国分寺崖線の借景、「5本の樹計画」もいい 積水ハウス「グランドメゾン仙川」

「グランドメゾン仙川」完成予想図
都内に初めて雪が積もった1月30日の夕刻。国分寺崖線の雑木林はすっかり雪景色に変わっていたが、春を告げるウグイスとホトトギスが「ほーほけきょ」「おとおと、きたかー」と鳴き交わしていた。記者は舞い上がり「ここはいいぞー、弟、来たぞー」とエールを送った。積水ハウス「グランドメゾン仙川」の販売事務所だった。
物件は、京王線仙川駅から徒歩19分、または仙川駅から徒歩5分、バス停からバス3分、バス停から徒歩4分(都合12分)、調布市入間町2丁目に位置する4~8階建て8棟全305戸の規模。近く分譲する第2期3次(戸数未定)の専有面積は66.97 ~90.64㎡、予定価格は3,700万円台~5,700万円台(最多価格帯4,400万円台。竣工予定は平成28年6月中旬。施工は長谷工コーポレーション。昨年11月から契約が始まっており、現在まで約3分の1が契約済みだ。
現地はNTTの社宅跡地。国分寺崖線のライン上にあり、敷地面積は約16,000㎡。敷地の南側には敷地の数倍はありそうなNTTが管理する森が広がっている。
住棟はA~E棟が南向きや東向きで林の借景が望める。
住戸プランは、横入り玄関タイプを多用し、メーターモジュールの廊下幅、花台付き、トイレドアを含めたドアノブの壁面までのセットバック、二重床・二重天井、天井までのカーテンボックスなど。都の「マンション環境性能表示」で5項目満点の星15個のうち「建物の長寿命化」のみ1つ欠ける14個を獲得している。
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京王線仙川は、わが街多摩センターと同じくらいよく知っている。永住も考えたくらいだ。いまも飲み屋によく通っている。
駅周辺の再開発が行われた結果、劇的に変わった。急行が停まる千歳烏山やつつじヶ丘よりいい街だ。安藤忠雄氏が設計したマンションは坪単価300万円もするし、野村不動産の「プラウド」も270万円だ。先日書いた大成有楽不動産「オーベルグランディオ吉祥寺Ⅱ」との競合は避けられないが、この単価は割安感がある。「5本の樹計画」も盛り込まれるので、素晴らしいマンションになるのは間違いない。
どちらがいいかはユーザーが判断することだから何もコメントしないが(双方ともいい)、双方合わせて589戸もある。この2物件よりは価格は安いが、近く見学することになっている京王相模原線の野村不動産「プラウドシティ南山」も412戸ある。3物件とも長谷工コーポの施工だ。単価・グロス価格ともサラリーマンの取得限界にきているだけに、売る側の営業マンも大変だろう。
3物件に共通するのは価格が安いということだ。多摩センターもそうだが、どうして京王線のマンションの単価は他の沿線と比べて割負けするのか。城東や城北エリアより圧倒的に安いし、緑も豊富だ。
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ホトトギスが「おとおときたかー」と鳴くと書いたのは、昔々、おばあちゃんの膝の上で教わったのを思い出したからだ。ホトトギスの昔話など若い人はだれも知らないだろうから紹介する。次の通りだ。
兄弟のホトトギスがいた。兄は目が見えなかった。心やさしい兄思いの弟は山でおいしい食べ物を採っては兄に与えた。自分はまずいものばかり食べていた。
兄は、「いつも俺はこんなにおいしいものを食べている。弟はどんなにおいしいものを食べているんだろう」と考え、弟を殺して腹の中を調べたところ雑穀ばかりが出てきたのだ。
悔やみきれない兄は「弟よ、ごめんね」「弟よ、来たか」とのどを絞り出すように泣いたという物語だ。(記者が優しい心根の人間に育ったのはおばあちゃんの教育による。記者は悪がきだった兄の弟だ)
「トッキョキョカキョク(特許許可局)」なんて東京に出てきて初めて知った。ついでに、「うさぎ追いし」は「うさぎ美味しい」ではありませんから。おいしいのですが。

ITを活用した重説 賃貸と法人間取引につき社会実験開始へ 国交省
国土交通省は1月30日、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明(重説)や契約などの際に義務付けられている書面交付におけるITの活用方策について、有識者や実務家からなる「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」の最終とりまとめを発表した。
ITの普及によって、すでに多くの消費者がインターネットを通じて情報収集を行っており、ITを活用すれば消費者・事業者双方の時間コストや金銭コストの縮減が期待できるとし、対面を前提としながらも重説や契約がITを通じて行えないかどうかが昨年の4月以降、合計6回にわたって検討されてきた。
検討会で大きな課題となったのは、①取引主任者証が提示できること②重説を受ける者が本人であること③取引主任者が相手方に伝達すること④取引主任者と相手方とのやりとりに十分な双方向性があること⑤重説に記名押印し、交付すること-の5点だった。
検討の結果、対面でなくとも、少なくともテレビ会議などであれば、重説に必要な要素を満たすことが可能であることが示された。
具体的には、トラブルとなる可能性が相対的に少ない、トラブルが起こってもその影響が相対的に小さい「賃貸取引」及び「法人間取引」について最大2年間の社会実験を行ったうえで検証を行い、問題がなければIT活用の本格運用へ移行する。個人を含んだ売買取引については、検討結果を踏まえて、社会実験又は本格運用を行うことを検討するとしている。社会実験は約半年の準備期間を経たのち開始。開始後は半年に1回程度、検証検討会を開催する。
