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    旭化成不動産レジデンスが先ごろ、密集市街地の防災機能の確保を目的とした「中延二丁目旧同潤会地区防災街区整備事業」の準備組合結成の届けが完了したと発表した。東京都の「防災街区整備事業」はこれまで3事業が完了、2事業が告示されており、正式に認可されれば6例目になる見込み。

 同事業は、東京都の「木密地域不燃化10年プロジェクト」の不燃化特区先行実施地区である東中延1・2丁目、中延2・3丁目エリア内のコア事業として位置づけられている。

 同社は、2013年10月に品川区から旧同潤会地区共同化推進支援業務委託を受け、2014年3月15日に事業協力者として選定されている。コーディネーターの首都圏不燃建築公社、施設計画コンサルタントの日建ハウジングシステムなどと今後本組合結成に向けた取り組みを行っていく。

 防災街区整備事業とは、「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」に基づく事業で、木造家屋が密集し防災上の不安を抱えた地区を対象とし、密集市街地の防災機能の確保と土地の合理的かつ健全な利用を図ることを目的としている。

  東京都の防災街区整備方針(2008年)では都内64地区、約3,770haが防災再開発促進地区に定められているが、これまで事業完了したのは板橋区の「板橋三丁目地区」、足立区の「関原一丁目中央地区」、「墨田区京島三丁目地区」の三地区のみで、告示済は品川区の「荏原町駅前地区」と目黒区の「目黒本町五丁目地区」の2カ所がある。

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受賞したみなさん

 ポラスグループが8月5日、「第1回POLUS-ポラス-学生・建築デザインコンペティション」の公開審査会を行ない、応募458作品の中で最終審査に残った入選5作品のうち、入居者と街の人々がコミュニケーションできるシェアハウスを提案した東京芸大大学院・杉山由香氏と東京電機大大学院・藤井健太氏の「じじばばシェアハウス」を最優秀賞に選んだ。

 コンペは創業45周年を記念したもので、木造による1棟~最大10棟の「自立型の共生を表現した住宅」が応募条件で、応募作品は458件。入賞5作品について各入賞者のプレゼン、質疑応答などが関係者や報道陣に公開された。

 審査委員長の青木淳建築計画事務所・青木淳氏は、「社会的なテーマであり、それを木造で建築するという具体的な面もあり、アイデアを盛り込むという全領域をカバーしたコンペ。5作品ともそれぞれ方向が異なりバランスがよかった。これからの木造住宅の環境づくりのきっかけになる」と講評した。

 主催者のポラスグループ・中内晃次郎代表は、「木造住宅にかかわる就業者は少なくないのに、学生さんの関心はRCやS造に向きがちなので、45周年を機会にこのようなコンペを行なった。予想をはるかに越える応募があったことに感謝したい。作品のレベルも高く、夢のある提案をたくさん行なっていただいた。作品の実用化を検討しており、現在2つの作品で具体化を進めている」と挨拶した。

 受賞した杉山氏は「私なりのメッセージを伝えられて非常に嬉しい。これからも考えを深めブラッシュアップしていきたい」と、藤井氏は「質疑応答に上手に答えられない点もあったが、さらに精進していく」とそれぞれ喜びを語った。

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最優秀賞の杉山氏(左)と藤井氏

◇     ◆   ◇

 住宅に関するコンペはたくさん行なわれているが、プレゼン、質疑応答、審査投票が公開されるのはほとんど前例がないはずだ。記者もワクワクしながら一部始終を見守った。

 5作品の中で一番いいと思ったのは、25票満点(審査員5人で一人5票)のうち8票を獲得した最優秀賞に次ぐ6票を得た芝浦工大大学院・吉澤芙美香氏と同・青柳野衣氏の「屋根裏の知恵」だった。

 古書店が古書の交換会を行なって循環させているのにヒントを得て、有効に使われていない戸建ての屋根裏をつなぎあわせ、住民同士が自由に出入りできるようにすれば街の図書館になるという提案だった。戸建ての居住部分と屋根裏の間には多目的に利用できる緩衝スペースを設けることも盛り込まれていた。

 これには驚いた。権利関係や容積率、高さ制限などの問題があると思ったが、「屋根裏」はヨーロッパの小説にはしばしば登場するし、本来、絶対的所有権を主張する戸建てに共同利用できる空間を提案するという発想がとても面白いと思った。

