配備したセキュリティ③ワンフロアを3つのコアに分節し、3基のエレベーターを設置④共用部に左官職人・挾土秀平氏のアートや希少な天然石のエントランスドア、3層吹き抜けのラウンジに設置された約9メートルの水景壁を配置⑤本物志向のワインセラーを設けたパーティールーム⑤シンプルな住戸デザイン・カラーリング-など。

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完成予想図

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 恐るべしNTT都市開発。前回の「代官山」でも書いたが、まさか同社がこんな素晴らしい億ションを供給できるなんて全然思っていなかった。NTTファシリィーズが設計・監修し、鹿島が施工した「代官山」もいいが、今回の「有栖川」もまたいい。億ションは1戸44億円(1棟ではない。念のため)の「ドムス」をはじめたくさん見てきたが、この「有栖川」は富裕層の〝心〟をくすぐる好物件だ。

 外観はいかにも高額マンションらしい雰囲気をかもし出しているが、この物件の特徴はディティールの細やかさだ。例えばパーティールーム。床は挽板材。ワインセラーは18区画あり、18本入るという。月額賃料は3,000円。一般サラリーマンにとっては3,000円は2~3本の値段だろうが、富裕層にとっては1杯分の価格かもしれない。ヴィンテージものを見せびらかして飲む富裕層が目に見えるようではないか。酒を介してサロンになるはずだ。かつての億ションにはこういう発想はなかった。

 共用部分のイタリアだかインドだか、見たこともないような自然石がまたいい。自然光が降り注ぐラウンジに設けられた挾土氏の作品や水景壁に囲まれたラウンジの照明やソファはアルマーニ。エレベータホールには鮮やかな赤と黒の漆塗りのアート。ダストルーム(ゴミ出し室)のドアの把手はデザイン処理されたもの…etc。

 モデルルームはいたってシンプル。しかし、ドア把手、巾木、塗装や布クロス、4ミリ厚の挽板材フローリング、4.5センチ厚のドア、ドア枠、ドイツのドンブラハ社製の水栓、アンモナイトの化石がちりばめられた天然石などは成金には理解されないかもしれないが、本物志向の富裕層の満足度を高めるのは間違いない。

 最近の話題の億ションでは三菱地所レジデンスの「千鳥が淵」があるが、これは皇居が見下ろせる別格の物件。これを除けば同社の「代官山」「有栖川」、積水ハウスの「白金台」が現段階で今年のベスト3億ションだ。三井不動産レジデンシャルは「パークマンション」を今年は1棟も供給していないはずだ。「代官山」も残り1戸というから驚きだ。

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高さ9mの水景壁(左)とパーティルーム(左奥がワインセラー)

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左からダストステーション、エレベータホールの案内板、リビングドア(アルミの鍛鉄製)

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建物外観

本物の億ションを見た NTT都市開発「ウェリス代官山猿楽町」(2013/9/20)

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完成した建物

 三井ホームは11月28日(木)、都内初のツーバイフォー(2×4)工法による木造耐火建築5階建て店舗併用住宅が銀座2丁目で完成したのに伴い、完成現場見学会をおこなった。国交省の「平成24年度木造建築技術先導事業」に採択されたプロジェクトでもある。

 建物は、中央区銀座2丁目に位置するツーバイフォー工法(枠組壁工法)5階建て(1階はRC)耐火建築物。敷地面積は59.69㎡、延床面積は212.05㎡、最高高さは18m。総工費は約1億2,000万円、本体工事費は約8,700万円。補助金額は約2,000万円。

 都心の繁華街のRC造7階建てのビルをRC造1階+木造2~5階に建て替えるもので、建築に当たっては①社独自の中層建築に特化した改良型建て起こし工法を採用②パネル工法を併用して工期を短縮③耐力壁の高強度化のために独自のダイダウンシステムを導入④I型複合梁による耐火構造床を採用⑤湿式外壁による耐火外壁ダブルファイヤーブロック(DFB)ウォールを採用-したのが特徴。