社会実験を行う事業者はあらかじめ登録することが必要で、消費者理解の向上に資するよう創意工夫されたものであること、共同媒介や海外との取引など様々な取引場面で活用できること、電子署名の利用が前提となっていること、国の調査に協力し、録画・録音された情報等を提供することなどが条件となる。
公園に保育所、マンション 岩盤規制を打ち破れるか 国交省 公園のあり方検討会
国土交通省は1月30日、これからのまちづくりに対応した都市公園のあり方などを検討する「第3回新たな時代の都市マネジメントに対応した都市公園等のあり方検討会」を開催。福岡県北九州市の取り組みが紹介された後、都市公園の統廃合、機能のあり方などについて話し合った。各委員の声を紹介する。(順不同)
ゲストスピーカー千々和秀二氏(北九州市建設局公園緑地部長) 人口減少、高齢化などで利用されない公園が増加している。維持管理も負担になっており、3割が補助金に頼っているのが現状。統廃合には住民同意を得るようにしているが、都市公園法第16号(廃止公園と同等の面積を確保しないと統合できない)、国庫補助事業によって整備した公園を配し出来るか、計画から整備まで2~3年のずれが生じるなど課題は少なくない
池邊このみ委員(千葉大大学院園芸学研究科教授) 公園の統廃合は危険性をはらむ。文言を注意しないと、様々な要望が出てくる可能性がある
石田尚昭委員(岡山市都市整備局審議監) 公園の維持管理が厳しくなってきている。一方で、防災時の空間も求められる。公園機能を論議する場が欲しい。廃止を持ち出せば利用されていなくてもすぐ反対される。代替え案を練らないといけない
菊池正芳委員(東京都都市整備局都市づくり政策部緑地景観課課長) 都は緑地が確保できないという事情もあるが、都市公園の廃止は考えられない。管理をどうするかという問題はあるが、ネーミングライツもある
女性委員 〝遊ぶな〟という公園がいっぱいあるのが現状。ニーズの変化に対応できていないのが問題
涌井史郎委員(東京都市大学環境学部教授) 都市公園法の様々な悩ましい問題を念頭に置きつつ、2030年問題に対応するためダイナミック、大胆に変革する必要がある。その際重要なのは哲学だ。防災、利用の効用、地域交流などの評価も必要。もう一つはマネジメント。環境不動産の価値を整理してきちんと資産として評価する必要がある
松本守委員(日本公園緑地協会副会長) 人口が減ったから廃止するというような単純な発想は納得できない。緑を拠点にした再編が重要
坂井文(北海道大大学院工学研究院准教授) 人が真ん中になるような公園整備が必要
舟引敏明委員(国交省大臣官房審議官) 存在価値や利用価値は都市と地方、市街地と郊外部では位置づけが異なってくる。もっと細かな視点でデザインすることが必要。プロ集団としてステップアップした会合にしたい
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会合では、国家戦略特区特別諮問会議でも論議された都市公園内での保育所設置の是非についても論議された。進士五十八座長(東京農大名誉教授・元学長)は、「入れりゃいい問題ではない。条件づけ(理念)が必要。もともと公園事業の中には児童を指導することも含まれていた。幼保分離でなくしてしまったのが問題。児童公園・児童遊園を統合しないといけない」などと話した。
他の委員もおおむね総論には賛意を示した。
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記者は初めて傍聴したが、なかなか面白い会合だった。進士座長が話した幼保分離によって公園が児童公園と児童遊園に分離されたことも初めて知った。児童公園は都市公園法に規定され、児童遊園は厚労省の管轄のようだ。
〝遊べない公園〟については同感。公園内で「ゴミを捨てるな」は分かるが、多くの公園は喫煙、キャッチボール、サッカー、ゲートボールなどの遊戯、物販販売、ペットの放し飼い、大声(歌の練習か)、果実の収集を禁止している。
記者は喫煙のために公園を利用しようと思うがなかなかできない。そればかりか、公園に入ることは「危険」というメッセージも少なくない。ハチ、マムシ、痴漢、ひったくりなどだ。これでは怖くて公園を利用できない。都市公園法の足かせもたくさんあることが分かった。
都市公園に保育所を設置するのは記者も賛成。というより、都の民設公園制度を活用した第一号マンション「Brillia L-Sio 萩山」が2009年に完成しており、第2弾、3弾を期待しているのだが、その後全然供給されていない。都の都市づくり政策部緑地景観課は「話はあるが、既存の公園内でマンション建設はまずあり得ない。保育園建設についてはうちの課の担当でない」と、様々な規制があることを臭わせている。アベノミクスは岩盤規制を打ち破ることができるのか。法の壁が立ちはだかる。
国土交通省公園緑地・景観課課長の梛野良明氏も「都市公園内に保育所の話は法律の問題を検討しなければならない」と話した。
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これほど面白い会合であるにも関わらず、テーブル付きの記者席が10席も用意されていたにも関わらず傍聴した記者はわたし一人だった。記者クラブに何社加盟しているかしらないが、そんなに忙しいのか記者の数が足りないのか(記者もそんなに暇ではない)。「ここは専門家の集団。気兼ねなく話してほしい」と進士座長が話した。現場の声を聞かずしていい記事が書けるはずがない。
都の民設公園第1号「萩山四季の森公園」開園祭り(2009/10/5)
公園を所有するマンション 東建・西武「Brillia L-Sio 萩山」(2008/5/26)
上原・元国立市長への求償は当然 議会「決議」の法的効力は?