 審査員からは技術的な問題が指摘されたが、「大丈夫だと思います」の「思います」は余分だった。「大丈夫です」と答えていたら最優秀賞に輝いたのではないか。

 他では、森林・林業の再生をテーマにした東京電機大大学院・坂本裕太氏の「式年遷住」もよかったが、テーマの割りには提案が平凡だったのが残念だった。街全体を活性化させるようなダイナミックなアイデアを盛り込んでほしかった。それでも、他の審査委員が1作品に2票というのが最多だったのに対し、3票を投じた青木審査委員長が懇親会で「君のが一番よかった」と坂本氏声をかけられたのは、記者も嬉しかった。

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青木氏(左)と中内氏

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左から審査委員のUID一級建築士事務所・前田圭介氏、法政大学准教授・赤松佳珠子氏、青柳氏、青木審査委員長氏、吉澤氏、審査委員の東大生産技術研究所教授・今井公太郎氏、ポラス暮し科学研究所所長・菅原庸光氏

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審査会場(ポラテック本社)

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木造のポラテック本社ビル1階

 三井不動産レジデンシャルが7月末に登録を締め切った「パークマンション三田綱町ザ フォレスト」」第1期80戸がほぼ完売した。

 詳細は別掲の記事を参照していただきたい。全97戸が億ションで、登録数は110件にのぼり、現在契約手続き中だが全戸が完売する見込みだという。坪単価は725万円。

「麻布霞町」を超えるか 「パークマンション三田綱町(2014/7/4)

 

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、「プラウド白金台三丁目」(左)と「プラウド自由が丘」(完成予想図)

 野村不動産は8月5日、「プラウド白金台三丁目」第1期53戸と「プラウド自由が丘」の全28戸が即日完売したと発表した。

 「プラウド白金台三丁目」は、東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅から徒歩3分、70年の定期借地権付き全83戸の規模で、今回分譲は第1期の53戸。専有面積は70.0~100.83㎡、価格は8,990万~17,480万円(最多価格帯9,900 万円台・11,100 万円台)、坪単価は460万円台。

 「プラウド自由が丘」は、東急東横線・大井町線自由が丘駅から徒歩11分の販売戸数28戸。専有面積は72.02~111.28㎡、価格は9,390万~17,590万円(最多価格帯9,300万円台)、坪単価は430万円台。

第8回キッズデザイン賞優秀賞が決定

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和田会長

 キッズデザイン協議会(会長:和田勇・積水ハウス会長兼CEO)は8月4日、子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つデザインを顕彰する「第8回キッズデザイン賞」の最優秀賞など36点を決定した。

 全受賞作品の中からもっとも優れた作品に贈られる「内閣総理大臣賞」にはマツダ「MAZDA TECHNOLOGY FOR KIDS」が選ばれた。車酔いをさせないスムーズな運転の習得を目指すプログラム、子どもによる誤始動を防ぐシステム、子ども歩行者を発見しやすいミラーの開発などが評価された。

 8作品の中で住宅関連では、積水ハウス「子どもの生きる力を育むまち、子育て世帯応援タウン~ニッケガーデン花水木~」が経済産業大臣賞に選ばれた。

 積水ハウスはこのほか、同社がキッコーマンなどと共同開発した「子どもの生きる力をはぐくむ『弁当の日』応援プロジェクト」が消費者担当大臣賞を、「震災で得た教訓を生かした、子どもと女性にやさしい『おりひめトイレ』」が復興支援デザイン部門賞をそれぞれ受賞した。

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「ニッケガーデン花水木」

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 記者発表会の冒頭で挨拶した和田会長は、「昨年から内閣総理大臣賞を新設したこともあり、今回の応募作品は過去最高の408点(第1回は287点)になった。子どもの安心・安全、健やかな成長を願う理念を実現する質の高い製品を開発し、日本にとどまらず世界にアピールしていきたい」と語った。

 その通りだと思う。記者は住宅・マンションを取材フィールドにしているので、子どもはもちろん大人にもそしてお年寄りや身障者にも使い勝手がいいユニバーサルデザイン(UD)の視点でいつも考えている。

 その意味からすると、確かに積水ハウスは間違いなく業界の最先端を走っている。しかし、デベロッパーを含めた業界のUDの取り組みはまだまだ遅れている。同社の取り組みが突出していること自体が情けない。