 建物を受注した同社東京東支店支店長・五井尚人氏は、「当初は鉄骨造の8階建てが計画されていたが、エレベータを設置しなければならないこと、柱型が出るため有効面積が確保できないことなどから計画がとん挫していた。当社の技術で階数を5階建てに下げても、昇降機を設置し、居住性能が確保でき、さらに工期の短縮、工事費の圧縮が図れたので実現した。オーナーの方は開業医で、木造にも興味をもたれ、環境や人にやさしい点なども評価された。オーナーの方によるとRC造と比較して2~3割安いとのことだった」と話した。

 建物は1階が喫茶店「グラムール」で、2~3階が賃貸住居、4~5階はオーナーが利用する。

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正面外観

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 素晴らしいプロジェクトだ。敷地がわずか約60㎡、延床面積が約212㎡という狭小敷地の建築物だが、木造耐火の建築物を広げる意味で意義は大きい。

 見学会では専門的な言葉がたくさんでてきたので説明が難しいが、簡単に言えば、RCでは足場の確保やエレベータの設置義務などにより、狭小敷地では建設が難しいのを、現場で床を組み立て、壁を作り内側からジャッキで建てて上方に組み立てていく作業としては簡単な工法を同社が開発して実現したものだ。

 記者は、森林・林業の再生という視点からも極めて意義のあるプロジェクトだと思っている。外観も内装も鉄筋やコンクリート住宅とそれほど変わらないのは残念だが、構造材と4階と5階の縦枠に北海道産のカラマツが使用されている。

 この種の見学会では必ずRC造とのコストの比較になるが、記者はもちろんこれも大事だが、人にやさしい、環境にやさしい木造の良さを金額に換算したら比較ならないほど木造のほうが優れていると考える。ハウスメーカーは、経済合理性だけでなく木の持つ社会的有用性を粘り強くアピールすることが求められる。コスト論争に巻き込まれない強い心を持ってほしい。

 国もまた木材の利用率を高めるため思い切った規制緩和を進めるべきだ。わが国の気候風土にもっとも適しているのは木と紙と土の住宅ではないのか。日本の美しい文化と技術を伝承しているわが故郷の伊勢神宮を見習ってほしい。専門家でも理解できない複雑な耐火・準防火の基準緩和は待ったなしだ。

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室内(左)と昇降機     

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 1階の喫茶店も紹介しておく。なかなかおしゃれな店だ。写真のように無垢材、突板、銅版などが多用され、コーヒーカップはマイセン、ヘレンド。ゆったりくつろげる空間がコンセプトだ。松屋、三越、歌舞伎座の帰りに立ち寄る人にお勧めだ。近くには馬券売り場もあるが、馬券を買う人はタバコが吸えないのでどうか。味は保障するが…。

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喫茶店「グラムール」

公共建築物の木造化 24年度は100戸のマンション1棟分(2013/11/9)

「木づかい」を国民運動にするシンポジウム(2013/10/8)

鹿島建設・住友林業 スギ耐火集成材を初採用「oto no ha Cafe」(2013/5/15)

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「北品川五丁目第一地区」の街並み

 三井不動産レジデンシャル(事業比率45%、以下、他社は非公表)、日本土地建物販売、大成建設、大和ハウス工業、新日鉄興和不動産は11月26日、品川区の大規模開発「パークシティ大崎ザタワー」(総戸数734戸)の第1期分譲288戸を12月1日に抽選分譲すると発表した。

 物件は、JR大崎駅から徒歩6分、品川区北品川5丁目、全体約3.6haの「北品川五丁目第一地区」再開発事業区域の一角に位置する40階建て全734戸(うち一般分譲566戸)の規模。専有面積は43.89~116.89㎡、1期の価格は4,580万~1億8,500万円(最多価格帯9,000万円台、平均8,042万円)、坪単価368万円。設計・監理は日本設計。施工は西松建設。デザイン監修は光井純&アソシエーツ建築設計事務所。竣工予定は平成27年5月下旬。