国立市庁舎
問題の核心は違法行為を許すのかどうか
先日、国立市民と名乗る方から電話があり、「ビラを配っている人たちのことがよく分からず、ネットでいろいろ調べたらあなたの記事が出てきた。一番筋が通っている。本にしないか」と言われた。
求償裁判のことであるのはすぐわかった。早速、記者も調べてみた。記者の記事も含め「市民の会」や市議のホームページで求償裁判の是非がたくさん書かれていた。市議会の「決議(案)」も紹介されていた。
国立の明和地所のマンションに関する裁判は市対明和、住民対都、住民対明和、市対住民、市対上原など5つも6つもあり複雑に絡んでいる。分かりやすいようにこれまでの経緯について紹介する。
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1999年4月 上原公子氏が国立市長選に当選(東京初の女性市長)
1999年7月 明和地所が東京海上から約1.7haの土地を約90億円で取得
1999年8月 明和が国立市中三丁目マンション計画について事前協議の届け出
1999年10月 市はマンションの高さをイチョウ並木に調和するよう行政指導
1999年11月 市はマンション計画地の建物の高さを20m以下と定めた地区計画案を策定、縦覧開始
1999年12月 明和は14階建て高さ44m、343戸の確認申請
2000年1月 明和は根切り工事に着手
2000年2月 中三丁目地区地区計画が施行
2001年12月 明和がマンション分譲開始
2002年12月 住民が高さ20mを超える部分は違法であり、撤去を求めた民事訴訟で、東京地裁は、法令上の違反はないが、住民の景観利益を毀損したとして20m以上の部分の撤去を求めた(建物撤去訴訟)
2004年2月 明和が、国立市に対し営業が妨害され、地区計画条例の無効を訴えた裁判で、第一審の東京地裁は、条例は有効とし、市長の一連の発言・行為は営業妨害に当たるとして損害賠償4億円の支払いを命じた(行政訴訟)
2004年10月 東京高裁は建物撤去訴訟の第一審判決を取消し、請求を認めない判決を下した(2006年3月、最高裁判決で確定)
2005年9月 行政訴訟の控訴審で東京高裁は、事業者側の強引な手法も問題ありとして、損害賠償金額を2500万円に減額する判決を下した。2006年1月、補助参加人(住民)が上告
2008年3月 上告が棄却され、二審判決が確定。市は損害賠償金と遅延損害金として約3,123万円を明和に支払う。これに対して、明和は同額を一般寄付として市に寄付
2010年12月 国立市民が市に対し、明和に支払った損害賠償金と同額を上原元市長に求償するよう求めた裁判で、東京地裁は「行政の継続性の視点を欠如した急激かつ強引な行政施策の変更であり、また、異例かつ執拗な目的達成行為」「市長として求められる中立性・公平性を逸脱」「社会通念上許容される限度を逸脱している」と認定、市に対して上原元市長に損害賠償を行うように命じる判決を行った(住民訴訟)
2011年1月 市は「賠償金は実質的に返還されている」として控訴
2011年4月 市長選で、上原元市長に求償請求することを選挙公約に掲げた佐藤氏が、上原元市長を支持する関口市長を破り当選
2011年5月 市は先の住民訴訟で控訴を取り下げ。判決が確定した
2011年12月 市は上原元市長に支払いを請求したにもかかわらず、上原氏が支払いを拒否したため東京地裁に提訴(求償訴訟)
2014年9月 求償訴訟で、東京地裁は「控訴取り下げは『被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げた』」「上原が掲げていた政治理念自体が、民意の裏付けを欠く不相当なものであったと認めることはできない」と棄却
2014年10月 市は一審判決を不服として東京高裁に控訴
「クリオ レミントンヴィレッジ国立」
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記者は市が明和地所に支払った損害賠償金を当時の上原市長に求償することに賛成だし、東京地裁も「請求すべし」と決定している。「決議」に対する批判を含めて以下に記者の考えを紹介する。
国立市議会は昨年末、「議会の議決を無視して公費を投入し続けてきた、現市政が元市長を訴える求償裁判の終結を求める決議」を賛成11、反対9で可決した。決議はおおよそ次のような内容だ。
決議はまず「15年前の大学通り高層マンション建設計画に対する国立市及び国立市長の景観政策をめぐって、現在の国立市政が当時の市長個人に3,123万9,726円及び遅延損害金を請求する訴訟の東京地方裁判所判決があり、国立市が敗訴した」としている。
そして、市議会はこれまでに元市長への賠償請求権を放棄する決議や控訴断念を求める意見書など4回にわたって議決したにもかかわらず、「佐藤市長は議会における議決結果を全く考慮しなかったかのように、意見書可決の翌日早朝、高等裁判所への控訴を済ませてしまった」と批判。
続いて、佐藤市長は先の住民訴訟や元市長に求償する訴訟費用、今回の高裁控訴に関わる訴訟経費としてトータルで約660万円の公費を投入したと非難している。
さらに、「『地区計画及び条例制定行為』の主体は『国立市及び国立市長』であり、組織としての国立市には、市議会や都市計画審議会のみならず部会長も含まれる。佐藤市長は1999年当時、福祉部長として、地区計画決定と条例制定方針を決定した部長会に参加した一人である。自らの責任を棚上げにして元市長一人に責任を押しつけ、地裁判決で退けられた高額な賠償請求を主張し続けることは、『首長に要請される中立性・公平性を逸脱し、社会通念上許容されない』ものである」「直ちに控訴を取り下げて裁判を終結させることを強く求める」としている。