 戸建てだろうがマンションだろうが住宅には子どもやお年寄りに危険なところがいっぱいある。ダイワサービス会長でマンション管理業協会理事長の山根弘美氏は1歳にもならないお子さんを浴室で溺死させたのを今でも悔やんでいる。小さい子どもの頭部にあるドアノブは凶器にもなる。廊下・階段の幅はメーターモジュールにほとんどなっていない。健常者が車椅子利用を強いられるようになったとき、果たしてどれくらいの住宅が軽微な改良でそのまま使用することができるだろうか。転居、建て替えを余儀なくされる住宅は相当数にのぼるはずだ。白内障や色覚障害者に配慮した住宅なども少ない。

 そこで提案だ。キッズデザインとUDを含めた常設の展示場をぜひ都内に設置してほしいということだ。住宅部門でのUD、キッズデザインに関する実物、商品、書籍などを常設・常備し、若い研究者、学生が常時利用・研究できるような施設だ。キッズデザイン賞の審査委員長を務める益田文和・東京造形大学教授も「おっしゃる通り、キッズデザインはUDの視点が必要。常設の展示場は設置したい」と後押しした。

 費用は年間どれくらいかかるか分からないが、同社の売上額の100分の1どころか1000分の1くらいで十分だろう。そのような施設を設けたところで社会から称賛されても、株主その他から批判されることは絶対ないはずだ。

 和田氏は同社を立派な会社に育てたのだから、これからは会社や業界の利益よりも社会の利益を最優先する社会貢献活動に軸足を移していただきたい。〝5本の樹計画〟〝積水のUD〟が住宅・不動産業界の〝当たり前〟になるような活動だ。

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益田教授

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「プラウドシーズン栗平」

第一弾 全250区画の「プラウドシーズン栗平」9月分譲

 野村不動産が9月上旬に分譲開始する戸建て「プラウドシーズン栗平」を見学した。開発面積約25haの「稲城上平尾土地区画整理事業」地内に位置する全250区画の大型プロジェクトで、1区画最低面積を130㎡とし、ランドスケープデザインや外構・住戸デザイン、エネファーム全戸導入、ラクモア採用など街づくりにかける意気込みが伝わってくる物件だ。

 物件は、小田急多摩線栗平駅から徒歩9分、または小田急線新百合ヶ丘駅からバス約11分・徒歩1分、稲城市平尾の土地区画整理地内に位置する全250区画。敷地面積は135.00~159.18㎡、建物面積は100.52 ~118.93㎡、価格は未定だが5,000万円台から6,000万円台になる模様。建物は木造(2×4) 2階建て。設計・施工は東急建設、西武建設、細田工務店。

 かつて小田急多摩線の新百合ヶ丘駅徒歩圏では1億円以上、その他の駅圏では7,000~8,000万円の建売住宅が飛ぶように売れていた。さすがに最近の価格はそれほどでもないが、小田急不動産を中心に大手のハウスメーカー、デベロッパーが戸建てや停止条件付き宅地分譲を行なっており、良好な住宅地を形成している。

 区画整理事業方式により開発されたため、ここも良好な街並みを形成している。街全体は起伏に富み、1区画最低面積は130㎡、道路幅員は6m以上。外構には「まちなみツリー」「まちなみ花壇」を配し、各住戸のシンボルツリー、印象的なデザインの門柱、「コーナーウォール」などを設置。建物の外観には軒や窓周りにデザインモールやロートアイアン風のバルコニー手すりを設けている。

 住戸プランでは、全戸にエネファームを採用。同社の戸建てでは初めて「ラクモア」を導入。モデルハウスは吹き抜けリビング付きで主寝室にDENを設置し、浴室は1620サイズ、引き戸は全てソフトクローズ、2階のバルコニーは回遊できる広さなのが特徴。

  同社の戸建て住宅向けコミュニティ支援・生活サポートサービス「SMART&GROWING」を採用するほか、交流拠点となる「クラブハウス」も設置する。

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 栗平駅は何度も建売住宅やマンションの取材で訪れている。今回の物件は、小田急不動産との競合もあるし、戸数が多く、はるひ野、京王線若葉台などでの供給も少なくないので高値追求はできないだろうと思った。7,000万円を超えることはないと予想したがその通りだ。アッパーで6,500万円ではないか。

 街並みの美しさや設備仕様の高さをアピールできれば十分勝負できると読んだ。同社は、大手町へ乗り換えなしで通勤できること、隣接の区画整理が進めば若葉台へのアクセスが飛躍的によくなる利便性もアピールしていくようだ。