 主な特徴は、①平成25年の地価公示で都内の住宅地地価上昇率1位の「北品川5丁目」に立地②30年に及ぶ市街地再開発「GARDEN CITYS構想」の集大成③山手線内初の「パークシティ」④オーガニックシティとして7つのガーデンを配置し、緑化率30%以上を実現⑤おしゃれな街の理想的な子育てを実現するため各界のスペシャリスト(桐島かれん氏、滝沢眞規子氏、青山有紀氏、西畠清順氏、石戸奈々子氏)の提案を採用-など。

 発表会で三井不動産レジデンシャル開発事業本部都市開発第一部長・山田貴夫氏は「全体約60haの再開発事業のなかで、今回は最大規模となる3.6haの住・商・業一体の複合開発でこの街の集大成のプロジェクト。11月から始めたモデルルームには1,700組の来場があり、分譲566戸の半分以上の288戸を供給するが、登録即日完売の勢いにある」と自信を見せた。

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コミュニティガーデン             ウェルカムスクエア

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 坪単価について。業界の一部から400万円を超えるのではないかという声も聞かれたが、それはないとみていた。街の将来性を加味すればあるいは400万円もあるかもしれないが、そんな高値追求はしないという確信があった。

 368万円というのは極めてリーズナブルな価格だと思う。発表会で三井不動産レジデンシャル都市開発一部営業室主査・大栗裕樹氏も「お客さんからは街の将来性、希少性が評価された。単価は決して安くはないが適正な価格と考えている」と話した。

 今回も、街並みはデザインガイドラインに沿って整備されており、今回も長さ約250m幅約16mの道路・歩道空間が整備される。沿道には街路樹のシラカシが2段植栽され、その他の樹木が混植される。

 共用施設はもちろんだが「街づくり」を評価すべきマンションだ。難点と言えば敷地と道路を挟んだ南側に31階建ての業務棟が建設されるので、その日影の影響を受ける住戸があることだ。

 大崎のマンションでいえば、2001年竣工の「オーバルコート大崎」が印象に残っている。どちらかと言えば住宅や工場、倉庫などが混在し、色でいえば〝グ レー〟の街を、光井氏が得意とする温かみのあるアースカラーの外観デザインで一変させた。当時の坪単価は320万円だった。よくぞここまで街のポテンシャルを上げたものだ。

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カスケードホール                キッズガーデン

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 各界スペシャリストの提案を盛り込んだ70㎡のモデルルームはよく分からなかった。リビングの隣の6畳大をスライドドア付きのオープンな子ども部屋にし、ダイニングに大きなボードを設けたものだが、リビングの隣に子ども部屋を設ける発想が理解できない。その一方で、主寝室は6.3畳大しかなかった。

 他の2つのモデルルームはよくできていた。住戸プランはワイドスパンが中心で、3~4畳大のDENの提案、5畳大のキッチン、1620の浴室などがいい。設備仕様は天然石、フィオレストーン、標準仕様のバックカウンター付きなどが特徴。

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70㎡のモデルルーム キッチン ダイニング      70㎡のモデルルーム子ども部屋

  野村不動産アーバンネットは11月25日、同社の仲介店舗「国立センター」を12月2日(月)に開設すると発表した。

 「国立センター」は、JR中央線国立駅北口から徒歩1分、駅前ロータリーに面したマンションの1階(クレッセント国立・ディアナプレイス1階、電話:042-580-1581、FAX:042-580-1582)に出店。今年度の新規出店は「国立センター」で5店目となり、仲介店舗数は首都圏50店舗・関西圏3店舗の合計53店舗となる。

 同社は、昨年発表した中長期経営計画に基づき営業店舗と人員を向こう10年で倍増する計画。10月には新ブランド「野村の仲介+(プラス)」を立ち上げた。

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 正確には分からないが、三井不動産リアルティが平成22年度に全国で15店舗(うち首都圏9店舗)を出店したのが近年では最多ではないか。野村不動産アーバンネットの出店ラッシュも注目される。

 

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