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断っておくが、記者は専門的な法律知識はないし、ましてや議会の仕組みはよく分からない。的が外れていれば謝るほかないのだが、どう考えても、この「議決」は合理的説得力に欠ける。
まず、都合4回にわたる議決の法的効力について。市議会の議決は尊重しなければならず、佐藤市長が無視したのは問題がないとはいえないと思う。
この点について佐藤一夫・国立市長は「平成24年4月20日の最高裁の判決でも地方自治法96条第1項10号の趣旨と同じ判断がされている。私は議会で『決議』には従わない、淡々と判決を待つと報告している。5~6月には結果が出るのではないか」とコメントした。
つまり、佐藤市長は「議会は、議決によって意見を決定する。長(首長)は、これを尊重すべきであるが、法的にはこれに拘束されるものではない」(学陽書房「地方自治の概要」)「条例による場合を除き、その議会が債権の放棄を議決しただけでは放棄の効力は生ぜず、その効力が生ずるには、その長による執行行為としての放棄の意思表示を要する(地方自治法96条第1項10号)」(有斐閣「行政法判例集Ⅰ」)という議会と長の常識を踏襲したということであり、議会はそのことを承知でしつこく議決を繰り返したということだ。
次に、公費について。「議決」は約660万円の公費を投入していることを問題にしているが、ではいったい国立市は先の「国立マンション裁判」(明和地所が国立市に損害賠償訴訟を起こし、2008年3月、市長の一連の行動は営業妨害に当たるとして2500万円の支払いを命じた裁判)にどれくらいの公費をつぎ込んだかご存知か。
明和に対する損害賠償金約3,123万円のほかに、2008年3月17日時点で、市は弁護士費用として39,180,904円支払ったと公表した。つまり、損害賠償金と弁護士費用を合計すると約7,000万円の公費が使われている(争いがなければ明和から支払われるはずだった開発協力金7,881万円も市は受け取りを拒否した)。訴訟にかかる時間とエネルギーを金額に換算したらその数倍に達するのは間違いない。660万円が「高額」とするなら7,000万円は桁違いだ。このとき支出した金額を議員はどう考えるのか聞きたいものだ。
当時、福祉部長だった佐藤市長に対する批判は噴飯物だが、悪意が込められているので見逃せない。佐藤氏が当時の部長会で反対を唱えようとしたら上原氏に一喝されていたはずだ。仮に賛成していても、部長も連帯して責任を問われることはあり得ない。すべて長たる上原氏にその責任がある。
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国立市が上原元市長に損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は、明和の寄付によって賠償金は補填されたとしているが、これは論外。問題のすり替えだ。明和は当初、特定寄付を要求したが、市は拒否し、一般寄付を求めた。
また、東京地裁は、民事訴訟法46条3号の「被参加人が補助参加人の控訴行為を妨げたとき。」に該当し、上原元市長に賠償請求すべきとした住民訴訟判決の効力は補助参加人だった上原氏には及ばないとしているが、正直、問題が複雑すぎてこれについては意味が分からない。
これは失礼な言い方だが、例えていえば夫婦喧嘩のようなものではないか。先の住民訴訟の段階では被参加人(市)と補助参加人(上原氏)は相思相愛の関係にあった。敗訴して賠償金を支払う段階で仲違い(市長交代)を起こし、同床異夢から離婚騒動に発展したということではないのか。客観的に考えれば〝犬も食わぬ…〟類ではないか。市民はたまったものではない。
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「地区計画」について。市は1999年11月、明和の敷地約1.7haと、その北側に隣接する桐朋学園の敷地約7.4haを含む13.5haを対象とした「中三丁目地区地区計画」案を策定、翌年2月、施行した。
「地区計画」は、住民が自分たちの街をどのようなものにするかを自主的に決めることができるいい制度だ。法的にも担保される。策定にあたっては、住民の過半の同意を得ることや面積比率で3分の2以上の賛成を得ることなど、公平を期すことが義務付けられている。案は住民に縦覧したのち、議会の議決を経て施行することになっている。
問題なのは、市の地区計画は明らかに明和のマンション建設を阻止するのが目的であり、桐朋の敷地だけでは制定に必要な面積要件を満たさないから、周辺の戸建て住民を巻き込み、高さ規制がなく、明和のほかには数人しかいない面積にして50%に満たないエリア一帯の建築物の高さを20m以下と定めたことだ。著しく公平性を欠いたものだった。
地区計画が定められる前は「高さが20mくらいのイチョウ並木と調和する高さ」という行政指導が、突如「イチョウ並木と同じ高さの20m」にすり替えられたのは明らかに上原元市長の暴走だった。戸建て住宅街なら分からないではないが、広い道路沿いの街路樹の高さに建築物を抑えなければならないという条例はどこにもないはずだ。
国立裁判ではこの是非が問われた。平成17年の東京高裁判決では「本件地区計画決定及び本件条例の制定それ自体不法行為が成立すると解することは困難」と明和の主張を退けた。つまり、憲法は私的財産権を絶対的に保障しているが、「公共の福祉」により制限も加えられるという判断をして、地区計画策定には瑕疵はないと認定した。