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コーナーウォール

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 同社は昭和45年に約1,680区画の町田市・玉川住宅地(成瀬土地区画整理事業)に参画以降、「鶴川緑山住宅地」(約1,200区画)、「千都の杜」(約730区画)、「八千代緑ヶ丘」(約1,000区画)など40年間で合計25件(うち事業完了済20件、現在施行中5件)の土地区画整理事業に継続的に携わってきた。

 今回見学した「プラウドシーズン栗平」は施行中の「稲城上平尾土地区画整理事業」(施行面積25ha)地内のプロジェクトだが、同社はこのほかにも稲城市の2つの土地区画整理事業にかかわっている。「南山東部土地区画整理事業」(施行面積87.5ha)と「稲城小田良土地区画整理事業」(施行面積29ha)だ。3プロジェクトの合計施行面積は約142haだ。同社がどれだけの区画を取得・分譲するかは現段階で不明だが、マンションを含め千数百戸にのぼりそうだ。

 さらに同社は区画整理事業方式による戸建て分譲として今年に入って「プラウドシーズン船橋小室」(施行面積13.2ha、312区画)の分譲を開始した。「三芳町富士塚土地区画整理事業」(施行面積14.6ha)でも事業参画する。

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 土地区画整理事業は「都市計画の母」と呼ばれてきた。記者も昭和50年代からそう呼んできた。地権者が権利に応じて土地を提供し(減歩)、その土地を道路や公園などの公共用地に当て、一部を売却して事業資金とする(保留地減歩)手法が、宅地不足を解消する合理的で公平な制度として定着し認識されてきたからだ。

 ところが、区画整理事業は地価の上昇を前提にした事業であるため、バブル崩壊後は様相が一変した。義業の長期化による金利負担増、減歩率の上昇、保留地の売却が進まないなどの理由から破たんするところが相次いだ。記者は減歩率が97%、つまりほとんど何も残らなかった広島県福山市郊外の「佐賀田土地区画整理事業(あしな台)」(19.5ha、342区画)の悲劇的な事例を取材している。

 昨年、三井不動産レジデンシャルが同社としてはバブル崩壊後で初めて茨城県守谷市の「松並土地区画整理事業」(施行面積41.7ha)に参画して話題になったが、それほど区画整理事業は厳しい環境下にある証左だ。

 その意味で、野村不動産の区画整理事業への参画は驚嘆に値する。稲城市での3つのプロジェクトは区画整理の復権・再生につながるかもしれない。それにしても、昭和45年に市街化区域に編入されてから区画整理事業が検討されてきた「南山東部」はそれから44年。当時生まれた子どもは44歳だし、母はすっかりおばあちゃんになっているはずだ。減歩率は68%で事業費は402億円。この間の推進派と反対派の賛否両論の時間とエネルギーを金額に換算したらいったいいくらになるのか。

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「みんなの書斎」(キッチンサイドに設置されており、料理に関することや子どもの勉強にも使える。キッチンやニッチなどにはマグネットが使えるホーローが多用されているのも特徴)

「区画整理の限界を超える」か スマートシティ「ビスタシティ守谷」(2013/2/22)

多摩ニュータウン学会 稲城市の南山東部区画整理・里山を学ぶ(2012/3/26)

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「―成功例に学ぶ―マンション建替えレポートVol.2」と「ATLAS COLLECTION」

 旭化成不動産レジデンスは8月1日、マンション建て替えを検討する管理組合や区分所有者向けに、これまで同社が携わった20件のマンション建て替え事例の概要と合意形成までの経緯をまとめた小冊子「―成功例に学ぶ―マンション建替えレポートVol.2」を発刊するとともに、10年後にはスタッフをほぼ倍増の200名体制に増強し、累計で100物件着工を目指すと発表した。

 小冊子は、同社が行った最近の10プロジェクトについて具体的に紹介しており、希望者には無料で配布する。

 また、事業強化の一環として、東京都文京区に建設中の常設モデルルーム「ATLAS COLLECTION」を2015年1月オープンする。

 会見に臨んだ渡辺衛男社長は、「3年前に分社化してこれまで順調に業績を伸ばしてきた。2013年度の売上高は858億円だが、2024年には売上高2,500億円を目指す。用地取得を伴わない法定再開発、マンション建て替え、都心市街地共同化に特化していく。マンション建て替えは〝日本一〟と自負しており、スタッフは現在の205名から10年後には200名体制に増やし、累計で100物件着工を目指す。キーワードは〝権利者とともに創るマンション事業〟だ」などと語った。