しかし、このような計画がまかり通るなら、デベロッパーはマンション用地など購入できなくなる。周辺住民や自治体の意向によっていかようにもなるからだ。記者は今でもあの地区計画は違法性が高いとみているし、「既存不適格」のレッテルを剥がすべきだ。
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もう一つだけ言わせていただきたい。明和の14階建て343戸のマンション計画に対して、国立市が同じ戸数、同じ利益を想定した高さ20mの対案を裁判に提出したプランについて。
別掲の明和のマンションの地図を見ていただきたい。建物はロの字型になっている。高さを半分にすることを想像していただきたい。人が住めるマンションにならないのは明白だ。記者はその市のプランを「刑務所マンション」と名付けた。日照も採光もプライバシーも居住性もまったく無視したものだったからだ。
国立マンションの敷地面積は約1.7ha(容積率200%)。形状は、敷地東側が約137m、西側が約90m、北側が約138mの台形状だ。建物はロの字型で、最高高さは約44m、戸数は343戸(平均面積約90㎡)。南向き住戸は7.4mスパンが中心。戸数分の平置き駐車場と機械式駐車場がある。
このプラン条件を変更せず、高さのみを20m(7階建て)に抑えたらどのようなプランになるか考えていただきたい。隣棟間隔は一般的に建物の高さ×1.5~2.0だ。
人が住めるプランにならないのは明らかだ。日照も採光もプライバシーも確保できない住戸ばかりだった。だから、記者は市のプランを〝刑務所マンション〟と呼んだ。市側は合理的で採算性もあると強弁した。
これには無性に腹が立った。国立市のプランは〝入居者(市民)はブタ箱に入れ〟と言っているのと同じだ。これは「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」憲法への挑戦であり、いかに居住性が優れたプランのマンションにするか考えているデベロッパーと、購入者・市民を愚弄する自治体を絶対許せないと思った。
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もう一言。記者は不偏不党、是々非々でものごとを判断する。誰がどこを支持しようと自由だ。しかし、違法行為があったとして裁判に敗れたにもかかわらず自らの行為を反省するどころか居直る政治家を許せない。今度の市長・市議選では上原元市長を支持し、住民訴訟に異議を唱える候補者は一人たりとも当選させてはならないと思う。
市民のみなさん、自らの政治理念の実現のためには法を犯してもいいというような人に同調する候補者に「ノー」の審判を下してほしい。選挙の最大の争点は違法行為を許すのか許さないかだ。
記者のこの考えと同じ議員さんがいる。先日、国立市役所に取材に行ったとき、青木健・市議会議長(自民党)に会った。青木氏は「話し合いで解決できなかったから、司法の判断を仰いだ。その結果、元市長の違法行為が明らかになった。元市長は謝罪するべきだし、賠償金も支払うべき。自分たちだけが市民の声とするのは驕りだ。このような事態を二度と起こさないよう、今度の選挙で勝利するよう戦う。わが党は現有勢力5人から8人に増やす。公明党も2人から3人に増やす。その他われわれの考えと一緒の議員を含め過半数(定数は22)を目指す」と話した。
今度の統一地方選で国立市長・市議選が全国でもっとも注目を浴びることになるのではないか。
節電のため12時になると消灯する市役所内(上原氏はこれをどう見るか)
「求償権の放棄」は問題 国立市は上原元市長に賠償請求すべき(2014/10/1)
北上市の千田工務店 新エネ大賞「審査委員長特別賞」受賞

審査委員と受章者のみなさん(千田社長は後列左端)
わが国最大の地域ビルダーのネットワーク「ジャーブネット」(主宰:宮沢俊哉アキュラホーム社長)の会員、千田工務店(岩手県北上市)が経産省が後援する平成26年度新エネ大賞「審査委員長特別賞」を受賞した。
「自社が施工した太陽光発電オーナーを集めて、コンテストなどのイベントを長年にわたって開催することにより、オーナー同士のネットワークを広げ、太陽光システムの普及に努めている」ことが評価された。
同社は、寒冷地では冬季の日照時間や積雪でパネルが覆い隠されることなどから太陽光発電システムの普及は難しいとされていたのを克服し、県内に点在していた太陽光発電システムを搭載した同社施工の住宅オーナー同士の交流ネットワーク「PVオーナーネットワーク」と称し、2007年から取り組みをスタート。
2015年1月31日に行われる予定の第10回大会では過去最高の380名のオーナーが集まる予定。
受賞した同工務店・千田忍社長は「わたしたちのような小さな工務店でも、意義のある活動と信じて積み重ねてきたことを国に認めていただき、大変光栄に思っています」とコメントしている。

審査委員長の筑波大大学院教授・内山洋司氏(左)と千田氏
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千田工務店の千田孝道会長(当時社長)は存じ上げている。2009年12月、アキュラホームの会合でお話をうかがい、感銘を受けた。記事にもしているので参照していただきたい。その時、オーナー大会の取材も勧められたのだが、岩手県北上市ということから丁重にご辞退申し上げた(遠くて寒そうというのが最大の理由)。3年前に忍氏が社長に、孝道氏は会長に就任したそうだ。
とても盛り上がる大会であるのは容易に想像できる。380名も集まって、楽しく省エネ、創エネ、環境問題などを語り合い、コミュニティにつなげていく活動に拍手喝采!
「子育て」と「住まい」を考える情報サイト立ち上げ 野村アーバン
野村不動産アーバンネットは1月29日、「子育て」と「住まい」を考える情報サイト「ノムコムwith Kids」(http://www.nomu.com/withkids/)を開設した。
同社の子育てママ社員の提案で誕生したもので、サイト制作、コンテンツ企画やイベントなどはすべて子育てママ社員が担当。子育て世代の住みかえを「楽しく」「学んで」「探せる」よう工夫を凝らしている。
今後実施する座談会やセミナーなどのイベント企画にも、住みかえの最前線で働くママ社員を含めた当社の子育てママ社員が参加していく予定。
現在、住宅の購入検討者を中心に構成する「ノムコム」会員約25万人のうち、20歳代・30歳代の子育て世代が6割以上を占めている。
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「ノムコムwith Kids」をのぞいてみた。いきなり「色育」が目に飛び込んできて面食らった。こんな言葉があることすら知らなかった。
「新築がいいか」「中古がいいか」は女性が好みそうなテーマだ。ひとそれぞれで好きな方を選べばいいとは思う。中には「中古は絶対イヤ」という女性は多いが、そのような人を説得するのは難しい。反論する元気もない。
しかし、現実的にはそんなに選択の幅は広くないと思う。新築だって劣悪なものもあるし、中古にも新築以上に優れた物件もある。よく比較検討すればいい。どんな住まい方をしたいかでも答えは変わってくるはずだ。自分を縛らない方がいい。
ついでなので、中古物件の表示についてひと言。ネットでもチラシでも、中古マンションの分譲時の売主、建設会社の表示は、圧倒的に表示されないほうが多いように思う。不動産公取規約に定めもない。しかし、果たしてこれでいいのか。
ずっと新築市場を取材してきた記者は、分譲会社がどこかは欠かせない情報だと思う。分譲会社によってデザイン、外構、基本性能、設備仕様は明らかに異な る。だからこそ、デベロッパー各社の営業マンは他社との違いをアピールできる。中古市場でもその違いは変わらないはずだが、広告には表示されないほうが多 い。なぜなのか。
そこでもう一度、「ノムコムwith Kids」に戻る。女性がファッションや食べ物などと同じように、いやその半分でもいい、マンションのブランドにこだわればマンション業界は間違いなく変 わる。基本性能、デザイン、設備仕様など商品企画の一層の差別化を考えるはずだ。女性の厳しい評価が中古市場でもされるようになれば、中古市場も変わる。
「野村の仲介+」の広告が言うではないか。「ただ住まいを探すだけなら、不動産仲介なんていらないと思う。」と。新築の〝プラウド〟が評価されているように、〝ノムコム〟が同じような高い評価をえるよう挑戦して欲しい。
ポラス 第2回 学生・建築デザインコンペ 応募者募集
ポラスグループは1月31日(日)から4月30日(木)まで、「時のかさなり」をテーマにした第2回POLUS 学生・建築デザインコンペティション」応募作品を受け付ける。
昨年、同社グループ創業45周年の記念事業として第1回コンペを行っており、458件の応募があった。応募作品は実物件への具現化される可能性もある。
応募資格は、2015年4月1日時点で大学院、大学、短期大学、専修学校(各種学校)、高校の学生・生徒。1棟から最大10棟の木造建築物の提案をすること。
応募登録は公式HP〈http://www.kenchiku.co.jp/polus〉で。
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「時のかさなり」-難しいテーマだ。記者などはすぐ間取りの可変性や今流行の「シェア」などを思い浮かべるが、そんなありきたりの提案では審査員の先生方の心を揺り動かすことはできない。変わるものと変わらないもの。いま国交省で「日本らしく美しい景観」が論じられている。これはヒントにならないか。学生・生徒の皆さん、頑張ってください。
「地方創生」「販売促進」 一石二鳥の大和ハウス「東京駅ふるさと元気館」

「東京駅ふるさと元気館」
大和ハウス工業が1月24日(土)にオープンした、ふるさと応援ショップ「東京駅ふるさと元気館」を見学した。首都圏在住者に地方都市の観光・生活情報を紹介しつつ、同社の全国の分譲マンション情報を提供すもので、安倍政権の「地方創生」が重要課題の一つになっており、「ふるさと納税」にも関心が高まっている折から時宜にかなった一石二鳥の取り組みだ。
場所は、JR東京駅北口改札口から歩いて1~2分、駅構内1階キッチンストリート内。広さは約40㎡。一都三県を除く43道府県の観光情報などがパネルや幟、ポスター、映像で紹介されており、各自治体のアンテナショップの紹介、各県の銘菓の配布も行なわれている。コーヒーもふるまわれる。
さらに、宅建業法の「案内等」の規定により標識も掲げ、 同社が現在14道府県で分譲しているマンションのチラシ、パンフレットなどを備えている。
出身道府県、住みたい道府県、行って見たい道府県などを答えるアンケートも行なわれている。
東京駅を利用する首都圏在住者に対して、各自治体とタイアップしながら、その地方の魅力を発信し、さらに地方都市圏で展開する同社の分譲マンションを紹介することで、地方へのUIJターンを支援し、地域活性化をサポートするのが狙い。