◇       ◆     ◇

 マンションの建て替えは今後間違いなく増加する。しかし、その一方で、還元率が100%以上期待できる好条件の物件は少なくなり、大手デベロッパーとの競争も激化する。争奪戦になるはずだ。また、建物の絶対高さ制限やダウンゾーニング、人口減少問題もあり、さらに建て替えではなく耐震補強、リファイニング手法など多様な選択肢も想定される。

 そうした中で〝建て替え実績日本一〟を自負する同社が今後も業績を伸ばしていけるかどうか。

 カギは、渡辺社長も強調したように、同社の強みである〝人にフォーカスした事業〟〝権利者とともに創る〟姿勢を徹底できるかどうかだろうと思う。

 今日も記事にしたが、用地を取得して利益優先のマンション事業などは早晩行き詰まる。住民とともに街のポテンシャル、価値を引き上げるような事業でないと生き残れないと思う。〝急がば回れ〟〝Slow and Steady Wins the Race〟だ。

マンション計画の住民説明会 街づくりを語り合う場にならないか(2014/8/1)

 わが街、多摩センターのマンション計画に対する住民説明会が行われたので聞きに行った。

 どこの区市町でもそうだが、マンション紛争を事前に防止するために、一定規模以上の計画に対して、建築確認の前に計画概要や工事に伴う遵守事項などを近隣住民に説明するよう事業者に求める条例や指導要綱を定めている。

 多摩市の場合は「多摩市街づくり条例」を定めており、近隣住民への周知義務として、「開発事業者は、規則に定める近隣住民に対し、前条第1項の規定による標識の設置以後において、説明会の開催等の方法により当該開発事業の事業計画及び工事計画について説明しなければならない」(第44条)としている。今回の説明会もこの規定に基づくものだ。

 ここでは具体的な計画については伏すが、敷地面積が約8,000㎡、15階建て全300戸という大規模なものだ。敷地南側にはマンションが建っているが、北側は店舗、事務所などで、日照を阻害するような住宅はほとんど建っていない。

 説明会は、工事を担当するゼネコンから近隣住民に迷惑をかけないということが説明された。騒音・振動を抑えるとか、塵埃の飛散を防止する、交通安全に配慮する、作業時間を事前に告知する、テレビの電波障害については必要な対策を講じるなどだ。

 質疑応答では、約40人参加していた住民からは建物の高さや電波障害、交通対策、工事による騒音、塵埃などについて質問があった程度で、予定されていた1時間30分は平穏に終わった。

◇       ◆     ◇

 マンションの住民説明会の取材は、「国立」マンションなど住民が反対運動を展開した案件では何度も経験があるが、このように平穏無事に行われたのはほとんど経験がない。問題になりそうな事項はほとんどないからだし、商品企画について説明する場でもない。基本的には法律に違反しない限り〝自分の土地に何を建てようが勝手〟だし、近隣住民もまた〝他人の土地にあれこれ注文を付ける〟立場にはない。

 しかし、「多摩市街づくり条例」の目的は、「多摩市(以下「市」という。)が市民とともに目指す街づくりの基本理念及び街づくりの推進に必要な事項を定め、優れた住環境と地域の特性を生かした快適で安心して市民が住み続け、だれもが住みたいと感じる魅力ある街づくりを実現すること」(第1条)であるはずだ。

 そのような視点に立てば、マンションの工事にともなう遵守事項について説明するのはもちろんだが、住民と一緒になって街をつくるマンションをつくる創造の場に説明会はなる。

 多摩市に限らずマンションは建てれば売れる時代ではとっくになくなった。経済設計がまかり通る時代でもない。少子高齢化が加速度的に進む。都市間競争も激化する。事業者も住民も目先の利益だけでなく、30年後、40年後を見据えたあるべきマンション像を語り合える場にはならないのだろうか。

 例えば、近隣住民が利用できる公益的施設を併設する。建物の階高を高くして各住戸の天井高を高くする。空地率を増やして緑化面積を多くする。行政も質の高いマンションに対しては優遇策を取ることも考えていい。

 そうすれば、近隣対策としての住民説明会から住民のニーズを引き出す、街のポテンシャルを引き上げる説明会へ劇的に変わり、地元だけでなく他のエリアからも移り住みたくなるようなマンションになるのではないか。デベロッパーもゼネコンも世間の嫌われ者でなくなるに違いない。