同社マンション事業推進部企画室専任部長で今回の取り組みについて43道府県東京事務所との折衝等を担当する島田安夫氏(60)は、「世のため人のためは当社の伝統。地方創生に貢献するために、全国のふるさとの思いを込めた。ここは93日で終了するが、常設館も検討している」と話した。
奥さんらしい女性とソファに掛け休んでいた男性(88)にも声を掛けた。「今日は孫の卒業式で、岩手県平泉からやってきた。米寿だよ。ダイワハウス? 知ってるよ、盛岡にマンションがある」と語った。
オープンしてから1日当たり120~130人が訪れ、半数くらいがアンケートに答えているという。4月26日(日)まで93日間の期間限定だが、同社では常設館も検討しているという。

石川県七尾市出身の島田氏は七尾市の観光法被を着ていた
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一通り見学して帰ろうと思ったとき、石川県七尾市の観光法被を着た男性が来館者と談笑していた。新幹線が開業するので、勧誘のため現地から駆け付けたのだろうと思い声を掛けた。
そうではなかった。この人こそ島田氏だった。ハウスメーカーの社員にしておくのがもったいないほど法被姿が板についていた。それもそのはず、島田氏は七尾市出身で、「いしかわ観光特使」の名刺も持っていた。
旧知の仲であるかのように二人であれやこれや話し合った。一つひとつ紹介できないが、同社が金沢で分譲している「プレミスト香林坊」(113戸)は目の前に「四高記念公園」が広がり、その先の金沢城公園、兼六園につながっている加賀百万石の一等地だ。わが街多摩センターと同じ単価200万円には驚いたが、高いほうから売れているという。
賃料は「ここは東京の一等地ですよ」と具体的な数字は明かしてくれなかったが、別の場所での常設館を検討しているという。「課題もいろいろ見えてきた。ビジネスに発展できるかも」と、次の秘策を練っているようだった。
記者は本格的に「地方創生」と「マンションの販売促進」を図るのであれば、もっと充実させてもいいと思った。売り上げが3兆円に迫ろうかという企業だ。これくらいのPRを兼ねたCSRはやっていい。
一般のお客さん相手の同社グループの不動産流通業の日本住宅流通の店舗数は首都圏では数えるほどしかない。デベロッパーは三井不動産、三菱地所、住友不動産がワンストップの店舗展開をここ2、3年の間に進めてきた。同社は「地方創生」の大きな看板も掲げた。ポーズだけならやらないほうがいい。安倍総理がびっくりするように徹底してやっていただきたい。
もちろんアンケートにも答えた。出身は「三重県・伊勢」で、「住みたい県」1位は「三重県」で、2位は「高知県」。酒がおいしく、四万十川のアユや土佐清水の鯖寿司がおいしいこともあるが、先日亡くなられた作家・宮尾登美子さんの出身県だからだ。3位はやはり好きな作家・丸山健二さんの出身県の「長野県」。
「行ってみたい県」は島田さんの出身県の「石川県」。もう一度「加賀屋」に泊まってみたい。2位はやはり「京都」。3位は「行ったことがない県」(8道県)にした。知らないところはどこでもいい。
また、期間中に訪ねてレポートしたい。

わが故郷・三重県を含む各道府県のポスター(10枚しか掲げられないので1週間サイクルで43道府県すべてを掲げるという)

各道府県の観光案内コーナー(三重県は小さな「三重テラス」のみ。奥ゆかしいのはいいのだが…他は2~5倍ぐらいあった)
三井不レジ 既分譲の戸建て「ファインコート」に「エネファーム」導入促進

戸建て用「エネファーム」
三井不動産レジデンシャルは1月28日、首都圏の東京ガス供給区域でこれまでに供給してきた分譲済戸建「ファインコート」(対象:15,110戸)の居住者に家庭用燃料電池「エネファーム」の導入を促進すると発表した。
同社は昨年3月、首都圏の東京ガス供給区域で供給する「ファインコート」の全戸に東京ガスの「エネファーム」を標準採用することを決定している。
4人家族を想定した試算によると、電気と都市ガス給湯器からの給湯を行なう方式と比べ、定格発電時にCO2排出量を約49%削減、一次エネルギー消費量を約37%削減でき、年間の光熱費を約5~6万円節約、年間のCO2排出量を約1.3トン削減できる。
希望小売価格(税別、設置工事費別)は190万円(燃料電池ユニット・貯湯ユニット・バックアップ熱源機・据置台・リモコンセット含む)。10年間の無償メンテナンスサポート付き。
戸建て、マンションの居住形態が意識を左右するか 三井ホームが調査報告会

「暮らし継がれる住まいに関する調査報告会」
三井ホームの企業内研究所「住まいと暮らし研究所」は1月28日、日本女子大家政学部居住学科定行研究室教授・定行まり子氏、三井不動産レジデンシャル、三井不動産リフォームと共同で研究を行ってきた「暮らし継がれる住まいに関する調査報告会」を開催した。
三井不動産グループの住宅を購入した人を対象にしたアンケートでは、「住まい」への愛着について戸建て居住者は「住空間」に、集合住宅居住者は「生活の利便性」に愛着を感じ、今後の住まいの選択意識については、戸建て居住者は多様な選択肢を持ち、集合住宅居住者は住み替え後も集合住宅を希望する傾向が強く、終の棲家のイメージでは、注文住宅、建売住宅、集合住宅居住者とも約42~48%が「夫婦二人」と答えた。
〝夢は庭付き一戸建て〟という住宅双六については、「いまだ残っているともいえるが、意識は薄れている」としている。
報告書は、「戸建て住宅派」「集合住宅派」ともに多様なニーズに応え、時を経ても資産価値が維持される住まいづくりと、環境づくりに業界全体で取り組む必要があるとまとめている。
報告会で挨拶した定行氏は、「わたしどもの大学もそうですが、三井さんグループの個々のデータをつなぎあわさればビッグデータになり、いい指導ができ、政策決定がスムーズに行える。これから人口減少、空き家の増加など多くの課題を抱えているが、生きるすべである生活の基盤の住まいづくりに研究成果を生かし、次につなげていきたい」と語った。
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なかなか興味深い報告会だった。終の棲家のイメージが「夫婦二人」というのは納得もしたが、「考え中、思いつかない」「のんびり、ゆっくり」がそれぞれ15~26%あり、「子の世話になる」は回答があったのかなかったのか、少なくとも報告はされなかったのには考えさせられた。報告を行った同社商品開発部長・吉澤敏幸氏か「これは私の考えだが、商品企画でいつも思うことだが、みんな将来のことをあまり考えない。せいぜい5年先くらい」と語ったのが印象的だった。時代は変わったということか。
報告に対する疑問もあった。今後の住まいの選択意識についてだ。報告では、戸建て居住者は「リフォーム」(23.5%)「住み替え」(21.0%)「予定なし」(22.9%)「今は思いつかない」(27.2%)「建て替え」(5.4%)など選択肢が広く、集合住宅居住者は「住み替え」が圧倒的に多く52.0%に達し、住み替える居住形態も「分譲マンション」が81.4%と突出して高いとしている。
つまり、居住形態によって夢が異なってくるとしているのだが、記者は居住形態ではなく、将来の住まいに夢が描けるのか描けないのか、経済・資産状況によって選択肢はおのずと限られてくる現実の反映だろうと考える。
住宅双六も同様だ。われわれ日本人には「庭付き戸建て」の夢は心の隅にあるはずだが、少なくとも首都圏の利便性の高い地域に戸建てを取得できる層は数%しなないのではないか。都内23区ではマンションすら買えない時代になってきた。
もう一つ。面白いと思ったのは、アンケート回答者1,474の戸建てと集合住宅(マンションが圧倒的に多いはず)の比率だ。半々であることが報告された。
対象者は三井ホームと三井不動産レジデンシャルの顧客だが、三井ホームの顧客は約20万件であるのに対し、三井不動産レジデンシャルサービスが管理するマンションは約23万戸だ。分譲戸建ては数万戸あるはずで、マンション・分譲戸建て合計で30万戸を突破するのは間違いない(アンケート対象は首都圏で、すべてに用紙を送付したわけではないだろうが)。
注文と分譲の比率は2:3だから、アンケートの分母もその通りになるはずなのにそうなっていない。これは記者の推測だが、注文は、建てる側にしてみれば「希望通り」の家を建て、メーカーも「建ててからお付き合いが始まる」という意識が強く、これが顧客満足につながり、回答数に反映されたのではないかと。一方の分譲は、いまは各社とも顧客とのつながりを重視しているが、これまでは「事業離れ」(死語になっていないはず)という言葉に象徴されるように、購入者とのつながりを遮断するところも少なくない(三井がそうだと言っているわけではないが)。その結果が、アンケートの数字に表れたのではないか。
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定行氏(左)と吉澤氏
記者はこのような会見などはいつも後方の席に座る。ところが、今日の報告会は最前列しか空いておらずやむをえず定行氏と吉澤氏と向き合う形になった。吉澤氏とはこれまでもお会いしているのだが、定行氏とはどこかでお会いしたような声を聞いたような既視感にとらわれた。
なぜだろうとずっと考え、社にもどって確認した。既視感ではなく、一度お会いしていた。つまり記者が耄碌したということだ。2011年10月に行われた「多摩ニュータウン大規模団地問題検討委員会」の会合で定行氏は感動的な講義・講演を行っている。その時の記事を紹介する。
「『極めて意義深い』(上野委員長)『感銘を受けた。目がうろこ』(白岩委員)『他の地域との連携、広いエリアとしての多摩ニュータウンの価値を考えさせてくれた』(炭谷委員)『八王子にも500人の待機児童がいる。参考にさせていただきたい』(岡部委員)『地に足がついたプレゼン』(西浦委員)など、各委員から大喝采を浴びた」
この大喝采を浴びた人こそ定行氏だったのだ。各委員はそんじょそこらの人ではない。一癖も二癖もありそうな経験豊富な大学の先生方ばかりだ。その時、記者はこう書いた。「もちろん記者も感動したのだが(というより記者席と各委員の席はかなり離れており、さらに記者の目が悪くなり、耳が遠くなったのか、マイクがよく聞こえず、プロジェクターもよく見えず、報告の半分は聞き取れなかったのだが)」と。
そんなわけで、定行氏の講義は他の先生方の心を打ったのだろうが、記者はほとんど聞き取れなかったので記事には書けなかった。