 そのようなことを考えながら聞いていたら、記者と同じように考えている人がいた。若い女性がこういった。「私は超素人。超素人の立場から言わせてもらうと、どうして敷地の割に戸数がこんなに多いのか。もっとゆったりしたマンションは建てられないのか」と。これに対して、ゼネコンからの明快な答えは出なかった。

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三井不動産レジデンシャルが販売する新築マンション購入者のうち女性単身者の購入者推移

 三井不動産レジデンシャルは7月29日、女性が「住」について興味を持つ機会を提供する女性向けwebサイト「モチイエ女子web」(http://www.mochiiejoshi.com/mj/)を公開した。運営は女性メンバーで構成するチーム「モチイエ女子project」が行う。

 同社は公開の理由を、女性単身者のマンション購入が増えているにもかかわらず、「そのイキイキとした実情とはかけ離れたイメージを持たれているのが現状」とし、「このような現状を打ち破り、彼女たちがより輝ける文化を醸成することを目的」としたという。

 切り口はマンガ、写真、コラム、インタビューなど6つのコンテンツから構成されている。

 リリースによると、同社が販売するマンションを購入する単身女性は2009年が250人くらいだったのが年々増加しており、2013年には750人くらいに達している。

◇       ◆     ◇

 公開されたwebのトップページを見ただけで記者は退散したが、結構なことだと思う。

 女性単身者がマンションを購入する動きは平成7~8年あたりから顕在化した。記者も特集で記事にしたことがあるし、「女性のための快適住まいづくり研究会」の小島ひろ美代表には何度か取材している。

 男性と異なり、手堅く自己資金を貯め、劣悪なワンルームマンションではなく、広めのマンションを購入していることがよく分かった。リリースにある「イキイキとした実情とはかけ離れたイメージ」がどのようなものかはここでは書かないが、男性よりはるかに賢明な選択をしている女性というイメージのほうが記者は強い。最近は2戸、3戸と買い増ししている女性も多いと聞く。

 消費税が10%に引き上げられる前に住宅を購入したい人は26.8%-野村不動産アーバンネットは7月29日、こんなアンケート調査結果をまとめ公表した。

 消費税10%の引き上げが決定した場合の影響について聞いたところ、「10%に上がる前に購入したい」がもっとも多く26.8%で、「購入計画への影響は受けない」が26.3%、「購入計画を見直したい」が17.5%、「当面の間、購入を見合わせたい」が26.1%だった。

 このほか、不動産の買い時感については、「買い時だと思う」「どちらかといえば買い時」を合わせると53.4%になり、不動産の価格が「上がると思う」と答えた人は44.2%だった。

 調査は7月8日から14日まで、同社の不動産情報サイト「ノムコム」の会員を対象とした「住宅購入に関する意識調査」の結果分かったもので、回答者は首都圏に住む約1,700人。

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 回答者の所得などの属性がいま一つよく分からないので何とも言えないが、消費税が10%に引き上げられた場合の答えは微妙だ。

 消費増税の影響を受けないと考える人と「上がる前に購入したい」と考える人は過半を超えたが、購入計画を見直したり見合わせたりする人も43.6%に上った。

 引き上げられても影響を受けないのは富裕層やアッパーミドルだろうから心配ないのだが、見直し・見送りが約44%にも上るのは第一次取得層向けにとっては深刻な事態になりそうだ。消費増税ばかりでなく、建築費の上昇で間違いなく価格も上昇するからだ。仮に今後10%価格が上昇したら、価格上昇と消費増税のダブルパンチを消費者は受けることになる。

 マンション業界では、生鮮食品や日用品メーカーが中身を少なくして価格を据え置きにしているのと同様、建築費や用地取得費の上昇を価格に転嫁していないように見せるために専有面積を圧縮したり設備仕様を落としたりして対応している。

 その典型例が武蔵小杉だ。従来、このエリアのマンション単価は290万円台の前半だったが、あるマンションは320万円になった。10%の上昇だ。しかし、このマンションは廊下面積を減らすなどして専有面積を約10%圧縮したことで、分譲価格は従来の物件とほとんど変わらない価格で分譲できた。

 しかし、これもそろそろ限界だろうし、第一次取得層向けの価格も取得限界にきている。

 最悪の場合は、富裕層・アッパーミドル向けのマンションが飛ぶように売れ、第一次取得層向けは供給が細り売れ行きもダウンするといういびつな図式が形成されるかもしれない。

 

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